JP2020094281A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
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また、特許文献3や、入熱量230kJ/cmの溶接ボンド部での靭性改善を目指した特許文献4には、希土類元素(REM)をTiと複合添加することにより、鋼中に微細粒子を分散させてオーステナイトの粒成長を防止し、ボンド部の靭性向上を図る方法が示されている。
さらに、Tiの酸化物を分散させた技術やBNのフェライト核生成能を組み合わせたボンド部の靭性向上策技術も開発されている。この他、CaやREMを添加することで硫化物の形態を制御し、より高靭性のボンド部を得られることが知られている。
しかし、この方法は、限られたスペースに配置されているデスケーリング装置を、本来の目的とは異なる用途にまで拡大して用いている。そのため、大幅な能力増強を目指した改造が必要となる等、エンジニアリング上の制約がある。さらには熱履歴の影響を受けやすいフェライト組織の不安定性を根本的に解決するには至っていない方法と考えられる。
しかし、V化合物の適切な析出には、プロセスを一層複雑にすることが必要となるため、上述した組織の不安定性の解決には必ずしも結びつかないと考えられる。
すなわち、TiNを主体に利用する技術では、ボンド部においてTiNが溶解する温度域に加熱されるので、オーステナイトの粗大化抑制やフェライト変態核としての作用がなくなるだけでなく、固溶TiやNの生成によって他の組織の脆化が起こり、著しい靭性の低下が見られるという問題があった。また、CaやREMを添加する、上記の特許文献3や4に開示された技術においても、TiNを主体に利用する技術と同様の現象が生じて大入熱溶接でのボンド部の高靭性を確保することは困難であるという問題があった。さらに、Tiの酸化物を使った技術では、酸化物の微細分散が十分均質にできないという問題があった。
かかる検討を鋭意重ねた結果、以下に述べるように、塑性変形を受けた後にも優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する鋼板と、当該鋼板を安定して得ることができる製造方法とを完成するに至った。
まず、靭性の向上手法としては、フェライト相およびパーライト相を主体の組織とする鋼材において、フェライトおよびパーライト結晶粒の細粒化が有効な手段であることを確認した。ここで言うフェライト相およびパーライト相が主体とは、フェライト相およびパーライト相が面積率で50%以上を占めことである。また、本発明の鋼板の組織の残部は、通常の鋼板で認められる組織であれば特に限定されない。残部組織としては、ベイナイト又は/及びマルテンサイト等が挙げられる。
その結果、ボンド部の靭性は脆化組織に影響されること、そして、この脆化組織は硫化物の形態制御の役割を担うCaの添加方法を制御することにより大きく改善できることをそれぞれ知見した。
かかるMnSにはフェライト核生成能があることが知られているが、さらに、その周囲にMnの希薄帯を形成するとフェライト変態が促進されることを知見した。また、MnS上にTiN、BN、AlN等のフェライト生成核が析出することによって、より一層、フェライト変態が促進されることを併せて知見した。
これらの知見から、発明者らは、高温でも溶解しないフェライト変態生成核を微細分散させることに成功し、ボンド部の組織微細化および高靭性化を可能ならしめた。
1.質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.015%以下,S:0.010%以下、Nb:0.003〜0.017%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0035〜0.0075%、Ca:0.0005〜0.0030%およびB:0.0005〜0.0020%含有し、かつ、Ca,OおよびSが、以下の(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライトおよびパーライトを主体とする組織とを有し、前記組織は、板厚1/2部における{100}<011>方位強度が5.5以上および、該板厚1/2部におけるフェライト相およびパーライト相の結晶粒の10%以上がアスペクト比:2以上かつ短軸径:5μm以下であり、10%の歪を付与後の該鋼板のKca(−10℃)が6000N/mm1.5以上で、ボンド部のシャルピー靱性値がvTrs≦−30℃である鋼板。
0<([Ca%]−(0.18+130×[Ca%])×[O%])/1.25/[S%]<1 ・・・(1)
ただし、[Ca%],[O%],[S%]は各成分(Ca,OおよびS)の鋼中含有量(質量%)をあらわす。
まず、本発明において鋼の成分組成を限定する理由を説明する。なお、成分組成に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
Cは、鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するために0.03%以上の含有を必要とする。一方、C含有量が0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、C含有量は、0.03〜0.20%とする。なお、C含有量は0.04〜0.15%とすることが好ましい。
Siは、脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、含有量が1.0%を超えると、鋼の表面性状を損なうばかりか、靭性が極端に劣化する。従って、Si含有量は1.0%以下とする。なお、Si含有量は0.03〜0.70%とすることが好ましい。
Mnは、フェライト組織の強度を高める強化元素として含有される。Mn含有量が1.0%より少ないとその効果が十分でない。一方、Mn含有量が2.0%より多くなると溶接性が劣化することに加え、鋼材コストも上昇する。そのため、本発明でのMn含有量は、1.0〜2.0%とする。
Pは、鋼中の不可避的不純物であり、含有量が多くなると靭性が劣化してしまう。そのため、本発明では、板厚が50mmを超えるような鋼板においても良好な靭性を保つために、P含有量を0.015%以下とする。P含有量は0.010%以下とすることが好ましく、0.006%以下とすることがより好ましい。一方、下限については0%であってもよいが、低減させる毎にコストが高くなる。そこで、高コストとならない範囲で低減できる濃度の0.005%を下限とするのが好ましい。
Sは、鋼中の不可避的不純物であり、含有量が多くなると靭性が劣化してしまう。そのため、良好な靭性を保つために、S含有量を0.010%以下に抑制する。S含有量は0.005%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすることがより好ましい。一方、下限については、Pと同様に、0%であってもよいが、高コストとならない範囲で低減できる濃度の0.0005%を下限とすることが好ましい。
Alは、脱酸材として添加される元素であり、その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要である。一方、Al含有量が0.08%を超えると、靭性が低下するとともに、溶接した場合に溶接金属部の靭性が低下する。このため、Al含有量は、0.005〜0.08%とする。なお、Al含有量は、0.020〜0.06%とすることが好ましい。
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に鋼組織に析出し、鋼の高強度化に寄与する。また、Nbは、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果を有し、フェライトの細粒化に寄与するので、鋼の靭性の改善にも有効である。その効果は0.003%以上の含有により発揮される。一方、0.017%を超えて含有すると、粗大なNbCが析出することにより、かえって靭性の低下を招く。そのため、Nb含有量は0.003〜0.017%とする。
Tiは、微量の含有により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。そのために、Tiは0.005%以上で含有させる。一方、Ti含有量が0.02%を超えると、鋼板および溶接熱影響部における靭性が低下する。そのため、Ti含有量の上限は0.02%とする。なお、Ti含有量は0.005〜0.017%とすることが好ましい。
Nは、TiNの必要量を確保するために必要な元素で、0.0035%未満では十分なTiN量が得られない。一方、Nは0.0075%を超えると、溶接熱サイクルによってTiNが溶解する領域において固溶N量が増加し、鋼板の靭性を著しく低下させる。そのため、N含有量は0.0035〜0.0075%とする。
Caは、溶接熱影響部の組織を微細化して鋼板の靭性を向上させる効果を有する元素であり、かかる効果を十分に得るためにはCa含有量を0.0005%以上とする。一方、過度にCaを含有すると、粗大な介在物を形成して母材の靭性を劣化させる。そのため、Ca含有量は0.0030%以下とする。
Bは、微量で鋼の焼入れ性を高める効果を有する元素であり、良好な焼入れ性を得るという観点からは、B含有量を0.0005%以上とする。一方、B含有量が0.0020%を超えると、溶接部の靭性が低下する。そのため、B含有量は0.0005〜0.0020%とする。
かかる(1)式を満たさない場合は、フェライト変態を促進する効果が得られないからである。
0<([Ca%]−(0.18+130×[Ca%])×[O%])/1.25/[S%]<1 ・・・(1)
ただし、[Ca%],[O%],[S%]は各成分(Ca,OおよびS)の鋼中含有量(質量%)をあらわす。
Cuは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性や、高温強度、耐候性などの鋼の機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Cuを含有する場合、その範囲は0.01〜0.5%とする。
Niは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性や、高温強度、耐候性などの鋼の機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮される。一方、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させることに加え、合金のコスト増加を招く。そのため、Niを含有する場合、その範囲は0.01〜1.5%とする。
Crは、Cuと同様に、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性や、高温強度、耐候性などの鋼の機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Crを含有する場合、その範囲は0.01〜0.5%とする。
Moは、CuやCrと同様に、鋼の焼入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靭性や、高温強度、耐候性などの鋼の機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靭性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Moを含有する場合、その範囲は0.01〜0.5%とする。
Vは、V(CN)として析出する析出強化によって、鋼の強度を向上させる元素である。この効果はVを0.001%以上含有させることにより発揮される。一方、Vは0.15%を超えて含有すると、かえって靭性が低下する。このため、Vを含有させる場合には、その範囲を0.001〜0.15%とする。
REM(希土類金属)は、Caと同様に、溶接熱影響部の組織を微細化して靭性を向上させる効果を有する元素であり、適量の含有であれば本発明の効果に寄与する。したがって、任意にREMを含有させることができる。しかし、過度にREMを含有すると、粗大な介在物を形成して母材の靭性を劣化させる。そのため、REMを含有させる場合には、その含有量を0.0100%以下とする。一方、REM含有量の下限は特に限定されないが、当該含有効果を十分に得るためにはその含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
本発明では、圧延方向、または圧延直角方向など板面に平行な方向に伝播する亀裂に対する脆性亀裂伝播停止特性を向上させるために、鋼板の板厚1/2部において、{100}<011>方位の組織を、集合組織が発達していない、いわゆるランダムな場合の組織と比較して、5.5倍以上に集積させる(本発明において{100}<011>方位強度が5.5以上ともいう)、集合組織とすることが肝要である。すなわち、板厚1/2部において、{100}<011>方位粒を発達させると、亀裂進展する向きに対してへき開面が効果的に斜めに揃うため、亀裂進展の抵抗となる。
本発明における鋼板の組織はフェライトおよびパーライトが主体の組織とする。フェライトおよびパーライトが主体とは、フェライト相およびパーライト相の合計が面積率で50%以上望ましくは70%以上を占め、残部の組織は、ベイナイト又は/及びマルテンサイトの相とするのが好ましい。フェライト相およびパーライト相が100%であってもよいのは勿論である。なお、フェライト相およびパーライト相の比率は特に限定する必要はなく、圧延および冷却条件によって種々変化するが、両者の合計比率が70%以上であればよい。このように組織を規定したのは、大型構造物に多用される400MPa級から510MPa級の引張強度を確保するのに適した組織だからである。なお、かかるフェライト相およびパーライト相以外の組織の面積率は30%未満程度とする。
ここで、アスペクト比は結晶粒の長軸と短軸の比である。長軸とは結晶粒の最も長い径を言い、短軸とはその長軸に対して垂直の幅のうち最も大きな幅を言う。以上の規定を満足する結晶粒の存在比率は、以下に述べる実施例に記載した方法で求めることができる。
なお、上記アスペクト比、上記短軸径、および上記フェライト相の面積率は、後述する実施例に記載した方法でそれぞれ得ることができる。
本発明は、上記のように成分組成と組織とを制御することにより、優れた靭性を有する高強度の鋼板を得ることができる。鋼板が優れた靭性を有することは、亀裂の進展を抑制する上で重要である。具体的には、一般的に鋼板中で最も低い靱性を示す板厚1/2部での、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギー:vE(−40℃)を250J以上とすることが好ましく、280J以上とすることがより好ましく、300J以上とすることがさらに好ましい。一方、前記vE(−40℃)の上限は特に限定されないが、吸収エネルギーの上部棚の観点から、420J以下であってよく、400J以下であってもよい。
上述したように、本発明の鋼板においては、組織の制御、すなわち結晶粒の微細化による靭性向上を図ることによって、塑性変形を受けた後にもKca(−10℃)が6000N/mm1.5以上という、優れた脆性亀裂伝播停止特性を実現することができる。
本発明は、ボンド部のシャルピー靱性値がvTrs≦−30℃となることが重要である。というのは、ボンド部が最も脆化しやすいためである。
本発明の鋼板の引張強さ(TS)は、400MPa級から510MPa級とするのが望ましい。なぜなら、本発明の効果が最も得られる引張強さだからである。
本発明の鋼板の板厚は10〜45mmの範囲とすることが望ましい。なぜなら、本発明の効果が最も得られる板厚だからである。
次に、本発明における鋼板の製造方法の一実施形態を例示して説明する。
本発明の鋼板は、上述した成分組成を有する鋼素材を特定の条件で熱間圧延することによって製造することができる。具体的には、次の(a)から(c)の工程を順に行うことが肝要である。
(a)鋼素材に、Ac3点以上1000℃以下に加熱を行う工程。
(b)ついで、(Ar3点−5℃)以下、(Ar3点−150℃)以上の温度域にて、1パス当たりの圧下率の平均値が4%以上かつ累積圧下率50%以上の熱間圧延を行う工程。
(c)さらに、冷却速度5℃/s以上で600℃以下の温度域まで冷却する工程。
(d)Ac1点以下の温度域での焼戻しを行う。具体的には、Ac1点以下の任意の焼戻し温度より100℃以上低い温度まで冷却した鋼板を、再び昇温しAc1点以下の温度で焼戻す工程。なお、焼戻し温度の下限は特に限定する必要はないが、焼戻し処理の効果を得る の観点から200℃とすることが好ましい。
(e)オーステナイト域(具体的にはAr3点−5℃超〜前記(a)工程における加熱温度以下)で累積圧下率30%以上98%以下の圧下を加える工程。
加熱温度:Ac3点以上、1000℃以下
熱間圧延に先立って、上記成分組成を有する鋼素材を加熱する。その際、加熱温度がAc3点未満では、フェライト−オーステナイト2相組織になってしまい、板全体が不均一な組織となり、その後の圧延工程で所期する効果を十分に得ることができない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化し、本発明で求めている結晶粒の形状を実現することができない。そのため、鋼素材の加熱温度はAc3点以上、1000℃以下とする。なお、鋼板の靭性向上の観点からは、前記加熱温度を(Ac3点+10)℃以上、980℃以下とすることが好ましく、950℃以下とすることがさらに好ましい。
次いで、前記(b)の熱間圧延工程を行う。この熱間圧延工程においては、(Ar3点−5℃)以下から(Ar3点−150℃)以上の温度域にて、1パス当たりの圧下率の平均値が4%以上累積圧下率50%以上の圧延を行う。
また、累積圧下率を50%以上とする理由は、50%未満になると、板厚1/2部のL断面における結晶粒の10%以上がアスペクト比:2以上でかつ短軸径:5μm以下である、との目標値のいずれかを達成することができないためである。また、板厚1/2部における{100}<011>方位強度を5.5以上とするためにも、累積圧下率は50%以上とする必要がある。なお、前記累積圧下率の上限は特に限定されないが、靭性の低下を避けるという観点からは、80%以下とすることが好ましい。
冷却速度:5℃/s以上
冷却停止温度:600℃以下
熱間圧延が終了した鋼板は、熱間圧延時に得られた集合組織の保持という観点から、5℃/s以上の冷却速度で、600℃以下の冷却停止温度まで冷却する。なお、上記冷却速度の上限は特に限定されないが、製造コスト等の観点から50℃/s以下とすることが好ましい。また、上記冷却停止温度の下限は特に限定されないが、製造コスト等の観点から0℃以上とすることが好ましい。
焼戻温度:Ac1点以下
本発明では、前記冷却工程の後に、焼戻温度:Ac1点以下での焼戻処理を行うことができる。その焼戻処理の際は、当該焼戻し温度より100℃以上低い温度まで冷却した鋼板を、再び昇温し、Ac1点以下の温度で焼戻しを行うことが好ましい。焼戻温度がAc1点より高いと、圧延時に発達させた集合組織が失われる場合があるためである。焼戻し温度の下限は特に限定されないが、かかる焼戻しの効果を得るために350℃以上とすることが好ましい。
なお、以上の説明における鋼板の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度とする。
また、Ac3点、Ar3点およびAc1点については、下記の経験的な簡易式(式1、式2および式3)により求めることができる。なお、式中[元素記号]は、当該元素記号の元素の鋼中の成分組成量(%)である。また、式2中のtは鋼板の板厚(mm)とする。
表1に、供試鋼の化学成分を示す。これらの化学成分を有する鋼スラブから、板厚10〜45mmの鋼板にする熱間圧延を行い、得られた鋼板の特性を評価した。供試鋼板の製造条件を表2に示す。本表には、計算より求めたAc3点及びAr3点温度も併せて示す。
得られた鋼板の靭性を評価するために、シャルピー衝撃試験を行って、各鋼板の板厚1/2部の−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE(−40℃)を測定した。前記シャルピー衝撃試験には、JIS(日本工業規格)に規定された4号衝撃試験片(長さ55mm、幅10mm、厚さ10mm)を用い、前記試験片は、該試験片の長手方向が鋼板の圧延方向と平行となるように、また、該試験片の厚さの1/2位置が採取元の鋼板の厚さの1/2位置になるように採取した。なお、厚さが10mmの鋼板については、表面のスケール(黒皮)を除去してそのまま試験片とした。
得られた鋼板の任意の箇所から、試験片の長手方向が圧延方向と垂直に、また試験片の中央が鋼板の板厚1/2部になるように、JIS 14B号試験片を採取した。前記試験片を用いて、JIS Z2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張強さ(TS)を求めた。
得られた鋼板の集合組織を評価するため、板厚1/2部における{100}<011>方位強度を、以下の方法で測定した。まず、板厚1/2部を含む厚さ1mmのサンプルを採取した。次いで、採取されたサンプルの板面に平行に機械研磨・電解研磨を施し、板厚1/2部を研磨面とし、X線回折用の試験片とした。
得られた試験片のそれぞれについて、Mo線源を用いたX線回折装置を使用してX線回折測定を実施し、(200)、(110)、および(211)正極点図を求めた。得られた正極点図から3次元結晶方位密度関数を算出することによって、{100}<011>方位強度のランダム強度に対する比を算出した。
板厚方向および圧延方向に平行な面で板厚1/2部を含む試料を採取した。ついで、前記試料の表面を鏡面研磨して板厚1/2部を研磨面とした後、エッチングによりかかる研磨面の金属組織を現出させた。ついで、該金属組織の光学顕微鏡写真を撮影し、求積法に準拠してフェライト相およびパーライト相の面積率を求めた。さらに、上記金属組織における結晶粒の個数および、該結晶粒のアスペクト比および短軸径を求めて、アスペクト比が2以上でかつ短軸径が5μm以下となる結晶粒の割合を算出した。なお、結晶粒のアスペクト比および短軸径の測定は、前記試料の光学顕微鏡写真における板厚1/2部を中心とする500×500μmの領域において、画像解析により、該領域内の各結晶粒の短軸および長軸の長さを求めて、上記した範囲の結晶粒の存在比率を求めた。
脆性亀裂伝播停止特性を評価するため、圧延ままの鋼材と10%予歪を与えた鋼材について、温度勾配型標準ESSO試験を行い、前記鋼板の0℃および−10℃におけるKca値を求めた。なお、前記温度勾配型ESSO試験には、全厚のまま供した。
鋼板から採取した継手用試験板にV開先加工を施し、溶接入熱50〜500kJ/cmの大入熱溶接継手を作製した。得られた溶接継手から切欠位置をボンドとするJIS4号衝撃試験片を板厚1/2部より採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、延性-脆性破面遷移温度(vTrs)を求めた。なお、厚さが10mmの鋼板については、表面のスケール(黒皮)を除去して試験片とした。
Claims (4)
- 1.質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.015%以下,S:0.010%以下、Nb:0.003〜0.017%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0035〜0.0075%、Ca:0.0005〜0.0030%およびB:0.0005〜0.0020%含有し、かつ、Ca、OおよびSが、以下の(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライトおよびパーライトを主体とする組織とを有し、前記組織は、板厚1/2部における{100}<011>方位強度が5.5以上および、該板厚1/2部におけるフェライト相およびパーライト相の結晶粒の10%以上がアスペクト比:2以上かつ短軸径:5μm以下であり、10%の歪を付与後の該鋼板のKca(−10℃)が6000N/mm1.5以上で、ボンド部のシャルピー靱性値がvTrs≦−30℃である鋼板。
0<([Ca%]−(0.18+130×[Ca%])×[O%])/1.25/[S%]<1 ・・・(1)
ただし、[Ca%]、[O%]、[S%]は各成分(Ca,OおよびS)の鋼中含有量(質量%)を表す。 - 質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.5%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.15%およびREM:0.0100%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1に記載の鋼板。
- 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材に、少なくとも、Ac3点以上、1000℃以下に加熱を行う(a)工程と、次いで、(Ar3点−5℃)以下、(Ar3点−150℃)以上の温度域にて、1パス当たりの圧下率の平均値が4%以上かつ累積圧下率50%以上の圧延を行う(b)工程と、その後、冷却速度5℃/s以上で600℃以下の温度域まで制御冷却する(c)工程とを有する鋼板の製造方法。
- 前記(c)工程の後に、Ac1点以下の温度域での焼戻しを行う請求項3に記載の鋼板の製造方法。
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