JP3623945B2 - 防火ダンパー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は通風孔となる部分において火災などが発生した場合に火気を含む空気が排出されることを防止することで、他の建物への延焼を防止するための防火ダンパーとそれを用いた防火方法に関し、特に建物の頂部に開口部を設けて屋根裏の空気を換気する換気棟に用いると有利なダンバーとそれを用いた防火方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、換気棟における防火ダンバーとして、従来、特開平10−80500号、特開平10−96315号、特開平10−80499号が開発されている。
しかし、特開平10−80500号、特開平10−96315号に記載された防火ダンパーは、温度ヒューズにより部材がスライドして通風孔となる部分を遮断するものであるため、火災等で高温状態になると部材が変形して十分に機能しない可能性がある。
【0003】
また、特開平10−80499号に記載された防火ダンパーは、不燃性体積膨張材を用いたものであるが、不燃性体積膨張材、熱膨張耐火材は周囲の温度が一定度数を超えると少なくとも10倍程度、膨張するものの、粉状の物質となるため、特開平10−80499号記載の構造では粉状と化した不燃性体積膨張材が開口部に流れ落ち、防火ダンパーとしての効果を有効に発揮し得ないものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明における防火ダンパーは、熱膨張耐火材を用いたものであって、熱膨張耐火材が膨張して粉状となった場合においても、該熱膨張耐火材が開口部などにこぼれ落ちずに耐火材としての機能を発揮することができるようにするものである。
また、簡単な構造で、簡単に従来の換気棟に取り付けることができる防火ダンパーを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明における防火ダンパーは、建物の頂部を開口して建物の内部から外部へと換気する換気棟に主として用いられるものにおいて、一定の温度に達すると膨張し、かつ、耐火性を有する熱膨張耐火材と、少なくとも一つの面が網状部材からなる収納部からなり、収納部内に、火災発生時に膨張して収納部を完全密封せしめる熱膨張耐火材を配置し、収納部の長手方向両側面の上縁部には外側に向けてカエシを取り付けていることを特徴とするものである。
【0006】
これにより、例えば建物の内部に火災が発生した場合において、防火ダンパー周囲の温度が上昇し、耐火性をもつ熱膨張耐火材が膨張して通風孔となる部分を塞ぐことにより、その部分を完全密閉状態とすることができるので、延焼などを防止することができる。
一方、熱膨張耐火材が膨張しないときは、網目状部材が通風孔となる部分の通気を可能とするから、換気機能を発揮することができる。
また、網目状部材を有する収納部と熱膨張耐火材のみからなっているため、構造が簡単であり、従来の防火ダンパーに比べてコストを低く抑えることができる。
また、収納部の長手方向両側面の上縁部には外側に向けてカエシが取り付けられているため、開口部の直上左右両側に取り付けられる捨水切に、このカエシを被せるように取り付けることで、簡単に防火ダンパーを開口部の上方に取り付けることができる。
【0007】
また、温度ヒューズの設定温度が熱膨張耐火材の膨張開始温度より低く設定されており、温度ヒューズにより一定位置に係止されていた熱膨張耐火材の係止が、火災発生時に解除され、熱膨張耐火材が開いて収容部の一面にあるストッパーの位置で止まり、熱膨張耐火材が膨張して収容部内を完全密封させることが好ましい。
【0008】
これにより、展開する熱膨張耐火材であるため、一定温度で展開して膨張するようになる。これで収納部を密閉して、断熱層の役割を果たして、周りへの延焼などを防止することができる。
【0009】
また、収納部内が空洞の直方体形状をしたものであって、収納部の上面、下面は網状部材からなり、収納部の長手方向両側面と長手方向に直交する両面は壁状部材からなるものであって、収納部の長手方向両側面の内面に熱膨張耐火材を取り付けていることが好ましい。
【0010】
これにより、上下面が網状部材である直方体形状の収納部内に熱膨張耐火材が取り付けられているため、熱膨張耐火材が膨張したときに、収納部内で圧縮されて、完全密閉状態となるため、煙や火気を含んだ空気を通さず、断熱材として機能することができる。
【0011】
また、網状部材の網目は2ミリメートル四方以下の網目であることが好ましい。
【0012】
これにより、熱膨張耐火材は熱を感知して膨張した場合に、2ミリメートル四方よりも大きな粉状物質になることから、網目状部材を2ミリメートル四方以下とすることで、粉状になった熱膨張耐火材が網目状部材の網目の間から抜け出ることを防止することができる。よって、膨張した熱膨張耐火材が通気孔となる部分を完全密閉状態にすることができ、火災時の延焼などを防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の防火ダンパーを換気棟に応用した場合の一例を図面により説明する。
図1は換気棟全体を示す断面図であり、図2は本発明の第1実施例の防火ダンパー1の斜視図であり、図3は第1実施例の防火ダンパー1を換気棟2の捨水切3、3間に設置した状態の斜視図であり、図4は第1実施例の防火ダンパー1の熱膨張耐火材13、13が膨張した状態を示す斜視図であり、図5は防火ダンパー1を捨水切3、3間に取り付ける状態を示す斜視図であり、図6は本発明の第2実施例の防火ダンパーを示す。
【0014】
本発明の防火ダンパー1は通気孔やダクトに対して用いてもよいが、主として換気棟2に対して用いられる。従来、熱気、湿気、結露などが屋根裏部分にたまることが多かったが、この熱気などにより、建物や家屋内で冷暖房機により冷暖房を行なっても、その効果を半減させていた。
これを防止するために、換気棟2が使用されるが、上方にたまりやすい熱気などの空気を屋根の頂上部分に開けた開口部分から換気することにより、屋根裏の熱気、湿気、結露などを取り除くことができ、建物や家屋の室内を快適な状態にし、建物内の冷暖房機による冷暖房の効果を十分に発揮できるようになる。
【0015】
図1に示すように、換気棟2には屋根裏の空気が出入りする開口部4を設け、この開口部4に雨水などが浸入しないように、その周りに捨水切3が設置されている。また、中央には棟木5が置かれ、換気棟1の頂頭部には棟瓦6が設置されている。そして、棟木5の左右両側に換気棟部材7,7が固定され、両換気棟部材7、7にはいずれも換気孔が形成されている。
屋根裏から開口部4を経て排出された空気は棟木5のまわりから前記換気孔に入り、換気孔を通り外部へ排出される。
【0016】
ここで建物内部において火災などが発生した場合に、火の粉を含む空気が外に排出されないようにすることが必要である。開口部4から火の粉を含む空気を外に排出させないことで、他の建物への延焼など第2次災害を最小限に食い止めることができる。
したがって、本発明は主に換気棟に用いられるものであって、火気を伴う空気を排出させないようにする防火ダンパーとそれを用いた防火方法に関するものであるということができる。
【0017】
第1実施例
本発明の第1実施例である防火ダンパーを図2に示す。
第1実施例の防火ダンパー1の収納部8は、例えば、長手方向の側面が850ミリメートル、長手方向に直交する面が30ミリメートル、高さが27ミリメートルの直方体形状をしたものである。なお、各寸法は開口部4の広さにより変わるものであり、この寸法に限定されるものではない。
この収納部8のうち、上面9と下面10はステンレス製の金網11からなっている。
防火ダンパー1の収納部8の長手方向両側面12、12は鉄板が使用されており、長手方向と直交する側面は図示してはいないが、長手方向の両側面12、12と同様に鉄板により形成されている。
したがって、第1実施例の防火ダンパー1の収納部8は上面9、下面10が金網であり、その他の面が鉄板により形成された直方体形状をしたものである。
【0018】
直方体からなる第1実施例にかかる防火ダンパー1の収納部8内は空洞となっており、長手方向の両側面12、12の内面には熱膨張耐火材13が取り付けられている。熱膨張耐火材13は両面テープにより取り付けることができるが、強固に固定できるものであれば、その他の固定方法で取り付けてもよい。
【0019】
熱膨張耐火材13はブチルゴム含有の黒鉛シートを用い、熱に反応して発泡・膨張し、かつ、耐熱性を有するものである。熱膨張耐火材13は同様の機能があるものならば、ブチルゴム含有の黒鉛シートなど、ほかのものからなっていてもよい。
熱膨張耐火材13は10倍に発泡・膨張するもの、30倍に発泡・膨張するものやその他の倍率で発泡・膨張するものもあるが、本実施例では30倍の発泡・膨張率のものを使用している。
直方体からなる第1実施例の防火ダンパーの収納部8の長手方向の一方の側面12から他方の長手方向の側面12までの距離は30ミリメートルであるから、30倍の発泡・膨張率をもつ熱膨張断熱材13を使用した場合には、長手方向両側面12、12の内側に1.5ないし2ミリメートルの厚さの熱膨張耐熱材13を取り付けておけばよい。
【0020】
熱膨張耐火材13はおよそ200度以上になると発泡・膨張するものである。開口部4から火気を含んだ空気が上がってきたとき、熱膨張耐火材13が200度以上になると、30倍に発泡・膨張して、直方体の内部を埋め尽くす。これにより、発泡・膨張した熱膨張耐火材13が断熱層の役割を果たして、防火ダンパーとして機能する。熱膨張耐火材13が発泡・膨張した状態を図4に示す。
ここで、発泡・膨張率の異なる熱膨張耐火材13を使用したり、より厚い熱膨張耐火材13を使用すれば、熱膨張耐火材13による収納部内での密封度、熱遮断度、耐火度をコントロールすることができる。
【0021】
ここで、収納部8の上面9、下面10に取り付けられている金網11の網目は、発泡・膨張した熱膨張耐火材13が粉状になって開口部4へと落ちていかないような網目である必要がある。収納部8を完全密閉して、断熱層の役割を果たすことが必要だからである。
熱膨張耐火材13は発泡・膨張すると、粉状の集合体になるために、金網11は少なくとも2ミリメートル四方以下の網目のものにしなければならない。そこで、第1実施例の金網13では2ミリメートル四方の網目をもつ金網を使用するものとする。なお、金網11の網目は1ミリメートル四方のものでもよく、2ミリメートル以内のものであればよい。
【0022】
図2に示すように、長手方向の両側面12、12の上端縁には外側に向けてカエシ14が取り付けられている。このカエシ14は換気棟2における開口部4の真上左右両側にある捨水切3、3の上端の折り曲げ部分15に被せるように取り付けることができる。
図3、図4には捨水切3の折り曲げ部分15にカエシ14を被せて、防火ダンパー1を固定した状態を示している。
これにより、開口部4の真上に防火ダンパーを簡単に取り付けることができる。
なお、捨水切3に防火ダンパー1を取り付ける状態を図5に示す。
【0023】
このように、防火ダンパー1は開口部4の真上に取り付けられるものである。通常、換気棟2に使用している場合には防火ダンパー1の上面9と下面10が金網からなっているために空気を通すことができ、換気が行なわれる。
しかし、建物内で火災等が発生した場合には、熱膨張断熱材13が膨張して、収納部内を埋め尽くし、防火ダンパー1としての役割を果たすものである。
これにより、簡単に取り付けができ、数少ない部材でコストがかからない防火ダンパー1を提供することができる。
【0024】
第2実施例
第2実施例である防火ダンパー1を図6に示す。
第2実施例の防火ダンパー1の収納部8は上面9が金網11で形成されており、長手方向両側面12、12と長手方向と直交する面(図示せず)は鉄板で形成されているものである。
下面には何も形成されておらず、収納部8の内部は第1実施例の場合と同様、空洞となっている。
【0025】
図6に示すように、収納部8内の中央付近にはヒンジ16が取り付けられており、ヒンジ16には熱膨張耐火材13、13が2枚、取り付けられている。2枚の熱膨張耐火材13、13は折り畳まれた図6の状態で温度ヒューズ17により係止されている。温度ヒューズ17による係止が解かれると2枚の熱膨張耐火材13、13はヒンジ16を中心として2つに割れて、収納部8の下方向に展開せしめられる。
また、長手方向両側面12、12の内側下部にストッパー18、18が形成されているため、温度ヒューズ17がはずれて2枚の熱膨張耐火材13、13が展開せしめられると、前記ストッパー18、18で受け止められ、開いた状態で止まる。
【0026】
温度ヒューズ17の設定温度は約150度である。建物に火災などが発生して、火気を含んだ空気が開口部4を通って上昇するが、その熱気が150度を越えると、温度ヒューズ17がはずれ、熱膨張耐火材13、13がヒンジ16を中心としてストッパー18,18の位置まで倒れる。
そして、熱気が200度を超えると、熱膨張耐火材13、13の発泡・膨張が始まり、収納部8を密閉して、断熱層の役割を果たして、周りへの延焼などを防止することができる。
【0027】
なお、温度ヒューズ17の取付位置、ストッパー18の位置などは必ずしも図示した場合のみに限定されるものではなく、温度ヒューズ17を複数個、取り付ける場合など、その他の態様を含む。
【0028】
また、第2実施例にかかる防火ダンパーも、第1実施例の場合と同様に、長手方向の両側面12、12の上部にカエシ14が取り付けられており、このカエシ14を換気棟2の捨水切3の折り曲げ部分15に被せて、取り付けることにより、簡単な方法で防火ダンパー1を換気棟2に取り付けることができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によって、例えば建物の内部に火災が発生した場合において、防火ダンパー周囲の温度が上昇し、熱膨張耐火材が膨張して通気孔となる部分を塞ぐことにより、その部分を完全密閉状態とすることができるので、延焼などを防止することができる。
一方、熱膨張耐火材が膨張しないときは、網目状部材が通風孔となる部分の通気を可能にすることができるから、換気機能を発揮することができる。
また、網目状部材を有する収納部と熱膨張耐火材のみからなっているため、構造が簡単であり、従来の防火ダンパーに比べてコストを低く抑えることができる。
また、通常時には網上部材を通して換気が行なわれているために、建物の内部に虫などが入り込まない防虫効果も果たすことができる。
また、収納部の長手方向両側面の上縁部には外側に向けてカエシが取り付けられているため、開口部の真上左右両側に取り付けられる捨水切に、このカエシを被せるように取り付けることで、簡単に防火ダンパーを開口部の上方に取り付けることができる。
【0030】
請求項2記載の発明によって、展開する熱膨張耐火材であるため、一定温度で展開して膨張するようになる。これで収納部を密閉して、断熱層の役割を果たして、周りへの延焼などを防止することができる。
【0031】
請求項3記載の発明によって、上下面が網状部材である直方体形状の収納部内に熱膨張耐火材が取り付けられているため、熱膨張耐火材が膨張したときに、収納部内で圧縮されて、完全密閉状態となるため、煙や火気を含んだ空気を通さず、断熱材として機能することができる。
【0032】
請求項4記載の発明によって、熱膨張耐火材が熱を感知して膨張した場合に、1〜2ミリメートル四方の粉状になることから、網目状部材を2ミリメートル四方以下とすることで、粉状になった熱膨張耐火材が網目状部材の網目の間から抜け出ることを防止することができる。よって、膨張した熱膨張耐火材が通気孔となる部分を完全密閉状態にすることができ、火災時の延焼などを防止することができる。
また、網目が2ミリメートル以下の小さな網目であることから、小型の虫なども入り込まない防虫効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は換気棟全体の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は第1実施例にかかる防火ダンパーの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は第1実施例にかかる防火ダンパーの使用状態の一例を示すもので、捨水切に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図4は第1実施例にかかる防火ダンパーの熱膨張耐火材が膨張した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は第1実施例にかかる防火ダンパーを左右の捨水切間に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図6】図6は第2実施例にかかる防火ダンパーの一例である。
【符号の説明】
1…防火ダンパー
2…換気棟
3…捨水切
4…開口部
5…棟木
6…棟瓦
7…換気棟部材
8…収納部
9…上面
10…下面
11…金網
12…側面
13…熱膨張耐火材
14…カエシ
15…折り曲げ部分
16…ヒンジ
17…温度ヒューズ
18…ストッパー
Claims (4)
- 建物の頂部を開口して建物の内部から外部へと換気する換気棟に主として用いられるものにおいて、一定の温度に達すると膨張し、かつ、耐火性を有する熱膨張耐火材と、少なくとも一つの面が網状部材からなる収納部からなり、
収納部内に、火災発生時に膨張して収納部を完全密封せしめる熱膨張耐火材を配置し、
収納部の長手方向両側面の上縁部には外側に向けてカエシを取り付けていることを特徴とする防火ダンパー。 - 温度ヒューズの設定温度が熱膨張耐火材の膨張開始温度より低く設定されており、
温度ヒューズにより一定位置に係止されていた熱膨張耐火材の係止が、火災発生時に解除され、熱膨張耐火材が開いて収容部の一面にあるストッパーの位置で止まり、
熱膨張耐火材が膨張して収容部内を完全密封させることを特徴とする請求項1に記載の防火ダンパー。 - 収納部内が空洞の直方体形状をしたものであって、収納部の上面、下面は網状部材からなり、収納部の長手方向両側面と長手方向に直交する両面は壁状部材からなるものであって、収納部の長手方向両側面の内面に熱膨張耐火材を取り付けていることを特徴する請求項1または2のいずれかに記載の防火ダンパー。
- 網状部材の網目は2ミリメートル四方以下の網目であることを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の防火ダンパー。
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