JP2001303570A - 杭の引抜き工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 既設杭がコンクリート杭の場合でも、杭重量
を軽減し、かつ、地山の摩擦をカットし、また、掘削孔
の崩壊を防止して、簡単かつ確実に引抜くことができ
る。 【解決手段】 既存コンクリート杭１を、先にロックオ
ーガーで中心部のコア抜きを行い、次いで、この既存コ
ンクリート杭１の周囲を囲むようにケーシング９を回転
させながら建込み、該ケーシング９で既存コンクリート
杭１と地盤との縁を切っておいて、既存コンクリート杭
１を引き抜く。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、既設のコンクリー
ト基礎杭（既設コンクリート杭）の引抜き工法に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、杭引き抜き工法として、ジャッ
キ、バイブロハンマー、大型クレーン等を用いることに
より、杭の引き抜き、撤去が行われていた。この場合、
根入れの深いものなどは引き抜きが困難であるため、杭
の周りを掘削して地山を撤去し、抵抗を少なくして引き
抜いていた。しかしながら、掘削のためのスペースが十
分確保できない場合があり、しかも、引き抜きのための
抵抗、つまり、摩擦力が十分にカットできない場合があ
る等といった不都合が生じていた。

【０００３】杭引き抜きのための抵抗、つまり、摩擦力
の軽減を行う方法として、例えば特開平６−２４０６７
０号公報や特開平９−２６８５５５号公報などがある。

【０００４】特開平６−２４０６７０号公報は片面が開
放し，内側にウォータジェット管と排土管を設けた断面
Ｃ字型またはコ字型の杭を用い、その杭の開放側を引き
抜くべき既設杭に向け、かつ既設杭に近接させてバイブ
ロハンマーでチャッキングしながら打ち込み、このバイ
ブロハンマーによる振動と細いウォータジェット管から
のジェット水により土砂を崩し、排土管から揚土して前
記断面Ｃ字型またはコ字型の杭と既設杭とで囲まれた区
域を掘削し、次いで大型のクレーンで既設杭を引き抜
き，撤去するようにした杭引き抜き方法及び装置であ
る。

【０００５】特開平９−２６８５５５号公報は、その断
面が開口部が開いたコ字状をなし、鋼矢板または形鋼等
により、引抜くべき杭の長さより長く、しかも杭の幅よ
り狭く形成されている治具と、この治具の下端部に固定
されたもので、杭の外周のほぼ半部を囲む断面クレセン
ト型に形成されたケーシングと、このケーシングの外周
に取り付けられた複数の高圧水ノズルと、高圧水ノズル
の上端部に接続される高圧水パイプとを有するウォータ
ジェット装置を使用する。

【０００６】かかるウォータジェット装置を、引抜くべ
き杭の外周面の一部分を囲むようにセットし、治具の上
端部にバイブロハンマーを固定し、高圧水ノズルからウ
ォータジェットを噴射させ、かつウォータジェット装置
を杭の長さ方向に沿ってバイブロハンマーにより圧入
し、杭と地山との周面摩擦力をカットした後、ウォータ
ジェット装置を引き上げ、ついで杭を引き抜く。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来技術
では、既設杭の周面の多くの摩擦を切るには適していな
い。また、揚土した後の地山が崩壊する等により、周辺
の地山からの圧力が作用して既設杭と地山との周面摩擦
力のカットが十分に行われず、既設杭が引っ張り力に負
けて、途中で切断することがある。特に既設杭が現場打
設のコンクリート杭の場合は、重量があり、また、引っ
張り力に弱く破断するおそれが多い。

【０００８】しかも、揚土した後の地山が崩壊する等に
より、周辺の地山からの圧力が作用して既設杭と地山と
の周面摩擦力のカットが十分に行われない。

【０００９】本発明の目的は前記従来例の不都合を解消
し、既設杭がコンクリート杭の場合でも、杭重量を軽減
し、かつ、地山の摩擦をカットし、また、掘削孔の崩壊
を防止して、簡単かつ確実に引抜くことができる杭の引
抜き工法を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するため、第１に、既存コンクリート杭を、先にロック
オーガーで中心部のコア抜きを行い、次いで、この既存
コンクリート杭の周囲を囲むようにケーシングを回転さ
せながら建込み、該ケーシングで既存コンクリート杭と
地盤との縁を切っておいて、既存コンクリート杭を引き
抜くこと、第２に、ケーシング先端より水・エアーを噴
射し、これをケーシング内の既存コンクリート杭外周に
流して引抜きの際の摩擦抵抗を軽減すること、第３に、
ケーシング先端で内周面に突起を形成し、ケーシング回
転時にこの突起でケーシング開口でケーシング・既存コ
ンクリート杭間の土砂を除去し、水・エアーを通り易く
することを要旨とするものである。

【００１１】請求項１記載の本発明によれば、まず、既
存コンクリート杭を、先にロックオーガーで中心部のコ
ア抜きを行うので、このコア抜きの分だけ既存コンクリ
ート杭に空所を設け、重量を軽減することができる。次
に、ケーシングを建込み、ケーシングで既存コンクリー
ト杭と地盤との縁を切るが、このケーシングの建込みは
回転させながら行うので効率良く、かつ、確実に行うこ
とができる。特に、ケーシング先端に掘削刃を設けてお
けば、有効である。

【００１２】このようにして重量が軽減され、ケーシン
グで地盤との縁が切られた既存コンクリート杭はワイヤ
ー等を掛止してクレーン等で簡単に引き抜くことがで
き、その際、ケーシングを残して既存コンクリート杭を
引き抜けば、このケーシングが地山の崩壊を防止し、地
山が崩壊する等により、周辺の地山からの圧力が作用す
ることを防止できる。

【００１３】請求項２記載の本発明によれば、前記作用
に加えて、ケーシング先端より水・エアーを噴射し、こ
れをケーシング内の既存コンクリート杭外周に流して引
抜きの際の摩擦抵抗を軽減することで、より引抜きを容
易とすることができる。

【００１４】請求項３記載の本発明によれば、ケーシン
グ先端は掘削土砂が詰まり易く、土砂により水・エアー
の通り路が塞がれるおそれがあるのを、ケーシング先端
で内周面に形成した突起がこの既存コンクリート杭間の
土砂を除去し、水・エアーを通り易くすることで、確実
に水・エアーをケーシング内に流すことができる。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、図面について本発明の実施
の形態を詳細に説明する。図１〜図７は本発明の杭の引
抜き工法の１実施形態を示す各工程の側面図で、図中１
は既存コンクリート杭である。

【００１６】既存コンクリート杭１はプレキャストコン
クリートの場合もないわけではないが、鉄筋コンクリー
ト製の現場造成杭として鉄筋かご１ａとコンクリートよ
りなり、この鉄筋かご１ａは中心部から離れた周面近く
に配置される。

【００１７】先に、本発明で使用するケーシング９につ
いて説明すると、図８に示すように既存コンクリート杭
１よりも径の大きなもので、２重壁として内部に水およ
びエアーの通流管11を埋設し、この水およびエアーの通
流管11に連通するものとして先端部から水・エアーを噴
射する噴射口11ａを形成した。また、図４〜図７に示す
ようにケーシング９は先端に掘削刃９ａを設けた。

【００１８】さらに、ケーシング９の先端で掘削刃９ａ
の近傍に内周面に羽根状の突起12を中心方向に向けて形
成した。この突起12の形状は特に限定はないが、ケーシ
ング９回転時にこの突起12でケーシング９の開口でケー
シング・既存コンクリート杭間の土砂を除去し、水・エ
アーを通り易くするものである。

【００１９】また、このようなケーシング９を建込む回
転駆動装置10は、周知のように例えばオールケーシング
工法で使用する圧入機であり、ケーシング９の外周をた
が状に締め付けるチャック装置10ａとこのチャック装置
10ａを回転駆動するモーターや減速機などの駆動装置10
ｂと、これらチャック装置10ａおよび駆動装置10ｂを上
下動する油圧シリンダーによる昇降シリンダー10ｃとか
らなる。図中10ｄは回転駆動装置10を水平に設置する水
平ジャッキによるアウトリガーを示す。

【００２０】ケーシング９は前記建て込み装置により外
周をチャックされながら回転推進されて地盤に挿入され
るもので、適宜と途中で継ぎ足して必要な長さとする本
体管と、この本体管の先端に着脱自在に嵌着するケーシ
ングヘッドとの組合せからなり、嵌着部はボルトで締結
する。

【００２１】かかる構成に加えてケーシング９の先端の
ケーシングヘッドの先端の外周面にスパイラル状の突条
14を突設した。この突条14はケーシング９を構成する金
属よりも焼き入れの多い超硬金属をもって羽根状に形成
し、溶接などにより堅牢にケーシング９の外周に固着す
ることが望ましい。

【００２２】まず、図１〜図３に示すように前記既存コ
ンクリート杭１に対して先にロックオーガー２で中心部
のコア抜きを行う。図中１ｂはこのようにして形成され
たコア抜き孔である。

【００２３】ロックオーガー２は周知のものでよく、先
端に掘削刃３ａを有するケーシング３と、ケーシング３
に挿入配置するオーガースクリュー４とからなり、ケー
シング３とオーガースクリュー４と相互に逆方向に回転
させて岩盤、転石、鉄筋コンクリート等硬質のものでも
掘削可能なオーガーである。

【００２４】図中４ａはオーガースクリュー４のオーガ
ーヘッド、５はオーガースクリュー４の駆動装置、６は
ケーシング３の駆動装置で、これらはベースマシン７に
起立自在に設けたリーダーマスト８のトップシーブ８ａ
から吊り下げられ、該リーダーマスト８に沿って昇降す
る。なお、オーガースクリュー４の駆動装置５とケーシ
ング３の駆動装置６とは図示のように分離したものでは
なく、一体としたものでもよい。

【００２５】次いで、図４、図５に示すように前記ケー
シング９を回転駆動装置10により回転させながら、既存
コンクリート杭１の周囲を囲むように建込み、該ケーシ
ング９で既存コンクリート杭１と地盤との縁を切る。

【００２６】その際、ケーシング９は先端の噴射口11ａ
から水・エアーを噴射し、この水・エアーはケーシング
９内の既存コンクリート杭１外周に流れる。

【００２７】また、ケーシング９は回転して建込む際
に、掘削土砂がケーシング９と既存コンクリート杭１の
間に詰まり、その結果、前記水・エアーがケーシング９
内へ流れなくなるおそれがある。本発明ではケーシング
９の内周面に形成した突起12がケーシング９の回転時に
ケーシング開口でケーシング・既存コンクリート杭間の
土砂を除去し、水・エアーを通り易くする。

【００２８】このようにして、既存コンクリート杭１に
対して必要深さにケーシング９を建込んだならば、既存
コンクリート杭１をワイヤー等を掛止してクレーン等で
引き抜く。図９に引き抜き係止治具13を示すが、中心軸
13ａに傘の骨のように広がり可能なアーム13ｂを設け、
さらにこのアーム13ｂの先端に押し圧板13ｃを設けたも
のである。引き抜き係止治具13は、既存コンクリート杭
１の上端でコア抜き孔１ｂに挿入する際は窄めて入れ、
コア抜き孔１ｂの中で広げて中心軸13ａに引き抜き力が
加わるほど、押し圧板13ｃのコア抜き孔１ｂ内周壁面へ
の圧力が高まり、抜け難くなる。

【００２９】前記既存コンクリート杭１を引き抜く際に
もケーシング９は先端の噴射口11ａから水・エアーを噴
射し、この水・エアーはケーシング９内の既存コンクリ
ート杭１外周に流れるようにしてもよい。

【００３０】なお、前記実施形態ではケーシング９の建
て込みに、オールケーシング工法で使用する圧入機であ
る地上設置型の回転駆動装置10を使用した場合を説明し
たが、ケーシング９の建て込みに使用する回転駆動装置
としては、これ以外にケーシング９のチャック装置を回
転かつ昇降自在に重機に取付ける走行機構付きのタイプ
のものなども使用可能である。

【００３１】また、既存コンクリート杭１を引き抜くに
際して、既存コンクリート杭１のコア抜き孔１ｂにカン
ッターを差し入れ、既存コンクリート杭１を内側から切
断して適宜な長さにしてから、引き抜くことも可能であ
る。

【００３２】

【発明の効果】以上述べたように本発明の杭の引抜き工
法は、既設杭がコンクリート杭の場合でも、杭重量を軽
減し、かつ、地山の摩擦をカットし、また、掘削孔の崩
壊を防止して、簡単かつ確実に引抜くことができるもの
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
１工程の側面図である。

【図２】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
２工程の縦断側面図である。

【図３】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
３工程の縦断側面図である。

【図４】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
４工程の縦断側面図である。

【図５】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
５工程の縦断側面図である。

【図６】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す第
６工程の縦断側面図である。

【図７】本発明の杭の引抜き工法の１実施形態を示す斜
視図である。

【図８】本発明の杭の引抜き工法で使用するケーシング
の底面図である。

【図９】本発明の杭の引抜き工法で使用する引き抜き係
止治具の一例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１…既存コンクリート杭 １ａ…鉄筋か
ご １ｂ…コア抜き孔 ２…ロックオ
ーガー ３…ケーシング ３ａ…掘削刃 ４…オーガースクリュー ４ａ…オーガ
ーヘッド ５，６…駆動装置 ７…ベースマシン ８…リーダー
マスト ８ａ…トップシーブ ９…ケーシン
グ ９ａ…掘削刃 10…回転駆動
装置 10ａ…チャック装置 10ｂ…駆動装
置 10ｃ…昇降シリンダー 10ｄ…アウト
リガー 11…水およびエアーの通流管 11ａ…噴射口 12…突起 13…引き抜き
係止治具 13ａ…中心軸 13ｂ…アーム 13ｃ…押し圧板 14…突条

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 既存コンクリート杭を、先にロックオー
   ガーで中心部のコア抜きを行い、次いで、この既存コン
   クリート杭の周囲を囲むようにケーシングを回転させな
   がら建込み、該ケーシングで既存コンクリート杭と地盤
   との縁を切っておいて、既存コンクリート杭を引き抜く
   ことを特徴とする杭の引抜き工法。
2. 【請求項２】 ケーシング先端より水・エアーを噴射
   し、これをケーシング内の既存コンクリート杭外周に流
   して引抜きの際の摩擦抵抗を軽減する請求項１記載の杭
   の引抜き工法。
3. 【請求項３】 ケーシング先端で内周面に突起を形成
   し、ケーシング回転時にこの突起でケーシング開口でケ
   ーシング・既存コンクリート杭間の土砂を除去し、水・
   エアーを通り易くする請求項２記載の杭の引抜き工法。