JP3622428B2 - 電気回路装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二つの導電面と導電性配線とを有する電気回路装置に関し、特に、基板内導電面が設けられた電気回路又は電子回路などの回路基板に、回路基板外に設けられた基板外導電面上に配設された導電性配線とを接続する場合の接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機等の電子機器では回路構成が複雑化しているため、回路間を接続する配線数も多くなり、電子機器のノイズ対策に関しては、前記配線からの不要電磁放射をいかに抑制するかが従来からの課題となっている。
不要電磁放射の発生源は、主として、信号線,グランド線,電源線などの導電性配線であることが知られている。
【0003】
そして、これらの導電性配線からの放射を抑制する技術としては、例えば、導電性配線下に近接して導電面を配置する方法が提案されている(R.F.German,et al.,IEEE International Symposium on Electromagnetic Compatibility,Washington,pp.284−291,1990.)。
この技術は、回路基板の下側に導電面を配置するよう構成すると、導電面上に鏡像電流が流れるために回路基板内の配線からの放射を抑制できるというものであり、回路基板では一般的に使用される技術となっている。
一方、この技術を回路基板外の導電性配線に応用し、回路基板外の導電性配線の下側に導電面を設けることも、一般的に行なわれている。
【0004】
また、導電性配線からの放射を抑制する他の技術としては、金属筒のシールド効果を期待して回路基板外の導電性配線を金属筒内に配置する構成が提案されている(例えば、特開平6−3877号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術のうち導電面を設ける構成を回路基板外の導電性配線に適用すると、例えば図11に示すように、回路基板101の下側に金属フレームなどの基板外導電面102を位置させ、この基板外導電面102上に配設された導電性配線103と回路基板101の端部のコネクタ104とが接続するように構成される。
しかしながら、上記構成において、回路基板101は、素子の実装の都合上スペーサ105を介して基板外導電面102から一定距離を離して配置されるため、区間Δでは基板外導電面102に対して導電性配線103が離れてしまい、この部分において放射の抑制効果が急激に低下するという問題があった。
【0006】
また、金属筒を用いる場合においても、導電性配線が金属筒から出た部分において、図11と同様に導電面と導電性配線との距離が離れてしまい、放射の抑制効果が急激に低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、不要電磁放射の抑制効果の高い電気回路装置の構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、電気回路を有する回路基板内に設けられグランド領域となる基板内導電面と、回路基板外に設けられグランド領域となる基板外導電面と、この基板外導電面上に配設され前記電気回路との接続を行なう導電性配線とを有する電気回路装置において、前記基板内導電面と前記基板外導電面とが電気的に接続される接続領域となる導電面部を、前記導電性配線に流れる電流に対して鏡像電流又は帰還電流が流れる位置に形成したことを特徴としている。
前記導電面部は、前記導電性配線の下側に位置し前記基板内導電面又は前記基板外導電面を変形して形成された変形部により形成されている。
また、前記導電面部は、基板内導電面と基板外導電面の間にギャップ(δ)を形成し、少なくとも高周波的に連続して接続することで構成されるものであってもよい。
【0009】
なお、ここで言う少なくとも高周波的に連続してとは、少なくともノイズが問題となる周波数(ノイズ周波数)において、インピーダンスが十分に低くノイズ電流の鏡像電流及び/又は帰還電流が十分流れることを意味している。したがって、基板内導電面と基板外導電面とが接触して直流からノイズ周波数まで電流が流れる場合はもとより、基板内導電面と基板外導電面とが接触していなくても、両者の間にノイズ周波数において電流が流れる程度のギャップや、ノイズ周波数において十分にインピーダンスの低い素子が存在していても良い。
ここで、ノイズ周波数において十分にインピーダンスが低い素子の例としては、容量が十分大きいコンデンサ、抵抗値が十分小さい抵抗、インダクタンスが十分小さい配線などである。
また、上記十分に低いインピーダンスの値とは、回路基板の大きさ・配置、導電性配線の長さ・配置・流れる電流の大きさなどによって変化するが、一例としては10オーム程度以下、他の例としては3オーム程度以下などがある。
【0010】
上記構成によれば、導電性配線が回路基板と接続する部分においても、導電性配線の下側に近接する位置で、基板内導電面と基板外導電面とが少なくともノイズ周波数において連続して接続されているので、導電性配線に流れるノイズ電流に対して導電面を鏡像電流及び/又は帰還電流が流れ、電流の相殺効果を発揮させることができる。
【0011】
また、前記変形部は、その断面形状が波状に形成されることで、基板内導電面と基板外導電面とが面接触して接続されるように構成すれば、導電性配線の下側の広い範囲で導通させることができる。
【0012】
基板内導電面の立体的な変形は、回路基板内の特定の層の突出部によって構成してもよい。
【0013】
また、不要電磁放射の抑制効果を図るためには、前記導電性配線の下側に位置する変形部における基板内導電面又は基板外導電面の幅(W)が20mm以上であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例について、図1ないし図3を参照して説明する。
図1は、本発明の電気回路装置の斜視概略説明図であり、図2はその断面概略説明図、図3は構成主要部の断面説明図である。
方形状の回路基板1は例えば複数層の配線層から構成され、配線層の一つが回路基板と同じ面積の基板内導電面2を構成している。一方、前記回路基板1より大きな面積の基板3を覆うように導電面4(回路基板1外に設けられた基板外導電面4)が設けられ、この基板外導電面4上に導電性配線5が配設されている。そして、支持基板3上に四つのスペーサ6を介して回路基板1が実装され、導電性配線5が回路基板1上に配置されたコネクタ7に接続されることにより電気回路装置を構成している。
【0016】
前記回路基板1の一辺側には、回路基板1の外側に突出する方形状の変形部10が形成されている。この変形部10の下面側は、回路基板1の基板内導電面2から延長形成された導電面2aが形成されている。また、変形部10は、その断面形状が波形に形成(立体的に変形)され、支持基板3側において変形部10下面と支持基板3上面とが面接触して固定されている。
すなわち、この例では、多層回路基板1の特定の樹脂層1a及びその下層の基板内導電面2aを突出形成させることによって柔軟性を持たせた変形部10を構成している。また、基板内導電面2a及び基板外導電面4は、面接触する部分でそれぞれ導電面が露出して構成されている。また、変形部10の支持基板3側は、固定部10aにより支持基板3に固定され、基板内導電面2aと基板外導電面4との面接触を確実なものとしている。
変形部10は、立体基板やリジッドフレキシブル基板、フレキシブル基板などで使われる製法を応用して作製することができる。
【0017】
支持基板3上に配置される導電性配線5は、支持基板3上面から変形部10上面を沿って回路基板1上に導かれ、コネクタ7に接続するようになっている。換言すれば、導電性配線5の変形に沿う形で、変形部10を立体的な形状に形成している。したがって、基板内導電面2aを含む変形部10が導電性配線5の下に近接して配置されており、回路基板1近傍においても導電面4に接続される導電面(この場合、基板内導電面2a)が存在することになる。
【0018】
図4は電気回路装置の他の例を示すもので、変形部10の基板内導電面8aが回路基板1のグランド面8の延長として形成されている例である。基板外導電面4に接続することで回路のグランド面8を安定化したい場合には、このような構成が適している。一方、回路のグランド面8または基板外導電面4のノイズが大きいために、両者を直接接続しない方が良い場合には、基板内導電面2とグランド面8を分離するか、少なくともノイズ周波数において十分インピーダンスが低い回路素子を介して両者を接続するような構成としても良い。
【0019】
次に、上記した電気回路装置の構成により、放射ノイズが減少する原理について図5(a)及び(b)を参照して説明する。図5(a)は従来例の電気回路装置の構成を、図5(b)は本発明の電気回路装置の構成をそれぞれ示している。一般的に基板外導電面4が存在すると、導電性配線5を流れるノイズ電流11に対して、鏡像電流又は帰還電流12が、若しくは鏡像電流及び帰還電流12の両方がこの基板外導電面4上を流れることになる。
【0020】
このとき、図5(a)に示す従来例の構成では、回路基板1から離れたところではノイズ電流11aと鏡像電流12aとが近くを流れるため電流の相殺効果が大きいものの、回路基板1の近傍ではノイズ電流11bと鏡像電流及び/又は帰還電流12bとが近くを流れることができないため、電流の相殺効果が小さくなって放射ノイズが増大する。
更に、導電性配線近傍を戻ることができない鏡像電流及び/又は帰還電流12bは、基板外導電面4上で拡散して新たな共振を生じさせるなどして新たな放射ノイズを発生させる。
【0021】
これに対して本発明による図5(b)の構成では、基板内導電面2aを含む変形部10が導電性配線5の下に近接して配置されており、鏡像電流及び/又は帰還電流12cが変形部10の導電面2a(8a)を流れるため、回路基板1の近傍においてもノイズ電流11cと鏡像電流及び/又は帰還電流12cを近接して流すことができる。このため、ノイズ電流と鏡像電流及び/又は帰還電流の相殺効果が増大すること、および、鏡像電流及び/又は帰還電流の拡散による新たな放射の発生を防止できることから、従来例(図5(a))の構成に対して放射低減を大きく図ることが可能となる。
【0022】
ここで、変形部10の導電面2a(8a)と基板外導電面4とは、鏡像電流及び/又は帰還電流を流すことができる高周波的な導通があれば不要電磁放射を抑制する効果が発揮されるが、直流的にも導通が有る方がその効果を増大させることができる。
また、この導通は1点であっても不要電磁放射を抑制する効果は生じるが、導電性配線5下の広い範囲で導通があるほどその効果を増大させることができる。従って、導電面2a(8a)と基板外導電面4とが面で接触する構成がより望ましい。
【0023】
なお導電面2a(8a)と導電性配線5との距離が近いほど放射低減効果が大きいので、変形部10の導電面2aと導電性配線5との距離が離れないように、必要に応じて適当な固定部や固定具(図示せず)を用いて変形部10の上面に導電性配線5を固定することで確実な効果を発揮できる。
【0024】
また、導電性配線5下の導電面2aの幅Wと放射強度の相対値ΔEとの関係を測定する実験を行なった。
図6は、導電性配線のクロック信号のクロック周波数20MHz、配線長0.3mとした場合に、導電性配線5下の導電面2aの幅Wと放射強度の相対値ΔEとの関係を実験的に求めたグラフ図である。図6からわかるように、幅Wの増加に伴って急激に放射強度が減少し、幅Wが20mm以上の時、望ましくは50mm以上のときに飽和値に近い放射抑制効果が生じる。
したがって、変形部10における導電性配線5下の導電面2aの幅Wは、20mm以上、望ましくは50mm以上のときに飽和値に近い放射抑制効果を得ることができる。
【0025】
次に、本発明の他の実施形態例について、図7を参照して説明する。
図7(a)は、図2の実施例と同様に、基板内導電面2を含む部分を立体的に変形して変形部10を形成し、基板外導電面4を平面として構成しているが、コネクタ7を変形部10の端部(基板外導電面4近傍)に位置させた例である。
【0026】
図7(b)は、基板内導電面2を含む変形部20を回路基板1上面から水平方向へ突出する平面とし、基板外導電面4を回路基板1の実装面より高さhを有する平面(変形部21)として形成したものである。この構造により、導電性配線5を高さが同じ基板内導電面2及び基板外導電面4を沿うように配置させるので、導電性配線5の下に近接して導電面を確実に配置できる。
【0027】
図7(c)は、図7(b)の例と同様に、基板外導電面4が立体的に変形するが、回路基板1内の基板内導電面2と直接接触せずギャップδが存在する場合である。
ギャップδが存在してもその値が十分小さければ高周波的には鏡像電流及び/又は帰還電流が流れることが可能となる。また、基板内導電面2と基板外導電面4とが直流的に全く絶縁されていると、不要電磁放射の抑制効果が生じるギャップδは非常に小さな値となるが、1点でも直流的につながっていれば実用的な距離で効果を生じさせることができる。例えば、幅50mmの基板内導電面2及び基板外導電面4をギャップδだけ離すものの、1本の導線で両者を接続したときの放射強度の変化は、図8のようになった。図からわかるようにギャップδが2mm程度以下であれば最小値に近い放射強度が得られることが確認できた。
また、このときのギャップ部のインピーダンスは、放射ノイズが最大である周波数220MHzにおいて3Ω以下と見積もられた。
【0028】
図7(d)は、基板外導電面4が平面部4aと立体変形部4bに分割され、立体変形部4bが基板内導電面2に接続されている例であるが、この場合も、導電性配線5下の導電面が高周波的に連続であれば不要電磁放射の抑制効果が得られる。
なお、図7の各構成が混合した構成(例えば、基板内導電面2も基板外導電面4も立体的に変形している構成)でも勿論構わない。
【0029】
また、図9は、基板内導電面2が第1の回路基板1内にあり、基板外導電面4が第2の回路基板30内にある例を示したものである。
図9(a)では2つのコネクタ7,7間の導電性配線5の下に、連続的に導電面2が形成されている例である。図9(b)は2つの連結コネクタ7′が直接つながっているときの例であるが、連結コネクタ7内の導電性配線(図示しない)に近接して基板内導電面2,4にそれぞれ接続される導電面31が連続的につながっている。
なお、基板外導電面4が第2の回路基板30内にある場合においても、図7と同様に種々の変形例が可能である。
【0030】
本発明を金属筒40に配置した導電性配線5に適用した例を図10に示す。
すなわち、回路基板1の変形部10が方形筒状の金属筒40の内側面に面接続するように構成している。すなわち、金属筒40の内側面に形成されている導電面41に変形部10の基板内導電面2aが接続するようになっている。
この場合も、上記と同様、ノイズ電流と鏡像電流及び/又は帰還電流の相殺効果が増大すること、及び、鏡像電流及び/又は帰還電流の拡散による新たな放射の発生を防止できることから、放射ノイズが減少する。また、図7と同様に、種々の構成が可能である。
【0031】
なお、上述した各例における導電性配線の形状は任意であり、通常のワイヤケーブル、ツイストペアケーブル、フラットケーブル、フレキシブルケーブルなどの他、同軸ケーブルをはじめとするシールドケーブルなどでも良い。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、導電性配線が回路基板と接続する部分においても、導電性配線の下側に近接する位置で、基板内導電面と基板外導電面とが高周波的に連続して接続されているので、導電性配線に流れるノイズ電流に対して導電面を鏡像電流及び/又は帰還電流が流れ、電流の相殺効果を発揮させるとともに、鏡像電流及び/又は帰還電流の拡散による新たな放射の発生を防止でき、不要電磁放射の抑制効果の高い電気回路装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気回路装置の実施形態の一例の概略的構成を示す斜視構成説明図である。
【図2】図1の電気回路装置の断面説明図である。
【図3】図2における電気回路装置の立体的変形部についての拡大説明図である。
【図4】電気回路装置の他の例を示す主要部の拡大説明図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の効果が得られる原理を説明するための斜視構成説明図である。
【図6】導電性配線下の導電面の幅と放射強度との関係を示すグラフ図である。
【図7】(a)ないし(d)は種々の立体的変形部を有する電気回路装置の各断面説明図である。
【図8】基板内導電面と基板外導電面間のギャップと放射強度の関係の一例を示すグラフ図である。
【図9】(a)及び(b)は電気回路装置の他の実施形態の概略を示す断面構成図である。
【図10】電気回路装置の他の実施形態の概略構成を示す斜視説明図である。
【図11】従来の電気回路装置の概略構成を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1…回路基板、 2…基板内導電面、 3…支持基板、 4…基板外導電面、5…導電性配線、 7…コネクタ、 10…変形部、 11…ノイズ電流、 12…鏡像電流及び/又は帰還電流、 20…変形部、 21…変形部
Claims (6)
- 電気回路を有する回路基板内に設けられグランド領域となる基板内導電面と、回路基板外に設けられグランド領域となる基板外導電面と、この基板外導電面上に配設され前記電気回路との接続を行なう導電性配線とを有する電気回路装置において、
前記基板内導電面と前記基板外導電面とが電気的に接続される接続領域となる導電面部を、前記導電性配線に流れる電流に対して鏡像電流又は帰還電流が流れる位置に形成したことを特徴とする電気回路装置。 - 前記導電面部は、前記導電性配線の下側に位置し前記基板内導電面又は前記基板外導電面を変形して形成された変形部により構成する請求項1記載の電気回路装置。
- 前記変形部は、その断面形状が波状に形成されることで、基板内導電面と基板外導電面とが面接触して接続される請求項2記載の電気回路装置。
- 前記変形部は、前記回路基板の特定の層の突出部によって構成される請求項2記載の電気回路装置。
- 前記導電性配線の下側に位置する変形部における基板内導電面又は基板外導電面の幅(W)が20mm以上である請求項3記載の電気回路装置。
- 前記導電面部は、基板内導電面と基板外導電面の間にギャップ(δ)を形成し、高周波的に接続されて成る請求項1記載の電気回路装置。
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