JP3633330B2 - 自動車の側突用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の側面衝突の際に、シートバックに設けたエアバッグを展開させることにより、車体側壁から受ける衝撃荷重を緩和して乗員を保護することができる自動車の側突用エアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエアバッグ装置としては、車両の側突時に、シートバックの車外側端部からエアバッグを前方へ展開させ、該エアバッグにより乗員を保護するようになっている(類似技術として特開平9−136598号公報参照)。
【0003】
この種のエアバッグ装置は、エアバッグモジュールの前方に、表皮シートのメインサイド部とマチ部を縫製した縫製部が位置している。該マチ部の内側には、強度が該マチ部以上で且つ伸縮性が該マチ部以下の補強シートが設けられている。そして、この補強シートの他端を固定すると共に、一端を前記縫製部において、メインサイド部及びマチ部と一緒に縫製している。側突時には、エアバッグモジュールのエアバッグが膨張して補強シートを押すため、この伸縮性が小さな補強シートを介してエアバッグの膨張力が縫製部に直接加わり、縫製部での開裂を促進させる。そして、縫製部の開裂した部分からエアバッグを前方へ展開させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、補強シートによりエアバッグの膨張力を縫製部に直接伝えて開裂させる構造になっているものの、縫製部の開裂を確実なものにするため、弱い強度の縫製糸を用いたり、縫製部のピッチ(縫う間隔)を広げたりして縫製強度を低下させる必要がある。そのため、縫製作業の途中で縫製糸が切れるおそれがある。また、縫製ピッチが広がったことにより、シートの通常使用時に縫製部がほつれるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、縫製強度を向上させつつ、縫製部を確実に開裂させることができる自動車の側突用エアバッグ装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シートバックの側端部にエアバッグモジュールが設けられ、該エアバッグモジュールの前方に表皮シートのメインサイド部とマチ部とを縫製した縫製部が位置していて、該マチ部の内側に補強シートが設けられ、該補強シートの他端を固定すると共に一端を前記縫製部において前記マチ部と一緒に縫製し、側突時にエアバッグモジュールのエアバッグが膨張して前記縫製部を開裂させ、該縫製部からエアバッグを前方へ展開させる自動車の側突用エアバッグ装置であって、前記補強シートには、該補強シートの前記一端の側から所定長さのスリットを形成してなる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記補強シートには、該補強シートの一端の側から所定長さのスリットが形成されているため、補強シートに対してエアバッグの膨張力が加わった際に、スリットが上下に押し拡げられる。すると、縫製部のうち、スリットに対応する部分が上下に伸びて応力が集中するため、その部分の縫製糸が切れ、その部分から上下方向に向けて連鎖的な開裂がはじまる。従って、縫製強度を向上させ、縫製部を確実に開裂させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記補強シートの伸縮性が、前記マチ部の伸縮性よりも小さくなっている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記補強シートの伸縮性が前記マチ部の伸縮性よりも小さいため、補強シートに対してエアバッグの膨張力が加わった際にスリットの部分に集中する応力が高まり、より確実に縫製部が開裂できるため、更に縫製強度を向上させつつ、縫製部を確実に開裂させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記補強シートのスリットは、エアバッグモジュールの略上下中心に対応する位置に形成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記補強シートのスリットがエアバッグモジュールの略上下中心に対応する位置に形成されているため、開裂の始点(スリット位置)と、エアバッグの中心が合致し、エアバッグが早く前方へ展開する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、スリットの他端側の端末付近に裂けを抑制する縫付部を設けた。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、スリットの他端側の端末付近に裂けを抑制する縫付部が設けられているため、補強シートにエアバッグの膨張力が加わった場合に、スリットの他端側の端末付近を超えて補強シートが裂け過ぎるのを抑制する。補強シートが裂け過ぎと、膨張力を受け止めて縫製部に加えるという補強シート本来の機能が阻害される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、補強シートの他端がシートバックのフレームに固定されている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、補強シートの他端をシートバックのフレームに固定したため、該縫製部の固定作業が容易である。
【0016】
【発明の効果】
この発明によれば、前記補強シートには、該補強シートの一端の側から所定長さのスリットが形成されているため、補強シートに対してエアバッグの膨張力が加わった際に、スリットが上下に押し拡げられる。すると、縫製部のうち、スリットに対応する部分が上下に伸びて応力が集中するため、その部分の縫製糸が切れ、その部分から上下方向に向けて連鎖的な開裂がはじまる。従って、縫製強度を向上させ、縫製部を確実に開裂させることができる。また、前記補強シートの伸縮性が前記マチ部の伸縮性よりも小さくすると、補強シートに対してエアバッグの膨張力が加わった際にスリットの部分に集中する応力が高まり、より確実に縫製部が開裂できるため、更に縫製強度を向上させつつ、縫製部を確実に開裂させることができる。また、前記補強シートのスリットがエアバッグモジュールの略上下中心に対応する位置に形成すると、開裂の始点(スリット位置)と、エアバッグの中心が合致し、エアバッグが早く前方へ展開する。また、スリットの他端側の端末付近に裂けを抑制する縫付部を設けると、補強シートにエアバッグの膨張力が加わった場合に、スリットの他端側の端末付近を超えて補強シートが裂け過ぎるのを抑制する。補強シートが裂け過ぎと、膨張力を受け止めて縫製部に加えるという補強シート本来の機能が阻害される。また、補強シートの他端をシートバックのフレームに固定すれば、該縫製部の固定作業が容易である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図中、符号1は、右側フロントシートのシートバックを示すものであり、このシートバック1の車外側(右側)の端部には、エアバッグモジュール2が設けられている。このエアバッグモジュール2内には、膨張して前方へ展開するエアバッグ3と、該エアバッグ3内にガスを噴出するためのインフレータ4が内蔵されている。エアバッグ3は隔壁シート5により下側の胸部保護部6と上側の頭部保護部7に区画されている。隔壁シート5には、インフレータ4から胸部保護部6内に噴出されたガスを頭部保護部7側へ導入するための通気孔8が形成されている。
【0018】
前記シートバック1は、シートバックフレーム9と、図示せぬパッドから形成されており、表面は表皮シート10により覆われている。表皮シート10は、図3に示すように、主にメインサイド部11と、マチ部12とにより覆われていて、エアバッグモジュール2の前方には、メインサイド部11とマチ部12との対応部同士を縫製した縫製部Hが位置している。また、マチ部12の内側には、強度がマチ部12以上で且つ伸縮性がマチ部12以下の補強シート13が設けられ、該補強シート13の他端はシートバックフレーム9にボルト・ナット手段14により固定され、一端は縫製部Hに一緒に縫製されている。補強シート13の他端をシートバック1の後方のシートバックフレーム9に固定するため、該補強シート13の固定作業が容易である。
【0019】
そして、この補強シート13の一端の側からは、他端側へ向けて所定長さを有するスリットSが形成されている。このスリットSの位置は、エアバッグモジュール2の略上下中心に対応する位置に合致している。また、スリットSの他端側の端末付近には、裂けを抑制する縫付部15が形成されている。すなわち、スリットSが裂け過ぎると、膨張力を受け止めて縫製部Hに加えるという補強シート13本来の機能が阻害されるため、この縫付部15により、スリットSの裂け過ぎを抑制している。
【0020】
本実施の形態では、スリットSが補強シート13の一端の側から形成されているが、一端を少し残して、一端側からスリットSを形成しても、一端の少し残した部分が、エアバッグ3の膨張力で容易に裂けてしまう幅であれば本発明の範囲内である。また、スリットSの他端側の端末付近に縫付部15が形成されているが、スリットSの他端からスリットSの形成されていない側へ多少離れて縫付部15を形成しても良い。
【0021】
次に、エアバッグ3が展開する状態を説明する。車両が側面衝突を起こすと、その状態をセンサーが感知し、インフレータ4が点火し、該インフレータ4からエアバッグ3内に高圧のガスが噴出される。このガスによりエアバッグ3が膨張し、その膨張力が補強シート13に加わる。補強シート13は伸縮性がほとんどないため、受けた膨張力をそのまま縫製部Hに伝達する。また、それと同時に、スリットSが形成されていることにより、スリットSが上下に押し拡げられる(図2参照)。すると、縫製部Hのうち、スリットSに対応する部分が上下に伸びて応力が集中するため、図4に示すように、その部分の縫製糸16が切れ、その部分から縫製部Hの上下方向に向けた連鎖的な開裂がはじまる。このように、縫製部Hの一部に開裂始点となる縫製糸16の切れが生じるため、弱い強度の縫製糸16を用いたり、縫製部Hのピッチを広げたりすることなく、縫製部Hを確実に開裂させることができる。
【0022】
しかも、その開裂始点がエアバッグモジュール2の略上下中心に対応する位置に合致しているため、この開裂始点とエアバッグモジュール2から前方へ展開するエアバッグ3の中心とが合致し、エアバッグ3が縫製部Hから早く前方へ展開するようになる。具体的には、エアバッグ3の胸部保護部6が縫製部Hからまず前方へ展開し、その後、頭部保護部7が上方へ展開する。
【0023】
尚、この実施形態では、補強シート13の他端を、シートバックフレーム9に固定したが、マチ部12の後方に縫製して固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るエアバッグ装置を搭載したシートバックの側面図。
【図2】エアバッグが前方へ展開した状態を示すシートバックの側面図。
【図3】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図4】スリットにより縫製糸が切れる状態を示す縫製部の拡大断面図。
【符号の説明】
1 シートバック
2 エアバッグモジュール
3 エアバッグ
4 インフレータ
9 シートバックフレーム
11 メインサイド部
12 マチ部
13 補強シート
15 縫付部
16 縫製糸
H 縫製部
S スリット
Claims (5)
- シートバックの側端部にエアバッグモジュールが設けられ、該エアバッグモジュールの前方に表皮シートのメインサイド部とマチ部とを縫製した縫製部が位置していて、該マチ部の内側に補強シートが設けられ、該補強シートの他端を固定すると共に一端を前記縫製部において前記マチ部と一緒に縫製し、側突時にエアバッグモジュールのエアバッグが膨張して前記縫製部を開裂させ、該縫製部からエアバッグを前方へ展開させる自動車の側突用エアバッグ装置であって、
前記補強シートには、該補強シートの前記一端の側から所定長さのスリットを形成してなることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項1に記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって、前記補強シートの伸縮性が、前記マチ部の伸縮性よりも小さいことを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。
- 請求項1又は請求項2に記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって、
前記補強シートのスリットは、前記エアバッグモジュールの略上下中心に対応する位置に形成されてなることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項1〜請求項3何れかに記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって
前記スリットの他端側の端末付近には、裂けを抑制する縫付部を設けてなることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって、
前記補強シートの他端は、シートバックのフレームに固定されてなることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。
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JP36515298A Expired - Fee Related JP3633330B2 (ja) | 1998-12-22 | 1998-12-22 | 自動車の側突用エアバッグ装置 |
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