JP2019214752A - 低降伏比厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
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Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
(式1)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.04〜0.08%、
Si:0.05〜0.25%、
Mn:0.8〜1.6%、
P:0.015%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.015〜0.05%、
Nb:0.005%未満、
Ti:0.008〜0.020%、
N:0.0045〜0.0070%、
O:0.0040%以下、
Cu:0〜0.40%、
Ni:0〜0.80%、
Cr:0〜0.20%、
Mo:0〜0.10%、
V:0〜0.08%、
B:0〜0.002%、
Ca:0〜0.005%、
残部はFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
下記式1で定義されるCeqが0.30〜0.40であり、
下記式2で定義されるNBTが0.010〜0.020であり、
板厚1/4の位置の金属組織において、
フェライト面積率が40〜70%であり、
前記フェライトの粒径分布において、
10μm未満のフェライトの個数割合が55〜80%であり、
10〜20μmのフェライトの個数割合が20〜45%であり、かつ、
20μmを超えるフェライトの個数割合が2%以下であり、
フェライト組織中にTi析出物が存在する、
HAZ靭性に優れる低降伏比厚鋼板。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
NBT=2×[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式1)、(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
まず、本発明にかかる厚鋼板の組成を上述したように限定する理由を詳細に説明する。
Cは強度を決定する最も重要な元素である。また、硬質相を分散させた際の硬質相の硬さにも影響するため、低C化指向とする。Cの含有量が0.04%未満の場合は、必要とする強度を得るのが困難となる。一方で0.08%を超えると硬質相が過剰に硬化して靭性を劣化させるため、これを上限とする。硬質相による劣化を抑制して、安定的に低温靱性を確保するには、Cを0.04〜0.07%とするのが好ましい。
Siは溶鋼の予備脱酸に有効な元素であり、かつ靭性を悪くすることなく強度を向上させる効果がある。したがって、Siの含有量は0.05%以上とする。一方で、0.25%を超えて含有するとHAZ部でMAを生成して靭性を劣化するため、これを上限とする。溶接時にMAの生成を抑制して、安定的にHAZ靭性を得るにはSiを0.05〜0.19%とすることが好ましい。
Mnは焼入れ性を高めることで強度を向上させ、MnSを形成することでSの悪影響を低減するため、引張試験の伸び及び靭性を向上させる。これら効果を得るにはMnは0.8%以上含有する必要がある。一方で、1.6%を超えて含有すると凝固による偏析が強くなり、パーライトのバンド組織が生成しやすくなるため、低温靭性が劣化するためこれを上限とする。Mnの含有量が多いほどMnSを形成するようになるため、伸びが高くなり、伸びを安定的に確保するにはMnを1.2〜1.6%とすることが好ましい。
Pは不純物として存在し、結晶粒界に偏析して靱性を劣化させ、焼戻し脆化の要因にもなる。そのため、P含有量はできるだけ低いことが望ましい。Pの含有量が0.015%を超えると劣化が著しいため、Pの含有量は0.015%以下に限定する。
Sは不純物として存在し、鋼板の延性や靭性を劣化させるため、その含有量はできるだけ低いことが望ましい。含有量が0.005%を超えると悪影響が顕著になることから、S含有量は0.005%以下に限定する。
Alは溶鋼の清浄度を得るために添加される元素である。その効果を得るにはAlを0.015%以上含有させる必要がある。一方で、Al含有量が0.05%を超えると粗大なアルミナが生成することで靭性が劣化し、溶接HAZ部ではMAが生成してHAZ靭性が劣化するためこれを上限とする。MA生成によるHAZ靭性の劣化をより抑制するためには、Alを0.015〜0.03%とすることが好ましい。
一般的にNbはオーステナイトの未再結晶領域を拡大させるのに有効な元素であり、圧延による組織微細化に寄与するため、靭性を向上させることができるが、本発明のプロセス条件においては組織微細化によるYP向上が顕著になることで低YR化が難しくなる。また、溶接時にはNb析出物が固溶して固溶Nbとなり、組織を硬化させてHAZ靭性を劣化させる。Nbが0.005%未満では適度に硬質相の分散が得られて低YR化が得られ、HAZ靭性への悪影響も無いため、Nbは0.005%未満とする。
Tiは窒化物を形成し、鋳片加熱や溶接熱によるオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する効果があるため、靭性及びHAZ靭性の向上に寄与する。その効果を得るにはTiを0.008%以上含有させる必要がある。一方で、0.020%を超えて含有すると、Tiが過剰になり窒化物を形成しないTiは固溶Tiとなり、大幅に焼入れ性を向上させるため靭性が劣化し、溶接部においても固溶Tiが組織を硬化させてHAZ靭性を劣化させるため、これを上限とする。
NはTiNを形成することで加熱時の組織粗大化を抑制して靭性向上に寄与する。Ti窒化物を適量に分散析出させるためはNを0.0045%以上含有させる必要がある。一方で、0.0070%を超えて含有させるとTiNが粗大化することで分散度が低下し、組織粗大化抑制効果が低下するため、これを上限とする。
Oは不純物として存在し、鋼板の中で酸化物を形成する。Oが多量に存在すると酸化物の数が増加し、靭性が劣化するため、Oの含有量は0.0040%以下とする。
Cuは焼入れ性向上により強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るために0.05%以上含有されるのが好ましい。一方で0.40%を超えると靭性が劣化するので、これを上限とする。
Niは焼入れ性を向上させて強度を得るだけでなく、同時に低温靭性も向上できる有用な元素であることから必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.05%以上含有されるのが好ましい。一方で、Niは高価な合金元素であり、0.80%を超える含有は経済合理性に合わなくなるため、これを上限とする。
Crは焼入れ性向上により強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.05%以上の含有が好ましい。一方で、0.20%を超えると低YRを得るのが難しくなるため、これを上限とする。
Moは焼入れ性向上や炭化物を形成することにより強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.02%以上の含有が好ましい。一方で、0.10%を超えると低YRを得るのが難しくなるため、これを上限とする。
Vは一般的に焼入れ性を向上させ、炭化物を形成することにより強度を向上させることができるので必要に応じて含有させてもよい。上記の効果を得るには0.02%以上の含有が好ましい。一方で、0.08%を超えると靭性が劣化するため、これを上限とする。
Bは少量で焼入れ性を向上させ、強度の向上に有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。一方で、0.002%を超えると靭性が劣化するため、これを上限とする。上記の効果を得るには0.0004%以上の含有が好ましい。
Caは硫化物を形成することでSの悪影響を低減し、靭性の向上に有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。一方で、0.005%を超えると粗大な酸化物を形成するようになり、靭性に悪影響を及ぼすようになるため、これを上限とする。上記の効果を得るには0.0008%以上の含有が好ましい。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
(式1)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
NBT=2×[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
フェライトはC固溶量が少なく、変態中に周囲のオーステナイトにCが拡散して軟質相となる。フェライトの面積率が大きいほど降伏強度及び引張強度は低くなるため、所定の強度、低YRを得るにはフェライトの面積率は70%以下に制御する必要がある。一方でフェライト面積率が40%未満になると、軟質相の役割が不十分となり、降伏強度が高くなるため低YR化が困難となるため、フェライト面積率は40〜70%とする。
粒径が小さいフェライト個数割合が大きいほど低温靱性が向上する。所要の低温靭性を確保するには粒径10μm未満のフェライト個数割合が55%以上必要である。一方で10μm未満のフェライト個数割合が80%を超えると粒径10μmを超える粗大なフェライト粒が少なくなり、引張荷重下において早期に降伏するフェライト個数が不十分となるため、降伏強度が高くなり低YR化が困難となる。そのため、フェライト粒径10μm未満のフェライト個数割合は55〜80%とする。
粒径10μm以上の粗大なフェライト個数割合が増加すると、引張荷重下において早期に降伏するようになるため、低YRを確保するのに有効である。一方で、粗大なフェライトは低温靭性を劣化させる問題がある。粒径が10〜20μmのフェライトは低YRと低温靱性を両立でき、そのフェライト個数割合が20%未満では降伏強度が高くなり、一方で45%を超えると低温靭性の劣化があるため、フェライト粒径10〜20μmのフェライト個数割合は20〜45%とする。
粒径が20μmを超えるフェライトは著しく低温靭性を劣化させるため、最小限にする必要があるが、個数割合を2%以下に制御できれば、所要の低温靭性を得ることができるため、フェライト粒径20μmを超えるフェライト個数割合は2%以下とする。
Ar3(℃)=910−310×[C%]−80×[Mn%]−20×[Cu%]−15×[Cr%]−55×[Ni%]−80×[Mo%]+0.35×([板厚(mm)]−8)…(式3)
(式3)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(a)第1冷却を、鋼板表面温度がTFR〜TFR−30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始し、600〜700℃の範囲で停止する。
(b)第1冷却の平均冷却速度を10℃/sec以上とする。
(c)第1冷却から第2冷却までの時間を10〜50secとする。
(d)第2冷却を350℃〜480℃の範囲で停止する。
(e)第2冷却での平均冷却速度を15℃/sec以上とする。
以上、第1冷却及び第2冷却は、一台の冷却装置を用い冷却してもよいし、二台の冷却装置を用いて鋼板を連続的に移動させて行ってもよい。
加熱温度が1000℃未満である場合、鋳片の温度が低いため、圧下抵抗が大きくなる。そのため所定の板厚にするまでの圧延パス数が増えすぎるため製造効率が悪化する。一方、加熱温度が1120℃を超えるとオーステナイトの結晶粒が粗大化するため低温靭性が低下するおそれがある。
900℃以下の温度範囲における累積圧下率とは、900℃における板厚を基準として、仕上げ圧延後の板厚までに圧延した板厚の減少率である。この累積圧下率が30%未満では、変態後に微細な結晶粒が得られないため、低温靭性が低下するおそれがある。
圧延終了温度TFRがAr3点未満となると、冷却前に初析フェライトが生成することがある。このため、圧延終了温度TFRは鋼板表面温度でAr3点以上とする。なお、Ar3点は上記(式3)で示すとおりであり、以下で示す冷却工程におけるAr3点も同じである。
(a)第1冷却を、鋼板表面温度がTFR〜TFR−30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始し、600〜700℃の範囲で停止する。
第1冷却の開始温度は、圧延終了温度がTFRであることから、圧延終了温度TFR以下となる。第1冷却の冷却開始までに温度がTFR−30℃未満まで低下すると圧延で導入した転位が回復するため、変態の駆動力が低下する。そのため、粗大な粒径のフェライト個数割合が増加するおそれがある。一方で、冷却開始温度がAr3点未満になると、冷却前に初析フェライトが生成することがある。このため、第1冷却を鋼板表面温度がTFR〜TFR−30℃、かつ、Ar3点以上の範囲で冷却を開始する。
第1冷却の平均冷却速度が10℃/sec未満となると、冷却途中でのフェライト変態が開始することで粗大な粒径のフェライト個数割合が増加し、靭性が低下するおそれがある。このため、第1冷却の平均冷却速度を10℃/sec以上とする。第1冷却の平均冷却速度の上限速度は規定しないが、通常水冷装置の性能から考えれば、第1冷却の平均冷却速度は40℃/sec以下となる。
1次冷却から2次冷却までの時間は1次冷却停止からの放冷時間となるが、これが10sec未満となると、1次冷却停止後からのフェライト変態が不十分となり、フェライト面積率が不足する。一方で、50secを超えると、フェライトの結晶粒が粗大化するため、靭性が劣化するおそれがある。このため、第1冷却から第2冷却までの時間を10〜50secとする。このとき、第2冷却の開始時の鋼板表面温度は鋼板の復熱により580℃以上となる。
冷却停止温度が480℃よりも高いと未変態のオーステナイトが靭性の低い上部ベイナイトに変態することで靭性が劣化するおそれがある。一方で冷却停止温度が350℃未満に過剰に急冷されると鋼板が反るようになり平坦度が悪くなるおそれがある。このため、第2冷却における冷却停止温度は350〜500℃の範囲とする。
第2冷却の平均冷却速度が遅い場合、冷却途中で靭性の低い上部ベイナイト変態が生じて靭性が劣化するおそれがある。このため、第2冷却の平均冷却速度を15℃/sec以上とする。第2冷却の平均冷却速度の上限速度は規定しないが、通常水冷装置の性能から考えれば、第2冷却の平均冷却速度は40℃/sec以下となる。
応力除去焼きなましを行った後、得られた各鋼板から平行部の長さが8.5mm、標点距離が42.5mmの丸棒引張試験片を作製した。このとき、丸棒引張試験片の長さ方向が圧延方向と垂直な方向(板幅方向)となるように試験片を切り出した。丸棒引張試験片を用いて、常温、大気圧で引張試験を実施して、降伏強度YS(MPa)、引張強度TS(MPa)、降伏比YR(=YS/TS×100、単位は%)および、全伸びEL(%)を求めた。
低温靭性の評価はJIS Z2242−2016に準拠したシャルピー試験片(2mmVノッチ試験片)を板厚の1/4位置から採取した。ノッチ位置は板厚方向とした。−60℃の条件で3本試験し、その最低値を吸収エネルギー(vE−60)とした。
ミクロ組織は、試験に供したシャルピー試験片の中央部から試験片の中央部から切出した断面を研磨した後、表面をナイタールで腐食して光学顕微鏡にて中心部から±2mmの領域を観察し、フェライト組織を同定して粒径ごとに各分率(個数割合)を求めた。なお、表5および6には示さないが、ミクロ組織を観察した同様の位置からTEM試料を採取し、TEMで確認したところ、フェライト組織内(フェライト粒内およびフェライト粒界)には微小なTi介在物(TiN)が存在していることが確認できた。
2 溶接ビード
3 2mmVノッチシャルピー試験片
Claims (1)
- 鋼板の組成が質量%で、
C:0.04〜0.08%、
Si:0.05〜0.25%、
Mn:0.8〜1.6%、
P:0.015%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.015〜0.05%、
Nb:0.005%未満、
Ti:0.008〜0.020%、
N:0.0045〜0.0070%、
O:0.0040%以下、
Cu:0〜0.40%、
Ni:0〜0.80%、
Cr:0〜0.20%、
Mo:0〜0.10%、
V:0〜0.08%、
B:0〜0.002%、
Ca:0〜0.005%、
残部はFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
下記式1で定義されるCeqが0.30〜0.40であり、
下記式2で定義されるNBTが0.010〜0.020であり、
板厚1/4の位置の金属組織において、
フェライト面積率が40〜70%であり、
前記フェライトの粒径分布において、
10μm未満のフェライトの個数割合が55〜80%であり、
10〜20μmのフェライトの個数割合が20〜45%であり、かつ、
20μmを超えるフェライトの個数割合が2%以下であり、
フェライト組織中にTi析出物が存在する、
HAZ靭性に優れる低降伏比厚鋼板。
Ceq=[C%]+[Mn%]/6+([Cu%]+[Ni%])/15+([Cr%]+[Mo%]+[V%])/5…(式1)
NBT=2×[Nb%]+[Ti%]…(式2)
(式1)、(式2)において[ ]付元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
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