JP3627754B2 - リチウム二次電池用電解液及びリチウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電池のサイクル特性や、低温での電気容量に優れたリチウム二次電池用電解液及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の電解液としては、高誘電率溶媒のエチレンカーボネート(以下、ECという)やプロピレンカーボネート(以下、PCという)などのカーボネート類が好適とされている。
しかしながら、PC系電解液は、負極材料として結晶性の高いグラファイトを用いたリチウム二次電池では、電解液中のPCがグラファイトによって充電時に分解され、良好なサイクル特性が得られないという欠点がある。このため、PCの代わりにECが使用されているが、ECの融点が37〜39℃と高いことから電池の低温特性が改善できないという課題があった。
電池の低温特性を向上させるために種々の方法が提案されており、例えば、特許文献1には、電解液溶媒としてグラファイト負極で分解せず、凝固点がECより低いVC(凝固点22℃)と沸点150℃以下の低沸点溶媒との混合溶媒の使用が提案されている。この方法では混合溶媒中のVCの割合は20から80容量%が好ましいとされ、ビニレンカーボネート(以下、VCという)とジメチルカーボネート(以下、DMCという)が等容量での電解液が例示されている。また、特許文献2では、VCとPCとを混合することによりVCの凝固点が低下することが述べられており、VCとPCとの等容量の電解液が開示されている。特許文献3には、PCの代わりにVCを高誘電率溶媒として使用し、鎖状エステルと混合して使用する方法が提案されており、VCの割合が20容量%から60容量%が好ましいとされている。
しかしながら、これらの従来の方法では、いずれもグラファイト負極での使用が可能になったとはいえ、電解液溶媒として凝固点が比較的高いVCをかなり多く使用するため、低温での電池特性がなお満足できるものではなかった。しかも、VCは他の溶媒に比較して高価であり、多量に用いるのは原料コストの上昇となるので現実的ではなかった。
特開平6−52887号公報 特開平7−220756号公報 特開平8−96852号公報
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性や電気容量、特に低温での電池特性に優れたリチウム二次電池用電解液及びそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高誘電率溶媒としてECやVCより凝固点のはるかに低いPC(凝固点−55℃)を選択し、さらに低粘度の鎖状カーボネートおよびVCとからなる非水溶媒に電解質を溶解させた電解液が、グラファイト負極でもPCが分解せず、しかも低温で極めて優れた電池特性を示すという驚くべき事実を見い出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液であって、前記非水溶媒が、(a)プロピレンカーボネート、(b)メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートから選ばれる少なくとも一種以上の鎖状カーボネート、および(c)ビニレンカーボネートを含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液、及び
(2)クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属化合物を正極材料とする正極と、グラファイトを負極材料とする負極と、非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液とからなるリチウム二次電池であって、前記(1)の電解液を用いたことを特徴とするリチウム二次電池、
を提供するものである。
本発明によれば、負極でのPC分解が抑制され、しかも低温での電池特性に優れたリチウム二次電池用電解液及びそれを用いたリチウム二次電池を提供することができる。
本発明は、(1)非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液であって、前記非水溶媒が、(a)PC、(b)メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートから選ばれる少なくとも一種以上の鎖状カーボネート、および(c)VCを含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液である。
また、本発明は、クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属化合物を正極材料とする正極と、グラファイトを負極材料とする負極と、非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液とからなるリチウム二次電池であって、前記の電解液を用いたリチウム二次電池である。
前記非水溶媒において、PCの含有量が過度に少ないと電解液の誘電率が低くなり、また、過度に多いと電解液の粘度が大きくなり、いずれの場合も電気伝導度が低下し、電気容量が低くなるので、PCの含有量は10重量%以上60重量%以下が好ましい。
また、前記非水溶媒において、鎖状カーボネートの含有量が過度に少ないと電解液の粘度が大きくなり、また、過度に多いと誘電率が低くなり、いずれの場合も電気伝導度が低下して、電気容量が小さくなるので、鎖状カーボネートは30重量%以上80重量%以下が好ましい。
さらに、前記非水溶媒において、VCの含有量が過度に少ないとグラファイト負極でPCの分解が起こりやすくなり、また、過度に多いと低温での電池特性が悪くなるので、非水溶媒中に含有されるVCの割合は、0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、特に0.1重量%以上5重量%以下が好ましい。
本発明においては、PCの一部を他の高誘電率溶媒の少なくとも1種類以上と置換することができる。そのような高誘電率溶媒としては、例えば、EC、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類が好適に挙げられる。この場合、PCと他の高誘電率溶媒とはPCが最も多くなるような組成比で用いることが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、例えば、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)などの非対称の鎖状カーボネートが挙げられる。これらの鎖状カーボネートは一種で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用される電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33などが挙げられる。これら電解質は一種で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
本発明の電解液は、例えば、前記非水溶媒のPC、鎖状カーボネートおよびVCを混合し、これに前記電解質を溶解することにより得られる。
本発明の電解液は、リチウム二次電池の構成部材として好適に使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
例えば、正極材料(正極活物質)としてはクロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属とリチウムとの複合金属化合物が使用される。このような複合金属化合物としては、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2などが挙げられる。
正極は、前記正極材料をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧着して50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
負極(負極活物質)としては、リチウムを吸蔵・放出可能なグラファイトが挙げられる。例えば、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。なお、グラファイトのような粉末材料はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極材料として使用される。
リチウム二次電池の構成は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。
参考例1
〔電解液の調製〕
プロピレンカーボネート(PC)を33重量%、ジメチルカーボネート(DMC)を66重量%、およびビニレンカーボネートを1重量%となるように非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した。
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を70重量%、アセチレンブラック(導電剤)を20重量%、ポリテトラフルオロエチレン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を95重量%、エチレンプロピレンジエンモノマー(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を含浸させてコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
このコイン電池を用いて、室温(25℃)において、定電流0.3mAで終止電圧4.2Vまで充電した後、終止電圧2.7Vまで放電した。この室温での放電容量を100%とし、同じように室温で充電した後、−20℃にして放電を行い、このときの放電容量は室温との放電容量比で90%であった。結果を表1に示す。
Figure 0003627754
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例8
電解液組成などを表2記載のように代えた以外は、参考例1と同様にしてリチウム二次電池を作製して充放電試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 0003627754
参考例2〜5
電解液組成などを表3記載のように代えた以外は、参考例1と同様にしてリチウム二次電池を作製して充放電試験を行った。結果を表3に示す。
参考例6
正極活物質をLiCoO2からLiMn24に代えて終止電圧4.3Vまで充電した後、終止電圧3.5Vまで放電した以外は参考例1と同様に充放電試験を行い、結果を表3に示す。
参考例7
負極活物質を天然黒鉛から人造黒鉛(大阪ガス製 MCMB)に代えた以外は参考例1と同様にしてリチウム二次電池を作製して充放電試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 0003627754

Claims (7)

  1. 非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液であって、前記非水溶媒が、(a)プロピレンカーボネート、(b)メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートから選ばれる少なくとも一種以上の鎖状カーボネート、および(c)ビニレンカーボネートを含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
  2. 前記非水溶媒中の(a)プロピレンカーボネートの含有量が10〜60重量%であり、(b)鎖状カーボネートの含有量が30〜80重量%であり、(c)ビニレンカーボネートの含有量が0.1〜5重量%である請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
  3. 前記プロピレンカーボネートの一部をエチレンカーボネート及び/又はブチレンカーボネートで置換した請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電解液。
  4. 前記電解質が、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33の少なくとも1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用電解液。
  5. クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属化合物を正極材料とする正極と、グラファイトを負極材料とする負極と、非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液とからなるリチウム二次電池であって、前記非水溶媒が、(a)プロピレンカーボネート、(b)メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートから選ばれる少なくとも一種以上の鎖状カーボネート、および(c)ビニレンカーボネートを含有することを特徴とするリチウム二次電池。
  6. 前記正極材料が、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2からなる群より選ばれる少なくとも一種の複合金属化合物である請求項5に記載のリチウム二次電池。
  7. 前記正極材料がLiCoO2であり、終止電圧4.2Vまで充電する請求項5又は6に記載のリチウム二次電池。

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