JP3624301B2 - ラックピニオン式舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用のラックピニオン式舵取装置の一形式として広く普及しているラックピニオン式の舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラックピニオン式の舵取装置は、図4に示す如く車体の左右方向へ延びる筒状部(図示せず)が設けられたハウジング101に、ピニオン102aが設けられ、舵輪(ステアリングホィール)に連結されるピニオン軸102と、前記ピニオン102aと噛合するラック歯103aが設けられ、左右の操向輪に連結されるラック軸103とを支持し、舵取り操作力をピニオン軸102、ピニオン102a及びラック歯103aを介してラック軸103に伝達し、該ラック軸103を軸長方向へ移動させて、左右の操向輪を操向する構成となっている。
【0003】
このようなラックピニオン式の舵取装置においては、ピニオン102a及びラック歯103aを実質的にバックラッシがない状態で噛み合わせることが重要であるため、図4に示す如くラック軸103のラック歯103aと反対の側面を支持するハウジング101に、ラック軸103の軸長方向と交叉する方向へ摺動自在に付勢され、嵌合孔104a,104aが設けられた一対の摺動体104,104及びこれら摺動体104,104に保持された一対の案内シート105,105を介して前記ハウジング101支持している。
【0004】
前記各案内シート105,105は、図5に示す如く前記ラック軸103の側面と接触する接触面105aが設けられた扁平板により形成され、該扁平板の前記嵌合孔104a,104aとの対向位置に貫通するテーパ孔105b,105bを設け、一端部に前記テーパ孔105b,105bの傾斜角よりも大きな傾斜角としたテーパ頭部106a,106aが設けられたリベット106,106を前記テーパ孔105b,105bから前記嵌合孔104a,104aへと強制的に打込むことにより、案内シート105,105を摺動体104,104に保持させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記した従来の案内シート105は、該案内シート105のテーパ孔105bから摺動体104の嵌合孔104aへとリベット106を打込むことにより保持する構造であるため、リベット106の打込みストロークが不足する場合は、リベット106のテーパ頭部106aが案内シート105の接触面105aから突出することになり、この突出した状態で摺動体104がハウジング101に組み込まれた場合、ラック軸103が傷付くだけでなく、ラック軸103の移動抵抗が増大することになるという問題がある。また、リベット106の打込みストロークが過剰となる場合、前記テーパ孔105bに過大の打込力が作用して、図5(d)に示す如く案内シート105が中央部から外周部へかけて前記摺動体104と反対方向へ反ることになり、案内シート105の背面を摺動体104に接触させることができないという問題があった。
【0006】
また、案内シート105とは別個にリベット106が必要であるため、部品点数が多いのであり、さらに、小さな案内シートを小さなリベット106の打込により固定するから、リベット106を適正な打込みストロークに打込み難いのであり、作業性が悪いという問題もあった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、摺動体に保持する案内シートを、接触面が設けられたシート本体及び該シート本体と一体の突起を備えた構造とし、さらにシート本体を湾曲させてその凹面に突起を設けることにより、案内シートが摺動体に対して反るのを良好に防ぐことができ、部品点数を少なくすることができ、組み付け作業性を良好にすることができるラックピニオン式舵取装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るラックピニオン式舵取装置は、舵取り操作に応じて軸長方向へ移動するラック軸のラック歯と反対の側面を支持するハウジングに、ラック軸の軸長方向と交叉する方向へ摺動自在に付勢され、孔が設けられた摺動体及び該摺動体の前記孔に保持されて前記ラック軸を案内する案内シートを備えたラックピニオン式舵取装置において、前記案内シートは、断面が前記ラック軸と反対側へ湾曲するシート本体と、該シート本体の前記ラック軸と反対側となる凹面にこれと一体に形成され前記孔に嵌合する突起とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第1発明にあっては、摺動体の孔に嵌合する突起をシート本体と一体に形成して、シート本体を突起と反対方向へ予め湾曲させたから、突起を摺動体の孔に嵌合した場合、シート本体の外周部が摺動体に接触し、この接触した状態から前記突起をさらに孔の奥まで嵌め込むことにより、シート本体を強制的に湾曲方向と反対方向へ弾性変形させて扁平にすることができ、案内シートが摺動体に対して反るのを良好に防ぐことができる。従って、摺動体がハウジングに組み込まれた場合、案内シートの接触面をラック軸のラック歯と反対の側面に良好に接触させることができる。また、シート本体に突起を一体に設けたから、従来例に比べて部品点数を少なくすることができ、組み付け作業性を向上することができる。
【0012】
第2発明に係るラックピニオン式舵取装置は、前記摺動体は夫々の底部に前記孔を有する一対の半筒体からなり、前記案内シートは前記半筒体の夫々の孔に前記突起が嵌合されており、該突起は割り溝が設けられた筒状に形成されており、前記ラック軸は夫々の案内シートのシート本体と接触する二つの平坦面を有することを特徴とする。
【0013】
第2発明にあっては、割り溝により突起自体を弾性変形させるから、その弾性復元力を大きくでき、突起を確実に固定することができる。また、割り溝は、シート本体及び突起とともに成形することができるから、加工工程の増加がなく、安価に構成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るラックピニオン式舵取装置の要部の縦断面図、図2は摺動体に案内シートを組み付けた状態を示すもので、(a)は縦断正面図、(b)はX−X線の断面図、(c)はY−Y線の断面図、図3は案内シートを示すもので、(a)は正面図、(b)はZ−Z線の断面図である。
【0015】
図1に示したラックピニオン式の舵取装置は、一端部が舵輪(ステアリングホイール)に連動連結され、他端部にピニオン1aが設けられたピニオン軸1と、前記ピニオン1aに噛合するラック歯2aが設けられ、車体の左右方向へ延設されたラック軸2と、これらピニオン軸1及びラック軸2を支持するハウジング3とを備えている。ラック軸2は、長手方向中間に前記ラック歯2aが設けられ、該ラック歯2aと反対の側面に、実質的に直角の平坦面2b,2bを設けている。
【0016】
ハウジング3は、図1に示す如く貫通する第1軸孔31と、該第1軸孔31の中心線に対し偏位した位置から第1軸孔31と交叉して貫通する第2軸孔32と、該第2軸孔32の軸長方向中間から外面に開放された保持孔33とを備え、第1軸孔31に軸受4,4を介してピニオン軸1を回転自在に支持し、第2軸孔32にラック軸2を移動自在に支持し、保持孔33に、摺動自在であり、合成樹脂製の一対の摺動体5,5及びこれら摺動体5,5を前記ラック軸2の平坦面2b,2bに向けて付勢するコイルバネを用いてなる付勢ばね7を設けている。また、ギヤハウジング3には、前記保持孔33を閉塞して前記付勢ばね7を受止める蓋体8を取付ねじ9により着脱可能に取付けている。
【0017】
摺動体5,5は、図2に示す如く有底の筒体を半割りにした形状であり、その割面に相当する周方向端面同志を対向させて、凹所5a内に略C字形のセットリング10及び前記蓋体8と対向するばね受板11を挿入し、該ばね受板11と前記蓋体8との間に前記付勢ばね7を介装して前記摺動体5,5をラック軸2の平坦面2b,2bへ付勢し、また、セットリング10により摺動体5,5を保持孔33の内面に軽く接触させて摺動体5,5のガタ付きを防止している。
【0018】
各摺動体5,5の底部の外面は、図2に示す如く周方向端面に対し実質的に45度の角度で前記凹所5a,5aと反対方向へ傾斜する傾斜面5b,5bを設け、該傾斜面5b,5bに合成樹脂製の案内シート6,6を保持している。傾斜面5b,5bには、案内シート6,6に対応する浅底の受面5c,5c及び該受面5c,5cの中央部から傾斜面5b,5bと直交する方向へ凹入する孔50,50が設けられている。
【0019】
案内シート6,6は、図3に示す如く前記ラック軸2の平坦面2b,2bと接触する接触面61a,61aが設けられ部分球殻に湾曲する弾性変形が可能なシート本体61,61、及び該シート本体61,61の凹面の中央部にこれと一体に形成され前記孔50,50に嵌合する円筒状の突起62,62を備え、この突起62,62を前記孔50,50へ嵌合することにより、シート本体61,61を弾性変形させることができるようにしている。
【0020】
突起62,62は、一つの割り溝62a,62aが設けられた円筒状に形成して、割り溝62a,62aにより突起62,62を弾性変形させて縮径し、その弾性復元力により孔50,50に固定するようにしている。また、割り溝62a,62aは、シート本体61,61及び突起62,62とともに成形する。
【0021】
尚、前記蓋体8には、前記ばね受板11に当接する調節ねじ12を螺着して、該調節ねじ12を回転操作することによりばね受板11、すなわち摺動体5,5の動きを許容する隙間を調節可能としている。
【0022】
以上の如く構成した案内シート6,6は、突起62,62を摺動体5,5の孔50,50へ嵌合することにより、シート本体61,61の外周部が摺動体5,5の受面5c,5cと接触し、この接触した状態から前記突起62,62をさらに孔50,50の奥まで嵌め込むことにより、シート本体61,61を強制的に湾曲方向と反対方向へ弾性変形させて扁平にすることができ、このシート本体61,61の背面と摺動体5,5の受面5c,5cとの間に隙間ができるのを良好になくすることができる。従って、摺動体5,5がギヤハウジング3に組み込まれた場合、案内シート6,6の接触面61a,61aをラック軸2の平坦面2b,2bに良好に接触させることができる。また、シート本体61,61及び突起62,62を一体に成形したから、従来例に比べて部品点数を少なくすることができ、組み付け作業性を向上することができる。
【0023】
尚、以上説明した実施の形態では、シート本体61,61を部分球殻に湾曲させたが、その他、例えば弓形状または断面円弧状に湾曲させてもよい。また、以上説明した実施の形態では、突起62を筒状に形成し、該突起62に少なくとも一つの割り溝62aを設けて突起62を弾性変形させるように構成したが、その他、前記割り溝62aを設ける代わりに、突起62の外周面に、突起62の長手方向又は周方向へ延びる弾性変形が可能な少なくとも一つの凸条の弾性変形部を設けてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述した如く第1発明のラックピニオン式舵取装置によれば、シート本体と一体に形成した突起を摺動体の孔に嵌合することによりシート本体を強制的に湾曲方向と反対方向へ弾性変形させて扁平にすることができ、案内シートが摺動体に対して反るのを良好に防ぐことができる。従って、シート本体の背面と摺動体との間に隙間ができるのを良好になくすることができるから、摺動体がハウジングに組み込まれた場合、案内シートの接触面をラック軸の背面に良好に接触させることができる。
しかも、シート本体に突起を一体に設けたから、従来例に比べて部品点数を少なくすることができ、組み付け作業性を向上することができる。
【0026】
第2発明のラックピニオン式舵取装置によれば、突起自体の弾性変形によりその弾性復元力を大きくすることができるから、突起を確実に固定することができる。しかも、割り溝は、シート本体及び突起とともに成形することができるから、加工工程の増加がなく、安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るラックピニオン式舵取装置の要部の縦断面図である。
【図2】本発明に係るラックピニオン式舵取装置の摺動体に案内シートを組み付けた状態を示すもので、(a)は縦断正面図、(b)はX−X線による断面図、(c)はY−Y線による断面図である。
【図3】本発明に係るラックピニオン式舵取装置の案内シートを示すもので、(a)は正面図、(b)はZ−Z線の断面図である。
【図4】従来のラックピニオン式の舵取装置の縦断面図である。
【図5】従来のラックピニオン式の舵取装置の摺動体及び案内シートを示すもので、(a)は摺動体に案内シートを取付けた状態の断面図、(b)は案内シートのみの断面図、(c)はリベットのみの正面図、(d)は案内シートが湾曲した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
2 ラック軸
2a ラック歯
3 ハウジング
5 摺動体
50 嵌合孔
6 案内シート
61 シート本体
61a 接触面
62 突起
62a 割り溝
Claims (2)
- 舵取り操作に応じて軸長方向へ移動するラック軸のラック歯と反対の側面を支持するハウジングに、ラック軸の軸長方向と交叉する方向へ摺動自在に付勢され、孔が設けられた摺動体及び該摺動体の前記孔に保持されて前記ラック軸を案内する案内シートを備えたラックピニオン式舵取装置において、前記案内シートは、断面が前記ラック軸と反対側へ湾曲するシート本体と、該シート本体の前記ラック軸と反対側となる凹面にこれと一体に形成され前記孔に嵌合する突起とを備えていることを特徴とするラックピニオン式舵取装置。
- 前記摺動体は夫々の底部に前記孔を有する一対の半筒体からなり、前記案内シートは前記半筒体の夫々の孔に前記突起が嵌合されており、該突起は割り溝が設けられた筒状に形成されており、前記ラック軸は夫々の案内シートのシート本体と接触する二つの平坦面を有する請求項1記載のラックピニオン式舵取装置。
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