JP3627281B2 - 蓄圧式燃料噴射装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、圧力調整機構により所定の圧力に調整可能な燃料の蓄圧室内に蓄えた高圧燃料を、ディーゼル機関に噴射供給する蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のメカニカルな燃料噴射ポンプーノズルからなるシステムに代わり、近年、より制御性に優れた電子制御式噴射装置として、圧力調整機構により所定の圧力に調整可能な燃料の蓄圧室を有する、所謂コモンレール式燃料噴射システムが知られている。
【0003】
この種の蓄圧式燃料噴射装置では、ディーゼル機関(エンジン)の回転数や負荷等の運転状態に基づき、電子制御装置(ECU)によって、コモンレール内の燃料圧力(コモンレール圧)、燃料噴射量、及び燃料噴射時期の目標値を算出する。そして、コモンレール圧がその算出した目標値となるように燃料供給ポンプからの燃料吐出量をフィードバック制御すると共に、前記算出した燃料噴射量及び燃料噴射時期に応じて、高圧燃料をエンジンに噴射供給するインジェクタを開閉制御する(特開昭64−73166号公報参照)。
【0004】
前記燃料供給ポンプは、エンジンのクランク軸の回転によって駆動されるものであり、ECUからの指令信号に基づいて、燃料供給ポンプの電磁弁を開閉制御することによって、燃料をコモンレールに圧送している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した燃料供給ポンプの圧送量は、図15に示す様に、電磁弁をカムリフトの任意位置で閉弁させるタイミングで決まるが、エンジンの回転変動が大きな場合には、燃料供給ポンプの圧送ストロークの変動も大きくなって、電磁弁の閉弁時期が同じでも、実圧送量が異なるという問題があった。
【0006】
また、コンモンレール圧は圧力センサによって測定されるが、エンジンの回転変動によって生じる圧力変動が小さな場合には、圧力センサの精度によっては圧力変動を検知できないことがある。そのため、噴射量分を補うべき所定量の圧送ができず、噴射量がばらついて、エンジンの振動が大きくなったり、出力不足に陥るという問題があった。
【0007】
その結果、ますますエンジンの回転変動が増大して、回転変動による影響が一層増大するという悪循環に陥ることがあった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、エンジンの回転変動を低減して、好適な燃料供給の制御を実現することができる蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための請求項1の発明は、図1に例示するように、
ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプであって、前記圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、前記圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、前記蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する燃料噴射手段と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、前記ディーゼル機関の回転数の回転変動を検出する回転変動検出手段と、該回転変動検出手段によって検出した回転変動の量に応じて、目標とする前記圧送ストロークによる圧送量を実現するように、前記圧力調整手段を駆動して前記電磁弁の閉弁時期を制御する圧力調整制御手段と、を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0009】
請求項2の発明は、
前記ディーゼル機関の回転数を検出する回転数検出手段を備え、
前記回転変動検出手段によって検出した回転変動の量が所定の判定値以上の場合には、前記回転数検出手段によって検出した回転数に応じて前記電磁弁の閉弁時期を制御することを特徴とする前記請求項1記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0010】
請求項3の発明は、図2に例示するように、
ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプであって、前記圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、前記圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、前記蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する燃料噴射手段と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、前記ディーゼル機関の回転数の回転変動に関連する物理量を検出する物理量検出手段と、該物理量検出手段によって検出した回転変動に関連する物理量に応じて、目標とする前記圧送ストロークによる圧送量を実現するように、前記圧力調整手段を駆動して前記電磁弁の閉弁時期を制御する圧力調整制御手段と、を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0011】
請求項4の発明は、
前記ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量が、ディーゼル機関の振動状態を示すものであることを特徴とする前記請求項3記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0012】
請求項5の発明は、
前記ディーゼル機関の回転数を検出する回転数検出手段を備え、前記ディーゼル機関の振動状態が所定の判定値以上の場合には、前記回転数検出手段によって検出した回転数に応じて前記電磁弁の閉弁時期を制御することを特徴とする前記請求項4記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0013】
請求項6の発明は、
前記ディーゼル機関の回転数が低いほど、前記燃料供給ポンプの供給能力が増加するように前記電磁弁の開閉時期を制御することを特徴とする前記請求項2又は5記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
請求項7の発明は、
前記電磁弁の閉弁期間は、前記プランジャの下死点位置に対応する基準パルスから所定時間後であることを特徴とする前記請求項1又は3記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を要旨とする。
【0014】
尚、前記回転変動に関連する物理量としては、回転変動に対応して変化するあらゆる値が含まれる。
【0015】
【作用】
請求項1の発明では、(ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプである)圧力調整手段により、圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整し、燃料噴射手段によって、蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する。
そして、回転変動検出手段によって、ディーゼル機関の回転数の回転変動を検出し、圧力調整制御手段によって、回転変動検出手段によって検出した回転変動の量に応じて、目標とする圧送ストロークによる圧送量を実現するように、圧力調整手段を駆動して電磁弁の閉弁時期を制御する。
【0016】
請求項2の発明では、ディーゼル機関の回転変動の量が判定値以上の場合には、回転数検出手段によって検出された回転数に応じて、電磁弁の閉弁時期を制御する。
請求項3の発明では、(ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプである)圧力調整手段により、圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整し、燃料噴射手段によって、蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する。
そして、物理量検出手段によって、ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量を検出し、圧力調整制御手段によって、目標とする圧送ストロークによる圧送量を実現するように、圧力調整手段を駆動して電磁弁の閉弁時期を制御する。
【0017】
請求項4の発明では、前記ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量として、ディーゼル機関の振動状態を示す値を採用できる。
請求項5の発明では、ディーゼル機関の振動状態が所定の判定値以上の場合には、回転数検出手段によって検出した回転数に応じて、電磁弁の閉弁時期を制御する。
【0018】
請求項6の発明では、ディーゼル機関の回転数が低いほど、燃料供給ポンプの供給能力が増加するように制御する。
つまり、一般に、エンジン回転数が低いほど回転変動が大きいので、エンジン回転数が低いほど燃料供給ポンプの供給能力を増大する様に制御する。また、例えば振動センサの出力信号が大きいほど回転変動が大きいと考えられるので、エンジン回転数が低いほど燃料供給ポンプの供給能力を増大する様に制御する。
請求項7の発明では、電磁弁の閉弁期間としては、プランジャの下死点位置に対応する基準パルスから所定時間後を採用できる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面と共に説明する。
(実施例1)
図3は、本実施例の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置の構成を表す概略構成図である。
【0020】
図3に示す如く、本実施例の蓄圧式燃料噴射装置1は、6気筒のディーゼルエンジン2と、ディーゼルエンジン2の各気筒に燃料を噴射供給する燃料噴射弁(インジェクタ)3と、このインジェクタ3に供給する高圧燃料を蓄圧する蓄圧室(コモンレール)4と、コモンレール4に高圧燃料を圧送する燃料供給ポンプ5と、これらを制御する電子制御装置(ECU)6とを備える。
【0021】
ECU6は、運転状態を検出する手段として回転数センサ7及びアクセルセンサ8にて検出されるエンジン回転数Niやエンジン負荷を表すアクセル開度Accを取り込み、ディーゼルエンジン2の燃焼状態がこの検出された運転状態に応じて最適となるような燃料噴射圧を実現するための目標燃料圧力(後述のコモンレール圧力目標値PF )を算出する。そして、コモンレール4に設けたコモンレール圧センサ9にて検出された実際の燃料圧力(実コモンレール圧力PC )が目標燃料圧力と一致するように燃料供給ポンプ5を駆動制御する、コモンレール圧のフィードバック制御を行う。
【0022】
燃料供給ポンプ5は、このECU6からの制御指令に従って、燃料タンク10に蓄えられた燃料を低圧ポンプ11を経て吸入し、自身の内部にて高圧に加圧し、この加圧された高圧燃料を供給配管12を介してコモンレール4に圧送する。各インジェクタ3は、配管13によって、高圧燃料を蓄圧したコモンレール4と連結されている。そして、各インジェクタ3に配設されたコントロール弁14を開閉動作することで、このコモンレール4にて蓄圧されて目標燃料圧力となった高圧燃料が、ディーゼルエンジン2の各気筒の燃焼室へ噴射される。このインジェクタ3のコントロール弁14の開閉動作は、ECU6からのインジェクタ制御指令に基づいて実行される。
【0023】
このインジェクタ制御指令は、燃料噴射量や燃料噴射時期を調節するためのものであって、回転数センサ7やアクセルセンサ8等からの検出信号に基づいて算出され、クランク角センサ15や後述の気筒判別センサ16等の検出値に基づいて、所定のタイミングでECU6から出力される。なお、燃料供給ポンプ5に対する制御指令も、回転数センサ7や気筒判別センサ16等からの検出値に基づいた所定のタイミングで出力される。
【0024】
次に、燃料供給ポンプ5の構成を図4及び図5に基づき説明する。
燃料供給ポンプ5は、ハウジング20と、その下端部に配設されたカム室30と、ハウジング20内に配設されたポンプシリンダ21と、ポンプシリンダ21に連通し前記低圧ポンプ11から低圧燃料の供給を受ける導入管22と、ポンプシリンダ21の上端部に螺着された燃料吐出制御用電磁弁(PCV)60とを備える。
【0025】
ポンプシリンダ21の内部にはプランジャ23が液密を保って摺動自在に嵌挿されている。プランジャ23は円柱形状をなし、その上端面はポンプシリンダ21の内周面とによりポンプ室24を形成する。ポンプシリンダ21には、コモンレール4への供給配管12が連結される吐出孔41が穿設されている。
【0026】
また、ポンプシリンダ21とハウジング20との間には燃料溜26が形成され、導入管22からハウジング20内へ導入された低圧燃料はここへ溜るようになっている。なお、燃料溜26は、ポンプ室24から溢流する燃料の逃がしとしても作用する。
【0027】
吐出孔41は、逆止弁42を介して吐出口45に連通している。ポンプ室24で加圧された燃料は、この逆止弁42の弁体43を、リターンスプリング44の付勢力やコモンレール圧に抗して押し開くことで、吐出口45から供給配管12を通り、コモンレール4に圧送されるのである。
【0028】
プランジャ23の下端部は弁座35に連結され、弁座35はプランジャスプリング27によりカムローラ33を備えたタペット34に押圧されている。
カム室30内には、ディーゼルエンジン2の回転数の1/2で回転するカム軸31が挿通され、カム軸31にはカムローラ33と接触するカム32が固定されている。そして、カム軸31の回転によりプランジャ23は、カムローラ33、タペット34を介してカム32のカムプロフィルに沿って上下に往復動する。
【0029】
カム32は、カムプロフィルのプランジャ23の下死点をカム角度0度とすると、このカム曲面を凹曲面32cとすると共に、カムプロフィルでプランジャ23が上死点となる頂部32dまでのカム角度を60度とする正三角形状のものである。
【0030】
ポンプシリンダ21の上端に螺着されたPCV60は、ポンプ室24に開口する低圧通路61を開閉する弁体62を備えている。弁体62は、いわゆる外開弁である。従って、弁体62は、通常はスプリング65によりポンプ室24内へ開いた状態となって低圧通路61を開口する状態にあり、通電されるとスプリング65の付勢力に抗して移動し、低圧通路61とポンプ室24とを遮断する状態になる。また、弁体62は、ポンプ室24の内部の燃料圧力を閉弁方向の圧力として受けることになるので、燃料圧力が高くなるほど閉弁時のシール性が良くなる。
【0031】
この弁体62によって開閉される低圧通路61は、ギャラリー63及び通路64を介して燃料溜26に連通している。
一方、プランジャ23は、カム軸31の回転に伴ってポンプシリンダ21内を上下動する。なお、プランジャ23の下降は、プランジャスプリング27の復帰力によってなされる。
【0032】
プランジャ23が下降する際に、通常開弁状態にあるPCV60を介して、低圧燃料が燃料溜26からポンプ室24へと吸入される。ポンプ室24へ吸入された燃料はプランジャ23の上昇に伴って加圧傾向になるが、PCV60が通電されていない場合は、低圧通路61、ギャラリー63及び通路64を通って燃料溜26に溢流し、ポンプ室24内の燃料の実質的な加圧は行われない。
【0033】
これに対し、プランジャ23の上昇中にPCV60に通電がなされると、弁体62が低圧通路61を遮断するため、ポンプ室24内の燃料は溢流することができなくなり、加圧され始める。そして、ポンプ室24内の燃料圧力が上昇して、逆止弁42のリターンスプリング44の付勢力及び弁体43に加わっているコモンレール4の圧力に打ち勝つと、逆止弁42が押し開かれ、高圧燃料が吐出孔41、吐出口45及び供給配管12を通ってコモンレール4へ圧送される。
【0034】
カム軸31には、図5に示す様に、一つのタイミングギヤ36と、ディーゼルエンジン2の気筒数の1/2の個数の燃料供給ポンプ5(本実施例においては3個)とが配設される。なお、図では便宜的に、燃料供給ポンプの一つは省略し、2個の燃料供給ポンプ5a,5bだけを示している。また、図4に示したものと同じ構成には、それぞれ添字a,bを付してあるので、それら添字a,bの付された構成の詳細な構造等は図4を参照されたい。
【0035】
タイミングギヤ36には、合計6個の突起37が配設されている。また、タイミングギヤ36と近接対向して、電磁ピックアップからなる気筒判別センサ16が設けられている。
タイミングギヤ36に設けられた突起37は、カム軸31が1回転する間の各カム32a,32b、…の作用によって、各高圧ポンプ5a,5b,…で実行されるプランジャ23a,23b,…の上昇行程の開始タイミング(即ち、下死点到達時期)を気筒判別センサ16にて検出するためのものである。この気筒判別センサ16で検出されたタイミング信号Gは、ECU6に入力される。
【0036】
図6はECU6の制御ブロック図である。噴射量制御手段81は、エンジン回転数Niとエンジン負荷Acc及びコモンレール圧力PC から噴射量を制御する噴射制御用PCV2の開弁期間TINT を算出・決定する。噴射時期制御手段82は、前述の噴射量制御手段81で決定された噴射量に相当する開弁期間TINT とエンジン回転数Ni及びコモンレール圧力PC から噴射時期を制御するため、噴射制御用PCV2の開弁時期TT を算出・決定する。なお、噴射気筒を決定するため、気筒判別信号Gも使用する。
【0037】
前記二制御手段81,82でインジェクタ3を駆動するINJ駆動手段84を制御し、インジェクタ3を作動させる。
コモンレール圧力制御手段83は、噴射時期と同様、噴射量に相当する開弁期間TINT とエンジン回転数Ni及びコモンレール圧力PC から、PCV60の通電パルスTF を算出・決定する。尚、噴射気筒に対応して、PCV60を駆動する為、気筒判別信号Gを使用する。
【0038】
ECU6は、気筒判別センサ16によるタイミング信号に基づいてPCV60a,60b,…へ駆動パルスを出力する。
この駆動パルスは、図7に示す様に、プランジャ23の下死点位置で検出されるタイミング信号を基準パルスとして、所定期間(後述の通電開始時期)TFだけ遅れて出力される。この駆動パルスによって、PCV60への通電が開始され、電流の立上がりの関係で期間TCだけ遅れて弁体62の閉弁が実行される。その後は、プランジャ23の上昇に伴うポンプ室24の圧力上昇によって弁体62の閉弁状態が維持されるから、駆動パルスは短い期間TONが経過するとオフにされ、消費電力の節約がなされている。外開弁故の利点である。
【0039】
こうして弁体62が閉弁した後、プランジャ23が上死点に至るまでの期間がポンプ室24内の燃料加圧期間となり、図示ハッチングの部分の面積に比例する量の燃料がコモンレール4へと圧送されることになる。従って、この図において、ハッチング面積が大きくなるように、駆動パルスの出力時期を早くすればより多くの燃料がコモンレール4へ圧送され、逆に出力時期を遅くすればコモンレール4への燃料圧送量が減少する。つまり、コモンレール4の圧力は、駆動パルスの出力時期(通電開始時期TF)によって調節することができるのである。
【0040】
上述したコモンレール圧力制御手段83について、更に詳しいブロック図(図8)で説明する。
コモンレール圧力目標値算出手段91は、前述の通り、エンジン回転数Niと燃料噴射量相当の噴射制御用電磁弁2の駆動パルスTINT から、エンジン条件に応じたコモンレール圧力目標値PF を算出する。
【0041】
PCV制御指令値演算手段92は、コモンレール圧センサ9からの圧力値PC と前記目標値PF とを比較し、圧力値が目標値となる様にコモンレール圧力を制御するPCVの指令値TF を演算出力する。
安定状態判別手段93は、エンジンが安定状態にあるか否かを、エンジン負荷Acc、エンジン回転数Ni等から判定する。
【0042】
本実施例の蓄圧式燃料噴射装置の作動を示すタイミングチャートを、図9に示す。本タイミングチャートは、気筒判別信号(G信号:720°CA/パルス)をエンジン第1気筒TDC近傍に設定したもので、エンジン回転信号(Ni信号:120°CA/パルス)毎に噴射制御用電磁弁2を、噴射時期TT 、噴射量TINT に応じ駆動し、燃料を噴射した結果を噴射波形として表示したものである。
【0043】
次に、本実施例の制御処理を、6気筒エンジンを例にとって図10に示す。図10は、ECU6にて繰り返し実行されるメインルーチン処理に関するフローチャートである。
まず、ステップ100で、エンジン状態を検出する各種センサからエンジン制御用の各種パラメータを取込み、ステップ110では、前記ステップ100で取り込まれたエンジン回転数Ni、エンジン負荷Acc(アクセル開度)、コモンレール圧力PC から噴射量指令値TINT を算出し、ステップ120では、エンジン回転数Niと前記ステップ110で算出した噴射量相当のTINT から噴射時期指令値TT を算出する。
【0044】
次の130〜260迄のステップは、コモンレール圧力PC の制御に係るもので、ステップ130では、エンジン回転数Niとアクセル開度Accから、PCV制御のベース指令値TF を算出し、同時に、エンジン回転数Niとアクセル開度Accから、コモンレール圧力の目標値PF を算出する。ここで、PCVベース指令値TF とコモンレール圧力目標値PF は概ね対応する設定となっている。
【0045】
ステップ150は、実コモンレール圧力PC を噴射終了後のタイミングで取り込むため、圧力取り込み時期をNi信号入力後の所定時間後に限定するもので、ステップ160では、前述の圧力目標値PF と実際のコモンレール圧力PC との圧力差△Pを算出し、該圧力差△Pに応じたフィードバック補正をステップ170〜200で実行する。
【0046】
ステップ170では、△Pが所定値αより大きいかどうかを判別し、実コモンレール圧力PC が目標値PF より小さい場合は、ステップ180で、PCV指令値TF を偏差分△Pに応じた量の△TF 分だけ減量補正する。
一方、ステップ170で△Pが所定値α以下の場合は、ステップ190へ進み、△Pが所定値(−α)より小さいか否かを判別し、所定値(−α)以下の場合は、ステップ200に進み、実コモンレール圧力PC が目標値PF より大きいとして、PCV指令値TF を偏差分△Pに応じた量の△TF 分だけ増量補正する。
【0047】
続くステップ210〜260は、コモンレール圧センサ9では検知できない圧力変動によるエンジン回転変動を補正し、正常な回転変動を得るためのステップである。
まず、ステップ210では、前回のエンジン回転数Ni−1をメモリより読み取り、ステップ220では、今回のエンジン回転数Niを算出し、ステップ230では、前回エンジン回転数Ni−1から今回のエンジン回転数Niを引いて、今回の回転変動△Nを算出する。
【0048】
ステップ240では、回転変動△Nが、所定の判定値β以上か否かを判定し、判定値β以上の場合は、ステップ250にて、補正係数Kを算出する。
つまり、一般にエンジン回転数Niが低いほど回転変動△Nが大きいので、図11に示す様に、エンジン回転数Niが低いほど補正値が大きくなるマップ(又は計算式)から、エンジン回転数Niに応じて補正係数Kを求める。
【0049】
続くステップ260では、この補正係数Kを前記PCVベース指令値TF に乗じて、PCVベース指令値TF を補正し、ステップ270では、噴射量TINT 、噴射時期TT 、コモンレール圧を制御する出力値であるこのPCVベース指令値TF を、出力レジスタにセットし、一旦本処理を終了する。
【0050】
また、前記ステップ240で、回転変動△Nが小さいと判断された場合には、特に出力量(TF )を補正する必要はないので、そのままステップ270に進み、一旦本処理を終了する。
この様に、本実施例では、エンジン回転数Niからその回転変動△Nを求め、この回転変動△Nが判定値β以上の大きな場合には、エンジン回転数Niに応じて求めた補正係数Kによって、燃料供給ポンプ5を駆動するためのPCVベース指令値TF を補正しているので、常にコモンレール圧PC を適正な値に制御することができる。
【0051】
それによって、回転変動△Nを低減できるので、燃料供給ポンプ5の実圧送量は、常に所望の値となる。しかも、仮にコンモンレール圧センサ9によって、小さな圧力変動を検知できないことがあっても、噴射量分を補うべき所定量の圧送ができるので、噴射量がばらつくことがなく、エンジンの振動が大きくなったり、出力不足に陥ることがないという顕著な効果を奏する。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な部分の説明は省略又は簡略化し、異なる部分を中心に説明する。尚、ハード構成の図番は、実施例1と同一とした。
【0052】
図12に示す様に、本実施例のハード構成は、前記実施例1とほぼ同様であるが、振動センサ17を使用する点が異なる。この振動センサ17は、ディーゼルエンジン2のシリンダブロックに取り付けられて、ディーゼルエンジン2の振動を検出するものであり、動電型や圧電型等の各種のものを採用できる。
【0053】
この振動センサ17によって検出された出力信号Gを、図13に示すが、噴射波形やPc信号に対応したタイミングにて出力信号Gが出力されていることが分かる。
次に、本実施例の制御処理を、図14のフローチャートに基づいて説明する。
【0054】
ステップ300〜400の処理は、前記実施例1のステップ100〜200の処理と同様であるので、説明は省略する。
続くステップ410では、エンジン回転数Niの信号入力後の所定時間後の振動センサ17の出力信号Gを取り込む。
【0055】
続くステップ420では、出力信号Gが、所定の判定値γ以上か否かを判定し、判定値γ以上の場合は、ステップ430にて、補正係数Kを算出する。
この補正係数Kの算出は、前記図11と同様に、エンジン回転数Niが低いほど補正値が大きくなるマップ(又は計算式)から、エンジン回転数Niに応じて求める。
【0056】
続くステップ440では、PCVベース指令値TF を補正し、ステップ450では、噴射量TINT 、噴射時期TT 、PCVベース指令値TF を、出力レジスタにセットし、一旦本処理を終了する。
また、前記ステップ420で、回転変動△Nが小さいと判断された場合には、そのままステップ450に進み、一旦本処理を終了する。
【0057】
この様に、本実施例では、振動センサ17の出力信号Gを求め、この出力信号Gが判定値γ以上の大きな場合には、エンジン回転数Niに応じて求めた補正係数Kによって、PCVベース指令値TF を補正している。
よって、前記実施例1と同様に、常にコモンレール圧を適正な値に制御することができるので、回転変動△Nを低減できる。また、燃料供給ポンプ5の実圧送量を、常に所望の値とすることができる。しかも、噴射量分を補うべき所定量の圧送ができるので、噴射量がばらつくことがなく、エンジンの振動が大きくなったり、出力不足に陥ることがないという顕著な効果を奏する。
【0058】
特に本実施例では、振動センサ17を用いるので、回転変動△Nを算出する必要がないという利点がある。
以上本発明はこのような実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明では、ディーゼル機関の回転変動を検出し、この検出された回転変動に応じて、目標とする圧送ストロークによる圧送量を実現するように、電磁弁の閉弁時期を制御するので、常に蓄圧室の圧力を常に適正な値に保つことができる。また、圧力調整手段によって送られる燃料量を常に正確にすることができる。よって、回転変動を低減して、適切な燃料供給の制御を実現することができる。
【0060】
請求項2の発明では、ディーゼル機関の回転変動の量が判定値以上の場合には、回転数に応じて電磁弁の閉弁時期を制御するので、回転数に応じて、蓄圧室の圧力及び燃料噴射量を適切に設定できる。
請求項3の発明では、ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量に応じて、目標とする圧送ストロークによる圧送量を実現するように、電磁弁の閉弁時期を制御するので、前記請求項1と同様に、回転変動を低減して、適切な燃料供給の制御を実現できる。
【0061】
請求項4の発明では、ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量として、ディーゼル機関の振動状態を示す値を採用できる。
請求項5の発明では、ディーゼル機関の振動状態が判定値以上の場合には、回転数に応じて電磁弁の閉弁時期を制御するので、前記請求項2と同様に、回転数に応じて、蓄圧室の圧力及び燃料噴射量を適切に設定できる。
【0062】
請求項6の発明では、ディーゼル機関の回転数が低いほど、燃料供給ポンプの供給能力が増加するように制御するので、一層好適に回転変動を低減できる。
請求項7の発明では、電磁弁の閉弁期間としては、プランジャの下死点位置に対応する基準パルスから所定時間後を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の構成を例示するブロック図である。
【図2】請求項3の発明の構成を例示するブロック図である。
【図3】実施例1のシステムを示す構成図である。
【図4】燃料供給ポンプの構成を示す断面図である。
【図5】燃料供給ポンプの構成を模式化した模式図である。
【図6】ECUの制御ブロック図である。
【図7】燃料供給ポンプの作動を説明するタイミングチャートである。
【図8】コモンレール圧力制御手段の制御ブロック図である。
【図9】蓄圧式燃料噴射装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図10】ECUで実行されるメインルーチン処理の一部を表すフローチャートである。
【図11】補正係数Kを設定するためのマップを示すグラフである。
【図12】実施例2のシステムを示す構成図である。
【図13】蓄圧式燃料噴射装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図14】ECUで実行されるメインルーチン処理の一部を表すフローチャートである。
【図15】従来技術の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
1…蓄圧式燃料噴射装置 2…ディーゼルエンジン
3…インジェクタ 4…コモンレール
5…燃料供給ポンプ 6…ECU
7…回転数センサ 8…アクセルセンサ
9…コモンレール圧センサ 15…クランク角センサ
16…気筒判別センサ 17…振動センサ
60…PCV
Claims (7)
- ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプであって、前記圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、前記圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する燃料噴射手段と、
を備えた蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、
前記ディーゼル機関の回転数の回転変動を検出する回転変動検出手段と、
該回転変動検出手段によって検出した回転変動の量に応じて、目標とする前記圧送ストロークによる圧送量を実現するように、前記圧力調整手段を駆動して前記電磁弁の閉弁時期を制御する圧力調整制御手段と、
を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。 - 前記ディーゼル機関の回転数を検出する回転数検出手段を備え、
前記回転変動検出手段によって検出した回転変動の量が所定の判定値以上の場合には、前記回転数検出手段によって検出した回転数に応じて前記電磁弁の閉弁時期を制御することを特徴とする前記請求項1記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。 - ディーゼル機関の回転によって駆動され、プランジャの圧送ストロークによって燃料を圧送する燃料供給ポンプであって、前記圧送ストロークを調節する電磁弁の閉弁時期を制御することによって、前記圧送ストロークにより圧送される圧送量を調節して、蓄圧室に蓄えられる燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記蓄圧室に蓄えられた高圧燃料をディーゼル機関の各気筒に噴射供給する燃料噴射手段と、
を備えた蓄圧式燃料噴射装置の制御装置において、
前記ディーゼル機関の回転数の回転変動に関連する物理量を検出する物理量検出手段と、
該物理量検出手段によって検出した回転変動に関連する物理量に応じて、目標とする前記圧送ストロークによる圧送量を実現するように、前記圧力調整手段を駆動して前記電磁弁の閉弁時期を制御する圧力調整制御手段と、
を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。 - 前記ディーゼル機関の回転変動に関連する物理量が、ディーゼル機関の振動状態を示すものであることを特徴とする前記請求項3記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
- 前記ディーゼル機関の回転数を検出する回転数検出手段を備え、
前記ディーゼル機関の振動状態が所定の判定値以上の場合には、前記回転数検出手段によって検出した回転数に応じて前記電磁弁の閉弁時期を制御することを特徴とする前記請求項4記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。 - 前記ディーゼル機関の回転数が低いほど、前記燃料供給ポンプの供給能力が増加するように制御することを特徴とする前記請求項2又は5記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
- 前記電磁弁の閉弁期間は、前記プランジャの下死点位置に対応する基準パルスから所定時間後であることを特徴とする前記請求項1又は3記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
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