JP3623897B2 - 地盤強化工法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、用済み排出空気を周辺地盤上の既設構造物に影響を与えることなく、地中から大気中へ速やかに排出することができる低変位施工型の地盤強化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧縮空気の圧力を作用させつつ、所定の砂杭を造成する地盤強化工法としては、例えば、締固め砂杭造成工法が知られている。この工法は中空管を地盤中の設計深度まで貫入した後、地表まで引き抜く過程で前記中空管を一定深さまで引き抜き、管内に投入された砂等を圧縮空気の圧力で排出する引き抜き工程と、前記中空管を再び貫入して排出砂等を締固める再貫入工程とを繰り返して行うことにより、所定の強度に締固めた砂杭を造成し、地盤を改良するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、圧縮空気は砂等を排出する過程で地盤中に排出される。改良地盤が砂層のような透気性地層であれば、この圧縮空気が地層内の空隙部を通って大気中に放出される。しかしながら、改良地盤が粘性土層などであれば、圧縮空気の逃げ路がなく、地盤に変位を与えてしまう。また、透気性地層や粘性土層であっても一部に透気性地層が存在する地層においては、この排出空気が透気性地層を通って周辺地盤に流れ、周辺地盤上の家屋等の既設構造物に被害を与える場合がある。これを解決するものとして、砂層を挟んで上下に軟弱な粘性土層がある軟弱地盤を改良する際、改良地盤の周辺近傍に空気抜き施設を設け、改良地盤から周辺地盤へ向かう空気流を減殺する軟弱地盤改良工法が開示されている(特公平4−38241号公報)。しかし、この空気抜き施設は、オーガタイプの穿孔機で掘った縦孔の中心部に有孔管を建込むと共に、その周辺に砕石等のフィルター材を充填して設置するため、別途の工事が必要である。一方、締固め砂杭造成工法等において、中空管の外周にスパイラル状の羽根を形成したものもあるが、これは中空管が地中に貫入される際、排土用の羽根であって、スパイラル状の羽根の周りには土が依然として密に存在するため、用済み排出空気を地中から大気中へ排出する空隙はない。
【0004】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決するものであって、改良地盤周りに別途に空気抜き施設を設けることなく、且つ用済み排出空気を周辺地盤上の既設構造物に影響を与えず、地中から大気中へ速やかに排出することができるいかなる地盤にも適用可能な低変位施工型の地盤強化工法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者ら鋭意検討を行った結果、中空管の下端から排出される砂柱部に圧縮空気の圧力を作用させつつ、中空管の引き抜き等を行い、所定の砂杭を造成する地盤強化工法において、前記中空管の外周に、回転時に該中空管の周囲に用済み空気を大気中に導く空隙が形成されるような突状部を設ければ、別途の空気抜き施設を設ける必要がなく、簡易な方法で、しかも周辺地盤上の既設構造物に影響を与えることのない低変位施工型の工法とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、中空管を回転させながら地盤中の設計深度まで貫入した後、前記中空管の下端から排出される砂柱部に圧縮空気の圧力を作用させつつ、中空管の引き抜きを行い、所定の砂杭を造成する地盤強化工法において、前記中空管は、円筒中空管であって、該円筒中空管の外周に、前記外周の円周方向の一部で軸方向の一部又は全長に亘り形成される断面が矩形状の羽根状物である突状部を設けることにより、回転時に該中空管の周囲に用済み空気を大気中に導く空隙を形成するようにしたことを特徴とする地盤強化工法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、所定の砂杭を造成する地盤強化工法は公知の工法であって、例えば、中空管の貫入後、地表まで引き抜く過程で、中空管を一定深さまで引き抜き、管内に投入された砂等を排出する引き抜き工程と、中空管を再び貫入して排出砂等を締固める再貫入工程とを繰り返して行うことにより、所定の強度の砂杭を造成し、地盤を改良する締固め砂杭造成方法、及び前記の方法において、再貫入工程を行わない砂杭造成方法等が挙げられる。
【0008】
本発明において、砂としては、砂、砂利、砕石、鉱さいなどの砂類似粒状材料及びこれを組み合わせた混合物が挙げられる。また、本発明の締固め砂杭造成工法が適用される地盤としては、特に制限されないが、砂質系地盤、粘性土系地盤及び砂層と粘性土系地層が積層する地盤などが挙げられる。
【0009】
本発明において、中空管の外周に形成される突状部は、中空管の回転時に該中空管の周囲に用済み空気を大気中に導く空隙を形成するものであれば、特に制限されず、例えば、前記中空管の外周の一部で軸方向に形成される断面が矩形状の羽根状物、及び中空管の外周形状が平面視で多角形状の場合、多角形の面と面で形成される稜などが挙げられる。具体例を図1〜図5を参照して説明する。図1は中空管の一例で引き抜き工程における排出空気の流れを示す一部を切り欠いた模式図、図2はその平面図、図3は中空管の他の例を示す模式図、図4及び図5は中空管の他の例を示す平面図である。
【0010】
図1中、中空管1aは中空の管内8を有する円筒中空管本体部2と、平面視中心線上の中空管本体部外周面に位置し、軸方向に断面が矩形状の一対の羽根状部3a、3bとからなる。中空管1aは貫入後、図中、記号A方向に回転しつつ、記号B方向に一定深さまで引き抜き、管内8に投入された砂6を圧縮空気を作用しつつ排出する。この場合、砂6内を通り地盤9に排出された排出空気は中空管1aの回転により羽根状部3a、3bの後方側に形成される空隙4の中を上昇し、大気中に放出される。
【0011】
この羽根状部3a、3bは、中空管1aの外周面の長さ方向の全長に亘って形成されているが、これに限定されず、例えば、図3に示すように、中空管1bの外周面の長さ方向の一部に形成される羽根状部3c、3dであってもよい。この場合、中空管1bの回転によって形成される空隙4は図3のように、明確に観察される空隙空間であっても、掘削土が崩れて明確な空隙空間が認められないような崩れた土層内の間隙空間であってもよい。また、羽根状部3c、3dの形成位置は、図3の位置に限定されず、中空管1aの外周面の長さ方向の上部、中間部などいずれの箇所であってもよい。
【0012】
また、中空管の外周に形成される突状部は、図4に示すように、中空管1cの外周形状が平面視で四角形の場合、多角形の面21と面21で形成される4つの稜7である。この場合、中空管1cの回転により4つの稜7の後方側に空隙4が形成される。
【0013】
本発明において、中空管の外周形状の多角形は、平面視で上記四角形以外に、五角形、六角形、七角形などが挙げられる。また、この多角形状の中空管はその一部、例えばその下端部に円筒形中空管を有するものであってもよい。また、図5に示すように、中空管1dの外周形状は円筒形中空管本体部2の一部が2つ面22、22を形成し、面22と面22で形成される稜71を有するものであってもよい。この場合、中空管1dの回転により1つの稜71の後方側に空隙4が形成される。
【0014】
また、本発明において、中空管の構造は特に制限されず、例えば二重管構造のものであってもよく、この場合、外側管の外周に突状部を形成しても、内側管の外周に突状部を形成してもよい。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、別途の空気抜き施設を設ける必要がなく、簡易な方法で、しかも周辺地盤上の既設構造物に影響を与えることがなく、いかなる地盤にも適用できる低変位施工型の工法とすることができる。また、中空管の外周に設けられた突状部により、中空管の地盤への貫入当初において、円滑な貫入を実現するという副次的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における中空管の一例で引き抜き工程における排出空気の流れを示す一部を切り欠いた模式図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明における中空管の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明における中空管の他の例を示す平面図である。
【図5】本発明における中空管の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
1a〜1d 中空管
2 中空管本体部
3a〜3d 羽根状部(突状部)
4 空隙
5 突状部の先端の軌跡
6 砂柱部
7、71 稜
8 管内の空間部(圧縮空気投入口)
9 地盤
11 砂投入口
21、22 面
Claims (2)
- 中空管を回転させながら地盤中の設計深度まで貫入した後、前記中空管の下端から排出される砂柱部に圧縮空気の圧力を作用させつつ、中空管の引き抜きを行い、所定の砂杭を造成する地盤強化工法において、前記中空管は、円筒中空管であって、該円筒中空管の外周に、前記外周の円周方向の一部で軸方向の一部又は全長に亘り形成される断面が矩形状の羽根状物である突状部を設けることにより、回転時に該中空管の周囲に用済み空気を大気中に導く空隙を形成するようにしたことを特徴とする地盤強化工法。
- 前記地盤強化工法において、前記中空管は、その外周形状は平面視が多角形状であって、前記多角形の面と面で形成される稜により、回転時に該中空管の周囲に用済み空気を大気中に導く空隙を形成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の地盤強化工法。
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