JP3632559B2 - 圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延形鋼の製造方法に関し、特に、高層建築物における鉄鋼構造物の梁材に適した耐局部座屈性および耐破壊性能に優れたものの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日の高層建築物には、大地震に見舞われた時、梁部材の塑性変形により地震エネルギーを吸収させ、大崩壊を回避する人的安全性を重視した限界状態設計法が適用される。建築物の梁部材には大地震の際、大きな引張り、圧縮応力が加わり局部座屈を起こし、座屈した場所から亀裂が発生し崩壊に至る場合がある。従って、限界状態設計法で使用される梁部材には優れた耐座屈性および靭性が要求される。
【0003】
圧延形鋼の一つであるH形鋼は、大量にかつ安定して製造できるため、その優れた経済性とあいまって、建築・土木用の梁材として広く用いられている。これまで建築用の圧延形鋼については、特開平5−25588号公報、特開平5−345915号公報に低降伏比の観点から耐震性を向上させる技術が開示されている。しかし、梁部材の局部座屈は、材料の引張強度に遥かに及ばない低歪側で生じるため、耐局部座屈性の指標としての降伏比の有効性は明確になっていない。また、大地震の際、局部座屈と共に、問題となる梁端の破断に関する指標についても不明確である。
【0004】
一方、圧延H形鋼の製造方法としては、非調質で低降伏比かつ優れた靭性と溶接性を備えたH形鋼の製造方法が特開平6−240350号公報で提案されている。Nbを必須添加元素とし、熱間圧延中にオーステナイト粒を微細化し、靭性を向上させるとともに、圧延終了後、フェライトが30%以上析出するまで、放冷し、t/4(t:板厚)を0.3℃/s以上5℃/s以下の冷却速度で、600℃以下まで冷却し、フェライトとベイナイトを含む組織とする。
【0005】
しかしながら本技術は、極厚H形鋼の製造を主に対象とするものと考えられ、必須元素であるNbはフランジ板厚中心、フィレット部の靭性を確保するために添加されていると推察され、、建築梁用部材として多用される8mm以上40mm以下の比較的薄いフランジ厚を対象とするものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、H形鋼の耐局部座屈性、耐梁破断特性を向上させるための鋼組成、組織形態など材質的な指標は十分把握されおらず、また、梁部材として多用される8mm以上40mm以下の比較的薄いフランジ厚を対象とする製造方法も明らかになっていない。
【0007】
そこで、本発明は、梁材の軸方向に作用する圧縮応力による耐局部座屈性、耐梁破断特性と材質特性の関係を把握し、大地震の際に、局部座屈を起こしにくく、かつ、梁端などで破壊しにくいため、建築構造物を倒壊から防止する性能の高い圧延形鋼を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、引張試験で得られる諸特性と、耐局部座屈性、耐梁破断特性の関係を把握することを検討した。その結果、耐局部座屈性に関してはH形鋼の圧縮試験における座屈発生限界歪みが、破断が生じるような高い歪領域ではなく、概ね2〜5%公称歪みであることを見出し、引張試験における2〜5%公称歪における加工硬化指数(n値)、降伏伸びと良い相関にあることを把握した。
【0009】
また、フランジ、ウエブの特性を種々変更したH形鋼について調査した結果、耐局部座屈性には、フランジの特性の影響が大きく、ウエブの特性は殆ど影響を与えないことも知見した。
【0010】
そして、耐梁破断特性は、実際の破断が梁端部等の構造上の形状不連続などによる応力集中部や、溶接欠陥による破断であることから、これらを想定した解析モデルを作成し、材質特性との関係を調査した。解析モデルは、長さa,深さdの表面欠陥を有する断面A´に対し、直角方向に荷重Pを負荷した場合とした。
【0011】
断面A´の平均応力σA´が破壊限界応力σC(但し、σC=TSと仮定)に達した場合において、正常部断面A(表面切欠きがない場合の全断面)と断面A´の力の釣り合い(σA=σA´×(1−ad/Wt)、(σA:正常部断面における応力、W:全幅、t:全厚)と、応力ー歪み曲線に関するSwiftの式:σ=(α/(1+ε)){β+ln(1+ε)}(ここで、σ:公称応力、ε:公称歪、α、β:定数,n:加工硬化指数)から、破壊条件式として、次式が得られる。
【0012】
(α/(1+ε)){β+ln(1+ε)}=TS×(1−ad/Wt)
この式に基づき、n値、降伏比など材質特性を広範囲に変化させた材料を用い、表面欠陥を付与した引張試験片を作成して、引張試験を行った。その結果、破断歪みは材質特性と欠陥寸法によって整理されること、及び、許容欠陥寸法を向上させる材質因子について指針を得た。
【0013】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものである。すなわち、本発明は、1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜1.6%、Al:0.01〜0.05%、P:0.020%以下、S:0.015%以下を含有し、Nb:0.005%未満、N:0.0080%以下、H:4ppm以下に規制し、更に(1)式によるCeq:0.40%以下で残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼で、フランジ長手方向の引張特性が、降伏伸び:0.8〜3.0%、降伏比:70%以下、及び、公称歪み2〜5%における(2)式による加工硬化指数(n値)が0.20以上である圧延形鋼。
【0014】
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・・・・・・・(1)
n=(lnσ5−lnσ2)/(lnε5−lnε2)・・・・・・・・・(2)
σ5=1.05×σN5,σ2=1.02×σN2,ε5=ln(1.05),ε2=ln(1.02)
但し、σ5:公称歪5%における真応力、σ2:公称歪2%における真応力、ε5:公称歪み5%における真歪、ε2:公称歪み2%における真歪、σN5:公称歪み5%における公称応力、σN2:公称歪み2%における公称応力ln:自然対数
【0016】
2. フランジの金属組織が、軟質相のフェライト相と硬質相のベイナイト相、またはベイナイト相を含む硬質相よりなる混合組織で、軟質相の体積率が50%超え〜80%以下、平均粒径10μm以上、硬質相のアスペクト比が3以下であることを特徴とする1に記載の圧延形鋼。
【0017】
3. 1に記載の鋼成分を有する鋳片または鋼片を1050〜1300℃以下に加熱し、Ar3点以上で圧延を終了し、5℃/s以下の冷却速度で、600〜700℃に冷却後、フランジ外面またはフランジ外面と内面の双方をフランジ厚さの1/4における冷却速度で5℃/s以上となるように加速冷却し、冷却停止温度550℃以下とすることを特徴とする圧延形鋼の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で規定する成分組成、機械的特性および製造条件について、詳細に説明する。
【0019】
1.成分組成
C:0.05〜0.20%
Cは、鋼の強度を確保するため、0.05%以上添加するが、0.20%を超えて多量に含有すると靭性あるいは溶接性が劣化するため、0.05〜0.20%(0.05%以上、0.20%以下)とする。
【0020】
Si:0.6%以下
Siは、脱酸のため鋼に必然的に含まれ、強度を向上させるが、0.6%を超えると鋼の焼入れ性が過度に増加し、HAZ靭性及び溶接性の観点から好ましくないため0.6%以下とする。
【0021】
Mn:0.5〜1.6%
Mnは、鋼材の強度、靭性の向上ならびに、FeSの生成抑制のため0.5%以上添加する。1.6%を超えると、鋼の焼入れ性の増加を引き起こすため、溶接時に硬化層が出現し、割れ感受性が劣化するため、0.5〜1.6%とする。
【0022】
Al:0.01〜0.05%
Alは、安価で強力な脱酸材であり、0.01%以上添加するが、0.05%を超えると鋼の清浄度が低下し溶接部の靭性が劣化するため、0.01〜0.05%とする。
【0023】
N:0.0080%以下
Nは、鋼中に含まれる不可避的不純物である。含有量が多くなるとHAZ靭性の劣化、経時劣化、あるいは連続鋳造スラブ疵の発生を助長するため、0.0080%以下とする。
【0024】
H:4ppm以下
Hは、鋼中に含まれる不可避的不純物である。含有量が多くなると圧延後の割れや遅れ破壊を生じるため、4ppm以下とする。
【0025】
P:0.020%以下、S:0.015%以下
P,Sは、鋼中に混入する不純物として不可避的に存在する。Pの低減はHAZにおける粒界破壊の防止に有効なため、0.020%以下とする。Sの低減はHAZにおける水素割れ防止に有効であるため、0.015%以下とする。
【0026】
Ceq:0.40以下
Ceq(=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14)は、0.40を超えると、母材および溶接部における靭性が損なわれる場合があるため、0.40以下とする。
【0027】
本発明では、更に特性を向上させるため、Cu,Ni,Cr、V,Tiの一種または二種以上を添加させることが可能である。
【0028】
Cu,Ni,Crの一種または二種以上
Cu,Ni,Crは、固溶強化により鋼材を強化する。また、Cuは耐候性を向上させる効果がある。しかし、必要以上の添加は靭性、溶接性を大きく低下させるため、添加する場合は、Cu:0.6%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下とする。
【0029】
V,Tiの一種または二種
V,Tiは、固溶強化とともに析出による強化を行う。しかし、必要以上の添加は靭性、あるいは、溶接性を低下させるため、添加する場合は、V:0.2%以下、Ti:0.03%以下とする。
【0030】
尚、本発明における成分組成上の特徴は、一般的に鋼材の強度及び靭性を向上させることを目的に、添加されることが多いNbを含有せず、不可避不純物として混入した場合でも、0.005%未満に規制する点にある。Nbが含有された場合、熱間圧延における未再結晶領域が高温側に拡大され、例えばフランジ厚が8mm以上、40mm以下の形鋼の圧延においては、未再結晶域での大幅な圧下により、必要以上にオーステナイト粒径が微細化され、最終変態組織が微細化し、降伏点が上昇する。そのため、公称歪み:2〜5%におけるn値が低下し、座屈限界発生歪みは小さくなり、本発明が目的とする作用効果が得られない。
【0031】
2.機械特性
本願発明では、機械的特性として引張特性について規定する。
【0032】
降伏伸び:0.8〜3.0%
降伏伸びは、局部座屈に至る過程において、部材全体の変形を促進するため、局部的な座屈の発生による低歪座屈を抑え、鋼材全体としてのエネルギー吸収を大きくして耐局部座屈性を改善し、また、耐破壊性能も改善する。
【0033】
0.8%より小さいと、その効果が不十分で、3.0%より大きいと加工硬化の生じないまま、降伏の段階で座屈が生じる可能性があるため、降伏伸びを0.8〜3.0%とする。
【0034】
降伏比:70%以下
降伏比は、耐破壊性能に強い影響を与えるため規定する。降伏比を低下させた場合、破断歪みは増加する。降伏比70%とした場合、引張強度500MPa,n値0.20の鋼材で、断面積の10%に相当する欠陥による破断歪みは約4.8%となり、建築用低降伏比鋼に関するSN規格の上限降伏比80%における破断歪みである約2.5%に対し、優れた耐破壊性能を示す。
【0035】
従って、本発明では、降伏比70%以下とする。尚、降伏比は引張試験で得られる応力ー歪み線図に応じて、上降伏点と引張強度の比などとして求めればよい。
【0036】
n値:0.20以上
n値は、耐局部座屈性、耐破壊性能に影響を及ぼすため、規定する。H形鋼梁の座屈は、局部座屈部の歪みが公称歪み2〜5%において生ずるため、この範囲におけるn値(加工硬化指数)を規定する。n値が大きい場合、歪みを受けた部分の硬化領域が大きく広がり、歪みは鋼材全体に分布し,その部分の局所的変形が抑制され、耐局部座屈性が向上する。このような効果は、公称歪み2〜5%におけるn値を0.20とした場合、顕著となるため、本発明では公称歪み2〜5%におけるn値を0.20以上とする。
【0037】
また、n値を大きくした場合、耐破壊性能が向上する。引張り強さ:500MPa,表面欠陥断面積率:3%と比較的、欠陥寸法が小さい場合の鋼材において、降伏比:70%、n値:0.20の鋼材の破断歪みは約10%であるが、降伏比:80%、n値:0.15である鋼材の破断歪みは約6%となり、破断歪みは低下し、耐破壊性能に劣る。
【0038】
3.組織形態
本発明による建築梁用H形鋼に望ましい金属組織は、軟質相であるフェライトと硬質相であるベイナイト、またはベイナイトを含む硬質相(例えば、ベイナイト+パーライト)の混合組織であり、軟質相と硬質相の混合組織とすることにより、軟質相/硬質相の界面において軟質相側を降伏させながら、硬質相で全体の強度を上昇させ、降伏比を低減させる。
【0039】
軟質相の体積率:50%超え、80%以下
軟質相の体積率は、フランジ長手引張試験において、降伏比70%以下、降伏伸び0.8%以上とするため、50%超えとする。一方、80%を超えると引張強度が490N/mm2級を満足しないため、50%超え、80%以下とする。尚、体積率は2次元断面において観察したフェライト面積率を、体積率に等しいものと仮定した。
【0040】
軟質相の平均粒径:10μm以上
軟質相の平均粒径は、10μm未満の場合、降伏応力が上昇し、降伏比が高くなるため、10μm以上とする。
【0041】
硬質相のアスペクト比:3以下
硬質相のアスペクト比が3を超えた場合、降伏伸びが低下するため、3以下とする。アスペクト比は、フランジ圧延方向に平行に切断した断面において、各硬質相の圧延方向に沿った長さと、板厚方向に沿った長さとの比として求めた。アスペクト比が大きい程、組織が圧延方向に伸長していることを示す。
4.製造方法
スラブ加熱温度:1050℃以上、1300℃以下
スラブ加熱温度が1050℃未満の場合、熱間変形抵抗の増大により、断面形状が劣化し、圧延割れを生じ、鋳片を用いた場合は均質化が不十分となり特性が劣化する。1300℃を超えると、結晶粒が粗大化し、靭性が劣化するため、1050℃以上、1300℃以下とする。
【0042】
圧延終了温度:Ar3点以上
圧延終了温度は、Ar3点未満の場合、フェライト相に歪みが蓄積され、降伏点を上昇させ、降伏比を高くし、また、硬質相のアスペクト比を増大させ、降伏伸びを低下させるため、Ar3点以上とする。Ar3点は例えば、Ar3=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo+0.35(t−8),但し、tは板厚、フランジ厚(mm)である。
【0043】
冷却条件
冷却はフランジ外面、あるいは外面と内面の双方から行なうが、冷却による歪み発生防止及びフランジ厚さ方向の特性の均一性の観点からは、内外面双方から冷却することが望ましい。圧延終了後、低冷却速度で700℃以下600℃以上に冷却し、その後、高冷却速度で引続き550℃以下まで冷却する2段冷却とする。
【0044】
圧延終了後の自然放冷も含む低冷却速度による冷却は、板厚方向に均一、且つ十分な量のフェライト相と十分にアスペクト比の小さな硬質相を得るために行うもので、冷却停止温度が700℃より高いとその後の水冷後の変態組織として、十分な量のフェライト相が得られず、一方、600℃より低いとパーライト変態が進行し、所望の機械的特性が得られない。
【0045】
冷却速度は5℃/sを超えるとフランジの厚さ方向の組織が不均一となりやすく所望の組織形態に制御することが困難となるので、5℃/s以下とする。尚、上述したように5℃/s以下の冷却には自然放冷の場合も含むものとする。
【0046】
引き続いて行う高冷却速度による冷却は、硬質相を得るためで、冷却速度が5℃/sより小さいと、硬質相の硬さが不十分で、所望の機械的特性が得られないため、5℃/s以上とする。冷却停止温度は550℃より高い場合、硬質相の硬さが不十分となるため、550℃以下とする。
冷却停止温度の下限は特に規定しないが、200℃より低いと、靭性が損なわれる可能性があるため、200℃以上で停止し、その後、自然放冷することが望ましい。
【0047】
尚、いずれの冷却速度もフランジ厚さ:t2(図1参照)の外面側の(1/4)t2において規定する。
【0048】
本発明における形鋼のフランジ厚は、8mm以上、40mm以下がその効果を得る上で最も望ましい。8mmより薄い場合、圧延後の断面形状を良好に確保することが困難で、40mmより厚い場合は、フランジ板厚中心で所望の金属組織に制御することが難しくなる。また、強度は、その望ましいミクロ組織から、引張強度490N/mm2級が主たる対象となるが、限定されるわけではない。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す成分組成の鋼を溶製後、連続鋳造により鋳片とした。鋼A、Bは、仕上圧延後、フランジを水冷し、JISG3136 SN490B鋼相当の機械的特性を目標とした成分組成である。鋼Bは、Nbが添加され、本発明範囲外となっている。
【0050】
鋳片を1250℃に加熱後、圧延終了温度800℃とする圧延で、300×300×10×15(mm)(H×B×t1×t2、図1参照)のH形鋼とした。
【0051】
圧延終了後、表2に示す冷却条件で冷却を行った。冷却法1は、水冷開始温度780℃、冷却停止温度500℃でその後常温まで自然放冷するもので、冷却法2は、圧延後、660℃まで自然放冷後、水冷を開始し、440℃で冷却停止後、常温まで自然放冷する2段冷却法である。冷却速度はいずれの冷却法でも、水冷時のフランジ厚さ(t2)の1/4で、60℃/sとした。尚、冷却法1は水冷開始温度が高く、本発明範囲外と成っている。
【0052】
冷却後、製造した各H形鋼より、引張試験片、衝撃試験片を採取し、機械的特性を調査した。図1に試験片採取位置の概略位置を示す。引張試験は、フランジ幅方向1/4の位置から圧延方向を長手方向とし、JISZ2201 1A号引張試験片(平行部幅:40mm,ゲージ長:200mm)を3本採取し、常温における引張特性、公称歪みで2〜5%におけるn値を求めた。衝撃試験は板厚中心(1/2t)よりJISZ2202 Vノッチ衝撃片を3本採取し、試験温度0℃で衝撃吸収エネルギを求めた。
【0053】
表3に引張試験、衝撃試験の結果を示す。いずれのサンプルも、引張強度、衝撃特性に関してはSN490Bの規格を満足する特性がえられているが、鋼組成または冷却法のいずれか、または双方が本発明範囲外で比較例となっているサンプルNo.11、13、14は、降伏伸び、降伏比またはn値が本発明範囲外となっている。サンプルNo.12は、鋼組成、冷却法共に本発明範囲内で、優れた特性が得られている。
【0054】
次にこれらの形鋼の耐局部座屈特性を評価するため、長さ500mmとした形鋼サンプルの圧縮試験により、座屈を生じる歪み(座屈発生限界歪み)を求めた。図2に圧縮試験の状況を模式的に示す。
また、耐破壊性能を評価するため、平行部に平行部断面の10%に相当する切欠きを有する引張試験片を用い、引張試験により破断歪みを測定した。
表4に、圧縮試験、切欠き付き引張試験の結果を示す。座屈発生限界歪み、破断歪み共に鋼組成、冷却条件のいずれもが本発明範囲内となるサンプルNo.12では、比較例であるサンプルNo.11,13,14に対し、優れた特性となっている。尚、これらの試験におけるサンプルNo.12の特性は、490MPa級鋼のAs roll材で得られる特性よりも優れたものとなっている。座屈発生限界歪みは、490MPa級鋼のAs roll材では0.51%で、50%向上したとしても0.77%であり、サンプルNo.12に及ばない。破断歪みは、490MPa級鋼のAs roll材では3.2%で、50%向上したとしても4.8%であり、サンプルNo.12に及ばない。
上述したように、Nbを含有し、本発明範囲外の組成となる鋼では、降伏伸び、降伏比、n値の何れかが本発明の規定外となり、耐局部座屈特性および耐破壊性能に優れた特性は得られない。
【0055】
【表1】
Figure 0003632559
【0056】
【表2】
Figure 0003632559
【0057】
【表3】
Figure 0003632559
【0058】
【表4】
Figure 0003632559
【0059】
(実施例2)
表1の鋼Aを溶製後、連続鋳造により鋳片とし、1250℃に加熱後、300×300×10×15(mm)のH形鋼に圧延した。圧延後、表5に示す製造条件で圧延、冷却を行った。その後、各H形鋼より、実施例1と同様に、引張試験片、衝撃試験片を採取し、機械的特性を調査した。引張試験は、フランジ幅方向1/4の位置から圧延方向を長手方向とし、JISZ2201 1A号引張試験片(平行部幅:40mm,ゲージ長:200mm)を3本採取し、常温における引張特性、公称歪みで2〜5%におけるn値を求めた。衝撃試験は板厚中心(1/2t)よりJISZ2202 Vノッチ衝撃片を3本採取し、試験温度0℃で衝撃吸収エネルギを求めた。
【0060】
表6に引張試験、衝撃試験の結果を示す。本発明範囲内の製造条件によるNo.21,22,28は、引張り特性に関する本発明の規定を全て満足するが、本発明範囲外の製造条件により製造されるサンプルNo.23〜27、29、30は、いずれかの規定が本発明範囲外となる。また、本発明例であるNo.21,22,28と,比較例24,26,29でSN490B規格を満足する引張強度が得られた。
【0061】
次に、引張強度がSN490B規格を満足する本発明例であるNo.21,22,28と,比較例24,26,29について耐局部座屈特性を評価するため、長さ500mmとした形鋼サンプルの圧縮試験により、座屈を生じる歪み(座屈発生限界歪み)を求めた。
また、更に、耐破壊性能を評価するため、平行部に平行部断面の10%に相当する切欠きを有する引張試験片を用い、引張試験により破断歪みを測定した。圧縮試験および切欠き付き引張試験は実施例1と同様にした。
表7に、圧縮試験、切欠き付き引張試験の結果を示す。座屈発生限界歪みは、降伏伸び,降伏比、n値の全てが本発明の規定を満足するサンプルNo.21,22,28では優れた特性が得られている。また、比較例サンプルNo.24,26,29において、降伏伸びと降伏比が本発明範囲外であるが、n値が本発明の規定を満足するサンプルNo.26はサンプルNo.24,29と比較して座屈発生限界歪みが良好で、本発明例と同等の特性が得られ、耐局部座屈性におけるn値の影響の大きいことが認められた。
【0062】
破断歪みは、本発明例のサンプルNo.21,22,28は比較例のサンプルNo.24,26,29に対し、優れた特性となっている。比較例はいずれも降伏比が70%以上となっているが、比較的降伏比の低いNo.26のサンプルでは、本発明例には及ばないものの、破断歪みが大きく、降伏比の影響が大きいことが認められた。
【0063】
以上の試験結果から明らかなように、降伏伸び、降伏比およびn値の全てが本発明の規定を満足した場合、優れた耐局部座屈性と耐破壊性能が得られる。
【0064】
【表5】
Figure 0003632559
【0065】
【表6】
Figure 0003632559
【0066】
【表7】
Figure 0003632559
【0067】
(実施例3)
表1に示す成分組成の鋼を溶製後、連続鋳造により鋳片とした。鋳片を1250℃に加熱後、圧延終了温度800℃とする圧延で、300×300×10×15(mm)(H×B×t1×t2、図1参照)のH形鋼とした。圧延終了後、表8に示す圧延、冷却条件により製造した。サンプルNo.33は、圧延終了後、常温まで自然放冷した。尚、自然放冷の冷却速度は、800〜500℃までの平均で約0.8℃/sであった。
【0068】
これらの形鋼で、ミクロ組織が引張り特性、衝撃特性および耐局部座屈性、耐破壊性能に及ぼす影響を調査した。ミクロ組織は、フランジ幅方向1/4の位置における長手に沿った断面で、フランジ厚さ中心の光学顕微鏡組織、走査型電子顕微鏡組織を観察し、線分法により、フェライトの体積率と平均粒径を求めた。硬質相については、その組織形態および圧延方向と板厚方向の長さを求め、その比の値として、アスペクト比を算出した。
【0069】
表9にミクロ組織の観察結果を示す。鋼組成、製造条件が本発明範囲内のサンプルNo.31,32,38はミクロ組織に関する本発明の規定を全て満足するが、サンプルNo.33,34,35,36,37,39,40はミクロ組織に関する本発明の規定のいずれかを満足しない。
【0070】
次に、実施例1,2と同様に、引張試験、シャルピー衝撃試験を行った。表10にそれらの結果を示す。ミクロ組織に関する本発明の規定のいずれかを満足しないサンプルNo.33,34,35,36,37,39,40は、降伏伸び、降伏比およびn値の何れかが、本発明範囲外となる。一方、本発明例であるサンプルNo.31,32,38は、ミクロ組織に関する本発明の規定を満足し、降伏伸び、降伏比およびn値の何れもが、本発明範囲内となる。
【0071】
更に、引張強度490MPa以上であるサンプルNo.31,32,34,35,37,38について、耐局部座屈性、耐破壊性能を実施例1,2と同様な方法により求めた。
【0072】
表11に座屈発生限界歪みと破断歪みの測定値を示す。本発明で規定する組織形態を有するサンプルNo.31,32,38では両者で優れた特性がえられたのに対し、軟質相、硬質相における規定を満足しないサンプルでは、何れか、又は両者の特性が劣っていた。
【0073】
上述したように、鋼組成、製造条件が本発明の規定を満足する圧延H形鋼で得られるミクロ組織は、耐局部座屈性、耐破壊性能に優れた特性を示した。
【0074】
【表8】
Figure 0003632559
【0075】
【表9】
Figure 0003632559
【0076】
【表10】
Figure 0003632559
【0077】
【表11】
Figure 0003632559
【0078】
【発明の効果】
上述したように、本発明の圧延形鋼は、大地震の際、建築物の梁部材に負荷される大きな引張、圧縮により生じる局部座屈を起こしにくく、また、座屈した部分の亀裂や梁端の溶接欠陥による破壊に対する抵抗力が優れているため、大地震の際、梁部材の塑性変形により地震エネルギーを吸収し大崩壊を回避する限界状態設計法に最適で、大地震に対し、安全な鋼構造物を提供し、産業社会上、その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延H形鋼の引張試験片の採取位置およびミクロ組織の観察位置を示す模式図。
【図2】耐局部座屈性を評価するための圧縮試験の概要を示す図。
【図3】耐破壊性能を評価するための表面切欠き付き引張試験片(単位:mm)を示す図。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜1.6%、Al:0.01〜0.05%、P:0.020%以下、S:0.015%以下を含有し、Nb:0.005%未満、N:0.0080%以下、H:4ppm以下に規制し、更に(1)式によるCeq:0.40%以下で残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼で、フランジ長手方向の引張特性が、降伏伸び:0.8〜3.0%、降伏比:70%以下、及び、公称歪み2〜5%における(2)式による加工硬化指数(n値)が0.20以上である圧延形鋼。
    Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・・・・・・・(1)
    n=(lnσ5−lnσ2)/(lnε5−lnε2)・・・・・・・・・(2)
    σ5=1.05×σN5,σ2=1.02×σN2,ε5=ln(1.05),ε2=ln(1.02)
    但し、σ5:公称歪5%における真応力、σ2:公称歪2%における真応力、ε5:公称歪み5%における真歪、ε2:公称歪み2%における真歪、σN5:公称歪み5%における公称応力、σN2:公称歪み2%における公称応力ln:自然対数
  2. フランジの金属組織が、軟質相のフェライト相と硬質相のベイナイト相、またはベイナイト相を含む硬質相よりなる混合組織で、軟質相の体積率が50%超え〜80%以下、平均粒径10μm以上、硬質相のアスペクト比が3以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧延形鋼。
  3. 請求項1に記載の鋼成分を有する鋳片または鋼片を1050〜1300℃以下に加熱し、Ar3点以上で圧延を終了し、5℃/s以下の冷却速度で、600〜700℃に冷却後、フランジ外面またはフランジ外面と内面の双方をフランジ厚さの1/4における冷却速度で5℃/s以上となるように加速冷却し、冷却停止温度550℃以下とすることを特徴とする圧延形鋼の製造方法。
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