JP3629836B2 - スクロール流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回スクロール及び固定スクロールのラップを互いに組み合わせて形成されるスクロール圧縮機構を有するスクロール流体機械、すなわち、スクロール圧縮機、スクロール冷凍機、スクロール真空ポンプ等のスクロール流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスクロール圧縮機の一例が、特開平5ー332271号公報に記載されている。この公報に示されたスクロール圧縮機のラップ部の詳細を図2及び図3に示す。図2に示すように、旋回スクロールのラップ10と固定スクロールのラップ13はそれぞれのラップの巻始め点33、34が他方のラップに接して、ほぼ軸対称な一対の最小密閉空間31、32を形成する。この最小密閉空間が形成される関係に固定スクロール及び旋回スクロールがあるとき(図2の状態)に、固定スクロールのラップ内壁面37と旋回スクロールのラップ外壁面100の双方にほぼ近接して吐出口15を設ける。
【0003】
旋回スクロールがさらに旋回すると、ラップの巻始め点33、34が他方のラップの内壁面37、36からそれぞれ離れ、吐出流路38、38が形成され、この一対の最小密閉空間31、32は吐出口に連通した一つの流路となる。その結果、最小密閉区間31、32内の圧縮ガスは両スクロールラップにより形成される吐出室35を経て吐出口15から機外へ流出する。この際、圧縮ガスの一部は、旋回スクロールのラップ外壁面100が吐出口15の輪郭線を横切って移動するので、吐出口15のA部分から機外へ流出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
スクロール圧縮機の設定容積比は、行程容積と最小密閉空間の容積の比で表される。最小密閉空間の圧力よりも吐出圧力の高い場合(今後これを高圧力比運転と称す)、設定容積比が大きい方が圧縮機の入力は小さくてすみ、圧縮機の効率はよくなる。図2に示した従来のスクロール圧縮機においては、最小密閉空間を小さくし、設定容積比を大きくするために、吐出口の径を小さくするとともに、スクロールラップ巻始め角を小さくしており、スクロールラップ巻始めの形状が鋭角となり、この鋭角部に応力が集中し、亀裂等が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の技術における不具合を解消し、かつ設定容積比を大きくしたスクロール流体機械を提供することにある。◆
本発明の他の目的は、スクロールラップ先端部における応力集中を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、鏡板に直立して形成した渦巻き状のラップを備えた固定スクロールおよび旋回スクロールを有し、両スクロールを互いにラップを内側に向けて組合わせ、旋回スクロールラップ外壁面側と固定スクロールラップ外壁面側とに前記各々のラップと鏡板によって第1および第2の空間を形成し、この第1及び第2の空間は両スクロールの相対運動により中心方向に移動するに従いその容積を減少するとともに、両スクロールの外周側から吸入したガスを圧縮してスクロールの中央部に設けた吐出口から吐出するものであり、吐出行程において第1の空間内のガスが、吐出口を形成する輪郭線が第1の空間側へ入り込んで形成される副流路を経て吐出口へ流出するスクロール流体機械において、一方のスクロールのラップ巻始め角に対応する点が他方のスクロールラップ内壁から離れるよりも遅れて第1の空間内のガスが副流路を経て吐出口へ流出する構成にすると共に、前記副流路の形成遅れは両スクロールが離れてから回転角度でほぼ15°から40°経過してから行なわれるように構成し、更に、最小密閉空間の圧力よりも吐出圧力が高くなる高圧力比運転(例えば運転圧力比が15.6程度)がなされるものである。そして好ましくは、出口形状を多角形または楕円形としたものである。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、第1の鏡板とこの第1の鏡板に直立する渦巻き状のラップとを備え鏡板の中央部に貫通孔を有する固定スクロールと、第2の鏡板とこの第2の鏡板に直立する渦巻き状のラップとを備えた旋回スクロールとを有し、これら両スクロールを互いにラップを内側に向けて組合わせ、旋回スクロールラップ外壁面側と固定スクロールラップ外壁面側とに各々のラップと第1及び第2の鏡板によって第1および第2の空間を形成するスクロール圧縮機構を備え、第1及び第2の空間は両スクロールの相対運動により中心方向に移動するに従いその容積を減少するとともに、吐出行程において吐出口を形成する輪郭線が第1の空間側へ入り込んで第1の空間と吐出口を連通する副流路を形成するスクロール流体機械において、一方のスクロールのラップ巻始め角に対応する点が他方のスクロールラップ内壁から離れた後に副流路が形成されるものである。そして、好ましくは副流路の形成を両スクロールが離れてから回転角度でほぼ15°から40°経過してから行うものである。また好ましくは、副流路の形成遅れを、運転圧力比が小さい場合には早く、運転圧力比が大きい場合には遅くしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を図面を用いて説明する。図4に本発明に係るスクロール圧縮機の縦断面図を示す。密閉容器1内にスクロール圧縮機構2とモータ3が内蔵されている。スクロール圧縮機構2は旋回スクロール4と固定スクロール5、フレーム6、クランク軸7、旋回機構8を備えている。旋回スクロール4は、鏡板9上に直立する渦巻き状のラップ10を有し、鏡板9の背面には、旋回機構8とクランク軸7のクランク部16が挿入される旋回軸受17が設けられている。固定スクロール5は鏡板12に直立する渦巻き状のラップ13を有し、外周部に吸入口14が、また、鏡板中央部に吐出口15がそれぞれ設けられている。旋回スクロール4と固定スクロール5は、互いにラップを内側にして組み合わされ、固定スクロール5とフレーム6とが締結される。クランク軸7の一方にはモータ3が設置され、クランク部16は旋回スクロール4の旋回軸受17に挿入される。
【0009】
固定スクロール5の吸入口14は、密閉容器1に設けた吸入管18と接続され、さらに、密閉容器1には吐出管19が設けられている。モータ3の回転によりクランク軸7が回転すると、旋回スクロール4は旋回機構8の働きにより姿勢を保ったまま固定スクロール5に対して旋回運動する。
【0010】
以上の様に構成した本発明に係るスクロール圧縮機は、旋回スクロール4および固定スクロール5のそれぞれの鏡板9、12と、それぞれのラップ10、13とで形成される空間が対称的な一対の密閉空間を形成し、一対の密閉空間は、スクロールの中心部へ移動するに従って、その容積を減少し、吸入口14より吸入したガスを圧縮し、吐出口15より吐出する。吐出されたガスは密閉容器1内の上部空間20から空間24、25内に流入し、最終的に吐出管19より吐出される。密閉容器1内下部には潤滑油26が収容されており、クランク軸7につながった給油装置27を通り圧縮機構2に給油される。
【0011】
図1に、本発明に係る上記スクロール圧縮機の第1の実施例を示す。本実施例においては、吐出ポート径を小さく設定容積比を大きくしている。すなわち、スクロールラップが一対の最小密閉空間31、32を形成した後、圧縮ガスは吐出室35を経て吐出口15へ流れ出る。このタイミングに対して、旋回スクロールのラップ外壁面100が吐出口15の輪郭線を横切るタイミングを遅らせる。この結果、一対の最小密閉空間31、32の中で第1の空間31内の圧縮ガスは、吐出口15のA部分を経て吐出口15へ流れ出るまで圧縮が進み、設定容積比を大きくすることが可能となる。そして、高圧力比運転時に圧縮機の入力を低減できる。さらに、スクロールラップ巻始めの形状を鋭角にする必要がなく、強度上の問題が解決される。
【0012】
図5に、高圧力比運転をして第1の空間内の圧力を測定した結果を示す。横軸は旋回スクロール回転角度であり、スクロールラップ巻始め角に対応する点がスクロールラップ内壁から離れる位置を基準位置としており、圧縮が進む方向を回転角度の増加方向としている。43はスクロールラップ巻始め角に対応する点がスクロールラップ内壁から離れると同時に、吐出口の輪郭線が第1の空間側へ入り込んで形成された流路を経て第1の空間内の圧縮ガスが吐出口へ流出するスクロール流体機械における圧力の理論値を示している。つまり、スクロールラップ巻始め角に対応する点がスクロールラップ内壁から離れた瞬間に、圧縮室内圧力が吐出圧力になると仮定して得た理論値である。
【0013】
測定値40は、スクロールラップ巻始め角に対応する点33がスクロールラップ内壁から離れると同時に、吐出口15の輪郭線が第1の空間31側へ入り込んで形成された流路を通して第1の空間31内の圧縮ガスが吐出口15へ流出する場合のスクロール流体機械の圧力である。測定値41は、スクロールラップ巻始め角に対応する点33がスクロールラップ内壁37から離れるよりも約20°遅れて第1の空間31内の圧縮ガスが、吐出口15の輪郭線が第1の空間31側へ入り込んで形成される流路を通して吐出口15へ流出するスクロール流体機械の圧力である。また、測定値42はスクロールラップ巻始め角に対応する点33がスクロールラップ内壁37から離れるよりも約40°遅れて第1の空間31内の圧縮ガスが、吐出口15の輪郭線が第1の空間31側へ入り込んで形成される流路を通して吐出口15へ流出するスクロール流体機械の圧力である。
【0014】
この結果から、第1の空間31内の圧縮ガスは、吐出流路38から吐出口15へ流出するよりも、吐出口15の輪郭線が第1の空間31側へ入り込んで形成される流路を通して吐出口15へ流出する方が支配的であることがわかる。これより、スクロールラップが、一対の最小密閉空間31、32を形成し、圧縮ガスが吐出室35を経て吐出口15へ流れ出るタイミングに比べ、圧縮ガスが吐出口15のA部分を経て吐出口15へ流れ出るタイミングを遅らせることにより、一対の最小密閉空間31、32のガスは吐出口15のA部分を経て吐出口15へ流れ出るまで圧縮が進み、設定容積比を大きくすることが可能となる。
【0015】
図6に、圧縮機の入力の測定結果を示す。横軸は旋回スクロールラップ外壁面100が吐出口15の輪郭線を横切る旋回スクロール回転角度であり、従来のスクロール流体機械ではこの値は0°である。吐出口15の径が小さくなるにつれ、旋回スクロール回転角度は増加する。旋回スクロール回転角度の基準は、スクロールラップ巻始め角に対応する点33がスクロールラップ内壁37から離れる位置である。
【0016】
測定値50は運転圧力比が3.3の場合であり、測定値51は運転圧力比が15.6の場合である。回転角度の値が20゜近辺に入力が最小となる回転角度の最適値があり、高圧力比運転時に圧縮機の入力を低減出来る。
【0017】
上記実施例では、吐出口がストレートな場合を示したが、吐出口の途中を絞ったり拡大したりしてもてもよい。また、吐出口形状は円形以外に、楕円形や多角形であってもよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明は上記のような構成にしたので、設定容積比が大きくなり高圧力比運転時に圧縮機の入力を低減できる。また、スクロールラップ先端部における応力集中を防止し、スクロールラップ巻始めの強度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるスクロールラップの吐出口付近の詳細正面図である。
【図2】従来のスクロールラップを説明するスクロールラップ部の詳細図である。
【図3】従来のスクロールラップの吐出口付近の詳細正面図である。
【図4】本発明に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図5】スクロール圧縮機の圧縮機室内圧力の説明図である。
【図6】スクロール圧縮機の入力の説明図である。
【符号の説明】
1…密閉容器 2…スクロール圧縮機構 3…モータ
4…旋回スクロール 5…固定スクロール 6…フレーム
7…クランク軸 8…旋回機構 9…鏡板 10…ラップ
11…旋回軸受 12…鏡板 13…ラップ 14…吸入口
15…吐出口 16…クランク部 17…旋回軸受 18…吸入管
19…吐出管 20…上部空間 24、25…空間 26…油
27…給油装置 30…バランスウェイト 31、32…最小密閉空間
35…吐出室 36、37…ラップ外壁面 38…吐出流路
40…圧縮室内圧力 41…圧縮室内圧力 42…圧縮室内圧力
50…圧縮機入力 51…圧縮機入力 100…ラップ外壁面。
Claims (4)
- 鏡板に直立して形成した渦巻き状のラップを備えた固定スクロールおよび旋回スクロールを有し、両スクロールを互いにラップを内側に向けて組合わせ、旋回スクロールラップ外壁面側と固定スクロールラップ外壁面側とに前記各々のラップと鏡板によって第1および第2の空間を形成し、この第1及び第2の空間は両スクロールの相対運動により中心方向に移動するに従いその容積を減少するとともに、前記両スクロールの外周側から吸入したガスを圧縮してスクロールの中央部に設けた吐出口から吐出するものであり、吐出行程において前記第1の空間内のガスが、吐出口を形成する輪郭線が第1の空間側へ入り込んで形成される副流路を経て吐出口へ流出するスクロール流体機械において、
一方のスクロールのラップ巻始め角に対応する点が他方のスクロールラップ内壁から離れるよりも遅れて前記第1の空間内のガスが前記副流路を経て吐出口へ流出する構成にすると共に、
前記副流路の形成遅れは両スクロールが離れてから回転角度でほぼ15°から40°経過してから行なわれるように構成し、
更に、最小密閉空間の圧力よりも吐出圧力が高くなる高圧力比運転がなされる
ことを特徴とするスクロール流体機械。 - 前記吐出口形状を多角形としたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール流体機械。
- 前記吐出口形状を楕円形としたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール流体機械。
- 第1の鏡板とこの第1の鏡板に直立する渦巻き状のラップとを備え前記鏡板の中央部に貫通孔を有する固定スクロールと、第2の鏡板とこの第2の鏡板に直立する渦巻き状のラップとを備えた旋回スクロールとを有し、これら両スクロールを互いにラップを内側に向けて組合わせ、旋回スクロールラップ外壁面側と固定スクロールラップ外壁面側とに前記各々のラップと前記第1及び第2の鏡板によって第1および第2の空間を形成するスクロール圧縮機構を備え、前記第1及び第2の空間は両スクロールの相対運動により中心方向に移動するに従いその容積を減少するとともに、吐出行程において吐出口を形成する輪郭線が前記第1の空間側へ入り込んで前記第1の空間と吐出口を連通する副流路を形成するスクロール流体機械において、
一方のスクロールのラップ巻始め角に対応する点が他方のスクロールラップ内壁から離れた後に前記副流路が形成される構成にすると共に、
前記副流路の形成遅れを、運転圧力比が小さい場合には早く、運転圧力比が大きい場合には遅くしたことを特徴とするスクロール流体機械。
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