JP3628749B2 - X線管制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、陰極及び回転する陽極を備え、陰極から出力された電子線をターゲットとしての陽極に照射してX線を発生させるX線管を制御するX線管制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線を被写体としての患者に照射し、その被写体を透過したX線を検出して、被写体の内部( 断面 )構造を撮影するX線CT装置が知られている。
このX線診断装置は、X線を発生させ被写体に照射するX線管及び被写体を透過したX線を検出するX線検出器を備え、被写体を略中心として、X線管とX線検出器とを対向させて被写体の周囲を回転させるものである。
【0003】
図9は、X線管の構成を示す断面図である。X線管1は、電子線を出力する陰極2及び電子線が照射されることによりX線を放射する陽極3を備え、陰極2と陽極3との間の電子線が通過する領域は、電子線の損失を最小限に抑えるために真空に形成されている。すなわち、前記陰極及び陽極は真空の管容器4の中に収納されている。
【0004】
陰極2は管容器4の所定箇所に固定されており、陽極3は回転シャフト5がその中央に固定され、この回転シャフト5が管容器4に固定された2組の軸受6,7を介して回転自在に軸支されている。なお、この軸受6,7と回転シャフト5との間には、管容器4の真空状態を保持するためシールが施されている。陽極3に固定された回転シャフト4は、コイル8と共に誘導型モータを構成して回転するようになっている。
【0005】
陽極3は、金属材により円盤形状に形成されており、その周辺が所定の角度で傾斜している。この傾斜している斜面に陰極2から出力された電子線が照射され、この電子線の照射により発生したエネルギーの一部がX線として放射される。残りのエネルギーのほとんどは熱エネルギーに変換する。陽極3から放射されたX線は、管容器4の一部に形成された透過部4−1を透過し、図示しないコリメータ( スリット )を介して被写体に照射される。
【0006】
電子線による陽極3における発熱効果は大きく、陽極3は高温になって膨脹する。すると、陽極3の斜面も陰極2の方向へ前進することになり、コリメータが固定されているため、X線の入射角度がずれ、被写体に対するX線の照射位置がずれる虞がある。このようなずれは、X線画像の感度補正が効かなくなるという問題があった。
【0007】
そこで、従来のX線診断装置では、FSMC(Focal Spot Movememt Correction )による補正を行うものが知られている。これは、被写体を撮影する本撮影の前に、予備撮影を行い、この予備撮影における陽極の斜面上の電子線の照射位置( 以下焦点位置と称する )を装置外部にセットした検出器により検出し、この焦点位置の変位を複数の段階に分割し、各段階とそのときの撮影のずれとから補正データを算出しておく。実際の被写体の本撮影時には、その撮影されたデータは、焦点位置の変位の各段階に対してそれぞれ設定された補正データでソフトウエア処理により補正される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のX線診断装置では、FSMCによる補正を行っていたため、予備撮影を行わなければならず、補正データの収集に時間がかかるという問題があった。
【0009】
また、撮影されたデータを補正データで補正するソフトウエア処理が必要であるという問題があった。
そこでこの発明は、X線管の陽極の熱膨張によるX線の照射位置のずれを防止することができるX線管制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、陰極及び円盤形状でその周辺に斜面を有して回転する陽極を備え、前記陰極から出力された電子線をターゲットとしての前記陽極の斜面に照射させて発生されるX線を外部に照射するX線管を制御するX線管制御装置において、前記電子線の照射により前記陽極の斜面で発生したX線を2つのチャンネルでそれぞれ検出するX線検出器と、前記X線検出器の検出値に基いて、前記陽極の回転軸方向の位置を調整する調整手段とを備えたものである。
【0012】
【作用】
この発明においては、電子線の照射により陽極で発生したX線を2つのチャンネルでそれぞれ検出される。この検出値に基いて、陽極の回転軸方向の位置が調整される。
【0013】
【実施例】
この発明の第1実施例を図1乃至図3を参照して説明する。
図1は、X線診断装置の概略の要部構成を示す図である。
X線管11からコリメータ( 図示せず )を介して扇状に放射されたX線は、被写体12の一断面を透過して複数のX線検出素子を1列に配列したX線検出器13により検出される。前記X線管11と前記X線検出器13とは対向してその位置関係が固定されており、図1中の矢印が示すように、被写体12を中心としてその周囲を回転する。
【0014】
図2は、前記X線管11の構成を示す断面図である。このX線管11は、陰極21及び陽極22を真空の管容器23の中に収納して構成されている。前記陰極21は前記管容器23の所定箇所に固定されており、前記陽極22は回転シャフト24がその中央に固定され、この回転シャフト24がリードスクリュ25に固定された2組の軸受26,27を介して回転自在に軸支されている。さらに、このリードスクリュ25は前記管容器23に前記陽極22の回転軸方向に摺動可能に設けられている。なお前記軸受26,27と回転シャフト24との間及び前記リードスクリュ25と前記管容器23との間には、この管容器23の真空状態を保持するためシールが施されている。前記陽極22に固定された回転シャフト24は、コイル28と共に誘導型モータを構成して回転するようになっている。
【0015】
前記陽極22は、金属材により円盤形状に形成されており、その周辺が所定の角度で傾斜している。この傾斜している斜面に前記陰極21から出力された電子線が照射され、この電子線の照射により発生したエネルギーの一部がX線として放射される。
【0016】
この陽極22から放射されたX線の一部は、前記管容器23の一部に形成された第1の透過部23−1を透過して図示しないコリメータ( スリット )を介して前記被写体12に照射される。また、前記陽極22から放射されたX線の他の一部は、前記管容器23の他の一部に形成された第2の透過部23−2を透過してピンホール29に照射され、このピンホール29を通過したX線が2chX線検出器30により検出される。
【0017】
前記ピンホール29及び前記2chX線検出器30は、前記X線管11に固定されている。この2chX線検出器30の2つのチャンネルにおける検出値の比を算出すれば、X線の放射位置を求めることができる。
【0018】
また、前記リードスクリュ25には前記X線管11に回転自在にしかも前記陽極22の回転軸方向について固定されたナット31が設けられている。このナット31にはモータ32が接続され、このモータ32の回転制御により、前記ナット31は所望の角度分回転する。そして、前記ナット31が所望の角度分回転すると、その角度に対応する長さ分前記リードスクリュ25が前記陽極22の回転軸方向に移動する。すなわち、前記陽極22がその回転軸方向に移動する。
【0019】
図3は、このX線診断装置に組み込まれているX線管制御装置の機能構成を示すブロック図である。
陽極位置検出手段41は、前記陽極22の膨脹の大きさを検出するもので、この第1実施例では、前記ピンホール29及び前記2chX線検出器30により構成されている。
【0020】
陽極位置判定手段42は、前記陽極位置検出手段41により得られた検出値から前記陽極22の表面位置を求めるものである。この第1実施例では、2chX線検出器30の2つのチャンネルで得られた検出値の比から前記陽極22の表面位置が算出される。
【0021】
前記陽極位置判定手段42により求められた前記陽極22の表面位置は、補正値算出手段43及び周期変動検出手段44に供給される。
前記補正値算出手段43は、基準値設定手段45により設定された前記陽極22の表面位置の基準値と前記陽極位置判定手段42から供給された前記陽極22の表面位置とを比較してその差を求め、この求めた差から補正値を算出する。この算出された補正値は陽極位置調整手段46へ供給される。この陽極位置調整手段46は供給された補正値に基いて、表面位置の基準値と検出された表面位置との差を0にするように、前記陽極22を移動させる。すなわち、この第1実施例では、前記モータ32を制御して前記ナット31を差に対応する角度回転させ、前記リードスクリュ25を前記陽極22の回転軸方向に移動させる。
【0022】
前記周期変動検出手段44は、前記陽極位置判定手段42から供給されてくる前記陽極22の表面位置の周期的な変動を検出するものである。この周期変動検出手段44により前記陽極22の表面位置の周期的な変動が検出されなければ、前記陽極22が回転していないと判断して、異常処置手段47により、X線の照射停止や警告等を出力する。
【0023】
このような構成の第1実施例においては、陽極22がコイル28からなる誘導形モータにより回転し、陰極21から出力された電子線が陽極22の斜面に照射される。すると、X線が放射されると共に熱が発生する。X線はコリメータを介して被写体12へ照射され、熱は陽極22を膨脹させ、その表面位置が変動する。
【0024】
陽極22の表面位置は、ピンホール29及び2chX線検出器30からなる陽極位置検出手段41により検出され、陽極位置判定手段42により、2chX線検出器30の2つのチャンネルの検出値の比を取って、陽極22の表面位置が求められる。
【0025】
補正値算出手段43により、陽極位置判定手段42により求められた表面位置と基準値設定手段45により設定された基準位置との差が算出され、この差から補正値が算出される。この補正値に基いて陽極位置調整手段46は、モータ32を制御してナット31及びリードスクリュ25を介して、陽極22の位置を移動させ、その表面位置が予め設定された基準位置に維持される。
【0026】
従って、陽極22が膨脹しても、その膨脹分だけリードスクリュ25が打ち消す方向に移動して、陽極22の表面位置、すなわち電子線が照射される位置、X線が放射する位置が、予め設定された基準位置に維持される。
【0027】
また、陽極22はその製造上の限界や陽極22と回転シャフト24との接続における垂直度からその表面がある程度凹凸が存在しており、回転する陽極22の表面位置の検出においては、その表面位置が周期的に変動する。
【0028】
従って、表面位置の検出において、周期的変動が検出されれば陽極22が回転していると判断でき、周期的変動が検出できなければ( 変動が検出できなければ )、陽極22が回転停止していると判断できる。そして、陽極22が回転停止しているのにかかわらず、陰極21から電子線を照射してX線を放射させていると、陽極22が溶融する虞がある。
【0029】
陽極位置判定手段42により求められる表面位置の周期的変動が、周期変動検出手段44により検出される。この周期変動検出手段44により周期的変動が検出されない場合には、異常処置手段47により、陰極21からの電子線の出力が停止され、警告等が出力される。
【0030】
このように第1実施例によれば、陽極22の表面位置を検出する陽極位置検出手段41としてのピンホール29及び2chX線検出器30と、この2chX線検出器30の検出値から陽極22の表面位置を求める陽極位置判定手段42と、この陽極位置判定手段42からの表面位置と基準位置との差から補正値を算出する補正値算出手段43と、この補正値算出手段により算出された補正値に基いて陽極22を移動させてその表面位置を基準位置に維持する陽極位置調整手段46と、陽極位置判定手段42からの表面位置における周期的変動を検出する周期変動検出手段44と、この周期変動検出手段44により周期的変動が検出されたなかったときに陰極21からの電子線の出力を停止し警告を出力する異常処置手段47とを設けたことにより、X線管11の陽極22の表面位置を常に基準位置に維持することができるので、陽極22の熱膨張によるX線の照射位置のずれを防止することができる。
【0031】
さらに、陽極位置検出手段41から陽極位置判定手段42を介して得られる陽極22の表面位置の周期的変動を、周期変動検出手段44により検出することにより、陽極22が回転していることを監視することができ、周期的変動が検出されなかったときには、異常処置手段47により陰極21の電子線の出力を自動的に停止することができるので、陽極22の回転不良による溶融を防止することができる。
【0032】
以下、第2実施例乃至第5実施例においては、前述した第1実施例と異なるのは、陽極位置検出手段41の構成であり、第1実施例ではピンホール29及び2chX線検出器30の例を示したが、以下その他の例を示す。従って陽極位置検出手段41以外の他の構成は第1実施例とほとんど同じであり、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0033】
この発明の第2実施例を図4を参照して説明する。この第2実施例はレーザ反射距離計を使用したものである。
図4は、X線管11の構成を示す断面図である。管容器23にはレーザが透過するレーザ用透過部51が形成され、レーザ発光部52は、レーザを前記レーザ用透過部51を透過して所定の照射角度で陽極22へ照射する。前記陽極22からのレーザの反射光は、再びレーザ用透過部51を透過して光検出器53により検出される。この光検出器53は、複数の光電変換素子を1列に配列して構成されたもので、光の検出位置が判る位置検出形である。
【0034】
前記レーザ発光部52及び前記光検出器53は、前記X線管11に固定して設けられており、陽極位置検出手段41を構成している。陽極位置判定手段42は、前記光検出器53から供給される位置情報に基いて、陽極22の表面位置を求める。
【0035】
特に、光検出器53が2chの場合には、この2つのチャンネルの比から陽極の表面位置が求まる。
例えば、各チャンネルから得られるデータをDa 、Db とすれば、陽極22の表面位置は、{Da /( Da +Db)}に基いて求められ、そのときの補正量は定数kを用いて、
k[( 1/2 )−{Da /( Da +Db )}]
として算出される。
また、陽極22の表面位置は、{( Da −Db ) /( Da +Db ) }に基いて求められ、そのときの補正量は定数kを用いて、
k{( Da −Db ) /( Da +Db ) }
として算出される。
このように第2実施例によれば、前述した第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0036】
この発明の第3実施例を図5を参照して説明する。この第3実施例はレーザ干渉計を使用したものである。
図5は、X線管11の構成を示す断面図である。管容器23にはレーザが透過するレーザ用透過部61が形成され、レーザ発光部62は、レーザをその照射方向に対して所定角度傾けたハーフミラー63へ照射する。レーザはこのハーフミラー63で2つに分岐する、一方は参照光として、反射して略垂直に参照光用ミラー64に照射する。他方は測定光として、前記ハーフミラー63を透過し、前記レーザ用透過部61を透過して略垂直に陽極22に照射する。
【0037】
前記参照光用ミラー64からの参照光の反射光は、ほとんど同じ来た光路を通って、前記ハーフミラー63を透過し、レーザ光検出器65へ照射する。また、前記陽極22からの測定光の反射光はほとんど同じ来た光路を通って、再び前記レーザ用透過部61を透過して、前記ハーフミラー63で反射されて、前記レーザ光検出器65へ照射する。
【0038】
前記参照光用ミラー64からの測定光及び前記陽極22からの参照光は、前記ハーフミラー63で重ね合わされる。このとき前記ハーフミラー63と前記参照光用ミラー64との間の距離は固定になっているので、前記ハーフミラー63から前記陽極22の表面までの距離に応じて、反射光間に干渉( 光の位相による干渉 )が生じる。
この干渉( 参照光と測定光のビート )から前記ハーフミラー63から前記陽極22の表面までの距離を求めることができる。
【0039】
前記レーザ発光部62、前記ハーフミラー63、前記参照光ミラー64及び前記レーザ光検出器65は、前記X線管11に固定して設けられており、陽極位置検出手段41を構成している。陽極位置判定手段42は、前記レーザ光検出器65から得られる参照光と測定光のビート( 干渉による光の変化 )から、前記陽極22の表面位置を求める。
このように第3実施例よれば、前述した第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0040】
この発明の第4実施例を図6を参照して説明する。この第4実施例は静電容量を使用したものである。
図6は、X線管11の構成を示す断面図である。管容器23には、陽極22の近傍( 陽極が膨脹しても接触しない程度の間隔 )に対向して設けられた電極71の引出軸72が固定されている。その固定部分には絶縁材からなるシール部材73が充填されて、前記管容器23内部の真空度が保たれている。
【0041】
また、リードスクリュ25には、前記電極71と前記陽極22との間に電圧をかけるために電極線74が接続されており、前記電極71及び前記電極線74は図示しないが電源に接続されている。従って、前記電極71と前記陽極22との間に一定の電圧をかけたときに電荷が蓄積され、その静電容量は前記電極71と前記陽極22との間の間隔に反比例する。
【0042】
前記電極71、前記引出軸72及び前記電極線74は、陽極位置検出手段41を構成している。陽極位置判定手段42は、前記電極71及び前記電極線74から得られる静電容量の値から、前記電極71と前記陽極22との間の間隔を算出して前記陽極22の表面位置を求める。
このように第4実施例によれば、前述した第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0043】
この発明の第5実施例を図7を参照して説明する。この第5実施例は電磁気作用を使用したものである。
図7は、X線管11の構成を示す断面図である。管容器23には、陽極22の近傍に( 陽極が膨脹しても接触しない程度の間隔 )に設けられたコイル( 電磁石 )81へ交流電源82からの電力を供給するリード線83が通る開孔が形成されている。この開孔には絶縁材からなるシール部材84が充填されて、管容器23の内部の真空度が保たれている。
【0044】
さらに、前記管容器23には、前記陽極22の近傍の前記コイル81から離れた箇所に設けられたホール素子85へ電力を供給すると共にその検出信号を取り出すための信号線86が通る開孔が形成されている。この開孔には絶縁材からなるシール部材87が充填されて、前記管容器23内部の真空度が保たれている。なお、この第5実施例ではホール素子85を使用したが、磁気に感応するセンサならば使用可能である。
【0045】
前記コイル81、前記交流電源82、前記リード線83、前記ホール素子85及び前記信号線86は、陽極位置検出手段41を構成している。陽極位置判定手段42は、前記ホール素子85からの検出信号( 電圧値 )を( 磁気的な値を介して )前記ホール素子85と前記陽極22との間の間隔又は前記コイル81と前記陽極22との間の間隔を算出して、前記陽極22の表面位置を求める。
【0046】
なお、前記コイル81及び前記ホール素子85の設置の方法として3通りの方法がある。すなわち、第1の方法は、前記コイル81及び前記ホール素子85を共に前記管容器23に対して固定して設けるもので、前記陽極22が膨脹するのに伴って、前記コイル81と前記陽極22との間の間隔及び前記ホール素子85と前記陽極22との間の間隔が共に短くなる。
【0047】
第2の方法は、前記コイル81は前記陽極22の表面に対して固定して設け、前記ホール素子85は前記管容器23に対して固定して設けるもので、前記陽極22が膨脹するのに伴って、前記ホール素子85と前記陽極22との間の間隔が短くなるが、前記コイル81と前記陽極22との間の間隔は一定に保たれる。
【0048】
第3の方法は、前記コイル81は前記管容器23に対して固定して設け、前記ホール素子85は前記陽極22の表面に対して固定して設けるもので、前記陽極22が膨脹するのに伴って、前記コイル81と前記陽極22との間の間隔が短くなるが、前記ホール素子85と前記陽極22との間隔は一定に保たれる。
このように第5実施例によれば、前述した第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0049】
この発明の第6実施例を図8を参照して説明する。上述した第1実施例乃至〜第5実施例では、陽極位置調整手段46が陽極22のみを移動させて前記陽極22の表面位置を調整するものであったが、この第6実施例では、X線管全体を移動させて陽極の表面位置を調整するものである。また、この第6実施例では、陽極位置調整手段46の構成が異なる点を除いては、ほとんど第4実施例と同様な構成になっているので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0050】
図8は、X線管11の構成を示す断面図である。このX線管11は、陰極21及び陽極22を真空の管容器91の中に収納して構成されている。前記陽極22の中央に固定された回転シャフト24は、前記管容器91に固定された2組の軸受26,27を介して回転自在に軸支されている。前記陽極22に固定された回転シャフト24は、コイル28と共に誘導型モータを構成して回転するようになっている。
【0051】
前記陰極21から出力された電子線が照射されたことにより、前記陽極22から放射されたX線は、前記管容器91の一部に形成された透過部91−1を透過して図示しないコリメータを介して被写体に照射される。
【0052】
前記管容器91には、前記陽極22の近傍に対向して設けられた電極71の引出軸72が固定されている。その固定部分には絶縁材からなるシール部材73が充填されて、前記管容器23内部の真空度が保たれている。一方、前記陽極22に固定された回転シャフト24には、スプリング92で常に圧着されたカーボン電極93に電極線74が接続されており、前記電極71及び前記電極線74は図示しないが電源に接続されている。
【0053】
前記管容器91は、前記陽極22の回転軸方向に設けられた直線軸受94の可動部95上に固定され、前記X線管11は前記陽極22の回転軸方向に摺動可能となっている。さらに、前記管容器91にはリードスクリュ96が固定され、このリードスクリュ96には、前記陽極22の回転軸方向に固定された回転自在なナット97が設けられている。このナット97にはモータ98が接続され、このモータ98の回転制御により、ナット97は所望の角度分回転する。そして、前記ナット97が所望の角度分回転すると、その角度に対応する長さ分前記リードスクリュ96が前記陽極22の回転軸方向に移動する。すなわち前記X線管11、従って前記陽極22がその回転軸方向に移動する。
【0054】
なお、前記直線軸受94は、前記透過部91−1を透過して被写体へ照射されるX線を遮蔽しないように、前記透過部91−1及びその周辺部分には設けられていない。
【0055】
このような構成の第6実施例においては、陽極22の表面位置は、電極71、引出軸72及び電極線74からなる陽極位置検出手段41により検出され、陽極位置判定手段42は、電極71及び電極線74から得られる静電容量の値から、電極71と陽極22との間の間隔を算出して前記陽極22の表面位置を求める。
【0056】
補正値算出手段43により、陽極位置判定手段42により求められた表面位置と基準値設定手段45により設定された基準位置との差が算出され、この差から補正値が算出される。この補正値に基いて陽極位置調整手段46は、モータ98を制御してナット97及びリードスクリュ96を介して、X線管11が直線軸受上を移動し、従って、陽極22の表面位置が予め設定された基準位置に維持される。
【0057】
従って、陽極22が膨脹しても、その膨脹分だけリードスクリュ25が打ち消す方向に移動して、陽極22の表面位置、すなわち電子線が照射される位置、X線が放射する位置が、予め設定された基準位置に維持される。
【0058】
このように第6実施例によれば、第1実施例と同様な効果を得ることができる。また、リードスクリュ96、ナット97及びモータ98をX線管11の外部に設けることができるので、既存のX線管に取付け可能であるという効果を得ることができる。
【0059】
なお、上述した第1実施例乃至第6実施例において、陽極位置調整手段46として、リードスクリュ、ナット及びモータからなる直線駆動機構の例で説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、ラック&ピニオン及びモータからなる直線駆動機構やリニアモータなどの他の直線駆動機構でも適用可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したようにこの発明によれば、X線管の陽極の熱膨張によるX線の照射位置のずれを防止することができるX線管制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例のX線管制御装置を組込んだX線診断装置の概略の要部構成を示す図。
【図2】同実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図3】同実施例のX線管制御装置の機能構成を示すブロック図。
【図4】第2実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図5】第3実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図6】第4実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図7】第5実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図8】第6実施例のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【図9】従来のX線管制御装置のX線管の構成を示す断面図。
【符号の説明】
11…X線管、
21…陰極、
22…陽極、
23…管容器、
41…陽極位置検出手段、
42…陽極位置判定手段、
43…補正値算出手段、
44…周期変動検出手段、
45…基準値設定手段、
46…陽極位置調整手段、
47…異常処置手段。
Claims (4)
- 陰極及び円盤形状でその周辺に斜面を有して回転する陽極を備え、前記陰極から出力された電子線をターゲットとしての前記陽極の斜面に照射させて発生されるX線を外部に照射するX線管を制御するX線管制御装置において、
前記電子線の照射により前記陽極の斜面で発生したX線を2つのチャンネルでそれぞれ検出するX線検出器と、
前記X線検出器の検出値に基いて、前記陽極の回転軸方向の位置を調整する調整手段とを具備したことを特徴とするX線制御装置。 - 前記調整手段は、前記検出器の2つのチャネルで得られた検出値の比に基づいて前記位置を調整するものであることを特徴とする請求項1に記載のX線制御装置。
- 前記検出器の2つのチャネルで得られた検出値の比に基づいて前記陽極の表面位置を求め、その表面位置の周期的な変動を検出する手段と、
前記周期的な変動が検出されない場合に前記陽極が回転していないと判断する手段とをさらに具備したことを特徴とする請求項1に記載のX線制御装置。 - 前記陽極が回転していないと判断されたことに応じて、前記陰極からの電子線の出力を停止し、警告を出力する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のX線制御装置。
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