JP3630901B2 - ポリアルコールの製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は一酸化炭素と1種類以上のオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを水素還元して、包装材などのガスバリア性樹脂材料として有用なポリアルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素とオレフィン系化合物の共重合体を触媒の存在下に水素還元するポリアルコールの製造方法はいくつか知られている。第一に不均一系触媒を使用するものとして、特開平1−149828号公報および特開平2−232228号公報には、ラネーニッケルおよび金属ニッケルを、そのままで、あるいはケイソウ土、シリカ、アルミナ等に担持したニッケル系触媒;CuO/Cr2 O3 、CuO/Cr2 O3 /BaOなどのアドキンス触媒;ラネーコバルト、CuO/SiO2 などのコバルト触媒;Ru/炭素、Ru/Al2 O3 、Ru/SiO2 などのルテニウム触媒;Pd/炭素、Pd/SiO2 などのパラジウム触媒等が開示されている。特開平5−339367号公報にはニッケル、ルテニウム、白金等の金属を担持した触媒、酸化ルテニウム触媒、ラネーニッケルやアドキンス触媒等が開示され、好適な触媒としてα−アルミナ担持ルテニウム、酸化ルテニウムが開示されている。さらに特開平6−49203号公報には平均細孔半径が100オングストローム以上のアルミナに担持したルテニウム触媒が開示され、また特開平1−204929号公報には金属水素化物とニッケル化合物との反応によって得られる還元ニッケル触媒が開示されている。
【0003】
次に均一系触媒を使用するものとして、特開平1−149828号公報および特開平2−232228号公報にジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどのルテニウム錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどのロジウム錯体等が開示され、特開平5−339367号公報にはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ルテニウムドデカカルボニル等の触媒が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
工業的に触媒を使用する反応では、触媒の使用量を少なくすることが第一の課題であるが、良好なガスバリヤー性を有するポリアルコールを得るためには、さらにポリアルコール中の水酸基含有率を高くする必要がある。上述した従来のポリアルコールの製造技術では、触媒の使用量が多く実用的でない、または水素還元反応の選択性が悪い、即ちポリケトンのカルボニル基が一部還元されて生ずる水酸基とポリケトン中のカルボニル基とが反応して生成するヘミアセタールを経由してテトラヒドロフラン環が生成し水酸基含有率が低くなってしまうという問題点があった。
【0005】
まず不均一触媒使用時の問題点について説明する。特開平1−149828号公報の実施例においては、エチレンと一酸化炭素との共重合ポリケトン5gに対して2gのニッケル−レニウム触媒を用いており、特開平2−232228号公報の実施例においては、エチレン、プロピレンと一酸化炭素との共重合体に対して同重量の銅/クロム/マンガン/バリウム触媒を用いている。特開平5−339367号公報および特開平6−49203号公報の実施例においては、エチレンと一酸化炭素との共重合ポリケトン5gに対してルテニウム/α−アルミナ触媒を8g使用している。このように多量の触媒を必要とすることは、経済的に好ましくないことは明らかである。
【0006】
特開平1−204929号公報にはエチレン、プロピレンと一酸化炭素との共重合体を還元ニッケル触媒を用いて水素還元を行った実施例が示されている。この例では共重合ポリケトン10gに対して使用したニッケル化合物は約0.9gであり比較的少ないといえるが、得られたポリアルコールには残存カルボニル基が13%、テトラヒドロフラン環が17%含まれており、この方法では、水酸基含有率が高く良好なガスバリヤー性を有するポリアルコールを得ることは不可能である。
【0007】
また、特開平1−304122号公報には、ルテニウムカルボニル錯化合物とヨウ化物からなる触媒組成物を用いて、エチレンと一酸化炭素との共重合ポリケトンの水素還元を行うことにより、エチレン単位とテトラヒドロフラン環単位から成るポリマーを得る方法が記載されている。つまり、このルテニウム触媒を使用する条件ではテトラヒドロフラン環の生成が主となってしまいポリアルコールが全く得られないことが理解される。
【0008】
均一系触媒に関しては、上述したように特開平1−149828号公報、特開平2−232228号公報および特開平5−339367号公報に記載されてはいる。しかし、いずれも実施例としての記載はないため、本発明者らは本発明の触媒に代えて上記特許に記載のあるジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムを使用し還元を試みたが、比較例1に示すように、この場合はポリアルコールを良好な成績で得ることはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを触媒の存在下に水素還元してポリアルコールを製造する方法において、経済的に好ましい少量の触媒の使用にて、高い水酸基含有率を有するポリアルコールを得る方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを水素還元してポリアルコールを製造する方法について鋭意検討を行った結果、一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを、ルテニウム化合物および一般式(I)
R1 R2 R3 P
(式中、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
で示されるホスフィン化合物から調製してなる触媒、並びに溶媒の存在下に水素還元することを特徴とするポリアルコールの製造方法を見いだすことにより本発明を完成させるに至った。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリアルコール製造の原料は、一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンである。オレフィン系化合物の種類には特に制限がなく一酸化炭素と共重合するものが使用でき、またオレフィン系化合物は1種類のみを用いても2種類以上のオレフィンを組み合わせてもよい。ポリケトンとしては、一酸化炭素とオレフィン系化合物とをラジカル共重合させたポリケトン(米国特許2,495,286号明細書、特開昭53−128690号公報および特開昭53−128691号公報参照)、一酸化炭素とオレフィン系化合物とを放射線照射により共重合したポリケトン(ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル(European Polymer Journal)、第9巻、669ページ(1973)参照)、および一酸化炭素とオレフィン系化合物とを遷移金属化合物を成分とする触媒により交互共重合させたポリケトン(特開昭59−197427号公報、特開昭61−91226号公報、特開昭62−232434号公報、特開昭62−53332号公報、特開昭63−3025号公報、特開昭63−105031号公報、特開昭63−132937号公報、特開平1−149829号公報および特開平2−67319号公報参照)が使用可能である。オレフィン系化合物としては、上記の方法により共重合可能なものであれば使用可能であるが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、イソブテン、ブタジエン、1,7−オクタジエン、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、N−ビニルピロリドンなどを例示できる。本発明は、原料ポリケトンの製造方法およびそのカルボニル基の含有率に制限されるものではないが、良好なガスバリヤー性を有するポリアルコールを得るためには、40〜50当量%の範囲のカルボニル基含有率を有するエチレンと一酸化炭素との共重合体が原料として好適である。
【0012】
本発明ではルテニウム化合物および一般式(I)
R1 R2 R3 P
(式中、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
で示されるホスフィン化合物から調製してなる触媒を用いる。
【0013】
ルテニウム化合物は反応系にて溶解する触媒を与えるものであれば特に制限はなく、ルテニウムの酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物または錯化合物などを用いることができる。具体的には二酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウム、酢酸ルテニウム、塩化ルテニウム、ジクロロビス(シクロオクタジエン)ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトナート、ペンタカルボニルルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、テトラヒドリドドデカカルボニルルテニウムなどがあげられる。これらのルテニウム化合物の使用量は、原料ポリケトン中のカルボニル基1モルに対してルテニウムとして0.1〜100ミリグラム原子、好ましくは0.5〜10ミリグラム原子である。ルテニウム化合物の使用量が少なすぎると反応速度が遅くなり、多すぎると触媒費用の観点から経済的に不利となる。
【0014】
一般式(I)
R1 R2 R3 P
(式中、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
で示されるホスフィン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n−ブチルホスフィン)、トリ(n−オクチルホスフィン)、トリ(n−ドデシルホスフィン)、ジメチル(n−ブチル)ホスフィン、トリ(i−プロピル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどが例示されるが、特にトリエチルホスフィン、トリ(n−ブチルホスフィン)、トリ(n−オクチルホスフィン)などの炭素数2〜8のn−アルキル基を有するホスフィンが好ましい。これらホスフィン化合物は単独で用いても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。R1 、R2 およびR3 で表されるアルキル基はそれぞれ水酸基、アルコキシ基またはシアノ基で置換されていてもよい。ホスフィン化合物の量は、用いるホスフィン化合物の種類によっても異なるが、ルテニウム1ミリグラム原子に対して1〜10ミリモル、好ましくは3〜6ミリモルである。ホスフィン化合物の使用量が少なすぎると選択性の点で不利となり、多すぎると反応活性が低下する。
【0015】
触媒は酸またはその塩の存在下に調製することもできる。ここで使用することのできる酸またはその塩としては、無機酸または有機酸並びにその塩が挙げられる。例えば、酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ホウフッ化水素酸、フルオロスルホン酸、燐酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、フェニルホスホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などがあげられる。また、酸の塩としてはホウフッ化ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸リチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどの金属塩;ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、パラトルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、フェニルホスホン酸ピリジン塩などのアンモニウム塩などがあげられる。これらの塩は触媒調製時に反応系に直接加えることもできるし、まず反応系に酸あるいは塩基性物質の一方を加えた後、他方を加えて反応系内で生成する酸の塩を使用することもできる。酸またはその塩の酸強度により触媒の活性は変化し、特に5以下のpKaを有する酸またはその塩を使用することが好ましい。ここで、pKaは25℃の水溶液中で測定された酸解離定数の逆数の対数値を示し、例えば、日本化学会編「改訂第4版化学便覧基礎編II」丸善株式会社の316〜321ページを参照することにより代表的な化合物の示すpKaの値を知ることができる。これらの酸またはその塩の使用量は、その種類および有機リン化合物の種類および使用量によって変化するが、ルテニウム1ミリグラム原子に対して0.1〜20ミリモル、好ましくは0.5〜10ミリモルである。酸またはその塩の使用量が少なすぎると反応促進効果が十分に発現せず、多すぎるとテトラヒドロフラン環の生成が増加して選択性が低下する。
【0016】
本発明で用いる溶媒としては、反応系にて生じる触媒を溶解し、水素還元反応に不活性な溶媒であれば特に制限はなく、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物などがあげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種類以上組み合わせて使用してもよい。好ましい溶媒はスルホランまたはこれを含む混合溶媒である。スルホランを含む混合溶媒の成分としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類をあげることができる。好ましい混合溶媒は水である。混合比率は任意であるが、スルホラン/水の比率として9/1〜1/9、好ましくは7/3〜3/7である。同様に、他の混合溶媒も1種または2種以上をスルホランと任意に混ぜて使用できる。溶媒の使用量は、原料ポリケトンの濃度として0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。濃度が高すぎると溶液粘度が高くなるため十分な撹拌が難しくなり、低すぎると反応効率および溶媒回収の点で経済的に不利となる。
【0017】
反応温度は30〜300℃、好ましくは100〜250℃、特に好ましくは150〜180℃である。温度が低すぎると反応速度の点で、高すぎると選択性の点で不利となる。反応は水素雰囲気下に行うが、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスが共存しても良い。反応圧力は1〜500気圧、好ましくは20〜300気圧、特に好ましくは50〜200気圧である。圧力が低すぎると反応速度の点で、高すぎると装置および運転費用の点で不利となる。なお、反応で消費された水素を補給するように水素を追加してもよく、水素を常に流しながら反応を行ってもよい。反応はバッチ式、セミ連続式、連続式いずれの方法でも実施できる。
【0018】
このようにして得られたポリアルコールは、一般的な分離手段、例えば必要に応じて反応混合物から触媒を吸着、抽出などの操作により除去した後、析出、抽出、溶媒留去などの操作により溶媒と分離することができる。さらに必要であれば一般的な精製手段、例えば、再沈澱、抽出洗浄によりポリアルコールを精製することもできる。
【0019】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明の方法をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
容量300mlの撹拌機付ハステロイC製オートクレーブに、エチレンと一酸化炭素との交互共重合体を16.5g、ルテニウムアセチルアセトナート0.266g、トリ(n−ブチルホスフィン)0.676g、フェニルホスホン酸0.106g、およびスルホランと水との混合物(容量比60/40)150mlを仕込み、反応器を封じた。室温で系内を水素ガスで置換した後、100気圧まで水素を圧入した。オートクレーブ内を撹拌しながら内温が160℃になるまでオートクレーブを加熱し、その後水素を追加して全圧150気圧で10時間加熱撹拌を続けた。反応終了後、内容物を反応器から水素加圧下でアセトン中に抜き出した。析出したポリマーを濾別し、アセトンで3回洗浄した後に減圧下で乾燥して白色固形物を得た。原料ポリケトンに対する収率は92%であった。生成物のNMRスペクトル分析により構造解析を行ったところ、カルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は96/4であった。
【0021】
実施例2〜6
フェニルホスホン酸に代えて表1に示す酸を用い、反応を表1に示す時間継続した他は実施例1と同様の操作により反応を行った。結果を表1に示す。なお、以下の表では得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率を「収率」、NMRスペクトル分析の結果から計算したカルボニル基の転化率を「転化率」、同様に分析したCH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率を「選択率」として表す。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例7
フェニルホスホン酸を用いないで反応温度を180℃にした他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は88%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は92/8であった。
【0024】
実施例8〜12
トリ(n−ブチル)ホスフィンに代えて表2に示すホスフィン化合物を用い、反応を表2に示す時間継続した他は実施例1と同様の操作により反応を行った。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例13
エチレンと一酸化炭素との交互共重合体に代えてエチレンと一酸化炭素とのラジカル共重合体(一酸化炭素共重合率48当量%)16.5gを用いた他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は85%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は96/4であった。
【0027】
実施例14
エチレンと一酸化炭素との交互共重合体に代えてエチレン、プロピレンと一酸化炭素との交互共重合体(組成比47/3/50)16.5gを用いた他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は88%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は95/5であった。
【0028】
実施例15
エチレンと一酸化炭素との交互共重合体に代えてエチレン、プロピレンと一酸化炭素との交互共重合体(組成比45/5/50)16.5gを用い、フェニルホスホン酸に代えてベンゼンスルホン酸0.11gを用い、反応を20時間継続した他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は87%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は94/6であった。
【0029】
実施例16
ルテニウムアセチルアセトナートに代えてジクロロビス(シクロオクタジエン)ルテニウムを用いた他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は93%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は100%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は93/7であった。
【0030】
比較例1
触媒をルテニウムアセチルアセトナートとトリ(n−ブチル)ホスフィンとフェニルホスホン酸の混合物に代えてルテニウムジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)0.64gを用いた他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は18%であり、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は92%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は18/82であった。
【0031】
比較例2
トリ(n−ブチル)ホスフィンに代えてトリフェニルホスフィン0.876gを用い、反応を6時間継続した他は実施例1と同様の操作により反応を行った。得られた白色固形物の原料ポリケトンに対する収率は52%、NMRスペクトル分析からカルボニル基の転化率は92%であり、CH(OH)構造とテトラヒドロフラン環構造との比率は22/78であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを触媒の存在下に水素還元することにより、経済的に好ましい少量の触媒の使用にて、高い水酸基含有率を有するポリアルコールを製造することができる。
Claims (6)
- 一酸化炭素とオレフィン系化合物との共重合体であるポリケトンを、ルテニウム化合物および一般式(I)
R1 R2 R3 P
(式中、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
で示されるホスフィン化合物から調製してなる触媒、並びに溶媒の存在下に水素還元することを特徴とするポリアルコールの製造方法。 - 一般式(I)中のR1 、R2 およびR3 がそれぞれ炭素数2〜8のn−アルキル基である請求項1に記載の製造方法。
- 触媒が酸またはその塩の存在下に調製されたものである請求項1または2に記載の製造方法。
- 酸またはその塩が5以下のpKaを有するものである請求項3に記載の製造方法。
- ポリケトンが40〜50当量%の範囲のカルボニル基含有率を有するエチレンと一酸化炭素との共重合体である請求項1、2、3または4に記載の製造方法。
- 溶媒がスルホランまたはこれを含む混合溶媒であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の製造方法。
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