JP3626802B2 - 電子楽器の鍵盤装置及び電子ピアノ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定のストローク深さを押下可能な鍵盤と、該鍵盤にアクションを模擬した荷重を付与するアクション荷重模擬部材とを備えた電子楽器の鍵盤装置及び電子ピアノに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
電子ピアノは、演奏者の押鍵・離鍵操作に基づき電子音をスピーカから発するものであり、かかる電子ピアノから発せられる音は改良が重ねられた結果、近年ではあまり不満のないレベルにまで達している。これに対して、鍵盤のタッチ感は、アコスティックピアノに比べてかなり異なることが指摘され、この点についても種々の改良が重ねられていた。
【0003】
このような改良が進むにつれ、アコスティックピアノのアクション機構と略同等のアクション模擬荷重部材を備えた電子ピアノが開発されるに至った。かかる電子ピアノのアクション荷重模擬部材は、図5に示すように、押鍵操作により鍵盤が回動するに伴い回動するウィペン相当部材215と、押鍵操作によりウィペン相当部材215が回動するにつれて上昇するジャック相当部材217と、ジャック相当部材217に突き上げられて回動した後、該ジャック相当部材217から離間して慣性運動するハンマー相当部材221と、慣性運動しているハンマー相当部材221と当接して該ハンマー相当部材221の動作を阻止するストッパー232を備えている。そして、鍵盤211の下方には、押鍵・離鍵を検出するボタンスイッチ260が設けられている。このボタンスイッチ260は内部に2つのスイッチを備え、鍵盤が押されるとまず一方のスイッチが押されてオン信号を発し、その後更に鍵盤が押されてストローク深さに達すると他方のスイッチが押されてオン信号を発するのである。電子音を制御する制御装置は、このボタンスイッチの2つのスイッチの信号に基づいて打弦情報を求めて打弦音を発生したり、止音情報を求めて止音したりしていた。この電子ピアノによれば、打弦しない点を除いては通常のアコスティックピアノとアクション機構が同じであるため、ピアノのタッチ感はアコスティックピアノと同等である。
【0004】
しかしながら、通常のアコスティックピアノでは筬と鍵盤との間には十分な間隔がないため、上記電子ピアノのように鍵盤211の下方にボタンスイッチ260を取り付けるには筬208と鍵盤211の間隔を広くしなければならず、その結果鍵盤装置の高さが高くなり、アコスティックピアノと外観上異なるという不都合があった。
【0005】
また、通常のアコスティックピアノでは、鍵盤の高さを調整する際、筬と鍵盤の隙間に入れるバランスパンチングの厚さを調整することにより行うが、上記電子ピアノのように鍵盤211の下方にボタンスイッチ260がある場合にバランスパンチング209により鍵盤の高さ調整を行うと、ボタンスイッチ260のオンオフのタイミングも変化してしまうため、ボタンスイッチ260の高さも調整しなければならないという不都合があった。
【0006】
更に、ウィペン相当部材215、ジャック相当部材217、ハンマー相当部材221の近傍にボタンスイッチを設けるとすれば、入り組んだ位置に設けることとなるため、設計の自由度が制限されるという問題もあった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、鍵盤の高さ調整の際アコスティックピアノと同様の手法を適用でき、アコスティックピアノと比べてタッチ感及び外観が同等で、設計の自由度が大きい電子楽器の鍵盤装置及び電子ピアノを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、所定のストローク深さを押下可能な鍵盤と、該鍵盤にアクションを模擬した荷重を付与するアクション荷重模擬部材とを備えた電子楽器の鍵盤装置において、
前記アクション荷重模擬部材は、
鍵盤装置本体に回動自在に取り付けられ、前記鍵盤がストローク深さ押下されると前記鍵盤の回動に伴ってウィペン初期位置からウィペン回動位置まで回動するウィペン相当部材と、
鍵盤装置本体に回動自在に且つダンパー回動位置からダンパー初期位置に向かって付勢されるように取り付けられ、前記ウィペン相当部材がウィペン初期位置からウィペン回動位置に回動するのに伴い該ウィペン相当部材に押圧されてダンパー初期位置からダンパー回動位置まで回動するダンパー相当部材と、
前記ウィペン相当部材に回動自在に取り付けられ、該ウィペン相当部材がウィペン初期位置からウィペン回動位置まで回動するに伴いジャック初期位置からジャック回動位置まで回動しつつ上昇するジャック相当部材と、
鍵盤装置本体に回動自在に取り付けられ、前記ジャック相当部材がジャック初期位置からジャック回動位置まで回動する間、当初該ジャック相当部材に突き上げられてハンマー初期位置から回動し始めその後該ジャック相当部材から離れて慣性運動するハンマー相当部材と、
前記慣性運動しているハンマー相当部材と当接して該ハンマー相当部材の動作を仮想打弦位置にて阻止するストッパーと、
前記ダンパー相当部材の近傍に設けられ、該ダンパー相当部材がダンパー初期位置とダンパー回動位置との間に定めた所定位置に達したことを検出する第1検出器及び該ダンパー相当部材がジャック回動位置に達したことを検出する第2検出器を有する検出手段と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、各部材の初期位置とは、鍵盤が押鍵される前つまり離鍵状態における各部材の位置を表し、各部材の回動位置とは、鍵盤がストローク深さ押下されたときつまり押鍵状態における各部材の位置を表す。また、仮想打弦位置とは、通常のアコスティックピアノにおける打弦位置に相当する位置である。
【0009】
かかる電子楽器の鍵盤装置では、ウィペン相当部材は、演奏者の押鍵操作により鍵盤が所定のストローク深さ押下されると鍵盤の回動に伴ってウィペン初期位置からウィペン回動位置まで回動する。すると、ダンパー相当部材はウィペン相当部材に押圧されてダンパー初期位置からダンパー回動位置まで回動する。一方、ジャック相当部材はジャック初期位置からジャック回動位置まで回動しつつ上昇する。このジャック相当部材がジャック初期位置からジャック回動位置まで回動する間、ハンマー相当部材は当初ジャック相当部材に突き上げられてハンマー初期位置から回動し始めその後該ジャック相当部材から離れて慣性運動する。そして、ストッパーは、慣性運動しているハンマー相当部材と当接して該ハンマー相当部材の動作を仮想打弦位置にて阻止する。また、検出手段の第1検出器は、ダンパー相当部材がダンパー初期位置とダンパー回動位置との間に定めた所定位置に達したことを検出し、第2検出器は、ダンパー相当部材がダンパー回動位置に達したことを検出する。この第1及び第2検出器の検出時に基づいて発音・止音を適宜制御することができる。
【0010】
かかる電子楽器の鍵盤装置によれば、アクション荷重模擬部材は、打弦を行わない点を除き、通常のアコスティックピアノのアクション機構と同じ動作を行う。このため、演奏者が押鍵操作したときの鍵盤のタッチ感は、通常のアコスティックピアノのタッチ感と同等であるという効果が得られる。
【0011】
また、検出手段は従来のように鍵盤の下方ではなくダンパー相当部材の近傍に設けられているため、筬と鍵盤との間隔を広げる必要がなく通常のアコスティックピアノと同等の外観になり、また鍵盤高さを調整する際通常のアコスティックピアノと同様の手法(バランスパンチングの厚さによる調整)をそのまま適用できるという効果が得られる。
【0012】
更に、ウィペン相当部材、ジャック相当部材、ハンマー相当部材の近傍にボタンスイッチを設けるとすれば、入り組んだ位置に設けることとなるため設計の自由度が制限されるという問題があったが、本発明では取付スペースが広いダンパー相当部材の近傍にボタンスイッチを設けるため設計の自由度が制限されない。
【0013】
更にまた、第2検出器がダンパー相当部材を検出したときを発音タイミングとし、その後第1検出器がダンパー相当部材を検出したときを止音タイミングとすることができる。この場合、発音後、第1検出器がダンパー相当部材を検出しない限り、つまり鍵盤がストローク深さ押下された状態が解消されない限り、止音しない。このため、通常のアコスティックピアノと同様の止音タイミングとすることができる。
【0014】
ところで、本発明において検出手段として接触型スイッチを用いた場合、ウィペン相当部材に押圧されてダンパー相当部材が接触型スイッチを押圧するため、その分鍵盤に静荷重がかかる。しかし、通常のアコスティックピアノにおいても、ダンパーレバーはスプリングにより弦に当接する方向に付勢されているため、鍵盤を押下し始めウィペン(詳しくはウィペンに設けたスプーン)がダンパーレバーを押圧する際には静荷重がかかる。このため、接触型スイッチを用いたとしてもタッチ感が不自然にならない。
【0015】
尚、第1及び第2検出器としては、上述のようにダンパー相当部材により押圧・押圧解除される接触型のスイッチ(ボタンスイッチとかリーフスイッチなど)や、ダンパー相当部材により遮光・通光される非接触型の光スイッチなどを用いることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子楽器の鍵盤装置であって、前記検出手段の第2検出器は、ダンパー回動位置からダンパー初期位置に向かって付勢されるように取り付けられた前記ダンパー相当部材をダンパー初期位置で停止させることを特徴とする。
【0017】
かかる電子楽器の鍵盤装置によれば、ダンパー相当部材をダンパー初期位置で停止させる部材(例えばダンパーストップレール)を別途設ける必要がないため、その分コストが低くなる。
請求項3記載の発明は、電子ピアノであって、請求項1又は2記載の電子楽器の鍵盤装置と、前記検出手段の第2検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて発音させ、その後第1検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて止音させる電子音制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
ここで、電子音制御手段は、電子楽器の鍵盤装置(例えばマスターキーボード)と別体とし、ケーブル線等で該鍵盤装置と接続するように構成してもよい。
かかる電子ピアノでは、第2検出器の検出時が発音タイミングとなり、その後の第1検出器の検出時が止音タイミングとなる。これにより、通常のアコスティックピアノと同様の止音タイミングが得られる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の電子ピアノであって、前記電子音制御手段は、第1及び第2検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて打鍵情報を求め、該打鍵情報により発音させることを特徴とする。
かかる電子ピアノでは、例えば、ダンパー相当部材を第1検出器が検出してから第2検出器が検出するまでの時間差に基づいて打鍵情報(例えば打鍵強度)を求めることが好ましい。
【0020】
かかる電子ピアノによれば、打鍵情報、発音タイミング、止音タイミングを1箇所に設けた検出手段で検出できるため、各情報毎に異なる位置に検出手段を設ける場合と比べてコスト面で有利である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[第1実施例]
図1は第1実施例の概略ブロック図、図2は第1実施例のアクション荷重模擬部材の説明図である。電子ピアノ1は、図1に示すように、アクション荷重模擬部材2、鍵盤11、ボタンスイッチ60、制御装置10、電子音源5及びスピーカ6から構成されている。
【0022】
アクション荷重模擬部材2は、図2に示すように、ウィペン15、レギュレチングレール16、ジャック17、バット18、ハンマー23を備えたハンマーシャンク21、キャッチャ20を備えたキャッチャシャンク19から構成されている。このアクション荷重模擬部材2は、電子ピアノ1の左右に垂設された支持部材(図示せず)により支持されている。即ち、この支持部材にはセンターレール14、レギュレチングレール16、ストップレール32、ハンマーレール28が架設されている。
【0023】
センターレール14には、図2に示すように、ウィペンフレンジ13、バットフレンジ18a、ダンパーフレンジ24aを介してそれぞれウィペン15、バット18、ダンパーレバー24が回動可能に取り付けられ、ウィペン15にはジャック17が回動可能に取り付けられ、バット18にはハンマーシャンク21及びキャッチャシャンク19が固着され、ダンパーレバー24にはダンパーフェルト26を備えたダンパーヘッド25が固着されている。ジャック17は圧縮バネ17bにより図2にて反時計方向に付勢されている。また、レギュレチングレール16は、レギュレチングボタンに相当する部材であり、レールの下側にフェルトが貼付されたものである。
【0024】
ストップレール32は、ハンマー23を仮想打弦位置HHにて停止させるものである。即ち、ハンマー23は、ジャック17によりバット18が突き上げられるとハンマー初期位置H1から反時計回りに回動し、その後ジャック17がバット18から離れると慣性運動により反時計回りに回動し続けるのであるが、ストップレール32は、この慣性運動を行っているハンマー23と当接しハンマー23の動作を停止させる位置に設けられているのである。ストップレール32には、ハンマー23に対向する面に緩衝材としてのフェルト32aが貼付されている。ハンマーレール28は、ハンマー初期位置H1にあるハンマーシャンク21を支持するものであり、ハンマーシャンク21に対向する面に緩衝材としてのフェルト28aが貼付されている。
【0025】
ダンパーストップレール35は、ダンパーフェルト26をダンパー初期位置D1で停止させるものであり、アコスティックピアノの弦の位置に設けられている。ダンパーレバー24とダンパーフレンジ24aとの間には、スプリング24bが設けられている。このスプリング24bは、ダンパーレバー24を図2にて反時計方向即ちダンパー回動位置D2からダンパー初期位置D1に向かって付勢し、ダンパーフェルト26をダンパーストップレール35に押し付けている。
【0026】
尚、ハンマー23はアクリル樹脂を略直方体に成形したものであり、木材に比べて比重が大きいため、通常の木製ハンマーと同重量に設計されているものの、ハンマーシャンク21を含めてコンパクト化されている。また、以下にはバット18、キャッチャシャンク19、キャッチャ20、ハンマーシャンク21及びハンマー23をハンマー相当部材H、ダンパーレバー24、ダンパーヘッド25及びダンパーフェルト26をダンパー相当部材Dと称する。
【0027】
ボタンスイッチ60は、図2に示すように、弾力性のある材料(ゴム、合成樹脂など)により形成されたカバー61の中にそれぞれ固定接点と可動接点が一対となった第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を有している。このボタンスイッチ60は、ダンパーレバー24の奥側(図2にて左側)に配設されたプリント基板P上においてダンパーレバー24と対向する位置に配設されている。第1スイッチSW1は、ダンパー相当部材Dがダンパー初期位置D1からダンパー回動位置D2までの間に定めた所定位置(図示せず)に至ったとき、ダンパーレバー24によりスイッチが切り替えられる。また、第2スイッチSW2は、ダンパー相当部材Dがダンパー回動位置D2に至ったときのみダンパーレバー24により押圧されてオンになる。
【0028】
制御装置10は、図1に示すように、入出力ポート71、周知のCPU72、ROM73、RAM74、バックアップRAM75、クロック76等を含む論理演算回路として構成され、これらは互いにバス77により接続されている。この制御装置10は、ボタンスイッチ60の第1及び第2スイッチSW1、SW2からの信号を入出力ポート71を介して入力するよう接続され、また、制御信号を入出力ポート71を介して電子音源5に出力するよう接続されている。CPU72は、ROM73に記憶された制御プログラムに基づいて、電子音源5に制御信号を出力するものである。なお、制御装置10には、ダンパーペダル、ソフトペダル等のペダル機構の動作を検出するペダルセンサ(図示略)も接続され、この検出情報をも加味して、電子音源5に信号を出力するものである。
【0029】
電子音源5は、アコスティックピアノの演奏音即ち打弦音を記録した記録部(図示略)と、この記録部から音を読み出す再生部(図示略)とを備えたものであり、スピーカ6を通じて外部に発音するものである。
次に、電子ピアノ1の動作について図2に基づいて説明する。
【0030】
演奏者が鍵盤11を所定のストローク深さ押下すると、ウィペン15はキャプスタンスクリュー12を介して鍵盤11に連結されているため、鍵盤11がバランスピン7を中心として回動する方向とは逆向き(図2にて反時計回り)に回動し、ウィペン初期位置W1からウィペン回動位置W2まで回動する。
【0031】
これに伴い、ジャック17はジャック初期位置J1から回動しつつ上昇してジャック回動位置J2に至るが、この間におけるハンマー相当部材Hの動作を詳述する。即ち、ジャック17がジャック初期位置J1から回動しつつ上昇すると、ハンマー初期位置H1にあったバット18はジャック17により突き上げられるため、ハンマー相当部材Hは回動軸18bを中心として鍵盤11の回動方向とは逆向き(図2にて反時計回り)に回動する。そして、ジャック17がある程度上昇すると、ジャックテール17aがレギュレチングレール16に当接するため、ジャック17は鍵盤11の回動方向(図2にて時計回り)に回動し、バット18から抜け出して最終的にジャック回動位置J2に至る。この際、バット18はジャック17から離間するため、ハンマー相当部材Hは慣性運動を行う。慣性運動中のハンマー相当部材Hのハンマー23は仮想打弦位置HHにてストップレール32のフェルト32aに衝突し、その動作を阻止される。
【0032】
また、ウィペン15がウィペン初期位置W1からウィペン回動位置W2まで回動するのに伴い、ダンパー相当部材Dはダンパー初期位置D1からダンパー回動位置D2に至るが、この間におけるダンパー相当部材Dの動作を詳述する。即ち、ウィペン15がウィペン初期位置W1から少し回動すると、ウィペン15に設けたスプーン15aがダンパーレバー24の下端に当接する。その後、ウィペン15がウィペン回動位置W2に向かって回動すると、スプーン15aはスプリング24bの付勢力及びボタンスイッチ60のカバー61の弾性力に抗してダンパーレバー24を押圧するため、鍵盤11には静荷重がかかる。ボタンスイッチ60の第1スイッチSW1は、ダンパー相当部材Dがダンパー初期位置D1とダンパー回動位置D2との間に定めた所定位置に達したときにダンパーレバー24に押圧されてオフからオンになる。また、第2スイッチSW2は、ダンパー相当部材Dがダンパー回動位置D2に達したときにダンパーレバー24に押圧されてオフからオンになる。
【0033】
その後、ハンマー相当部材Hはハンマー23がストップレール32のフェルト32aに衝突した後、逆方向に揺り戻される。
ハンマー相当部材Hが揺り戻されたとき、鍵盤11が押鍵されたままならば、ウィペン15はウィペン回動位置W2、ジャック17はジャック回動位置J2のままであり、ハンマー相当部材Hはキャッチャ20が図2にて点線で図示したバックチェック29に受け止められた姿勢(ハンマー中間位置HB)で支持される。また、ダンパー相当部材Dはダンパー回動位置D2のままである。このとき、第1及び第2スイッチSW1、SW2は、共にダンパーレバー24により押圧されオンになっている。
【0034】
一方、ハンマー相当部材Hが揺り戻されたとき、鍵盤11が離鍵されていれば、ウィペン15はウィペン初期位置W1、ジャック17はジャック初期位置J1に戻り、ハンマー相当部材Hもハンマー初期位置H1まで戻る。また、ダンパー相当部材Dもダンパー初期位置D1に戻る。このとき、第1及び第2スイッチSW1、SW2は共にジャック17の押圧が解除されオフになっている。
【0035】
このようなアクション荷重模擬部材2の動作と共に、制御装置10のCPU72はROM73に記憶された制御プログラムの一つである発音処理を実行する。以下に、発音処理について図3のフローチャートに基づいて概略説明する。
この処理が開始されると、まず、第1及び第2スイッチSW1、SW2により押鍵を検出したか否かを判断する(S10)。即ち、第1スイッチSW1から制御装置10にオン信号が入力された後、第2スイッチSW2から制御装置10にオン信号が入力されたとき、押鍵を検出したと判断する。S10にて、押鍵を検出しなければ(S10でNO)、再びS10に戻る。一方、S10にて、押鍵を検出したならば(S10でYES)、第1スイッチSW1からオン信号を入力した時期と第2スイッチSW2からオン信号を入力した時期から両者の時間差△Tを求め、この時間差△Tから押鍵速度Vを例えば次式によって算出する(S12)。
【0036】
V←K/△T(Kは定数)
続いて、押鍵速度Vから打鍵強度Pを例えば次式によって算出する(S14)。
P←K’・V(K’は定数)
そして、鍵番号、打鍵強度Pに基づき、所定の波形信号を得、その波形信号に基づいて電子音源5を制御しスピーカ6から発音させる(S16)。ここで、発音させるタイミングは、第2スイッチSW2がオンになったときである。
【0037】
その後、第1スイッチSW1により離鍵を検出したか否かを判断する(S18)。即ち、第1スイッチSW1から制御装置10にオフ信号が入力されたとき、離鍵を検出したと判断する。S18にて、離鍵を検出しなければ(S18でNO)、再びS18に戻る。このとき、スピーカ6からは電子音源5により発音された音は徐々に減衰するように出力される。一方、S18にて、離鍵を検出したならば(S18でYES)、電子音源5からの発音を停止し(S20)、その後再びS10に戻る。
【0038】
以上の第1実施例によれば、以下の効果が得られる。
▲1▼アクション荷重模擬部材2は、打弦を行わない点を除き、通常のアコスティックピアノのアクション機構と同じ動作を行うため、演奏者が押鍵操作したときの鍵盤のタッチ感は、通常のアコスティックピアノのタッチ感と同等であるという効果が得られる。
▲2▼ボタンスイッチ60は鍵盤11の下方に設ける必要がないため、筬8と鍵盤11との間隔を広げる必要がなく通常のアコスティックピアノと同等の外観になり、また鍵盤高さを調整する際通常のアコスティックピアノと同様の手法(バランスパンチング9の厚さ(枚数)により調整)をそのまま適用できる。
▲3▼打鍵情報、発音タイミング、止音タイミングを1箇所に設けたボタンスイッチ60で検出できるため、各情報、タイミング毎にボタンスイッチを設ける場合と比べてコスト面で有利である。
▲4▼取付スペースの広いダンパー相当部材Dの近傍にボタンスイッチ60を設けたため、ウィペン15、ジャック17、ハンマー相当部材Hの近傍にボタンスイッチを設ける場合と比べて設計の自由度が大きい。
▲5▼鍵盤11をストローク深さまで押下する途中、ダンパーレバー24が接触型のスイッチであるボタンスイッチ60を押圧するため、その分鍵盤11に静荷重がかかる。しかし、アコスティックピアノでもダンパーレバーはスプリング(ダンパーレバーを弦に当接するように付勢する)の付勢力に抗して回動するので静荷重がかかる。このため、本実施例のタッチ感はアコスティックピアノと比べて不自然にならない。また上記実施例において、スプリング24bの付勢力及びボタンスイッチ60のカバー61の弾性力の和を、通常のアコスティックピアノのダンパーレバーのスプリングの付勢力に合わせれば、アコスティックピアノにおけるダンパーがかかったときの鍵盤の静荷重まで再現することができる。
▲6▼電子ピアノ1は、弦は不要であり、弦を張架するためのフレームや支柱等の重量部材も不要になるため、アコスティックピアノに比べてかなり軽量化される。
[第2実施例]
図4は、第2実施例のアクション荷重模擬部材の部分説明図である。第2実施例は、図4に示すように、ボタンスイッチ60に代えて段付シャッタと光センサからなる光スイッチを用いた以外は、第1実施例と同様の構成である。また、第2実施例の概略ブロック図は図1で表される第1実施例と同様である。
【0039】
ダンパーヘッド25は、ダンパーフェルトの代わりに段付シャッタ27を備えている。この段付シャッタ27と対向する位置には、ダンパーストップレール35の代わりに光センサ70が配設されている。光センサ70は、図4の紙面に垂直方向に並んだ2枚の対向面の一方に発光素子(例えば赤外発光ダイオード)、他方に受光素子(例えばフォトトランジスタ)を2対設け、各発光素子・受光素子間に光路70a、70bを形成させ、この光路70a、70bの遮断・導通を検出するフォトインタラプタである。そして、段付シャッタ27がこの光センサ70の対向面の間を移動するように構成されている。
【0040】
光路70aは、ダンパー相当部材Dがダンパー初期位置D1からダンパー回動位置D2までの間に定めた所定位置(図示せず)に至ったとき、段付シャッタ27の下段部27aにより遮断・導通即ちスイッチが切り替えられる。また、光路70bは、ダンパー相当部材Dがダンパー回動位置D2に至ったときのみ段付シャッタ27の上段部27bにより導通され、スイッチがオンになる。
【0041】
第2実施例はこのように構成されているため、第1実施例と同様の作用・効果を奏する上、部品としてのダンパーストップレール35が不要となるためその分コストが低くなる。
[上記実施例の変形例]
上記第1実施例の第1及び第2スイッチSW1、SW2はボタンスイッチを利用したが、これ以外にリーフスイッチを用いてもよい。ここで、リーフスイッチとは、互いに対向する2つの固定接点の間に1枚のバネ板状の可動接点が設けられ、可動接点は通常一方の固定接点(第1スイッチSW1として用いる)に接触し、外力により他方の固定接点(第2スイッチSW2として用いる)に接触し、外力を除去すると再び一方の固定接点に接触するスイッチをいう。
【0042】
また、上記実施例はアップライト型の電子ピアノについて説明したが、本発明はグランド型の電子ピアノについても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の概略ブロック図である。
【図2】第1実施例のアクション荷重模擬部材の説明図である。
【図3】発音処理のフローチャートである。
【図4】第2実施例のアクション荷重模擬部材の部分説明図である。
【図5】本発明の比較対象である電子ピアノのアクション模擬荷重部材の説明図である。
【符号の説明】
1・・・電子ピアノ、 2・・・アクション荷重模擬部材、
5・・・電子音源、 6・・・スピーカ、
10・・・制御装置、 11・・・鍵盤、
15・・・ウィペン、 16・・・レギュレチングレール、
17・・・ジャック、 18・・・バット、
19・・・キャッチャシャンク、 20・・・キャッチャ、
21・・・ハンマーシャンク、 23・・・ハンマー、
24・・・ダンパーレバー、 25・・・ダンパーヘッド、
26・・・ダンパーフェルト、 28・・・ハンマーレール、
32・・・ストップレール、 35・・・ダンパーストップレール、
60・・・ボタンスイッチ、 61・・・カバー、
SW1・・・第1スイッチ、 SW2・・・第2スイッチ、
Claims (4)
- 所定のストローク深さを押下可能な鍵盤と、該鍵盤にアクションを模擬した荷重を付与するアクション荷重模擬部材とを備えた電子楽器の鍵盤装置において、
前記アクション荷重模擬部材は、
鍵盤装置本体に回動自在に取り付けられ、前記鍵盤がストローク深さ押下されると前記鍵盤の回動に伴ってウィペン初期位置からウィペン回動位置まで回動するウィペン相当部材と、
鍵盤装置本体に回動自在に且つダンパー回動位置からダンパー初期位置に向かって付勢されるように取り付けられ、前記ウィペン相当部材がウィペン初期位置からウィペン回動位置に回動するのに伴い該ウィペン相当部材に押圧されてダンパー初期位置からダンパー回動位置まで回動するダンパー相当部材と、
前記ウィペン相当部材に回動自在に取り付けられ、該ウィペン相当部材がウィペン初期位置からウィペン回動位置まで回動するに伴いジャック初期位置からジャック回動位置まで回動しつつ上昇するジャック相当部材と、
鍵盤装置本体に回動自在に取り付けられ、前記ジャック相当部材がジャック初期位置からジャック回動位置まで回動する間、当初該ジャック相当部材に突き上げられてハンマー初期位置から回動し始めその後該ジャック相当部材から離れて慣性運動するハンマー相当部材と、
前記慣性運動しているハンマー相当部材と当接して該ハンマー相当部材の動作を仮想打弦位置にて阻止するストッパーと、
前記ダンパー相当部材の近傍に設けられ、該ダンパー相当部材がダンパー初期位置とダンパー回動位置との間に定めた所定位置に達したことを検出する第1検出器及び該ダンパー相当部材がジャック回動位置に達したことを検出する第2検出器を有する検出手段と
を備えたことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。 - 前記検出手段の第2検出器は、ダンパー回動位置からダンパー初期位置に向かって付勢されるように取り付けられた前記ダンパー相当部材をダンパー初期位置で停止させることを特徴とする請求項1記載の電子楽器の鍵盤装置。
- 請求項1又は2記載の電子楽器の鍵盤装置と、
前記検出手段の第2検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて発音させ、その後第1検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて止音させる電子音制御手段と
を備えたことを特徴とする電子ピアノ。 - 前記電子音制御手段は、第1及び第2検出器が前記ダンパー相当部材を検出した時に基づいて打鍵情報を求め、該打鍵情報により発音させることを特徴とする請求項3記載の電子ピアノ。
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