JP3629363B2 - キャリア用ニトリル系樹脂及びその製造方法 - Google Patents

キャリア用ニトリル系樹脂及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリア用ニトリル系樹脂、その製造方法及び該キャリア用ニトリル系樹脂を含有するキャリアに関する。詳しくは、特定の樹脂組成、及びガラス転移温度を有し、且つ、ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が特定の範囲にあるキャリア用ニトリル系樹脂、その製造方法及び該キャリア用ニトリル系樹脂を含有する電子写真用キャリアに関する。
本発明に係わるキャリア用ニトリル系樹脂は、電子写真等に用いられるバインダー型キャリアとして、キャリア製造時の成形加工性が良好であり、キャリアとしての優れた帯電安定性を有する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真等の画像形成装置において、静電潜像を可視化するにあたり、鉄やフェライトをそのまま用いた磁性キャリアと絶縁性トナーを混合した現像剤が使用されてきた。しかし、一般的には、このような現像剤では、磁気ブラシの穂が硬く、現像する際に筋状のむらが発生するなどの問題があった。また、キャリア自体の体積抵抗率が低いため、静電潜像形成体上の電荷がキャリアを介して流れ、画像に欠損や乱れ等を生じたり、キャリアが現像スリーブからの注入電荷により静電潜像体に付着するという問題があった。そこで、従来の鉄、フェライト等の磁性体単体からなるキャリアの欠点を解決するため、磁性体微粉末を樹脂などに分散させたバインダー型キャリア(USP 4,284,702)が提案され、実用化されている。
【0003】
バインダー樹脂としては、磁性粉との結着性や分散性からカルボキシル基、水酸基、グリシジル基、アミノ基等の極性基を有する樹脂が用いられている。しかし、それらは耐湿性に劣り、長期に渡って安定した帯電量をトナーに与えることができず、トナーの飛散、カブリ、汚染等の問題が生じ易いものである。
これらの問題を解決するため、アクリロニトリルを共重合成分とする樹脂を用いることが提案されている。
例えば、特開平8−44119号公報には、アクリロニトリルを共重合成分とする樹脂を用いた電子写真用キャリア及びその製造方法等が開示されている。しかし、これらの樹脂は、ガラス転移温度がいずれも70から200℃であり、キャリア製造時の成形加工性が良好でない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム状重合体の存在下、極性の高いニトリル基を含有する不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルをグラフト共重合して得られる樹脂の内、ガラス転移温度及びマトリックス成分の重量平均分子量を特定の範囲に限定することにより、磁性粉との結着性や分散性を維持しながら、キャリア製造時の成形加工性(混練時の負荷の軽減と良好な分散性)及びキャリアとしての帯電安定性に優れたキャリア用ニトリル系樹脂、その製造方法及び該キャリア用ニトリル系樹脂を含有する電子写真用キャリアを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、共役ジエン単位50重量%以上を含むゴム状重合体1から30重量部の存在下で、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部をグラフト共重合して得られたニトリル系樹脂であって、該ニトリル系樹脂のガラス転移温度が50から69℃であり、且つ、該ニトリル系樹脂のゴム成分を除くマトリックス成分が、不飽和ニトリル単位45から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル単位20から55重量%を含み、重量平均分子量が30,000から150,000であるものが上記目的に合致したキャリア用ニトリル系樹脂であることを見出した。
さらに、上記単量体混合物の共重合を実施する際に、単量体混合物及び分子量調節剤の添加方法、並びに、重合系内のpHの制御を特定の方法で行うことにより、上記目的に合致したキャリア用ニトリル系樹脂が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、共役ジエン単位50重量%以上を含むゴム状重合体1から30重量部の存在下で、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部をグラフト共重合して得られるニトリル系樹脂であって、該ニトリル系樹脂のガラス転移温度が50から69℃であり、且つ、該ニトリル系樹脂のゴム成分を除くマトリックス成分が、不飽和ニトリル単位45から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル単位20から55重量%を含み、重量平均分子量が30,000から150,000であることを特徴とするキャリア用ニトリル系樹脂である。
【0007】
また、本発明の第2の発明は、水性媒体中で共役ジエン単位を50重量%以上含むゴム状重合体1から30重量部の存在下、不飽和ニトリル45から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル20から55重量%を含む単量体混合物100重量部をグラフト共重合するキャリア用ニトリル系樹脂の製造方法であって、(1)単量体混合物100重量部当たり分子量調節剤1から10重量部を用い、(2)単量体混合物15から30重量部、及び分子量調節剤全量の少なくとも5重量%を重合系内に添加すると共に重合系内のpHを2から4に調節した後、(3)重合開始剤を重合系内に添加して重合反応を開始し、次いで、(4)残部の単量体混合物70から85重量部、及び残部の分子量調節剤全量の95重量%未満を継続的に重合系内に添加し始め、(5)単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点まで、(5−1)最終的に重合系に添加される単量体混合物の総量に対する重合系内に残存する単量体混合物の比が0.05から0.45となるように残部の単量体混合物を継続的に添加し、且つ、(5−2)分子量調節剤を継続的に添加すると共に重合系内のpHを2から4に調節しながら、共重合することを特徴とするキャリア用ニトリル系樹脂の製造方法である。
さらに、本発明の第3の発明は、前記第1の発明のキャリア用ニトリル系樹脂を含有する電子写真用キャリアである。
【0008】
第1発明の特徴は、特定量のゴム状重合体の存在下、不飽和ニトリル、アクリル酸アルキルエステルをグラフト共重合して得られるニトリル系樹脂の内、ガラス転移温度が50から69℃、且つ、ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が30,000から150,000である樹脂に限定したことにある。
【0009】
また、第2の発明の特徴は、上記組成の樹脂を製造するに際し、ゴム状重合体の存在下、重合系内に特定量の単量体混合物及び分子量調節剤を初期分として添加し(初期添加という)、且つ、重合系内のpHを特定の範囲に制御した後に、重合開始剤を添加して共重合を開始する点、及び、共重合を開始した後に、重合系内に残部の単量体混合物及び分子量調節剤を継続して添加し(後添加という)、且つ、単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点まで分子量調節剤と単量体混合物を継続的に添加すると共に重合系内のpHを特定の範囲に調節して共重合する点にある。尚、後添加用の単量体混合物を継続的に添加するに際し、最終的に重合系に添加される単量体混合物の総量に対する重合系内に残存する単量体混合物の比が0.05から0.45となるような速度で添加することも肝要である。
【0010】
本発明のキャリア用ニトリル系樹脂は、極性の高いニトリル基を含有する不飽和ニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びゴム状重合体が組成的にバランスし、ガラス転移温度が特定の範囲に限定され、且つ、ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が特定の範囲に限定されたものである。そのため、キャリア製造時の成形加工性、キャリアとして帯電安定性等に優れている。従って、本発明のキャリア用ニトリル系樹脂は、電子写真等に用いるキャリア用樹脂として極めて有用である。
【0011】
尚、本発明において、単量体混合物等を継続的に重合系内に添加することとは、所定の時点で単量体混合物等の添加を開始し、所定の時点で単量体混合物等の添加を終了するまでの間、連続的又は間欠的に所定量の単量体混合物等を添加し続けることを意味するが、間欠的添加の場合はその間隔が15分間以内程度であれば継続的添加に包含される。連続的添加の好ましい方法として、遠心ポンプ、プランジャーポンプ等を用いる添加方法が挙げられる。これらの方法において、単位時間当たりの添加量が少ない場合、ポンプの脈動等により不連続で添加される状態があっても差支えない。
【0012】
本発明において、ゴム成分とは、ゴム状重合体及びゴム状重合体に不飽和ニトリル等の単量体がグラフトした重合体を意味する。また、マトリックス成分とは、ゴム成分以外の単量体単位のみからなる成分を意味する。また、ガラス転移温度及びマトリックス成分の重量平均分子量は、後述する実施例に記載した方法により測定した値を意味し、総転化率とは、重合系内に最終的に供給される単量体混合物の総量を基準とした重合体への転化率を意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のキャリア用ニトリル系樹脂は、以下の方法により得られる。すなわち、ゴム状重合体の存在下、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルをグラフト共重合する際に、先ず、所定量の単量体混合物と分子量調節剤を重合系に添加して、系内のpHを調節した後、重合開始剤を添加して共重合を開始する。その後、残部の単量体混合物と分子量調節剤を重合系に継続的に添加し、さらに、単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点まで分子量調節剤を継続的に添加すると共に重合系内のpHを調節しながら共重合する方法により製造することができる。 重合方法は、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、又はこれらの組合せ等公知の重合方法が適用できる。しかし、重合熱の除去の容易さ、重合後の後処理の容易さ、有機溶媒の回収・再生等の付帯設備の簡易化等を考慮すると乳化重合が好ましく適用される。乳化重合法の場合は、重合体生成物はラテックス状で得られるので、従来公知の方法、例えば、電解質又は溶媒による凝集法、又は凍結法等により重合体を凝固、分離し、水洗の後、乾燥して重合体を得る方法を採用することができる。
【0014】
本発明において、ゴム状重合体は、共役ジエンのみからなる重合体、又は共役ジエン及び共重合性の単量体、例えば、不飽和ニトリル、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸エステル等の単量体からなる共重合体である。
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエンの他、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン等が例示される。入手の容易さや重合性が良い等の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリルである。又、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンである。不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数が1から4のアルキルエステルを挙げることができる。好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等である。
【0015】
ゴム状重合体としては、具体的には、1,3−ブタジエン重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル及びメタクリロニトリル共重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル及びスチレン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましく挙げられる。より好ましくは1,3−ブタジエン重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン共重合体である。
【0016】
これらのゴム状重合体に含まれる共役ジエンの量は、得られるニトリル系樹脂の耐衝撃性に関係し、該樹脂を用いたキャリアの耐久性に影響を及ぼす。かかる点を考慮すると、共役ジエンを50重量%以上含むことが好ましい。
また、グラフト共重合に用いるゴム状重合体の量は、多くなるほどゴム成分の組成が増し、樹脂の耐衝撃性及びキャリアの耐久性が向上する。逆に、多過ぎると成形加工性が低下する他、重合時に凝集物(フロック)及び重合機壁への付着物の生成量が増加する傾向を示す。かかる点を考慮すると、共重合で用いるゴム状重合体は、1から30重量部であることが好ましく、ニトリル系樹脂中に占めるゴム成分の組成は、1から50重量%であることが好ましい。
ゴム状重合体は、公知の方法によって製造できるが、乳化重合法が好適である。また、重合温度には特に制限はないが、重合速度、生産性等を考慮すると、30から70℃の温度範囲が好ましい。
【0017】
本発明では、単量体として、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを必須成分として用いる。必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を併用してもよい。
本発明に用いる不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げられる。好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリルである。 アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチルである。
【0018】
共重合可能なその他の単量体としては、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルエーテル、ビニルエステル、α−オレフィン等が挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等、ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルイソプロペニルエーテル、エチルイソプロペニルエーテル等、α−オレフィンとしては、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ブテン、2−プロピル−1−ブテン等が挙げられる。
【0019】
ニトリル系樹脂のキャリアとしての特性は、ゴム成分を除くマトリックス成分中に含まれる不飽和ニトリルの量に影響される。すなわち、不飽和ニトリルの量が少ないとキャリアとしての帯電安定性、磁性粉との結着性や分散性に影響を及ぼす。逆に多過ぎると成形加工性が低下する。かかる点を考慮して、マトリックス成分中に45から80重量%の不飽和ニトリルを含むことが好ましい。より好ましくは50から80重量%である。
【0020】
アクリル酸アルキルエステルはアルキル基の種類及びその量によっても、得られるニトリル系樹脂のキャリアとしての特性は変化する。本発明のニトリル系樹脂を用いたキャリアとしての帯電安定性、耐久性を考慮すると、アクリル酸の炭素数1から4のアルキルエステルが好ましく用いられるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが特に好ましい。
また、その量は、ニトリル系樹脂及びそれを用いたキャリアの特性に影響を及ぼす。具体的には、ゴム成分を除くマトリックス成分中に含まれるアクリル酸アルキルエステルの割合が20重量%未満である場合には、樹脂の耐衝撃性が低下し、キャリアの耐久性も低下する。また、55重量%を超える場合には、ガラス転移温度が低下してしまい、現像剤としてのブロッキング性が悪くなり、帯電量が不安定になる他、磁性粉との結着性や分散性にも影響を及ぼす。本発明においては、上記観点を考慮して、マトリックス成分中にアクリル酸アルキルエステルを20から55重量%含むことが好ましい。より好ましくは20から50重量%である。
【0021】
共重合可能な他の単量体を用いる場合、その量は、ゴム成分を除くマトリックス成分中に20重量%以下である。20重量%以下であれば得られるニトリル系樹脂の特性にさほどの影響を及ぼさない。その種類には特に制限はないが、得られるニトリル系樹脂の成形加工性、帯電安定性等を考慮すると、前記単量体の内、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸の炭素数1から4のアルキルエステル等が好ましい。
【0022】
ニトリル系樹脂を用いた場合、キャリア製造時の成形加工性、キャリアとしての帯電安定性、耐久性は、上記のように、ゴム状重合体の組成及び量、ゴム成分を除くマトリックス成分中の不飽和ニトリル、アクリル酸アルキルエステルの量、その他共重合可能な単量体の量等により影響を受けるが、更に、ニトリル系樹脂のガラス転移温度、ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量によっても影響を受ける。
【0023】
ニトリル系樹脂のガラス転移温度が50℃未満の場合、現像剤としてのブロッキング性が悪くなり、帯電量が不安定になる。また、69℃を超える場合、キャリア製造時の成形加工性が低下する。かかる点を考慮すると、ニトリル系樹脂のガラス転移温度は50から69℃であることが好ましい。
【0024】
また、ニトリル系樹脂中のゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が30,000未満の場合、樹脂の耐衝撃性が低下し、キャリアの耐久性も低下する。また、150,000を超える場合、樹脂の流動性が低下しキャリア製造時の成形加工性が低下する。かかる点を考慮すると、ニトリル系樹脂中のゴム成分を含まないマトリックス成分の重量平均分子量が30,000から150,000であることが好ましい。成形加工性を考慮すると、より好ましくは30,000から90,000である。
かかる観点より、本発明においては、キャリア製造時の成形加工性及びキャリアとしての帯電安定性、耐久性を実用的範囲にバランスさせるために、該樹脂のガラス転移温度が50から69℃であり、且つ、ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が30,000から150,000であることが必要である。
【0025】
本発明のキャリア用ニトリル系樹脂は、ゴム状重合体の存在下で上記の単量体をグラフト共重合することにより得られるニトリル系樹脂の内、特定のガラス転移温度とゴム成分を除くマトリックス成分が特定の重量平均分子量を有するものである。本発明のニトリル樹脂の製造方法において、ガラス転移温度及びゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量を上記範囲に制御するために、単量体混合物及び分子量調節剤の添加方法を下記の如く限定し、且つ、重合系内のpHを特定の範囲に保つことが重要である。
【0026】
すなわち、単量体混合物については、総量100重量部の内、15から30重量部は初期添加分として重合反応を開始する前に添加する。添加方法は連続的添加でも一括添加でもよい。初期添加分の単量体混合物の量が15重量部未満の場合には、重合開始後の系内の活性が低くなってしまう他、ゴム状重合体への適度なグラフト重合が起きないため、樹脂の耐衝撃性が低下し、得られるキャリアの耐久性に影響を及ぼす。また、30重量部を超える場合には、重合熱の除熱や凝集物(フロック)の生成、重合機壁への付着物の生成など反応の安定性に影響を及ぼす。
【0027】
単量体混合物の残部の70から85重量部は後添加分として重合反応を開始した後に継続的に添加する。すなわち、重合開始剤を添加した後に残部の単量体混合物の継続的添加を開始する。さらに、単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点まで添加速度を制御することが重要である。具体的には、最終的に重合系に添加される単量体混合物の総量に対する重合系内に残存する単量体混合物の比が0.05から0.45の範囲となるように残部の単量体混合物を継続的に添加する。重合系内に残存する単量体混合物の量比が、上記範囲を超えると凝集物(フロック)及び重合機壁への付着物の生成量が増加する傾向を示す。また、重合系内に残存する単量体混合物の量比が上記範囲未満であると重合がスムースに進行しない。
【0028】
また、本発明のグラフト共重合において、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを必須成分とする単量体混合物の組成は、最終的に生成するゴム成分を除くマトリックスの組成に直接影響を及ぼす。すなわち、単量体混合物の組成が、ゴム成分を除くマトリックスの組成に近い形で反映する。
【0029】
分子量調節剤は、単量体混合物100重量部に対し1から10重量部用いる。この内、少なくとも5重量%は初期添加分として重合反応を開始する前に添加する。好ましくは5から30重量%である。添加方法は連続的添加でも一括添加でもよい。残部は後添加分として重合反応を開始した後に継続的に添加する。継続的な添加を終了する時期は、単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点である。初期添加分の分子量調節剤が5重量%未満の場合、初期段階で生成する重合体の分子量が大きくなり、得られる樹脂の流動性に影響を及ぼす他、ゴム状重合体へグラフトする重合体の分子量が大きくなり、得られる樹脂の流動性に影響を及ぼす。また、初期添加分の分子量調節剤が30重量%を超える場合、重合開始直後の重合系内の活性が低下してしまう。単量体混合物の総転化率が、80重量%に到る以前に分子量調節剤の添加を終了した場合、重合後期で生成する重合体の分子量が大きくなり、得られる樹脂の流動性に影響を及ぼす。また、90重量%を超えた場合、分子量調節効果への影響は小さいが、余分な分子量調節剤を使用することとなる。
【0030】
本発明では、分子量調節剤を活性化して分子量調節効果を高めるために、酸類等を添加して重合系のpHを2から4の範囲内に調節する。すなわち、水性媒体中、ゴム状重合体の存在下、初期添加分の単量体混合物及び分子量調節剤を添加した後、重合系のpHを2から4の範囲内に調節する。その後、重合開始剤を添加して共重合を開始する。すなわち、本発明では重合開始剤を添加した時点を共重合開始点とする。共重合を開始した後、単量体混合物の総転化率が80から90重量%に到る時点まで重合系のpHを2から4の範囲内に調節する。
重合系内のpHが2未満である場合、重合系内の活性が低下し過ぎてしまう他、装置の腐食の原因となるので好ましくない。また、ゴム状重合体の乳化安定性が低下し、ゴムの凝集、析出が起こる。重合系のpHが4を超える場合には、分子量調節剤の効果が十分に発揮されないため、高分子量の重合体が多量に生成してしまい、得られる樹脂の流動性が低下する。また、単量体混合物の総転化率が80重量%に到る以前に系内のpHが上記範囲を外れると、前記の分子量調節剤の機能が十分に発揮されない。90重量%を超えた場合、分子量調節効果への影響は小さいが、余分な分子量調節剤を使用することとなる。
【0031】
本発明に用いる重合開始剤には特に制限はなく、公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化物、過酸化水素等が挙げられる。乳化重合法を適用する場合には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化物、過酸化水素等が好ましい。
【0032】
分子量調節剤としては、アルキルメルカプタン類、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルチオールアセタート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)、リモネンジメルカプタン等が挙げられる。これらの内、好ましくはメルカプタン臭が実質的にないという点から、分子内に2個以上のメルカプト基を含む有機メルカプト化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)、リモネンジメルカプタン等が挙げられる。
【0033】
また、重合系内のpHを調節するpH調節剤としては、無機酸、有機酸のいずれでも良く、無機酸としては、リン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸等が挙げられる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、3−メルカプトプロピオン酸、アスコルビン酸及び酸性リン酸エステル等が挙げられる。好ましい酸は、酢酸、クエン酸、リン酸、3−メルカプトプロピオン酸等である。 重合開始剤及びpH調節剤の重合系への添加方法としては、一括添加又は継続的添加又はこれらを併用する方法が例示できるが、重合開始剤は、一括添加又は継続的添加でよい。pH調節剤は、継続的添加することが好ましい。
【0034】
重合開始剤は、初期添加分単量体混合物、ゴム状重合体、その他副原料を重合系内に仕込んだ後、攪拌下、重合系内を脱酸素し、所定の重合温度まで昇温が終了し、重合系内が安定した後に添加する。
重合開始剤の添加量は、単量体混合物100重量部に対して0.02から0.2重量部が好ましい。pH調節剤として用いる酸の添加量は、重合系のpHを上記範囲に制御し得る量であるが、通常、単量体混合物100重量部に対して0.1から0.6重量部程度を目途として選定される。
【0035】
重合には、この他、乳化剤、分散剤等が使用されるが、その種類及び量は、公知のものが適用される。重合後の後処理方法、乾燥方法も公知の方法が適用される。重合の温度には特に制限はなく、0から100℃の任意の温度において実施できる。重合速度、転化率、生産性等を考慮すると、30から70℃の温度範囲が好ましい。可塑剤、安定剤、潤滑剤、染料及び顔料、充填剤等を、必要に応じて重合後に添加することも可能である。
【0036】
上記方法により製造される樹脂は、キャリアとして使用された場合の帯電安定性、耐久性を備えているのみならず、キャリア製造時の成形加工性にも優れた極めて実用価値の高い新規な樹脂である。
【0037】
次に、本発明の電子写真用キャリアについて説明する。
本発明の電子写真用キャリアは、主成分として本発明のニトリル系樹脂及び磁性粉を含有する。
磁性粉としては、磁場の中に置かれたときに磁化される物質が用いられる。例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の金属、これらの金属と他の金属との合金又は混合物、これらの金属と酸化物、窒化物、炭化物等との混合物、並びに、強磁性フェライト、マグネタイト及びこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
他の金属としては、亜鉛、アンチモン、アルミウニム、亜鉛、錫、ビスマス、ベリリウム、マンガン、セレン、タングステン、ジルコニウム、バナジウム等が挙げられる。酸化物としては、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム等が挙げられる。窒化物としては、窒化クロム、窒化バナジウム等が挙げられる。炭化物としては、炭化ケイ秦、炭化タングステン等が挙げられる。
ニトリル系掛脂と磁性粉との混合性を考慮すると、磁性粉の粒子径は0.05〜10μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜1μm である。
【0039】
ニトリル系樹脂と磁性粉の混合割合は、キャリアの機械的強度、磁化性に影響する。ニトリル系樹脂の含有量が少な過ぎると得られるキャリアの機械的強度が低下し、磁性粉の含有量が少な過ぎるとキャリアが磁場内で充分に磁化しない。これらのことを考慮すると、ニトリル系樹脂100重量部に対し、磁性粉100〜1000重量部を混合することが好ましい。さらに好ましくは200〜800重量部である。
【0040】
電子写真用キャリアの分散性を良くするために、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、酸化アルミウニム等め他の添加剤を用いてもよい。これらの添加剤の含有量は、キャリアの0.1〜3重量%程度が好ましい。
【0041】
本発明の電子写真用キャリアは、リボンブレンダー等の混合機を用いて、前記ニトリル系樹脂と上記磁性粉とを室温で混合した後、ニトリル系樹脂の溶融温度以上に加熱、混練し、溶融状態の樹脂中に磁性粉を均一に分散させる。通常、混練温度は150〜220℃程度である。加熱、混練する方法には特に制限はなく、例えば、二軸押出機等の公知の装置が用いられる。
次いで、室温まで冷却した後、粉砕、分級する。粉砕機としては、フェザーミル粉砕機、ジェットミル粉砕機等が挙げられる。電子写真用キャリアの平均粒子径は10〜100μm であることが好ましい。さらに好ましく20〜60μmである。
【0042】
本発明のキャリア用ニトリル系樹脂は、後述の実施例に記載したブラベンダープラストグラフを用いた成形加工性試験における最大トルクが4000m ・g 未満である。そのため、樹脂の溶融粘度が低い。従って、二軸押出機等を用いて、ニトリル系樹脂と磁性粉とを混練する際に、混練機の負荷が過大となることがないだけでなく、樹脂中に磁性粉を均一に分散させることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について更に詳細を説明する。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」はいずれも重量基準を意味する。また、実施例及び比較例に示したニトリル系樹脂の総転化率、マトリックス成分の組成、樹脂中のゴム成分組成、ガラス転移温度、マトリックス成分の重量平均分子量、メルトインデックス、キャリア製造時の成形加工性、トナーの帯電量及びキャリアとして用いた際の帯電変化量は、下記方法によって測定した。
【0044】
(1)総転化率(重量%)
ガスクロマトグラフ〔(株)島津製作所製、型式:GC−9A〕を用いて、重合開始から15分間毎に重合液(ラテックス)を分析し、重合液中に残存する単量体濃度から消費された単量体量を算出し、最終的に重合系に供給する全単量体量を基準として総転化率を求める。
【0045】
(2)マトリックス成分の組成(重量%)
25℃において、N,N−ジメチルホルムアミド75mlに得られた樹脂0.75gを添加して2時間攪拌し、次いで、アセトニトリル75mlを添加し、さらに1時間攪拌する。溶媒に溶解した成分を分離し、ゴム成分を除くマトリックス成分を得る。得られたマトリックス成分のCHN含有組成を元素分析〔(株)柳本製作所製、CHN CORDER、型式:MT−2〕にて測定し、アクリロニトリル組成を求めた後、残部をアクリル酸エステル組成とする。この操作を3回繰り返して平均し、マトリックス成分の組成を求める。
【0046】
(3)樹脂中のゴム成分組成(重量%)
25℃において、N,N−ジメチルホルムアミド75mlに得られた樹脂0.75gを添加して2時間攪拌し、次いで、アセトニトリル75mlを添加し、さらに1時間攪拌する。溶媒に不溶の成分を分離し、乾燥後、重量測定を行い、樹脂中のゴム成分組成を求める。
【0047】
(4)ガラス転移温度(℃)
示差走査熱量計〔PERKIN−ELMER製、形式:DSC−7〕を用いて、窒素雰囲気下で150℃まで昇温し、その温度で3分間放置した後、降温速度10℃/minで室温まで冷却した試料を、昇温速度5℃/minで測定した際にガラス転移温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0048】
(5)マトリックス成分の重量平均分子量
〔試料の調製〕
25℃において、N,N−ジメチルホルムアミド75mlに得られた樹脂0.75gを添加して2時間攪拌し、次いで、アセトニトリル75mlを添加し、さらに1時間攪拌する。溶媒に溶解した樹脂分を分離し、ゴム成分を除くマトリックス成分を得る。
〔測定方法〕
単分散ポリスチレン標準試料を標準とし用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCという)により測定する。
〔測定装置及び条件〕
GPC:ウォーターズ(株)製、型式:150−C
カラム:昭和電工(株)製、型式:Shodex AD−80M/S×2本
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(含リチウムブロミド0.1重量%)
流量:0.8ml/min、カラム温度:60℃
試料濃度:0.1重量%、注入量:200μl、
検出機:屈折率検出型、
【0049】
(6)メルトインデックス(g/10min)
ASTM D−1238に規定される方法に従い、メルトインデクサー〔(株)東洋精機製作所製、型式:S−111〕を用い、温度150℃、荷重21.18Nにて測定する。
【0050】
(7)成形加工性(m・g)
〔試料の調製〕
樹脂100部に対し、磁性粉〔(株)TDK製、商品名:MFP−2〕600部、カーボンブラック〔三菱化学(株)製、商品名:#44〕2部及びシリカ〔日本アエロジル(株)製、商品名:#200〕1.5部を加え、ヘンシェルミキサーで混合して試料とする。
〔評価方法〕
ブラベンダープラストグラフ〔ブラベンダー社製、型式:PL−3000、ローラーミキサーW50型、ミキサー容量:60cm3 〕を用いて、ジャケット温度を220℃として試料100gを3分間かけて徐々に装入し、装入後ローター回転数を30rpmとして混練したときの最大トルク(m・g)を測定する。但し、過負荷状態となり混練できないものを「×」とする。
【0051】
(8)トナーの帯電量、帯電変化量(μC/g)
〔キャリア粒子の調製〕
前項(7)による最大トルクが4000m・g未満であった試料を二軸押出機にて200℃で混練し、室温まで冷却した後、フェザーミル粉砕機で粗粉砕し、更にジェットミル〔日本ニューマチック(株)製、型式:PJM100〕を用いて微粉化する。それを粉体気流分級機〔日本ニューマチック(株)製、型式:MDS〕により分級して、平均粒径が50μmのキャリア粒子を得る。
【0052】
〔トナーの調製〕
ポリエステル樹脂(軟化点130℃、ガラス転移温度60℃)100部に、カーボンブラック〔三菱化学(株)社製 #44〕7部、荷電制御剤〔オリエント科学(株)製、商品名:ボントロンS−34〕2部を添加した混合物をボールミルで充分混合した後、二軸押出機にて140℃で混練し、室温まで冷却した後、フェザーミル粉砕機で粗粉砕し、更にジェットミル〔日本ニューマチック(株)製、型式:PJM100〕を用いて微粉化する。それを粉体気流分級機〔日本ニューマチック(株)製、型式:MDS〕により分級して、平均粒径が10μmのトナー粒子を得る。得られたトナー粒子に対し、疎水性シリカ〔日本エアロジル(株)製、商品名:972〕を0.1重量%添加して、ヘンシェルミキサーで混合してトナー粒子を得る。
【0053】
〔帯電量、帯電変化量の測定〕
上記キャリア粒子とトナー粒子を後者の混合比が5重量%となるように混合し、ターブラーシェイカーミキサー(WAB社製、形式:TURBULA Type12C)で10分間、及び60分間混合攪拌した後、ブローオフ粉体帯電量測定装置〔東芝ケミカル(株)製、型式:TB−200〕を用いて、25℃、相対湿度65%の条件下で帯電量の測定を行い、10分間混合攪拌後のトナー帯電量〔Q(μC/g)〕、及び、60分間混合攪拌後のトナー帯電量〔Q(μC/g)〕を求め、両者の差の絶対値(|Q−Q|)を帯電変化量とする。
【0054】
実施例1から21、比較例1から12
〔ゴム状重合体の製造〕
ステンレス製重合反応器に、水200部、アクリロニトリル30部、1,3−ブタジエン70部、脂肪酸石ケン2.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を添加して、窒素雰囲気下において、攪拌下、45℃で20時間重合を行い、転化率90%で重合を終了した。未反応の単量体を減圧ストリッピングにより除き、固形分濃度約30%のゴム状重合体を得た。また、該重合体より固形分を回収し、乾燥後、元素分析により該重合体中の1,3−ブタジエン及びアクリロニトリル単位の含有量を求めたところ、1,3−ブタジエン単位が71%、アクリロニトリル単位が29%であった。
【0055】
〔ニトリル系樹脂の製造〕
ステンレス製重合反応器に、水150部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.288部、ポリビニルピロリドン0.103部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.035部、第1表(表1〜表6)に示す初期添加単量体、ゴム状重合体及び分子量調節剤を添加し、窒素雰囲気下において、攪拌しながら58℃に昇温し、そのまま30分間攪拌し続けた。その後、第1表(表1〜表6)に示す量のリン酸を添加して重合系のpHを3±0.3に調節した後、重合開始剤として過硫酸カリウム0.08部を含む水溶液を添加して重合を開始した。
次いで、水85部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.153部、ポリビニルピロリドン0.413部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.141部を重合開始から起算して30分経過後から7時間経過するまで継続的に添加し、また、第1表(表1〜表6)に示す様に後添加単量体及び分子量調節剤を継続的に添加しながら、58℃で重合を継続した。
この添加の間、第1表(表1〜表6)に示す様にリン酸を継続的に添加して、第1表(表1〜表6)に示す時間まで重合系のpHを2から4に保って重合を行った。重合開始から8時間経過した後、冷却し、重合終了とした。
得られたラテックスを、ラッテクスに含まれる樹脂100部に対して、硫酸アルミニウム3.7部添加して凝固させ、53℃で60分間水洗、ろ過後、45℃で乾燥して粉末状のニトリル系樹脂を得た。
主要な重合条件を第1表(表1〜表6)に示す。また、得られた樹脂の特性を上記方法により測定し、その結果を第2表(表7)に示す。
【0056】
〔表の記載について〕
第1表(表1〜表6)に記載した、ANはアクリロニトリル、MAはアクリル酸メチル、EAはアクリル酸エチル、STはスチレンを表わす。第1表(表1〜表6)に記載した「後添加開始時間」、「後添加終了時間」、「pH2から4であった時間」及び「総転化率80(又は90)重量%到達時間」は、いずれも重合系に重合開始剤を添加して、重合反応を開始した起点からの経過時間を意味する。また、第1表(表1〜表6)に記載した「総転化率80から90重量%までの残存単量体混合物量/総添加単量体混合物量」は、単量体混合物の総転化率が80から90%に到る時点までの、最終的に重合系に添加される単量体混合物の総量に対する重合系内に残存する単量体混合物量の比の最大値と最小値を示す。
【0057】
【表1】
Figure 0003629363
【0058】
【表2】
Figure 0003629363
【0059】
【表3】
Figure 0003629363
【0060】
【表4】
Figure 0003629363
【0061】
【表5】
Figure 0003629363
【0062】
【表6】
Figure 0003629363
【0063】
【表7】
Figure 0003629363
【0064】
〔実施例の考察〕
共役ジエン単位を50重量%以上含むゴム状重合体1から30重量部の存在下で、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部をグラフト共重合して得られるキャリア用ニトリル系樹脂であって、該ニトリル系樹脂のガラス転移温度が50から69℃であり、且つ、該ニトリル系樹脂のゴム成分を除くマトリックス成分が、不飽和ニトリル単位45から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル単位20から55重量%を含むキャリア用ニトリル系樹脂は、キャリア用樹脂として用いる場合、キャリア製造時の成形加工性を考えると、メルトインデックス(以下、MIという)値が高いことが好ましく、少なくとも2g/10minのMIを有することが好ましい。また、帯電変化量は小さいこと、具体的には4μC/g未満が好ましい。
【0065】
本発明のキャリア用ニトリル系樹脂を用いた場合、キャリア製造時の成形加工性、キャリアの帯電安定性のバランスが良好である。すなわち、実施例1から21で得られたニトリル系樹脂は、ゴム状重合体の存在下、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物をグラフト共重合して得られる樹脂であって、ガラス転移温度が50から69℃、ゴム成分を含まないマトリックス樹脂成分の重量平均分子量が30,000から150,000である。かかるニトリル系樹脂は、キャリア製造時の成形加工性、キャリアとしての帯電安定性のバランスが良好である。
【0066】
一方、ガラス転移温度及び/又は重量平均分子量が上記範囲外となった比較例1から6及び比較例9〜11は、いずれもMIが低く、且つ、成形加工性も悪い。ガラス転移温度が50℃未満であった比較例7及びアクリロニトリルの量比を少なくした比較例8は、帯電変化量が大きく、帯電安定性が悪い。

Claims (9)

  1. キャリア用ニトリル系樹脂100重量部に対し、磁性粉100〜1000重量部含むことを特徴とする電子写真用キャリアであって、キャリア用ニトリル系樹脂が、共役ジエン単位を50重量%以上含むゴム状重合体1から30重量部の存在下で、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルからなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるニトリル系樹脂であり、該ニトリル系樹脂のガラス転移温度が50から69℃、且つ、該ニトリル系樹脂のゴム成分を除くマトリックス成分が、不飽和ニトリル単位45から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル単位20から55重量%を含み、重量平均分子量が30,000から150,000である、電子写真用キャリア。
  2. 共役ジエン単位を50重量%以上含むゴム状重合体が、1,3−ブタジエン重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体及び1,3−ブタジエン−スチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用キャリア
  3. 不飽和ニトリルが、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから選ばれた少なくとも1種の単量体であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用キャリア
  4. アクリル酸アルキルエステルが、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルから選ばれた少なくとも1種の単量体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用キャリア
  5. ゴム成分を除くマトリックス成分中に、不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体単位を20重量%以下含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア
  6. 不飽和ニトリル及びアクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体が、スチレンであることを特徴とする請求項5記載の電子写真用キャリア
  7. ゴム成分を除くマトリックス成分が、不飽和ニトリル単位50から80重量%及びアクリル酸アルキルエステル単位20から50重量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用キャリア
  8. ゴム成分を除くマトリックス成分の重量平均分子量が30,000から90,000であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真用キャリア
  9. キャリア用ニトリル系樹脂が、ゴム成分を1から50重量%含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用キャリア
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