JP3633501B2 - 溶接金属の靱性に優れたレーザー溶接継手 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、橋梁、造船、建設機械、産業機械、海洋構造物をはじめとする鋼構造の製造分野、および構造用鋼管・配管用鋼管などの製造分野において利用されるレーザー溶接継手、特に溶接金属の靱性が改善されたレーザー溶接継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鋼材に対する要求の一つとして、構造物の軽量化を目的とした高強度化とその上での経済性の追求がある。
【0003】
さらに近年、使用環境もますますきびしいものが増加しつつあり、その面からの要求も強くなってきている。
たとえば、石油、ガス等のエネルギー開発が、北極圏やそれに近い非常に寒冷な地域でも行われるようになり、海洋構造物、ラインパイプ等に使用される鋼材についても、低温での靱性のすぐれたものが要求されるようになっている。
【0004】
溶接して使用される鋼材の場合、溶接部の性能を可能な限り母材性能に近づけるべく種々検討がなされているが、その性能として最もきびしく要求されるのは靱性である。特に構造物の破壊安全性をより正確に算定するためには破壊力学手法にもとづいたCTOD特性を要求される場合があり、鋼板にこのCTOD特性を要求される気運にある。
【0005】
このCTOD特性を大きく支配する要因の一つに、溶接金属の清浄度および組織がある。近年、製鋼技術の進歩により、鋼中のS、O、NあるいはPなどの介在物の原因になる不純物成分が著しく減少し、低合金鋼の清浄度は大幅に向上した。一方、高エネルギー密度ビームすなわち電子ビームやレーザービーム、あるいはイオンビームを利用する溶接方法も開発され、突合せ部にこれらのビームを照射することにより、入熱量を小さくして溶融溶接が可能になってきた。これらビームの照射は、真空あるいは不活性ガス中で可能なので、溶融金属が雰囲気から汚染されることが防止でき、母材と同じ高清浄度を維持することができる。
【0006】
しかしながら、鋼を清浄化すると一般に高温において結晶粒が粗大化しやすくなる。溶接時に見られる溶融からの凝固およびその後の冷却の過程で短時間ではあるが高温になっているため、溶接金属が粗大粒組織になるのである。粗大粒組織の鋼は靱性が劣るので、この状態では溶接部の靱性がよくない。
【0007】
組繊を微細化する方法として溶接後の後熱処理があるが、せっかく入熱量の少ない熱影響部の小さい溶接法を採用しながら、再度別の熱源で加熱し後熱処理をおこなうのは生産性を悪くし、厚肉材の場合は熱処理後の強度が確保できない場合もある。
【0008】
ここに、溶接金属の組織を微細化し靱性を向上させる方法として、高エネルギー密度ビームの溶接において組織微細化により靱性を向上させる方法については、例えば特公平4−28474 号公報には、鋼中にあらかじめTiの酸化物を均一に分散させておき、溶接の際、電子ビームやレーザービームなどの高エネルギー密度ビームを、真空中や不活性ガス雰囲気中など高清浄環境下でその鋼に照射することにより、溶接金属中に微細な析出物を均一に分散させてミクロ組織を微細化し低温靭性を向上することが提案されている。
【0009】
この方法は、高エネルギー密度ビーム溶接の適用に際し、優れた性能の溶接部が容易に得られると思われるが、まず、鋼材の製造に問題がある。
すなわち、連続鋳造にて欠陥の少ない健全なスラブを得るには、一般に充分に脱酸する必要があり、脱酸が不十分な場合、表面疵や、介在物による内部欠陥が増加する傾向がある。脱酸には通常Alが使用され、脱酸が充分に行われれば鋼中に酸可溶Al(so1.Al)が存在することになる。ところが、Tiの酸化物はsol.Alに容易に還元されてしまうので、鋼中に残存させるにはAlの添加を制限し、その上で、表面や内部の欠陥を少なくするためのきびしい製造条件管理を必要とする。
【0010】
次に、Ti酸化物を分散させるために、鋼中の酸素レベルが高くなりがちである。酸素レベルが高いと溶鋼の凝固時に酸化物の凝集合体によって粗大な酸化物が形成されやすく、鋼の靱性を悪化させやすい。すなわち、溶接部の靱性は優れていても、母材の靱性ははるかに劣った鋼板になる危険性がある。
【0011】
また、通常のSAW(サブマージアーク溶接)の溶接金属の高CTOD化方策としてはアシキュラーフエライト化による組織の微細化ということがこれまで種々検討されてきた。その中で特に酸化物組成をコントロールすることによりフエライトの生成能を向上させる技術が確立していると言える。しかしながら冷却速度の著しい差異やワイヤー成分での強度・靱性調整可否などの差異によりSAW での知見がそのまま適用できず、溶接金属の高靱化に対してレーザー溶接特有の制限が必要であることを知見するに至っている。
【0012】
さらに、レーザー溶接特有の制限の例として、シールドガス組成の工夫による高靱化方策も検討されている。例えば特開平8−155658号公報にはTiとAlを適当量含有した鋼材を用い、不活性ガスに酸素を混入させたシールドガスによる雰囲気にて溶接を実施することで溶接金属の組織微細化を通じ高靱性化が達成される知見である。
【0013】
しかしながら、この技術では微細アシキュラーフエライトの生成能の著しく乏しい介在物が分散する場合があり、効率よくCTOD特性を確保することができなかった。
【0014】
また、特開平8−141763号公報に開示の方法のように、Ar、Heガスの中に酸素あるいは二酸化炭素を混入させ同じく溶接金属組織を微細化させることを通じて高靱化を狙う方法もある。これらの方法は効率良く溶接金属の靱性を向上させることができるが、必ずしも溶接金属部の靱性を安定して向上させることとは言い難く、特に少しでも脆化領域があった場合に敏感に靱性の劣化が見られる。そのためCTOD特性が要求される場合、ビーム溶接金属の靭性に多いと言われるバラツキにより目標を満足しない場合があった。また、二酸化炭素を混入させる場合にはその分率が低く所望の酸素が溶接金属中に残留しない、ひいては組織微細化が達成できない場合があった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、その施工能率の高さから橋梁、造船をはじめとする鋼構造分野、また構造用鋼管・配管用鋼管などにおいて近年ますます脚光を浴びているレーザー溶接継手において、その実用化に際してその劣化が障害のひとつとなっている溶接金属の靱性を向上させた溶接継手を提供することである。
【0016】
本発明のより具体的な課題は、レーザーなどの高エネルギー密度ビーム照射にて溶接をおこなう場合、溶接部の靱性を大きく向上させ、特に、高CTOD化に有効な溶接金属組織のアシキュラーフエライト化を確実に実現させた溶接継手を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、溶接ままで優れた靱性(特にCTOD特性)を有する溶接継手を得るため、溶接金属の物性向上の方法を鋭意検討した結果、次のような点を明らかにした。
【0018】
(a)溶接金属組織を効率よく高靱化するためには、組織のアシキュラーフエラトを通した組織微細化が最も効率のよい方策である。
(b)変態生成核となりうる介在物については十分な個数とそれに適した組成を有することが組織を微細化するための条件である。即ちアシキュラーフエライトの生成核として機能しないSi主体の酸化物を多量に含んでいないことである。
【0019】
(c)特開平8−155658号公報に記述されているようにレーザービーム溶接の際、溶接部のシールドに用いる不活性ガスに適量の酸素を混合すると、溶接部の靱性が大幅に向上することが経験される。つまり、シールドガスから供給される酸素によりアシキュラーフエライトの変態核が豊富に分散されるためと言える。しかしながら、シールドガス酸素量をさらに増加させていくと、この効果が飽和する領域を経て、逆に特性を損ねることが判明した。
【0020】
(d)酸素量を増加させていくと酸化物個数が増加していくとともに、酸化物組成がAl、Tiなどを主体とするものからSi、Mn系の酸化物へと変化する傾向にある。これは酸化物としての安定性が高いAl、Tiの化学量よりも酸素量が多くなり、次に安定性の高いSi、Mnまでもが酸化物として多量に析出するためと考えられる。
【0021】
(e)しかしながら、この遷移現象は溶接金属の相変態(γ→α)にとっては極めて重要な遷移現象である。すなわち、Ti、Alなどが主体の酸化物はアシキュラーフェライトの生成能が高い。しかし、特にSi、Mnが主体となってくると著しくその生成能が劣るのである。特に、Si系の酸化物はフエライトの核生成サイトとしての役割が乏しく、通常、酸化物は複合酸化物として存在するが、Siの含有量が(Al、Ti、Mn、Si=100 %として平準化した場合)、20%超となると著しくそのフエライト生成能を減じる。
【0022】
(f)ところで、SAW 溶接においてはワイヤー独自の成分設計が可能なことより比較的自由に所望の組織制御が達成できるのに対し、レーザー溶接においては鋼材そのものの成分設計にて溶金の組織制御を図る必要があり、母材性能・鋼材製造工程による制約などによりその慎重な成分設計が必要である。
【0023】
さらに、レーザー溶接の場合シールドガスの混合比率によっては酸素濃度が800ppm程度まで上昇する場合もあり、先に述べたように酸化物の組成がSi、Mn系へ移行することを懸念しなければならず、これに対し鋼材の成分設計のみで対策を講じなければならない。
【0024】
(g)ここに、本発明者らの多量の実験データを鋭意検討したところ、アシキュラーフエライトの生成能として重要なAl、Tiの量を酸素量に見合った分添加する必要があるという観点から、下記のようにAl、Tiと酸素の関連を持たせたパラメータにて限定することが有効であることを知った。
【0025】
(1)Al、Tiの量に対して酸素が少なすぎる、あるいは多すぎる場合、酸化物の組成変化によりアシキュラーフエライトの生成能が低下することから、酸素量を適正範囲に限定する必要がある。
【0026】
(2)酸素の量は絶対量として少なすぎると酸化物自体が少なくなるため、下限を設ける必要がある。
かかる知見に基づいて完成された本発明は、質量%で、C:0.16%以下、Si:0.80%以下、Mn:2.00%以下、Al:0.005%以上、Ti:0.025%以下、残部 Fe および不純物から成る鋼材を使用し、溶接金属の酸素濃度[O]depoが、下記条件1を満足し、かつ溶接金属の中に分散する介在物の組成が下記条件2を満足することを特徴とするCTOD特性に優れたレーザー溶接継手である。
【0027】
条件1:
0.35× (Al+0.57Ti) <[O]depo <2.3 ×(Al+0.57Ti)
かつ、 [O]depo ≧ 134ppm 、 Al 、 Ti は、溶接金属の質量%である。
条件2:
代表的な10ケ以上の介在物についてエネルギー分散型EPMAにて含有元素を定量分析し、Al、Si、Mn、Tiの合計が100 となるように平準化し、平均値をとった時、Siの比率が20%以下であること。
【0028】
本発明の実施態様では、レーザー溶接時のシールドガス雰囲気は、体積%で、20%以下の酸素を含有し残部は不活性ガスである。
また変更例として、レーザー溶接時のシールドガス雰囲気は、体積%で、50%以上のCO2 を含有し残部は不活性ガスである。
【0029】
ここに、溶接金属の酸素濃度[O]depo は、JIS H 1067によって計測したものであり、溶接金属部より板状あるいは丸状の試料を採取し、溶融により試料中の酸素を一酸化炭素として他のガスとともに抽出し、一定体積中に捕集してその圧力を測定することで定量化したものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明するが、まず、本発明における上述の各元素の限定理由について述べる。本明細書において、鋼組成を規定する「%」はとくにことわりがない限り、「質量%」である。
【0031】
Cは強度向上にもっとも有効であり、かつ安価な元素であり鉄鋼製品において最も基本的な元素である。0.16%を超えて添加すると溶接性を著しく阻害し、かつ母材靱性・アレスト性を著しく劣化させ、またレーザー溶接金属のように著しい急速冷却を受ける場合、マルテンサイト組織になり靱性が劣化することから添加量は0.16%以下とした。好ましくは、0.12%以下である。
【0032】
Siは強度向上に寄与するが、0.80%を超えて添加すると母材靱性を著しく損なう。またレーザー溶接金属においてアシキュラーフエライト生成能の低い酸化物を多量に生成することに繋がる。したがって、本発明にけるSiの添加量は0.80%以下とした。好ましくは、0.50%以下である。
【0033】
Mnは強度向上に寄与するが、2.00%を超えて添加すると靱性・アレスト性を著しく劣化させる、またレーザー溶接金属においてアシキュラーフエライト生成能の低い酸化物を多量に生成することに繋がる。したがって、添加量を2.00%以下とした。好ましくは、1.80%以下である。
【0034】
Alはγ粒の微細化に寄与する元素として有効であり、0.005 %以上添加する。さらに、本発明の根幹部分である酸素量との関係において適正範囲内に収まっていることが、レーザー溶接による溶接金属の靱性向上の観点から必要である。例えば、好適範囲としては、0.005 〜0.08%である。
【0035】
Tiはγ粒の微細化に寄与する元素として有効であるが、レーザー溶接金属において酸化物組成を適正に保つため上限を限定する必要があり、0.025 %以下と規定する。さらに、本発明の根幹部分である酸素量との関係において適正範囲内に収まっていることが、レーザー溶接により溶接金属の靱性向上の観点から必要である。したがって、好ましくは、0.020 %以下である。
【0036】
さらに、アシキュラーフエライト生成能の良好な介在物を確保するため、以下の規定を行う。
介在物の絶対量を確保するため、溶接金属の酸素量、つまり[O]depo は、20ppm 以上とする。
【0037】
さらに、Al、Ti量と酸素量との関係を規定することにより、アシキュラーフエライト生成能に富んだ介在物を確保する。すなわち酸素量が0.35(Al+0.57Ti)以下あるいは、2.3 ×(Al+0.57Ti) 以上であれば、アシキュラーフエライト量が著しく少なくなり、代わりに靱性不芳な上部ベイナイト主体となることから、本発明において酸素量は、次のように規定される。
【0038】
0.35× (Al+0.57Ti) <[O]depo <2.3 ×(Al+0.57Ti)
かつ [O]depo >20ppm
この介在物についての具体的な好適態様は以下の通りである。
【0039】
つまり、「生成核として機能すると考えられるSiの分率(Feを除いた体積%)が20%以下である、500nm 〜5μm の介在物が溶接金属の任意断面において1mm2あたりに10ケ以上含むこと」である。
【0040】
酸化物中のSi分率の規定については、Si系の酸化物がフエライトの核生成サイトとしての役割が乏しく、Siの含有量が(Al、Ti、Mn、Si=100 %として平準化した場合)、20%超となると、そのフエライト生成能を著しく減じるためである。
【0041】
図1には、Al添加量に対する酸素添加量比率とアシキュラーフエライト比率の関係を、図2には、同じくCTOD特性との関係をそれぞれグラフで示す。
これらの結果からも、本発明の範囲において、アシキュラーフェライト面積率は80%以上を占め、また、CTOD値も0.1mm 以上となる。
【0042】
本実験結果は、出力20Kw、溶接速度1m/min、焦点外し距離4mm なるレーザー溶接条件に対し種々シールドガスを変化させ、0.09%C−0.25%Si−1.00 %Mn−0.025%Al−0.015%Tiなる板厚12mmの厚鋼板に対し、メルトラン貫通溶接を実施して継手を作成し、それについて得られたものである。
【0043】
本発明にしたがい、適正酸素濃度範囲とすることで、高アシキュラーフエライト組織分率が確保され、組織微細化を通し高CTOD特性が確保されていることが分かる。
【0044】
また、本発明の好適態様では、溶接施工に際してのシールドガス分率を規定する。
これは前述した溶接金属中の酸素濃度を確実に得ることができるレーザー溶接方法について開示したものであり、不活性ガス中に酸素分率を適量混入させることで酸素濃度をコントロールできることを知見した。しかしながら、酸素混入過多は溶接金属中の酸素量を多くし過ぎるとともに介在物の絶対量が増え過ぎることにつながりCTOD特性を減じることに繋がるため、その上限を20体積%と規定した。
【0045】
さらに炭酸ガスをシールドガスに用いる方法については50%以下の分率では所望の酸素濃度が得られにくいことから50体積%以上と規定した。具体的にCO2 分率を変化させ溶接金属中の酸素濃度上昇の関係を調査した結果を図3に示す。
【0046】
図3は、シールドガス中のCO2 分率( 残部He) と溶金中酸素濃度上昇との関係を示すグラフであり、50体積%以下の分率では酸化物量、組成ともに所望の範囲を満足させることはできず、限界CTOD値は低位に留まる。
【0047】
次に、実施例によって本発明の効果をより具体的に示す。
【0048】
【実施例】
表1に試験に用いた供試材の化学組成を、表2、3に試験結果を示す。
供試材のうち記号1〜5については本発明の規定を満足するものであり、板厚12mmの鋼材として十分な母材CTOD特性を有している。
【0049】
CTOD試験については全厚の3点曲げ用B×2B試験片を用い、BS7448規格に基づいて試験を実施した。0.1mm 以上のCTOD値を有するものを「〇」、0.1mm 未満のものを「×」として評価している。
【0050】
供試材の記号6〜10については規定を逸脱しているものであり、特に記号6、8については母材CTOD特性が不芳である。
レーザー溶接施工については出力20KwのCO2 レーザーを焦点外し距離+4mm にて鋼板表面に照射し、溶接速度1m/minにてメルトラン貫通溶接を実施した。シールドガスについては不活性ガスとしてHeを用い、混合ガスとして5体積%O2(「記号−A」)、20体積%O2(「記号−B」)、22体積%O2 (「記号−C」)、40体積%CO2(「記号−D」)、50体積%CO2(「記号−E」) 、60体積%CO2(「記号−F」)を用いた。供試材1のみにHe lOO体積%(「記号−G」)のものを用いた。
【0051】
なお、結果を示す表中、介在物量については任意断面として例えば溶接方向と直角をなす垂直断面を研磨しナイタル液によるエッチングした後、溶接金属中央および1/4t部近傍にて走査型電子顕微鏡を用いて1mm 角視野を10ケ所以上観察し、介在物個数をカウントし、1mm 角当たりの個数として平均したものである。介在物組成については代表的な10ケの介在物について付属するエネルギー分散型EPMAにて含有元素を定量分析し、Al、Si、Mn、Tiの合計が100 となるように平準化したものである。
【0052】
表2において、供試材の記号1〜5については殆ど結果が同等であるため、まとめて結果を概説する。
記号 −A は5体積%O2シールドのものであるが介在物量は不足していないが、0/(Al+0.57Ti) が規定の0.35よりも低い値になっており、介在物組成がAl、Ti系に偏りすぎているため、溶接金属CTODが不芳な結果になっているものである。
【0053】
記号 −B は本発明の規定内のものであり良好なCTOD特性を示している。
記号 −C はシールドガス中の酸素分率が22%と規定より多めであり溶金酸素濃度が極めて高くなり0/(Al+0.57Ti) が規定の2.3 よりも高くなっている。酸化物は酸素増加に伴い極めて多くなっているものの組成はSi、Mnが主体になってしまっているため、溶金CTOD特性は不芳になっている。
【0054】
記号 −D はCO2 を混合ガスとして混入させた例であるが40%の分率では溶金酸素濃度の上昇が十分ではなく、0/(Al+0.57Ti) が規定よりも低い値になっており、介在物の絶対量が少な目になっているほか組成に関してもAl系に偏りすぎているためか、CTOD特性は不芳な結果となっている。
【0055】
記号 −E 、−FはCO2 比率を50、60%にしたものであり良好なCTOD特性を有している。
記号 −G はHe lOO%シールドのものであり、介在物量自体が少なくなっており、さらに0/(Al+0.57Ti) が規定を下回っているため、酸化物組成がAl、Ti系に偏り過ぎておりCTOD特性は不芳になっている。
【0056】
次に表3は比較例の結果を示すが、表中、記号6に関しては素材中のC量が規定よりも高いものであり溶接条件を最適化し酸素とAl、Tiの量をコントロールしたものでさえ溶金CTOD特性は不芳になっている。これは急速冷却を受けた高Cマルテンサイトの靱性が不芳であることによるものと考えられる。
【0057】
記号7はSi量が規定よりも高いものである。溶接条件を最適化し酸素とAl、Tiの量を最適化しても酸化物組成がSiに偏り過ぎておりCTOD特性は不芳な結果となる。
【0058】
記号8はMnが過多のものである。これに関しては母材特性が不芳なだけであって溶金靱性に関しては本発明における考え方に基づき靱性を向上することに成功している。しかしながら、構造物全体の安全性を考えると避けなければならない例である。
【0059】
記号9はAlが規定よりも低いものである。酸化物の組成の中でAl、Tiの分率が低くなりすぎておりCTOD特性は不芳である。
記号 lO はTiの量は規定よりも多いものである。酸化物組成がTiに偏り過ぎているためかCTOD特性は不芳となっている。
【0060】
以上の実施例からも判るように、本発明にて規定する条件を満足することでこれまで安定化が困難であったレーザー溶接金属におけるCTOD特性を良好に具備せしめることが可能となる。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、鋼構造物やラインパイプなどのレーザービームによる低合金鋼の溶接において、鋼成分を選択しこれに溶接施工方法を最適化することを通して溶接金属の組織における酸素とAl、Tiのバランスを規定し溶接金属の靱性、特にCTOD特性を大幅に向上させることが可能であり、しかも母材鋼板の性能やその製造については何ら問題を生じないため産業上極めて有益な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Alと酸素の関係が及ぼすAF比率への影響を示すグラフである。
【図2】Alと酸素の関係が及ぼすCTOD特性への影響を示すグラフである。
【図3】シールドガス中のCO2 分率( 残部He) と溶金中酸素濃度上昇との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.16%以下、Si:0.80%以下、Mn:2.00%以下、Al:0.005%以上、Ti:0.025 %以下、残部 Fe および不純物から成る鋼材を使用し、溶接金属の酸素濃度[O]depoが、下記条件1を満足し、かつ溶接金属の中に分散する介在物の組成が下記条件2を満足することを特徴とするCTOD特性に優れたレーザー溶接継手。
条件1:
0.35×(Al+0.57Ti)<[O]depo<2.3×(Al+0.57Ti)
かつ、 [O]depo≧134ppm、Al、Tiは、溶接金属の質量%である。
条件2:
代表的な10ケ以上の介在物についてエネルギー分散型EPMAにて含有元素を定量分析し、Al、Si、Mn、Tiの合計が100となるように平準化し、平均値をとった時、Siの比率が20%以下であること。 - レーザー溶接時のシールドガス雰囲気が体積%で20%以下の酸素を含有し残部は不活性ガスであることを特徴とする請求項1記載のレーザー溶接継手。
- レーザー溶接時のシールドガス雰囲気が体積%で50%以上のCO2を含有し残部は不活性ガスであることを特徴とする請求項1記載のレーザー溶接継手。
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