JP3621925B2 - 液体サンプル調製装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCR−MPN法(ポリメラーゼ連鎖反応と最確数法の組み合わせ)に用いられる液体サンプル調製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、土壌や汚泥などの複合微生物系内の各生物種のDNAを定量するためにPCR−MPN法が有用であり、さらに特願2001−057282号に記載されるように、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)をキャピラリ内で行うことにより、反応の迅速化および酵素の失活防止が可能となる。現在、主に行われているPCRモニタリング法と比較すると、PCR−MPN法は増幅効率が厳密に一定である必要がなので、共通プライマーを用いることにより複数の生物種をまとめて定量できるという利点を備えている。またPCR−MPN法は増幅効率に影響を及ぼす物質を完全に取り除くことが困難なサンプルにも対応できるので有利である。
【0003】
図4はDNAサンプルをPCR−MPN法により定量する処理の流れを示す工程系統図である。図4に示されるようにPCR−MPN法によってDNA定量を行う際には主に三つの工程を経ている。すなわち第一の工程において生体サンプル源、例えば土壌や汚泥等からのDNAを抽出し(DNA抽出)、第二の工程において多重PCR測定を行い(多重PCR測定)、さらに第三の工程において電気泳動、可視化、画像処理および統計データ解析によりDNA定量データを取得する(DNA定量データ取得)。これら三つの工程のうちの第一の工程および第三の工程は、PCR−MPN法以外の多数のDNA定量手法と共通する技術であり、電気泳動を初めとしてマイクロリアクタの技術開発が進んでいる。従って、第一および第三の工程においては省力化および迅速化が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第二の工程における多重PCR測定はPCR−MPN法に特有の工程であり、他の工程よりも技術開発が遅れている。一般的には第二の工程においては五段階に希釈したサンプルをそれぞれ五つ、多重測定する。従って、一つの検体当たり25回のPCR測定を行っている。PCR−MPN法において精度を高めるためには多重度(PCR本数)をさらに増やす必要がある。このような多重測定をするためにPCRの前処理、すなわち煩雑な希釈列作成、PCR試薬混合、および分注などの作業が必要であり、DNA定量をハイスループットで行うのは困難であった。
【0005】
この前処理工程には、DNAの抽出逐次希釈、PCR用試薬との混合、PCR反応液の分注、分注した反応液のキャピラリへの封入、PCR反応装置へのセット、PCR反応、PCR反応後のキャピラリ開封、反応液吐出を経て、その後電気泳動による増幅確認が含まれる。
【0006】
しかしながら、これら前処理工程のうち、PCR反応および電気泳動のマイクロリアクタは開発されているが、PCR−MPN法をトータルでマイクロリアクタ化した例はない。
【0007】
それゆえ、本発明はPCR−MPN法の工程において、PCR−MPN法の作業時における時間および労力の大幅な削減を可能としてスループットを格段に向上させると共にヒューマンエラーを少なくするために、既存のPCR反応および電気泳動以外の部分をマイクロ流路化するようにして既存のマイクロリアクタと結合可能な液体サンプル調製装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために請求項1に記載の発明によれば、液体サンプル源と、該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する定量供給部と、該定量供給部の下流に位置する段とを具備し、該段は等量分岐部と、該等量分岐部から延びる二つの流路とを含み、該二つの流路のうちの一方の流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部と該合流部の下流に位置する段用定量供給部とを含んでおり、さらに、前記段の下流において前記二つの流路に合流するための少なくとも一つの試薬供給部と、該試薬供給部の下流において前記二つの流路に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置が提供される。
【0009】
すなわち請求項1に記載の発明によって、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量作用のスループットを向上させることができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程を大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。また前述した等量リザーバは八つでありうる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、さらに、前記二つの流路のうちの少なくとも一方に接続される少なくとも一つの追加の段を前記段の下流に具備し、該追加の段は追加の等量分岐部と、該追加の等量分岐部から延びる二つの追加の流路とを含み、該二つの追加の流路のうちの一方の追加の流路は追加の希釈液供給部からの希釈液と合流する追加の合流部と該追加の合流部の下流に位置する追加の段用定量供給部とを含んでおり、前記試薬供給部が最も下流に延びうる流路に合流している液体サンプル調製装置が提供される。
【0011】
すなわち請求項2に記載の発明によって、追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記希釈液供給部と前記追加の希釈液供給部における希釈率が異なるようにした。
すなわち請求項3に記載の発明によって、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む。
すなわち請求項4に記載の発明によって、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、液体サンプル源と、該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する第一の定量供給部と、該第一の定量供給部の下流に位置する第一の弁と、該弁から延びる複数の流路とを具備し、該複数の流路のうちの少なくとも一つの流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部をそれぞれ含んでおり、さらに、該合流部の下流において前記複数の流路に合流するための試薬供給部と、該試薬供給部の下流に位置する第二の定量供給部と、該第二の定量供給部の下流に位置する第二の弁に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置が提供される。
【0015】
すなわち請求項5に記載の発明によって、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量作用のスループットを向上させることができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程を大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。また前述した等量リザーバは八つでありうる。さらに、請求項5の場合には弁から延びる複数の流路を備えることにより、高精度な流路加工技術を必要とすることなしに、比較的容易に液体サンプルを等分することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記希釈液供給部が複数存在する場合には前記各希釈液供給部における希釈率が異なるようにした。
すなわち請求項6に記載の発明によって、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む。
すなわち請求項7に記載の発明によって、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするためにこれら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第一の実施形態に基づく液体サンプル調製装置のマイクロ流路の構成を示す図である。図1を参照することにより、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成し、各希釈列が八つのリザーバを含む場合の液体サンプル調製装置のマイクロ流路機構を説明する。
【0019】
本発明に基づく液体サンプル調製装置100は液体サンプル/空気注入口5を備えており、この液体サンプル/空気注入口5は空気圧によって液体サンプルを流路7に通してディスペンサ6内に導入する。
【0020】
図2(a)および図2(b)はディスペンサの構成を示す図である。図2(a)に示されるようにディスペンサ6は、バルブ101、空気注入口102、液だめ103、および光学センサ104により構成されている。ディスペンサ6はバルブ101と光学センサ104の検出点105との間に存在する液体サンプルの量が取分けるべき量となるように設計されている。従って、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、ディスペンサ6によって定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0021】
本発明の液体サンプル調製装置100、110は複数のディスペンサを備えているが、取分けられるべき液体サンプルの量は各ディスペンサに応じて定まり、これらディスペンサはそれぞれ最終的に必要とされる液体サンプルの量から逆算することにより設定されている。初期にはバルブ101の空気注入口102側が閉鎖された状態になっている。光学センサ104は液体サンプルの先頭部分がバルブ101および液だめ103を通って検出点105に差掛かかるときを検出する。光学センサ104における検出作用によって、適切な駆動部、例えばモータ(図示しない)がサンプル流入側を閉鎖するようにバルブ101を作動させて、空気注入口102側を開放させる。次いで空気を空気注入口102から圧入することにより、所定の量の液体サンプルを輸送できるようになる。また図2(b)に示すように、バルブ101の代わりに二つのバルブ106、107を採用することもできる。この場合には、バルブ106を閉鎖してバルブ107を開放した状態で空気注入口102から空気を供給する。次いで、バルブ106を開放してバルブ107を閉鎖した状態で液体サンプルを供給する。次いで、図2(a)と同様に、液だめ103、光学センサ104、検出点105を用いることにより、所定の量の液体サンプルを輸送する。従って、図2(b)の場合にも、少なくとも一つのバルブを用いることにより、所定の量の液体サンプルを輸送できる。なお本発明の液体サンプル調製装置においてはバルブ101として公知のバルブを採用できる。後述する他のディスペンサも同様の構成である。
【0022】
本発明の第一の実施形態に基づく液体サンプル調製装置100はディスペンサ6の液体サンプルの流れに対して下流に第一の段を含んでいる。この第一の段は流路7に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部10とこの分岐部10から延びる二つの流路11、12とを含んでいる。第一の段の二つの流路のうちの一方の流路、本実施形態においては流路12には、ディスペンサ14を介して希釈液供給部13に接続された混合部15が設けられている。さらに第一の段は流路12において混合部15の下流にディスペンサ16を含んでいる。本実施形態においては第一の段に含まれる希釈液供給部13は100倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。すなわち第一の段に含まれる希釈液供給部13の希釈液はディスペンサ14により液体サンプルの99倍の量だけ混合部15に供給される。
【0023】
第一の段に含まれる二つの流路のうちの一方の流路、本実施形態においては流路11は第二の段に接続されている。さらに、ディスペンサ16の下流に位置する流路12は第三の段に接続されている。前述した第一の段と同様に、第二の段は流路11に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部20と分岐部20から延びる二つの流路21、22とを含み、流路22は、ディスペンサ24を介して希釈液供給部23に接続された混合部25と混合部25の下流に位置するディスペンサ26とを含んでいる。さらに、第三の段は流路12に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部30と分岐部30から延びる二つの流路31、32とを含み、流路32は、ディスペンサ34を介して希釈液供給部33に接続された混合部35と混合部35の下流に位置するディスペンサ36とを含んでいる。本実施形態においては、第二の段に含まれる希釈液供給部23は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。第三の段に含まれる希釈液供給部33は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。すなわち第二の段および第三の段に含まれる希釈液供給部23、33の希釈液はディスペンサ24、34により液体サンプルの9倍の量だけ混合部25、35にそれぞれ供給される。
【0024】
図1に示されるように第二の段のディスペンサ26よりも下流に位置する流路22および流路21には混合部28および混合部27がそれぞれ設けられている。これら混合部27、28はディスペンサ42を介してPCR試薬供給部41に接続されている。図1に示されるように、ディスペンサ42と混合部27、28との間には弁43が設けられている。この弁43によって、PCR試薬供給部41からのPCR試薬を混合部27、28の一方にのみ供給するよう設定することができる。
【0025】
同様に、第三の段のディスペンサ36よりも下流に位置する流路32および流路31には混合部38および混合部37がそれぞれ設けられている。第二の段の場合と同様に、これら混合部37、38は弁46およびディスペンサ45を介してPCR試薬供給部44に接続されている。弁46によって、PCR試薬供給部44からのPCR試薬を混合部37、38の一方にのみ供給するよう設定することができる。
【0026】
図1に示されるように、リザーバ集合体51、52が第二の段の流路21、22の混合部27、28よりもさらに下流にそれぞれ設けられている。さらに同様なリザーバ集合体53、54が第三の段の流路31、32の混合部37、38よりもさらに下流にそれぞれ設けられている。図1から分かるように、本実施形態における各リザーバ集合体51、52、53、54においては流路21、22、31、32からの液体サンプルが二つに等量に分けられる分岐部による分岐作用が三段階で行われている。従って、各リザーバ集合体51、52、53、54は八つのリザーバをそれぞれ含んでいる。図1に示す実施形態においては、リザーバ集合体51、52、53、54はそれぞれ八つのリザーバを含んでいるが、少なくとも一つのリザーバを含んでいれば足りる。
【0027】
液体サンプル調製装置100使用時における、1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。使用時、液体サンプル/空気注入口5から試料、すなわち液体サンプルをディスペンサ6により定量しつつ流路7に供給する。次いで液体サンプルは分岐部10において等量に二つに分けられて流路11、12に進入する。流路11に進入した液体サンプルは分岐部20においてさらに等量に二つに分けられて流路21、22に進入する。流路21内の液体サンプルは混合部27内に進入する。弁43は初期にはディスペンサ42と混合部27とを接続するよう設定されているので、液体サンプルはディスペンサ42より定量されたPCR試薬と混合部27内において混合される。次いで、PCR試薬と混合された液体サンプルはさらに流路21内を通ってリザーバ集合体51に進入する。リザーバ集合体51においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われている。従って、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置100によれば、液体サンプルを流路11および流路21に通過させることにより1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0028】
次いで、10倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。前述したように分岐部20において等量に二つに分けられた液体サンプルが流路21と流路22とに進入する。流路22内の液体サンプルは流路22において分岐部20の下流に設けられた混合部25に進入する。希釈液供給部23内の10倍希釈液がディスペンサ24により定量されつつ混合部25に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ26において定量されて混合部28に進入する。前述した弁43はこの場合には混合部28とディスペンサ42とを接続するように設定されている。従って、ディスペンサ42により定量されたPCR試薬供給部41内のPCR試薬が混合部28内に進入する。混合部28において液体サンプルとPCR試薬とが混合される。この液体サンプルはさらに流路22内を通ってリザーバ集合体52に進入する。リザーバ集合体52においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路11および流路22に通過させることにより10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0029】
次いで、100倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。液体サンプルは分岐部10において等量に二つに分けられて流路11、12にそれぞれ進入する。次いで流路12内の液体サンプルは混合部15に進入する。前述したように、混合部15はディスペンサ14を介して100倍希釈用の希釈液供給部13に接続されている。希釈液供給部13内の100倍希釈液はディスペンサ14により定量されつつ混合部15に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ16において定量されて分岐部30に進入する。次いで液体サンプルは分岐部30において等量に二つに分けられて流路31、32に進入する。流路31内の液体サンプルが混合部37に進入する。弁46は初期にはディスペンサ45と混合部37とを接続するよう設定されているので、液体サンプルはディスペンサ45より定量されたPCR試薬と混合部37内において混合される。次いで、PCR試薬と混合された液体サンプルはさらに流路31内を通ってリザーバ集合体53に進入する。リザーバ集合体53においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路12および流路31に通過させることにより100倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0030】
次いで、1000倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。前述したように混合部15を通過した液体サンプルが分岐部30において等量に二つに分けられて流路31、32に進入する。流路32内のサンプルは混合部35に進入する。希釈液供給部33内の10倍希釈液がディスペンサ34により定量されつつ混合部35に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ36において定量されて混合部38に進入する。前述した弁46はこの場合には混合部38とディスペンサ45とを接続するように設定されている。従って、ディスペンサ45により定量されたPCR試薬供給部44内のPCR試薬が混合部38内に進入する。混合部38において液体サンプルとPCR試薬とが混合される。この液体サンプルはさらに流路32内を通ってリザーバ集合体54に進入する。リザーバ集合体54においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路12および流路32に通過させることにより1000倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。これにより、本発明の液体サンプル調製装置100によれば、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成することができる。
【0031】
最終的にリザーバ集合体51、52、53、54に含まれる調製済液体サンプルは公知のPCRリアクタに搬送される。従って、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量をハイスループットで行うことができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程が大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。
【0032】
図3は本発明の第二の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。前述した第一の実施形態においては厳密に二等分するために高精度な流路加工技術を必要とする分岐部を採用しているが、本実施形態においては少なくとも二つに等分するための弁を含んでいる。図3を参照することにより、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成し、各希釈列が八つのリザーバを含む場合の液体サンプル調製装置のマイクロ流路機構を説明する。
【0033】
図3において本発明に基づく液体サンプル調製装置110は液体サンプル/空気注入口5を備えており、前述した実施形態と同様にこの液体サンプル/空気注入口5は空気圧によって液体サンプルを流路7に通してディスペンサ6内に導入する。
【0034】
図3に示されるように、流路7の下流には弁60が設けられており、この弁60から複数、本実施形態においては四つの流路61、62、63、64が延びている。これら流路のうちの流路62には混合部76が設けられている。前述した実施形態と同様にこの混合部76はディスペンサ75を介して希釈液供給部74に接続されている。混合部76よりも下流に位置する流路62および流路61には混合部66および混合部65がそれぞれ設けられている。これら混合部65、66はディスペンサ82を介してPCR試薬供給部81に接続されている。図3に示されるように、ディスペンサ82と混合部65、66との間には弁83が設けられている。この弁83によって、PCR試薬供給部81からのPCR試薬を混合部65、66の一方にのみ供給することができる。本実施形態におけるディスペンサ、混合部、弁および希釈液供給部は前述した第一の実施形態におけるディスペンサ、混合部、弁および希釈液供給部と同様の構成である。
【0035】
さらに流路61、62の混合部65、66よりも液体サンプルの流れに対して下流にはディスペンサ91、92が設けられており、これらディスペンサ91、92のさらに下流には弁95、96がそれぞれ設けられている。図3に示されるように、これら弁は複数のリザーバを含むリザーバ集合体55、56にそれぞれ接続されている。本実施形態における希釈液供給部74は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。
【0036】
弁60から延びる流路63には混合部79が設けられており、この混合部79はディスペンサ78を介して希釈液供給部77に接続されている。さらに弁60から延びる流路64には混合部73が設けられており、この混合部73はディスペンサ72を介して希釈液供給部71に接続されている。混合部73、79よりも下流に位置する流路63および流路64には混合部67および混合部68がそれぞれ設けられている。これら混合部67、68はディスペンサ85を介してPCR試薬供給部84に接続されている。図3に示されるように、ディスペンサ85と混合部67、68との間には弁86が同様に設けられている。この弁86によって、PCR試薬供給部84からのPCR試薬を混合部67、68の一方にのみ供給することができる。
【0037】
流路63、64の混合部67、68よりも液体サンプルの流れに対して下流にはディスペンサ93、94が同様に設けられており、これらディスペンサ93、94のさらに下流には弁97、98がそれぞれ設けられている。図3に示されるように、これら弁は複数のリザーバを含むリザーバ集合体57、58に接続されている。本実施形態における希釈液供給部77は100倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファ、希釈液供給部71は1000倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファをそれぞれ供給するようになっている。
【0038】
動作時、本実施形態においては液体サンプル/空気注入口5から試料、すなわち液体サンプルがディスペンサ6により定量されつつ流路7に進入する。初期には弁60はディスペンサ6と混合部65とを接続するように設定されているので、液体サンプルは流路61を通って混合部65に進入する。弁83は初期にはディスペンサ82と混合部65とを接続するよう設置されているので、液体サンプルは混合部65内においてPCR試薬と混合される。次いで、この液体サンプルはディスペンサ91により定量される。弁95はディスペンサ91とリザーバ集合体55の一つのリザーバとを接続するよう設定されており、液体サンプルはこのリザーバを充填する。次いで、弁95がディスペンサ91と他のリザーバとを接続するように設定された後、液体サンプルはこのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体55に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体55内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、リザーバ集合体55において1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。なお、ディスペンサ91によりリザーバ集合体55内のリザーバの数に相当する回数だけ定量を行うのに足りる量の液体サンプルをディスペンサ6により定量する必要がある。
【0039】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部76とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路62を通って混合部76に進入する。希釈液供給部74内の10倍希釈用希釈液がディスペンサ75を介して混合部76内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部66に進入して、PCR試薬供給部81からのPCR試薬と混合される。当然のことながら、この場合には弁83はディスペンサ82と混合部66とが接続するように設定されている。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ92により定量されて、弁96によりリザーバ集合体56の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体56に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体56内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0040】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部79とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路63を通って混合部79に進入する。希釈液供給部77内の100倍希釈用希釈液がディスペンサ78を介して混合部79内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部67に進入する。弁86は初期にはディスペンサ85と混合部67とが接続されるように設定されているので、PCR試薬供給部81からのPCR試薬と混合される。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ93により定量されて、弁97によりリザーバ集合体57の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体57に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体57内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、リザーバ集合体57において100倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0041】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部73とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路64を通って混合部73に進入する。希釈液供給部71内の1000倍希釈用希釈液がディスペンサ72を介して混合部73内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部68に進入して、PCR試薬供給部84からのPCR試薬と混合される。当然のことながら、この場合には弁86はディスペンサ85と混合部68とが接続するように設定されている。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ94により定量されて、弁98によりリザーバ集合体58の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体58に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体58内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0042】
このようにして、本発明の液体サンプル調製装置110により、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成することができる。
【0043】
最終的にリザーバ集合体55、56、57、58に含まれる調製済液体サンプルは公知のPCRリアクタに搬送される。従って、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量をハイスループットで行うことができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程が大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。
【0044】
希釈液供給量の関係から、ディスペンサ92、93、94においては、弁96、97、98により使用されえない無駄な液体サンプルが生じ、その結果液体サンプル調製装置110全体が大型化する可能性がある。従って、弁60と混合部76、79、73との間に追加のディスペンサを設けてこれら混合部への液体サンプルの進入量を制限することにより、希釈液供給部74、77、71を小型化できると共に、これら混合部およびディスペンサ75、78、72を小型化できる。それゆえ液体サンプル調製装置110全体を小型化することができる。
【0045】
当然のことながら、本発明において前述した希釈率とは異なる希釈率の希釈液供給部を含むことは本発明の範囲に含まれる。この場合にはさらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。また第一の実施形態の場合において、四つ以上の段を含んでいてもよく、この場合にも、段内に追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。さらに、第一および第二の実施形態において液体サンプルまたは希釈液が混合部に進入する順番が逆であっても良く、また同時であってもよい。また、本発明においては希釈液およびPCR試薬をディスペンサにより混合部に供給しているが、本発明の液体サンプル調製装置の形成時に、これら希釈液および/またはPCR試薬を混合部内に所定の量だけ予め封入してもよい。このような場合にはPCR試薬が固体であってもよく、ならびに希釈液供給部および/またはPCR試薬供給部を排除できる。さらに本発明においては一つのPCR試薬供給部によってPCR試薬を二つの混合部に供給しているが、一つのPCR試薬供給部によってPCR試薬を一つの混合部のみに供給すること、および三つ以上の混合部に供給(例えば立体的な流路を用いる)することもできる。一つのPCR試薬供給部を二つ以上の流路に接続する場合には、液体サンプル調製装置全体を小型にすることができる。また、本発明は前述した第一および第二の実施形態により制限されるものではなく、希釈の順序を変更することは本発明の範囲に含まれる。当然のことながら、本発明のサンプル調製装置をPCR−MPN法以外にも適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、本発明の装置によりPCR−MPN法の作業時における時間および労力の大幅な削減を可能でき、スループットを格段に向上させると共にヒューマンエラーを少なくでき、その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できるという共通の効果を奏しうる。
【0047】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができるという効果を奏しうる。
さらに、請求項3および6に記載の発明によれば、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができるという効果を奏しうる。
さらに、請求項4および7に記載の発明によれば、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができるという効果を奏しうる。
【0048】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、弁から延びる複数の流路を備えることにより、高精度な流路加工技術を必要とすることなしに、比較的容易に液体サンプルを等分することができるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。
【図2】(a)ディスペンサの構成を示す図である。
(b)ディスペンサの別の構成を示す図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。
【図4】DNAサンプルをPCR−MPN法により定量する処理の流れを示す工程系統図である。
【符号の説明】
5…液体サンプル/空気注入口
6…ディスペンサ
7…流路
10、20、30…分岐部
11、12、21、22、31、32…流路
13、23、33…希釈液供給部
14、24、34…ディスペンサ
15、25、35…混合部
16、26、36…ディスペンサ
27、28、37、38…混合部
41、44、81、84…PCR試薬供給部
42、45、82、85…ディスペンサ
43、46、83、86…弁
51、52、53、54…リザーバ集合体
55、56、57、58…リザーバ集合体
60…弁
61、62、63、64…流路
65、66、67、68…混合部
71、74、77…希釈液供給部
72、75、78…ディスペンサ
73、76、79…混合部
91、92、93、94…ディスペンサ
95、96、97、98…弁
100、110…液体サンプル調製装置
101…バルブ
102…空気注入口
104…光学センサ
105…検出点
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCR−MPN法(ポリメラーゼ連鎖反応と最確数法の組み合わせ)に用いられる液体サンプル調製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、土壌や汚泥などの複合微生物系内の各生物種のDNAを定量するためにPCR−MPN法が有用であり、さらに特願2001−057282号に記載されるように、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)をキャピラリ内で行うことにより、反応の迅速化および酵素の失活防止が可能となる。現在、主に行われているPCRモニタリング法と比較すると、PCR−MPN法は増幅効率が厳密に一定である必要がなので、共通プライマーを用いることにより複数の生物種をまとめて定量できるという利点を備えている。またPCR−MPN法は増幅効率に影響を及ぼす物質を完全に取り除くことが困難なサンプルにも対応できるので有利である。
【0003】
図4はDNAサンプルをPCR−MPN法により定量する処理の流れを示す工程系統図である。図4に示されるようにPCR−MPN法によってDNA定量を行う際には主に三つの工程を経ている。すなわち第一の工程において生体サンプル源、例えば土壌や汚泥等からのDNAを抽出し(DNA抽出)、第二の工程において多重PCR測定を行い(多重PCR測定)、さらに第三の工程において電気泳動、可視化、画像処理および統計データ解析によりDNA定量データを取得する(DNA定量データ取得)。これら三つの工程のうちの第一の工程および第三の工程は、PCR−MPN法以外の多数のDNA定量手法と共通する技術であり、電気泳動を初めとしてマイクロリアクタの技術開発が進んでいる。従って、第一および第三の工程においては省力化および迅速化が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第二の工程における多重PCR測定はPCR−MPN法に特有の工程であり、他の工程よりも技術開発が遅れている。一般的には第二の工程においては五段階に希釈したサンプルをそれぞれ五つ、多重測定する。従って、一つの検体当たり25回のPCR測定を行っている。PCR−MPN法において精度を高めるためには多重度(PCR本数)をさらに増やす必要がある。このような多重測定をするためにPCRの前処理、すなわち煩雑な希釈列作成、PCR試薬混合、および分注などの作業が必要であり、DNA定量をハイスループットで行うのは困難であった。
【0005】
この前処理工程には、DNAの抽出逐次希釈、PCR用試薬との混合、PCR反応液の分注、分注した反応液のキャピラリへの封入、PCR反応装置へのセット、PCR反応、PCR反応後のキャピラリ開封、反応液吐出を経て、その後電気泳動による増幅確認が含まれる。
【0006】
しかしながら、これら前処理工程のうち、PCR反応および電気泳動のマイクロリアクタは開発されているが、PCR−MPN法をトータルでマイクロリアクタ化した例はない。
【0007】
それゆえ、本発明はPCR−MPN法の工程において、PCR−MPN法の作業時における時間および労力の大幅な削減を可能としてスループットを格段に向上させると共にヒューマンエラーを少なくするために、既存のPCR反応および電気泳動以外の部分をマイクロ流路化するようにして既存のマイクロリアクタと結合可能な液体サンプル調製装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために請求項1に記載の発明によれば、液体サンプル源と、該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する定量供給部と、該定量供給部の下流に位置する段とを具備し、該段は等量分岐部と、該等量分岐部から延びる二つの流路とを含み、該二つの流路のうちの一方の流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部と該合流部の下流に位置する段用定量供給部とを含んでおり、さらに、前記段の下流において前記二つの流路に合流するための少なくとも一つの試薬供給部と、該試薬供給部の下流において前記二つの流路に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置が提供される。
【0009】
すなわち請求項1に記載の発明によって、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量作用のスループットを向上させることができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程を大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。また前述した等量リザーバは八つでありうる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、さらに、前記二つの流路のうちの少なくとも一方に接続される少なくとも一つの追加の段を前記段の下流に具備し、該追加の段は追加の等量分岐部と、該追加の等量分岐部から延びる二つの追加の流路とを含み、該二つの追加の流路のうちの一方の追加の流路は追加の希釈液供給部からの希釈液と合流する追加の合流部と該追加の合流部の下流に位置する追加の段用定量供給部とを含んでおり、前記試薬供給部が最も下流に延びうる流路に合流している液体サンプル調製装置が提供される。
【0011】
すなわち請求項2に記載の発明によって、追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記希釈液供給部と前記追加の希釈液供給部における希釈率が異なるようにした。
すなわち請求項3に記載の発明によって、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む。
すなわち請求項4に記載の発明によって、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、液体サンプル源と、該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する第一の定量供給部と、該第一の定量供給部の下流に位置する第一の弁と、該弁から延びる複数の流路とを具備し、該複数の流路のうちの少なくとも一つの流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部をそれぞれ含んでおり、さらに、該合流部の下流において前記複数の流路に合流するための試薬供給部と、該試薬供給部の下流に位置する第二の定量供給部と、該第二の定量供給部の下流に位置する第二の弁に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置が提供される。
【0015】
すなわち請求項5に記載の発明によって、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量作用のスループットを向上させることができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程を大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。また前述した等量リザーバは八つでありうる。さらに、請求項5の場合には弁から延びる複数の流路を備えることにより、高精度な流路加工技術を必要とすることなしに、比較的容易に液体サンプルを等分することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記希釈液供給部が複数存在する場合には前記各希釈液供給部における希釈率が異なるようにした。
すなわち請求項6に記載の発明によって、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む。
すなわち請求項7に記載の発明によって、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするためにこれら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第一の実施形態に基づく液体サンプル調製装置のマイクロ流路の構成を示す図である。図1を参照することにより、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成し、各希釈列が八つのリザーバを含む場合の液体サンプル調製装置のマイクロ流路機構を説明する。
【0019】
本発明に基づく液体サンプル調製装置100は液体サンプル/空気注入口5を備えており、この液体サンプル/空気注入口5は空気圧によって液体サンプルを流路7に通してディスペンサ6内に導入する。
【0020】
図2(a)および図2(b)はディスペンサの構成を示す図である。図2(a)に示されるようにディスペンサ6は、バルブ101、空気注入口102、液だめ103、および光学センサ104により構成されている。ディスペンサ6はバルブ101と光学センサ104の検出点105との間に存在する液体サンプルの量が取分けるべき量となるように設計されている。従って、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、ディスペンサ6によって定量作用を比較的容易に行うことができる。
【0021】
本発明の液体サンプル調製装置100、110は複数のディスペンサを備えているが、取分けられるべき液体サンプルの量は各ディスペンサに応じて定まり、これらディスペンサはそれぞれ最終的に必要とされる液体サンプルの量から逆算することにより設定されている。初期にはバルブ101の空気注入口102側が閉鎖された状態になっている。光学センサ104は液体サンプルの先頭部分がバルブ101および液だめ103を通って検出点105に差掛かかるときを検出する。光学センサ104における検出作用によって、適切な駆動部、例えばモータ(図示しない)がサンプル流入側を閉鎖するようにバルブ101を作動させて、空気注入口102側を開放させる。次いで空気を空気注入口102から圧入することにより、所定の量の液体サンプルを輸送できるようになる。また図2(b)に示すように、バルブ101の代わりに二つのバルブ106、107を採用することもできる。この場合には、バルブ106を閉鎖してバルブ107を開放した状態で空気注入口102から空気を供給する。次いで、バルブ106を開放してバルブ107を閉鎖した状態で液体サンプルを供給する。次いで、図2(a)と同様に、液だめ103、光学センサ104、検出点105を用いることにより、所定の量の液体サンプルを輸送する。従って、図2(b)の場合にも、少なくとも一つのバルブを用いることにより、所定の量の液体サンプルを輸送できる。なお本発明の液体サンプル調製装置においてはバルブ101として公知のバルブを採用できる。後述する他のディスペンサも同様の構成である。
【0022】
本発明の第一の実施形態に基づく液体サンプル調製装置100はディスペンサ6の液体サンプルの流れに対して下流に第一の段を含んでいる。この第一の段は流路7に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部10とこの分岐部10から延びる二つの流路11、12とを含んでいる。第一の段の二つの流路のうちの一方の流路、本実施形態においては流路12には、ディスペンサ14を介して希釈液供給部13に接続された混合部15が設けられている。さらに第一の段は流路12において混合部15の下流にディスペンサ16を含んでいる。本実施形態においては第一の段に含まれる希釈液供給部13は100倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。すなわち第一の段に含まれる希釈液供給部13の希釈液はディスペンサ14により液体サンプルの99倍の量だけ混合部15に供給される。
【0023】
第一の段に含まれる二つの流路のうちの一方の流路、本実施形態においては流路11は第二の段に接続されている。さらに、ディスペンサ16の下流に位置する流路12は第三の段に接続されている。前述した第一の段と同様に、第二の段は流路11に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部20と分岐部20から延びる二つの流路21、22とを含み、流路22は、ディスペンサ24を介して希釈液供給部23に接続された混合部25と混合部25の下流に位置するディスペンサ26とを含んでいる。さらに、第三の段は流路12に接続されていて二つに等量で分配可能な分岐部30と分岐部30から延びる二つの流路31、32とを含み、流路32は、ディスペンサ34を介して希釈液供給部33に接続された混合部35と混合部35の下流に位置するディスペンサ36とを含んでいる。本実施形態においては、第二の段に含まれる希釈液供給部23は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。第三の段に含まれる希釈液供給部33は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。すなわち第二の段および第三の段に含まれる希釈液供給部23、33の希釈液はディスペンサ24、34により液体サンプルの9倍の量だけ混合部25、35にそれぞれ供給される。
【0024】
図1に示されるように第二の段のディスペンサ26よりも下流に位置する流路22および流路21には混合部28および混合部27がそれぞれ設けられている。これら混合部27、28はディスペンサ42を介してPCR試薬供給部41に接続されている。図1に示されるように、ディスペンサ42と混合部27、28との間には弁43が設けられている。この弁43によって、PCR試薬供給部41からのPCR試薬を混合部27、28の一方にのみ供給するよう設定することができる。
【0025】
同様に、第三の段のディスペンサ36よりも下流に位置する流路32および流路31には混合部38および混合部37がそれぞれ設けられている。第二の段の場合と同様に、これら混合部37、38は弁46およびディスペンサ45を介してPCR試薬供給部44に接続されている。弁46によって、PCR試薬供給部44からのPCR試薬を混合部37、38の一方にのみ供給するよう設定することができる。
【0026】
図1に示されるように、リザーバ集合体51、52が第二の段の流路21、22の混合部27、28よりもさらに下流にそれぞれ設けられている。さらに同様なリザーバ集合体53、54が第三の段の流路31、32の混合部37、38よりもさらに下流にそれぞれ設けられている。図1から分かるように、本実施形態における各リザーバ集合体51、52、53、54においては流路21、22、31、32からの液体サンプルが二つに等量に分けられる分岐部による分岐作用が三段階で行われている。従って、各リザーバ集合体51、52、53、54は八つのリザーバをそれぞれ含んでいる。図1に示す実施形態においては、リザーバ集合体51、52、53、54はそれぞれ八つのリザーバを含んでいるが、少なくとも一つのリザーバを含んでいれば足りる。
【0027】
液体サンプル調製装置100使用時における、1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。使用時、液体サンプル/空気注入口5から試料、すなわち液体サンプルをディスペンサ6により定量しつつ流路7に供給する。次いで液体サンプルは分岐部10において等量に二つに分けられて流路11、12に進入する。流路11に進入した液体サンプルは分岐部20においてさらに等量に二つに分けられて流路21、22に進入する。流路21内の液体サンプルは混合部27内に進入する。弁43は初期にはディスペンサ42と混合部27とを接続するよう設定されているので、液体サンプルはディスペンサ42より定量されたPCR試薬と混合部27内において混合される。次いで、PCR試薬と混合された液体サンプルはさらに流路21内を通ってリザーバ集合体51に進入する。リザーバ集合体51においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われている。従って、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置100によれば、液体サンプルを流路11および流路21に通過させることにより1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0028】
次いで、10倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。前述したように分岐部20において等量に二つに分けられた液体サンプルが流路21と流路22とに進入する。流路22内の液体サンプルは流路22において分岐部20の下流に設けられた混合部25に進入する。希釈液供給部23内の10倍希釈液がディスペンサ24により定量されつつ混合部25に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ26において定量されて混合部28に進入する。前述した弁43はこの場合には混合部28とディスペンサ42とを接続するように設定されている。従って、ディスペンサ42により定量されたPCR試薬供給部41内のPCR試薬が混合部28内に進入する。混合部28において液体サンプルとPCR試薬とが混合される。この液体サンプルはさらに流路22内を通ってリザーバ集合体52に進入する。リザーバ集合体52においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路11および流路22に通過させることにより10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0029】
次いで、100倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。液体サンプルは分岐部10において等量に二つに分けられて流路11、12にそれぞれ進入する。次いで流路12内の液体サンプルは混合部15に進入する。前述したように、混合部15はディスペンサ14を介して100倍希釈用の希釈液供給部13に接続されている。希釈液供給部13内の100倍希釈液はディスペンサ14により定量されつつ混合部15に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ16において定量されて分岐部30に進入する。次いで液体サンプルは分岐部30において等量に二つに分けられて流路31、32に進入する。流路31内の液体サンプルが混合部37に進入する。弁46は初期にはディスペンサ45と混合部37とを接続するよう設定されているので、液体サンプルはディスペンサ45より定量されたPCR試薬と混合部37内において混合される。次いで、PCR試薬と混合された液体サンプルはさらに流路31内を通ってリザーバ集合体53に進入する。リザーバ集合体53においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路12および流路31に通過させることにより100倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。
【0030】
次いで、1000倍希釈液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬の調製を説明する。前述したように混合部15を通過した液体サンプルが分岐部30において等量に二つに分けられて流路31、32に進入する。流路32内のサンプルは混合部35に進入する。希釈液供給部33内の10倍希釈液がディスペンサ34により定量されつつ混合部35に進入し、次いで液体サンプルと混合される。この液体サンプルはディスペンサ36において定量されて混合部38に進入する。前述した弁46はこの場合には混合部38とディスペンサ45とを接続するように設定されている。従って、ディスペンサ45により定量されたPCR試薬供給部44内のPCR試薬が混合部38内に進入する。混合部38において液体サンプルとPCR試薬とが混合される。この液体サンプルはさらに流路32内を通ってリザーバ集合体54に進入する。リザーバ集合体54においては、二つに等量に分けられる分岐作用が三段階で行われることによって、液体サンプルを含む八つのリザーバが形成される。従って、本発明の液体サンプル調製装置によれば、液体サンプルを流路12および流路32に通過させることにより1000倍希釈の液体サンプルをテンプレートとした八つのPCR試薬を調製することができる。これにより、本発明の液体サンプル調製装置100によれば、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成することができる。
【0031】
最終的にリザーバ集合体51、52、53、54に含まれる調製済液体サンプルは公知のPCRリアクタに搬送される。従って、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量をハイスループットで行うことができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程が大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。
【0032】
図3は本発明の第二の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。前述した第一の実施形態においては厳密に二等分するために高精度な流路加工技術を必要とする分岐部を採用しているが、本実施形態においては少なくとも二つに等分するための弁を含んでいる。図3を参照することにより、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成し、各希釈列が八つのリザーバを含む場合の液体サンプル調製装置のマイクロ流路機構を説明する。
【0033】
図3において本発明に基づく液体サンプル調製装置110は液体サンプル/空気注入口5を備えており、前述した実施形態と同様にこの液体サンプル/空気注入口5は空気圧によって液体サンプルを流路7に通してディスペンサ6内に導入する。
【0034】
図3に示されるように、流路7の下流には弁60が設けられており、この弁60から複数、本実施形態においては四つの流路61、62、63、64が延びている。これら流路のうちの流路62には混合部76が設けられている。前述した実施形態と同様にこの混合部76はディスペンサ75を介して希釈液供給部74に接続されている。混合部76よりも下流に位置する流路62および流路61には混合部66および混合部65がそれぞれ設けられている。これら混合部65、66はディスペンサ82を介してPCR試薬供給部81に接続されている。図3に示されるように、ディスペンサ82と混合部65、66との間には弁83が設けられている。この弁83によって、PCR試薬供給部81からのPCR試薬を混合部65、66の一方にのみ供給することができる。本実施形態におけるディスペンサ、混合部、弁および希釈液供給部は前述した第一の実施形態におけるディスペンサ、混合部、弁および希釈液供給部と同様の構成である。
【0035】
さらに流路61、62の混合部65、66よりも液体サンプルの流れに対して下流にはディスペンサ91、92が設けられており、これらディスペンサ91、92のさらに下流には弁95、96がそれぞれ設けられている。図3に示されるように、これら弁は複数のリザーバを含むリザーバ集合体55、56にそれぞれ接続されている。本実施形態における希釈液供給部74は10倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファを供給するようになっている。
【0036】
弁60から延びる流路63には混合部79が設けられており、この混合部79はディスペンサ78を介して希釈液供給部77に接続されている。さらに弁60から延びる流路64には混合部73が設けられており、この混合部73はディスペンサ72を介して希釈液供給部71に接続されている。混合部73、79よりも下流に位置する流路63および流路64には混合部67および混合部68がそれぞれ設けられている。これら混合部67、68はディスペンサ85を介してPCR試薬供給部84に接続されている。図3に示されるように、ディスペンサ85と混合部67、68との間には弁86が同様に設けられている。この弁86によって、PCR試薬供給部84からのPCR試薬を混合部67、68の一方にのみ供給することができる。
【0037】
流路63、64の混合部67、68よりも液体サンプルの流れに対して下流にはディスペンサ93、94が同様に設けられており、これらディスペンサ93、94のさらに下流には弁97、98がそれぞれ設けられている。図3に示されるように、これら弁は複数のリザーバを含むリザーバ集合体57、58に接続されている。本実施形態における希釈液供給部77は100倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファ、希釈液供給部71は1000倍希釈用の希釈液、例えば水またはバッファをそれぞれ供給するようになっている。
【0038】
動作時、本実施形態においては液体サンプル/空気注入口5から試料、すなわち液体サンプルがディスペンサ6により定量されつつ流路7に進入する。初期には弁60はディスペンサ6と混合部65とを接続するように設定されているので、液体サンプルは流路61を通って混合部65に進入する。弁83は初期にはディスペンサ82と混合部65とを接続するよう設置されているので、液体サンプルは混合部65内においてPCR試薬と混合される。次いで、この液体サンプルはディスペンサ91により定量される。弁95はディスペンサ91とリザーバ集合体55の一つのリザーバとを接続するよう設定されており、液体サンプルはこのリザーバを充填する。次いで、弁95がディスペンサ91と他のリザーバとを接続するように設定された後、液体サンプルはこのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体55に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体55内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、リザーバ集合体55において1倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。なお、ディスペンサ91によりリザーバ集合体55内のリザーバの数に相当する回数だけ定量を行うのに足りる量の液体サンプルをディスペンサ6により定量する必要がある。
【0039】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部76とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路62を通って混合部76に進入する。希釈液供給部74内の10倍希釈用希釈液がディスペンサ75を介して混合部76内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部66に進入して、PCR試薬供給部81からのPCR試薬と混合される。当然のことながら、この場合には弁83はディスペンサ82と混合部66とが接続するように設定されている。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ92により定量されて、弁96によりリザーバ集合体56の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体56に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体56内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0040】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部79とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路63を通って混合部79に進入する。希釈液供給部77内の100倍希釈用希釈液がディスペンサ78を介して混合部79内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部67に進入する。弁86は初期にはディスペンサ85と混合部67とが接続されるように設定されているので、PCR試薬供給部81からのPCR試薬と混合される。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ93により定量されて、弁97によりリザーバ集合体57の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体57に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体57内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、リザーバ集合体57において100倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0041】
次いで、弁60の設定を変更してディスペンサ6と混合部73とが接続されるようにする。これによりディスペンサ6により定量された液体サンプルが流路64を通って混合部73に進入する。希釈液供給部71内の1000倍希釈用希釈液がディスペンサ72を介して混合部73内に進入して液体サンプルと共に混合される。次いで、液体サンプルは混合部68に進入して、PCR試薬供給部84からのPCR試薬と混合される。当然のことながら、この場合には弁86はディスペンサ85と混合部68とが接続するように設定されている。次いでリザーバ集合体55の場合と同様に、液体サンプルがディスペンサ94により定量されて、弁98によりリザーバ集合体58の一つのリザーバを充填する。この操作をリザーバ集合体58に含まれるリザーバの数に応じた回数だけ行うことにより、リザーバ集合体58内の全てのリザーバを充填する。従って、本発明の液体サンプル調製装置110によれば、10倍希釈の液体サンプルをテンプレートとしたPCR試薬を調製することができる。
【0042】
このようにして、本発明の液体サンプル調製装置110により、10倍の逐次希釈列を4列(1倍、10倍、100倍、1000倍)作成することができる。
【0043】
最終的にリザーバ集合体55、56、57、58に含まれる調製済液体サンプルは公知のPCRリアクタに搬送される。従って、PCR−MPN法の作業における大幅な時間および労力の削減ができる。多重PCR測定における前処理工程を、マイクロ流路での輸送、混合および分配の形式(以下マイクロ流路化と呼ぶ)を取ることにより自動処理化できるので、DNA定量をハイスループットで行うことができる。さらに結果的にヒューマンエラーを少なくできる。また、既存のマイクロリアクタと結合することにより、上記のDNAの抽出逐次希釈からPCR反応装置へのセットまでの工程が大幅に省力化できる。その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できる。
【0044】
希釈液供給量の関係から、ディスペンサ92、93、94においては、弁96、97、98により使用されえない無駄な液体サンプルが生じ、その結果液体サンプル調製装置110全体が大型化する可能性がある。従って、弁60と混合部76、79、73との間に追加のディスペンサを設けてこれら混合部への液体サンプルの進入量を制限することにより、希釈液供給部74、77、71を小型化できると共に、これら混合部およびディスペンサ75、78、72を小型化できる。それゆえ液体サンプル調製装置110全体を小型化することができる。
【0045】
当然のことながら、本発明において前述した希釈率とは異なる希釈率の希釈液供給部を含むことは本発明の範囲に含まれる。この場合にはさらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。また第一の実施形態の場合において、四つ以上の段を含んでいてもよく、この場合にも、段内に追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができる。さらに、第一および第二の実施形態において液体サンプルまたは希釈液が混合部に進入する順番が逆であっても良く、また同時であってもよい。また、本発明においては希釈液およびPCR試薬をディスペンサにより混合部に供給しているが、本発明の液体サンプル調製装置の形成時に、これら希釈液および/またはPCR試薬を混合部内に所定の量だけ予め封入してもよい。このような場合にはPCR試薬が固体であってもよく、ならびに希釈液供給部および/またはPCR試薬供給部を排除できる。さらに本発明においては一つのPCR試薬供給部によってPCR試薬を二つの混合部に供給しているが、一つのPCR試薬供給部によってPCR試薬を一つの混合部のみに供給すること、および三つ以上の混合部に供給(例えば立体的な流路を用いる)することもできる。一つのPCR試薬供給部を二つ以上の流路に接続する場合には、液体サンプル調製装置全体を小型にすることができる。また、本発明は前述した第一および第二の実施形態により制限されるものではなく、希釈の順序を変更することは本発明の範囲に含まれる。当然のことながら、本発明のサンプル調製装置をPCR−MPN法以外にも適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、本発明の装置によりPCR−MPN法の作業時における時間および労力の大幅な削減を可能でき、スループットを格段に向上させると共にヒューマンエラーを少なくでき、その結果、さまざまな生体サンプルのDNA定量解析に大きく貢献できるという共通の効果を奏しうる。
【0047】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、追加の希釈液供給部を備えることにより、複数種類の希釈率のサンプルを作成することができるという効果を奏しうる。
さらに、請求項3および6に記載の発明によれば、さらに複数種類の希釈率のサンプルを作成することができるという効果を奏しうる。
さらに、請求項4および7に記載の発明によれば、定量供給部の弁と光学センサの検出点との間の液体サンプルを供給できるので、定量作用を比較的容易に行うことができるという効果を奏しうる。
【0048】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、弁から延びる複数の流路を備えることにより、高精度な流路加工技術を必要とすることなしに、比較的容易に液体サンプルを等分することができるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。
【図2】(a)ディスペンサの構成を示す図である。
(b)ディスペンサの別の構成を示す図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に基づくマイクロ流路の構成を示す図である。
【図4】DNAサンプルをPCR−MPN法により定量する処理の流れを示す工程系統図である。
【符号の説明】
5…液体サンプル/空気注入口
6…ディスペンサ
7…流路
10、20、30…分岐部
11、12、21、22、31、32…流路
13、23、33…希釈液供給部
14、24、34…ディスペンサ
15、25、35…混合部
16、26、36…ディスペンサ
27、28、37、38…混合部
41、44、81、84…PCR試薬供給部
42、45、82、85…ディスペンサ
43、46、83、86…弁
51、52、53、54…リザーバ集合体
55、56、57、58…リザーバ集合体
60…弁
61、62、63、64…流路
65、66、67、68…混合部
71、74、77…希釈液供給部
72、75、78…ディスペンサ
73、76、79…混合部
91、92、93、94…ディスペンサ
95、96、97、98…弁
100、110…液体サンプル調製装置
101…バルブ
102…空気注入口
104…光学センサ
105…検出点
Claims (7)
- 液体サンプル源と、
該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する定量供給部と、
該定量供給部の下流に位置する段とを具備し、該段は等量分岐部と、該等量分岐部から延びる二つの流路とを含み、該二つの流路のうちの一方の流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部と該合流部の下流に位置する段用定量供給部とを含んでおり、
さらに、
前記段の下流において前記二つの流路に合流するための少なくとも一つの試薬供給部と、
該試薬供給部の下流において前記二つの流路に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置。 - さらに、前記二つの流路のうちの少なくとも一方に接続される少なくとも一つの追加の段を前記段の下流に具備し、該追加の段は追加の等量分岐部と、該追加の等量分岐部から延びる二つの追加の流路とを含み、該二つの追加の流路のうちの一方の追加の流路は追加の希釈液供給部からの希釈液と合流する追加の合流部と該追加の合流部の下流に位置する追加の段用定量供給部とを含んでおり、
前記試薬供給部が最も下流に延びうる流路に合流している請求項1に記載の液体サンプル調製装置。 - 前記希釈液供給部と前記追加の希釈液供給部における希釈率が異なるようにした請求項2に記載の液体サンプル調製装置。
- 前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の液体サンプル調製装置。
- 液体サンプル源と、
該液体サンプル源からの液体サンプルの流れに対して下流に位置する第一の定量供給部と、
該第一の定量供給部の下流に位置する第一の弁と、
該弁から延びる複数の流路とを具備し、該複数の流路のうちの少なくとも一つの流路は希釈液供給部からの希釈液と合流する合流部をそれぞれ含んでおり、
さらに、
該合流部の下流において前記複数の流路に合流するための試薬供給部と、
該試薬供給部の下流に位置する第二の定量供給部と、
該第二の定量供給部の下流に位置する第二の弁に接続される少なくとも一つの等量リザーバとを具備する液体サンプル調製装置。 - 前記希釈液供給部が複数存在する場合には前記各希釈液供給部における希釈率が異なるようにした請求項5に記載の液体サンプル調製装置。
- 前記定量供給部が少なくとも一つの弁と空気注入口と液溜めと光学センサとを含む請求項5または6に記載の液体サンプル調製装置。
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