JP3622943B2 - 芯線入りコイルの隙間検査方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、照明用ランプの発光源としての芯線入りコイルの隙間を検査する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1に示すように、照明用放電ランプの発光源(電極)である芯線入りコイル2は、直径約0.6mmの芯線2aのまわりを直径0.2mm程度の細いワイヤーを隙間なく巻き付けて、コイル2bとした構造となっている。コイル2bに隙間があると、放電発光時に色むらとなって現れ、これが放電ランプの品質低下を招く。これを防ぐため、製造過程で、芯線入りコイル2の隙間の検査が重要となっている。
【0003】
従来は、製造過程で、芯線入りコイルを1本ずつ投影機で検査員が全製品数にわたって検査していた。その検査法では、芯線入りコイル2のシルエットにおけるコイル2bの山部と山部とのピッチが規定値を超えたときに、不良とするものであるが、近年の自動化の流れの中で、画像処理を用いた検査の研究も試みられている。
【0004】
図2は、一般的な光学系を用いて、検査対象の芯線入りコイル2の芯線2aからの反射光を直接観察することによって、芯線入りコイル2を検査する装置である。芯線入りコイル2は、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標系で、X−Y平面上におかれる。なおX軸は、芯線入りコイル2の芯線2aの長手方向に設定されている。X−Y平面に対して垂直な光軸(Z軸)上に落射方向の照明3aとして、光軸上のレンズ3b、45°の傾斜角のハーフミラー3cおよび光源3dが設けられる。光軸上のTVカメラ6は、落射方向の照明3aのもとで、芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、画像信号に変換する。
【0005】
図3は、図2の光学系を用いて撮像した芯線入りコイル2の画像である。黒いところが背景で、それ以外のところが芯線入りコイル2の画像である。落射方向の照明3aであるから、芯線入りコイル2の表面で、TVカメラ6の光軸に垂直な面および垂直に近い勾配を持つ面は、明るい画像となっている。画像で明るい領域は、芯線入りコイル2(コイル2b)に隙間があったときの芯線部およびコイルの山部であるが、コイルの谷部の筋も明るくなり、コイルの谷部の筋と芯線部の区別ができない。もしも、コイルの谷部の筋が明るくなければ、コイルの山部はほぼ等ピッチで観測されるから、検出されたコイルの谷部と山部との間に明るい領域があれば、コイルの隙間を検出したということで、不良判定ができる。しかし、実際には、コイルの谷部の筋も明るく光り、コイルの谷部の筋と芯線部(コイルの隙間)との区別ができない。
【0006】
図4は、図2の直交座標系において、芯線入りコイル2をY軸とZ軸を含むY−Z平面で切ったときの芯線入りコイル2の断面図である。Z軸に対して約±20°の傾きを持つ面からの反射光がTVカメラ6に帰り、明るい領域として画像上に写る。これが、図3における芯線部(コイルの隙間)およびコイルの山部である。なお、±20°は、図2の光学系の寸法によって変わる値であり、TVカメラ6と芯線入りコイル2との距離が大きくなれば、明るく写る角度の範囲も小さくなる。また、照明3aの光源3dが小さくても、明るく写る角度の範囲も小さくなる。
【0007】
次に、図5は、図2の座標系において、コイル2bをX軸とZ軸とを含むX−Z平面で切ったときのコイル2bの断面の一部である。芯線2aに巻いてあるコイル(ワイヤー)2bの断面は、円形ではなく、表面に多くの凹凸がある。これは、図6に見られるように、ワイヤーの製造時、成形用ダイス等を通して成形する際に、長手方向に発生する筋である。
【0008】
本来、X−Z平面内では、コイル2bの約±20°の傾きを持つ斜面からの反射光およびコイル2bの隙間である芯線部からの反射光だけが明るく観測されるはずであるが、コイル2bの表面の筋の部分でも勾配の傾斜角が±20°の傾きを持つ斜面からの反射光も明るく観測される。これが、図3で見る細長いコイルの谷部の筋である。
【0009】
このコイルの谷部の筋は、図2の落射方向の照明3aで観測した画像では、コイル2bに隙間があったときの芯線部のすぐ近くに観測されるため、画像中の明るい領域がコイル2bの隙間なのか谷部の筋なのか区別がつかない。これが、画像処理による芯線入りコイル2の隙間検査ができない要因である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来法で、芯線入りコイル2の隙間を落射方向の照明3aを用いて画像処理で検査するとき、ほぼ等しいピッチで観測されるコイルの山部と山部との間に発生する画像上の明るい領域は、コイル2bの隙間としての芯線部なのか、それともコイル2bの谷部の筋なのか区別がつかない。このため、画像処理によって、コイル2bの隙間検査ができないという課題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法は、芯線入りコイルの隙間検査装置(1)を用いる。芯線入りコイルの隙間検査装置(1)は、芯線入りコイル(2)の表面を落射方向から照射する第1の照明(3)と、芯線入りコイル(2)の表面を斜め方向から照射する第2の照明(4)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序または点滅状態を制御する照明制御部(5)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)による芯線入りコイル(2)からの反射光を画像信号として取り込むTVカメラ(6)と、TVカメラ(6)の画像信号を多値画像データに変換するA/D変換部(7)と、A/D変換部(7)の多値画像データを記憶する画像メモリ(8)と、画像メモリ(8)に記憶されている画像データを処理する演算部(9)とを有する。
【0012】
請求項1の芯線入りコイルの隙間検査方法は、照明制御部(5)により第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序を切り換えながら落射方向の照明による芯線入りコイル(2)の第1の照明画像(G1)および斜め方向の照明による芯線入りコイル(2)の第2の照明画像(G2)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに第2の照明画像(G2)の白と黒とを反転して、濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、この合成2値化画像(G5)の隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出する。
【0013】
請求項2の芯線入りコイルの隙間検査方法は、第1の照明(3)および第2の照明(4)をそれぞれ互いに波長の異なる赤、緑、青のいずれかの色照明とし、TVカメラ(6)をカラーTVカメラとし、またA/D変換部(7)を第1の照明(3)および第2の照明(4)の色のカラー多値画像データに変換できる構成とし、第1の照明(3)および第2の照明(4)を同時に点灯して、芯線入りコイル(2)のカラー画像(G0)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、カラー画像(G0)の色分解により第1の照明画像(G1)と第2の照明画像(G2)を求め、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに白と黒とを反転して濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、合成2値化画像(G5)隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図7は、芯線入りコイルの隙間検査装置1を示す。芯線入りコイルの隙間検査装置1は、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法を実行し、検査対象の芯線入りコイル2の隙間を検出するために、第1の照明3、第2の照明4、照明制御部5、TVカメラ6、A/D変換部7、画像メモリ8、および演算部9などを有する。
【0015】
第1の照明3は、芯線入りコイル2の表面をTVカメラ6の光軸方向から照射し、また、第2の照明4は、例えばリング状の光源からなり、芯線入りコイル2の表面を斜め方向全方位から照射する。なお、第1の照明3の内部構成は、前記従来例の照明3aと同様である。照明制御部5は、TVカメラ6と連動して、第1の照明3および第2の照明4の点滅順序または点滅状態を制御する。
【0016】
TVカメラ6は、第1の照明3および第2の照明4による芯線入りコイル2からの反射光を画像信号として取り込み、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、TVカメラ6からの画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送る。画像メモリ8は、A/D変換部7からの多値画像データを記憶する。演算部9は、画像メモリ8に記憶されている画像データを本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法にもとづいて処理する。なお、これらは、バス10によって双方向にデータ転送可能な状態で接続されている。
【0017】
図8は、落射方向の照明による第1の照明画像G1および斜め方向の照明による第2の照明画像G2から、濃度反転画像G3、合成画像G4を経て、最終的に合成2値化画像G5を生成する過程を示している。また、図9は、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法の手順を示している。
【0018】
まず、照明制御部5は、第1の照明3のみを点灯する。このとき、TVカメラ6は、第1の照明3による芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、第1の照明画像G1の画像信号として取り込んで、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、第1の照明画像G1の画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送り、そこに記憶させる。
【0019】
つぎに、照明制御部5は、第2の照明4のみを点灯する。このとき、TVカメラ6は、第2の照明4による芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、第2の照明画像G2の画像信号として取り込み、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、第2の照明画像G2の画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送り、そこに記憶させる。
【0020】
第1の照明画像G1において、コイルの谷部の筋は、明るい領域となることから、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法は、コイルの谷部の筋を画像処理対象から除くために、斜め方向の第2の照明4により得られる第2の照明画像G2を用いる。第2の照明画像G2では、コイルの谷部が明るい領域となっている。この明るい領域は、落射方向の第1の照明画像G1で、明るい領域となっているコイルの谷部の筋を含む。
【0021】
そこで、演算部9は、第2の照明画像G2を適当なしきい値で2値化し、コイルの谷部を白、その他の領域を黒とし、つぎにこの2値化後の画像の濃度を反転し、コイルの谷部を黒、その他の領域を白とする濃度反転画像G3を生成する。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、第2の照明画像G2では明るい領域となって写るから、濃度反転画像G3では黒として処理される。
【0022】
このあと、演算部9は、濃度反転画像G3と第1の照明画像G1とを論理積演算して合成画像G4を生成する。濃度反転画像G3で黒の部分に対応する第1の照明画像G1の画素は、合成画像G4では黒となり、濃度反転画像G3で白の部分に対応する第1の照明画像G1の画素の濃度値は、合成画像G4ではその濃度値のまま保持される。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、濃度反転画像G3では黒となっているから、合成画像G4では黒として処理される。
【0023】
演算部9は、合成画像G4を適当な別のしきい値で2値化して、合成2値化画像G5を生成する。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、合成画像G4では黒となっているから、合成2値化画像G5でも黒として処理される。よって、合成2値化画像G5で白として抽出される領域は、コイルの山部とコイルの隙間である芯線部だけである。
【0024】
演算部9は、合成2値化画像G5の中から面積の大きい白領域を画像処理により抽出し、その重心を画像処理によって求め、ほぼ等ピッチである白領域をコイルの山部とし、そのコイルの山部と山部との間に白領域があれば、芯線部の隙間検出と判定し、このときの芯線入りコイル2を不良とする。また、この過程で、この白領域の幅を芯入りコイル2の隙間の幅として検出することもできる。
【0025】
次に、TVカメラ6として、カラーTVカメラを用いることによって、第1の照明3および第2の照明4の点滅順序を制御するための照明制御部5を無くすることを考える。第1の照明3および第2の照明4のうち一方を赤、緑、青のいずれかの色の照明とし、他方を先の色の照明と波長の異なる赤、緑、青のいずれかの色から選択した照明とする。
【0026】
図10は、一例として、第1の照明3を赤とし、第2の照明4を青として、それらを同時に点灯したときの本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法の順序を示している。同時点灯の状態で、カラーのTVカメラ6は、赤および青の照明の下で、芯線入りコイル2をカラー画像G0として撮像する。A/D変換部7は、カラー画像G0の画像データをA/D変換して、2色の多値画像データとして、画像メモリ8に送り、記憶させる。ここで、演算部9は、カラー画像G0から色分解によって、画像をそれぞれ赤、青色毎の画像に分解し、第1の照明画像G1と第2の照明画像G2として生成する。以下の手順は、先に述べた手順と同様である。このように、着色照明を用いることによって、2つの照明の点滅状態を切り換えなくても、必要な画像処理が可能となる。
【0027】
芯線入りコイルの隙間検査装置1にX軸方向のステージをつなぎ、X軸を制御する制御手段を設けることにより、予め登録されたX軸の位置にしたがって、X軸を順次に芯線入りコイル2の隙間検査の1視野毎と同期させて移動させることにより、1本の芯線入りコイル2を1視野だけでなく、全て検査することができる。また、芯線2aの中心線と同心のθ軸ステージと、θ軸を制御する制御手段を設け、θ軸を順次芯入りコイルの隙間検査の1視野毎と同期させて回転させることにより、コイル2bのあらゆる方向の検査も可能となる。
【0028】
【発明の効果】
本発明では、下記の特有の効果が得られる。芯線入りコイルを照射角度の異なる2つの照明を用いて、各照明毎に照明画像を得てから、それらの照明画像に対する2値化処理、濃度反転処理、合成処理などによって、最終的にコイルの山部とコイルの隙間とを判別可能な画像が得られるため、コイルの隙間検査が画像処理によって確実に行なえる。また、2つの照明として着色照明を用いることによって、照明の切り換えを行なわなくても、必要な2つの照明画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】芯線入りコイルの正面図である。
【図2】芯線入りコイルの隙間検出のための光学系の側面図である。
【図3】芯線入りコイルの落射方向の照明による画像の説明図である。
【図4】Y−Z平面で切った芯線入りコイルの断面図である。
【図5】X−Z平面で切った芯線入りコイルの拡大断面図である。
【図6】芯線入りコイルの拡大正面図である。
【図7】芯線入りコイルの隙間検査装置のブロック線図である。
【図8】2つの照明画像から合成2値化画像を生成する過程の説明図である。
【図9】芯線入りコイルの隙間検査方法の順序を示す説明図である。
【図10】カラーTVカメラを用いた芯線入りコイルの隙間検査方法の順序の説明図である。
【符号の説明】
1 芯線入りコイルの隙間検査装置
2 芯線入りコイル
2a 芯線
2b コイル
3a 照明
3b レンズ
3c ハーフミラー
3d 光源
3 第1の照明
4 第2の照明
5 照明制御部
6 TVカメラ
7 A/D変換部
8 画像メモリ
9 演算部
10 バス
G0 カラー画像
G1 第1の照明画像
G2 第2の照明画像
G3 濃度反転画像
G4 合成画像
G5 合成2値化画像
【発明の技術分野】
本発明は、照明用ランプの発光源としての芯線入りコイルの隙間を検査する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1に示すように、照明用放電ランプの発光源(電極)である芯線入りコイル2は、直径約0.6mmの芯線2aのまわりを直径0.2mm程度の細いワイヤーを隙間なく巻き付けて、コイル2bとした構造となっている。コイル2bに隙間があると、放電発光時に色むらとなって現れ、これが放電ランプの品質低下を招く。これを防ぐため、製造過程で、芯線入りコイル2の隙間の検査が重要となっている。
【0003】
従来は、製造過程で、芯線入りコイルを1本ずつ投影機で検査員が全製品数にわたって検査していた。その検査法では、芯線入りコイル2のシルエットにおけるコイル2bの山部と山部とのピッチが規定値を超えたときに、不良とするものであるが、近年の自動化の流れの中で、画像処理を用いた検査の研究も試みられている。
【0004】
図2は、一般的な光学系を用いて、検査対象の芯線入りコイル2の芯線2aからの反射光を直接観察することによって、芯線入りコイル2を検査する装置である。芯線入りコイル2は、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標系で、X−Y平面上におかれる。なおX軸は、芯線入りコイル2の芯線2aの長手方向に設定されている。X−Y平面に対して垂直な光軸(Z軸)上に落射方向の照明3aとして、光軸上のレンズ3b、45°の傾斜角のハーフミラー3cおよび光源3dが設けられる。光軸上のTVカメラ6は、落射方向の照明3aのもとで、芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、画像信号に変換する。
【0005】
図3は、図2の光学系を用いて撮像した芯線入りコイル2の画像である。黒いところが背景で、それ以外のところが芯線入りコイル2の画像である。落射方向の照明3aであるから、芯線入りコイル2の表面で、TVカメラ6の光軸に垂直な面および垂直に近い勾配を持つ面は、明るい画像となっている。画像で明るい領域は、芯線入りコイル2(コイル2b)に隙間があったときの芯線部およびコイルの山部であるが、コイルの谷部の筋も明るくなり、コイルの谷部の筋と芯線部の区別ができない。もしも、コイルの谷部の筋が明るくなければ、コイルの山部はほぼ等ピッチで観測されるから、検出されたコイルの谷部と山部との間に明るい領域があれば、コイルの隙間を検出したということで、不良判定ができる。しかし、実際には、コイルの谷部の筋も明るく光り、コイルの谷部の筋と芯線部(コイルの隙間)との区別ができない。
【0006】
図4は、図2の直交座標系において、芯線入りコイル2をY軸とZ軸を含むY−Z平面で切ったときの芯線入りコイル2の断面図である。Z軸に対して約±20°の傾きを持つ面からの反射光がTVカメラ6に帰り、明るい領域として画像上に写る。これが、図3における芯線部(コイルの隙間)およびコイルの山部である。なお、±20°は、図2の光学系の寸法によって変わる値であり、TVカメラ6と芯線入りコイル2との距離が大きくなれば、明るく写る角度の範囲も小さくなる。また、照明3aの光源3dが小さくても、明るく写る角度の範囲も小さくなる。
【0007】
次に、図5は、図2の座標系において、コイル2bをX軸とZ軸とを含むX−Z平面で切ったときのコイル2bの断面の一部である。芯線2aに巻いてあるコイル(ワイヤー)2bの断面は、円形ではなく、表面に多くの凹凸がある。これは、図6に見られるように、ワイヤーの製造時、成形用ダイス等を通して成形する際に、長手方向に発生する筋である。
【0008】
本来、X−Z平面内では、コイル2bの約±20°の傾きを持つ斜面からの反射光およびコイル2bの隙間である芯線部からの反射光だけが明るく観測されるはずであるが、コイル2bの表面の筋の部分でも勾配の傾斜角が±20°の傾きを持つ斜面からの反射光も明るく観測される。これが、図3で見る細長いコイルの谷部の筋である。
【0009】
このコイルの谷部の筋は、図2の落射方向の照明3aで観測した画像では、コイル2bに隙間があったときの芯線部のすぐ近くに観測されるため、画像中の明るい領域がコイル2bの隙間なのか谷部の筋なのか区別がつかない。これが、画像処理による芯線入りコイル2の隙間検査ができない要因である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来法で、芯線入りコイル2の隙間を落射方向の照明3aを用いて画像処理で検査するとき、ほぼ等しいピッチで観測されるコイルの山部と山部との間に発生する画像上の明るい領域は、コイル2bの隙間としての芯線部なのか、それともコイル2bの谷部の筋なのか区別がつかない。このため、画像処理によって、コイル2bの隙間検査ができないという課題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法は、芯線入りコイルの隙間検査装置(1)を用いる。芯線入りコイルの隙間検査装置(1)は、芯線入りコイル(2)の表面を落射方向から照射する第1の照明(3)と、芯線入りコイル(2)の表面を斜め方向から照射する第2の照明(4)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序または点滅状態を制御する照明制御部(5)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)による芯線入りコイル(2)からの反射光を画像信号として取り込むTVカメラ(6)と、TVカメラ(6)の画像信号を多値画像データに変換するA/D変換部(7)と、A/D変換部(7)の多値画像データを記憶する画像メモリ(8)と、画像メモリ(8)に記憶されている画像データを処理する演算部(9)とを有する。
【0012】
請求項1の芯線入りコイルの隙間検査方法は、照明制御部(5)により第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序を切り換えながら落射方向の照明による芯線入りコイル(2)の第1の照明画像(G1)および斜め方向の照明による芯線入りコイル(2)の第2の照明画像(G2)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに第2の照明画像(G2)の白と黒とを反転して、濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、この合成2値化画像(G5)の隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出する。
【0013】
請求項2の芯線入りコイルの隙間検査方法は、第1の照明(3)および第2の照明(4)をそれぞれ互いに波長の異なる赤、緑、青のいずれかの色照明とし、TVカメラ(6)をカラーTVカメラとし、またA/D変換部(7)を第1の照明(3)および第2の照明(4)の色のカラー多値画像データに変換できる構成とし、第1の照明(3)および第2の照明(4)を同時に点灯して、芯線入りコイル(2)のカラー画像(G0)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、カラー画像(G0)の色分解により第1の照明画像(G1)と第2の照明画像(G2)を求め、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに白と黒とを反転して濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、合成2値化画像(G5)隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図7は、芯線入りコイルの隙間検査装置1を示す。芯線入りコイルの隙間検査装置1は、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法を実行し、検査対象の芯線入りコイル2の隙間を検出するために、第1の照明3、第2の照明4、照明制御部5、TVカメラ6、A/D変換部7、画像メモリ8、および演算部9などを有する。
【0015】
第1の照明3は、芯線入りコイル2の表面をTVカメラ6の光軸方向から照射し、また、第2の照明4は、例えばリング状の光源からなり、芯線入りコイル2の表面を斜め方向全方位から照射する。なお、第1の照明3の内部構成は、前記従来例の照明3aと同様である。照明制御部5は、TVカメラ6と連動して、第1の照明3および第2の照明4の点滅順序または点滅状態を制御する。
【0016】
TVカメラ6は、第1の照明3および第2の照明4による芯線入りコイル2からの反射光を画像信号として取り込み、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、TVカメラ6からの画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送る。画像メモリ8は、A/D変換部7からの多値画像データを記憶する。演算部9は、画像メモリ8に記憶されている画像データを本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法にもとづいて処理する。なお、これらは、バス10によって双方向にデータ転送可能な状態で接続されている。
【0017】
図8は、落射方向の照明による第1の照明画像G1および斜め方向の照明による第2の照明画像G2から、濃度反転画像G3、合成画像G4を経て、最終的に合成2値化画像G5を生成する過程を示している。また、図9は、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法の手順を示している。
【0018】
まず、照明制御部5は、第1の照明3のみを点灯する。このとき、TVカメラ6は、第1の照明3による芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、第1の照明画像G1の画像信号として取り込んで、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、第1の照明画像G1の画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送り、そこに記憶させる。
【0019】
つぎに、照明制御部5は、第2の照明4のみを点灯する。このとき、TVカメラ6は、第2の照明4による芯線入りコイル2からの反射光を撮像し、第2の照明画像G2の画像信号として取り込み、A/D変換部7に送る。A/D変換部7は、第2の照明画像G2の画像信号を多値画像データに変換し、画像メモリ8に送り、そこに記憶させる。
【0020】
第1の照明画像G1において、コイルの谷部の筋は、明るい領域となることから、本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法は、コイルの谷部の筋を画像処理対象から除くために、斜め方向の第2の照明4により得られる第2の照明画像G2を用いる。第2の照明画像G2では、コイルの谷部が明るい領域となっている。この明るい領域は、落射方向の第1の照明画像G1で、明るい領域となっているコイルの谷部の筋を含む。
【0021】
そこで、演算部9は、第2の照明画像G2を適当なしきい値で2値化し、コイルの谷部を白、その他の領域を黒とし、つぎにこの2値化後の画像の濃度を反転し、コイルの谷部を黒、その他の領域を白とする濃度反転画像G3を生成する。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、第2の照明画像G2では明るい領域となって写るから、濃度反転画像G3では黒として処理される。
【0022】
このあと、演算部9は、濃度反転画像G3と第1の照明画像G1とを論理積演算して合成画像G4を生成する。濃度反転画像G3で黒の部分に対応する第1の照明画像G1の画素は、合成画像G4では黒となり、濃度反転画像G3で白の部分に対応する第1の照明画像G1の画素の濃度値は、合成画像G4ではその濃度値のまま保持される。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、濃度反転画像G3では黒となっているから、合成画像G4では黒として処理される。
【0023】
演算部9は、合成画像G4を適当な別のしきい値で2値化して、合成2値化画像G5を生成する。第1の照明画像G1で明るい領域となっているコイルの谷部の筋は、合成画像G4では黒となっているから、合成2値化画像G5でも黒として処理される。よって、合成2値化画像G5で白として抽出される領域は、コイルの山部とコイルの隙間である芯線部だけである。
【0024】
演算部9は、合成2値化画像G5の中から面積の大きい白領域を画像処理により抽出し、その重心を画像処理によって求め、ほぼ等ピッチである白領域をコイルの山部とし、そのコイルの山部と山部との間に白領域があれば、芯線部の隙間検出と判定し、このときの芯線入りコイル2を不良とする。また、この過程で、この白領域の幅を芯入りコイル2の隙間の幅として検出することもできる。
【0025】
次に、TVカメラ6として、カラーTVカメラを用いることによって、第1の照明3および第2の照明4の点滅順序を制御するための照明制御部5を無くすることを考える。第1の照明3および第2の照明4のうち一方を赤、緑、青のいずれかの色の照明とし、他方を先の色の照明と波長の異なる赤、緑、青のいずれかの色から選択した照明とする。
【0026】
図10は、一例として、第1の照明3を赤とし、第2の照明4を青として、それらを同時に点灯したときの本発明の芯線入りコイルの隙間検査方法の順序を示している。同時点灯の状態で、カラーのTVカメラ6は、赤および青の照明の下で、芯線入りコイル2をカラー画像G0として撮像する。A/D変換部7は、カラー画像G0の画像データをA/D変換して、2色の多値画像データとして、画像メモリ8に送り、記憶させる。ここで、演算部9は、カラー画像G0から色分解によって、画像をそれぞれ赤、青色毎の画像に分解し、第1の照明画像G1と第2の照明画像G2として生成する。以下の手順は、先に述べた手順と同様である。このように、着色照明を用いることによって、2つの照明の点滅状態を切り換えなくても、必要な画像処理が可能となる。
【0027】
芯線入りコイルの隙間検査装置1にX軸方向のステージをつなぎ、X軸を制御する制御手段を設けることにより、予め登録されたX軸の位置にしたがって、X軸を順次に芯線入りコイル2の隙間検査の1視野毎と同期させて移動させることにより、1本の芯線入りコイル2を1視野だけでなく、全て検査することができる。また、芯線2aの中心線と同心のθ軸ステージと、θ軸を制御する制御手段を設け、θ軸を順次芯入りコイルの隙間検査の1視野毎と同期させて回転させることにより、コイル2bのあらゆる方向の検査も可能となる。
【0028】
【発明の効果】
本発明では、下記の特有の効果が得られる。芯線入りコイルを照射角度の異なる2つの照明を用いて、各照明毎に照明画像を得てから、それらの照明画像に対する2値化処理、濃度反転処理、合成処理などによって、最終的にコイルの山部とコイルの隙間とを判別可能な画像が得られるため、コイルの隙間検査が画像処理によって確実に行なえる。また、2つの照明として着色照明を用いることによって、照明の切り換えを行なわなくても、必要な2つの照明画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】芯線入りコイルの正面図である。
【図2】芯線入りコイルの隙間検出のための光学系の側面図である。
【図3】芯線入りコイルの落射方向の照明による画像の説明図である。
【図4】Y−Z平面で切った芯線入りコイルの断面図である。
【図5】X−Z平面で切った芯線入りコイルの拡大断面図である。
【図6】芯線入りコイルの拡大正面図である。
【図7】芯線入りコイルの隙間検査装置のブロック線図である。
【図8】2つの照明画像から合成2値化画像を生成する過程の説明図である。
【図9】芯線入りコイルの隙間検査方法の順序を示す説明図である。
【図10】カラーTVカメラを用いた芯線入りコイルの隙間検査方法の順序の説明図である。
【符号の説明】
1 芯線入りコイルの隙間検査装置
2 芯線入りコイル
2a 芯線
2b コイル
3a 照明
3b レンズ
3c ハーフミラー
3d 光源
3 第1の照明
4 第2の照明
5 照明制御部
6 TVカメラ
7 A/D変換部
8 画像メモリ
9 演算部
10 バス
G0 カラー画像
G1 第1の照明画像
G2 第2の照明画像
G3 濃度反転画像
G4 合成画像
G5 合成2値化画像
Claims (2)
- 芯線入りコイル(2)の表面を落射方向から照射する第1の照明(3)と、芯線入りコイル(2)の表面を斜め方向から照射する第2の照明(4)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序を制御する照明制御部(5)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)による芯線入りコイル(2)からの反射光を画像信号として取り込むTVカメラ(6)と、TVカメラ(6)の画像信号を多値画像データに変換するA/D変換部(7)と、A/D変換部(7)の多値画像データを記憶する画像メモリ(8)と、画像メモリ(8)に記憶されている画像データを処理する演算部(9)とを有する芯線入りコイルの隙間検査装置(1)において、
照明制御部(5)により第1の照明(3)および第2の照明(4)の点滅順序を切り換えながら落射方向の照明による芯線入りコイル(2)の第1の照明画像(G1)および斜め方向の照明による芯線入りコイル(2)の第2の照明画像(G2)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに第2の照明画像(G2)の白と黒とを反転して、濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、この合成2値化画像(G5)の隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出することを特徴とする芯線入りコイルの隙間検査方法。 - 芯線入りコイル(2)の表面を落射方向から照射する第1の照明(3)と、芯線入りコイル(2)の表面を斜め方向から照射する第2の照明(4)と、第1の照明(3)および第2の照明(4)による芯線入りコイル(2)からの反射光を画像信号として取り込むTVカメラ(6)と、TVカメラ(6)の画像信号を多値画像データに変換するA/D変換部(7)と、A/D変換部(7)の多値画像データを記憶する画像メモリ(8)と、画像メモリ(8)に記憶されている画像データを処理する演算部(9)とを有する芯線入りコイルの隙間検査装置(1)において、
第1の照明(3)および第2の照明(4)をそれぞれ互いに波長の異なる赤、緑、青のいずれかの色照明とし、TVカメラ(6)をカラーTVカメラとし、またA/D変換部(7)を第1の照明(3)および第2の照明(4)の色のカラー多値画像データに変換できる構成とし、
第1の照明(3)および第2の照明(4)を同時に点灯して、芯線入りコイル(2)のカラー画像(G0)をTVカメラ(6)により撮像してから、演算部(9)によって、カラー画像(G0)の色分解により第1の照明画像(G1)と第2の照明画像(G2)を求め、第2の照明画像(G2)を2値化し、さらに白と黒とを反転して濃度反転画像(G3)を得るとともに、濃度反転画像(G3)と第1の照明画像(G1)とを論理積演算して合成画像(G4)を生成し、合成画像(G4)を2値化して合成2値化画像(G5)を生成し、合成2値化画像(G5)隙間の像から芯線入りコイル(2)の隙間を検出することを特徴とする芯線入りコイルの隙間検査方法。
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