JP2009132995A - 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度が3.5以上、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が0.7以上の集合組織を有し、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が―40℃以下で、好ましくは鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P、S、N:0.0050%以下、必要に応じてTi、Nb、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B、Ca、REMのいずれか1種、または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【選択図】図1
Description
1.脆性亀裂伝播停止特性の向上に有効な{100}<011>方位は圧延時にロールと圧延材間で発生するせん断歪の影響を受けて{110}<001>方位へ変化する。
2.せん断歪は、板厚が小さい場合には表層付近に発生するが、板厚が大きい場合には板厚1/4付近が最も高い値を示す。
3.その結果、厚肉材に二相域圧延を施した場合、板厚1/4部{100}<011>方位強度が低下し、{100}<011>方位の発達は板厚中央部付近だけに限られ、脆性亀裂伝播停止性能が低下する。
4.二相域圧延における圧延温度を特定し、累積圧下率、各パス毎の接触弧長(l)と圧延の入側板厚(h)の比(l/h)を特定することにより、厚肉材においても板厚1/4部{100}<011>方位強度を高めることが可能で、更に母材靭性を向上させることで優れた脆性亀裂伝播停止性能が達成される。
1.二相域圧延による集合組織を備えた構造用高強度厚鋼板であって、前記集合組織で板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と、板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度と、更に、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度を、所望する脆性亀裂伝播停止特性に応じて特定したことを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
2.板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度が3.5以上、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が0.7以上の集合組織を有し、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が―40℃以下であることを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
3.鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする2記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
4.鋼組成が、更に、質量%で、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする3に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
5.板厚が50mm超えであることを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
6.3または4に記載の組成を有する鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱し、板厚中央部の温度がAr3点以上の温度で累積圧下率30%以上、板厚中央部の温度が(Ar3点−10)℃以下、(Ar3点―50)℃以上の温度域において累積圧下率50%以上かつ、各パス毎の接触弧長(l)と圧延の入側板厚(h)の比(l/h)の平均値が0.8以上の圧延を行った後、2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
7.板厚が50mm超えであることを特徴とする6記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
1.板厚内部の集合組織
本発明は板厚方向の広い領域で、亀裂伝播停止特性の向上に有効な{100}<011>方位を発達させた集合組織を得ることを主眼とし、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度を所望する脆性亀裂伝播停止特性に応じて適宜規定する。
2.母材靭性
母材靭性が、良好な特性を有することが亀裂の進展を抑制するための前提となるので、本発明に係る鋼板では板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度も所望する脆性亀裂伝播停止特性に応じて適宜規定する。
説明において%は質量%とする。
Cは鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するためには0.03%以上の含有を必要とするが、0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、Cは、0.03〜0.20%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
Siは脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.03%未満の含有量ではその効果がない。一方、0.5%を越えると鋼の表面性状を損なうばかりか靭性が極端に劣化する。従ってその添加量を0.03%以上、0.5%以下とする。
Mnは、強化元素として添加する。0.5%より少ないとその効果が十分でなく、2.0%を超えると溶接性が劣化し、鋼材コストも上昇するため、0.5%以上、2.0%以下とする。
Alは、脱酸剤として作用し、このためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.08%を超えて含有すると、靭性を低下させるとともに、溶接した場合に、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、Alは、0.005〜0.08%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.02〜0.04%である。
Nは、鋼中のAlと結合し、圧延加工時の結晶粒径を調整し、鋼を強化するが、0.0050%を超えると靭性が劣化するため、0.0050%以下とする。
P,Sは、鋼中の不可避不純物であるが、Pは0.03%を超え、Sは0.01%を超えると靭性が劣化するため、それぞれ、0.03%以下、0.01%以下が望ましく、それぞれ、0.02%以下、0.005%以下がさらに望ましい。
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に析出し、高強度化に寄与する。また、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果をもち、フェライトの細粒化に寄与するので、靭性の改善にも有効である。その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要であるが0.05%を超えて添加すると、粗大なNbCが析出し逆に、靭性の低下を招くのでその上限は0.05%とするのが好ましい。
Tiは微量の添加により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。その効果は0.005%以上の添加によって得られるが、0.03%を超える含有は、母材および溶接熱影響部の靭性を低下させるので、Tiは、0.005〜0.03%の範囲にするのが好ましい。
Cu,Ni、Cr、Moはいずれも鋼の焼入れ性を高める元素である。圧延後の強度アップに直接寄与するとともに、靭性、高温強度、あるいは耐候性などの機能向上のために添加するが、過度の添加は靭性や溶接性を劣化させるため、それぞれ上限を0.5%、1.0%、0.5%、0.5%とする。逆に添加量が0.01%未満であるとその効果が現れないため、0.01%以上の添加とする。
Vは、V(CN)として析出強化により、鋼の強度を向上する元素であり、0.001%以上含有してもよいが、0.10%を超えて含有すると、靭性を低下させる。このため、Vは、0.001〜0.10%の範囲の添加する。
Bは微量で鋼の焼き入れ性を高める元素として添加してもよい。しかし、0.003%を超えて含有すると溶接部の靭性を低下させるので、Bは0.003%以下の添加とする。
Ca,REMは溶接熱影響部の組織を微細化し靭性を向上させ、添加しても本発明の効果が損なわれることはないので必要に応じて添加してもよい。しかし、過度に添加すると、粗大な介在物を形成し母材の靭性を劣化させるので、添加量の上限をそれぞれ0.005%、0.01%とするのが好ましい。
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5
(右辺の各元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示すものとする。)
3.製造条件
製造条件はスラブ加熱温度、熱間圧延におけるAr3点以上での累積圧下率、二相域での累積圧下率、および当該二相域における各パス毎の接触弧長(l)と圧延の入側板厚(h)の比(l/h)の平均値を、板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が所望の脆性亀裂伝播停止特性を得るために必要な値となるように適宜設定する。
Claims (7)
- 二相域圧延による集合組織を備えた構造用高強度厚鋼板であって、前記集合組織で板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度と、板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度と、更に、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度を、所望する脆性亀裂伝播停止特性に応じて特定したことを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
- 板厚中央部における圧延面での{100}<011>方位強度が3.5以上、かつ板厚1/4部における圧延面での{100}<011>方位強度が0.7以上の集合組織を有し、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が―40℃以下であることを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
- 鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項2記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
- 鋼組成が、更に、質量%で、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
- 板厚が50mm超えであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板。
- 請求項3または4に記載の組成を有する鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱し、板厚中央部の温度がAr3点以上の温度で累積圧下率30%以上、板厚中央部の温度が(Ar3点−10)℃以下、(Ar3点―50)℃以上の温度域において累積圧下率50%以上かつ、各パス毎の接触弧長(l)と圧延の入側板厚(h)の比(l/h)の平均値が0.8以上の圧延を行った後、2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
- 板厚が50mm超えであることを特徴とする請求項6記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板の製造方法。
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