JP3632387B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、偏光フィルムの製造方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させたフィルムを、ほう酸水溶液に浸漬する方法が知られている。しかし、かかる方法によって製造された偏光フィルムは、屋外で使用される液晶表示装置や低消費電力の液晶表示装置に求められる、より高いコントラストを満足することが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、より高いコントラストの偏光フィルムを製造し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ほう酸濃度の高いほう酸水溶液に浸漬したのち、ほう酸濃度の低いほう酸水溶液に浸漬することによって、高コントラストの偏光フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、第一のほう酸水溶液に浸漬したのち、熱処理せずに第二のほう酸水溶液に浸漬する偏光フィルムの製造方法であって、第二ほう酸水溶液のほう酸濃度が第一ほう酸水溶液のほう酸濃度よりも低いことを特徴とする偏光フィルムの製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコールホモポリマーや、ビニルアルコールを主な共重合単位とする他の単量体との共重合体である。その重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜10000の範囲である。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%程度である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、かかるポリビニルアルコール系樹脂を通常の方法で製膜したものであって、その厚みは通常50〜150μm程度である。
【0006】
かかるポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させるには、例えば、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水中で一軸に延伸したのち、ヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液に浸漬する方法、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液に浸漬したのち、一軸に延伸する方法、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液に浸漬しながら一軸に延伸する方法、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾式で一軸に延伸したのち、ヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。
【0007】
ヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液の組成は通常、水100重量部あたりヨウ素0.01〜0.5重量部、ヨウ化カリウム0.5〜10重量部であり、水溶液の温度は、通常20〜50℃の範囲である。
【0008】
このようにしてヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、まず、第一ほう酸水溶液に浸漬される。第一ほう酸水溶液のほう酸濃度は通常、水100重量部あたりほう酸20重量部以下、好ましくは8〜15重量部程度である。ほう酸水溶液はヨウ化カリウムを含有していてもよく、ヨウ化カリウムの濃度は通常、水100重量部あたりヨウ化カリウム2〜20重量部、好ましくは5〜15重量部程度である。
【0009】
浸漬は、例えば、ヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを緊張状態を保ったまま、第一ほう酸水溶液に浸漬すればよい。第一ほう酸水溶液への浸漬温度は、通常50℃以上でフィルム切れを起こさない範囲であり、好ましくは50〜90℃程度である。浸漬時間は、通常100〜1200秒、好ましくは200〜500秒程度である。
【0010】
その後、ヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、第二ほう酸水溶液に浸漬される。第二ほう酸水溶液のほう酸濃度は、第一ほう酸水溶液のほう酸濃度よりも低いことが必要であるが、かかる第二ほう酸水溶液のほう酸濃度は、第一ほう酸水溶液のほう酸濃度の通常0.2〜0.9倍、好ましくは0.3〜0.9倍程度であり、さらには、水100重量部あたりほう酸10重量部以下、特には5〜10重量部の範囲であることが好ましい。このほう酸水溶液はヨウ化カリウムを含有していてもよく、ヨウ化カリウムの濃度は通常、水100重量部あたりヨウ化カリウム2〜20重量部、好ましくは5〜15重量部程度である。
【0011】
浸漬は、例えば、ヨウ素が吸着配向され、第一ほう酸水溶液に浸漬された後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、緊張状態を保ったまま、第二ほう酸水溶液に浸漬すればよい。第二ほう酸水溶液への浸漬温度は、通常50℃以上でフィルム切れを起こさない範囲であり、好ましくは50〜90℃程度である。浸漬時間は通常150〜1800秒、好ましくは200〜1000秒程度である。
【0012】
その後、通常と同様に、水洗し、乾燥することによって、目的の偏光フィルムを得ることができる。
【0013】
かくして得られる偏光フィルムは、通常の偏光フィルムと同様に、その一方の面または両面に保護層を貼合して、偏光板として使用することができる。保護層としては、例えば、セルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂の、それぞれ板、シートまたはフィルムなどが挙げられる。
【0014】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、従来よりもコントラストの高い偏光フィルムを製造することができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0016】
なお、偏光フィルムのコントラストを表す指数C は、以下の方法により求めた。
(1)平行位透過率(T)および直交位透過率(T)の測定
得られた偏光フィルム2枚をその吸収軸が互いに平行になるように重ね合せた場合の透過率を平行位透過率(T)、吸収軸が互いに直交するように重ね合せた場合の透過率を直交位透過率(T)とした。透過率Tは、分光光度計(島津UV−2200)を用いて波長領域400〜700nmで10nm毎に測定した分光透過率〔τ(λ)、ここでλは波長を表す。〕から、計算式(1)
Figure 0003632387
〔式中、P(λ)は標準光(C光源)の分光分布、y(λ)は2度視野等色関数をそれぞれ表す。〕
により算出した。
(2)コントラスト指数C の計算
平行位透過率(T)および直交位透過率(T)から、計算式(2)
=T/T (2)
により算出した。
【0017】
実施例1
ポリビニルアルコールのフィルム(厚み75μm、ケン化度99.9%以上)を一軸に延伸し(延伸倍率5倍)、緊張状態を保ったまま、ヨウ素およびヨウ化カリウムの水溶液(水100重量部、ヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム5重量部)に、28℃で60秒浸漬して、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得た。その後、このフィルムを、第一ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸14重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に78℃で120秒浸漬し、次いで第二ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸7.5重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に78℃で300秒浸漬した。その後、15℃の純水で5秒間水洗し、50℃で5分間乾燥して、偏光フィルム(C=10000)を得た。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にしてヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得、その後、このフィルムを第一ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸10重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に81℃で300秒浸漬し、次いで第二ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸7.5重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に81℃で900秒浸漬した。その後、15℃の純水で5秒間水洗し、50℃で5分間乾燥して、偏光フィルム(C=13000)を得た。
【0019】
比較例1
実施例1と同様にしてヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得、その後、このフィルムを、ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸14重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に78℃で120秒浸漬した。次いで、15℃の純水で5秒間水洗し、50℃で5分間乾燥して、偏光フィルム(C=1200)を得た。
【0020】
比較例2
実施例1と同様にしてヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得、その後、このフィルムを第一ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸7.5重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に78℃で120秒浸漬し、次いで第二ほう酸水溶液(水100重量部、ほう酸14重量部、ヨウ化カリウム6重量部)に78℃で300秒浸漬した。その後、15℃の純水で5秒間水洗し、50℃で5分間乾燥して、偏光フィルム(C=1300)を得た。

Claims (8)

  1. ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、第一のほう酸水溶液に浸漬したのち、熱処理せずに第二のほう酸水溶液に浸漬して偏光フィルムを製造する方法であって、第二ほう酸水溶液のほう酸濃度が第一ほう酸水溶液のほう酸濃度よりも低いことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
  2. 第二ほう酸水溶液のほう酸濃度が、第一ほう酸水溶液のほう酸濃度の0.2〜0.9倍である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  3. 第一ほう酸水溶液のほう酸濃度が、水100重量部あたりほう酸20重量部以下である請求項1または請求項2に記載の偏光フィルムの製造方法。
  4. 第二ほう酸水溶液のほう酸濃度が、水100重量部あたりほう酸10重量部以下である請求項2に記載の偏光フィルムの製造方法。
  5. 第一ほう酸水溶液への浸漬温度が50℃以上である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  6. 第二ほう酸水溶液への浸漬温度が50℃以上である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  7. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重合度が1000〜10000である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  8. ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムが、乾式で一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させて製造される請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
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