JP3623218B2 - 毛髪の染色及び脱染方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛髪を染色するための毛髪の染色及び脱染方法に関し、さらに詳しくは、染毛後の毛髪を還元剤によって十分に脱染することができる毛髪の染色及び脱染方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の染毛剤組成物としては、酸化染料、アンモニア等を含有する染色キャリア物質と、過酸化水素溶液とから構成される染毛剤組成物及び還元剤等を含有する脱色剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特表2000−504348号公報(第25頁〜第27頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の染毛剤組成物によって染色された毛髪は、染毛剤組成物に含有される酸化染料の種類によっては、還元剤の還元作用では十分に脱染することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、染毛後の毛髪を還元剤によって十分に脱染することができる毛髪の染色及び脱染方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法では、下記の(A)、(B)及び(C)の各成分、
(A):一般式(1)で表される化合物、及び一般式(1)で表される化合物の塩類から選ばれる少なくとも一種の主要中間体、
【0007】
【化2】
【0008】
(式中のR1は水素原子又はメチル基、4つのR2のうち少なくとも1つが、
−(CH2)n−OHで表されるヒドロキシアルキル基、その他のR2は水素原子を表す。ここでヒドロキシアルキル基のnは1〜5の整数を表す。)
(B):カプラー、
(C):アルカリ剤、
を含有する第1剤と、下記の(D)成分、
(D):酸化剤、
を含有する第2剤とから構成され、使用の際には前記第1剤及び第2剤が混合調製され、毛髪は前記(A)成分及び(B)成分の酸化重合により生成する多核化合物の発色によって染色され、染毛後の毛髪における前記多核化合物の発色が還元剤の還元作用によって無色化されるように構成した染毛剤組成物、及び前記還元剤としてアスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びチオ硫酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する脱染剤を用いた毛髪の染色及び脱染方法において、
前記第1剤及び第2剤を混合することにより染毛混合物を調節する第1段階と、
該染毛混合物を毛髪に塗布し一定時間放置することにより、(D)成分の酸化力によって毛髪のメラニンを徐々に脱色させるとともに、(A)成分及び(B)成分の酸化重合により生成した重合割合の低い多核化合物の発色により毛髪が染色される第2段階と、
前記脱染剤を染色された毛髪に塗布し一定時間放置し、毛髪を染色している前記多核化合物を還元剤の還元作用によって解重合又は非共鳴化させることにより毛髪が脱染される第3段階と
を含んで構成されるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法では、請求項1に記載の発明において、前記(B)成分は、m−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、5−アミノ−o−クレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1剤は、さらに(E)成分として重合抑制剤を含有し、使用の際における前記(A)成分及び(B)成分の酸化重合が前記(E)成分によって抑制されるものである。
【0011】
請求項4に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法では、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記脱染剤は、還元剤として重合抑制剤を含有するものである。
請求項5に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法では、請求項4に記載の発明において、前記脱染剤は、さらにフマル酸を含有するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の染毛剤組成物としての酸化染毛剤は、第1剤としての酸化染毛剤第1剤(以下、染毛第1剤という。)と第2剤としての酸化染毛剤第2剤(以下、染毛第2剤という。)とから構成されている。染毛第1剤と染毛第2剤が、使用の際に混合調製されることにより、混合物としての染毛混合物を得ることができる。この染毛混合物が毛髪に塗布されることにより、毛髪を染色することができる。この染毛第1剤には、(A)下記の一般式(1)で表される化合物、及び下記の一般式(1)で表される化合物の塩類から選ばれる少なくとも一種の主要中間体が含有される。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中のR1は水素原子又はメチル基、4つのR2のうち少なくとも1つが、
−(CH2)n−OHで表されるヒドロキシアルキル基、その他のR2は水素原子を表す。ここでヒドロキシアルキル基のnは1〜5の整数を表す。)
また、この染毛第1剤には、(B)カプラー及び(C)アルカリ剤が含有される。また、染毛第2剤には(D)酸化剤が含有される。そして、この酸化染毛剤によって染色された毛髪は、脱染剤に含有する還元剤の還元作用により脱染することができる。
【0015】
まず、酸化染毛剤について詳細に説明する。
<染毛第1剤>
本実施形態における染毛第1剤には、(A)成分として上記の一般式(1)で表される化合物、及び上記の一般式(1)で表される化合物の塩類から選ばれる少なくとも一種の主要中間体、(B)カプラー及び(C)アルカリ剤が含有される。また、この染毛第1剤にはその他の成分として酸化染毛剤の染毛第1剤に通常用いられる成分が含有される。
【0016】
(A)上記の一般式(1)で表される化合物、及び上記の一般式(1)で表される化合物の塩類から選ばれる少なくとも一種の主要中間体は、毛髪を染色するために配合される。(A)成分は、(A)成分自身の酸化重合及び(A)成分と(B)カプラーとの酸化重合によって発色する。ここで、(A)成分自身の酸化重合及び(A)成分と(B)成分との酸化重合によって生成する化合物を多核化合物という。毛髪は多核化合物によって染色される。
【0017】
(A)成分である上記一般式(1)で表される化合物の塩類としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらの(A)成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(A)成分の中でも、好ましくはヒドロキシアルキル基のnが2であるヒドロキシエチル基で置換された(A)成分から選ばれる少なくとも一種、より好ましくはR1が水素原子、R2の2つがヒドロキシエチル基で置換されたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン及びその塩から選ばれる少なくとも一種である。
【0018】
染毛混合物中における(A)成分の含有量は、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。この含有量が0.01重量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、15重量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。また、0.1重量%以上配合することにより、より優れた染色性が得られる。一方、10重量%を超えて配合した場合、染色性が向上しにくくなる。
【0019】
(B)カプラーは、毛髪を染色するために配合される。(B)成分は、(B)成分自身の酸化重合及び(B)成分と(A)成分との酸化重合によって発色する。(B)成分としては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、N−(3−ジメチルアミノフェニル)−尿素、2,6−ジアミノピリジン、2−アミノ−4−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−アニソール、2,4−ジアミノ−1フルオロ−5−メチルベンゼン、2,4−ジアミノ−1−メトキシ−5−メチルベンゼン、2,4−ジアミノ−1−エトキシ−5−メチルベンゼン、2,4−ジアミノ−1−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−メチルベンゼン、2,4−ジ〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−1,5−ジメトキシベンゼン、2,3−ジアミノ−6−メトキシピリジン、3−アミノ−6−メトキシ−2−(メチルアミノ)−ピリジン、2,6−ジアミノ−3,5−ジメトキシピリジン、3,5−ジアミノ−2,6−ジメトキシピリジン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノ−1−(2−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、1−(2−アミノエトキシ)−2,4−ジアミノベンゼン、2−アミノ−1−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−メチルアミノベンゼン、2,4−ジアミノフェノキシ酢酸、3−〔ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−アニリン、4−アミノ−2−ジ〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−1−エトキシベンゼン、5−メチル−2−(1−メチルエチル)−フェノール、3−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−アニリン、3−〔(2−アミノエチル)アミノ〕−アニリン、1,3−ジ〔(2,4−ジアミノフェノキシ)−プロパン、ジ(2,4−ジアミノフェノキシ)−メタン、1,3−ジアミノ−2,4−ジメトキシベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトルオール、4−ヒドロキシインドール、3−ジメチルアミノフェノール、3−ジエチルアミノフェノール、5−アミノ−2−メチルフェノール、5−アミノ−4−フルオロ−2−メチルフェノール、5−アミノ−4−メトキシ−2−メチルフェノール、5−アミノ−4−エトキシ−2−メチルフェノール、3−アミノ−2,4−ジクロロフェノール、5−アミノ−2,4−ジクロロフェノール、3−アミノ−2−メチルフェノール、3−アミノ−2−クロロ−6−メチルフェノール、3−アミノフェノール、2−〔(3−ヒドロキシフェニル)アミノ〕−アセトアミド、5−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−メチルフェノール、3−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−フェノール、3−〔(2−メトキシエチル)−アミノ〕−フェノール、5−アミノ−2−エチルフェノール、2−(4−アミノ−2−ヒドロキシフェノキシ)−エタノール、5−〔(3−ヒドロキシプロピル)アミノ〕−2−メチルフェノール、3−〔(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミノ〕−2−メチルフェノール、3−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−メチルフェノール、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、5−アミノ−4−クロロ−2−メチルフェノール、1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒトロキシナフタレン、2−メチル−1−ナフトールアセテート、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、2−クロロ−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジクロロ−3,5−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,5−ジクロロ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、3,4−メチレンジオキシフェノール、3,4−メチレンジオキシアニリン、5−〔(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−1,3−ベンゾジオクソール(benzodioxol)、6−ブロモ−1−ヒドロキシ−3,4−メチレンジオキシベンゼン、3,4−ジアミノ安息香酸、3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−1,4(2H)−ベンゾキサジン(benzoxazin)、6−アミノ−3,4−ジヒドロ−1,4(2H)−ベンゾキサジン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、5,6−ジヒドロキシインドール、5,6−ジヒドロキシインドリン、5−ヒドロキシインドール、6−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、2,3−インドリンジオン、ヒドロキシエチル−3,4−メチレンジオキシアニリン、4−アミノメタクレゾール、6−アミノメタクレゾール、6−アミノオルトクレゾール、3−エチルアミノパラクレゾール、3−アミノ−2−クロロ−4−メチルフェノール、3−アミノ−2−クロロ−5−メチルフェノール、5−アミノ−4−クロロ−3−メチルフェノール、5−アミノ−4−クロロ−6−メチルフェノール、それらの塩類等が挙げられる。これらの(B)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0020】
これらの(B)成分の中でも、生成する多核化合物が還元剤によって脱染され易いことから、好ましくはm−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、5−アミノ−o−クレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種、より好ましくは、m−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種である。
【0021】
染毛混合物中における(B)成分の含有量は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。この含有量が0.01重量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、10重量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。また、0.1重量%以上配合することにより、より優れた染色性が得られる。一方、5重量%を超えた場合は染色性が向上しにくくなる。
【0022】
また、染毛混合物中における(A)成分の含有量及び(B)成分の含有量の合計は、好ましくは0.02〜25重量%、より好ましくは0.2〜15重量%である。この含有量が0.02重量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、25重量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料及び酸化染料以外の染料として直接染料等を本発明の目的に反しない限り、適宜、配合することもできる。
【0023】
(C)アルカリ剤は、毛髪を膨潤させることにより、毛髪に対する(A)成分及び(B)成分の浸透性を向上させ、染色性を向上させるために配合される。(C)成分の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン類、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸、それらの塩類等が挙げられる。アルカノールアミン類としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。有機アミン類としては2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。無機アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。塩基性アミノ酸としてはアルギニン、リジン等が挙げられる。これらの(C)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。また、二種以上の(C)成分を適当に組み合わせて配合することによって第1剤に緩衝作用をもたせてもよい。これらの(C)成分の中でも、毛髪に対する(A)成分及び(B)成分の浸透性を向上させ易いことから、好ましくはアンモニア及びアルカノールアミン類から選ばれる少なくとも一種である。
【0024】
染毛混合物中における(C)成分の含有量は、好ましくは0.01〜0.9重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.35重量%である。この含有量が0.01重量%未満であると、毛髪を十分に膨潤させることができないおそれがある。一方、0.9重量%を超えて配合すると、(D)酸化剤による(A)成分及び(B)成分の酸化重合が過剰に促進され、重合割合の高い多核化合物の生成率が高くなるおそれがある。従って、還元剤による脱染が困難となるおそれがある。
【0025】
この染毛第1剤には、その他の成分として(E)重合抑制剤、水、界面活性剤、油性成分等が配合される。
(E)重合抑制剤は、その還元作用によって(D)酸化剤による(A)成分及び(B)成分の酸化重合を抑制し、(A)成分及び(B)成分の酸化重合によって生成する多核化合物の重合割合を低く維持するために配合されることが好ましい。(E)成分の具体例としては、アスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩等が挙げられる。
【0026】
アスコルビン酸塩の具体例としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸アンモニウム、アスコルビン酸モノエタノールアミン、アスコルビン酸ジエタノールアミン等が挙げられる。アスコルビン酸誘導体の具体例としては、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、酢酸アスコルビル、プロピオン酸アスコルビル、酒石酸アスコルビル、クエン酸アスコルビル、コハク酸アスコルビル、安息香酸アスコルビル、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム、アスコルビルエチル、アスコルビン酸アラントイン、アスコルビン酸キトサン、アスコルビン酸メチルシラノール、テトラデシルヘキシルアスコルビル、アミノプロピルアスコルビルフォスフェート、アスコルビン酸ポリペプタイド、アスコルビルグルコシド、アスコルビルメチルシラノールペクチネート等が挙げられる。
【0027】
チオグリコール酸類としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩及びチオグリコール酸のエステルが挙げられる。チオグリコール酸塩としては、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム等が挙げられる。チオグリコール酸のエステルとしては、グリセリンチオグリコレート等が挙げられる。
【0028】
システイン類としては、システイン、システイン塩酸塩、N−アセチル−L−システイン等が挙げられる。
メルカプト化合物としては、チオグリセロール、チオ乳酸、チオリンゴ酸、システアミン等が挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。チオ硫酸塩としては、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
これらの(E)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(E)成分の中でも、(A)成分及び(B)成分の酸化重合を抑制する作用に優れることから、好ましくはアスコルビン酸類及び亜硫酸塩から選ばれる少なくとも一種、より好ましくはアスコルビン酸類から選ばれる少なくとも一種、さらに好ましくはアスコルビン酸及びその塩である。
【0030】
染毛混合物中における(E)成分の含有量は、好ましくは0.4〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%である。この含有量が0.4重量%未満であると、(A)成分及び(B)成分の酸化重合を十分に抑制できないおそれがある。一方、10重量%を超えて配合しても、それ以上の抑制作用が得られないおそれがある。
【0031】
水は各成分の溶媒又は分散媒として適量配合される。
界面活性剤は、乳化剤又は可溶化剤として染毛第1剤の安定性を保持するために配合される。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0033】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤は上記の作用に加えて毛髪の感触を良好にするために配合される。カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0035】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、金属セッケン、アシルグルタミン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等が挙げられる。脂肪酸塩としては、ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸イソプロパノールアミン、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等が挙げられる。金属セッケンとしては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム等が挙げられる。アシルグルタミン酸塩としては、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。アシルメチルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤の具体例としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ウンデシルカルボキシメトキシエチルカルボキシメチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム液、ビス(ステアリル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体、ヤシ油アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムヒドロキシド、ヤシ油アルキル−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムヒドロキシド、ヤシ油アルキル−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、ヤシ油アルキルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルN−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムドデカノイルサルコシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液、ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0037】
油性成分としては、高級アルコール、油脂類、ロウ類、炭化水素類、エステル類、シリコーン類等が挙げられる。
高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0038】
油脂類の具体例としては、ホホバ油、オリーブ油のグリセライド等、ロウ類の具体例としては、ミツロウ、ラノリン等、炭化水素類の具体例としては、流動パラフィン、固形パラフィン、イソパラフィン、スクワラン等が挙げられる。エステル類の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等、シリコーン類の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0039】
さらに、その他の成分としてラウリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸等の脂肪酸、ソルビトール、マルトース等の糖類、多価アルコール、バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム等の水溶性高分子化合物、パラベン等の防腐剤、EDTA−2Na等のキレート剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定剤、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。また「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0040】
この染毛第1剤の剤型は、水溶液、分散液、乳化液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等特に限定されない。
<染毛第2剤>
この染毛第2剤には(D)酸化剤が含有される。また、この染毛第2剤にはその他の成分として酸化染毛剤の染毛第2剤に通常用いられる成分が含有される。
【0041】
(D)酸化剤は、(A)成分及び(B)成分を酸化重合させるとともに、毛髪に含まれるメラニンを脱色させるために配合される。(D)成分の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの(D)成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(D)成分の中でも、毛髪の脱色力に優れることから、好ましくは過酸化水素である。
【0042】
染毛混合物中における(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜2.3重量%、より好ましくは0.01〜1.9重量%、さらに好ましくは0.05〜1.5重量%である。この含有量が0.01重量%未満であると、メラニンを十分に脱色することができないおそれがある。一方、2.3重量%を超えて配合すると、(A)成分及び(B)成分が過剰に酸化重合され、重合割合の高い多核化合物の生成率が高くなるおそれがあり、還元剤による多核化合物の還元が困難となるおそれがある。
【0043】
この染毛第2剤には、上記染毛第1剤に記載のその他の成分を適宜配合することができる。また、(D)成分として過酸化水素を配合した場合、過酸化水素の分解を抑制するために、安定化剤を配合することが好ましい。安定化剤の具体例としては、尿素、フェナセチン、スズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル、8−オキシキノリン、リン酸等が挙げられる。
【0044】
この染毛第2剤の剤型は、水溶液、分散液、乳化液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等特に限定されない。
<染毛混合物>
酸化染毛剤を使用する際に、上記の染毛第1剤及び染毛第2剤を所定の割合で混合調製することによって染毛混合物を得ることができる。染毛第1剤と染毛第2剤の混合割合は、染毛混合物中における(C)成分の含有量が0.01〜0.9重量%となるように設定されることが好ましい。例えば、染毛第1剤中の(C)成分の含有量を0.02〜1.8重量%とした場合、染毛第1剤と染毛第2剤を重量基準において1:1の割合で混合調製することが好ましい。
【0045】
この染毛混合物の剤型は、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状等特に限定されない。
次に、脱染剤について説明する。本実施形態における脱染剤は脱染剤第1剤(以下、脱染第1剤という。)と脱染剤第2剤(以下、脱染第2剤という。)とから構成されている。脱染第1剤には、水等が含有される。この脱染第1剤は液状、ゲル状又はクリーム状の組成物である。一方、脱染第2剤には、還元剤等が含有される。この脱染第2剤は固体状の組成物である。脱染第1剤と脱染第2剤が、使用の際に混合調製されることにより、脱染第2剤に含有する還元剤が脱染第1剤に溶解した脱染混合物を得ることができる。
<脱染第1剤>
脱染第1剤には、水の他に、水溶性高分子化合物、界面活性剤、油性成分等の染毛第1剤に記載のその他の成分を適宜配合することができる。
【0046】
水は、脱染第2剤に含有される還元剤の可溶化剤として配合される。水溶性高分子化合物は、脱染剤に適度な粘度を与える増粘剤として配合される。油性成分は安定した乳化状態を形成させるために配合される。界面活性剤は脱染第1剤の安定性を向上させるために配合される。
<脱染第2剤>
脱染第2剤には、還元剤の他に、フマル酸、分散剤等を配合することができる。
【0047】
還元剤は、毛髪を染色している多核化合物を還元するために配合される。還元剤は、その還元作用によって重合割合の低い多核化合物を解重合又は非共鳴化させる化合物をいう。還元剤としては、重合割合の低い多核化合物を容易に解重合又は非共鳴化させることができることから、上記染毛第1剤の重合抑制剤として列挙したアスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びチオ硫酸塩から選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらの還元剤の中でも、重合割合の低い多核化合物を解重合又は非共鳴化させる作用に優れることから、より好ましくはアスコルビン酸類及びシステイン類から選ばれる少なくとも一種、さらに好ましくはアスコルビン酸類から選ばれる少なくとも一種、最も好ましくはアスコルビン酸である。還元剤としてアスコルビン酸を配合した場合、脱染第2剤及び脱染混合物における臭気を低減することができるとともに、脱染処理後の毛髪における毛髪損傷度を低減することができる。
【0048】
フマル酸は、重合割合の低い多核化合物の解重合又は非共鳴化によって生成する成分の再酸化を抑制し、毛髪の再着色を抑制するために配合される。
分散剤は、還元剤等が凝集して塊状態を形成することを抑制し、脱染第1剤と脱染第2剤の混合調製の際、脱染第1剤中における脱染第2剤の分散性を向上させるために配合される。分散剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、タルク、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン等が挙げられる。
<脱染混合物>
脱染剤を使用する際に、脱染第1剤と脱染第2剤を所定の割合で混合調製することによって還元剤が水に溶解した脱染混合物を得ることができる。
【0049】
さて、酸化染毛剤を使用する際には、まず染毛第1剤と染毛第2剤を混合することによって染毛混合物を調製する。次に、この染毛混合物を刷毛、櫛等の塗布具に付着させ、毛髪に塗布する。この染毛混合物は(C)成分によってアルカリ性を示すことによって、(D)成分の酸化力が促進される。そして、(D)成分の酸化力によって(A)成分及び(B)成分の酸化重合反応が開始されるとともに進行し、(A)成分及び(B)成分が重合した多核化合物が生成する。生成した多核化合物には、共役系が形成され、多核化合物はその共役系による共鳴構造によって特定の色を発色する。
【0050】
このとき、染毛混合物中には特定の酸化染料である(A)成分及び(B)成分が含有されている。従って、(A)成分自体の酸化重合、(A)成分と(B)成分との酸化重合及び(B)成分自体の酸化重合によって生成する多核化合物のうち、重合割合の低い多核化合物(単一種の(A)成分から得られる二量体、異なる二種の(A)成分から得られる共重合体のうち、繰り返し単位数が1のもの)の生成率を高くすることができる。
【0051】
また、染毛混合物中には(E)成分が含有されている。従って、(E)成分の還元作用により、(D)成分の酸化力が抑制されるため、(A)成分及び(B)成分の酸化重合の進行が抑制される。従って、重合割合の低い多核化合物の生成率をさらに高くすることができる。また、第1剤に(E)成分としてアスコルビン酸類を配合した場合には、アスコルビン酸類のpHコントロール作用によって、染毛混合物はアルカリ性から徐々に酸性となる。従って、(D)成分の酸化力は、(C)成分によって促進されることなく、(A)成分自体の酸化重合、(A)成分と(B)成分との酸化重合及び(B)成分自体の酸化重合の進行がさらに抑制される。
【0052】
毛髪を一定時間放置すると、(D)成分の酸化力によって毛髪のメラニンが徐々に脱色されるとともに、重合割合の低い多核化合物の発色によって毛髪の大部分が染色される。
【0053】
次に、染色処理が施された毛髪に対して脱染剤を使用する際には、まず脱染第1剤と脱染第2剤を混合することによって脱染混合物を調製する。次に、この脱染混合物を刷毛、櫛等の塗布具に付着させ、上記の酸化染毛剤によって染色処理が施された毛髪に塗布する。ここで、毛髪を染色している多核化合物は、還元剤の還元作用によって解重合(分解)又は非共鳴化される。このとき、毛髪の大部分は、重合割合の低い多核化合物によって染色されている。重合割合の低い多核化合物が解重合されると、その発色が失われることによって容易に無色化される。また、重合割合の低い多核化合物に存在する共役系による共鳴構造が、非共鳴化されると、その発色が失われることによって容易に無色化される。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の染毛剤組成物においては、染毛第1剤は(A)、(B)及び(C)の各成分を含有している。また、染毛第2剤は(D)成分を含有している。このように構成した場合、毛髪の大部分を重合割合の低い多核化合物によって染色することができる。従って、重合割合の低い多核化合物は還元剤の還元作用によって解重合又は非共鳴化され、重合割合の低い多核化合物による発色は容易に無色化されるため、染毛後の毛髪を還元剤によって十分に脱染することができる。
【0055】
・ 本実施形態の染毛剤組成物においては、(B)成分は、好ましくはm−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、5−アミノ−o−クレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種である。この場合、(A)成分及び(B)成分の酸化重合をより十分に抑制することができる。よって、重合割合の低い多核化合物の生成率をより高くすることができ、染毛後の毛髪を還元剤によってより十分に脱染することができる。
【0056】
・ 本実施形態の染毛剤組成物においては、第1剤はさらに(E)成分を含有することが好ましい。このように構成した場合、(E)成分の還元作用及びpHコントロール作用によって、(A)成分及び(B)成分の酸化重合が進行するのを抑制することができる。従って、重合割合の低い多核化合物の生成率をさらに高くすることができ、染毛後の毛髪を還元剤によってさらに十分に脱染することができる。
【0057】
・ 本実施形態の染毛剤組成物においては、染毛混合物中における(C)成分の含有量は好ましくは0.01〜0.9重量%である。この場合、毛髪を十分に膨潤することができ、十分な染色力を得ることができる。また、重合割合の高い多核化合物の生成率を低く維持することができ、染毛後の毛髪を一層十分に脱染することができる。
【0058】
・ 従来の酸化染毛剤の場合、本実施形態の染毛剤組成物から生成する重合割合の低い多核化合物と比較して、重合割合の高い多核化合物が多く生成し、重合割合の高い多核化合物によって毛髪の大部分が染色されていた。そして、染毛後の毛髪を脱染する場合、酸化剤の酸化作用によって毛髪から重合割合の高い多核化合物を除去していた。この場合、酸化剤の酸化力によって毛髪のメラニンも分解してしまうため、毛髪に損傷を与えるおそれがあった。本実施形態の染毛剤組成物においては、(A)成分及び(B)成分の酸化重合によって生成する多核化合物は、重合割合が低いため、還元剤の還元作用によって脱染することができる。従って、従来の酸化剤による脱染と比較して、毛髪への損傷を抑制することができる。
【0059】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜7及び比較例1〜4)
表1に示す各成分を混合して、染毛第1剤及び染毛第2剤を調製することにより、染毛剤組成物としての酸化染毛剤を得た。続いて、各実施例及び各比較例における染毛第1剤と染毛第2剤を1:1の重量比で混合調製し、染毛混合物を得た。得られた染毛混合物をミディアムブラウン毛の人毛毛束(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布し、室温にて30分間放置した。次に、毛束に付着した染毛混合物を水で洗い流した後、シャンプーを2回、リンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。これらの染色処理が施された毛束について、分光測色計(ミノルタ株式会社製、型番:CM−508d)でL*a*b*値(L1、a1及びb1)を測定した。なお、表1における各成分の配合を示す数値の単位は重量%である。
【0060】
【表1】
【0061】
また、表2に示す各成分を混合して、脱染第1剤及び脱染第2剤を調製することにより脱染剤を得た。続いて、各実施例及び比較例における脱染第1剤と脱染第2剤を10:1の重量比で混合調製し、脱染混合物を得た。これらの脱染混合物を染色処理が施された毛束に刷毛を用いて塗布し、室温で30分間放置した。次に、毛束に付着した脱染混合物を水で洗い流した後、シャンプーを2回、リンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥し、上記の分光測色計でL*a*b*値(L2、a2及びb2)を測定した。
【0062】
未処理の毛束、染色処理を施した毛束及び脱染処理を施した毛束におけるL*a*b*値から、下記の(1)式によって未処理の毛束と染色処理を施した毛束の色差(ΔE1)及び未処理の毛束と脱染処理を施した毛束の色差(ΔE2)を算出した。
【0063】
ΔEi={(Li−L0)2+(ai−a0)2+(bi−b0)2}1/2…(1)
Li:染色処理後の毛束又は脱染処理後の毛束のL*値
ai:染色処理後の毛束又は脱染処理後の毛束のa*値
bi:染色処理後の毛束又は脱染処理後の毛束のb*値
L0,a0,b0:未処理の毛束のL*値、a*値及びb*値
次に、ΔE1及びΔE2から下記の(2)式によって脱染率[%]を算出した。
【0064】
脱染率[%]=(1−ΔE2/ΔE1)×100…(2)
各実施例及び各比較例における脱染率の算出結果を表2に示す。
一方、脱染処理後の毛束について、毛の根元から20〜30mmの部分に結び目を作り、毛束の両端に一定条件で張力を加えた。次に、走査型電子顕微鏡によって結び目部分におけるキューティクルの浮き上がり状態を観察し、以下の評価基準によって毛髪損傷度の評価を行った。
<毛髪損傷度の評価基準>
以下の4段階で官能評価を行った。
【0065】
キューティクルがほとんど浮き上がらず、非常に損傷が少ない(◎)。
キューティクルの最外層の一部のみが浮き上がっており、損傷が少ない(○)。
【0066】
キューティクルの最外層が全体的に浮き上がっており、損傷がややある(△)。
キューティクルのほとんどが浮き上がっており、損傷がある(×)。
【0067】
各実施例及び各比較例における毛髪損傷度の評価結果を表2に示す。なお、表2における各成分の配合量を示す数値の単位は重量%である。
【0068】
【表2】
【0069】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜実施例7では、いずれも80%以上の優れた脱染率を示している。特に、実施例1、4及び5では、90%以上の非常に優れた脱染率を示している。
【0070】
これらに対して比較例1〜比較例4では、染毛第1剤に(A)成分を配合せず、(A)成分以外の酸化染料を配合しているため、脱染率が65%以下の低い値を示し、還元剤によって十分に脱染されていないことがわかる。
【0071】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態においては、脱染剤は、脱染第1剤と脱染第2剤とから構成されている。この他に、還元剤、水等を配合した溶液から構成される1剤型の脱染剤としてもよい。また、粉末状等の固体状の還元剤を脱染剤とし、この脱染剤を使用者が水に溶解させて毛髪に適用するように構成してもよい。
【0072】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記(C)成分は、アンモニア及びアルカノールアミン類から選ばれる少なくとも一種である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の毛髪の染色及び脱染方法。このように構成した場合、毛髪に対する(A)成分及び(B)成分の浸透性を向上させ易く、毛髪の染色性を向上することができる。
【0073】
(2) 前記(D)成分は、過酸化水素である請求項1から請求項5及び上記(1)のいずれか一項に記載の毛髪の染色及び脱染方法。このように構成した場合、毛髪を十分に脱色することができ、染毛後の毛髪の明度を良好にすることができる。
【0074】
(3) 前記染毛剤組成物と、還元剤を含有する脱染剤組成物と、から構成される染毛剤と脱染剤のセット。このように構成した場合、染毛後の毛髪の色を染毛前の色に容易に戻すことができる。
【0075】
(4) 前記還元剤は、アスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びチオ硫酸塩から選ばれる少なくとも一種である上記(3)に記載の染毛剤と脱染剤のセット。このように構成した場合、脱染力を向上させることができる。
【0076】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1から請求項5に記載の発明の毛髪の染色及び脱染方法によれば、染毛後の毛髪を還元剤によって十分に脱染することができる。
Claims (5)
- 下記の(A)、(B)及び(C)の各成分、
(A):一般式(1)で表される化合物、及び一般式(1)で表される化合物の塩類から選ばれる少なくとも一種の主要中間体、
−(CH2)n−OHで表されるヒドロキシアルキル基、その他のR2は水素原子を表す。ここでヒドロキシアルキル基のnは1〜5の整数を表す。)
(B):カプラー、
(C):アルカリ剤、
を含有する第1剤と、下記の(D)成分、
(D):酸化剤、
を含有する第2剤とから構成され、使用の際には前記第1剤及び第2剤が混合調製され、毛髪は前記(A)成分及び(B)成分の酸化重合により生成する多核化合物の発色によって染色され、染毛後の毛髪における前記多核化合物の発色が還元剤の還元作用によって無色化されるように構成したことを特徴とする染毛剤組成物、及び前記還元剤としてアスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びチオ硫酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する脱染剤を用いた毛髪の染色及び脱染方法において、
前記第1剤及び第2剤を混合することにより染毛混合物を調節する第1段階と、
該染毛混合物を毛髪に塗布し一定時間放置することにより、(D)成分の酸化力によって毛髪のメラニンを徐々に脱色させるとともに、(A)成分及び(B)成分の酸化重合により生成した重合割合の低い多核化合物の発色により毛髪が染色される第2段階と、
前記脱染剤を染色された毛髪に塗布し一定時間放置し、毛髪を染色している前記多核化合物を還元剤の還元作用によって解重合又は非共鳴化させることにより毛髪が脱染される第3段階と
を含んで構成される毛髪の染色及び脱染方法。 - 前記(B)成分は、m−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、5−アミノ−o−クレゾール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪の染色及び脱染方法。
- 前記第1剤は、さらに(E)成分として重合抑制剤を含有し、使用の際における前記(A)成分及び(B)成分の酸化重合が前記(E)成分によって抑制されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪の染色及び脱染方法。
- 前記脱染剤は、還元剤として重合抑制剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪の染色及び脱染方法。
- 前記脱染剤は、さらにフマル酸を含有することを特徴とする請求項4に記載の毛髪の染色及び脱染方法。
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