JP3622244B2 - バルブタイミング可変装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カムシャフトに設けられたカムの動作を吸気バルブ又は排気バルブ等の機関バルブへ伝達するか否かを選択可能としてバルブタイミングを切り換えるバルブタイミング可変装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの低回転域における使いやすさ即ち、低速高トルクを保持しつつ高速域におけるエンジンの出力トルクの向上を図るために、プロフィールの異なる低速用と高速用の2種類のカムをカムシャフトに設け、エンジンの低速回転域では低速用カムで、高速回転域では高速用カムでバルブを駆動する動弁機構がある。このバルブタイミングを可変とする機構を具体的に述べるとカムプロフィールの異なる第1と第2のカムを常に1つのバルブに接触するようにカムシャフトに設ける。そして、第1のカムをカムシャフトに回転自在に取り付けることで、第1のカムと形状が異なる第2のカムのタイミングでバルブを駆動する。他方、ピンで第1のカムとカムシャフトを結合させることで第1のカムの形状に伴うタイミングでバルブを駆動する。そして、機関の運転状態に応じて、ピンでカムとカムシャフトを結合又はそれを解除することにより、バルブタイミングを切り換えている。
【0003】
このカムシャフトと第1のカムとをピンによって結合する方法として、カムシャフト内に設けた油圧回路によりピンをカムロブ内に設けた凹状係合部に押し出してカムシャフトとカムとを結合駆動している。しかし、このカムシャフトはエンジンからの出力を受けて常に高速で回転しているため、ピンが凹状係合部に係合しにくいといった問題がある。特開昭62−131907号公報には、カムロブ側に設けた凹状係合部に常にピンをカムシャフト内へ付勢するバネ部材が配置され、それによりカムシャフト内へ押し込まれてカムシャフトと共に回転するピンを油圧により凹状係合部に係合させる際に、ピンがこのバネ部材を徐々に押圧してピンの先端部が凹状係合部の正規の係合位置に達するように、凹状係合部の円周方向の片側に正規の係合位置に通じる助走溝を設けることが記載されている。このような構造によって、バルブタイミングを変化させるために、ピンが助走溝上に移動する以前に油圧を作用させている場合には、ピンの先端部が確実に凹状係合部における正規の係合位置に達し、ピンと凹状係合部との良好な係合を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術において、バネ部材によりカムシャフト内に押し込められたピンが助走溝上の途中に位置している時にピンに油圧を作用させると、ピンが凹状係合部の正規の係合位置に対向するまでの時間で、ピンがバネ部材を十分に押圧することができず、ピンの先端部が凹状係合部における正規の係合位置に達する以前の中途半端な位置で係合を開始しカムシャフトを回転させようとする。この状態でカムシャフトとカムが回転するとピンに大きな力が働き、この結果として、ピンに応力が集中し、耐久性悪化や破損といった問題が生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、軸の周方向に摺動可能な嵌合部材の凹状係合部に、軸から突出可能なピン部材を係合させることにより、軸と嵌合部材を結合させてバルブタイミングを変化させるバルブタイミング可変装置において、軸と嵌合部材とを結合させることを意図する時には、常に正規な係合位置でのピンと凹状係合部との良好な係合を実現することを可能とし、ピンの耐久性悪化及び破損を防止することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載のバルブタイミング可変装置は、軸の周方向に摺動可能な嵌合部材の凹状係合部に、軸から突出可能なピン部材を係合させることにより、軸と嵌合部材を結合させてバルブタイミングを変化させるバルブタイミング可変装置において、前記軸と前記嵌合部材とを結合させることを意図しない時においても前記ピン部材を突出方向に付勢する第1付勢手段と、前記軸と嵌合部材とを結合させることを意図する時に前記ピン部材を突出方向に付勢する第2付勢手段とを具備し、前記嵌合部材の凹状係合部は、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部へ近づく側において、前記嵌合部材における前記軸との第1接触位置と前記ピン部材の先端部の正規の係合位置とを滑らかに接続する第1溝を有し、前記第1付勢手段によって前記ピン部材に作用する第1付勢力は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時でも、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合させるほど大きくはなく、前記第2付勢手段によって前記ピン部材に作用する第2付勢力と前記第1付勢力との和は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時には、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合可能とする大きさであることを特徴とする。
【0007】
本発明による請求項2に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記嵌合部材の前記凹状係合部は、さらに、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部から遠ざかる側において、前記ピン部材の先端部の正規の係合位置と前記嵌合部材における前記軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、前記第2溝は前記第2接触位置側の第1傾斜面と前記係合位置側の第2傾斜面とを有し、前記軸の動作に伴い前記ピン部材によって前記第2溝へ作用する押圧力に対する反力における前記ピン部材を前記軸へ押し込める方向の分力が、前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より大きくなるように、前記第1傾斜面の角度が設定され、前記分力が前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より小さくなるように、前記第2傾斜面の角度が設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項3に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸がカムシャフトであり、前記嵌合部材がカムであり、前記凹状係合部は、前記カムにおいて、前記カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項4に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸にはそれぞれが互いに異なる開閉弁動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、前記第2付勢手段は、前記軸と前記二つの嵌合部材のうちの選択した一方とを結合させることを意図する時に、前記一方の嵌合部材を前記軸に結合させるための前記ピン部材だけを付勢する選択付勢手段であることを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項5に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸がロッカアーム軸であり、前記二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであることを特徴とする。
【0011】
本発明による請求項6に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、前記選択付勢手段は前記軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、前記ピストン部材は、一方の設定位置において、その両端部の一方が前記二つのピン部材の一方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、他方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、他方の設定位置において、その両端部の他方が前記二つのピン部材の他方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、一方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないことを特徴とする。
【0012】
【作用】
前述の請求項1に記載のバルブタイミング可変装置は、軸と嵌合部材を結合させるためのピン部材が、この結合を意図しない時においても第1付勢手段によって突出方向に付勢され、嵌合部材の凹状係合部には、軸との第1接触位置からピン部材の正規の係合位置へ滑らかに接続された第1溝を有しているために、ピン部材の先端部がこの第1溝に沿って移動して正規の係合位置へ達する。第1付勢手段によってピン部材に作用する第1付勢力は比較的小さいために、この時において、嵌合部材に作用する外力に逆らって軸と嵌合部材とは結合されないが、嵌合部材と軸とを結合させるためにピン部材に第2付勢力を作用させれば、この時にピン部材が第1溝上に位置していても、ピン部材のストロークを急激に増加させる必要はなく、ピン部材は第1溝に沿って確実に凹状係合部の正規の係合位置に達する。
【0013】
前述の請求項2に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、嵌合部材の凹状係合部はその正規の係合位置と嵌合部材における軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、第1付勢手段による第1付勢力だけがピン部材に作用する時には、ピン部材の先端部は第1溝及び第2溝に沿って滑らかに凹状係合部を通過する。ピン部材の先端部がこの第2溝の第2接触位置側の第1傾斜面上に位置する時には、軸の動作に伴いピン部材を介して第2溝へ作用する押圧力に対する反力におけるピン部材を軸へ押し込める方向の分力が、第1付勢力と第2付勢力との和より大きいために、第2付勢手段により第2付勢力がピン部材に作用しても、ピン部材は軸内へ押し込められ、ピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置と係合しようとして嵌合部材が軸の動作方向に大きく進行したり、ピン部材が凹状係合部の中途半端な位置で係合することは防止される。また、ピン部材の先端部がこの第2溝の係合位置側の第2傾斜面と接触する時には、前述の分力が第1付勢力と第2付勢力との和より小さくなるために、この位置で第2付勢手段により第2付勢力がピン部材に作用すると、嵌合部材が軸の動作方向にわずかに進行してピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。
【0014】
前述の請求項3に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、軸がカムシャフトであり、嵌合部材がカムであり、凹状係合部は、カムにおいて、カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されているために、カムの凹状係合部近傍には、カムノーズ部により機関バルブを開弁する際の比較的大きな反力が作用しない。
【0015】
前述の請求項4に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、軸にはそれぞれが互いに異なる開閉動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、第2付勢手段は、軸と二つの嵌合部材のうちの選択した一方とを結合させることを意図する時に、この一方の嵌合部材を前記軸に結合させるための前記ピン部材だけを付勢する選択付勢手段であるために、一方の嵌合部材が軸と結合されている時は、他方の嵌合部材は軸の周方向に摺動可能となっていて一方の嵌合部材による機関バルブの開閉動作に影響を与えることはなく、二つの嵌合部材により機関バルブに与えられる開閉動作を自由に設定することができる。
【0016】
前述の請求項5に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、軸がロッカアーム軸であり、二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであり、選択付勢手段によって、一方のフォロアだけがロッカアーム軸に結合され、対応するカムの動作によりロッカアームが機関弁を開閉動作させる。
【0017】
本発明による請求項6に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、選択付勢手段は軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、このピストン部材を一方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の一方によって二つのピン部材の一方がその突出方向に第2付勢力で付勢されると同時に、他方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、また他方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の他方によって二つのピン部材の他方が第2付勢力で付勢されると同時に、一方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないために、二つの嵌合部材のうちの一つだけを軸に結合させることが可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1及び2は、本発明の第1実施例であるバルブタイミング可変装置の概略図であり、これらの図において、バルブタイミング可変装置1は、バルブ2と、このバルブ2の頂部に取り付けられたバルブリフタ3と、このバルブリフタ3を駆動するカムシャフト4とプライマリカム5、5’とセカンダリカム6から構成されている。このプライマリカム5、5’はカムシャフト4に固定されており、カムシャフト4が回転するのに同期して回転するようになっている。一方、セカンダリカム6とプライマリカム5、5’とはカムプロフィールの形状が相違し、カムシャフト4に形成されたボール移動孔12に沿ってカムシャフトの半径方向に移動可能な係合ピンであるボール7の位置によって、回転するカムシャフト4に対して結合又は回転自在とに切り換わるようになっている。これらのプライマリカム5、5’又はセカンダリカム6はカムシャフト4が回転することによりバルブリフタ3を駆動し、バルブ2をリフト駆動することになる。
【0019】
また、このカムシャフト4内には、ピストン孔11を摺動可能なピストン9が備えられているとともに、カムシャフト4は図示しないカムシャフトベアリングに回転可能に軸支されている。そして、カムシャフト4およびカムシャフトベアリングに設けられた油路8を通してカムシャフト4内に設けられたピストン9に油圧Pが供給され、油圧Pによってピストン9の位置を制御している。ボール7が係合するセカンダリカム6の凹部13は、カムシャフト4の回転に伴いボール7が凹部13へ近づく側において、セカンダリカムとカムシャフトとの第1接触位置13a及びボール7の正規の係合位置であるその頂部13bを滑らかに接続する第1溝13cと、カムシャフト4の回転に伴いボール7が凹部13から遠ざかる側において、セカンダリカムとカムシャフトとの第2接触位置13d及びボール7の正規の係合位置13bを滑らかに接続する第2溝13eとを有している。
【0020】
ピストン9は、油路8に油圧Pが供給されていないときには、リターンスプリング10のばね力により所定の係合離脱位置(図2のピストン9によって表される位置)とされ、ピストン9の中央部に形成された環状凹みによってボール7には油圧に伴うボール突出方向の付勢力は作用しないようになっている。一方、油路8に油圧Pが供給されているときには、リターンスプリング10のバネ力に抗して所定の係合位置(図1のピストン9によって表される位置)に移動され、ピストン9の端部によってボール7にはその突出方向の大きな付勢力が作用する。また、前述の係合離脱位置からこの係合位置に達するまでにおいても、環状凹みの傾斜面によってボール7には油圧に伴うボール突出方向の付勢力が作用するようになっている。油路Pは、機関の運転状態に応じて、図示しないオイルポンプに接続される油圧経路内に設けられた電磁油圧制御弁を電子制御ユニットにより開閉することによりON、OFF制御される。ここで、請求項1〜6のピン部材とは、本実施例においてボール7に相当するものである。
【0021】
ピストン9が係合離脱位置にある時のボール7、セカンダリカム6、及びカムシャフト4の挙動が図3(a)〜(d)に示されており、この時において、ボール7は、カムシャフト4と共にカムシャフトの中心回りに回転するために、第1付勢力として遠心力が作用し、セカンダリカム6の凹部13と対向する位置において、図3(b)に示すように、第1溝13cに沿って正規の係合位置13bに達する。しかしながら、この遠心力は比較的小さいものであるために、セカンダリカム6がバルブリフタ3を押し下げることよりセカンダリカム6に作用する反力に逆らって、セカンダリカム6とカムシャフト4との結合を維持することはできず、図3(c)に示すように、ボール7はカムシャフト4内に押し込められ、カムシャフト4はセカンダリカム6に対して自在に回転する。
【0022】
図3に示す状態から油路8を介してピストン孔11に油圧が供給された時の挙動が図4(a)〜(d)に示されている。何時の時点で油圧が作用したかにかかわらず、ボール7には前述したように遠心力が作用するために、ボール7はセカンダリカム6の凹部13における正規の係合位置13bに達し、この時に、ボール7に第2付勢力として油圧によるピストン9の押圧力が既に作用していれば、この押圧力はかなり大きなものであるために、セカンダリカム6に作用する前述の反力に逆らってセカンダリカム6とカムシャフト4との結合は維持され、図4(c)〜(d)に示すように、セカンダリカム6によるバルブリフタ3を介してのバルブ駆動が開始される。このように、ボール7は、常にセカンダリカム6の凹部13に沿って移動するために、例えば、第1溝13c上で油圧が作用した場合において、ピン部材がカムシャフト内に押し込められたまま回転する従来のように、ボール7を凹部13の正規の係合位置に移動させるために急激にボールのストロークを増加させる必要はなく、何時の時点で油圧を作用させてもボール7と凹部13との確実な係合を実現することができる。
【0023】
このようにしてセカンダリカム6とカムシャフト4とが結合された時の挙動を図5(a)〜(d)に示す。また、この状態からピストン9への油圧の供給を停止した時の挙動が図6(a)〜(d)に示されており、バルブ閉弁中のセカンダリカム6へ作用する反力が非常に小さい時には、ボール7に作用する前述の遠心力によってセカンダリカム6とカムシャフト4との結合が維持され、図6(a)〜(c)に示すように、セカンダリカム6のカムノーズ部がバルブリフタ3を押し下げる直前までセカンダリカム6はカムシャフト4と共に回転し、その後、図6(d)に示すように、ボール7の係合が外れて、カムシャフト6は図3と同様にセカンダリカム6に対して自在に回転する。
【0024】
次に、遠心力によってセカンダリカム6の凹部13に沿って移動するボール7が、凹部13の第2溝13e上に位置する時に、油圧が作用する場合について詳しく説明する。図7(a)はこの時の状態図であり、図7(b)はボール7とセカンダリカム6の第2溝13eとの接触部近傍のS部拡大図である。図7(b)において、第2溝13eは、凹部13におけるボール7の正規の係合位置13b及びセカンダリカム6のカムシャフトとの第2接触位置13dを滑らかに接続するためのボール7より大きな所定半径を有する曲面Aと傾斜面Bとから構成されている。
【0025】
第2溝13eにおけるボール7との当接点Rは、カムシャフト4の回転に伴いボール7によって当接点Rとカムシャフト中心とを結ぶ方向に対して垂直方向に押圧されている。この押圧力の方向と第2溝13eとのなす角度をrとすると、この角度(以下、接触角)rは、第2接触位置13d側のP点と正規の係合位置13b側のQ点において相違しており、P点での接触角をr1 、Q点での接触角をr2 とすると、両者にはr1 <r2 の関係が成り立つ。さらに、ボール7が第2溝13eの曲面A上に位置する時には、常に、その接触角rはr2 より大きくなる。P点での力の関係を図8(a)に、Q点での力の関係を図8(b)に示す。尚、図8(a)及び(b)において、ボール7は見やすくするため実際より小さく表している。ここで、前述の押圧力は、カムシャフト4の回転に伴うものであるために、ボール7の第2溝13eに対する当接点Rの位置にかかわらず等しく、ボール7には常に所定の反力Fが作用する。この所定の反力Fは、第2溝13eを垂直方向に押圧する第1分力Fqとボール7をカムシャフト4内へ押し戻す方向の第2分力Fpとに分けられる。この時、接触角rが小さいと図8(a)に示すように第2分力Fpが大きくなり、接触角rが大きいと図8(b)に示されるように第2分力Fpは小さくなる。つまり、接触角rが小さくなればボール7をカムシャフト4内へ押し戻す力Fpは大きくなり、接触角rが大きくなれば押し戻す力Fpは小さくなる。
【0026】
図8(c)は接触角rとカムシャフト4内へボール7を押し戻す力Fpの関係を示す。尚、前述の遠心力と油圧力とによってカムシャフト中心から外側へボール7を押し出す力をF0 とし、R点を基準としてカムシャフト中心とした回転方向へどれくらいずれたかを示すずれ量をθとする。ここで、図8(c)は係合部同志の位相のずれθに応じたボールを押し戻す力Fpと押し出す力F0 との関係を示したものである。これを見ると、凹部13の第2溝13eにおいて、位相差θがθ>|θ2 |、θ>|θ1 |のときにはFp>F0 となり現時点においてボール7がカムシャフト4内に押し戻され、カムシャフト4とセカンダリカム6とは結合されず、ボール7が次に凹部13に達した時に結合される。また位相差θがθ2 <θ<θ1 のときにはFp<F0 となり、θ=0のときF0 −Fpが正の値でかつ最大となるため、セカンダリカム6がわずかに回転して、ボール7が正規の係合位置13bに係合し、カムシャフト4とセカンダリカム6が一体となって回転することになる。また、油圧Pが作用していない時には遠心力だけの力F1 となり、常に、ボール7が固定されずに回転し続ける。
【0027】
従来技術では、第2溝の角度設定において、このようなことが考慮されていないために、第2溝における位相差θが比較的大きい位置でピン部材に油圧が作用する時に、前述のFpが小さくなり、この位置でピン部材と凹部とが係合してセカンダリカムとカムシャフトとの不完全な結合をもたらしたり、また、ボール7が凹部13の正規の係合位置に係合しようとしてセカンダリカム6を急激に回転させて非常に大きなカム(バルブ運動)加速度が発生し、バルブのジャンプ等異常運動を引き起こす恐れがある。上記実施例では、図8(c)の力関係図からわかるように微小角度のずれでは正規の係合位置13bへ瞬時に戻り、油圧Pの掛かるタイミングが少しでも遅れると1回係合を見送ってから次のサイクルに確実に係合するために、前述のバルブの異常運動を防止することができる。
【0028】
図9に本発明の第2実施例を示す。第1実施例との違いは、図7(b)との比較から明確なように、第2溝13eの傾斜面が、異なる傾斜角度を有する第1及び第2傾斜面B’,C’から構成されていることである。ボール7に作用する遠心力及び油圧力を考慮して、前述の考え方に基づき、第1傾斜面B’は、それ上にボール7が位置する場合には、油圧が作用してもボール7をカムシャフト4内へ確実に押し戻すように角度設定され、第2傾斜面C’は、それ上にボール7が位置する場合には、油圧が作用する時にボール7を確実に正規の係合位置に係合させるように、角度設定されている。それにより、ボール7が第2溝上に位置する時に油圧が作用する場合において、セカンダリカム6とカムシャフト4とを結合させるか否かが第1傾斜面B’と第2傾斜面C’とで明確に区別され、結合に際しての前述の問題を確実に防止することができる。
【0029】
図10に本発明の第3実施例を示す。これは、前記第1実施例のバルブタイミング可変装置のボール7及び凹部13を複数設けたもので、係合可能な位相はカムシャフト1回転に1回のみである。このように複数係合部を設けることにより、係合部1つ当たりの回転拘束力が軽減できるため、ピストンに作用する油圧を小さくすることができる。
【0030】
図11に本発明の第4実施例を示す。これは、請求項3のバルブタイミング可変装置であり、第1実施例と同様に、セカンダリカムやプライマリカムに適用することにより、第1実施例と同様の効果が生じることはいうまでもなく、第4実施例では、バルブを駆動するカムプロフィール部分であるカムノーズ部のカムシャフト中心軸に対して反対側に凹部13を設けている。その結果、一般的に、バルブを駆動するときに生じる反作用としてカムノーズがカムシャフト側に付勢力により押されることになるが、第4実施例のような構成とすることにより、カムとカムシャフトとの接触する面積を大きくすることができ、面圧を低減することができるため、係合部の耐久性向上を図ることができる。
【0031】
図12、13、14、及び15に本発明の第5実施例を示す。本実施例は、カムがロッカアームを介してバルブを駆動する動弁機構に本発明を適用した場合である。図12において、20はロッカアーム軸であり、それには二つの機関バルブ2を同時に駆動するための第1及び第2ロッカアーム21a,21bが固定されている。第1及び第2ロッカアーム21a,21bの間において、ロッカアーム軸20には、第1及び第2フォロア22a,22bが揺動可能に嵌合されている。図12の分解斜視図である図13に示すように、第1及び第2フォロア22a,22bと中空のロッカアーム軸20との間に前述同様な第1及び第2ボール23a,23bとピストン24とを使用する係合機構が設けられている。ロッカアーム軸20内へピストン24を挿入するための開口部20aは、蓋部材25により密閉される。ロッカアーム軸20の第1及び第2ロッカアーム21a,21bの両側に形成された孔26a,26bは、ロッカアーム軸20内に位置するピストン24の両端へ油圧を提供するための油供給孔である。
【0032】
図14に示すように、第1及び第2フォロア22a,22bの先端上部には、カムシャフト27に固定された異なるプロフィールを有する第1及び第2カム28a,28bが当接し、第1及び第2フォロア22a,22bがそれぞれ異なる揺動動作を行うようになっている。本実施例のバルブタイミング可変装置は、前述同様な係合機構を使用していずれか一方のフォロア22a又は22bをロッカアーム軸20に結合させることにより、バルブタイミングを変化させるものである。
【0033】
図15はロッカアーム軸20の長手方向部分断面図である。同図に示すように、ロッカアーム軸20の両端部は軸受け29a,29bによって回動可能に支持されている。ロッカアーム軸20内の空間において、ピストン24は、この空間内に形成された第1ストッパ30aと、前述の蓋部材に形成された第2ストッパ30bとによって両端の位置が規制され、前述の油供給孔26a,26bの一方から作動油を供給することにより他方の油供給孔から作動油が排出され、ピストン24は、図15(a)及び(c)に示すような第1及び第2所定位置の間を移動するようになっている。図15(b)は第1及び第2所定位置の間の中間位置を示している。このようなピストン24の移動に際して、ピストン24の両端部24a,24bは、ロッカアーム軸20内の空間を油密に摺動し、作動油がピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cに侵入しないようになっている。
【0034】
図15(a)に示されたピストン24の第1所定位置において、第1ボール23aがピストン24の一方の端部24aによってロッカアーム軸20から強制的に押し出されて第1フォロア22aの凹部に係合し、第1フォロア22aとロッカアーム軸20とが結合される一方で、ピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cによって第2ボール23bには突出方向の付勢力は作用せず、第2フォロア22bとロッカアーム軸20とは結合されないために、第1カム27aの動作によりバルブが駆動される。
【0035】
また、図15(C)に示されたピストン24の第2所定位置において、第2ボール23bがピストン24の他方の端部24bによってロッカアーム軸20から強制的に押し出されて第2フォロア22bの凹部に係合し、第2フォロア22bとロッカアーム軸20とが結合される一方で、ピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cによって第1ボール23aには突出方向の付勢力は作用せず、第1フォロア22aとロッカアーム軸20とは結合されないために、第2カム27bの動作によりバルブが駆動される。ピストン24は、一方の所定位置から他方の所定位置に切り換わる途中で、図15(B)に示すように第1及び第2ボール23a,23bの両方を突出方向に付勢しない状態があるために、両方のフォロアが瞬間的においても同時にロッカアーム軸20に結合されることはない。
【0036】
第1及び第2フォロア22a,22bに形成された凹部は、詳細には図示されていないが、第1又は第2実施例で説明したと同様な形状を有しており、第1及び第2ボール23a,23bとの係合に際して、第1溝によって、何時の時点で油圧を作用させても、ボールと凹部との確実な係合を実現することができると共に、第2溝によって、フォロアの急激な回動に伴うバルブのジャンプ等異常運動は防止される。
【0037】
前述した第1実施例のように、プライマリカムが固定されたカムシャフトに対してセカンダリカムを結合又は摺動可能とすることにより、バルブタイミングを変化させる機構においては、プライマリカムのカムノーズ部の形状は、カムシャフトに結合されたセカンダリカムのカムノーズ部の形状に対して投影的に突出する部分がないように選択されなければならない。なぜなら、セカンダリカムがカムシャフトに結合されている場合においてもプライマリカムはカムシャフトと共に回転するものであり、プライマリカムに前述した突出部分が存在すると、この突出部分がセカンダリカムによる機関バルブの開閉動作に影響を与えるためである。このように、プライマリカムとセカンダリカムのプロフィールは、自由に選択することができず、例えば、機関バルブの開弁時期及び閉弁時期を同時に早めるようにバルブタイミングを変化させることはできない。
【0038】
しかしながら、本実施例においては、機関バルブに異なる開閉動作を与える第1及び第2フォロア22a,22bは、その一方がロッカアーム軸20に結合されている時には、他方がロッカアーム軸20に対して揺動自在となっているために、カムシャフトに固定された二つのカムのプロフィールは、互いに影響されることなく自由に選択することができ、二種類のバルブタイミングを自在に設定することが可能となる。
【0039】
図16は本発明の第6実施例を示しており、第5実施例との違いは、ピストン24を一方の所定位置方向に付勢する弾性部材、例えばバネ31が、ピストン24をこの所定位置方向に付勢するための油圧を提供する油圧系の代わりに設けられていることである。このような構造によっても前述同様なピストン24の動作を実現することができ、油圧系26は一つとなるために、第5実施例に比較して構造を簡単化することができる。
【0040】
第5実施例において、ピストン24の両端に油圧を作用させないようにすれば、機関バルブを開弁させる際の反力によって第1及び第2フォロア22a,22bはロッカアーム軸20に対して自在に回動するようになり、ピストン24の位置は、図15(b)に示すような中間位置となる。この時には、第5実施例の構造では機関バルブは閉弁状態に維持される。しかしながら、第5実施例において、カムシャフト27に,一方のロッカアーム21a又は21bに当接して第1及び第2カム28a,28bのカムノーズ部に対して投影的に突出する部分がないように形状が選択された第3カムを追加することにより、ピストン24が第1所定位置にある時には第1カムにより機関バルブが駆動され、ピストン24が第2所定位置にある時には第2カムにより機関バルブが駆動され、さらに、ピストン24が中間位置にある時には第3カムにより機関バルブが駆動され、このように三段階にバルブタイミングを変化させることが可能となる。もちろん、第6実施例においても、ピストン24を中間位置とする弾性部材31の付勢力と等しい値となるように油圧を制御することで、ピストン24を中間位置に維持させることができ、カムシャフトに同様な第3カムを設ければ、三段階のバルブタイミングの切り換えが実現できる。
【0041】
第5及び第6実施例に示した、二つのフォロアのいずれかをロッカアーム軸に結合させる構造は、もちろん、カムシャフトに回転自在に嵌合するように設けられた二つのカムに適用させることも可能である。また、カムシャフト又はロッカアーム軸に、回転又は揺動自在な単一のカム又はフォロアを嵌合させ、第1及び第2実施例において説明した係合機構を設けることで、機関運転中に機関バルブを意図的に閉弁状態とさせることも可能である。このようなバルブタイミング可変機構を、ヘリカルポートとストレートポートがそれぞれ吸気バルブを介して燃焼室に通じる内燃機関のストレートポート側の吸気バルブに適用すれば、機関低負荷時において、ストレートポート側の吸気バルブを閉弁状態とすることができ、ストレートポートにスワール制御弁を設けなくても、吸気はヘリカルポートだけを通り燃焼室内へ供給され、燃焼室内に強いスワールを生成することが可能となる。
【0042】
これまで説明した全ての実施例において、カムシャフト又はロッカアーム軸等の軸に、カム又はフォロア等の嵌合部材を結合又は結合解除させるための軸から突出する部材としてボールを使用したが、これは本発明を限定するものではなく、第1実施例の変更実施例として図17に示す第7実施例のように、ボールに代えて角柱部材7’を使用しても、第1付勢力としてこの角柱部材7’に作用する遠心力によって角柱部材7’は、嵌合部材6’の第1溝13c’及び第2溝13e’を有する凹状係合部13’に沿って移動し、何時の時点で第2付勢力としての油圧が角柱部材7’に作用しても、角柱部材7’を凹状係合部13’の正規の係合位置13b’に、嵌合部材6’の異常に大きな回動動作を伴わずに、確実に係合させることができる。また、全ての実施例において、ボール又は角柱部材等のピン部材に作用させる第1付勢力は遠心力を利用したが、もちろん、適当な大きさの油圧力、バネ又はゴム等による弾性力、又は電磁力等の力を利用することも可能であり、これは実施例において油圧とされた第2付勢力にも言えることである。
【0043】
【発明の効果】
このように、本発明による請求項1に記載のバルブタイミング可変装置によれば、軸と嵌合部材を結合させるためのピン部材が、軸と嵌合部材とを結合させることを意図しない時にも、第1付勢手段によって突出方向に付勢され、嵌合部材の凹状係合部に設けられたピン部材の正規の係合位置へ滑らかに接続された第1溝に沿って移動するために、比較的小さな第1付勢力しかピン部材に作用していない時には、嵌合部材に作用する外力に逆らって軸と嵌合部材とは結合されないが、ピン部材に第2付勢力を作用させると、この時にピン部材が第1溝上に位置していても、ピン部材はストロークを急激に増加させることなく第1溝に沿って確実に凹状係合部の正規の係合位置に達し、ピン部材が凹状係合部の中途半端な位置で係合して、ピン部材に大きな力が作用し、ピン部材が破損したり、また耐久性が悪化したりすることは防止される。
【0044】
また、請求項2に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、嵌合部材の凹状係合部はその正規の係合位置と嵌合部材における軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、ピン部材の先端部がこの第2溝の第2接触位置側の第1傾斜面上に位置する時に第2付勢力がピン部材に作用すると、軸の動作に伴いピン部材を介して第2溝へ作用する押圧力に対する反力におけるピン部材を軸へ押し込める方向の分力が、この時には第1付勢力と第2付勢力との和より大きいために、ピン部材は、軸内へ押し込められて軸と共に回動し、その後、第1溝に沿って凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。それにより、ピン部材が第2溝の第1傾斜面上に位置する時に第2付勢力が作用する場合に、ピン部材が軸内へ押し込まれずにこの位置で凹状係合部に係合して、ピン部材に大きな力が作用し、ピン部材が破損したり、また、ピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置と係合しようとして嵌合部材が軸の動作方向に大きく進行して、バルブが急激に開弁される等のバルブの異常運動を引き起こすことは防止される。また、ピン部材の先端部がこの第2溝の係合位置側の第2傾斜面上に位置する時に第2付勢力がピン部材に作用すると、前述の分力が第1付勢力と第2付勢力との和より小さくなるために、嵌合部材が軸の動作方向にわずかに進行してピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。
【0045】
また、請求項3に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸がカムシャフトであり、嵌合部材がカムであり、凹状係合部は、カムにおいて、カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されているために、カムノーズ部により機関バルブを開弁する際の比較的大きな反力が作用するカムのおけるカムシャフトとの接触面は、その面圧が凹部によって増大することはなく、カムの耐久性が悪化することは防止される。
【0046】
また、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸にはそれぞれが互いに異なる開閉動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、第2付勢手段は、軸と二つの嵌合部材の一方とを結合させることを意図する時に、この一方の嵌合部材を軸に結合させるためのピン部材だけを付勢する選択付勢手段であるために、一方の嵌合部材が軸と結合されている時は、他方の嵌合部材は軸の周方向に摺動可能となっており、二つの嵌合部材により機関バルブに与えられる開閉動作を自由に設定することができ、バルブ開弁及び閉弁時期を同時に早めるようにバルブタイミングを変化させることが可能となる。
【0047】
また、請求項5に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項4に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸がロッカアーム軸であり、二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであり、選択付勢手段によって、一方のフォロアだけがロッカアーム軸に結合され、対応するカムの動作によりロッカアームが機関弁を開閉動作させるために、結合解除された場合においてフォロアはロッカアーム軸に対して揺動するものであり、カムシャフトに対して回転するカムに比較して摺動面の磨耗が少なく、この装置全体の耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、請求項6に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項4に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、選択付勢手段は軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、このピストン部材を一方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の一方によって二つのピン部材の一方がその突出方向に第2付勢力で付勢されると同時に、他方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、また他方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の他方によって二つのピン部材の他方が第2付勢力で付勢されると同時に、一方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないために、比較的簡単な構造で二つの嵌合部材のうちの一つだけを軸に結合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例におけるセカンダリカムとカムシャフトとの結合状態を示す概略図である。
【図2】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例におけるセカンダリカムとカムシャフトとの回転自在状態を示す概略図である。
【図3】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における回転自在状態の時の挙動図である。
【図4】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における回転自在状態から結合状態となる時の挙動図である。
【図5】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における結合状態の時の挙動図である。
【図6】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における結合状態から回転自在状態となる時の挙動図である。
【図7】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における凹状係合部の形状を示す図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のS部拡大図である。
【図8】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における第2溝上に位置するボールに作用する力関係を説明する図であり、(a)はボールの第2溝に対する接触角が小さい場合、(b)はボールの第2溝に対する接触角が大きい場合、(c)は接触角とボールを押し戻す力との関係を示すグラフである。
【図9】本発明によるバルブタイミング可変装置の第2実施例における図7に相当する凹状係合部の形状を示す図である。
【図10】本発明によるバルブタイミング可変装置の第3実施例におけるボール係合時の図である。
【図11】本発明によるバルブタイミング可変装置の第4実施例におけるボール係合時の図である。
【図12】本発明によるバルブタイミング可変装置の第5実施例を示す斜視図である。
【図13】図12の分解斜視図である。
【図14】図12の側面図である。
【図15】図12のロッカアーム軸の長手方向断面図である。
【図16】本発明によるバルブタイミング可変装置の第6実施例を示す図15に相当する図である。
【図17】本発明によるバルブタイミング可変装置の第7実施例を示す図7に相当する図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のU部拡大図である。。
【符号の説明】
1…バルブタイミング可変装置
2…バルブ
3…バルブリフタ
4…カムシャフト
5,5’…プライマリカム
6…セカンダリカム
7…ボール
8…油路
9…ピストン
10…リターンスプリング
11…ピストン孔
12…ボール移動孔
13…凹部
20…ロッカアーム軸
21a…第1ロッカアーム
21b…第2ロッカアーム
22a…第1フォロア
22b…第2フォロア
23a…第1ボール
24…ピストン
27…カムシャフト
28a…第1カム
28b…第2カム
31…弾性部材
【産業上の利用分野】
本発明は、カムシャフトに設けられたカムの動作を吸気バルブ又は排気バルブ等の機関バルブへ伝達するか否かを選択可能としてバルブタイミングを切り換えるバルブタイミング可変装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの低回転域における使いやすさ即ち、低速高トルクを保持しつつ高速域におけるエンジンの出力トルクの向上を図るために、プロフィールの異なる低速用と高速用の2種類のカムをカムシャフトに設け、エンジンの低速回転域では低速用カムで、高速回転域では高速用カムでバルブを駆動する動弁機構がある。このバルブタイミングを可変とする機構を具体的に述べるとカムプロフィールの異なる第1と第2のカムを常に1つのバルブに接触するようにカムシャフトに設ける。そして、第1のカムをカムシャフトに回転自在に取り付けることで、第1のカムと形状が異なる第2のカムのタイミングでバルブを駆動する。他方、ピンで第1のカムとカムシャフトを結合させることで第1のカムの形状に伴うタイミングでバルブを駆動する。そして、機関の運転状態に応じて、ピンでカムとカムシャフトを結合又はそれを解除することにより、バルブタイミングを切り換えている。
【0003】
このカムシャフトと第1のカムとをピンによって結合する方法として、カムシャフト内に設けた油圧回路によりピンをカムロブ内に設けた凹状係合部に押し出してカムシャフトとカムとを結合駆動している。しかし、このカムシャフトはエンジンからの出力を受けて常に高速で回転しているため、ピンが凹状係合部に係合しにくいといった問題がある。特開昭62−131907号公報には、カムロブ側に設けた凹状係合部に常にピンをカムシャフト内へ付勢するバネ部材が配置され、それによりカムシャフト内へ押し込まれてカムシャフトと共に回転するピンを油圧により凹状係合部に係合させる際に、ピンがこのバネ部材を徐々に押圧してピンの先端部が凹状係合部の正規の係合位置に達するように、凹状係合部の円周方向の片側に正規の係合位置に通じる助走溝を設けることが記載されている。このような構造によって、バルブタイミングを変化させるために、ピンが助走溝上に移動する以前に油圧を作用させている場合には、ピンの先端部が確実に凹状係合部における正規の係合位置に達し、ピンと凹状係合部との良好な係合を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術において、バネ部材によりカムシャフト内に押し込められたピンが助走溝上の途中に位置している時にピンに油圧を作用させると、ピンが凹状係合部の正規の係合位置に対向するまでの時間で、ピンがバネ部材を十分に押圧することができず、ピンの先端部が凹状係合部における正規の係合位置に達する以前の中途半端な位置で係合を開始しカムシャフトを回転させようとする。この状態でカムシャフトとカムが回転するとピンに大きな力が働き、この結果として、ピンに応力が集中し、耐久性悪化や破損といった問題が生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、軸の周方向に摺動可能な嵌合部材の凹状係合部に、軸から突出可能なピン部材を係合させることにより、軸と嵌合部材を結合させてバルブタイミングを変化させるバルブタイミング可変装置において、軸と嵌合部材とを結合させることを意図する時には、常に正規な係合位置でのピンと凹状係合部との良好な係合を実現することを可能とし、ピンの耐久性悪化及び破損を防止することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載のバルブタイミング可変装置は、軸の周方向に摺動可能な嵌合部材の凹状係合部に、軸から突出可能なピン部材を係合させることにより、軸と嵌合部材を結合させてバルブタイミングを変化させるバルブタイミング可変装置において、前記軸と前記嵌合部材とを結合させることを意図しない時においても前記ピン部材を突出方向に付勢する第1付勢手段と、前記軸と嵌合部材とを結合させることを意図する時に前記ピン部材を突出方向に付勢する第2付勢手段とを具備し、前記嵌合部材の凹状係合部は、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部へ近づく側において、前記嵌合部材における前記軸との第1接触位置と前記ピン部材の先端部の正規の係合位置とを滑らかに接続する第1溝を有し、前記第1付勢手段によって前記ピン部材に作用する第1付勢力は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時でも、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合させるほど大きくはなく、前記第2付勢手段によって前記ピン部材に作用する第2付勢力と前記第1付勢力との和は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時には、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合可能とする大きさであることを特徴とする。
【0007】
本発明による請求項2に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記嵌合部材の前記凹状係合部は、さらに、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部から遠ざかる側において、前記ピン部材の先端部の正規の係合位置と前記嵌合部材における前記軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、前記第2溝は前記第2接触位置側の第1傾斜面と前記係合位置側の第2傾斜面とを有し、前記軸の動作に伴い前記ピン部材によって前記第2溝へ作用する押圧力に対する反力における前記ピン部材を前記軸へ押し込める方向の分力が、前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より大きくなるように、前記第1傾斜面の角度が設定され、前記分力が前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より小さくなるように、前記第2傾斜面の角度が設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項3に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸がカムシャフトであり、前記嵌合部材がカムであり、前記凹状係合部は、前記カムにおいて、前記カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項4に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸にはそれぞれが互いに異なる開閉弁動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、前記第2付勢手段は、前記軸と前記二つの嵌合部材のうちの選択した一方とを結合させることを意図する時に、前記一方の嵌合部材を前記軸に結合させるための前記ピン部材だけを付勢する選択付勢手段であることを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項5に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、前記軸がロッカアーム軸であり、前記二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであることを特徴とする。
【0011】
本発明による請求項6に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、前記選択付勢手段は前記軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、前記ピストン部材は、一方の設定位置において、その両端部の一方が前記二つのピン部材の一方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、他方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、他方の設定位置において、その両端部の他方が前記二つのピン部材の他方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、一方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないことを特徴とする。
【0012】
【作用】
前述の請求項1に記載のバルブタイミング可変装置は、軸と嵌合部材を結合させるためのピン部材が、この結合を意図しない時においても第1付勢手段によって突出方向に付勢され、嵌合部材の凹状係合部には、軸との第1接触位置からピン部材の正規の係合位置へ滑らかに接続された第1溝を有しているために、ピン部材の先端部がこの第1溝に沿って移動して正規の係合位置へ達する。第1付勢手段によってピン部材に作用する第1付勢力は比較的小さいために、この時において、嵌合部材に作用する外力に逆らって軸と嵌合部材とは結合されないが、嵌合部材と軸とを結合させるためにピン部材に第2付勢力を作用させれば、この時にピン部材が第1溝上に位置していても、ピン部材のストロークを急激に増加させる必要はなく、ピン部材は第1溝に沿って確実に凹状係合部の正規の係合位置に達する。
【0013】
前述の請求項2に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、嵌合部材の凹状係合部はその正規の係合位置と嵌合部材における軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、第1付勢手段による第1付勢力だけがピン部材に作用する時には、ピン部材の先端部は第1溝及び第2溝に沿って滑らかに凹状係合部を通過する。ピン部材の先端部がこの第2溝の第2接触位置側の第1傾斜面上に位置する時には、軸の動作に伴いピン部材を介して第2溝へ作用する押圧力に対する反力におけるピン部材を軸へ押し込める方向の分力が、第1付勢力と第2付勢力との和より大きいために、第2付勢手段により第2付勢力がピン部材に作用しても、ピン部材は軸内へ押し込められ、ピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置と係合しようとして嵌合部材が軸の動作方向に大きく進行したり、ピン部材が凹状係合部の中途半端な位置で係合することは防止される。また、ピン部材の先端部がこの第2溝の係合位置側の第2傾斜面と接触する時には、前述の分力が第1付勢力と第2付勢力との和より小さくなるために、この位置で第2付勢手段により第2付勢力がピン部材に作用すると、嵌合部材が軸の動作方向にわずかに進行してピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。
【0014】
前述の請求項3に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、軸がカムシャフトであり、嵌合部材がカムであり、凹状係合部は、カムにおいて、カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されているために、カムの凹状係合部近傍には、カムノーズ部により機関バルブを開弁する際の比較的大きな反力が作用しない。
【0015】
前述の請求項4に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項1に記載のバルブタイミング可変装置において、軸にはそれぞれが互いに異なる開閉動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、第2付勢手段は、軸と二つの嵌合部材のうちの選択した一方とを結合させることを意図する時に、この一方の嵌合部材を前記軸に結合させるための前記ピン部材だけを付勢する選択付勢手段であるために、一方の嵌合部材が軸と結合されている時は、他方の嵌合部材は軸の周方向に摺動可能となっていて一方の嵌合部材による機関バルブの開閉動作に影響を与えることはなく、二つの嵌合部材により機関バルブに与えられる開閉動作を自由に設定することができる。
【0016】
前述の請求項5に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、軸がロッカアーム軸であり、二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであり、選択付勢手段によって、一方のフォロアだけがロッカアーム軸に結合され、対応するカムの動作によりロッカアームが機関弁を開閉動作させる。
【0017】
本発明による請求項6に記載のバルブタイミング可変装置は、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置において、選択付勢手段は軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、このピストン部材を一方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の一方によって二つのピン部材の一方がその突出方向に第2付勢力で付勢されると同時に、他方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、また他方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の他方によって二つのピン部材の他方が第2付勢力で付勢されると同時に、一方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないために、二つの嵌合部材のうちの一つだけを軸に結合させることが可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1及び2は、本発明の第1実施例であるバルブタイミング可変装置の概略図であり、これらの図において、バルブタイミング可変装置1は、バルブ2と、このバルブ2の頂部に取り付けられたバルブリフタ3と、このバルブリフタ3を駆動するカムシャフト4とプライマリカム5、5’とセカンダリカム6から構成されている。このプライマリカム5、5’はカムシャフト4に固定されており、カムシャフト4が回転するのに同期して回転するようになっている。一方、セカンダリカム6とプライマリカム5、5’とはカムプロフィールの形状が相違し、カムシャフト4に形成されたボール移動孔12に沿ってカムシャフトの半径方向に移動可能な係合ピンであるボール7の位置によって、回転するカムシャフト4に対して結合又は回転自在とに切り換わるようになっている。これらのプライマリカム5、5’又はセカンダリカム6はカムシャフト4が回転することによりバルブリフタ3を駆動し、バルブ2をリフト駆動することになる。
【0019】
また、このカムシャフト4内には、ピストン孔11を摺動可能なピストン9が備えられているとともに、カムシャフト4は図示しないカムシャフトベアリングに回転可能に軸支されている。そして、カムシャフト4およびカムシャフトベアリングに設けられた油路8を通してカムシャフト4内に設けられたピストン9に油圧Pが供給され、油圧Pによってピストン9の位置を制御している。ボール7が係合するセカンダリカム6の凹部13は、カムシャフト4の回転に伴いボール7が凹部13へ近づく側において、セカンダリカムとカムシャフトとの第1接触位置13a及びボール7の正規の係合位置であるその頂部13bを滑らかに接続する第1溝13cと、カムシャフト4の回転に伴いボール7が凹部13から遠ざかる側において、セカンダリカムとカムシャフトとの第2接触位置13d及びボール7の正規の係合位置13bを滑らかに接続する第2溝13eとを有している。
【0020】
ピストン9は、油路8に油圧Pが供給されていないときには、リターンスプリング10のばね力により所定の係合離脱位置(図2のピストン9によって表される位置)とされ、ピストン9の中央部に形成された環状凹みによってボール7には油圧に伴うボール突出方向の付勢力は作用しないようになっている。一方、油路8に油圧Pが供給されているときには、リターンスプリング10のバネ力に抗して所定の係合位置(図1のピストン9によって表される位置)に移動され、ピストン9の端部によってボール7にはその突出方向の大きな付勢力が作用する。また、前述の係合離脱位置からこの係合位置に達するまでにおいても、環状凹みの傾斜面によってボール7には油圧に伴うボール突出方向の付勢力が作用するようになっている。油路Pは、機関の運転状態に応じて、図示しないオイルポンプに接続される油圧経路内に設けられた電磁油圧制御弁を電子制御ユニットにより開閉することによりON、OFF制御される。ここで、請求項1〜6のピン部材とは、本実施例においてボール7に相当するものである。
【0021】
ピストン9が係合離脱位置にある時のボール7、セカンダリカム6、及びカムシャフト4の挙動が図3(a)〜(d)に示されており、この時において、ボール7は、カムシャフト4と共にカムシャフトの中心回りに回転するために、第1付勢力として遠心力が作用し、セカンダリカム6の凹部13と対向する位置において、図3(b)に示すように、第1溝13cに沿って正規の係合位置13bに達する。しかしながら、この遠心力は比較的小さいものであるために、セカンダリカム6がバルブリフタ3を押し下げることよりセカンダリカム6に作用する反力に逆らって、セカンダリカム6とカムシャフト4との結合を維持することはできず、図3(c)に示すように、ボール7はカムシャフト4内に押し込められ、カムシャフト4はセカンダリカム6に対して自在に回転する。
【0022】
図3に示す状態から油路8を介してピストン孔11に油圧が供給された時の挙動が図4(a)〜(d)に示されている。何時の時点で油圧が作用したかにかかわらず、ボール7には前述したように遠心力が作用するために、ボール7はセカンダリカム6の凹部13における正規の係合位置13bに達し、この時に、ボール7に第2付勢力として油圧によるピストン9の押圧力が既に作用していれば、この押圧力はかなり大きなものであるために、セカンダリカム6に作用する前述の反力に逆らってセカンダリカム6とカムシャフト4との結合は維持され、図4(c)〜(d)に示すように、セカンダリカム6によるバルブリフタ3を介してのバルブ駆動が開始される。このように、ボール7は、常にセカンダリカム6の凹部13に沿って移動するために、例えば、第1溝13c上で油圧が作用した場合において、ピン部材がカムシャフト内に押し込められたまま回転する従来のように、ボール7を凹部13の正規の係合位置に移動させるために急激にボールのストロークを増加させる必要はなく、何時の時点で油圧を作用させてもボール7と凹部13との確実な係合を実現することができる。
【0023】
このようにしてセカンダリカム6とカムシャフト4とが結合された時の挙動を図5(a)〜(d)に示す。また、この状態からピストン9への油圧の供給を停止した時の挙動が図6(a)〜(d)に示されており、バルブ閉弁中のセカンダリカム6へ作用する反力が非常に小さい時には、ボール7に作用する前述の遠心力によってセカンダリカム6とカムシャフト4との結合が維持され、図6(a)〜(c)に示すように、セカンダリカム6のカムノーズ部がバルブリフタ3を押し下げる直前までセカンダリカム6はカムシャフト4と共に回転し、その後、図6(d)に示すように、ボール7の係合が外れて、カムシャフト6は図3と同様にセカンダリカム6に対して自在に回転する。
【0024】
次に、遠心力によってセカンダリカム6の凹部13に沿って移動するボール7が、凹部13の第2溝13e上に位置する時に、油圧が作用する場合について詳しく説明する。図7(a)はこの時の状態図であり、図7(b)はボール7とセカンダリカム6の第2溝13eとの接触部近傍のS部拡大図である。図7(b)において、第2溝13eは、凹部13におけるボール7の正規の係合位置13b及びセカンダリカム6のカムシャフトとの第2接触位置13dを滑らかに接続するためのボール7より大きな所定半径を有する曲面Aと傾斜面Bとから構成されている。
【0025】
第2溝13eにおけるボール7との当接点Rは、カムシャフト4の回転に伴いボール7によって当接点Rとカムシャフト中心とを結ぶ方向に対して垂直方向に押圧されている。この押圧力の方向と第2溝13eとのなす角度をrとすると、この角度(以下、接触角)rは、第2接触位置13d側のP点と正規の係合位置13b側のQ点において相違しており、P点での接触角をr1 、Q点での接触角をr2 とすると、両者にはr1 <r2 の関係が成り立つ。さらに、ボール7が第2溝13eの曲面A上に位置する時には、常に、その接触角rはr2 より大きくなる。P点での力の関係を図8(a)に、Q点での力の関係を図8(b)に示す。尚、図8(a)及び(b)において、ボール7は見やすくするため実際より小さく表している。ここで、前述の押圧力は、カムシャフト4の回転に伴うものであるために、ボール7の第2溝13eに対する当接点Rの位置にかかわらず等しく、ボール7には常に所定の反力Fが作用する。この所定の反力Fは、第2溝13eを垂直方向に押圧する第1分力Fqとボール7をカムシャフト4内へ押し戻す方向の第2分力Fpとに分けられる。この時、接触角rが小さいと図8(a)に示すように第2分力Fpが大きくなり、接触角rが大きいと図8(b)に示されるように第2分力Fpは小さくなる。つまり、接触角rが小さくなればボール7をカムシャフト4内へ押し戻す力Fpは大きくなり、接触角rが大きくなれば押し戻す力Fpは小さくなる。
【0026】
図8(c)は接触角rとカムシャフト4内へボール7を押し戻す力Fpの関係を示す。尚、前述の遠心力と油圧力とによってカムシャフト中心から外側へボール7を押し出す力をF0 とし、R点を基準としてカムシャフト中心とした回転方向へどれくらいずれたかを示すずれ量をθとする。ここで、図8(c)は係合部同志の位相のずれθに応じたボールを押し戻す力Fpと押し出す力F0 との関係を示したものである。これを見ると、凹部13の第2溝13eにおいて、位相差θがθ>|θ2 |、θ>|θ1 |のときにはFp>F0 となり現時点においてボール7がカムシャフト4内に押し戻され、カムシャフト4とセカンダリカム6とは結合されず、ボール7が次に凹部13に達した時に結合される。また位相差θがθ2 <θ<θ1 のときにはFp<F0 となり、θ=0のときF0 −Fpが正の値でかつ最大となるため、セカンダリカム6がわずかに回転して、ボール7が正規の係合位置13bに係合し、カムシャフト4とセカンダリカム6が一体となって回転することになる。また、油圧Pが作用していない時には遠心力だけの力F1 となり、常に、ボール7が固定されずに回転し続ける。
【0027】
従来技術では、第2溝の角度設定において、このようなことが考慮されていないために、第2溝における位相差θが比較的大きい位置でピン部材に油圧が作用する時に、前述のFpが小さくなり、この位置でピン部材と凹部とが係合してセカンダリカムとカムシャフトとの不完全な結合をもたらしたり、また、ボール7が凹部13の正規の係合位置に係合しようとしてセカンダリカム6を急激に回転させて非常に大きなカム(バルブ運動)加速度が発生し、バルブのジャンプ等異常運動を引き起こす恐れがある。上記実施例では、図8(c)の力関係図からわかるように微小角度のずれでは正規の係合位置13bへ瞬時に戻り、油圧Pの掛かるタイミングが少しでも遅れると1回係合を見送ってから次のサイクルに確実に係合するために、前述のバルブの異常運動を防止することができる。
【0028】
図9に本発明の第2実施例を示す。第1実施例との違いは、図7(b)との比較から明確なように、第2溝13eの傾斜面が、異なる傾斜角度を有する第1及び第2傾斜面B’,C’から構成されていることである。ボール7に作用する遠心力及び油圧力を考慮して、前述の考え方に基づき、第1傾斜面B’は、それ上にボール7が位置する場合には、油圧が作用してもボール7をカムシャフト4内へ確実に押し戻すように角度設定され、第2傾斜面C’は、それ上にボール7が位置する場合には、油圧が作用する時にボール7を確実に正規の係合位置に係合させるように、角度設定されている。それにより、ボール7が第2溝上に位置する時に油圧が作用する場合において、セカンダリカム6とカムシャフト4とを結合させるか否かが第1傾斜面B’と第2傾斜面C’とで明確に区別され、結合に際しての前述の問題を確実に防止することができる。
【0029】
図10に本発明の第3実施例を示す。これは、前記第1実施例のバルブタイミング可変装置のボール7及び凹部13を複数設けたもので、係合可能な位相はカムシャフト1回転に1回のみである。このように複数係合部を設けることにより、係合部1つ当たりの回転拘束力が軽減できるため、ピストンに作用する油圧を小さくすることができる。
【0030】
図11に本発明の第4実施例を示す。これは、請求項3のバルブタイミング可変装置であり、第1実施例と同様に、セカンダリカムやプライマリカムに適用することにより、第1実施例と同様の効果が生じることはいうまでもなく、第4実施例では、バルブを駆動するカムプロフィール部分であるカムノーズ部のカムシャフト中心軸に対して反対側に凹部13を設けている。その結果、一般的に、バルブを駆動するときに生じる反作用としてカムノーズがカムシャフト側に付勢力により押されることになるが、第4実施例のような構成とすることにより、カムとカムシャフトとの接触する面積を大きくすることができ、面圧を低減することができるため、係合部の耐久性向上を図ることができる。
【0031】
図12、13、14、及び15に本発明の第5実施例を示す。本実施例は、カムがロッカアームを介してバルブを駆動する動弁機構に本発明を適用した場合である。図12において、20はロッカアーム軸であり、それには二つの機関バルブ2を同時に駆動するための第1及び第2ロッカアーム21a,21bが固定されている。第1及び第2ロッカアーム21a,21bの間において、ロッカアーム軸20には、第1及び第2フォロア22a,22bが揺動可能に嵌合されている。図12の分解斜視図である図13に示すように、第1及び第2フォロア22a,22bと中空のロッカアーム軸20との間に前述同様な第1及び第2ボール23a,23bとピストン24とを使用する係合機構が設けられている。ロッカアーム軸20内へピストン24を挿入するための開口部20aは、蓋部材25により密閉される。ロッカアーム軸20の第1及び第2ロッカアーム21a,21bの両側に形成された孔26a,26bは、ロッカアーム軸20内に位置するピストン24の両端へ油圧を提供するための油供給孔である。
【0032】
図14に示すように、第1及び第2フォロア22a,22bの先端上部には、カムシャフト27に固定された異なるプロフィールを有する第1及び第2カム28a,28bが当接し、第1及び第2フォロア22a,22bがそれぞれ異なる揺動動作を行うようになっている。本実施例のバルブタイミング可変装置は、前述同様な係合機構を使用していずれか一方のフォロア22a又は22bをロッカアーム軸20に結合させることにより、バルブタイミングを変化させるものである。
【0033】
図15はロッカアーム軸20の長手方向部分断面図である。同図に示すように、ロッカアーム軸20の両端部は軸受け29a,29bによって回動可能に支持されている。ロッカアーム軸20内の空間において、ピストン24は、この空間内に形成された第1ストッパ30aと、前述の蓋部材に形成された第2ストッパ30bとによって両端の位置が規制され、前述の油供給孔26a,26bの一方から作動油を供給することにより他方の油供給孔から作動油が排出され、ピストン24は、図15(a)及び(c)に示すような第1及び第2所定位置の間を移動するようになっている。図15(b)は第1及び第2所定位置の間の中間位置を示している。このようなピストン24の移動に際して、ピストン24の両端部24a,24bは、ロッカアーム軸20内の空間を油密に摺動し、作動油がピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cに侵入しないようになっている。
【0034】
図15(a)に示されたピストン24の第1所定位置において、第1ボール23aがピストン24の一方の端部24aによってロッカアーム軸20から強制的に押し出されて第1フォロア22aの凹部に係合し、第1フォロア22aとロッカアーム軸20とが結合される一方で、ピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cによって第2ボール23bには突出方向の付勢力は作用せず、第2フォロア22bとロッカアーム軸20とは結合されないために、第1カム27aの動作によりバルブが駆動される。
【0035】
また、図15(C)に示されたピストン24の第2所定位置において、第2ボール23bがピストン24の他方の端部24bによってロッカアーム軸20から強制的に押し出されて第2フォロア22bの凹部に係合し、第2フォロア22bとロッカアーム軸20とが結合される一方で、ピストン24の中央部に設けられた環状凹み24cによって第1ボール23aには突出方向の付勢力は作用せず、第1フォロア22aとロッカアーム軸20とは結合されないために、第2カム27bの動作によりバルブが駆動される。ピストン24は、一方の所定位置から他方の所定位置に切り換わる途中で、図15(B)に示すように第1及び第2ボール23a,23bの両方を突出方向に付勢しない状態があるために、両方のフォロアが瞬間的においても同時にロッカアーム軸20に結合されることはない。
【0036】
第1及び第2フォロア22a,22bに形成された凹部は、詳細には図示されていないが、第1又は第2実施例で説明したと同様な形状を有しており、第1及び第2ボール23a,23bとの係合に際して、第1溝によって、何時の時点で油圧を作用させても、ボールと凹部との確実な係合を実現することができると共に、第2溝によって、フォロアの急激な回動に伴うバルブのジャンプ等異常運動は防止される。
【0037】
前述した第1実施例のように、プライマリカムが固定されたカムシャフトに対してセカンダリカムを結合又は摺動可能とすることにより、バルブタイミングを変化させる機構においては、プライマリカムのカムノーズ部の形状は、カムシャフトに結合されたセカンダリカムのカムノーズ部の形状に対して投影的に突出する部分がないように選択されなければならない。なぜなら、セカンダリカムがカムシャフトに結合されている場合においてもプライマリカムはカムシャフトと共に回転するものであり、プライマリカムに前述した突出部分が存在すると、この突出部分がセカンダリカムによる機関バルブの開閉動作に影響を与えるためである。このように、プライマリカムとセカンダリカムのプロフィールは、自由に選択することができず、例えば、機関バルブの開弁時期及び閉弁時期を同時に早めるようにバルブタイミングを変化させることはできない。
【0038】
しかしながら、本実施例においては、機関バルブに異なる開閉動作を与える第1及び第2フォロア22a,22bは、その一方がロッカアーム軸20に結合されている時には、他方がロッカアーム軸20に対して揺動自在となっているために、カムシャフトに固定された二つのカムのプロフィールは、互いに影響されることなく自由に選択することができ、二種類のバルブタイミングを自在に設定することが可能となる。
【0039】
図16は本発明の第6実施例を示しており、第5実施例との違いは、ピストン24を一方の所定位置方向に付勢する弾性部材、例えばバネ31が、ピストン24をこの所定位置方向に付勢するための油圧を提供する油圧系の代わりに設けられていることである。このような構造によっても前述同様なピストン24の動作を実現することができ、油圧系26は一つとなるために、第5実施例に比較して構造を簡単化することができる。
【0040】
第5実施例において、ピストン24の両端に油圧を作用させないようにすれば、機関バルブを開弁させる際の反力によって第1及び第2フォロア22a,22bはロッカアーム軸20に対して自在に回動するようになり、ピストン24の位置は、図15(b)に示すような中間位置となる。この時には、第5実施例の構造では機関バルブは閉弁状態に維持される。しかしながら、第5実施例において、カムシャフト27に,一方のロッカアーム21a又は21bに当接して第1及び第2カム28a,28bのカムノーズ部に対して投影的に突出する部分がないように形状が選択された第3カムを追加することにより、ピストン24が第1所定位置にある時には第1カムにより機関バルブが駆動され、ピストン24が第2所定位置にある時には第2カムにより機関バルブが駆動され、さらに、ピストン24が中間位置にある時には第3カムにより機関バルブが駆動され、このように三段階にバルブタイミングを変化させることが可能となる。もちろん、第6実施例においても、ピストン24を中間位置とする弾性部材31の付勢力と等しい値となるように油圧を制御することで、ピストン24を中間位置に維持させることができ、カムシャフトに同様な第3カムを設ければ、三段階のバルブタイミングの切り換えが実現できる。
【0041】
第5及び第6実施例に示した、二つのフォロアのいずれかをロッカアーム軸に結合させる構造は、もちろん、カムシャフトに回転自在に嵌合するように設けられた二つのカムに適用させることも可能である。また、カムシャフト又はロッカアーム軸に、回転又は揺動自在な単一のカム又はフォロアを嵌合させ、第1及び第2実施例において説明した係合機構を設けることで、機関運転中に機関バルブを意図的に閉弁状態とさせることも可能である。このようなバルブタイミング可変機構を、ヘリカルポートとストレートポートがそれぞれ吸気バルブを介して燃焼室に通じる内燃機関のストレートポート側の吸気バルブに適用すれば、機関低負荷時において、ストレートポート側の吸気バルブを閉弁状態とすることができ、ストレートポートにスワール制御弁を設けなくても、吸気はヘリカルポートだけを通り燃焼室内へ供給され、燃焼室内に強いスワールを生成することが可能となる。
【0042】
これまで説明した全ての実施例において、カムシャフト又はロッカアーム軸等の軸に、カム又はフォロア等の嵌合部材を結合又は結合解除させるための軸から突出する部材としてボールを使用したが、これは本発明を限定するものではなく、第1実施例の変更実施例として図17に示す第7実施例のように、ボールに代えて角柱部材7’を使用しても、第1付勢力としてこの角柱部材7’に作用する遠心力によって角柱部材7’は、嵌合部材6’の第1溝13c’及び第2溝13e’を有する凹状係合部13’に沿って移動し、何時の時点で第2付勢力としての油圧が角柱部材7’に作用しても、角柱部材7’を凹状係合部13’の正規の係合位置13b’に、嵌合部材6’の異常に大きな回動動作を伴わずに、確実に係合させることができる。また、全ての実施例において、ボール又は角柱部材等のピン部材に作用させる第1付勢力は遠心力を利用したが、もちろん、適当な大きさの油圧力、バネ又はゴム等による弾性力、又は電磁力等の力を利用することも可能であり、これは実施例において油圧とされた第2付勢力にも言えることである。
【0043】
【発明の効果】
このように、本発明による請求項1に記載のバルブタイミング可変装置によれば、軸と嵌合部材を結合させるためのピン部材が、軸と嵌合部材とを結合させることを意図しない時にも、第1付勢手段によって突出方向に付勢され、嵌合部材の凹状係合部に設けられたピン部材の正規の係合位置へ滑らかに接続された第1溝に沿って移動するために、比較的小さな第1付勢力しかピン部材に作用していない時には、嵌合部材に作用する外力に逆らって軸と嵌合部材とは結合されないが、ピン部材に第2付勢力を作用させると、この時にピン部材が第1溝上に位置していても、ピン部材はストロークを急激に増加させることなく第1溝に沿って確実に凹状係合部の正規の係合位置に達し、ピン部材が凹状係合部の中途半端な位置で係合して、ピン部材に大きな力が作用し、ピン部材が破損したり、また耐久性が悪化したりすることは防止される。
【0044】
また、請求項2に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、嵌合部材の凹状係合部はその正規の係合位置と嵌合部材における軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、ピン部材の先端部がこの第2溝の第2接触位置側の第1傾斜面上に位置する時に第2付勢力がピン部材に作用すると、軸の動作に伴いピン部材を介して第2溝へ作用する押圧力に対する反力におけるピン部材を軸へ押し込める方向の分力が、この時には第1付勢力と第2付勢力との和より大きいために、ピン部材は、軸内へ押し込められて軸と共に回動し、その後、第1溝に沿って凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。それにより、ピン部材が第2溝の第1傾斜面上に位置する時に第2付勢力が作用する場合に、ピン部材が軸内へ押し込まれずにこの位置で凹状係合部に係合して、ピン部材に大きな力が作用し、ピン部材が破損したり、また、ピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置と係合しようとして嵌合部材が軸の動作方向に大きく進行して、バルブが急激に開弁される等のバルブの異常運動を引き起こすことは防止される。また、ピン部材の先端部がこの第2溝の係合位置側の第2傾斜面上に位置する時に第2付勢力がピン部材に作用すると、前述の分力が第1付勢力と第2付勢力との和より小さくなるために、嵌合部材が軸の動作方向にわずかに進行してピン部材の先端部が凹状係合部の正規の係合位置に係合し、嵌合部材と軸とが結合される。
【0045】
また、請求項3に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸がカムシャフトであり、嵌合部材がカムであり、凹状係合部は、カムにおいて、カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されているために、カムノーズ部により機関バルブを開弁する際の比較的大きな反力が作用するカムのおけるカムシャフトとの接触面は、その面圧が凹部によって増大することはなく、カムの耐久性が悪化することは防止される。
【0046】
また、請求項4に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項1に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸にはそれぞれが互いに異なる開閉動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、第2付勢手段は、軸と二つの嵌合部材の一方とを結合させることを意図する時に、この一方の嵌合部材を軸に結合させるためのピン部材だけを付勢する選択付勢手段であるために、一方の嵌合部材が軸と結合されている時は、他方の嵌合部材は軸の周方向に摺動可能となっており、二つの嵌合部材により機関バルブに与えられる開閉動作を自由に設定することができ、バルブ開弁及び閉弁時期を同時に早めるようにバルブタイミングを変化させることが可能となる。
【0047】
また、請求項5に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項4に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、軸がロッカアーム軸であり、二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであり、選択付勢手段によって、一方のフォロアだけがロッカアーム軸に結合され、対応するカムの動作によりロッカアームが機関弁を開閉動作させるために、結合解除された場合においてフォロアはロッカアーム軸に対して揺動するものであり、カムシャフトに対して回転するカムに比較して摺動面の磨耗が少なく、この装置全体の耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、請求項6に記載のバルブタイミング可変装置によれば、前述した請求項4に記載のバルブタイミング可変装置の効果に加えて、選択付勢手段は軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、このピストン部材を一方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の一方によって二つのピン部材の一方がその突出方向に第2付勢力で付勢されると同時に、他方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、また他方の設定位置にすることにより、ピストン部材の両端部の他方によって二つのピン部材の他方が第2付勢力で付勢されると同時に、一方のピン部材はピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないために、比較的簡単な構造で二つの嵌合部材のうちの一つだけを軸に結合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例におけるセカンダリカムとカムシャフトとの結合状態を示す概略図である。
【図2】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例におけるセカンダリカムとカムシャフトとの回転自在状態を示す概略図である。
【図3】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における回転自在状態の時の挙動図である。
【図4】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における回転自在状態から結合状態となる時の挙動図である。
【図5】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における結合状態の時の挙動図である。
【図6】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における結合状態から回転自在状態となる時の挙動図である。
【図7】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における凹状係合部の形状を示す図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のS部拡大図である。
【図8】本発明によるバルブタイミング可変装置の第1実施例における第2溝上に位置するボールに作用する力関係を説明する図であり、(a)はボールの第2溝に対する接触角が小さい場合、(b)はボールの第2溝に対する接触角が大きい場合、(c)は接触角とボールを押し戻す力との関係を示すグラフである。
【図9】本発明によるバルブタイミング可変装置の第2実施例における図7に相当する凹状係合部の形状を示す図である。
【図10】本発明によるバルブタイミング可変装置の第3実施例におけるボール係合時の図である。
【図11】本発明によるバルブタイミング可変装置の第4実施例におけるボール係合時の図である。
【図12】本発明によるバルブタイミング可変装置の第5実施例を示す斜視図である。
【図13】図12の分解斜視図である。
【図14】図12の側面図である。
【図15】図12のロッカアーム軸の長手方向断面図である。
【図16】本発明によるバルブタイミング可変装置の第6実施例を示す図15に相当する図である。
【図17】本発明によるバルブタイミング可変装置の第7実施例を示す図7に相当する図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のU部拡大図である。。
【符号の説明】
1…バルブタイミング可変装置
2…バルブ
3…バルブリフタ
4…カムシャフト
5,5’…プライマリカム
6…セカンダリカム
7…ボール
8…油路
9…ピストン
10…リターンスプリング
11…ピストン孔
12…ボール移動孔
13…凹部
20…ロッカアーム軸
21a…第1ロッカアーム
21b…第2ロッカアーム
22a…第1フォロア
22b…第2フォロア
23a…第1ボール
24…ピストン
27…カムシャフト
28a…第1カム
28b…第2カム
31…弾性部材
Claims (6)
- 軸の周方向に摺動可能な嵌合部材の凹状係合部に、軸から突出可能なピン部材を係合させることにより、軸と嵌合部材とを結合させてバルブタイミングを変化させるバルブタイミング可変装置において、前記軸と前記嵌合部材とを結合させることを意図しない時においても前記ピン部材を突出方向に付勢する第1付勢手段と、前記軸と前記嵌合部材とを結合させることを意図する時に前記ピン部材を突出方向に付勢する第2付勢手段とを具備し、前記嵌合部材の凹状係合部は、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部へ近づく側において、前記嵌合部材における前記軸との第1接触位置と前記ピン部材の先端部の正規の係合位置とを滑らかに接続する第1溝を有し、前記第1付勢手段によって前記ピン部材に作用する第1付勢力は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時でも、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合させるほど大きくはなく、前記第2付勢手段によって前記ピン部材に作用する第2付勢力と前記第1付勢力との和は、前記ピンの先端部が前記係合位置に達する時には、前記嵌合部材に作用する外力に逆らって前記軸と前記嵌合部材とを結合可能とする大きさであることを特徴とするバルブタイミング可変装置。
- 前記嵌合部材の前記凹状係合部は、さらに、前記ピン部材が前記軸の動作に伴い前記凹状係合部から遠ざかる側において、前記ピン部材の先端部の正規の係合位置と前記嵌合部材における前記軸との第2接触位置とを滑らかに接続する第2溝を有し、前記第2溝は前記第2接触位置側の第1傾斜面と前記係合位置側の第2傾斜面とを有し、前記軸の動作に伴い前記ピン部材によって前記第2溝へ作用する押圧力に対する反力における前記ピン部材を前記軸へ押し込める方向の分力が、前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より大きくなるように、前記第1傾斜面の角度が設定され、前記分力が前記第1付勢力と前記第2付勢力との和より小さくなるように、前記第2傾斜面の角度が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング可変装置。
- 前記軸がカムシャフトであり、前記嵌合部材がカムであり、前記凹状係合部は、前記カムにおいて、前記カムシャフト中心に対してカムノーズ部と反対側の部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング可変装置。
- 前記軸にはそれぞれが互いに異なる開閉弁動作を機関バルブに与えるための少なくとも二つの嵌合部材が配置され、前記第2付勢手段は、前記軸と前記二つの嵌合部材のうちの選択した一方とを結合させることを意図する時に、前記一方の嵌合部材を前記軸に結合させるための前記ピン部材だけを付勢する選択付勢手段であることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング可変装置。
- 前記軸がロッカアーム軸であり、前記二つの嵌合部材がカムシャフトに固定された二種類のカムによってそれぞれ駆動されるフォロアであることを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング可変装置。
- 前記選択付勢手段は前記軸内の軸線方向における二つの設定位置の間を往復運動可能なピストン部材を具備し、前記ピストン部材は、一方の設定位置において、その両端部の一方が前記二つのピン部材の一方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、他方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されず、他方の設定位置において、その両端部の他方が前記二つのピン部材の他方をその突出方向に前記第2付勢力で付勢すると同時に、一方のピン部材は前記ピストン部材の中央部に設けられた凹みによって付勢されないことを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング可変装置。
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1995
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