JP3621187B2 - オシロメトリック式自動血圧測定装置 - Google Patents

オシロメトリック式自動血圧測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オシロメトリック式自動血圧測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の血圧値を自動的に測定する装置として、たとえば、生体の一部に巻回されるカフの圧迫圧力を所定速度で緩やかに変化させるカフ圧徐速変化期間において、カフにおける生体の脈拍に同期して発生する脈波の振幅の変化に基づいて生体の血圧値を決定するオシロメトリック式自動血圧測定装置がよく知られている。たとえば、特開平6−292660号公報に記載された自動血圧測定装置がそれである。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
ところで、この自動血圧測定装置によれば、上記カフ圧徐速変化期間において、カフの圧迫圧力が緩やかに昇圧させられる場合には、厳密には実際よりも高い血圧値が測定され、カフの圧迫圧力が緩やかに降圧させられる場合には、厳密には実際よりも低い血圧値が測定されることが知られている。その理由としては、たとえばカフの圧迫圧力が緩やかに昇圧させられる場合には、図4に1点鎖線で示されるカフ内の圧力変化を表す基線が脈波の振幅値に合成されることにより、脈波の振幅値が、図4に実線で示されるカフ内の圧力変化がない場合の脈波の最大振幅点(図4のA点)よりも高いカフ内圧力値を有する図4に破線で示されるカフ内に昇圧変化がある場合の脈波の最大振幅点(図4のB点)において読み込まれることから、真の血圧値よりもP(mmHg)だけ高い血圧値が測定されることが挙げられる。
【0004】
本発明は以上のような事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、オシロメトリック式自動血圧測定装置の測定精度を可及的に向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、生体の一部に巻回されるカフの圧迫圧力を緩やかに変化させるカフ圧徐速変化期間において、カフにおける生体の脈拍に同期して発生する脈波の振幅の変化に基づいて生体の血圧値を測定する血圧測定手段を備えたオシロメトリック式自動血圧測定装置において、(a)前記カフ圧徐速変化期間における、例えばその全期間或いはカフの圧迫圧力が所定値だけ変化する期間毎の前記カフの圧迫圧力の変化速度を逐次測定する変化速度測定手段と、(b)変化速度測定手段により測定された変化速度に基づいて、所定の関係から前記脈波の発生時のカフ圧を修正するためのカフ圧修正値をそれぞれ決定するカフ圧修正値決定手段と、(c)カフ圧修正値決定手段により決定されるカフ圧修正値を用いて、前記血圧測定手段において用いられる脈波の発生時のカフ圧を修正するカフ圧修正手段とを、含むことにある。
【0006】
【発明の効果】
このようにすれば、変化速度測定手段により、前記カフ圧徐速変化期間におけるカフの圧迫圧力の変化速度が逐次測定され、カフ圧修正値決定手段により、この変化速度に基づいて、所定の関係から前記脈波の発生時のカフ圧を修正するためのカフ圧修正値がそれぞれ決定されると、カフ圧修正手段によりこのカフ圧修正値を用いて、前記血圧測定手段において用いられる脈波の発生時のカフ圧が修正される。したがって、カフ内の圧力変化を表す上記基線が脈波の振幅値に合成されることにより、脈波の振幅値が実際よりも若干高め或いは低めのカフ圧値を有する点で読み込まれることから、真の血圧値よりも若干高め或いは低めに測定される生体の血圧値が、変化速度の大きさに応じて算出されるカフ圧修正値を用いて、血圧測定に用いられる脈波の発生時のカフ圧が好適に修正されることにより修正されるので、一層正確な血圧値を測定することが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例であるオシロメトリック式自動血圧測定装置8を示す斜視図である。
【0008】
図1において、箱体10には、被測定者の右腕12を差し込むための貫通穴14が設けられており、その貫通穴14内には、袋状の可撓性布およびゴム袋から成るカフ15を内周面に備えて円筒状に保持されたベルト16が配設されている。箱体10の操作パネル20には、起動スイッチ22、停止スイッチ24、プリンタ26、カード挿入口28などが配設され、表示パネル30には、最高血圧表示器32、最低血圧表示器34、脈拍数表示器36、時刻表示器38がそれぞれ配設されている。
【0009】
図2は、上記オシロメトリック式自動血圧測定装置8の回路構成を説明するブロック線図である。図2において、カフ15は、圧力センサ40、切換弁42、および空気ポンプ44と配管46を介して接続されており、この切換弁42は、カフ15内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、およびカフ15内を急速に排圧する急速排圧状態の2つの状態に切り換えられるように構成されている。また、そのカフ15を内周面に備えて円筒状に巻回されたベルト16の一端は固定され、且つ他端は減速機付きDCモータ48により駆動されるドラム50により引き締められるように構成されている。圧力センサ40は、カフ15内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路52および脈波弁別回路54にそれぞれ供給する。
【0010】
上記静圧弁別回路52はローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器56を介して電子制御装置58へ供給する。また、上記脈波弁別回路54はバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SMを周波数的に弁別してその脈波信号SMをA/D変換器60を介して電子制御装置58へ供給する。この脈波信号SMが表すカフ脈波は、被測定者の心拍に同期して図示しない上腕動脈から発生してカフ15に伝達される圧力振動波である。
【0011】
上記電子制御装置58は、CPU62、ROM64、RAM66、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU62は、RAM66の一時記憶機能を利用しつつ予めROM64に記憶された手順に従って入力信号を処理して駆動信号や表示信号などを出力する。すなわち、血圧測定に際しては、CPU62は、予め定められた手順に従って減速機付きDCモータ48を駆動することによりカフ15を生体の上腕部に巻回し、次いで切換弁42を圧力供給状態に切り替え、空気ポンプ44を駆動することによりカフ15の圧迫圧力を徐々に昇圧させ、その徐速昇圧過程において得られる脈波信号SMおよびカフ圧信号SKに基づいてオシロメトリック方式により血圧値を決定し、その血圧値を最高血圧表示器32および最低血圧表示器34に表示させると同時に、記憶装置68の血圧値記憶領域69に順次記憶させる。なお、この記憶装置68は、磁気ディスク、磁気テープ、揮発性半導体メモリ、或いは不揮発性半導体メモリなどのよく知られた記憶装置により構成されている。
【0012】
図3は、上記オシロメトリック式自動血圧測定装置8における電子制御装置58の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図3において、昇圧制御手段80は、まず、切換弁42を圧力供給状態に切り換え、空気ポンプ44を駆動することにより、カフ15の圧迫圧力を目標カフ圧値P(例えば、180mmHg程度の圧力値)まで徐々に昇圧させ、血圧測定終了後は切換弁42を急速排圧状態に切り換えることにより、カフ15の圧迫圧力を急速排圧させる。
【0013】
血圧測定手段82は、カフ15の圧迫圧力を緩やかに昇圧させるカフ圧徐速昇圧期間において、圧力センサ40を介して脈波弁別回路54により採取されるカフ脈波の振幅およびそのカフ脈波発生時のカフ圧を決定すると共にカフ圧軸上のカフ脈波列の振幅の変化に基づいて良く知られたオシロメトリック方式により被測定者の最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBP等を決定する。たとえば、図5に示されるようなカフ圧軸とカフ脈波振幅軸との2次元座標において各カフ脈波の振幅値を結ぶ包絡線を求めると共に、その包絡線の一対の変曲点C、Cを判定し、その変曲点に対応するカフ圧値をそれぞれ最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPとして算出する。
【0014】
変化速度測定手段84は、前記カフ圧徐速昇圧期間において、カフ15の徐速昇圧が開始されてから所定の周期毎に、たとえばカフ15の圧力値が20mmHg昇圧する毎に時間T(sec)とカフ15の圧迫圧力の変化値P(=20mmHg)を順次測定することにより、これらの時間Tと変化値Pに基づいて、カフ15の圧迫圧力の変化速度V〔=(P/T)〕(n=1,2,・・・) (mmHg/sec)を順次算出すると共に順次記憶する。カフ圧修正値決定手段86は、上記変化速度Vに基づいて、たとえば図6に表されるような表からそれぞれのカフ圧修正値ΔP(mmHg)を決定する。カフ圧修正手段88は、それぞれのカフ圧修正値ΔPを、たとえば図5に示されるような2次元座標において、各カフ脈波発生時のカフ圧から減算することにより、実線で示される実際に検出されたカフ脈波列をカフ圧軸上で左側にずらして破線で示される修正されたカフ脈波とすることにより、各カフ脈波の振幅値を結ぶ包絡線を破線で示される修正された包絡線にする。
【0015】
図6は、オシロメトリック式自動血圧測定装置8の電子制御装置58の制御作動の要部を説明するフローチャートである。ステップSA1(以下、ステップを省略する。)では、カード読込み装置70のカード挿入口28へ磁気カード72が挿入されたか否かが判断される。このSA1の判断が否定された場合には本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合にはSA2において磁気カード72に記録されたID信号が読み込まれる。
【0016】
続くSA3では、読み込まれたID信号が記憶装置68の記憶領域に予め登録されたものであるか否かが判断される。このSA3の判断が否定された場合すなわち磁気カード72に記録されたID信号が未登録である場合は,後述のSA15が実行されてカード挿入口28から磁気カード72が送り出される。しかし、このSA3の判断が肯定された場合すなわち磁気カード72に記録されたID信号が登録済である場合は、続くSA4において血圧測定のための起動スイッチ22が操作されたか否かが判断される。
【0017】
このSA4の判断が否定されると肯定されるまで待機させられる。しかし、このSA4の判断が肯定された場合は、昇圧制御手段80に対応するSA5において、切換弁42が圧力供給状態に切り換えられ且つ空気ポンプ44が駆動されてカフ圧Pが予め設定された目標カフ圧P(例えば180mmHg程度の圧力)まで緩やかに昇圧させられるカフ15内の徐速昇圧が開始される。
【0018】
続いて、SA6においては、カフ15の圧迫圧力の昇圧値Pが、徐速昇圧が開始されてから所定の昇圧値たとえば20mmHg以上昇圧させられる毎の何れかの期間に該当したか否かが判断される。この判断が否定された場合は、後述するSA8が実行されるが、この判断が肯定された場合には、変化速度測定手段84に対応するSA7において、カフ15の圧迫圧力が変化値Pが所定の昇圧値たとえば20mmHg以上となるまでにかかった時間Tとこの昇圧値Pに基づいて、カフ15の圧迫圧力の変化速度V〔=(P/T)〕(n=1,2,・・・) (m/s)が順次算出されると共に順次記憶される。
【0019】
次にSA8において、脈波信号SMが読み込まれて脈波が1拍検出されたか否かが判断される。この判断が否定された場合にはSA6乃至SA8が繰り返し実行されるが、この判断が肯定された場合には、血圧測定手段82に対応するSA9において血圧値決定ルーチンが実行される。この血圧値決定ルーチンにおいては、圧力センサ40を介して脈波弁別回路54により採取されるカフ脈波の振幅の変化に基づいて良く知られるオシロメトリック方式により被測定者の最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBP等が決定される。
【0020】
次にSA10において、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPが決定されたか否かが判断される。この判断が否定された場合にはSA6乃至SA10が繰り返し実行される。しかし、この判断が肯定された場合には、続くカフ圧修正値決定手段86に対応するSA11において、前述のSA7において順次算出された各変化速度Vに基づいて、たとえば図6に示されるような表からカフ圧修正値ΔPがそれぞれ決定される。次にカフ圧修正手段88に対応するSA12において、それぞれのカフ圧修正値ΔPが各カフ脈波発生時のカフ圧から減算されることにより、たとえば図5に示されるようにカフ脈波列がカフ圧軸上で左側に移動させられるため、各カフ脈波の振幅値を結ぶ包絡線が修正されることから修正された最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPが求められる。
【0021】
次にSA13において、上記最高血圧値SBP、最低血圧値DBP、および脈拍数HRと測定日時とが記憶装置68の血圧値記憶領域69内に被測定者毎に記憶されると共に最高血圧表示器32、最低血圧表示器34、脈拍数表示器36にそれぞれ表示される。
【0022】
続いて、昇圧制御手段80に対応するSA14において、切換弁42が急速排圧状態に切り換えられることにより、カフ15内の急速排圧が開始される。そして、続くSA15において、上記最高血圧値SBP等が、プリンタ26により記録紙上に表示出力される。そして、続くSA16が実行されることにより、磁気カード72がカード挿入口28から送り出される。
【0023】
上述のように本実施例によれば、変化速度測定手段84により、徐速昇圧が開始されてからカフ15の圧力値が所定の圧力値たとえば20mmHg以上昇圧させられる毎の変化速度Vが逐次測定され、カフ圧修正値決定手段86により、この変化速度Vに基づいて、所定の関係からカフ圧修正値ΔPが逐次算出されると、カフ圧修正手段88により、このカフ圧修正値ΔPが各カフ脈波発生時のカフ圧に加算或いは減算されることにより、たとえば図5に示されるようにカフ脈波列がカフ圧軸上で左右に移動させられるため、各カフ脈波の振幅値を結ぶ包絡線が修正されることから修正された最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPが求められる。したがって、カフ15内の圧力変化を表す前記基線が脈波の振幅値に合成されることにより、脈波の振幅値が実際よりも若干高め或いは低めのカフ圧値を有する点で読み込まれることにより、真の血圧値よりも若干高め或いは低めに測定される生体の血圧値BPが、変化速度の大きさに応じて算出されるカフ圧修正値ΔPを用いて、各カフ脈波の発生時のカフ圧が好適に修正されることにより修正されることから、一層正確な血圧値BPを測定することが可能となる。
【0024】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0025】
たとえば、前述の実施例においては、カフ15の圧迫圧力が所定値、たとえば20mmHgだけ変化する期間毎のカフ15の圧迫圧力の変化速度Vを測定し、それぞれの変化速度Vに基づいて決定されたカフ圧修正値ΔPを、その変化速度Vが測定された期間における脈波の発生時のカフ圧にそれぞれ加算或いは減算することによりカフ脈波列を修正するように構成されていたが、例えばカフ圧徐速変化期間の全期間に渡る変化速度Vに基づいて決定されたカフ圧修正値ΔPを、全ての脈波の発生時のカフ圧に加算或いは減算することによりカフ脈波列を修正するように構成されていても構わない。
【0026】
また、前述の実施例においては、上記カフ圧徐速変化期間においてカフ15の圧迫圧力が緩やかに昇圧させられる場合について説明されていたが、カフ15の圧迫圧力が緩やかに降圧させられる場合においても本発明は適用され得る。この場合には、たとえば図6で示されるような表から求められるカフ圧修正値ΔPを、図5に示される各カフ脈波の発生時のカフ圧値に加算することにより、カフ脈波列をカフ圧軸上で右側へ移動させることにより、カフ脈波列の振幅値を結ぶ包絡線を修正して血圧値を修正する。
【0027】
また、カフ15の圧迫圧力を所定の速度で徐々に昇圧させる場合において、カフ圧修正値決定手段88は、昇圧初期の区間で実際のカフの昇圧速度に基づいてカフ圧修正値を決定し、以降の区間においてそのカフ圧修正値を適用するものであってもよい。
【0028】
本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるオシロメトリック式自動血圧測定装置8を説明する斜視図である。
【図2】図1の実施例の回路構成を説明するブロック線図である。
【図3】図1の実施例の電子制御装置58の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図4】図1の実施例の電子制御装置58の制御作動により検出されるカフ脈波の最大振幅点を示す図である。
【図5】図1の実施例の電子制御装置58の制御作動により検出されるカフ脈波列を表す二次元座標の一例を示す図である。
【図6】図1の実施例の電子制御装置58の制御作動により求められるカフ圧変化速度Vとカフ圧修正値ΔPとの対応関係を示す図である。
【図7】図1の実施例の電子制御装置58の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
8:オシロメトリック式自動血圧測定装置
15:カフ
82:血圧測定手段
84:変化速度測定手段
86:カフ圧修正値決定手段
88:カフ圧修正手段

Claims (1)

  1. 生体の一部に巻回されるカフの圧迫圧力を緩やかに変化させるカフ圧徐速変化期間において、該カフにおける該生体の脈拍に同期して発生する脈波の振幅の変化に基づいて該生体の血圧値を測定する血圧測定手段を備えたオシロメトリック式自動血圧測定装置において、
    前記カフ圧徐速変化期間における前記カフの圧迫圧力の変化速度を逐次測定する変化速度測定手段と、
    該変化速度測定手段により逐次測定される変化速度に基づいて、所定の関係から前記脈波の発生時のカフ圧を修正するためのカフ圧修正値をそれぞれ決定するカフ圧修正値決定手段と、
    該カフ圧修正値決定手段により決定されたカフ圧修正値を用いて、前記血圧測定手段において用いられる脈波の発生時のカフ圧を修正するカフ圧修正手段と
    を、含むことを特徴とするオシロメトリック式自動血圧測定装置。
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