JP7469734B1 - 鋼板 - Google Patents

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Abstract

この鋼板は、所定の化学組成を有し、α値が1.00~1.50質量%、β値が10.0~15.0、γ値が0.70~1.50質量%、Ceq値が0.550~0.620質量%、降伏強度が670~870N/mm2、引張強さが780~940N/mm2、-65℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上、1/4厚位置での1mm×1mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下、板厚が10~60mmである。

Description

本発明は、鋼板に関する。
本願は、2022年09月30日に、日本に出願された特願2022-157410号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、気候変動問題の対策として、温室効果ガスの削減が強く求められている中で、カーボンニュートラルを実現する技術として、二酸化炭素(以下、COという)を回収・貯留する技術であるCCSが注目されている(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)。CCSでは、製油所、発電所、化学プラント等のCO排出源から排出されたCOを分離・回収し、地下深くの貯留層に圧入・貯留する。COを分離・回収するための回収施設と、COを地下の貯留層に圧入・貯留するための貯留施設が距離的に離れている場合、分離・回収したCOをパイプラインや船舶等によって、これらの施設の間を輸送する必要がある。
船舶によってCOを輸送する際は、船舶に備え付けられた輸送タンクに、液化されたCOを充填して輸送する。これにより、COの輸送効率の向上が図られる。ただし、輸送タンク内でのCOの固体化(ドライアイス化)を防止するために、2MPa程度の圧力に保持した状態で輸送する必要がある。また、2MPa程度の圧力においてCOを液体の状態を維持するには、COをマイナス35℃程度に保つ必要がある。更には、船舶の軽量化を図るために、使用される鋼板の強度を高くすることで、輸送タンクの肉厚を、できるだけ薄くしたいという要望もある。
従って、輸送タンクの素材となる鋼板には、高強度かつ低温靱性に優れることが求められる。例えば、強度として、780N/mm以上の引張強さが求められる。また、低温靱性として、板厚にもよるが、輸送タンクとして用いられる20~60mmの板厚の場合、最も厳しい条件として、マイナス65℃(-65℃)でのシャルピー試験で評価される低温靭性に優れることが求められる。ここでシャルピー試験の試験温度がマイナス65℃であるのは、シャルピー試験が小型試験であり、一般に使用温度に対して板厚に応じた一定程度低い温度で評価されるのが通常であるからである。
更に、輸送タンクのような大型の溶接構造物では、破壊の発生の可能性をより少なくするために、応力除去焼鈍を溶接部に実施する場合がある。応力除去焼鈍とは、溶接により生じた残留応力を軽減することを目的として、溶接後の構造物の溶接部をAc1変態点以下の温度に加熱し、次いで徐冷する熱処理法である。しかしながら、引張強さが780N/mm以上の高張力鋼に応力除去焼鈍を適用すると、合金炭化物が結晶粒界に選択的に析出し、この合金炭化物が粒界脆化を引き起こすことにより、応力除去焼鈍の実施箇所の靱性が極めて低下する。この現象は、一般にはSR(Stress Relieving)脆化と呼ばれている。特に、Bを含有し、且つ焼入れ焼戻しにより製造される高張力鋼においては、SR脆化が生じる傾向が強い。このような高張力鋼では、母材の脆化のみならず、この高張力鋼を用いて溶接継手を作成した場合に得られる溶接熱影響部の脆化も著しい。
従って、このような高張力鋼を用いて製造された輸送タンクにおいて、高い安全性を確保するためには、応力除去焼鈍が実施されても母材及び溶接部(特に溶接熱影響部)の低温靭性に優れることが好ましい。
上記のような観点から、従来、いくつかの技術提案がなされてきた。例えば、特許文献1では、化学成分を調整し、かつ、平均結晶粒径を15μm以下にすることを特徴とする、高強度鋼板が示されている。しかし、特許文献1に記載された鋼板は、マイナス65℃での低温靭性は評価されておらず、低温靭性について更なる向上の余地がある。
日本国特許第5590271号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、母材の強度、及び、母材及び溶接熱影響部の低温靭性に優れ、更には応力除去焼鈍後の母材の強度、及び、母材及び溶接熱影響部の低温靭性にも優れた、液化CO輸送タンク用に好適な鋼板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1]本発明の一態様に係る鋼板は、
化学組成が、質量%で、
C :0.07~0.11%、
Si:0.10~0.15%、
Mn:0.70~1.20%、
Ni:1.00~2.50%、
Cr:0.20~0.80%、
Mo:0.20~0.80%、
V :0.005~0.070%、
Al:0.010~0.100%、
B :0.0005~0.0030%、
N :0.0015~0.0050%、
P :0.006%以下、
S :0.0030%以下、
Cu:0~1.00%、
Nb:0~0.030%、
Ti:0~0.010%、
Ca:0~0.0030%、
Mg:0~0.0030%、
REM:0~0.0030%、
O :0.0040%以下、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(1)式によって定義されるα値が1.00~1.50質量%、
下記(2)式によって定義されるβ値が10.0~15.0、
下記(3)式によって定義されるγ値が0.70~1.50質量%、
下記(4)式によって定義されるCeq値が0.550~0.620質量%、
降伏強度が670~870N/mm
引張強さが780~940N/mm
-65℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上、
1/4厚位置での1mm×1mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下、
板厚が10~60mmである。
α=[C]+6×[Si]+100×[P] …(1)
β=0.65×[C]1/2×(1+0.64×[Si])×(1+4.10×[Mn])×(1+0.27×[Cu])×(1+0.52×[Ni])×(1+2.33×[Cr])×(1+3.14×[Mo]) …(2)
γ=[Mn]+20×[Nb]+36×[Ti] …(3)
Ceq=[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo]+[V])/5 …(4)
ただし、(1)式~(4)式における[C]、[Si]、[P]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Nb]、[Ti]および[V]、は、それぞれC、Si、P、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、TiおよびVの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
[2][1]に記載の鋼板では、下記(A)式~(E)式によって求められる[fB]が0.0003質量%以上であってもよい。
[fB]=[B]-0.77×[fN] …(A)
[fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
[fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
[fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
[fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
ただし、(A)式~(E)式における[B]、[N]、[Ti]、[Al]、[O]、[Ca]、[Mg]、[REM]はそれぞれ、B、N、Ti、Al、O、Ca、Mg、REMの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入し、また、[fN]、[fTi]、[fAl]、[fO]の計算値が0%未満の場合は0を代入する。
[3][1]または[2]に記載の鋼板では、電子ビーム後方散乱回析パターン解析法を用いた結晶方位解析を行うことにより判別される、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径と定義したとき、1/4厚位置における前記平均結晶粒径が15.0μm以下であってもよい。
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の鋼板では、保持温度が600℃であり、保持時間が2時間であり、且つ、昇温速度および降温速度が、425℃以上の温度域において55℃/hr以下である応力除去焼鈍を前記鋼板に対し行った場合、前記応力除去焼鈍が行われた箇所の、降伏強度が670~870N/mm、および引張強さが780~940N/mmであり、-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上であってもよい。
本発明の上記態様によれば、母材の強度、及び、母材及び溶接熱影響部の低温靭性に優れ、更には応力除去焼鈍後の、母材の強度、及び、母材及び溶接熱影響部の低温靭性にも優れた鋼板を提供できる。この鋼板は、液化CO輸送タンク用に好適である。
以下、本発明の一実施形態に係る鋼板(本実施形態に係る鋼板)ついて詳細に説明する。
本実施形態における「応力除去焼鈍」とは、特に断りが無い限り、JIS Z 3700:2022「溶接後熱処理方法」に規定された内容に準拠する応力除去焼鈍を意味する。本実施形態における「溶接」とは、特に断りが無い限り、溶接入熱が1.1~4.5kJ/mmである溶接を意味する。これら条件は、本発明が属する技術分野における一般的な条件である。しかし、上述の条件とは異なる条件下で応力除去焼鈍または溶接を行ったとしても、上述の条件下で行われた応力除去焼鈍または溶接と同等の効果が得られる。従って、本実施形態に係る鋼板に、上述の条件とは異なる条件下で応力除去焼鈍または溶接を行ってもよい。
まず、本実施形態に係る鋼板の化学組成を構成する各元素の含有量とその限定理由を述べる。以下、特に断りが無い限り、元素の含有量に関する「%」は質量%を意味する。
(C:0.07~0.11%)
Cは、母材の強度を向上させる元素である。本実施形態に係る鋼板が目的とする強度を達成するためには、C含有量を0.07%以上とする。C含有量は、好ましくは0.08%以上である。
一方、Cを多量に含有させた場合、溶接熱影響部の硬さが上昇すると同時にその靭性が低下するので、C含有量を0.11%以下とする。C含有量は、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.10%未満とする。
(Si:0.10~0.15%)
Siは、一般的に脱酸元素として鋼に含有される場合が多い元素である。脱酸を目的としてSiを含有させるために、Si含有量を0.10%以上とする。
一方でSiは応力除去焼鈍後の鋼の靭性を低下させる元素である。また、応力除去焼鈍(SR)後の溶接熱影響部の靭性の低下を抑制するためにも、Siの含有量は低い方が好ましい。そのため、本実施形態に係る鋼板においては、Si含有量を0.15%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.14%以下、より好ましくは0.13%以下、さらに好ましくは0.12%以下とする。
(Mn:0.70~1.20%)
Mnは、脱酸のために有効な元素であるとともに、鋼の強度を改善する元素である。従って、Mn含有量を0.70%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.90%以上とする。
一方で、Mnを過剰に含有させると、焼戻し脆化によって、応力除去焼鈍後の鋼の靭性が損なわれる虞がある。従って、Mn含有量を1.20%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.10%以下とする。
(Ni:1.00~2.50%)
Niは、鋼の焼入れ性および靭性の改善のために有効な元素である。そのため、Ni含有量を1.00%以上とする。Ni含有量は、好ましくは1.20%以上とする。
一方、Niを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後の鋼の靭性が低下する虞がある。また、応力除去焼鈍後の溶接熱影響部の靭性が悪化する虞がある。従って、Ni含有量を2.50%以下とする。Ni含有量は、好ましくは2.00%以下とする。
(Cr:0.20~0.80%)
Crは、鋼の焼入れ性の改善、および、焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、Cr含有量を0.20%以上とする。Cr含有量は、好ましくは0.40%以上とする。
一方、Crを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後における母材および溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。従って、Cr含有量を0.80%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.70%以下とする。
(Mo:0.20~0.80%)
Moは、Crと同様に、焼入れ性の改善、および焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、Mo含有量を0.20%以上とする。Mo含有量は、好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.35%以上、更に好ましくは0.40%以上とする。
一方、Moを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後において、Mo炭化物が粒界に析出して母材および溶接熱影響部の靭性が低下する虞があり、特に溶接熱影響部に与える影響が大きい。従って、Mo含有量を0.80%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.60%以下とする。
(V:0.005~0.070%)
Vは、CrおよびMoと同様に、焼入れ性の改善、および焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、V含有量を0.005%以上とする。V含有量は、好ましくは0.010%以上とする。
一方、Vを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後において、母材靭性および溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。従って、V含有量を0.070%以下とする。V含有量は、好ましくは0.050%以下とする。
(Al:0.010~0.100%)
Alは、脱酸に有用な元素であり、且つ、窒化物を形成することにより焼入れの際に結晶粒径を細粒化させる元素である。また、窒化物を生成することで、[fB]の確保にも不可欠な元素である。したがって、本実施形態に係る鋼板においては、Al含有量を0.010%以上とする。N含有量が多いときなどは、Nを固定してfBを確保するため、Al含有量は、好ましくは0.030%以上、より好ましくは0.040%以上である。
一方、Alを過剰に含有させると、Alが粗大な窒化物を形成し、母材および溶接熱影響部の靭性を低下させる虞がある。従って、Al含有量を0.100%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.080%以下とする。
(B:0.0005~0.0030%)
Bは、本実施形態に係る鋼板においては、微量に含有させることにより、鋼の焼入れ性を改善する元素である。従って、B含有量を0.0005%以上とする。B含有量は0.0006%以上、0.0008%以上又は0.0010%以上としてもよい。
一方、Bを過剰に含有させると、Bが粗大な窒化物及び/又は炭化物を形成して母材の靭性を低下させる場合がある。従って、B含有量を0.0030%以下とする。B含有量は0.0020%以下又は0.0010%以下としてもよい。
(N:0.0015~0.0050%)
Nは、窒化物を形成して母材の結晶粒径を細粒化させ、靱性を向上させる元素である。従って、N含有量を0.0015%以上とする。N含有量は0.0030%以上又は0.0035%以上としてもよい。
一方、Nを過剰に含有させると、窒化物が粗大化し、溶接まま(As weld)での溶接熱影響部の靭性が低下する。従って、N含有量を0.0050%以下とする。
(P:0.006%以下)
(S:0.0030%以下)
PおよびSは、鋼中に含まれる不純物元素であり、その含有量は少ないほど好ましい。このため、P含有量及びS含有量の下限は0%である。本実施形態に係る鋼板においては、母材靱性、応力除去焼鈍後における母材や溶接部の靭性の向上のために、P含有量を、0.006%以下とし、S含有量を0.0030%以下とする。P含有量は、好ましくは0.005%以下とする。S含有量を0.0020%以下としてもよい。
(Cu:0~1.00%)
Cuは、本実施形態に係る鋼板においては必須元素ではないので、Cu含有量の下限は0%である。しかしながら、Cuは鋼の強度を改善する効果を有するので、必要に応じて含有させることができる。含有させる場合、その効果を利用するためには、Cu含有量を0.10%以上であることが好ましく、0.20%以上であることがより好ましい。必要に応じて、Cu含有量を0.25%以上又は0.30%以上としてもよい。
一方、Cuを過剰に含有させると、鋼板表面での割れ発生、及びCuの析出によって、母材の靭性が低下する虞がある。従って、Cu含有量を1.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.80%以下とする。必要に応じて、Cu含有量を0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下又は0.40%以下としてもよい。
(Nb:0~0.030%)
Nbは、本実施形態に係る鋼板においては必須元素ではないので、Nb含有量の下限は0%である。しかしながら、Nbは焼入れの際に結晶粒を微細化させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。Nbを含有させる場合、その効果を利用するためには、Nb含有量は0.001%以上であることが好ましい。
一方、Nbを過剰に含有させると、Nbが粗大な炭窒化物を形成して母材靭性を低下させる虞がある。従って、Nb含有量を0.030%以下とする。Nbが少ない方が溶接熱影響部の靭性が向上するので、Nb含有量を、0.020%以下、0.010%以下、0.005%以下としてもよい。
(Ti:0~0.010%)
Tiは、本実施形態に係る鋼板においては必須元素ではないので、Ti含有量の下限は0%である。しかしながら、Tiは、スラブ加熱などによって鋼が高温になった際に、結晶粒を細粒化させる場合があるので、必要に応じて含有させることができる。Tiを含有させる場合、その効果を利用するためには、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
一方、Tiを過剰に含有させると、Nbと同様に、Tiが粗大な炭窒化物を形成して母材靭性を低下させる虞がある。従って、Ti含有量を0.010%以下とする。必要に応じて、Ti含有量を、0.005%以下又は0.002%以下としてもよい。
(Ca:0~0.0030%)
(Mg:0~0.0030%)
(REM:0~0.0030%)
本実施形態に係る鋼板では、Ca、Mg、及びREMのうち1種以上を含有してもよい。Ca、Mg、及びREMは必須元素ではないので、Ca、Mg、及びREMの含有量の下限はいずれも0%である。
Caは、鋼板中の硫化物を球状化することにより、鋼板の靱性を低下させるMnSの影響を軽減する効果がある。この効果を得るために、Ca含有量を0.0001%以上としても良い。
一方、Caを多量に含有させた場合、鋼の溶接性が損なわれる虞があるので、Ca含有量を0.0030%以下とする。必要に応じて、Ca含有量を、0.0015%以下、0.0010%以下、0.0005%以下又は0.0002%以下としてもよい。
MgおよびREMは、酸化物を形成して、溶接熱影響部の靭性を向上させる。この効果を得るために、MgおよびREMの含有量をそれぞれ0.0001%以上としてもよい。
一方、MgおよびREMを多量に含有させると、粗大な酸化物が形成され、鋼の靭性が低下する虞がある。従って、Mg含有量およびREM含有量をそれぞれ0.0030%以下とする。必要に応じて、Mg含有量及びREM含有量を、それぞれ、0.015%以下、0.010%以下、0.005%以下又は0.002%以下、0.0015%未満としてもよい。REMとはScやY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを含むレアアースメタルの総称である。他の添加元素に比べて、脱酸性が強いことが特徴であり、鋼中で安定な酸化物を形成する。
(O:0.0040%以下)
酸素(O)は、鋼中に含まれる不純物元素であり、鋼中では多くの場合、脱酸力の強いCa、Mg、REM、Al、Tiなどとともに数μm~数十μmサイズの酸化物を形成する。粗大な酸化物が含まれる場合や、酸化物の個数密度が高い場合には、脆性破壊の発生起点となりうるため、Oの含有量は少ないほど好ましい。このため、O含有量の下限は0%である。本実施形態に係る鋼板においては、溶接部の靭性の向上のために、O含有量を、0.0040%以下、好ましくは0.0030%以下とする。
(残部:Feおよび不純物)
本実施形態に係る鋼板は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物とからなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
更に、本実施形態に係る鋼板では、下記(A)式~(E)式によって求められる[fB]が0.0003質量%以上であることが好ましい。[fB]は、鋼に固溶するB量を表す。[fB]を0.0003質量%以上とすることで、降伏強度670~870N/mm、引張強さ780~940N/mmの高張力鋼において、鋼の焼入れ性を高めることができる。Bは鋼中において窒化物を形成しやすい。また、Ti及びAlは窒化物及び酸化物を形成しやすい。そこで、下記(A)式~(E)式によって鋼に固溶するB量[fB]を求める。[fB]は、0.0005質量%以上でもよく、0.0015質量%以上でもよい。また、[fB]は、0.0025質量%以下でもよく、0.0018質量%以下でもよい。
[fB]=[B]-0.77×[fN] …(A)
[fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
[fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
[fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
[fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
ただし、(A)式~(E)式における[B]、[N]、[Ti]、[Al]、[O]、[Ca]、[Mg]、[REM]はそれぞれ、鋼板におけるB、N、Ti、Al、O、Ca、Mg、REMの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入し、また、[fN]、[fTi]、[fAl]、[fO]の計算値が0%未満の場合は0を代入する。
また、本実施形態に係る鋼板では、個々の元素の含有量の限定に加えて、各元素の含有量から算出される、α値、β値およびγ値の範囲を次のように限定する。
(α値:1.00~1.50質量%)
α値は、以下の(1)式によって示される。
α=[C]+6×[Si]+100×[P]……(1)
ただし、[C]、[Si]および[P]は、それぞれ、鋼板のC、SiおよびPの含有量(質量%)である。
本実施形態では、α値を1.50質量%以下とする。これは、母材や溶接熱影響部の粗粒化した部分の、応力除去焼鈍後の靭性を改善するために必要な条件であり、これを満たす範囲でC、Si、Pが調整される必要がある。SR処理後は、Pの粒界偏析濃度が増加するため、粒界での脆性破壊が生じ易くなるが、P、C、Siにより脆性破壊を制御することができる。Pは製造過程を考慮すると鋼中に必然的に含まれ、粒界偏析により粒界強度を著しく低下させることから、SR脆化を招く代表的な元素であり、係数が最も高い。C、Siも鋼中に必然的に含まれる元素であり、これらの元素が多くなると粒界に生成するセメンタイトによる脆化を招く。いずれの元素も低減させることが望ましいが、特性上あるいは規格上一定量含有させる場合がある。SR後の靭性を向上させるために、α値を1.40質量%以下とすることが好ましい。α値は、1.00質量%以上である。この下限値は、適用分野の規格上の成分制約や製造上の元素制御の限界などによって定められる範囲であり、上述したC、Si、及びPの含有量の下限値および製造上の現実的な最小値を式(1)に代入することにより、算出される。α値の好ましい下限値は、C、Si、及びPの含有量の好ましい下限値から算出することができる。α値は、1.10質量%超でもよく、1.30質量%以上でもよい。
(β値:10.0~15.0)
β値は、以下の(2)式によって算出される。
β=0.65×[C]1/2×(1+0.64×[Si])×(1+4.10×[Mn])×(1+0.27×[Cu])×(1+0.52×[Ni])×(1+2.33×[Cr])×(1+3.14×[Mo])……(2)
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]および[Mo]は、鋼中のC、Si、Mn、Cu、Ni、CrおよびMoの含有量(質量%)である。
本実施形態に係る鋼板では、β値の範囲を10.0~15.0とする。β値は、鋼材の焼入れ性を示す指標であり、β値が高くなるほど強度靭性バランスが劣位な上部ベイナイト組織の形成を安定して回避できるが、β値が高すぎると鋼材強度が上がることで靭性が劣化する。すなわち、溶接熱影響部の溶接ままの靭性を向上するために必要な合金元素の含有量の狙い範囲を示す指標にもなる。必要に応じて、β値を11.0以上としてもよい。同時に、β値を14.0以下としてもよい。
(γ値:0.70~1.50質量%)
γ値は、以下の(3)式によって算出される。
γ=[Mn]+20×[Nb]+36×[Ti] …(3)
[Mn]、[Nb]、[Ti]は、鋼板のMn、Nb、Tiの含有量(質量%)である。
本実施形態に係る鋼板では、γ値の範囲を0.70~1.50質量%とする。Mn、NbおよびTiはいずれも応力除去焼鈍後の粒界脆化を助長する元素であり、γ値を1.50質量%以下にすることで、応力除去焼鈍後の母材や溶接熱影響部の靭性の低下を抑制できる。これらの元素が粒界脆化を助長するメカニズムはいくつか考えられるが、粒界偏析による粒界強度の低下や、粒界に生成する炭窒化物による脆化が考えられる。γ値は、1.40質量%以下でもよい。
一方で、一定の焼入れ性を確保し、強度靭性バランスに優位なミクロ組織を得るためにはMn、NbおよびTiは一定量添加することが好ましく、γ値を0.70質量%以上とする。γ値は、0.75質量%以上でもよい。
α値、β値およびγ値に関する数値範囲を満足することで、溶接ままおよびその応力除去焼鈍後でも溶接部(溶接熱影響部)の低温靭性に優れた鋼を提供できる分野が広がる。
本来α値およびβ値を一定の範囲に制御することでも溶接ままおよびその応力除去焼鈍後でも溶接部の低温靭性に優れた鋼を製造することは可能であるが、用途によっては適用規格の化学組成規定によりα値を自由に設定できず、α値を高めざるを得ない場合があった。それに対し、本実施形態に係る鋼板においては、新たにγ値を設定することで、α値の許容範囲を広げることが可能となったため、上記のような適用規格の化学組成規定が厳格な分野においても、溶接ままおよびその応力除去焼鈍後でも溶接部の低温靭性に優れた鋼を提供できる。
また、本実施形態に係る鋼板においては、以下の(4)式によって算出される、鋼の硬化性を示す指標である炭素当量Ceqを0.550~0.620質量%とする。
Ceq=[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo]+[V])/5 …(4)
(4)式中の[C]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]は、それぞれ、鋼板の、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)である。
Ceqが0.550質量%未満である場合、鋼板の強度が不足する場合がある。必要に応じて、Ceqを0.570質量%以上、0.600質量%以上としてもよい。また、Ceqが0.620質量%超である場合、鋼板の靭性が低下する場合がある。必要に応じて、Ceqを0.600質量%以下としてもよい。
(降伏強度:670~870N/mm
(引張強さ:780~940N/mm
本実施形態に係る鋼板では、降伏強度を670~870N/mmとし、鋼板の引張強さを780~940N/mmとする。液化CO用の輸送タンクのような大型溶接構造物の重量を軽減するためには、板厚が薄くても構造物の強度が確保できる鋼板が必要とされる。通常、このような用途で用いられる鋼板として選択されるものは、上述した降伏強度及び引張強さを有する鋼板であるので、本実施形態に係る鋼板においても降伏強度及び引張強さを上記の範囲とする。必要に応じて、降伏強度を690N/mm~830N/mmとしてもよい。また、引張強さを800N/mm~900N/mmとしてもよい。
(-65℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上)
また、本実施形態に係る鋼板は、高い靭性を確保するために、-65℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上である必要がある。これにより、本実施形態に係る鋼板よりなる輸送用タンクの安全性の確保が可能なる。-65℃におけるシャルピー吸収エネルギーは、表面から板厚方向に板厚の1/4の位置(t/4位置または1/4厚位置という場合がある)で測定した数値とする。
(-35℃におけるCTOD試験のδ値が0.10mm以上)
また、輸送用タンクのような溶接構造物の安全性を確保するために、最近では、破壊力学的な評価法を用いて、溶接構造物の耐破壊特性を評価し、設計に取り入れることが行われている。具体的に言えば、脆性破壊の発生特性として、日本溶接協会規格WES1108などによって規定されたCTOD試験(Crack Tip Opening Displacement test:き裂先端開口変位試験)により、CTOD値と呼ばれるき裂開口変位量(以下、δcと略す)を破壊力学的なパラメータとして求め、δcが設計基準を満足できるかどうかが評価される場合が多くなっている。
材料のδcを向上させるためには、従来とは異なる観点で材料の特性改善を行う必要がある。従来、材料の耐脆性破壊性の評価方法としては、シャルピー衝撃試験が用いられてきた。シャルピー衝撃試験から求められる値は、評価対象領域の平均的な靭性を表している。しかしながら、CTOD試験においては、評価対象領域の平均的な靱性が良好であったとしても、評価対象領域の中に少しでも脆弱な部位が存在すれば、その存在がδcに反映される。δcはこのような性質を有するので、特に溶接熱影響部のような、鋼材のミクロ組織が不均一かつ複雑に変化した領域において、高いδc値を得るためには、局所的な脆化領域をできる限り少なくすることが必要となる。
本実施形態に係る鋼板は、高い靭性を確保するために、-35℃におけるCTOD試験のδ値が0.10mm以上であることが好ましい。この場合、本実施形態に係る鋼板よりなる輸送用タンクの安全性がより向上する。
(硬度の平均値、標準偏差)
本実施形態に係る鋼板は、1/4厚位置での0.5mm×0.5mmの範囲における、0.05mmピッチでの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下である必要がある。本実施形態に係る鋼板の組織は、強度靭性バランスに優位なマルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織の混合組織が好ましいが、局所的なγ粒径やミクロ偏析のバラツキにより、部分的に焼入れ性が低下することで強度靭性バランスが劣位な上部マルテンサイト組織が形成する場合がある。上部ベイナイト組織が存在すると、硬さの分布が不均一となり、母材の靭性が劣化するおそれがある。硬度の平均値が265Hv未満であるか、または標準偏差が20を超えると、上部ベイナイト組織が含まれる可能性があり、母材靭性が確保できない。一方で、平均値が290Hvを超えると、強度が高くなりすぎることで、靭性が低下するおそれがある。
上述の硬度分布測定は、鋼板の圧延方向に平行かつ板厚方向に平行な面(L断面)を観察面としてミクロ試料を採取し、マイクロビッカース硬さ試験機を用いて、測定を行う。測定領域はミクロ観察面内の任意のt/4位置を中心とする0.5mm×0.5mmの範囲とし、測定ピッチは0.05mm、測定荷重は25gfで、縦11点×横11点の計121点測定を行う。得られた測定値から、平均値と標準偏差を算出する。
(板厚:10~60mm)
板厚10mm未満の鋼板を溶接する場合では、一般的に応力除去焼鈍(SR)が不要である。しかしながら、本実施形態に係る鋼板は、SRが必要な鋼板を対象とするので、板厚は10mm以上とする。板厚は、好ましくは、25mm以上である。一方、板厚が60mmを超える鋼板は、適用される輸送用タンクの重量の軽量化への寄与が小さく好ましくない。したがって、本実施形態に係る鋼板の板厚は60mm以下とする。
更に、本実施形態に係る鋼板は、以下の説明する構成を有していてもよい。
(組織)
本実施形態に係る鋼板は、上述した121点の硬度の平均値及び標準偏差を満足させるため、板厚方向の断面の1/4厚位置における組織が、マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織の混合組織であることが好ましい。マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織は合計で85面積%以上であるとよい。
(鋼板の1/4厚位置における平均結晶粒径:15.0μm以下)
本実施形態に係る鋼板では、1/4厚位置における平均結晶粒径を15.0μm以下としてもよい。母材靭性およびSR後の母材靭性を向上させるために、必要に応じて、平均結晶粒径を14.5μm以下、14.0μm以下としてもよい。鋼板の1/4厚位置における平均結晶粒径は小さい方が好ましいので、その下限値を規定する必要はない。通常、平均結晶粒径は、最も小さい場合約10.0μm程度となる。
平均結晶粒径は、以下のように定義される。
鋼板のL断面が観察できるサンプルを作成し、L断面の1/4厚位置を観察部とし、走査電子顕微鏡を用いた電子ビーム後方散乱回析パターン解析法(Electron Backscatter Diffraction method:EBSD法)を用いた結晶方位解析を、板厚方向に200μmかつ圧延方向に250μmの範囲にいて、0.5μmピッチで行う。結晶方位解析の結果から、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径とする。
(応力除去焼鈍後の-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上)
本実施形態に係る鋼板は、破壊を未然に防止することを目的として、輸送用タンクに組み立てられた後に溶接部に対して応力除去焼鈍を行うが、この際に、溶接部のみならず母材も加熱される。母材が加熱されると、母材の靭性が低下する傾向になる。原因は明確ではないが、P(リン)が粒界に拡散し、また、組織中に介在物の成長または凝集が起きることによって、脆性が低下して靭性が低下するものと推測される。よって、本実施形態に係る鋼板は、応力除去焼鈍後の-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上であることが好ましい。この場合、安全性をより高めることができる。
応力除去焼鈍後の-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーは、保持温度600℃、保持時間2時間、昇温速度および降温速度が425℃以上の温度域において55℃/hr以下である応力除去焼鈍を、鋼板に対し行った場合に、応力除去焼鈍が行われた箇所において測定する。
(応力除去焼鈍後の降伏強度が670~870N/mm、引張強さが780~940N/mm
本実施形態に係る鋼板は、応力除去焼鈍後の降伏強度が670~870N/mm、引張強さが780~940N/mmであることが好ましい。これにより、応力除去焼鈍がなされた液化CO用の輸送用タンクにおいて、十分な強度を確保できる。
また、本実施形態に係る鋼板は、応力除去焼鈍後であっても、-35℃におけるCTOD試験のδ値が0.10mm以上であることが好ましい。この場合、さらに安全性が向上する。
本実施形態に係る鋼板は、上記の構成を有していることで、溶接熱影響部の靱性(溶接まま、応力除去焼鈍後)にも優れる。
溶接熱影響部の靱性は、限定されないが、その目標値として、溶接ままの場合であれば、-65℃のシャルピー吸収エネルギーが70J以上であることが好ましく、応力除去焼鈍後であれば、-65℃のシャルピー吸収エネルギーが70J以上であることが好ましい。
また、溶接熱影響部は、溶接まま、応力除去焼鈍後のいずれであっても、-35℃におけるCTOD試験のδ値が0.10mm以上であることがより好ましい。
次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る鋼板は、上記の特徴を有していれば、製造方法に関わらずその効果を得ることができるが、以下に説明する方法を用いれば、安定して製造できるので好ましい。
上述の化学組成を有する鋼を鋼板として製造するためには、通常用いられる鉄鋼製品の製造方法を用いればよい。すなわち、例えば、転炉法又は電炉法によって製造され、二次精錬設備で精錬された鋼を、連続鋳造あるいは造塊分塊によりスラブとする。スラブ厚は偏析低減およびポロシティ圧下による材質改善を図れれば良く、そのためのスラブ厚は150mm以上が好ましい。スラブ厚の上限は特に制限はないが、例えば、スラブ厚は、600mm以下でもよく、400mm以下でもよい。
その後、スラブを、スラブ加熱炉により950~1250℃程度に加熱した後、後述する条件の熱間圧延により所定の板厚まで圧延して、鋼板とすることが好ましい。さらに、この鋼板に焼入れ焼戻しを行って、所定の特性を有する鋼板(最終鋼板)を得る。
本実施形態に係る鋼板は、P含有量を0.006%以下に低減する必要がある。通常の脱リン方法ではP含有量を0.006%以下まで低減させられない場合があるが、その場合、脱リン処理の時間を長くするなどの対応を行えばよい。
熱間圧延に際しては、圧延温度が1150~900℃の範囲内における累積圧下率を50%以上とすることが望ましい。上記温度域での累積圧下率の上限は特に規定する必要はないが、累積圧下率は、80%以下でもよく、70%以下でもよい。
焼入れ焼戻しについて、板厚50mm以下または50mm未満の場合、熱間圧延後、直ちに水冷される直接焼入れ処理を実施することで後述の再加熱焼入れ処理を省略しても良い。直接焼入れ処理を行う場合、冷却開始温度をAr3点以上とし、且つ300℃以下まで水冷を行う。水冷時の平均冷却速度は、鋼板表面および裏面の冷却時温度履歴において700℃~300℃までの範囲で5℃/秒以上とすることが好ましい。平均冷却速度の上限は特に制限はないが、平均冷却速度は、例えば、100℃/秒以下でもよく、50℃/秒以下でもよく、20℃/秒以下でもよい。また、直接焼入れ後に再加熱し、さらに焼入れを行ってもよい。
Ar3点は以下の式を用いて求める。
Ar3=910-310×[C]-8×[Mn]-20×[Cu]-15×[Cr]-55×[Ni]-80×[Mo]+0.35×(t-8)
ここで式中の[C]、[Mn]、[Cu]、[Cr]、[Ni]、[Mo]はそれぞれ、鋼板の、質量%でのC、Mn、Cu、Cr、Ni、Moの含有量であり、tは、mmでの鋼板の板厚である。
板厚50mm以上の場合、圧延後に鋼板を一旦冷却した後に再加熱することにより、焼入れ処理を行うことが好ましい。板厚50mm以上の場合、再加熱焼入れ処理を行えば、熱間圧延後の直接焼入れを省略しても良く、直接焼入れを行ってもよい。
再加熱を行う場合の、焼入れ処理時の加熱温度(つまり焼入れ温度)は、925℃以下とすることが望ましく、920℃以下でもよく、915℃以下でもよく、910℃以下でもよい。何故なら、厚手の鋼板は、圧延後に金属組織が十分に微細化されない場合があるからである。十分に金属組織が微細化されていない鋼板に対する焼入れ温度が925℃超であると、加熱に伴い形成する逆変態γ組織が粗大となり、その後の冷却によってγ/α変態した後の最終組織の平均結晶粒径も粗大となるためである。
一方で、焼入れ温度の下限は、Ac3点をわずかに上回る温度(例えば、Ac3点以上且つAc3点+20℃以下の温度範囲内)では、逆変態γ粒径のばらつきやBを含む炭化物の固溶が十分でなく、焼入れ性が不足する場合があるので好ましくない。したがって、焼入れ温度は880℃以上が好ましく、より好ましくは890℃以上である。上述の焼入れ処理条件の説明においては、鋼板の板厚が50mm以上であることが想定されているが、この焼入れ処理条件は、板厚50mm未満の鋼板に再加熱および焼入れを行う場合にも適用される。
本実施形態では、焼入れ後(直接焼入れまたは再加熱焼入れ後、両方を行った場合には、再加熱焼入れ後)、焼戻しを行う。焼戻し時の加熱温度(つまり焼戻し温度)は、660℃以下とすることが望ましい。焼戻し温度が660℃超であると、焼戻し効果が過剰となり、降伏応力および引張強さを確保することが困難となったり、靱性が低下したりする場合がある。焼戻し温度は、500℃以上、好ましくは600℃以上とする。焼戻し温度が低過ぎると、焼戻しが不十分になり、所定の降伏応力および引張強さを確保することが困難となる。
再加熱焼入れ後または焼戻し後に冷却を行う場合、焼戻し脆化による母材の靭性低下を防止するために、空冷ではなく、水冷により鋼板の冷却を行う(加速冷却を実施する)ことが望ましい。この場合、300℃までの平均冷却速度を0.1℃/秒以上又は0.5℃/秒以上とすることが好ましい。
本実施形態に係る鋼板は、液化CO輸送タンク用の鋼板として好適である。例えば、船舶に搭載する輸送用タンクとして用いることができる。船舶によってCOを輸送する際は、船舶に備え付けられた輸送タンクに、液化されたCOを充填して輸送するが、輸送タンク内でのCOの固体化(ドライアイス化)を防止するために、2MPa程度の圧力に保持した状態で輸送することが好ましい。また、2MPa程度の圧力においてCOを液体の状態を維持するには、COをマイナス35℃程度に保つことが好ましい。本実施形態に係る鋼板は、このような用途に好適に用いることができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得る。
高炉処理を終えた溶銑を溶銑鍋に出銑し、脱硫等の溶銑予備処理を行った後に、溶銑を転炉に挿入した。次いで、転炉にて脱リン処理を行い、P含有量を0.006%以下に調整した。
脱リン処理した溶鋼に対して更に成分調整を行った後、表1A及び表1Bに示す化学組成を有するスラブを鋳造した。
その後、スラブを、加熱炉により表に示す加熱温度に加熱した後、熱間圧延により所定の板厚まで圧延して、鋼板とした。
さらに、この鋼板に焼入れ焼戻しを行って、所定の特性を有する鋼板(最終鋼板)を得た。表2に、圧延前の加熱温度、熱間圧延の1150~900℃での累積圧下率、圧延後の板厚、焼入れ温度および焼戻し温度を示す。再加熱焼入れ後または焼戻し後の冷却は水冷により行い、300℃までの平均冷却速度を0.1℃/秒以上とした。また、一部の鋼板については、熱間圧延後に、直ちに水冷される直接焼入れ処理を実施した。この場合の冷却開始温度、冷却終了温度、平均冷却速度を表に示す。
表1A及び表1Bに鋼板の化学成分、α値、β値、γ値、fB値及び炭素当量Ceqを示す。また、表3Aの母材特性のSR前の欄に、121点の測定位置における母材硬度の平均値(平均Hv)、平均結晶粒径(EBSD粒径)、降伏強さ(MPa)、引張強さ(MPa)、降伏比、-65℃におけるシャルピー吸収エネルギー(J)、-35℃におけるCTOD試験のδ値(mm)を示す。
EBSD粒径の測定は、鋼板のL断面が観察できるサンプルを作成し、L断面の1/4厚位置を観察部とし、走査電子顕微鏡を用いた電子ビーム後方散乱回析パターン解析法(Electron Backscatter Diffraction method:EBSD法)を用いた結晶方位解析を、板厚方向に200μm、圧延方向に250μmの範囲にて、0.5μmピッチで行った。結晶方位解析の結果から、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径とした。
引張試験は、JIS Z 2241:2011に準拠し、1/4厚位置からC方向に、平行部がφ14mmのJIS4号丸棒試験片を採取して行った。降伏強さ及び引張強さは、それぞれ、2本の試験片の平均値である。降伏強さは、0.2%耐力とした。降伏比は、引張強さTSに対する降伏強さYSの割合であり、百分率、すなわち、100×(YS/TS)で表される。降伏比の単位は%である。
硬度分布測定は、鋼板の圧延方向及び板厚方向に平行なL断面を観察面としてミクロ試料を採取し、観察面を湿式研磨した後、1.0μmのダイヤモンド粒子を使用してバフ研磨で仕上げた鏡面を、マイクロビッカース硬さ試験機を用いて、測定を行った。測定領域はミクロ観察面内の1/4t位置を中心とする0.5mm×0.5mmの範囲を無作為に選定し、測定ピッチ0.05mm、測定荷重は25gfで縦11点×横11点の計121点測定を行った。得られた測定値から、平均値と標準偏差を算出した。
また、圧延方向と平行な溶接線の半自動溶接継手を作成し、評価した。具体的には、K開先を作成し、20%COを含有するアルゴンガスをシールドガスとし、溶接ワイヤを日鉄溶接工業(株)製の溶接ワイヤYM-69Fとし、入熱量を2.0kJ/mmとし、予熱を100℃として、多層盛りのガスシールドアーク溶接(GMAW)を行い、溶接継手を製造した。
溶接継手の、溶接部(As weld)からC断面でミクロ組織を現出させた後、表側I側溶融線(FL)をそれぞれのノッチ中央の位置として、表面下6.5mm位置を中心とする位置(表中表面採取と記載)および板厚中心部(表中t/2採取と記載)を中心とする位置からシャルピー試験片を採取した。
この試験片に対し、-65℃のシャルピー試験を行い、吸収エネルギーを求めた。結果を表3Bの継手特性のAsweldの欄に示す。
また、溶接部のミクロ組織を現出させた後、表側I側溶融線をそれぞれのノッチ中央の位置として全厚のCTOD試験片を採取し、-35℃でCTOD試験を行って、δ値を求めた。結果を表3Bの継手特性のAsweldの欄に示す。
その後、母材及び溶接部に対して応力除去焼鈍(SR)を行った。応力除去焼鈍は、保持温度を600℃とし、保持時間を2時間とし、昇温速度および降温速度が、425℃以上の温度域において55℃/hr以下の条件とした。
SR後の母材の降伏強さ及び引張強さを、SR前と同様の要領で求めた。
また、SR後の母材のt/4位置でC方向に採取した試験片に対し、-40℃でシャルピー試験を行い、シャルピー吸収エネルギーを求めた。また-35℃でCTOD試験を行い、δ値を求めた。
これらの結果を、表3Aの母材特性のSR後の欄に示す。
更に、SR後の溶接部からC断面でミクロ組織を現出させた後、表側I側溶融線をそれぞれのノッチ中央の位置として、表面下6.5mm位置およびt/2位置を中心とするシャルピー試験片を採取し、試験で得られた-40℃のシャルピー吸収エネルギーを示す。また、SR後の溶接部のミクロ組織を現出させた後、表側I側溶融線をそれぞれのノッチ中央の位置として全厚のCTOD試験片を採取し、試験で得られた-35℃におけるCTOD試験のδ値を示す。
これらの結果を、表3Bの継手特性のSR後の欄に示す。
母材及び溶接部のシャルピー吸収エネルギーは、母材及び溶接部から三個ずつVノッチ試験片を採取し、所定の温度でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。Vノッチ試験片は、JIS Z 2242:2005に記載されたフルサイズ試験片を各板厚位置からC方向に採取した。また、シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242:2005に準拠して行った。
CTOD試験のδ値(δc)は、BS7448規格(British Standard)Part1(1991)、及びBS7448規格(British Standard)Part2(1997)に準拠して測定を行った。
母材については、試験片の長手方向が圧延方向と垂直になるC方向(板幅方向)について評価を行った。
溶接継手部においては、K形開先の加工した鋼板突き合わせ部に、入熱量35kJ/mmでガスシールドアーク溶接を実施し、溶接部のCTOD試験片の疲労ノッチの先端が、溶接部のI側フュージョンライン(FL)の板厚中央部となるよう加工し、CTOD試験を所定の温度で実施した。溶接継手については、L方向(圧延方向)についてのみ評価を行った。溶接継手のCTODの評価においては、疲労き裂の先端が溶接ボンドに相当するように試験片を採取した。各試験温度で、3本の試験を行い、得られた測定データの最低値をCTOD試験のδ値とした。表3A及び表3Bに示すCDODの単位はmmである。
表1A~表3Bに示すように、本発明例であるNo.1~14は、いずれも、優れた強度及び靱性を有していた。特に、SR処理後であっても、優れた低温靭性を示した。また、SR処理後の降伏強度が670~870N/mmおよび引張強さが780~940N/mmとなり良好な値を示した。
また、No.1~14は、溶接継手の溶接熱影響部におけるシャルピー吸収エネルギーが、SR処理前(-65℃)およびSR処理後(-40℃)の両方において70Jを超えており、低温靭性が良好だった。
一方、表1A~表3Bに示すように、比較例であるNo.15~45及び55は、鋼板の化学組成(元素の含有量またはα値、β値、γ値、Ceq.)が本発明で規定される範囲を外れたので、少なくとも母材または溶接熱影響部のいずれかの靱性が劣化した。
また、No.46~54は、化学組成が本発明の成分範囲を満たしていたが、製造条件が好ましい製造条件を満足しなかった。そのため、靭性が劣化した。すなわち、少なくともt/4位置での-65℃でのシャルピー吸収エネルギーが100J未満であり、一部の例についてはその他の靱性も劣位であった。
Figure 0007469734000001
Figure 0007469734000002
Figure 0007469734000003
Figure 0007469734000004
Figure 0007469734000005
本発明によれば、強度及び低温靭性に優れ、更には応力除去焼鈍後の強度及び低温靭性にも優れた鋼板を提供できる。この鋼板は、液化CO輸送タンク用に好適であり、産業上の利用可能性が高い。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.07~0.11%、
    Si:0.10~0.15%、
    Mn:0.70~1.20%、
    Ni:1.00~2.50%、
    Cr:0.20~0.80%、
    Mo:0.20~0.80%、
    V :0.005~0.070%、
    Al:0.010~0.100%、
    B :0.0005~0.0030%、
    N :0.0015~0.0050%、
    P :0.006%以下、
    S :0.0030%以下、
    Cu:0~1.00%、
    Nb:0~0.030%、
    Ti:0~0.010%、
    Ca:0~0.0030%、
    Mg:0~0.0030%、
    REM:0~0.0030%、
    O :0.0040%以下、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(1)式によって定義されるα値が1.00~1.50質量%、
    下記(2)式によって定義されるβ値が10.0~15.0、
    下記(3)式によって定義されるγ値が0.70~1.50質量%、
    下記(4)式によって定義されるCeq値が0.550~0.620質量%、
    降伏強度が670~870N/mm
    引張強さが780~940N/mm
    -65℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上、
    1/4厚位置での1mm×1mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下、
    板厚が10~60mmである、
    鋼板。
    α=[C]+6×[Si]+100×[P] …(1)
    β=0.65×[C]1/2×(1+0.64×[Si])×(1+4.10×[Mn])×(1+0.27×[Cu])×(1+0.52×[Ni])×(1+2.33×[Cr])×(1+3.14×[Mo]) …(2)
    γ=[Mn]+20×[Nb]+36×[Ti] …(3)
    Ceq=[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo]+[V])/5 …(4)
    ただし、(1)式~(4)式における[C]、[Si]、[P]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Nb]、[Ti]および[V]、は、それぞれC、Si、P、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、TiおよびVの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
  2. 下記(A)式~(E)式によって求められる[fB]が0.0003質量%以上である、
    請求項1に記載の鋼板。
    [fB]=[B]-0.77×[fN] …(A)
    [fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
    [fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
    [fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
    [fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
    ただし、(A)式~(E)式における[B]、[N]、[Ti]、[Al]、[O]、[Ca]、[Mg]、[REM]はそれぞれ、B、N、Ti、Al、O、Ca、Mg、REMの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入し、また、[fN]、[fTi]、[fAl]、[fO]の計算値が0%未満の場合は0を代入する。
  3. 電子ビーム後方散乱回析パターン解析法を用いた結晶方位解析を行うことにより判別される、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径と定義したとき、1/4厚位置における前記平均結晶粒径が15.0μm以下である、
    請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  4. 保持温度が600℃であり、保持時間が2時間であり、且つ、昇温速度および降温速度が、425℃以上の温度域において55℃/hr以下である応力除去焼鈍を前記鋼板に対し行った場合、前記応力除去焼鈍が行われた箇所の、降伏強度が670~870N/mm、および引張強さが780~940N/mmであり、-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上である、
    請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  5. 保持温度が600℃であり、保持時間が2時間であり、且つ、昇温速度および降温速度が、425℃以上の温度域において55℃/hr以下である応力除去焼鈍を前記鋼板に対し行った場合、前記応力除去焼鈍が行われた箇所の、降伏強度が670~870N/mm、および引張強さが780~940N/mmであり、-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが27J以上である、
    請求項3に記載の鋼板。
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