JP3633019B2 - 内燃機関用スパークプラグ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,内燃機関用スパークプラグに関する。
【0002】
【従来技術】
自動車などに使用される内燃機関においては,環境問題あるいは地球資源問題に対するグローバルな立場から,燃費低減が強力に推進されてきている。その具体的手段として,特にガソリンエンジンにおいては,混合気の高圧縮化,希薄混合気によるリーンバーン化等により対応がなされている。
【0003】
そこで,近年においては,点火システムの信頼性向上のために,ディストリビュータを使わないDLIシステム,ユニット点火システム及びダイオード分配点火システムが採用されてきている。そして,上記DLIシステム等の点火システムに対応する内燃機関用スパークプラグが種々提案されている。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の内燃機関用スパークプラグにおいては,次の問題がある。
即ち,従来のディストリビュータ点火方式でのスパークプラグは中心電極がマイナス電位の状態での放電(マイナス放電)だけであったのに対し,上記DLIシステム等においては,1個の点火コイルによって2つのスパークプラグを同時に放電させるため,一方のスパークプラグは中心電極がプラス電位の状態で放電(以下,プラス放電という)し,他方のスパークプラグは中心電極がマイナス電位の状態で放電(以下,マイナス放電という)する。
【0005】
この場合,プラス放電あるいはマイナス放電の違いによって,電極の消耗に与える影響が異なる。即ち,マイナス放電の場合には中心電極の消耗量が大きく,プラス放電の場合には接地電極の消耗量が大きくなる。このように,従来のマイナス放電用として設定されたスパークプラグを上記DLIシステムで使用するとマイナス放電に比べプラス放電の電極消耗が大きくなり,放電電圧が上昇し,最悪の場合には失火を生じてしまう。
【0006】
さらに,従来のスパークプラグにおいては,プラス放電に必要な放電電圧は,マイナス放電に必要な放電電圧に比べて高くなる。そのため,プラス放電するスパークプラグは,マイナス放電するスパークプラグよりも劣化が早くなる。それ故,一つの内燃機関に使用される複数のスパークプラグのうち,プラス放電に使用されたスパークプラグはマイナス放電に使用されたものに比べて早期に交換しなければならない等の不具合が生ずる。
【0007】
この対策として,スパークプラグをマイナス放電またはプラス放電専用にすることが考えられる。しかし,一つの内燃機関に対して複数の種類のスパークプラグを適用させるのはコストアップにつながるだけでなく,プラス放電用とマイナス放電用とを逆装着すれば電極の消耗を促進させる結果となり,妥当でない。
【0008】
上記不具合を低減させるスパークプラグとしては,接地電極を2極構造としたスパークプラグがある。接地電極を2極構造としたスパークプラグとしては,特開平5−129063号公報に示されているが,接地電極を2極構造としたのみでは,十分に対策を行うことができない。
【0009】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,プラス放電,マイナス放電いずれの場合であっても,電極消耗量がほぼ同等の低レベルであり,長寿命の,内燃機関用スパークプラグを提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
本発明は,貫通孔を有する絶縁碍子と,上記貫通孔に保持された中心電極と,上記絶縁碍子を保持するハウジングと,該ハウジングに設けられた接地電極とよりなり,該接地電極と上記中心電極の側面との間には火花ギャップを構成している内燃機関用スパークプラグにおいて,
上記中心電極は,上記接地電極の放電部との対向面には貴金属チップを配設してなり,該貴金属チップは,Irが0〜30重量%,Niが0〜10重量%,残部PtであるPt−Ir−Ni合金からなり,
また上記接地電極はニッケル基合金よりなり,該ニッケル基合金は,Mn,Cr,Si,Al,Fe,Ti,Yのグループから選択される少なくとも1種以上の添加物を合計6重量%以下含有してなり,
また,上記中心電極における上記貴金属チップの総計チップ面積をT(mm2 ),上記貴金属チップにおけるNi含有量をX(重量%)とし,
一方上記接地電極における上記中心電極と対面する総計端表面積をS(mm2 )としたとき,
T≦5(mm2 ),
5≦S≦15(mm2 ),
X≦10(重量%),
1.54T−0.53X+5.87≦S≦7.21T−1.43X+3.81
の関係を有することを特徴とする内燃機関用スパークプラグにある。
【0011】
本発明において最も注目すべきことは,上記中心電極は,上記組成の貴金属チップを配設してなり,また上記接地電極は上記組成のニッケル基合金よりなり,また,上記貴金属チップの総計チップ面積T,上記Ni含有量X,上記総計端表面積Sが上記の関係を有することである。
【0012】
上記貴金属チップにおいて,Irの含有量が30重量%を越える場合には,貴金属チップの硬度が高くなり,加工性が悪くなるという問題がある。
また,Irの下限値は3重量%とすることが好ましく,これ未満では貴金属チップの強度が低下し,熱応力により亀裂等が発生しやすくなるという問題がある。
【0013】
また,貴金属チップの成分において,Niの含有量が10重量%を越える場合には,貴金属合金の融点が低下し,耐消耗性が低下するという問題がある。これは,Niの含有量が10重量%を越えると,合金の再結晶温度が低下し,使用中に結晶粒が粗大化して脱落するためであると考えられる。
また,Niの下限値は1重量%とすることが好ましく,これ未満ではNi基合金との熱膨張差を緩和することができず,熱応力による貴金属チップの剥離等の問題を生ずるおそれがある。
【0014】
一方,上記接地電極において,上記Mn,Cr等の添加物の含有量が合計6重量%を越える場合には,プラス放電時における接地電極の消耗量が急激に増加するという問題がある。尚,上記添加物は,主に耐高温酸化性,強度,加工性の向上を目的として添加してある。
また,上記添加物の含有量の下限は1重量%とすることが好ましい。1重量%未満では強度,耐酸化性が急激に悪化するという問題を生ずるおそれがある。
【0015】
また,上記貴金属チップの総計チップ面積Tとは,中心電極側面に接合され,接地電極端面に対向する貴金属チップの表面面積の合計をいう。上記Tが5mm2 を越える場合には,中心電極への接合性が悪くなるという問題がある。これは,貴金属チップを中心電極に接合する場合には,抵抗溶接等の溶接を行うことが通常であるが,この場合には接合面積が大きいほど接合性が悪くなり,特に上記Tが5mm2 を越える場合に顕著になるためであると考えられる。
また,上記Tの下限は0.5mm2 とすることが好ましい。0.5mm2 未満ではチップ微小となり加工が困難となるという問題が生ずるおそれがある。
【0016】
また,上記接地電極における総計端表面積Sとは,中心電極側面に対向する様に加工された接地電極先端面の表面面積の合計をいう。上記Sが5mm2 未満のときは,接地電極の熱容量が小さくなるため,使用中にヒートスポット源となり,プレイグニッションを誘発するという問題がある。
また,上記Sが15mm2 を越える場合には,着火性を悪化させるという問題がある。これは,上記Sが大きいほど,火花放電により混合気中に生じた火炎核と接地電極との接触面積が大きくなり,消炎作用が強くなるためであると考えられ,特に上記Sが15mm2 を越える場合に顕著になるためと考えられる。
【0017】
また,上記総計端表面積Sが,1.54T−0.53X+5.87未満の場合には,特にプラス放電時における電極消耗量が増大し,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が増大するという問題がある。
一方上記Sが7.21T−1.43X+3.81を越える場合には,特にマイナス放電時における電極消耗量が増大し,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が増大するという問題がある。
【0018】
【作用および効果】
本発明においては,上記中心電極には上記特定成分の貴金属チップを配設してある。そのため,マイナス放電させた場合においても,中心電極の消耗量は従来よりも少なくなる。それ故,マイナス放電時におけるスパークプラグの長寿命化を図ることができる。
また,上記接地電極は,上記特定の成分により構成してある。そのため,プラス放電させた場合においても,接地電極の消耗量が従来よりも少なくなる。それ故,プラス放電時におけるスパークプラグの長寿命化を図ることができる。
【0019】
また,上記総計端表面積T,貴金属チップにおけるNi含有量X,及び総計端表面積Sは,それぞれ上述した範囲に限定されている。そのため,プラス放電時の電極消耗量と,マイナス放電時の電極消耗量がほぼ同等の低いレベルに抑制される。
【0020】
したがって,本発明によれば,プラス放電,マイナス放電いずれの場合であっても,電極消耗量がほぼ同等の低レベルであり,長寿命の,内燃機関用スパークプラグを提供することができる。
【0021】
【実施例】
実施例1
本発明の実施例にかかる内燃機関用スパークプラグにつき,図1〜図3を用いて説明する。
本例の内燃機関用スパークプラグ10は,図1,図2に示すごとく,貫通孔を有する絶縁碍子4と,上記貫通孔に保持された中心電極2と,上記絶縁碍子4を保持するハウジング5と,該ハウジング5に設けられた接地電極31,32とよりなり,該接地電極31,32と上記中心電極2の側面との間には火花ギャップGを構成する。
【0022】
上記中心電極2は,上記接地電極31,32の放電部310,320との対向面には貴金属チップ211,212を配設してなり,この貴金属チップ211,212は,Irが0〜30重量%,Niが0〜10重量%,残部PtであるPt−Ir−Ni合金からなる。また,貴金属チップ211,212の中心電極2への接合は,抵抗溶接により行った。尚,中心電極2としては,耐熱,耐酸化性に優れるNi基合金(インコネル600相当)を用いた。
【0023】
また上記接地電極31,32はニッケル基合金よりなり,このニッケル基合金は,Mn,Cr,Si,Al,Fe,Ti,Yのグループから選択される少なくとも1種以上の添加物を含有してなる。
【0024】
本例においては,上記構成のスパークプラグ10を用いて,接地電極31,32のニッケル基合金における上記添加物の含有量の合計が,プラス放電時の接地電極31,32の消耗量に対してどのように影響するかを調査した。
【0025】
評価は,スパークプラグを内部圧力5kgf/cm2 とした気密容器中で1200回/分の割合で100時間火花放電させる試験方法により,プラス放電させた前後の接地電極の体積の差を求めて行った。
【0026】
評価結果を図3に示す。図3においては,横軸に上記添加物含有量の総計(重量%)をとり,縦軸に接地電極消耗体積(mm3 )をとった。
図3より知られるごとく,添加物が1種類であっても2種類以上であっても,その含有量の合計が6重量%を越える場合には,接地電極の電極消耗量が急激に増加した。
【0027】
実施例2
本例においては,図1に示した実施例1のスパークプラグ10における,貴金属チップ211,212のNi含有量Xと電極消耗量との関係を調査した。なお,貴金属チップ211,212におけるIrの含有量は20重量%に固定し,残部はPtとした。また,接地電極31,32には,上記添加物としてのMn,Cr,Siを合計4重量%含有したNi基合金を用いた。その他は,実施例1と同様である。
【0028】
評価としては,火花ベンチ試験,実車による高速走行試験,実車による市街地走行試験,台上耐久試験をそれぞれ行い,各試験前後の火花ギャップG(図1)の差(電極消費量)を測定した。そして,上記X=5重量%の場合,即ちPt−20重量%Ir−5重量%Niの場合における電極消費量を1.0として,これに対する比を求めて評価した。
【0029】
評価結果を図4に示す。図4においては,横軸にNi含有量X(重量%),縦軸に上記比をとった。
図4より知られるごとく,電極消耗量の上記比は,Ni含有量Xの増加にともなって増加していくが,特にNi含有量Xが10重量%を越えた場合には急激に増加する。これは,Ni含有量Xが10重量%を越えると,合金の再結晶温度が低下し,スパークプラグ使用中に結晶粒が粗大化して脱落するために生ずると考えられる。したがって,本例においては,Pt−Ir−Ni合金中のNi含有量は10重量%以下が適切であることがわかる。
【0030】
実施例3
以下の実施例3〜5においては,実施例1のスパークプラグ10を用いて,接地電極の総計端表面積Sが,電極消耗量にどのように影響し,またプラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差がどのように変化するかを調査した。即ち,貴金属チップの総計チップ面積T及びNi含有量Xは,各実施例ごとに一定の値に固定して,上記接地電極の総計端表面積Sのみを変化させて,プラス放電及びマイナス放電を行った。そして,放電前後の火花ギャップG(図1)の差を電極消耗量とし,これを評価した。
【0031】
また,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であれば,そのスパークプラグはプラス放電時の性能とマイナス放電時の性能がほぼ同等で良好であると判断した。これは,次の理由による。即ち,図5に示すごとく,電極消耗量と放電電圧とは比例関係にあり,その値はプラス放電においてもマイナス放電においてもほぼ同等である。
【0032】
そして,図5に示すごとく,電極消耗量が0.3mm変化すると,放電電圧は6kV変化する。つまり,電極消耗量が0.05mmに達すると,放電電圧は約1kV上昇する。しかしながら,1kV程度の放電電圧の上昇は,スパークプラグの性能,点火系統等にほとんど影響を及ぼさない。したがって,0.05mmの電極消耗量の差であれば,プラス放電時の性能とマイナス放電時の性能に差がないと判断することとした。
【0033】
当実施例3においては,貴金属チップの総計端表面積T=2.65mm2 ,Ni含有量X=5重量%にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを5.5mm2 ,9.0mm2 ,14.0mm2 の3種類に変化させた。そして,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計端表面積Sに対する電極消耗量を測定した。
【0034】
尚,電極消耗のための試験は,2000ccの6気筒ガソリンエンジンを用いて,フルスロットル(6000rpm)で200時間保持し,その前後の電極消耗量差を測定して行った。
【0035】
本例における電極消耗量の測定結果を図6に示す。図6においては,横軸に総計端表面積S(mm2 ),縦軸に電極消耗量(mm)をとり,プラス放電の場合(E31)とマイナス放電の場合(E32)を示した。
図6より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Sの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0036】
また,特にプラス放電の場合には,マイナス放電の場合に比べて上記Sの変化に対する影響が大きかった。そして,プラス放電の電極消耗量は,上記Sが約10mm2 を越える範囲においてはマイナス放電の場合よりも少なく,約10mm2 未満の範囲においてはマイナス放電の場合よりも多くなった。
また,図6に示すごとく,上記Sが約7〜16mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0037】
実施例4
本例においては,貴金属チップの総計端表面積T=1.27mm2 ,Ni含有量Xは0にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを5.5mm2 ,9.0mm2 ,14.0mm2 の3種類に変化させた。そして,上記のごとく,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計端表面積Sに対する電極消耗量を測定した。
【0038】
本例における電極消耗量の測定結果を図7に示す。図7においては,図6と同様に横軸及び縦軸をとり,プラス放電の場合(E41)とマイナス放電の場合(E42)を示した。
図7より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Sの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0039】
また,特にプラス放電の場合には,マイナス放電の場合に比べて上記Sの変化に対する影響が大きかった。そして,プラス放電の電極消耗量は,上記Sが約10mm2 を越える範囲においてはマイナス放電の場合よりも少なく,約10mm2 未満の範囲においてはマイナス放電の場合よりも多くなった。
また,図7に示すごとく,上記Sが約8〜13mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0040】
実施例5
本例においては,貴金属チップの総計端表面積T=3.50mm2 ,Ni含有量X=10重量%にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを5.5mm2 ,9.0mm2 ,14.0mm2 の3種類に変化させた。そして,上記のごとく,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計端表面積Sに対する電極消耗量を測定した。
【0041】
本例における電極消耗量の測定結果を図8に示す。図8においては,図6と同様に横軸及び縦軸をとり,プラス放電の場合(E51)とマイナス放電の場合(E52)を示した。
図8より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Sの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0042】
また,特にプラス放電の場合には,マイナス放電の場合に比べて上記Sの変化に対する影響が大きかった。そして,プラス放電の電極消耗量は,上記Sが約9mm2 を越える範囲においてはマイナス放電の場合よりも少なく,約9mm2 未満の範囲においてはマイナス放電の場合よりも多くなった。
また,図8に示すごとく,上記Sが約6〜14.5mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0043】
実施例6
以下の実施例6〜8においては,実施例1のスパークプラグ10を用いて,貴金属チップの総計端表面積Tが,電極消耗量にどのように影響し,またプラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差がどのように変化するかを調査した。即ち,接地電極の総計端表面積S及びNi含有量Xは,各実施例ごとに一定の値に固定して,上記貴金属チップの総計端表面積Tのみを変化させて,プラス放電及びマイナス放電を行った。そして,放電前後の火花ギャップG(図1)の差を電極消耗量とし,これを評価した。
【0044】
また,実施例3〜5と同様に,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であれば,そのスパークプラグはプラス放電時の性能とマイナス放電時の性能がほぼ同等で良好であると判断した。尚,電極消耗量の試験方法も,実施例3〜5と同様の方法を用いた。
【0045】
当実施例6においては,接地電極の総計端表面積S=9mm2 ,Ni含有量X=5重量%にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを1.25mm2 ,2.65mm2 ,3.50mm2 の3種類に変化させた。そして,上記のごとく,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計チップ面積Tに対する電極消耗量を測定した。
【0046】
本例における電極消耗量の測定結果を図9に示す。図9においては,横軸に総計チップ面積T(mm2 ),縦軸に電極消耗量(mm)をとり,プラス放電の場合(E61)とマイナス放電の場合(E62)を曲線で示した。
図9より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Tの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0047】
また,特にマイナス放電の場合には,プラス放電の場合に比べて上記Tの変化に対する影響が大きかった。そして,マイナス放電の電極消耗量は,上記Tが約2.4mm2 を越える範囲においてはプラス放電の場合よりも少なく,約2.4mm2 未満の範囲においてはプラス放電の場合よりも多くなった。
また,図9に示すごとく,上記Tが約1.8〜3.7mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0048】
実施例7
本例においては,接地電極の総計端表面積S=9mm2 ,Ni含有量Xは0にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを1.25mm2 ,2.65mm2 ,3.50mm2 の3種類に変化させた。そして,上記のごとく,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計チップ面積Tに対する電極消耗量を測定した。
【0049】
本例における電極消耗量の測定結果を図10に示す。図10においては,図9と同様に横軸,縦軸をとり,プラス放電の場合(E71)とマイナス放電の場合(E72)を示した。
図10より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Tの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0050】
また,特にマイナス放電の場合には,プラス放電の場合に比べて上記Tの変化に対する影響が大きかった。そして,マイナス放電の電極消耗量は,上記Tが約1.5mm2 を越える範囲においてはプラス放電の場合よりも少なく,約1.5mm2 未満の範囲においてはプラス放電の場合よりも多くなった。
また,図10に示すごとく,上記Tが約0.7〜2.15mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0051】
実施例8
本例においては,接地電極の総計端表面積S=9mm2 ,Ni含有量X=10重量%にそれぞれ固定し,接地電極の総計端表面積Sを1.25mm2 ,2.65mm2 ,3.50mm2 の3種類に変化させた。そして,上記のごとく,プラス放電とマイナス放電を行い,各総計チップ面積Tに対する電極消耗量を測定した。
【0052】
本例における電極消耗量の測定結果を図11に示す。図11においては,図9と同様に横軸,縦軸をとり,プラス放電の場合(E81)とマイナス放電の場合(E82)を示した。
図11より知られるごとく,プラス放電,マイナス放電ともに,上記Tの増加にしたがって電極消耗量が減少した。
【0053】
また,特にマイナス放電の場合には,プラス放電の場合に比べて上記Tの変化に対する影響が大きかった。そして,マイナス放電の電極消耗量は,上記Tが約4mm2 を越える範囲においてはプラス放電の場合よりも少なく,約4mm2 未満の範囲においてはプラス放電の場合よりも多くなった。
また,図11に示すごとく,上記Tが約2.65〜5.5mm2 の範囲内においては,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mm以内であった。
【0054】
実施例9
本例においては,図12〜図14に示すごとく,上記の実施例3〜8により得られた結果を基にして,上記貴金属チップのNi含有量Xごとに,上記総計チップ面積Tと総計端表面積Sの最適な範囲を求めた。さらに,上記X,T,Sの関係における最適範囲の重回帰式を求めた。
【0055】
まず,貴金属チップのNi含有量Xが5重量%である場合を図12に示す。図12には,横軸に総計チップ面積T,縦軸に総計端表面積Sをとり,実施例3及び実施例6において得られた最適範囲の境界値をプロットした。
【0056】
上記最適範囲の境界値とは,プラス放電時とマイナス放電時の電極消耗量の差が0.05mmであった条件をいう。例えば実施例3においては,上記T=2.65mm2 に対するS=7mm2 ,14mm2 をいい,実施例6においては,上記S=9mm2 に対するT=1.8mm2 ,3.7mm2 をいう。
【0057】
そして,図12に示すごとく,上記境界値から2本の直線A1,B1を引くとともに,貴金属チップの接合性等により制約される上記Tの上限値5mm2 の直線C,プレイグニッション等により制約される上記Sの下限値5mm2 の直線D,及び着火性等により制約される上記Sの上限値15mm2 の直線Eを引く。これによって最適範囲が定められる。即ち,図12に示すごとく,5本の直線A1,B1,C,D,Eによって囲まれる範囲が,上記X=5重量%の場合における上記T及びSの最適範囲となる。
【0058】
次いで同様にして,貴金属チップのNi含有量Xが0である場合を図13に示す。図13には,実施例4及び実施例7における最適範囲の境界値から求めた2本の直線A2,B2を引くとともに,上記直線C,D,Eを引いた。これら5本の直線A2,B2,C,D,Eにより囲まれた範囲が,上記X=0の場合における上記T及びSの最適範囲となる。
【0059】
次いで同様にして,貴金属チップのNi含有量X=10重量%である場合を図14に示す。図14には,実施例5及び実施例8における最適範囲の境界値から求めた2本の直線A3,B3を引くとともに,上記直線C,D,Eを引いた。これら5本の直線A3,B3,C,D,Eにより囲まれた範囲が,上記X=10重量%の場合における上記T及びSの最適範囲となる。
【0060】
次に上記結果を基にして,上記X,T,Sの最適範囲の関係の重回帰式を求めると,1.54T−0.53X+5.87≦S≦7.21T−1.43X+3.81が得られた。
【0061】
したがって, T≦5(mm2 ),5≦S≦15(mm2 ),X≦10(重量%)であって,1.54T−0.53X+5.87≦S≦7.21T−1.43X+3.81の関係を有することによって,プラス放電,マイナス放電いずれの場合であっても,電極消耗量がほぼ同等の低レベルであり,長寿命の,内燃機関用スパークプラグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のスパークプラグの側面図。
【図2】実施例1のスパークプラグの底面図。
【図3】実施例1における,接地電極の添加物含有量の総計と,接地電極消耗量との関係の説明図。
【図4】実施例2における,貴金属チップのNi含有量と電極消耗量との関係の説明図。
【図5】実施例3における,電極消耗量と放電電圧との関係の説明図。
【図6】実施例3における,総計端表面積Sと電極消耗量との関係の説明図。
【図7】実施例4における,総計端表面積Sと電極消耗量との関係の説明図。
【図8】実施例5における,総計端表面積Sと電極消耗量との関係の説明図。
【図9】実施例6における,総計チップ面積Tと電極消耗量との関係の説明図。
【図10】実施例7における,総計チップ面積Tと電極消耗量との関係の説明図。
【図11】実施例8における,総計チップ面積Tと電極消耗量との関係の説明図。
【図12】実施例9における,X=5重量%の場合の,総計チップ面積Tと総計端表面積Sの最適範囲の説明図。
【図13】実施例9における,X=0の場合の,総計チップ面積Tと総計端表面積Sの最適範囲の説明図。
【図14】実施例9における,X=10重量%の場合の,総計チップ面積Tと総計端表面積Sの最適範囲の説明図。
【符号の説明】
10...スパークプラグ,
2...中心電極,
211,212...貴金属チップ,
31,32...接地電極,
310,320...放電部,
4...絶縁碍子,
5...ハウジング,
Claims (1)
- 貫通孔を有する絶縁碍子と,上記貫通孔に保持された中心電極と,上記絶縁碍子を保持するハウジングと,該ハウジングに設けられた接地電極とよりなり,該接地電極と上記中心電極の側面との間には火花ギャップを構成している内燃機関用スパークプラグにおいて,
上記中心電極は,上記接地電極の放電部との対向面には貴金属チップを配設してなり,該貴金属チップは,Irが0〜30重量%,Niが0〜10重量%,残部PtであるPt−Ir−Ni合金からなり,
また上記接地電極はニッケル基合金よりなり,該ニッケル基合金は,Mn,Cr,Si,Al,Fe,Ti,Yのグループから選択される少なくとも1種以上の添加物を合計6重量%以下含有してなり,
また,上記中心電極における上記貴金属チップの総計チップ面積をT(mm2 ),上記貴金属チップにおけるNi含有量をX(重量%)とし,
一方上記接地電極における上記中心電極と対面する総計端表面積をS(mm2 )としたとき,
T≦5(mm2 ),
5≦S≦15(mm2 ),
X≦10(重量%),
1.54T−0.53X+5.87≦S≦7.21T−1.43X+3.81の関係を有することを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
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-
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