JP3633644B2 - 強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子およびその用途 - Google Patents

強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子およびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子に関する。この粒子は、例えば超音波照射による超音波散乱を利用した診断剤として有用であり、超音波の集束による発熱を利用した腫瘍等の治療剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
平均粒径が数μm程度の中空微小粒子を超音波造影に利用することが知られている。
すなわち、血液や尿のような被験液体に分散させた中空微小粒子に外部から超音波を照射し、粒子中に存在する空気によって生じる超音波散乱を利用した診断として、血液流、尿流などの二次元像の観察による管腔臓器壁異常の有無の判定、心臓弁の動作の検査、灌流の効果判定や臓器、腫瘍等の二次元像診断への応用による各種ガンの診断、生体内臓器の血流速度(およびこれから換算される血圧)の時間変化の測定がある〔ジェー.エス.ラーザー(J.S.Rasor) とビー.オー.チックナー(B.O.Tickner) 著、1984年4月17日、ユー.エス.パテント(U.S.Patent)4巻、442号、 843頁の“マイクロバブルスペースプリカーサーズ アンド メソッヅ フォー ゼァ プロダクショク アンド ユーズ(Microbubble Precursors and Methods for Their Production and Use) ”、エイチ、ブリーカー(H.Bleeker) ら著、1990年ジェー.ウルトラサウンド.メッド(J.Ultrasound.Med)9号、461−471頁“オン ザ アプリケーション オブ ウルトラソニックコントラスト エージェンツ フォー ブラッド フロウメトリー アンド アセスメント オブ カルディアック パーフュージョン(On the Application of Ultrasonic Contrast Agents for Blood Flowmetry and Assesment of Cardiac Perfusion) ”参照〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
医学的応用において、これらの中空微小球には以下のような問題点があった。
まず、これらの中空微小粒子は一般には、比重の小さい糖類やタンパク質等の有機物で作られるため、空気を含んだ中空微小球全体の見かけの比重は、分散させられる被験液の比重1.0よりはるかに小さい。このため、中空微小球の流れは、被験液の流れからずれ、中空微小球中の空気による超音波散乱を利用した忠実な二次元像を得る上で妨げとなっていた。また、有機物であるため温度上昇による分解が生じるので、発熱させる用途に用いることはできなかった。
【0004】
そこで、中空のガラス微小球表面を比重が約5.2であるフェライトで被覆することにより、見かけ比重を使用する溶液の比重と等しくしたものが提案され、このものはフェライトで被覆されているので、外磁界で制御可能であった〔ティー.モリヤ(T.Moriya)とエム.セキ(M.Seki)ら著、1992年日本、東京−京都、第6回フェライト国際会議報告、“ホロー マグネティック マイクロフィアーズ フォー ウルトラソニック コントラスト フェライト(Hollow Magnetic Micropheres for Ultrasonic Contrast Ferrites)”参照〕。しかし、この中空ガラス球は直径10μm以下とすることができないため、毛細血管を通過するため必要な直径が3μm以下であることが要求されている生体内では使用できず、また、破損しやすいという欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような事情を考慮してなされもので、多孔質シリカ微小粒子に強磁性フェライトが被覆されてなり、その見かけ比重が0.95〜1.05であることを特徴とする強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子とその製造方法及び該磁性被覆多孔質シリカ微小粒子からなる診断剤と治療剤を提供するものである。
【0006】
本発明における「多孔質シリカ微小粒子」とは、内部に空気を含有しうる複数の孔を有するシリカ(SiO)微小粒子を意味する。該多孔質シリカ微小粒子の形状は特に限定されないが球形であるのが好ましい。また、該多孔質シリカ微小粒子は市販されているものでもよく、また、使用される粒子の平均粒径よりも大きい粒子の粉砕によっても得ることができる。平均粒径は粒子を球状であると仮定した場合の粒子の平均の直径をいう。該多孔質シリカ微小粒子の平均粒径は、その用途によって適宜設定される。該多孔質シリカ微小粒子の平均粒径は、一般に0.2〜50μmである。
【0007】
被覆多孔質シリカ微小粒子を血管内で使用する場合には、被覆多孔質シリカ微小粒子の平均粒径が約3.0μm以下が望ましい。平均粒径は約0.2〜3.0μm、好ましくは約0.3〜2.8μm、例えば約0.5μm、約1μm、約2μm、約2.8μmである。
また、該多孔質シリカ微小粒子は、かさ密度、すなわち空気を含んだ全体の比重が、0.15〜0.25(g/cm)であるものを使用するのが望ましい。
【0008】
以下、本発明においてかさ密度を単に比重というものとする。
本発明では、「強磁性フェライト」は、多孔質シリカ微小粒子を被覆するのに用いられ、被覆粒子の比重を被験液の比重と等しくでき、また被覆粒子の外磁界による制御、すなわち外部から与えた磁場勾配による制御を可能とする。
「強磁性フェライト」の組成は、生体内にて使用する場合、生体に対して無害であるフェライト、例えば、四三酸化鉄(Fe)で示されるマグネタイトの1部の鉄が他の金属元素、例えば、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)によって置換されていてもよい。
【0009】
「強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子」とは、上記多孔質シリカ微小粒子の表面、好ましくはその表面全体がフェライトにより被覆されたものをいい、好ましくは単相に被覆されたものをいう。該強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の平均粒径は、一般に0.2〜54.0μmであり、生体内で血管を通過し得るように、好ましくは0.2〜3.0μmである。フェライト被覆の膜厚は0.012〜3.4μm、好ましくは0.012〜0.096μmである。強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は、全体の比重を被験液と等しくするため0.95から1.05、好ましくは1.00となるように、被覆することができる。例えば、多孔質シリカ微小粒子の比重が0.20、フェライトの比重が5.20である場合、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の見かけ比重を1.00とするために必要なフェライト被覆の膜厚tは、多孔質シリカ微小粒子の直径Rとt=0.03Rなる関係から一義的に導かれる。フェライト被覆するための反応時間を含む反応条件の設定により、フェライト被覆の膜厚を決定し、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の比重を決定することが行われる。
【0010】
本発明の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は、フェライトメッキ法好ましくはリアクター・フェライトメッキ法により製造することができる。
「リアクター・フェライトメッキ法」は、既知のフェライトメッキ法(特許第1475891号)の一変法であり、リアクター・フェライトメッキ法により被覆膜厚調節が簡便となる。以下、リアクター・フェライトメッキ法により多孔質シリカ微小粒子をマグネタイトで被覆する場合を例にとって説明する。
【0011】
多孔質シリカ微小粒子を水性媒体に、例えば超音波攪拌装置を利用して、十分に分散させる。この分散液に、攪拌下、約60〜250℃好ましくは70〜90℃で、pH緩衡剤として酢酸アンモニウムを添加し、さらに、所望するフェライトを与える金属塩溶液(例えば塩化鉄(II)または硫酸鉄(II)の水溶液)を2〜6ml/分の速度で添加する。この際、反応液の酸化還元電位とpHをモニターし、酸化還元電位−550〜−350mv、pH約7.2に保持するように酸化剤とpH調整剤を添加するのが望ましい。
【0012】
酸化剤としては、亜硝酸水溶液、空気(O)、陽極電流(e)など、一方のpHの調整剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。
上記の方法において反応剤、反応条件などを適宜選定することにより、被膜の組成、被膜の厚さ、被覆粒子の比重を調整することができる。得られる被覆粒子は、磁気分離法によって分離し、粉末X線回析装置、走査型電子顕微鏡や原子吸光分析装置を利用して、被膜の組成、厚みなどを確認することができる。
【0013】
本発明の強磁性多孔質シリカ微小粒子は、超音波照射した際、多孔質中の空気による超音波散乱が生じるので、超音波による二次元像観察(造影)ができる超音波診断剤に利用できる。また、強力超音波の集束により発熱を生ずるので、腫瘍等に対する温熱治療剤として利用できる。なお、本発明の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は生体内で無毒である。
【0014】
以下、超音波診断剤と温熱治療剤としての利用について説明する。
1.被験液外又は生体外から、超音波を照射することにより、強磁性多孔質シリカ微小粒子は、超音波散乱を生じ被験液内における層流や生体内における層流の二次元像を得ることができる。この際被験液外および生体外から磁場勾配を与えることにより、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を局所に集中させれば局所における層流観察を行い得る。超音波散乱を利用した二次元像観察、すなわち造影は、食道、胃、尿管、膀胱、心臓、肝臓を含む他の生体内臓器についても行い得、また必要に応じて磁場勾配を与えて局所的造影を行い得る。
【0015】
強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を用いた超音波散乱を生体に対して適用する場合、照射する超音波は生体内での減衰が大きくなりすぎないよう20MHz以下であることが望ましく、超音波散乱を測定する超音波スキャナーにおける解像度を維持するため1MHz以上であることが望ましい。超音波を照射し、生じた超音波散乱について、Bモード超音波スキャナーを用いて超音波減衰量を測定し、またMモード超音波スキャナーを用いて二次元像を観察し得る。
【0016】
2.一方、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は強力超音波を集束させることにより被験液内および生体内において発熱させることができる。
癌細胞は、温度42〜45℃にて、約10分間保てば死滅することが広く知られているので、本発明の一利用態様として、肝臓に移植した腫瘍に強力超音波を集束させ、発熱させることによって、腫瘍を死滅させることができる。しかし、腫瘍に対する発熱の利用は肝臓に移植された腫瘍に限らず、他の生体内臓器についても可能である。また、腫瘍を死滅させる目的に限らず、温熱療法等への応用のようにただ単に生体内にて発熱させ利用させることもある。
【0017】
強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を用いた強力超音波による発熱を生体に対して適用する場合、発熱のために集束される強力超音波は5W以上で好ましくは10〜30Wであり、集束時間は好ましくは2〜10分である。
生体に対する強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の投与は、経口的投与、血管内投与、注射による局所への直接的投与のいずれも可能である。また、投与される際の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、その他の生体に受容されうる溶液に懸濁して用いられる。この際、生体に無毒性の分散剤の界面活性液を添加してもよい。
【0018】
以下、本発明の温熱治療剤としての利用態様をさらに詳しく述べる。
まず、1つの利用態様として、ヒトの皮膚癌の治療が挙げられる。皮膚癌の温熱治療剤としてヒトに与える場合、多孔質シリカ微小粒子の平均粒径が約1μm、強磁性被覆が約0.04μmである強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を生理的に受容な溶液、例えば生理食塩水に懸濁させ、濃度約1.6×10個/mlとし、これを患部に約3ml注射する。体外から磁場勾配を与え、患部に該強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を集中させ、42〜45℃に昇温させるよう強力超音波を集束させ、1日1回3〜5分ずつ、合計5〜10日昇温し、癌を治療することが可能である。なお、昇温後にも、磁場勾配を与えたままにしておけば、該強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を患部に固定したままにすることができ、温熱治療剤の注射回数を減らすことができる。
【0019】
次に、本発明の他の利用態様として、ヒトの腎臓癌の治療が挙げられる。腎臓癌の温熱治療剤としてヒトに与える場合、上記の例と同様の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子懸濁液約40mlを医療器具、例えばカテーテルを用いて血管を通じて患部に投与する。この場合も、上記例と同様な方法で、強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を集中させ、昇温し、癌を治療することが可能である。
以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0020】
【実施例】
製造例1(強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の製造)
平均粒径8μmの多孔質シリカ微小粒子0.2gを200mlの水に超音波分散させ、そして、上記多孔質シリカ微小粒子分散液を500mlのリアクター内で70℃に保ち、酢酸アンモニウム(CH3COONH4)10gを添加し、反応液として濃度24g/lの塩化鉄(II)(FeCl2)水溶液を3.3ml/minの速度で加えた。ここで、リアクター内の水溶液の酸化還元電位(ORP)とpHを計測し、常にORP=−550〜−350mVになるように酸化剤として濃度5g/lの亜硝酸(NaNO2)水溶液を、またpH=7.2に保つようpH調整剤として濃度10%のアンモニウム水(NH4OH)を適宜注射した。反応を45分行った。
【0021】
得られた強磁性多孔質シリカ微小粒子を乾燥させ、粉末X線回析装置で測定することにより、被覆は単相のマグネタイトであることを確認した。また走査型電子顕微鏡により観測したところ、マグネタイト被覆が多孔質シリカ微小粒子表面を完全におおっていること、およびマグネタイト被覆の厚さは0.3μmであることが明らかとされた。原子吸光分析法の測定結果から計算された厚さもこれと一致し、これより強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の見かけ比重は1.0と計算された。
【0022】
得られた強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子分散液中の溶媒を蒸留水で置換し、球の濃度を1.0×10個/mlに調整し、Bモード超音波スキャナーで5MHzにおける超音波減衰率を室温で測定したところ、10dB/cmを得た。また、強力超音波(1MHz、10W)を集束させて3分間照射したところ、集束部位の温度が15℃上昇した。
【0023】
製造例2
上記製造例1と同様に、平均粒径3μmの多孔質シリカ微小粒子0.2gを200mlの水に超音波分散させ反応液として濃度6g/lの塩化鉄(II)水溶液、酸化剤として濃度1.5g/lの亜硝酸水溶液を用い、20分間反応させ、厚さ0.1μmのマグネタイトで被覆することにより、見かけ比重1.0の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を得た。実施例1と同様の方法で測定した強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子分散液の超音波減衰率は8dB/cm、強力超音波集束部位の温度上昇は12℃であった。
【0024】
製造例3
上記製造例1と同様に平均粒径1μmの多孔質シリカ微小粒子0.2gを200mlの水に超音波分散させ反応液として濃度2.4g/lの塩化鉄(II)水溶液、酸化剤として濃度0.6g/lの亜硝酸水溶液を用い、20分間反応させ、厚さ0.04μmのマグネタイトで被覆することにより、見かけ比重1.0の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を得た。実施例1と同様の方法で測定した強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子分散液の超音波減衰率は7dB/cm、強力超音波集束部位の温度上昇は10℃であった。
【0025】
応用例4(生体外層流中における応用)
多孔質シリカ微小粒子の平均粒径8μm、マグネタイト被覆の厚さ0.3μmの製造例1による強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を濃度2×109個/mlで水に懸濁させ、内径25mmのビニルパイプ中にポンプで水を50cm/secの速度で送り層流を発生させ、このパイプに注射器を用い、上記微小粒子懸濁液を注入した。Mモード超音波スキャナーで5MHzにおける層流の二次元像を観測することができた。次いで、ネオジウム磁石(10mm巾×7mm)を近づけ、500Oe/mmの磁場勾配を与えたところ、磁石の方向に強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子が集められ、局所部分の層流の様子をさらに詳しく観測することができた。
【0026】
応用例5(生体内消化器官における応用)
多孔質シリカ微小粒子の平均粒径3μm、マグネタイト被覆の厚さ0.1μmの製造例2による強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を濃度1.0×10個/mlで、濃度50g/lのぶどう糖液に懸濁させ、実験犬(体重12kg)に300ml飲ませた。ネオジウム磁石を食道および胃の近辺に体外から近づけ、これらの二次元像をMモード超音波スキャナーで3MHzにおいて観察することができた。
【0027】
ついで、該強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を濃度1.5×10個/mlで生理食塩水に懸濁させ、実験犬(体重20kg)の尿管に10cc注射した。ネオジウム磁石を近づけることにより尿管および膀胱中の二次元像を得ることができた。
【0028】
応用例6(生体内循環器官における応用)
多孔質シリカ微小粒子の平均粒径1μm、マグネタイト被覆の厚さ0.04μmの製造例3による強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を濃度1.0×10個/mlで生理食塩水に懸濁し、実験犬(体重20kg)の静脈に10cc注射した。
【0029】
心臓に近い体表面にネオジウム磁石をおいて、心臓に強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を局所集中させ、Mモード超音波スキャナーで3MHzにおいて、心臓の二次元像を描かせた。また、体表面の動脈近辺にネオジウム磁石をおいて、該微小粒子を局所集中させBモード超音波スキャナーで3MHzにおいて、動脈中の流速の時間変動を観測し、これを血圧に換算したところ圧勾配の時間変化が記録できた。
【0030】
応用例7(生体内腫瘍における応用)
多孔質シリカ微小粒子の平均粒径1μm、マグネタイト被覆の厚さ0.04μmの製造例3による強磁性被覆微小粒子を濃度0.5×10個/mlの濃度で生理食塩水に懸濁し、実験ラットの肝臓内に形成した移植腫瘍に門脈を通じて選択的に注入した。Bモード超音波スキャナーで5MHzにおいて、移植腫瘍の二次元像を観察しながら、強力超音波(2MHz、10W)をこの部分に集束させて3分間照射したところ5℃昇温させることができ、発熱により腫瘍細胞が選択的に死滅していた。
【0031】
【発明の効果】
本発明の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は、見かけ比重が使用する溶液の比重と等しいので、被験液及び生体内において、流れからずれることなく、超音波散乱による層流の観察を行う際、流れに忠実な像を得ることができる。また、外磁界で制御可能であるので、被験液内局所及び生体内局所で、超音波散乱による二次元像観察及び層流の観察を行うことができ、発熱させることもできる。さらに、本発明の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子は、好ましくは3μm以下と微小であるので、生体内で血管を通過することが可能であり、また、多孔質シリカ微小粒子を用いているため破損の危険がないので、生体内での超音波散乱による二次元像観察(造影)を行う診断剤、特に血管用診断剤や発熱を用いた腫瘍及び温熱療法治療剤として使用することが可能である。
【0032】
また、本発明の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子表面上に酵素を支持させたキャリヤーとしても使用することが可能である。
本発明における多孔質シリカ微小粒子をリアクター・フェライトメッキ法で製造することにより、水溶液中にて、その表面全体を単相にフェライトで被覆することが可能であり、表面全体を単相に被覆することにより、膜厚調節が簡便にでき、またより磁性が強い強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子を得ることができる。

Claims (9)

  1. 多孔質シリカ微小粒子に強磁性フェライトが被覆されてなり、その見かけ比重が0.95〜1.05であることを特徴とする強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子。
  2. 強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の平均粒径が0.2〜54μmである請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子。
  3. 強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の平均粒径が0.2〜3μmである請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子。
  4. 強磁性フェライトがマグネタイトである請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子。
  5. マグネタイトが、四三酸化鉄(Fe)である請求項4記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子。
  6. 多孔質シリカ微小粒子を水性溶液中リアクター・フェライトメッキ法を利用して、強磁性フェライトで被覆し、強磁性フェライトで被覆された多孔質シリカ微小粒子を得ることを特徴とする請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の製造方法。
  7. 請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子からなることを特徴とする超音波診断剤。
  8. 強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子の平均粒径が0.2〜3μmであり、血液または尿中で利用される請求項7記載の超音波診断剤。
  9. 請求項1記載の強磁性被覆多孔質シリカ微小粒子からなることを特徴とする温熱治療剤。
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