JP3630504B2 - 酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法および酸素濃淡電池型酸素分析計 - Google Patents

酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法および酸素濃淡電池型酸素分析計 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素濃淡電池型酸素分析計の校正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸素濃淡電池型酸素分析計の校正には、校正ガスとして、ゼロガス(測定レンジの5〜15%の酸素濃度)、スパンガス(測定レンジの80〜90%の酸素濃度)が必要とされていた。これらの校正ガスは、高圧ボンベに詰められており、それらの残圧、有効期限の管理、それらの設置場所の温度、周囲環境の制約条件等の管理が煩わしく、さらに、酸素濃淡電池型酸素分析計の設置場所まで重量の大きい校正ガスボンベを運搬する必要があり、酸素濃淡電池型酸素分析計の保守に多くの労力を割いていた。従来の酸素濃淡電池型酸素分析計の校正は、予め定めた校正周期に設定して、校正を行っていた。したがって、センサの劣化が許容範囲内であり、本来なら校正をしなくても良い時でも、校正をしていた。このため校正時、炉燃焼の管理は手動運転で実施する回数が必要以上に行われる結果となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点を解消するためになされたものであり、(A)校正ガスとして大気エアと第2基準室に酸素ポンプによって基準校正ガスを作り各酸素濃淡電池の校正を行い、外部から校正ガスボンベ等の持ち込みを不要とし、(B)酸素濃淡電池型酸素分析計の劣化が所要の精度以内であれば校正時期を延ばし、必要精度を割る状態になった時、酸素濃淡電池型酸素分析計の校正を行い、常時酸素濃淡電池型酸素分析計の精度が所定の精度の中に保たれていることができる酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法および酸素濃淡電池型酸素分析計を提供するものである。
【0004】
【課題を解決する手段】
本発明は、かかる事情を背景としてなされたものであって、本発明は常時、受信器部において、各酸素濃淡電池に対応した第1、第2および第3のバイアス・ゲイン調整手段の出力信号の関係の演算結果より所定の値になった時、校正タイミング検出信号を発生させて、酸素ポンプを用いて、第2基準室に酸素を注入して、第2の基準室に校正用の酸素分圧を作り、被測定ガス側に大気エアにさらし、第1、第2および第3の酸素濃淡電池の発生起電力を計測し、酸素ポンプを所定の酸素分圧に制御するように酸素ポンプを切り替えて、被測定ガス側に被測定ガスにさらして、第1、第2および第3の酸素濃淡電池の発生起電力を測定して、これら各酸素濃淡電池の関係から演算して、第1、第2および第3の酸素濃淡電池の発生起電力係数および各酸素濃淡電池のオフセット電圧を求めて、受信器部の各酸素濃淡電池に対応するバイアス・ゲイン調整手段によって校正するものである。
【0005】
本発明の酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法は、大気エアに連通された第1の基準室と、該第1の基準室および被測定ガス空間と気密に酸素イオン伝導性固体電解質で隔離されている第2の基準室と、前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第1の酸素濃淡電池と、前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第2の酸素濃淡電池と、前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が前記第2の基準室内に露呈して設けられた一対の電極からなる第3の酸素濃淡電池と、前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる酸素ポンプと、前記第3の酸素濃淡電池で前記第2の基準室の酸素分圧を検出する手段と、該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と、とからなる酸素センサであって、受信器部において、各酸素濃淡電池に対応した第1、第2および第3のバイアス・ゲイン調整手段と、前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段で常時第2の基準室の酸素分圧を所定の値で稼働していて、HV1:受信器部の第1の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧、HV2:受信器部の第2の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧、HV3:受信器部の第3の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧とするとき、誤差量e=HV3−HV1−HV2の値が所定の値となった際、自動校正を開始し、被測定ガス側の雰囲気を大気エアにさらして、酸素ポンプの電流を制御する駆動側を切り替えて、酸素ポンプに所定の電荷量を注入して、第2基準室の酸素分圧を校正用の酸素分圧にして、各酸素濃淡電池の発生起電力を計測して、酸素ポンプの電流を制御側に切り替えて、被測定ガス側の雰囲気を被測定雰囲気にさらして、各酸素濃淡電池の発生起電力を計測して、これら各酸素濃淡電池の関係から各酸素濃淡電池の発生起電力係数および各酸素濃淡電池のオフセット電圧を求めて、前記受信器部の各濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段で各酸素濃淡電池の校正を行うものである。
【0006】
なお、酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法の前記自動校正が次の手順からなることが好ましい。
(a)前記被測定ガス空間側を大気エア雰囲気にさらす、(b)前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値にする酸素ポンプの電流制御を停止し、酸素ポンプに所定の電荷量を注入する、(c)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、(d)前記酸素ポンプに所定の電荷量の注入を停止し、酸素ポンプの電流を制御し、前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値にする、(e)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、(f)前記被測定ガス空間側を被測定ガス雰囲気にさらす、(g)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、(h)前記(c)、(e)、(g)の各酸素濃淡電池の発生起電力より、各酸素濃淡電池の発生起電力係数、および各酸素濃淡電池のオフセット電圧を求める、次に、(i)(h)にて求めた数値に基づき受信器部の各酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段のバイアス値およびゲイン値を調整する。
【0007】
また、本発明の酸素濃淡電池型酸素分析計は、(A)大気エアに連通された第1の基準室と、該第1の基準室および被測定ガス空間と気密に酸素イオン伝導性固体電解質で隔離されている第2の基準室と、前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第1の酸素濃淡電池と、前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第2の酸素濃淡電池と、前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が前記第2の基準室内に露呈して設けられた一対の電極からなる第3の酸素濃淡電池と、前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる酸素ポンプと、を備えた酸素センサと、(B)(a)各酸素濃淡電池に対応した第1、第2および第3のバイアス・ゲイン調整手段と、(b)前記第3の酸素濃淡電池で前記第2の基準室の酸素分圧を検出する手段と、(c)該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と,(d)酸素ポンプに所定の電荷量を注入する手段と,(e)常時は酸素ポンプを制御していて、各酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力信号の関係を演算して、校正タイミング発生信号手段と、(f)前記校正タイミング発生信号に基づき、該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と酸素ポンプに所定の電荷量を注入する手段とを切り替える手段と、(g)校正タイミング発生信号に基づいて、被測定ガス空間大気エア雰囲気にさらす手段と、(h)該各酸素濃淡電池の発生起電力の関係から各酸素濃淡電池の発生起電力係数および各オフセット電圧を演算し、受信器部の各酸素濃淡電池のバイアス・ゲインを調整する手段と、を備えた受信器部と、を有するものである。
なお、電極上にはその劣化防止を図るために電極保護層を設けることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
各酸素濃淡電池の発生起電力は、次式で表される。
第1の酸素濃淡電池の発生起電力V1
V1=η1*RT/nF*Log(P1/Ps)+OF1
第2の酸素濃淡電池の発生起電力V2
V2=η2*RT/nF*Log(Ps/P2)+OF2
第3の酸素濃淡電池の発生起電力V3
V3=η3*RT/nF*Log(P1/P2)+OF3
但し、
η1:第1の酸素濃淡電池の平均イオン輸率
η2:第2の酸素濃淡電池の平均イオン輸率
η3:第3の酸素濃淡電池の平均イオン輸率
OF1:第1の酸素濃淡電池のオフセット電圧
OF2:第2の酸素濃淡電池のオフセット電圧
OF3:第3の酸素濃淡電池のオフセット電圧
R:気体定数
T:絶対温度
n:イオン化係数(酸素の場合 n=4)
F:ファラディ定数
P1:第1の基準室の酸素分圧
P2:第2の基準室の酸素分圧
Ps:被測定ガス中の酸素分圧
η1*RT/nF:第1の酸素濃淡電池の電圧発生係数
η2*RT/nF:第2の酸素濃淡電池の電圧発生係数
η3*RT/nF:第3の酸素濃淡電池の電圧発生係数
受信器部の各酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲインの調整手段の出力電圧は、次式で表される。
VH1=G1*(V1−B1)
VH2=G2*(V2−B2)
VH3=G3*(V3−B3)
ここで、
G1:受信器部の第1の酸素濃淡電池に対応したゲイン
G2:受信器部の第2の酸素濃淡電池に対応したゲイン
G3:受信器部の第3の酸素濃淡電池に対応したゲイン
B1:受信器部の第1の酸素濃淡電池に対応したバイアス
B2:受信器部の第2の酸素濃淡電池に対応したバイアス
B3:受信器部の第3の酸素濃淡電池に対応したバイアス
【0009】
各濃淡電池に対応したオフセット電圧と等しくなるように受信器部の各濃淡電池のバイアス電圧を設定する。
B1=OF1
B2=OF2
B3=OF3
【0010】
受信器部の各酸素濃淡電池用の前段増幅処理部のゲインG1、G2およびG3は、次式で表される。
G1=(RTo /nF)/(η1*RT/nF)
G2=(RTo /nF)/(η2*RT/nF)
G3=(RTo /nF)/(η3*RT/nF)
但し RT/nFは、受信器部内部で各酸素濃淡電池のT°Kにおける理論電圧発生係数(定数)である。
【0011】
次に、校正タイミング検出信号の説明をする。
受信器部の各酸素濃淡電池に対応したバイアス値およびゲイン値が正しく校正されていれば、次式で示される校正タイミング検出信号eは0である。
しかし、各酸素濃淡電池が経時劣化によって、各酸素濃淡電池の電圧発生係数またはオフセット電圧が経時変化して、校正した時の値からズレが生じてくれば誤差量eは0でなくなる。この誤差量を許容でき得る値(絶対値)の範囲を越える時を、校正タイミング検出信号として捉え、校正をスタートすれば、校正開始前までは常に酸素分析計の精度を許容誤差範囲内に保つことができる。
誤差量e=VH3−VH1−VH2
=G3*(V3−B3)−G1*(V1−B1)−G2*(V2−B2)
=(RTo /nF)/(η3*RT/nF)*〔(η3*RT/nF*Log( P1/P2)+OF3)−B3〕 −(RTo /nF)/(η1*RT/nF)*〔(η1*RT/nF*Log( P1/Ps)+OF1)−B1〕−(RTo /nF)/(η2*RT/nF)*〔(η2*RT/nF*Log( Ps/P2)+OF2)−B2〕
【0012】
次に、第2の基準室を酸素ポンプによって校正用既知の酸素分圧にする方法を説明する。
校正検知信号によって、被測定ガス側の空間に大気エアを流し、第2の基準室の酸素分圧を所定の酸素分圧P2oに酸素ポンプで制御している駆動手段を切り替えて、酸素ポンプによって被測定ガス側から第2の基準室に酸素を注入する。第2の基準室の酸素分圧P2は、第2の基準室に注入された酸素量即ち電荷量Ip*tを第2の基準室の体積で割った商と、今まで制御していた第2の基準室の所定の酸素分圧P2oとの和として得られる。
即ち
P2=Ka*Ip*t+P2o
ここで、
P2:第2の基準室の酸素分圧
P2o:酸素ポンプで制御している時の第2の基準室の所定の酸素分圧
Ka:酸素ポンプの注入電荷量から酸素分圧を求める係数
Ip*t:酸素ポンプの注入電荷量(酸素ポンプ電流*注入時間)
である。ここでP2o/P2 ≦ 1/10000に選択すれば、P2oの影響は演算上無視することができるとして省略することも可能であるが、この微小の値も入れて計算しておくことが好ましい。従って、第2の基準室の酸素分圧を既知の酸素分圧にするために、酸素ポンプによって所定の酸素分圧P2oに制御された状態から、酸素ポンプの制御駆動手段を切り離して、前記電荷量注入手段に切り替えて校正ガスとして必要な酸素分圧に相当する電荷量(Ip*t)を注入する。
第2の基準室の既知の酸素分圧を変更する時は、所定の酸素分圧P2oに戻した後、必要とする酸素分圧に相当する電荷量を注入することにより、累積誤差を除去することが好ましい。
【0013】
次に、各酸素濃淡電池の電圧発生係数およびオフセット電圧の算出手順について説明する。
各酸素濃淡電池のオフセット電圧の和を物理的に見ると、第2の基準室の電極から第1の基準室の電極に発生するオフセット電圧OF3は、第2の基準室の電極から測定ガス側の電極に発生するオフセット電圧OF2と測定ガス側の電極から第1の基準室の電極に発生するオフセット電圧OF1の和に一致する。即ち、
OF3=OF1+OF2
が成立する。
校正検知信号によって、被測定ガス側の空間に大気エアを流し、次いで、所定の酸素分圧P2oに酸素ポンプで制御している駆動手段を電荷注入手段に切り替えて、酸素ポンプによって被測定ガス側から第2の基準室に酸素を注入し、第2の基準室を既知の酸素分圧にする。
このとき、第2の酸素濃淡電池においては、被測定側の酸素分圧が大気エアとなり、第2の基準室が酸素ポンプによって作られる既知の酸素分圧となって、この既知の酸素分圧を変化させることによって、校正ができる。
また、第3の酸素濃淡電池においても、第1の基準室の酸素分圧が大気エア、第2の基準室の酸素分圧が酸素ポンプによって作られた既知の酸素分圧となって、この既知の酸素分圧を変化させることによって、校正ができる。
【0014】
しかし、第1の酸素濃淡電池においては、第1の基準室の酸素分圧が大気エア、被測定ガス側が大気エアとなって、オフセット電圧OF1が、酸素濃淡電池の発生起電力となっている。従って、第2の基準室の酸素分圧を校正用の既知の酸素分圧に色々変化させても、第1の酸素濃淡電池はオフセット電圧しか計測できないので、第1の酸素濃淡電池の電圧発生係数を校正することができない。
ところで、各酸素濃淡電池の発生起電力は理想状態であれば、
V3=V1+V2
但し
V1:第1の酸素濃淡電池の発生起電力
V2:第2の酸素濃淡電池の発生起電力
V3:第3の酸素濃淡電池の発生起電力
である。
【0015】
しかし、各酸素濃淡電池が経時劣化すると、前記理想状態からのズレが生じてV3=V1+V2の等式は成立しなくなり、各電極側の酸素分圧の値を替えた時の各酸素濃淡電池の発生起電力の関係は、次の線形回帰式で表すことができる。
V3=K1*V1+K2*V2+DOF
但し、
K1:第1の酸素濃淡電池用の係数
V1:第1の酸素濃淡電池の発生起電力
K2:第2の酸素濃淡電池用の係数
V2:第2の酸素濃淡電池の発生起電力
V3:第3の酸素濃淡電池の発生起電力
DOF:オフセットと第1、第2の酸素濃淡電池に関する固定項
【0016】
被測定ガス側は未知の被測定ガスの酸素分圧および大気エアの既知の酸素分圧、第1の基準室は大気エアの既知の酸素分圧、第2の基準室は酸素ポンプによって作られる少なくとも2水準の既知の酸素分圧とする各酸素濃淡電池の発生起電力を測定し、各酸素濃淡電池の発生起電力を、前記線形回帰式の関係に代入すると、
Figure 0003630504
したがって、次式が成立する。
Figure 0003630504
各オフセット電圧の関係式 OF3=OF1+OF2と、各酸素濃淡電池の発生起電力と、前記線形回帰式の関係式とより、各酸素濃淡電池の発生起電力係数および各オフセット電圧を演算により求めることができ、酸素濃淡電池型酸素分析計の校正をすることが可能となる。
【0017】
本発明の実施の形態の一例の模式図を図1ないし図3に示す。第1の酸素濃淡電池(5)の陽極は大気エアに連通した第1の基準室(1)に露呈した電極と第3の酸素濃淡電池(9)の第1の基準室に露呈した陽極は同一とした。第1の酸素濃淡電池の被測定ガス側に露呈した陰極と第2の酸素濃淡電池(7)の被測定ガス側に露呈した陽極は同一電極とした。第2の酸素濃淡電池の第2の基準室(3)に露呈した陰極と第3の酸素濃淡電池の第2基準室に露呈した陰極は同一とした。第3の酸素濃淡電池によって、第2基準室の酸素分圧を計測して、この第2の基準室の酸素分圧が所定の酸素分圧に成るように、酸素ポンプ電流の制御手段として酸素ポンプに410mVを印加する。第2の基準室の酸素分圧が長い時間を掛けて少し上昇する時には第2基準室から被測定ガス側に酸素を汲みだし、第2の基準室の酸素分圧が長い時間で減少する時は被測定ガス側から第2基準室に酸素を注入して、被測定ガス中の酸素分圧を測定している時はこの状態で第2基準室の酸素分圧は所定の酸素分圧P2oに制御されている。
【0018】
次に、具体的数値事例による詳細な説明をする。
酸素濃淡電池型酸素分析計の工場出荷時に、予め酸素ポンプの注入電荷量から酸素分圧を求める係数:Kaを求める。
被測定ガス側に大気エア(酸素分圧20.6%)、校正ガス(酸素分圧8.01%および1.10%)を流し、且つ酸素ポンプに規定の電荷量を注入して、この電荷量に対応する酸素分圧を作り、この酸素分圧を特定化して、V1、V2およびV3を測定する。表1にその結果を示す。
ここで、条件1、4、5および6のときのV1は、OF1を示すことになる。
【0019】
【表1】
Figure 0003630504
【0020】
V3=K1*V1+K2*V2+DOFの回帰式に表1の結果を代入し回帰演算し、K1、K2、およびDOFを求める。
K1=1.017
K2=0.989
DOF=−0.00509
次に、
OF3−OF2=OF1
OF3−K2*OF2=K1*OF1+DOF
に表1に示したオフセット電圧OF1と前記回帰式で求めたK1、K2、およびDOFの値を上記オフセットの関係式に代入し、OF3、OF2に関する連立方程式の解を求める。
OF2=3.1
OF3=5.4
次に、第2の酸素濃淡電池の発生電圧V2=η2*RT/nF*Log(Ps/P2)+OF2に表1の条件4、5、6の結果と前記OF2を代入して電圧発生係数η2*RT/nF=53.1を回帰演算で求める。
該電圧発生係数η2*RT/nF=53.1とOF2=3.1mVを第2の酸素濃淡電池の発生電圧の式に代入し、
V2=53.1*Log(Ps/P2)+3.1(mV)
第2酸素濃淡電池の発生起電力より第2の基準室の酸素濃度P2を求める。その結果を表1に示す。
【0021】
酸素ポンプの注入電荷量より第2の基準室の酸素濃度を求める回帰式P2=Ka*Ip*t+P2o に表1のP2、Ip*tの値を入れ回帰演算をすると、
Ka=126、P2o =4.5−E07
が求まる。
このKaおよびP2o のデータを付けて酸素分析計をユーザーに供給する。
【0022】
次に、ユーザー側に於ける校正方法について説明する。
校正タイミング検出信号が規定の値を越えた時、被測定ガス側に大気エアを流す前のV1、V2、V3の電圧の測定をする。
ついで、酸素センサの被測定ガス側に大気エアを流し、第2基準室の酸素分圧を酸素ポンプによって、所定の酸素分圧制御から酸素ポンプに電荷量を注入して、第2の基準室に既知酸素分圧を作り、V1、V2、V3の電圧を計測して、再び酸素ポンプで第2の基準室の制御用所定の酸素分圧に戻して、酸素ポンプによる、電荷量を注入して第2の既知の酸素分圧の繰り返し誤差を打ち消す。この様にして数水準でのV1、V2、V3の電圧を測定する。第2の基準室を制御用規定の酸素分圧制御に戻し、酸素センサの被測定ガス側を大気エアから被測定ガスに切り換え、V1、V2、V3の電圧を測定する。この結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
Figure 0003630504
【0024】
V3=K1*V1+K2*V2+DOFの回帰式演算を表2のV1、V2、V3の値を用いて行い、K1、K2、DOFを得る。
K1=1.028
K2=1.023
DOF= −0.1338
各オフセットの関係式にK1、K2、DOF、および表2の結果を代入して、OF2、OF3を求める。
Figure 0003630504
を得る。
【0025】
第2基準室の酸素分圧P2は、次式で表される。
P2=Ka*Ip*t+P2o
ここで、P2o/P2 ≦ 1/10000に選択しているので、P2oの影響は演算上無視することができ、
P2’=Ka*Ip*t
と表すことができる。P2’の計算結果を表2に示す。
したがって、
Figure 0003630504
そこで、この式に、Ka、V3、OF3、P1、およびP2’のデータを代入して、第3の酸素濃淡電池の電圧発生係数η3*RT/nFを求める。
η3*RT/nF=54.30
次に、Ip*t=0に於けるV3の発生起電力より該電圧発生係数η3*RT/nF=54.30とOF3=5.2を用いて第2基準室の制御時の酸素分圧を求める。
(V3−OF3)=η3*RT/nF*Log(P1/P2)
398.4=54.30*Log(20.6/P2)
P2=9.499E−07
として得られる。
これより、
Figure 0003630504
として、第3、第1、第2の酸素濃淡電池の個々の電圧発生係数が得られる。
そこで、受信器部内部の各酸素濃淡電池の前段増幅処理部のゲインはそれぞれ次の様に求めることができる。
受信器部の第1の酸素濃淡電池用の前段増幅処理部のゲインG1は、
Figure 0003630504
同様に、
G2= 1.049
G3= 1.026
但し 受信器部内部で各酸素濃淡電池の理論電圧発生係数RT/nFは、T=850℃のときの値である55.7とした。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う酸素分析計の校正方法は、予めKa、P2を求めておくことにより、校正ガスとして大気エアと第2基準室に酸素ポンプによって作られる基準校正ガスを用い各酸素濃淡電池の校正を行うことにより、ゼロガス、スパンガスを必要とせず、大気エアのみで自己補正することができるため、また、校正時期を自動的に決定することができ、具体的には酸素濃淡電池型酸素分析計の劣化が所要の精度以内であれば校正を延ばし、必要精度を割る状態になった時、酸素濃淡電池型酸素分析計の校正を行い、常時酸素濃淡電池型酸素分析計の精度が所定の精度の中に保たれていることができるようになり、さらに、校正ガスボンベを使用できない燃焼機器、たとえば、ラジアントチューブ用燃焼ガス設備、パッケージボイラ、自動車等の内燃機関等の校正ができるようになり、極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸素濃淡電池型酸素分析計のの模式図
【図2】本発明の酸素センサーの模式図
【図3】本発明の酸素センサーの模式図
【符号の説明】
1 第1の基準室
3 第2の基準室
5 第1の酸素濃淡電池
7 第2の酸素濃淡電池
9 第3の酸素濃淡電池
11 酸素ポンプ
20 酸素センサ
22 大気エア
23 被測定ガス空間
24 酸素イオン伝導性固体電解質
25 フィルタ
27 ヒータ
29 電極保護層
31 大気エア導入管
33 リード線
35 保護筒
37 センサ支持体
39 パッキング

Claims (3)

  1. (A)大気エアに連通された第1の基準室と、
    該第1の基準室および被測定ガス空間と気密に酸素イオン伝導性固体電解質で隔離されている第2の基準室と、
    前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第1の酸素濃淡電池と、
    前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第2の酸素濃淡電池と、
    前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が前記第2の基準室内に露呈して設けられた一対の電極からなる第3の酸素濃淡電池と、
    前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる酸素ポンプと、
    前記第3の酸素濃淡電池で前記第2の基準室の酸素分圧を検出する手段と、
    該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と、
    からなる酸素センサと、
    (B) 前記各酸素濃淡電池に対応した第1、第2および第3のバイアス・ゲイン調整手段と、
    前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と酸素ポンプの制御を切り放して、酸素ポンプによって所定の電荷量を注入することによって第2の基準室に校正用の酸素分圧を作る手段と、
    を有している受信器部と、
    からなる酸素濃淡電池型酸素分析計であって、
    常時は前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段で稼働していて、次式で表される誤差量eの値が所定の値以上となったとき、予め求められている酸素ポンプの注入電荷量から酸素分圧を求める係数および制御下の第2の基準室の所定の酸素分圧を用いて、自動校正を開始することを特徴とする酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法;
    誤差量e=HV3−HV1−HV2、
    但し、
    HV1:受信器部の第1の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧、
    HV2:受信器部の第2の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧、
    HV3:受信器部の第3の酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力電圧。
  2. 前記自動校正が次の手順からなる請求項1の酸素濃淡電池型酸素分析計の大気エア一点校正方法;
    (a)前記被測定ガス空間側を大気エア雰囲気にさらす、
    (b)前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値にする酸素ポンプの電流制御を停止し、酸素ポンプに所定の電荷量を注入する、
    (c)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、
    (d)前記酸素ポンプに所定の電荷量の注入を停止し、酸素ポンプの電流を制御し、前記第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値にする、
    (e)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、
    (f)前記被測定ガス空間側を被測定ガス雰囲気にさらす、
    (g)前記各酸素濃淡電池の発生起電力を計測する、
    (h)前記(c)、(e)、(g)の各酸素濃淡電池の発生起電力より、各酸素濃淡電池の発生起電力係数、および各酸素濃淡電池のオフセット電圧を求める、(i)(h)にて求めた数値に基づき受信器部の各酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段のバイアス値およびゲイン値を調整する。
  3. (A)大気エアに連通された第1の基準室と、
    該第1の基準室および被測定ガス空間と気密に酸素イオン伝導性固体電解質で隔離されている第2の基準室と、
    前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第1の酸素濃淡電池と、
    前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる第2の酸素濃淡電池と、
    前記第1の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が前記第2の基準室内に露呈して設けられた一対の電極からなる第3の酸素濃淡電池と、
    前記第2の基準室内に、電極が露呈しており、他の電極が被測定ガス空間側に露呈して設けられた一対の電極からなる酸素ポンプと、
    を備えた酸素センサと、
    (B)(a)各酸素濃淡電池に対応した第1、第2および第3のバイアス・ゲイン調整手段と、
    (b)前記第3の酸素濃淡電池で前記第2の基準室の酸素分圧を検出する手段と、
    (c)該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と、
    (d)酸素ポンプに所定の電荷量を注入する手段と、
    (e)常時は酸素ポンプを制御していて、各酸素濃淡電池に対応したバイアス・ゲイン調整手段の出力信号の関係を演算して、校正タイミング発生信号手段と、
    (f)前記校正タイミング発生信号に基づき、該第2の基準室の酸素分圧を所定の一定値に酸素ポンプの電流を制御する手段と酸素ポンプに所定の電荷量を注入する手段とを切り替える手段と、
    (g)校正タイミング発生信号に基づいて、被測定ガス空間大気エア雰囲気にさらす手段と、
    (h)該各酸素濃淡電池の発生起電力の関係から各酸素濃淡電池の発生起電力係数および各オフセット電圧を演算し、受信器部の各酸素濃淡電池のバイアス・ゲインを調整する手段と、
    を備えた受信器部と、を有することを特徴とする酸素濃淡電池型酸素分析計。
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