JP3628126B2 - 抽出装置及び希釈装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排出ガス等の流れから一定の流量比で一部を分割・抽出する抽出装置及びこれを利用した希釈装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境汚染防止の観点から、工場等から排出ガス、内燃機関等の排出ガスについて種々の規制が定められている。特に、自動車の排出ガスについては、自然環境への影響が大きいことから、年々規制の内容がその厳しさを増している。このために、自動車業界では、有毒成分を排出しないエンジンを目指し、精力的にエンジンの開発・改良を行っている。このようなエンジンの開発においては、その排出ガスを採取し、含有成分を分析研究することが必要不可欠である。
【0003】
排出ガスの分析は、一般に全量希釈装置(全量希釈トンネル)に排出ガスの全量を導入し、そこで大気と混合、希釈されたものを採取して行う。これは、分析対象となる排出ガスを、通常の自動車から大気中へ排気された排出ガスと同じ環境下におくためである。しかし、全量希釈装置は大がかりな設備であり、設置するために多大の費用と空間とを必要とする。このために、排出ガスの全量を希釈するのではなく、その一部のみを一定の流量比で分割・抽出し、全量希釈装置におけるのと同じ条件で希釈するいわゆる部分希釈装置(部分希釈トンネル)が開発され、利用されている。
【0004】
図4は、従来の部分希釈装置の一例を示す図である。
図示の部分希釈装置は、主に整流器10、多管式の抽出装置120、希釈トンネル50から構成されている。
【0005】
整流器10は、不図示エンジンから直接導入された排出ガスの速度分布を整える、すなわち排出ガスの整流を行うものである。
抽出装置120は、整流器10により整流された排出ガスから一部を抽出し、これを希釈トンネル50に導入するものである。抽出装置120は、同径同長の複数の細管を束ねた抽出器21を備え、それら細管の中の1本(以下「抽出管22」という)は希釈トンネル50まで、他の細管(以下「非抽出管23」という)はサージタンク30まで延長されている。抽出装置120に導入された排出ガスは、各細管に流入することにより複数の流れに分割され、その中で抽出管22に流入した流れが希釈トンネル50へ導入される。一方、非抽出管23へ流入した流れは、サージタンク30を経て大気中へ放出される。
【0006】
希釈トンネル50は、上流端にエアフィルタ51を、下流端に定容量吸引ポンプ(CVS52)を備えた風洞である。CVS52を稼動させると、希釈トンネル50の内部が負圧となり、エアフィルタ51を介して希釈トンネル内を大気が流れる。希釈トンネル50の中間には、混合オリフィス53が設けられている。前述の抽出管22の先端は、この混合オリフィス53の上流近傍に配置されている。したがって、抽出管22より放出された排出ガスは、混合オリフィス53を通過することにより周囲大気と混合され、希釈される。また、希釈トンネル50の下流側には、希釈された排出ガスをサンプリングするためにサンプリング管54が設置されている。サンプリング管54により採取された希釈後の排出ガスは、不図示の定容量サンプリング装置へ導入され、そこでその含有成分を分析される。
【0007】
部分希釈装置では、排出ガスの一部を抽出装置で抽出し、これを希釈トンネルに導入するが、抽出装置において抽出される排出ガスの全排出ガスに対する流量比(以下「抽出比」という)はエンジンの運転状態によらず常に一定でなければならない。抽出比が一定でないと、希釈トンネルにおける排出ガスの希釈率が一定せず、排出ガスの成分分析が不正確となるからである。
【0008】
一方、多管式抽出装置120は、前述のように同長同径の細管を複数束ね、それぞれの細管に等しい流量の排出ガスを流入させることにより排出ガスの一部を抽出しようとするものである。細管は、全て同長同径であるので、各細管の入口と出口との間の圧力差が等しければ、それぞれの細管に流入する排出ガスの流量は等しくなり、抽出比も一定となる。ところが、抽出管の出口が配置されている希釈トンネル内は大気圧より負圧となっているのに対し、非抽出管の出口における圧力は大気圧にほぼ等しい。したがって、それぞれの管の入口における圧力が等しくても、それぞれの管の入口、出口間で生じる圧力差(ΔPt、ΔPs)は等しくない。しかも、エンジンの運転状態の変化により、多管式抽出装置120の入口における圧力が増減すると、ΔPt、ΔPsもそれぞれ変化する。したがって、単に複数の細管を配置しただけでは、排出ガスの一部をエンジンの運転状態によらず一定の抽出比で抽出することはできない。
【0009】
そこで、従来、多管式の抽出装置では、抽出比を一定にすべく、抽出管に流れる排出ガスの流量を補正するための種々の手段が設けられている。例えば図4に示す部分希釈装置では、そのような手段として抽出比制御ノズル24及び二酸化炭素分析計25aを用いている。二酸化炭素分析計25aは、抽出管22の出口より十分下流の希釈トンネル50から排出ガスを採取し、その二酸化炭素濃度を測定するものである。一方、抽出比制御ノズル24は、二酸化炭素分析計25aにより測定される二酸化炭素濃度が所定の値となるように、抽出管22の出口近傍に向けて噴流を噴射するノズルである。一般に、噴流中の圧力は周囲流体より高い。したがって、抽出管22の出口近傍に噴流を噴射した場合には、そこの流れ場の圧力は増大する。つまり、上記の抽出装置では、噴流を用いて抽出管出口近傍の圧力を増大させ、差圧ΔPtを制御することにより、抽出比を調整しようとしているのである。なお、二酸化炭素分析計25aが抽出管の出口より十分下流に配置されるのは、周囲大気と均一に混合、希釈された排出ガスを採取する必要があるからである。
【0010】
図5は、図4に示されたのと異なる従来の部分希釈装置を示す図である。図5の部分希釈装置では、多管式抽出装置220における排出ガスの抽出比を補正する手段として、抽出比制御ノズル24と2つの圧力センサ55及び56とを用いている。この例において、圧力センサ55、56はそれぞれ抽出管22又は非抽出管23の出口に配置され、そこでの流れ場の圧力を測定する。抽出比制御ノズル24は、図4における抽出比制御ノズルと基本的には同じ機能を果たすものであり、圧力センサ55及び56の出力に基づき、それぞれが検出する圧力が同一となるように噴流を噴出する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の部分希釈装置では、以下のような種々の問題があった。
例えば、図4の部分希釈装置では、二酸化炭素分析計52を抽出管22の出口より十分下流に配置する必要があるために、抽出装置120での排出ガスの抽出比が変化しても、それが二酸化炭素分析計52において二酸化炭素の濃度変化として現れるまでに相当の時間を必要とする。したがって、二酸化炭素分析計52の出力に基づいて抽出装置120の抽出比を補正しても、そこには一定の時間遅れが存在する。このために、従来の抽出装置及びこれを利用した部分希釈装置では、過渡運転を行っているエンジンにおけるように、排出ガスの流量が急激に変化する場合に、排出ガスの抽出比を精度よく一定に維持することができないという問題があった。
【0012】
一方、図5に例示した従来の部分希釈装置では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍において流れ場の圧力を測定している。したがって、排出ガスの抽出比に変化が生じた場合、すなわち、抽出管等の出口圧力において変化が生じた場合には、直ちにそれを検出し、その調整を行うことができる。
しかし、噴流によって圧力が制御されるのは流れ場の局所的な領域であり、その領域の圧力を圧力センサにより的確に測定することは困難である。また、抽出管出口近傍には排出ガスの脈動の影響もあり、この位置において計測された圧力値に基づいて抽出管における排出ガスの流量を判断することも容易ではない。このために、図5の部分希釈装置では、精度よく抽出比を制御することができないという問題があった。
【0013】
さらに、噴流を用いて、時間的、空間的に均一な圧力の領域を流れ場の中に作り出すことは極めて困難なことである。しかも、流れ場の圧力は、抽出比制御ノズルの設置角度や形状により、その値が変化する。このために、抽出比制御ノズルを用いて抽出管に流れる排出ガスの流量を調整することがそもそも困難であるという問題もあった。
【0014】
そこで、本発明の課題は、一の流れから、一定の流量比で、精度よく、その一部を分割・抽出する抽出装置及びそれを利用した部分希釈装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、少なくとも1の抽出用流路(22)と、少なくとも1の非抽出用流路(23)とを有し、一の流れを、前記抽出用流路及び前記非抽出用流路に導入することにより分割し、前記抽出用流路に流入した流れを外部へ取り出すことにより前記一の流れの一部を抽出する抽出装置(20)において、前記抽出用流路の出口近傍に配置され、前記抽出用流路における流量に関する情報を検出する第1の検出手段(55)と、前記非抽出用流路の出口近傍に配置され、前記非抽出用流路における流量に関する情報を検出する第2の検出手段(56)と、前記非抽用出流路の出口における流れ場の圧力を流れを吸引することにより調整する圧力調整手段(40)と、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段(42)とを備え、前記制御手段は、前記抽出用流路における流れと、前記非抽出用より流出する流れとの流量比が前記一の流れの流動特性に関わらず一定となるように、前記圧力調整手段を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の抽出装置において、前記非抽出用流路の出口には、流れの圧力変動を抑制する流路断面拡大部(30)が配置されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の抽出装置において、前記圧力調整手段はエゼクタであることを特徴としている。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度を検出することを特徴とする。
請求項5に係る発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度と、流れ場の温度とを検出することを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の抽出装置と、前記抽出装置に流入する前記流体の速度分布を整える整流手段(10)と前記抽出装置により抽出された流体を一定流量の大気と混合して希釈する希釈手段(50、51、52))とを備え、前記抽出装置に流入した前記流体の一部を一定の比率で希釈することを特徴とする。
請求項7に係る発明によれば、請求項6に記載の希釈装置において、前記エゼクタは、前記希釈手段が排出する流体を利用して稼動することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照して、本発明に係る実施形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る部分希釈装置の第1実施形態を示す図である。本実施形態の部分希釈装置は、抽出比を制御するための新規な手段を備えた抽出装置20を利用している点において従来の部分希釈装置と異なっている。すなわち、本実施形態で利用している抽出装置20は、従来の抽出装置(120、220)のように抽出管22の出口ではなく、非抽出管23の出口において流れ場の圧力を調整することにより、抽出比を一定に維持する点に特徴を有する。そこで、以下には主に抽出装置について説明し、従来の部分希釈装置と実質的に同様な機能を果たす部分については説明を省略する。なお、以下の説明において従来の技術に関する説明で用いたのと同一の符号を付したものは、従来の技術で説明したものと同一の機能を有する。
【0020】
はじめに、本実施形態で利用する抽出装置20の構成について説明する。
抽出装置20は、抽出器21、サージタンク30、エゼクタ40、流量コントローラ42及び2つの圧力センサ55、56とから主に構成されている。抽出器21は、図4等において説明した従来の抽出器と同じ多管式の抽出器である。抽出器21を構成する非抽出管23の出口側には、サージタンク30が接続されている。したがって、非抽出管23からの排出ガスは、全てこのサージタンク30に放出される。
【0021】
サージタンク30の出口には、エゼクタ40が接続されている。エゼクタ40は、サージタンク30の中の排出ガスを外部へ吸引する機能を果たすものである。エゼクタ40には、不図示の高圧空気源からの空気を供給するパイプ41が流量コントローラ42を介して接続されている。流量コントローラ42は、パイプ41の中を流れるエアの流量を制御するためのコントローラである。流量コントローラ42には、圧力センサ55、56の出力端が接続されている。圧力センサ55及び56は、それぞれ抽出管22及び非抽出管23の出口近傍において流れ場の圧力Pt、Psを計測するセンサである。
【0022】
次に、抽出装置20の動作について、圧力センサ55、56によって計測される圧力Pt、Psを同一の値に一致させる場合を例に説明する。
はじめに、圧力センサ55、56は、それぞれ圧力Pt、Psを計測し、その結果を流量コントローラ42へ送信する。流量コントローラでは、Pt、Psの値を比較し、その結果に基づいてエゼクタへ供給するエアの流量を制御する。
【0023】
例えば、圧力Psが圧力Ptより大である場合には、流量コントローラ42は、エゼクタ40へのエアの供給量(エゼクタ40の一次空気流)を増大させる。一次空気流が増大すると、エゼクタ40によりサージタンク30より外部へ吸引される排出ガスの量は増大し、サージタンク30の内部の圧力、すなわち、非抽出管23の出口における流れ場の圧力が低下する。この結果、非抽出管23に流れる排出ガスの流量が増大し、抽出装置20における排出ガスの抽出比が低下する。
一方、圧力Psが圧力Ptより小である場合には、流量コントローラ42は、エゼクタ40へ供給する流量を絞る。この結果、エゼクタ40がサージタンクより吸引する排出ガスの量が減り、非抽出管23の出口における排出ガスの圧力は増大する。さらに、非抽出管23に流れる排出ガスの流量が減少し、抽出装置20における排出ガスの抽出比が増大する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態では、非抽出管23の出口における排出ガスを吸引することにより、非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を増減させ、抽出装置20における排出ガスの抽出比を調整する。このように、排出ガスを吸引することにより流れ場の圧力を制御するのは、この方法によれば、噴流を流れ場に放出する場合のように圧力が局所的にのみ変化することがなく、比較的広い空間において均一に変化するからである。乱流噴流などでは、内部の圧力場が時間的にも変動し、不安定なものであるが、本実施形態では、このような問題も生じない。したがって、本実施形態によれば、噴流を抽出管22の出口に噴射する場合と比較して、流れ場の圧力をより安定に制御でき、結果として抽出比の制御を精度よく行うことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、サージタンク30の中が、希釈トンネルの中と同じように負圧となる。これにより、抽出比の制御に使用すべき圧力は、サージタンク内と、希釈トンネルの抽出管出口より下流から混合オリフィス手前までの空間という、比較的広い空間で計測することが可能となる。つまり、本実施形態では、図5で示した部分希釈装置と比較して、圧力センサの配置位置に関する制限が少なく、抽出装置、部分希釈装置を設計、製造するのが容易となっている。
【0026】
また、本実施形態のように非抽出管23からの排出ガスをサージタンクへ放出した場合には、排出ガスの脈動はサージタンクにおいて速やかに減衰する。したがって、圧力センサ56の計測結果における排出ガスの脈動の影響は最小限に抑制され、抽出比の制御は容易となる。
【0027】
一方、本実施形態でサージタンク内の排出ガスを吸引する手段としては、エゼクタ40以外にルーツポンプなどのポンプを使用することも可能である。しかし、本実施形態の場合には、エゼクタを使用するのが最も好ましいと考えられる。これは、排出ガスが400°C程度の高温流体であり、排出ガスが流れる部位は高温に耐えられる構造・材質であることが必要とされるからである。この点において、エゼクタは内部に稼動部分がなく、形状も比較的単純で、種々の材料より製造可能であることから、排出ガスを吸引するのに適しているといえる。
【0028】
なお、本実施形態において抽出比は、基本的には抽出器21における抽出管22、非抽出管23の形状、配置等により決定される。一方、エゼクタ40は、排出ガスの流量変化等に起因して発生する抽出比の誤差を除去すべく機能するものである。この点において、本実施形態は、特開昭64−31032に開示されている部分希釈装置と異なっている。特開昭64−31032に開示されている部分希釈装置は、抽出管にエゼクタを取り付け、抽出管に流れる排出ガスの流量、すなわち、抽出比を直接エゼクタにより制御する。しかし、エゼクタでは、一次空気の流量変化に対し、主流量はある程度の時間遅れをもって変化する。したがって、特開昭64−31032の部分希釈装置では、エンジンが過渡運転をしている場合など、排出ガスの流量が急激に変化するときは、抽出比を的確に制御できず、大きな誤差を示す。これに対し、本実施形態は、直接的には多管式の抽出器21により排出ガスを分割、抽出するので、排出ガスの流量が急激に変化した場合であっても、抽出比が大きく変化してしまうことはない。
【0029】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る部分希釈装置の第2実施形態を示す図である。本実施形態は、パイプ41のエゼクタ40に接続されるのと反対の端部を、高圧空気源にではなく、CVS52の排気側に接続する点において第1実施形態と異なっている。
本実施形態によれば、エゼクタ40を稼動させるための高圧空気源を別途用意する必要がなく、装置をコンパクトかつ安価に製造し、提供することが可能である。
【0030】
(第1又は第2実施形態の変形例1)
第1及び第2実施形態では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を計測し、これに基づいて抽出比を調整することとしている。ここで、抽出比は、抽出される排出ガスの全排出ガスに対する流量比である。したがって、抽出比の調整は、排出ガスの流量と一定の関連を有する物理量であれば、上記圧力以外のものを利用して行うことも可能である。例えば、抽出管22、非抽出管23の出口における排出ガスの速度を測定し、その測定結果に基づいて抽出比を調整することも可能である。なお、排出ガスの速度を測定する具体的手段としては、例えばレーザ・ドップラー・流速計等の非接触式の測定器を用いることが、流れ場を乱さずに速度測定を行える点から好ましい。
【0031】
(第1又は第2実施形態の変形例2)
第1及び第2実施形態では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を計測し、これに基づいて抽出管等における排出ガスの流量を調整しているが、これは、同じ領域においてさらに流れ場の温度を計測し、計測された温度と圧力に基づいて流量の調整をすることであってもよい。ここで、圧力のみに基づいて求められる流量は体積流量である。これに対し、圧力及び温度が既知である場合には、質量流量を求め、これを調整することが可能となる。
【0032】
排出ガスは高温流体であるために、抽出管22等を流動している間に急激にその温度が低下し、その結果、抽出管22、非抽出管23のそれぞれから排出される排出ガスの温度が著しく異なる場合がある。この場合には、抽出管22及び非抽出管23を流れる排出ガスの体積流量を同一に調整したとしても、それらの質量流量は異なり、結果として部分希釈装置における排出ガスの希釈率が不正確となる。
本変形例の場合には、上記のような問題を回避し、例えば抽出管等の断熱処理が不十分又は十分にできない場合であっても、排出ガスの抽出比を精度よく行うことができる。なお、流れ場の温度を計測する手段としては、例えば、抽出管等の出口内壁に設置された熱電対が使用可能である。
【0033】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、抽出装置として多管式の抽出装置を利用する場合を例に説明をしたが、本発明の技術的思想は、排出ガスの流路を2以上の流路に分割し、その一方へ流入した排出ガスを外部へ抽出する抽出装置であれば、他の形態のものであっても適用可能である。したがって、本発明の技術的思想は、例えば、排気管の途中に細管を1本挿入し、その細管に流入する排出ガスを外部に抽出する形態の抽出装置にも適用可能である。また、図3に示すように、断面(60a、60b、60c)の円周方向に、等形状の複数の流路(62a、62b、62c)を配置し、これらの一つに流入した排出ガスを外部へ抽出する形態の抽出装置に適用することも可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、圧力調整手段は、非抽用出流路の出口における流れ場の圧力を流れを吸引することにより調整するので、流れの抽出比を精度よく制御することが可能である。
請求項2に係る発明によれば、非抽出用流路の出口に流路断面拡大部を配置したので、脈動等により流れに圧力変動があっても、その圧力変動は流路断面拡大部において抑制され、抽出比制御の妨げとならない。
【0036】
請求項3に係る発明によれば、圧力調整手段としてエゼクタを用いたので、高温流体を容易に取り扱うことが可能である。
請求項5に係る発明によれば、第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度と、流れ場の温度とを検出するので、抽出用流路及び非抽出用流路における質量流量に基づいて抽出比を制御することができる。
請求項6に係る発明によれば、流体の一部を精度よく希釈する希釈装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る部分希釈装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る部分希釈装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】抽出装置における排気管の断面形状の例を示す図である。
【図4】従来の部分希釈装置の一例を示す図である。
【図5】従来の部分希釈装置であって、図4とは異なる例を示す図である。
【符号の説明】
10 整流器
20 抽出装置
21 抽出器
22 抽出管
23 非抽出管
30 サージタンク
40 エゼクタ
42 流量コントローラ
50 希釈トンネル
51 エアフィルタ
52 CVS
55、56 圧力センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排出ガス等の流れから一定の流量比で一部を分割・抽出する抽出装置及びこれを利用した希釈装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境汚染防止の観点から、工場等から排出ガス、内燃機関等の排出ガスについて種々の規制が定められている。特に、自動車の排出ガスについては、自然環境への影響が大きいことから、年々規制の内容がその厳しさを増している。このために、自動車業界では、有毒成分を排出しないエンジンを目指し、精力的にエンジンの開発・改良を行っている。このようなエンジンの開発においては、その排出ガスを採取し、含有成分を分析研究することが必要不可欠である。
【0003】
排出ガスの分析は、一般に全量希釈装置(全量希釈トンネル)に排出ガスの全量を導入し、そこで大気と混合、希釈されたものを採取して行う。これは、分析対象となる排出ガスを、通常の自動車から大気中へ排気された排出ガスと同じ環境下におくためである。しかし、全量希釈装置は大がかりな設備であり、設置するために多大の費用と空間とを必要とする。このために、排出ガスの全量を希釈するのではなく、その一部のみを一定の流量比で分割・抽出し、全量希釈装置におけるのと同じ条件で希釈するいわゆる部分希釈装置(部分希釈トンネル)が開発され、利用されている。
【0004】
図4は、従来の部分希釈装置の一例を示す図である。
図示の部分希釈装置は、主に整流器10、多管式の抽出装置120、希釈トンネル50から構成されている。
【0005】
整流器10は、不図示エンジンから直接導入された排出ガスの速度分布を整える、すなわち排出ガスの整流を行うものである。
抽出装置120は、整流器10により整流された排出ガスから一部を抽出し、これを希釈トンネル50に導入するものである。抽出装置120は、同径同長の複数の細管を束ねた抽出器21を備え、それら細管の中の1本(以下「抽出管22」という)は希釈トンネル50まで、他の細管(以下「非抽出管23」という)はサージタンク30まで延長されている。抽出装置120に導入された排出ガスは、各細管に流入することにより複数の流れに分割され、その中で抽出管22に流入した流れが希釈トンネル50へ導入される。一方、非抽出管23へ流入した流れは、サージタンク30を経て大気中へ放出される。
【0006】
希釈トンネル50は、上流端にエアフィルタ51を、下流端に定容量吸引ポンプ(CVS52)を備えた風洞である。CVS52を稼動させると、希釈トンネル50の内部が負圧となり、エアフィルタ51を介して希釈トンネル内を大気が流れる。希釈トンネル50の中間には、混合オリフィス53が設けられている。前述の抽出管22の先端は、この混合オリフィス53の上流近傍に配置されている。したがって、抽出管22より放出された排出ガスは、混合オリフィス53を通過することにより周囲大気と混合され、希釈される。また、希釈トンネル50の下流側には、希釈された排出ガスをサンプリングするためにサンプリング管54が設置されている。サンプリング管54により採取された希釈後の排出ガスは、不図示の定容量サンプリング装置へ導入され、そこでその含有成分を分析される。
【0007】
部分希釈装置では、排出ガスの一部を抽出装置で抽出し、これを希釈トンネルに導入するが、抽出装置において抽出される排出ガスの全排出ガスに対する流量比(以下「抽出比」という)はエンジンの運転状態によらず常に一定でなければならない。抽出比が一定でないと、希釈トンネルにおける排出ガスの希釈率が一定せず、排出ガスの成分分析が不正確となるからである。
【0008】
一方、多管式抽出装置120は、前述のように同長同径の細管を複数束ね、それぞれの細管に等しい流量の排出ガスを流入させることにより排出ガスの一部を抽出しようとするものである。細管は、全て同長同径であるので、各細管の入口と出口との間の圧力差が等しければ、それぞれの細管に流入する排出ガスの流量は等しくなり、抽出比も一定となる。ところが、抽出管の出口が配置されている希釈トンネル内は大気圧より負圧となっているのに対し、非抽出管の出口における圧力は大気圧にほぼ等しい。したがって、それぞれの管の入口における圧力が等しくても、それぞれの管の入口、出口間で生じる圧力差(ΔPt、ΔPs)は等しくない。しかも、エンジンの運転状態の変化により、多管式抽出装置120の入口における圧力が増減すると、ΔPt、ΔPsもそれぞれ変化する。したがって、単に複数の細管を配置しただけでは、排出ガスの一部をエンジンの運転状態によらず一定の抽出比で抽出することはできない。
【0009】
そこで、従来、多管式の抽出装置では、抽出比を一定にすべく、抽出管に流れる排出ガスの流量を補正するための種々の手段が設けられている。例えば図4に示す部分希釈装置では、そのような手段として抽出比制御ノズル24及び二酸化炭素分析計25aを用いている。二酸化炭素分析計25aは、抽出管22の出口より十分下流の希釈トンネル50から排出ガスを採取し、その二酸化炭素濃度を測定するものである。一方、抽出比制御ノズル24は、二酸化炭素分析計25aにより測定される二酸化炭素濃度が所定の値となるように、抽出管22の出口近傍に向けて噴流を噴射するノズルである。一般に、噴流中の圧力は周囲流体より高い。したがって、抽出管22の出口近傍に噴流を噴射した場合には、そこの流れ場の圧力は増大する。つまり、上記の抽出装置では、噴流を用いて抽出管出口近傍の圧力を増大させ、差圧ΔPtを制御することにより、抽出比を調整しようとしているのである。なお、二酸化炭素分析計25aが抽出管の出口より十分下流に配置されるのは、周囲大気と均一に混合、希釈された排出ガスを採取する必要があるからである。
【0010】
図5は、図4に示されたのと異なる従来の部分希釈装置を示す図である。図5の部分希釈装置では、多管式抽出装置220における排出ガスの抽出比を補正する手段として、抽出比制御ノズル24と2つの圧力センサ55及び56とを用いている。この例において、圧力センサ55、56はそれぞれ抽出管22又は非抽出管23の出口に配置され、そこでの流れ場の圧力を測定する。抽出比制御ノズル24は、図4における抽出比制御ノズルと基本的には同じ機能を果たすものであり、圧力センサ55及び56の出力に基づき、それぞれが検出する圧力が同一となるように噴流を噴出する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の部分希釈装置では、以下のような種々の問題があった。
例えば、図4の部分希釈装置では、二酸化炭素分析計52を抽出管22の出口より十分下流に配置する必要があるために、抽出装置120での排出ガスの抽出比が変化しても、それが二酸化炭素分析計52において二酸化炭素の濃度変化として現れるまでに相当の時間を必要とする。したがって、二酸化炭素分析計52の出力に基づいて抽出装置120の抽出比を補正しても、そこには一定の時間遅れが存在する。このために、従来の抽出装置及びこれを利用した部分希釈装置では、過渡運転を行っているエンジンにおけるように、排出ガスの流量が急激に変化する場合に、排出ガスの抽出比を精度よく一定に維持することができないという問題があった。
【0012】
一方、図5に例示した従来の部分希釈装置では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍において流れ場の圧力を測定している。したがって、排出ガスの抽出比に変化が生じた場合、すなわち、抽出管等の出口圧力において変化が生じた場合には、直ちにそれを検出し、その調整を行うことができる。
しかし、噴流によって圧力が制御されるのは流れ場の局所的な領域であり、その領域の圧力を圧力センサにより的確に測定することは困難である。また、抽出管出口近傍には排出ガスの脈動の影響もあり、この位置において計測された圧力値に基づいて抽出管における排出ガスの流量を判断することも容易ではない。このために、図5の部分希釈装置では、精度よく抽出比を制御することができないという問題があった。
【0013】
さらに、噴流を用いて、時間的、空間的に均一な圧力の領域を流れ場の中に作り出すことは極めて困難なことである。しかも、流れ場の圧力は、抽出比制御ノズルの設置角度や形状により、その値が変化する。このために、抽出比制御ノズルを用いて抽出管に流れる排出ガスの流量を調整することがそもそも困難であるという問題もあった。
【0014】
そこで、本発明の課題は、一の流れから、一定の流量比で、精度よく、その一部を分割・抽出する抽出装置及びそれを利用した部分希釈装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、少なくとも1の抽出用流路(22)と、少なくとも1の非抽出用流路(23)とを有し、一の流れを、前記抽出用流路及び前記非抽出用流路に導入することにより分割し、前記抽出用流路に流入した流れを外部へ取り出すことにより前記一の流れの一部を抽出する抽出装置(20)において、前記抽出用流路の出口近傍に配置され、前記抽出用流路における流量に関する情報を検出する第1の検出手段(55)と、前記非抽出用流路の出口近傍に配置され、前記非抽出用流路における流量に関する情報を検出する第2の検出手段(56)と、前記非抽用出流路の出口における流れ場の圧力を流れを吸引することにより調整する圧力調整手段(40)と、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段(42)とを備え、前記制御手段は、前記抽出用流路における流れと、前記非抽出用より流出する流れとの流量比が前記一の流れの流動特性に関わらず一定となるように、前記圧力調整手段を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の抽出装置において、前記非抽出用流路の出口には、流れの圧力変動を抑制する流路断面拡大部(30)が配置されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の抽出装置において、前記圧力調整手段はエゼクタであることを特徴としている。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度を検出することを特徴とする。
請求項5に係る発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度と、流れ場の温度とを検出することを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の抽出装置と、前記抽出装置に流入する前記流体の速度分布を整える整流手段(10)と前記抽出装置により抽出された流体を一定流量の大気と混合して希釈する希釈手段(50、51、52))とを備え、前記抽出装置に流入した前記流体の一部を一定の比率で希釈することを特徴とする。
請求項7に係る発明によれば、請求項6に記載の希釈装置において、前記エゼクタは、前記希釈手段が排出する流体を利用して稼動することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照して、本発明に係る実施形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る部分希釈装置の第1実施形態を示す図である。本実施形態の部分希釈装置は、抽出比を制御するための新規な手段を備えた抽出装置20を利用している点において従来の部分希釈装置と異なっている。すなわち、本実施形態で利用している抽出装置20は、従来の抽出装置(120、220)のように抽出管22の出口ではなく、非抽出管23の出口において流れ場の圧力を調整することにより、抽出比を一定に維持する点に特徴を有する。そこで、以下には主に抽出装置について説明し、従来の部分希釈装置と実質的に同様な機能を果たす部分については説明を省略する。なお、以下の説明において従来の技術に関する説明で用いたのと同一の符号を付したものは、従来の技術で説明したものと同一の機能を有する。
【0020】
はじめに、本実施形態で利用する抽出装置20の構成について説明する。
抽出装置20は、抽出器21、サージタンク30、エゼクタ40、流量コントローラ42及び2つの圧力センサ55、56とから主に構成されている。抽出器21は、図4等において説明した従来の抽出器と同じ多管式の抽出器である。抽出器21を構成する非抽出管23の出口側には、サージタンク30が接続されている。したがって、非抽出管23からの排出ガスは、全てこのサージタンク30に放出される。
【0021】
サージタンク30の出口には、エゼクタ40が接続されている。エゼクタ40は、サージタンク30の中の排出ガスを外部へ吸引する機能を果たすものである。エゼクタ40には、不図示の高圧空気源からの空気を供給するパイプ41が流量コントローラ42を介して接続されている。流量コントローラ42は、パイプ41の中を流れるエアの流量を制御するためのコントローラである。流量コントローラ42には、圧力センサ55、56の出力端が接続されている。圧力センサ55及び56は、それぞれ抽出管22及び非抽出管23の出口近傍において流れ場の圧力Pt、Psを計測するセンサである。
【0022】
次に、抽出装置20の動作について、圧力センサ55、56によって計測される圧力Pt、Psを同一の値に一致させる場合を例に説明する。
はじめに、圧力センサ55、56は、それぞれ圧力Pt、Psを計測し、その結果を流量コントローラ42へ送信する。流量コントローラでは、Pt、Psの値を比較し、その結果に基づいてエゼクタへ供給するエアの流量を制御する。
【0023】
例えば、圧力Psが圧力Ptより大である場合には、流量コントローラ42は、エゼクタ40へのエアの供給量(エゼクタ40の一次空気流)を増大させる。一次空気流が増大すると、エゼクタ40によりサージタンク30より外部へ吸引される排出ガスの量は増大し、サージタンク30の内部の圧力、すなわち、非抽出管23の出口における流れ場の圧力が低下する。この結果、非抽出管23に流れる排出ガスの流量が増大し、抽出装置20における排出ガスの抽出比が低下する。
一方、圧力Psが圧力Ptより小である場合には、流量コントローラ42は、エゼクタ40へ供給する流量を絞る。この結果、エゼクタ40がサージタンクより吸引する排出ガスの量が減り、非抽出管23の出口における排出ガスの圧力は増大する。さらに、非抽出管23に流れる排出ガスの流量が減少し、抽出装置20における排出ガスの抽出比が増大する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態では、非抽出管23の出口における排出ガスを吸引することにより、非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を増減させ、抽出装置20における排出ガスの抽出比を調整する。このように、排出ガスを吸引することにより流れ場の圧力を制御するのは、この方法によれば、噴流を流れ場に放出する場合のように圧力が局所的にのみ変化することがなく、比較的広い空間において均一に変化するからである。乱流噴流などでは、内部の圧力場が時間的にも変動し、不安定なものであるが、本実施形態では、このような問題も生じない。したがって、本実施形態によれば、噴流を抽出管22の出口に噴射する場合と比較して、流れ場の圧力をより安定に制御でき、結果として抽出比の制御を精度よく行うことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、サージタンク30の中が、希釈トンネルの中と同じように負圧となる。これにより、抽出比の制御に使用すべき圧力は、サージタンク内と、希釈トンネルの抽出管出口より下流から混合オリフィス手前までの空間という、比較的広い空間で計測することが可能となる。つまり、本実施形態では、図5で示した部分希釈装置と比較して、圧力センサの配置位置に関する制限が少なく、抽出装置、部分希釈装置を設計、製造するのが容易となっている。
【0026】
また、本実施形態のように非抽出管23からの排出ガスをサージタンクへ放出した場合には、排出ガスの脈動はサージタンクにおいて速やかに減衰する。したがって、圧力センサ56の計測結果における排出ガスの脈動の影響は最小限に抑制され、抽出比の制御は容易となる。
【0027】
一方、本実施形態でサージタンク内の排出ガスを吸引する手段としては、エゼクタ40以外にルーツポンプなどのポンプを使用することも可能である。しかし、本実施形態の場合には、エゼクタを使用するのが最も好ましいと考えられる。これは、排出ガスが400°C程度の高温流体であり、排出ガスが流れる部位は高温に耐えられる構造・材質であることが必要とされるからである。この点において、エゼクタは内部に稼動部分がなく、形状も比較的単純で、種々の材料より製造可能であることから、排出ガスを吸引するのに適しているといえる。
【0028】
なお、本実施形態において抽出比は、基本的には抽出器21における抽出管22、非抽出管23の形状、配置等により決定される。一方、エゼクタ40は、排出ガスの流量変化等に起因して発生する抽出比の誤差を除去すべく機能するものである。この点において、本実施形態は、特開昭64−31032に開示されている部分希釈装置と異なっている。特開昭64−31032に開示されている部分希釈装置は、抽出管にエゼクタを取り付け、抽出管に流れる排出ガスの流量、すなわち、抽出比を直接エゼクタにより制御する。しかし、エゼクタでは、一次空気の流量変化に対し、主流量はある程度の時間遅れをもって変化する。したがって、特開昭64−31032の部分希釈装置では、エンジンが過渡運転をしている場合など、排出ガスの流量が急激に変化するときは、抽出比を的確に制御できず、大きな誤差を示す。これに対し、本実施形態は、直接的には多管式の抽出器21により排出ガスを分割、抽出するので、排出ガスの流量が急激に変化した場合であっても、抽出比が大きく変化してしまうことはない。
【0029】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る部分希釈装置の第2実施形態を示す図である。本実施形態は、パイプ41のエゼクタ40に接続されるのと反対の端部を、高圧空気源にではなく、CVS52の排気側に接続する点において第1実施形態と異なっている。
本実施形態によれば、エゼクタ40を稼動させるための高圧空気源を別途用意する必要がなく、装置をコンパクトかつ安価に製造し、提供することが可能である。
【0030】
(第1又は第2実施形態の変形例1)
第1及び第2実施形態では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を計測し、これに基づいて抽出比を調整することとしている。ここで、抽出比は、抽出される排出ガスの全排出ガスに対する流量比である。したがって、抽出比の調整は、排出ガスの流量と一定の関連を有する物理量であれば、上記圧力以外のものを利用して行うことも可能である。例えば、抽出管22、非抽出管23の出口における排出ガスの速度を測定し、その測定結果に基づいて抽出比を調整することも可能である。なお、排出ガスの速度を測定する具体的手段としては、例えばレーザ・ドップラー・流速計等の非接触式の測定器を用いることが、流れ場を乱さずに速度測定を行える点から好ましい。
【0031】
(第1又は第2実施形態の変形例2)
第1及び第2実施形態では、抽出管22及び非抽出管23の出口近傍における流れ場の圧力を計測し、これに基づいて抽出管等における排出ガスの流量を調整しているが、これは、同じ領域においてさらに流れ場の温度を計測し、計測された温度と圧力に基づいて流量の調整をすることであってもよい。ここで、圧力のみに基づいて求められる流量は体積流量である。これに対し、圧力及び温度が既知である場合には、質量流量を求め、これを調整することが可能となる。
【0032】
排出ガスは高温流体であるために、抽出管22等を流動している間に急激にその温度が低下し、その結果、抽出管22、非抽出管23のそれぞれから排出される排出ガスの温度が著しく異なる場合がある。この場合には、抽出管22及び非抽出管23を流れる排出ガスの体積流量を同一に調整したとしても、それらの質量流量は異なり、結果として部分希釈装置における排出ガスの希釈率が不正確となる。
本変形例の場合には、上記のような問題を回避し、例えば抽出管等の断熱処理が不十分又は十分にできない場合であっても、排出ガスの抽出比を精度よく行うことができる。なお、流れ場の温度を計測する手段としては、例えば、抽出管等の出口内壁に設置された熱電対が使用可能である。
【0033】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、抽出装置として多管式の抽出装置を利用する場合を例に説明をしたが、本発明の技術的思想は、排出ガスの流路を2以上の流路に分割し、その一方へ流入した排出ガスを外部へ抽出する抽出装置であれば、他の形態のものであっても適用可能である。したがって、本発明の技術的思想は、例えば、排気管の途中に細管を1本挿入し、その細管に流入する排出ガスを外部に抽出する形態の抽出装置にも適用可能である。また、図3に示すように、断面(60a、60b、60c)の円周方向に、等形状の複数の流路(62a、62b、62c)を配置し、これらの一つに流入した排出ガスを外部へ抽出する形態の抽出装置に適用することも可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、圧力調整手段は、非抽用出流路の出口における流れ場の圧力を流れを吸引することにより調整するので、流れの抽出比を精度よく制御することが可能である。
請求項2に係る発明によれば、非抽出用流路の出口に流路断面拡大部を配置したので、脈動等により流れに圧力変動があっても、その圧力変動は流路断面拡大部において抑制され、抽出比制御の妨げとならない。
【0036】
請求項3に係る発明によれば、圧力調整手段としてエゼクタを用いたので、高温流体を容易に取り扱うことが可能である。
請求項5に係る発明によれば、第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度と、流れ場の温度とを検出するので、抽出用流路及び非抽出用流路における質量流量に基づいて抽出比を制御することができる。
請求項6に係る発明によれば、流体の一部を精度よく希釈する希釈装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る部分希釈装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る部分希釈装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】抽出装置における排気管の断面形状の例を示す図である。
【図4】従来の部分希釈装置の一例を示す図である。
【図5】従来の部分希釈装置であって、図4とは異なる例を示す図である。
【符号の説明】
10 整流器
20 抽出装置
21 抽出器
22 抽出管
23 非抽出管
30 サージタンク
40 エゼクタ
42 流量コントローラ
50 希釈トンネル
51 エアフィルタ
52 CVS
55、56 圧力センサ
Claims (7)
- 少なくとも1の抽出用流路と、
少なくとも1の非抽出用流路と
を有し、
一の流れを、前記抽出用流路及び前記非抽出用流路に導入することにより分割し、前記抽出用流路に流入した流れを外部へ取り出すことにより前記一の流れの一部を抽出する抽出装置において、
前記抽出用流路の出口近傍に配置され、前記抽出用流路における流量に関する情報を検出する第1の検出手段と、
前記非抽出用流路の出口近傍に配置され、前記非抽出用流路における流量に関する情報を検出する第2の検出手段と、
前記非抽用出流路の出口における流れ場の圧力を流れを吸引することにより調整する圧力調整手段と、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記抽出用流路における流れと、前記非抽出用流路より流出する流れとの流量比が前記一の流れの流動特性に関わらず一定となるように、前記圧力調整手段を制御する
ことを特徴とする抽出装置。 - 請求項1に記載の抽出装置において、
前記非抽出用流路の出口には、流れの圧力変動を抑制する流路断面拡大部が配置されている
ことを特徴とする抽出装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の抽出装置において、
前記圧力調整手段は、エゼクタである
ことを特徴とする抽出装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度を検出する
ことを特徴とする抽出装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抽出装置において、
前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段は、流れ場の圧力又は速度と、流れ場の温度とを検出する
ことを特徴とする抽出装置。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の抽出装置と、
前記抽出装置に流入する前記流体の速度分布を整える整流手段と、
前記抽出装置により抽出された流体を一定流量の大気と混合して希釈する希釈手段と
を備え、
前記抽出装置に流入した前記流体の一部を一定の比率で希釈する
ことを特徴とする希釈装置。 - 請求項6に記載の希釈装置において、
前記エゼクタは、前記希釈手段が排出する流体を利用して稼動する
ことを特徴とする希釈装置。
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