JP3621119B2 - 樹脂モールド品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば、重電機器に使用される樹脂モールド品に係り、特に、内部に導体や埋金などが埋設された高圧絶縁用の樹脂モールド品に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、重電機器の電気絶縁部分や構造部分に広く用いられている高圧絶縁用の樹脂モールド品の材料には、例えば、エポキシ樹脂が用いられ、このエポキシ樹脂は、耐湿性、耐薬品性、寸法安定性、電気的特性等に優れているので、広く用いられている。
【0003】
これらの樹脂モールド品は、成形や注型で製作され、このうち、前者は、反応のやや進んだ半固体の材料を金型に入れ、熱と圧力をかけて所定の形状を得るもので、後者は、樹脂、硬化剤、充てん剤の液状の加熱混合物を真空下で脱泡し、金型に注入して、硬化させる。量産性を必要とする場合には、前者の硬化時間の短い成形が有利であり、大形で厳しい電気的特性を要求される樹脂モールド品には、特に気泡の少ない後者が用いられる。
【0004】
一般に、樹脂モールド品には、金属インサートや真空バルブのような異種の材料が埋め込まれたり、あるいは、沿面距離を確保するためのひだが外周に形成されて外形が複雑となるものが多い。このなかで、汎用の樹脂モールド品であるブッシングの形状を図9の断面図に示す。
【0005】
図9において、軸心に貫設された導体1の外周は注形樹脂7で注型成形され、中間部には取付用のフランジ部7aが形成されている。このような樹脂モールド品は、製品に組み込まれたときに内部と外側に熱的、電気的、機械的、化学的、物理的等の条件の異なったストレスが加わる場合が多い。
【0006】
また、導体が埋設されていない汎用の樹脂モールド品であるがいしの一例を図11に示す。このがいしは、電気機器や導体を固定するためのねじ部6aを有する金属インサート6が注型樹脂7で注型成形されている。このようながいしも、内部と外側に熱的、電気的、機械的、化学的、物理的等の条件の異なったストレスが加わる場合が多い。
【0007】
ところで、近年、エポキシ樹脂を使った注型方法として、量産性を上げるために加圧ゲル化法を採用することが多い。この方法は、注型金型の温度を注型樹脂の温度より上げ、かつ、金型に一定の温度勾配をつけ、その後、注型樹脂を金型の下方から一定の圧力を加えながら金型の内部に注入する。さらに、注型樹脂が完全に注型金型に満たされた後、一定の圧力を加えた状態で注型樹脂を高温で早く硬化させる方法である。
【0008】
この方法の特徴は、金型の下方から樹脂を注入し、先に注入された樹脂は乱流を起こさないため、金型からの熱伝導により後から注入された樹脂より高温となることにより、金型内の樹脂には温度勾配がついて、注入口から最も遠い部分の樹脂の温度が最高で、逆に、注入口付近の樹脂の温度が最低となる。
【0009】
樹脂の硬化は、注入口から最も遠い部分から始まり、注入口に近い樹脂ほど遅くなる。また、注型樹脂は、硬化するときに収縮するが、一定の圧力で加圧されているため、硬化で収縮した分は、まだ硬化していない注型口に近い注型樹脂で補われる。この加圧ゲル化法により、短時間で、収縮による内部ひずみが緩和された、ひけのない優れた特性を備えた樹脂モールド品を得ることができる。
【0010】
この加圧ゲル化法を適用した一例として、磁気浮上鉄道用の地上推進コイルがある。この地上推進コイルは、図13に示すようにレーストラック状になっており、巻回されたコイル状の導体1Aの周囲を注型樹脂7で被覆している。モールドした注型樹脂7の肉厚を均一に保つために、図14に示すような円柱状のスペーサ14を図13に示すように導体1Aのほぼ全域にわたり、所定の間隔で注型用の金型に固定している。
【0011】
このスペーサ14は、注型樹脂7が硬化完了したときには、周りの注型樹脂7と一体化する必要があるため、注型樹脂7と同じ特性であることが望ましい。このため、スペーサ14は通常注型樹脂と同一の樹脂を予め金型で注型するか、または注型樹脂で作ったブロックから削り出されており、導体1Aを保持する剛性が要求されるため完全に硬化させている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このようなブッシングやがいし及び地上推進コイルのように、金属の導体や埋め金を内蔵する部品では、機器の運転時の内側と外側の温度変化や、運転・停止によるヒートサイクル時の熱膨張率の差異により、樹脂と金属の界面に大きな熱応力がかかり、界面の剥離や靭性の低いエポキシ樹脂中にき裂が発生するおそれがある。すると、コロナ特性が低下したり、き裂が進展して破壊にいたるおそれがある。
【0013】
また、外側には、汚損物、溶剤、薬品が付着したり、事故のときには隣設機器の火災等に晒されるおそれがあるのに対し、内側は密閉された状態にあり、このような外的条件から保護されている。
【0014】
さらに、金属インサートには高圧が印加されるのに対し、これが埋設された樹脂とその周囲の空気やSF6 ガスとの界面では、その誘電率、形状等に応じた電界となり、電気的ストレスがかかる。このように、樹脂モールド品においては、内側と外側の要求特性が異なっているが、これらの樹脂モールド品では、この異なる特性要求に対応しなければならない。
【0015】
これらを解決する方法の一つに、異種材料による多段モールド法がある。これは、例えば、前述の導体を埋設したブッシングにおいて、図10に示すように、導体1の周りに柔らかいシリコーンゴム等からなる薄い緩衝層12を形成し、熱応力を低減させる。同様に、インサートを内蔵するがいしにおいては、図12に示すように、金属インサート6の外周に柔らかいシリコーンゴム等からなる薄い緩衝層12を形成し、熱応力を減らす方法である。
【0016】
その後、無機質の充てん剤を充てんしたエポキシ樹脂からなる注型樹脂7で注型、又は、成形する。この方法では、内側の柔らかいゴムの緩衝層12が界面の熱応力を緩和・吸収し、外側の硬い注型樹脂7が、構造材料としての機械的強度、剛性と電気的特性を分担する。
【0017】
ところが、この方法では、エポキシ樹脂7と緩衝層12による新たな界面が形成されることになる。この緩衝層は、エポキシ樹脂によるモールドの前に形成され、硬化させておく必要がある。しかし、一度硬化した緩衝層をモールド樹脂と接着させるのは困難である。例えば、シリコーンゴムを金属インサートの周りに薄く塗って、これを硬化させた後、エポキシ樹脂でモールドすると、熱衝撃に対する強度は向上するが、接着力の低いシリコーンゴムとエポキシ樹脂の界面で剥離を生じ、耐コロナ特性が著しく低下する。シリコーンゴムを硬化させておかなければ、モールド時の高温で流動するので、金属インサート周りの所定の位置に薄く保持しておくことはできない。
【0018】
また、硬度の低いエポキシ樹脂を内側にして、通常のエポキシ樹脂材料でモールドする方法も提案されているが、この方法も、剥離と電気特性の低下、低温時の可とう性エポキシ樹脂の脆化によるき裂の発生のおそれを解消することはできない。
【0019】
以上は、熱的、機械的特性の面であるが、樹脂層中に特性の傾斜をもたせることで、多くの優れた電気的特性を与えることもできる。例えば、誘電率の傾斜をもたせることにより、外部の電界に対し電気的ストレスを緩和することができる。その結果、設計の自由度が増加し、従来得られなかった特性の樹脂モールド品を得ることができる。しかし、異種材料を組み合わせたモールド法は、結果的に接着力の弱い界面が増えるので、熱的、機械的、電気的特性に劣り、現在まで信頼性の高いものは得られていない。
【0020】
一方、図13で示した加圧ゲル化法による地上推進コイルにおいても、後述する作用で、スペーサ14と注型樹脂7の界面での接着強度が低くなるおそれがあり、長期間に亙る通電・停止などによる急激な温度変化、機械的衝撃等により剥離して、モールドコイルの表面の接地層と導体の間で絶縁破壊するおそれもある。このため、スペーサを用いた樹脂モールド品は、長期に亙る電気的特性、機械的特性を維持できないおそれがあり、大形で電気的、機械的要求特性の厳しい樹脂モールド品については、条件が厳しくなる。
【0021】
スペーサと注型樹脂界面の接着強度の低下は、硬化過程における部分的なひけによって発生する。図15は、注型金型11内にセットされたスペーサ14と導体1Aに注型樹脂7が注入され硬化していく過程を示し、高温で、短時間に硬化させる場合には、注型樹脂7の硬化が早く数分間でゲル化する。このとき、注型樹脂7が液体から半固体に変化して収縮する。この収縮は、比較的低い温度でゆっくり固める場合には、非常に少ないので問題とならないが、生産性の高い高温・短時間に硬化する樹脂では、しばしば部分的なひけが形成される。この高温・短時間硬化の欠点を補うために、圧力を加えて未硬化の樹脂をさらに注入し、ひけを防ぐのが、前述した加圧ゲル化法である。
【0022】
しかしながら、大形の樹脂モールド品では、注入口から離れた部分に完全に圧力を加えて、樹脂を補うのは、困難である。例えば、図14で示したスペーサ14は、樹脂の無機材料からなる充填剤を有する図13で示した注型樹脂7と同一の組成であるが、周囲の金属材の注型金型と導体1Aと比べて、熱伝導率が極めて低い。このため、注入された注型樹脂7の硬化反応の駆動力となる熱は、注型金型と導体1Aから注型樹脂7に伝達される。
【0023】
その結果、注型金型と導体1Aの周辺の注型樹脂7の硬化が先行し、スペーサ14の周辺の樹脂硬化は遅くなる。この際、先に収縮する注型金型と、導体1Aの近傍の注型樹脂7に引っ張られ、スペーサ14と注型樹脂7の界面にひけを発生しやすい。また、目視で確認できるようなひけが発生しないまでも、この界面の接着強度は極めて低く、電気的、機械的弱点になる。
【0024】
このひけは、本来加圧で防止できるのであるが、図13で説明した地上コイルのような大形の樹脂モールド品では、注入口から離れた部分の樹脂の硬化過程中に圧力を伝えることはできない。このように、熱伝導の悪いスペーサを使用せざるを得ない大形の樹脂モールド品には、スペーサと樹脂の界面に欠陥部ができやすい。
【0025】
スペーサに要求される特性は、前述したように導体を保持する剛性、および、電気絶縁性と周りを取り囲む注型樹脂との親和性である。例えば、最も汎用で用いられているのは、シリカ粉末を充填したエポキシ樹脂であり、あるいは、六フッ化硫黄ガス中に使われる絶縁樹脂には、アルミナ粉末を充填したエポキシ樹脂を用いている。しかし、これらも、熱伝導率の低い材料であるため前述のような不具合を生ずる。
【0026】
そこで、本発明の目的は、通電・停止や環境の変化に対して、剥離を防ぎ、長期に亙って初期の機械的・電気的特性を維持することのできる樹脂モールド品を得ることである。
【0027】
請求項1に記載の発明は、金属材の外周に絶縁樹脂層が形成された樹脂モールド品において、前記絶縁樹脂層は、前記金属材外周の近傍ではベース材料に充填する柔軟粒子が多く、外周に向かうほどベース材料に充填する前記柔軟粒子が少ないシートを巻き付けて硬化形成され、外周に向かうほど硬度が増していく傾斜機能性を備えていることを特徴とする。
【0028】
請求項2に記載の発明は、金属材の外周に絶縁樹脂層が形成された樹脂モールド品において、前記絶縁樹脂層は、前記金属材外周の近傍に、柔軟粒子を配し、この柔軟粒子の外側にベース材料を注型し、前記ベース材料が前記柔軟粒子の隙間に浸透されて硬化形成されることを特徴とする。
【0037】
【作用】
請求項1に記載の発明においては、金属材の外周に形成する絶縁樹脂層の組成を連続的に変化させると、これに従って硬化後の特性も変化する。金属インサート等の埋設物の表面からシートを巻き、繰り返し巻いていくに従って充填物の組成を徐々に変化させると、巻き上がり後のシートは、中心の埋設物から円周方向(厚み方向)に段階的に変化することになる。これを金型にセットし、加熱して樹脂を溶融させ、硬化させる。硬化した後の樹脂モールド品に対して、内側から外側に向って、特性が変化する、いわゆる傾斜形の機能が付与される。
【0038】
この傾斜機能層は、同種のモールド樹脂のマトリックスで包まれ、しかも、このモールド樹脂は内蔵物の表面から外側まで連続しており、図10で説明した従来の多段モールド法によるブッシングで形成される界面が生じない。厚み方向の特性の変化が急変することもないので、機械的、物理的、電気的に良好な特性が得られる。
【0039】
また、請求項2に記載の発明においては、金属インサート等の埋設物の表面と近傍に付着した柔軟な粒子の周りには、隙間が形成されるので、これを金型に組んで注型することで隙間に注型樹脂が浸透し、柔軟粒子の周りを取り囲む。硬化後の樹脂モールド品の金属インサートの近傍には、柔軟粒子の分布の密度が高く柔軟な緩衝層が形成される。
【0040】
この緩衝層は、注型樹脂のマトリックスで包まれ、しかも、前述の多段モールドのような明瞭な界面は生じない。このため、機械的、物理的、電気的に良好な特性が得られる。
【0047】
【実施例】
以下、図面を用いて、本発明による一実施例を説明する。請求項1に記載の発明において、例えば、柔軟なゴムの微粒子をエポキシ樹脂に充填すると、靭性が向上し、エポキシ樹脂特有の脆さが改善される。その結果、異種界面との熱応力の低減、衝撃強さの向上、欠陥や微小き裂にたいする強度が増加する。
【0048】
しかし、ゴムの微粒子の添加は、静的強度、弾性率を低下させやすいという欠点があるので、金属インサートと樹脂界面等、熱膨張率の差異から大きな熱応力を発生し、破壊の起点となりやすい部分のみ、緩衝効果を有するゴム微粒子濃度の高い材料を用い、その外側の強度、弾性率等構造材料としての特性を必要とする部分にはゴム微粒子を含まない材料でモールドすることで、ヒートサイクル等に強い樹脂モールド品を得る。この際、ゴム微粒子の濃度を厚さ方向に少しずつ変化させることで、明確な界面が形成されることはなく、新たな熱応力の発生や剥離が生じない。また、このためには、マトリックスとして、内側から外側まで同種の樹脂を同時に硬化させることが望ましい。
【0049】
この状態は、シート中のゴム微粒子の充填量を連続的、あるいは、段階的に変化させ、これを金属インサートに順番に巻き付ければよい。図1は、シートの作製方法の一例を示したものである。シート用材料の一例として、シリカ粒子を200phr(per hundred of resin by weight)を充填したビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、CT200 (チバガイギー社の品名))に硬化剤(例えば、酸無水物(HY903 、チバガイギー社の商品名)を加え、よく混合したものをベース材料5とする。
【0050】
これを加熱溶融したものにゴム粒子3(例えば、シリコーン粒子(トスパール、東芝シリコーン社の商品名))をホッパー20にて加え、スタティックミキサ22で混合し、その混合物をシート4にしてベルトコンベア23上に押し出す。ゴム粒子3の添加速度を図示しない流量コントローラで連続的に変えることにより、ベース材料5に添加されるゴム粒子3の濃度を自在に変化させる。例えば、ゴム粒子濃度を20phrから0phrまで連続的にゆっくり減少させることで、長さ方向の組成の異なるシート4を得る。
【0051】
これを用いて図9に示すようなブッシング1を得るときには、図2に示すように、導体1に対してゴム粒子20phr 充填したシート4を先に巻き付ける。常温で固形の樹脂では、50℃程度に少し加熱すると柔らかくなって巻きやすくなる。巻き終わった後の導体1の周辺の断面は、渦巻形となり、厚さ方向のゴム粒子濃度が異なる構成となる。これを金型にセットし、加熱すると樹脂が溶融し、シート4を巻いたときの界面が混ざりあって消失する。
【0052】
さらに硬化反応が進み、完全に硬化が完了したときの断面は、図3に示すように、ベース材料5の内部のゴム粒子3の濃度が連続的に変化し、導体1の近傍の柔らかい緩衝層から外側の硬い構造材料の機能を有する部分まで連続的に特性が変化する傾斜機能性を与えることができる。
【0053】
このように構成された樹脂モールド品においては、急激な温度変化によって、又は、低温に冷却したときに導体1と樹脂の界面に発生する熱ひずみは、柔らかく、靭性に富み、緩衝効果をもつこの緩衝層に完全に吸収され、また、接着強度の低下も緩和され、良好な結果が得られる。
【0054】
また、導体1の表面から外側まで同一材料の樹脂を用い、同時に硬化させることにより、マトリックス樹脂を連続させることができ、明確な界面が形成されないので、硬化収縮による剥離、き裂の発生のおそれもない。
【0055】
このようにして得た本発明による厚さ1mmのシートを用い、厚さ方向に4phr /mmの濃度勾配でゴム粒子の充填量が減少するよう導体回りにシートを巻き付け、ブッシング製造した。この場合、導体1の近傍の厚さ約5mmが20phr から4phr までゴム粒子濃度の連続的に減少する緩衝層となり、その外側がゴム粒子3を含まない硬い部分となる。硬い外側部分には、粉末、液状の材料を注入してもよい。
【0056】
この緩衝層を有するブッシングと従来の一体注型法によるブッシング及び、厚さ5mmの緩衝層と従来の注型を別々に行う二段注型法によるブッシングに対し、0℃・1時間、 100℃・1時間の液相ヒートサイクル試験を10回行ってき裂発生の有無を確認した。その結果、従来法によるブッシングでは、5サイクル課した後に表面に達するき裂が確認された。一方、本発明によるブッシングと二段注型法によるブッシングは、10サイクル課した後においても、き裂の発生は認められなかった。
【0057】
さらに、部分放電試験をコロナ発生開始の放電電荷量を10pCとして、パルス発生頻度50pps で交流を印加した場合、本発明によるブッシングは、40kVにおいてコロナの放電電荷量はすべて10pC未満であった。これに対し、二段注型法によるもののコロナ開始電圧は、同一条件で、14kVまで低下し、本発明品が、従来品に比べて、熱的、機械的、電気的に優れ、信頼性が高いことが実験で確認できた。
【0058】
このように、本発明により、組成を連続的、あるいは、段階的に変化させた樹脂シートを導体などの埋設物に巻き付け、これを金型に組み込み、モールドすることにより、厚さ方向の特性に傾斜をもたせた樹脂モールド品は、優れた熱的、機械的、電気的特性を示した。
【0059】
次に、請求項2に記載の発明を説明する。
【0060】
図4は、導体1の近傍に付着した柔軟粒子の隙間に注型樹脂が含浸し、柔軟粒子を囲んでいる状態を示す図、図5は、樹脂超微粒子9(例えば、高分散性アクリル超微粉体MP−1000、総研化学株式会社製)を直径5〜20μmの柔軟粒子8(例えば、トスパール、東芝シリコーン製)の表面に付着させて樹脂付柔軟粒子10とした状態を示す。この樹脂付柔軟粒子10は、樹脂超微粒子9と柔軟粒子8を混合することにより容易に得られる。
【0061】
図8は、こうして作製した樹脂付柔軟粒子10を導体1に付着させる方法を示す説明図である。導体1の注型面以外をテープでマスキングし、200℃前後に加熱しておく。次に、スプレーガン15を用い、空気圧16により、樹脂付柔軟粒子10を導体1に吹き付ける。
【0062】
導体1の温度が高いため、樹脂付柔軟粒子10の表面の樹脂超微粒子が軟化し、導体1の表面に付着する。樹脂超微粒子と柔軟粒子は、静電気によって付着しており、この吹き付け作業時に分離することはない。
【0063】
このようにして注型面に樹脂付柔軟粒子10に付着させた導体1を図7に示すように金型11に装着し、注型樹脂7{例えば、エポキシ注型樹脂(例えば、ビスフェノール系固形樹脂、CT200 、チバ・ガイギー社の商品名)と硬化剤(例えば酸無水物系硬化剤、HT903 、チバ・ガイギー社の商品名)をベースとして、これに充填剤(例えば、電気絶縁用シリカ粉末、Al、(株)龍森の商品名)を250phr(per hundred of resin by weight)充填した一般的な注型材料}を注入し、注型する。注型樹脂7は、毛細管現象で樹脂付柔軟粒子10の間の隙間に浸透し、導体1の表面に達し、マトリックスとして作用する。例えば、ブッシングの注型では、注型樹脂7が硬化した後、図6に示すように、ブッシング中の導体1の近傍に柔軟粒子の濃度の高い緩衝層12が形成される。なお、図6は、このようにして得られる樹脂モールド品の一例を示す。
【0064】
柔軟粒子は、柔らかさの付与だけでなく、注型樹脂に添加すると靭性を向上させ、熱衝撃に対する強度を向上させる。特にシリカ粉末等と併用すると効果的である。柔軟粒子を直接注型樹脂に混合する方法は、混合物の粘度が激増するので作業性が低下し、注型法には適していない。また、充填量には限界がある。本発明で使用した柔軟粒子をあらかじめ導体の周囲に高密度に配置し、その後、注型樹脂を注入させることにより、強度と緩衝効果を備えた緩衝層12が得られる。
【0065】
急激な温度変化によって、あるいは、低温に冷却した際に導体と樹脂の界面に発生する熱ひずみは、柔らかく、靭性に富み、緩衝効果を備えた緩衝層に完全に吸収され、また、接着強度の低下も著しく緩和され、良好な結果が得られる。
【0066】
また、導体の表面から外側まで同一の樹脂を用い、同時に硬化させることにより、マトリックス樹脂を連続させることができ、明確な界面は存在せず、硬化収縮による剥離、き裂の発生という問題点も完全に解決される。
【0067】
このようにして得られた本発明による厚さ5mmの緩衝層を有するブッシングと従来の一体注型法によるブッシング、厚さ5mmの緩衝層と従来の注型を別々に行う二段注型法によるブッシングに対し、0℃・1時間、 100℃・1時間の液相ヒートサイクル試験を10回行ってき裂発生の有無を確認した。その結果、従来法によるブッシングでは、5サイクル課した後に、表面に達するき裂が確認された。一方、本発明によるブッシングと二段注型法によるブッシングは、10サイクル課した後においても、き裂の発生は認められなかった。
【0068】
さらに、部分放電試験をコロナ発生開始の放電電荷量を10pCとして、パルス発生頻度50pps で交流を印加した場合、本発明によるブッシングは、40kVにおいてコロナの放電電荷量はすべて10pC未満であった。これに対し、二段注型法によるもののコロナ開始電圧は、同一条件で、14kVまで低下し、本発明品が、従来品に比べて、熱的、機械的、電気的に優れ、信頼性が高いことが実験で確認できた。
【0069】
このように、本発明により、表面に樹脂微粒子を分散させた柔軟粒子を導体などの埋設物に吹き付け、付着させた状態で、これを金型に組み込み、注型し、金属インサート近傍に柔軟粒子の濃度の高い緩衝層を備えた樹脂モールド部品は、優れた熱的、機械的、電気的特性を示す。
【0070】
次に、参考例を説明する。注型樹脂として汎用の液状ビスフェノール系エポキシ樹脂を用い、シリカ粉末300phr加え、図13で示した地上推進コイルを製造した。この場合、内側導体部と樹脂層の表面まで肉厚は、スペーサを入れることにより13mm程度に設定した。
【0071】
この注型樹脂を無水フタル酸硬化剤で硬化させた場合、硬化物の熱伝導率は、 1.2×10−3cal/cm・ sec・k である。これに対し、同じ組成のエポキシ樹脂を用い、同じ酸無水物硬化剤で硬化させる系で、シリカ粉末の代わりに、AlN粉末を200phr充填すると、熱伝導率は 4.0×10−2cal/cm・ sec・k となり約33倍となる。
【0072】
発明者らは、従来のスペーサと本発明により作製したAlN粉末充填材料で作製したスペーサを用い、それぞれ地上推進コイルを注型作製した。このコイル表面に導電性塗料を塗布し、内側のコイル導体との間に50kV1分間のAC耐圧試験を実験した。サンプル数各3とした結果、AlN粉末を充填したスペーサを用いたコイルはいずれも所定の耐圧試験を満足したが、従来の汎用のビスフェノール系エポキシ樹脂だけで硬化させたスペーサを用いたコイルは、昇圧中に2個がスペーサと注型樹脂の界面で破壊した。
【0073】
また、0℃×1hと 100℃×1hの繰り返しによる耐水熱衝撃サイクルを10サイクル負荷した後においても、スペーサの周辺の樹脂層の外観は正常であり、また、電気的特性にも変化は認められず、本発明により従来品に比較して非常に優れたコイルを作製することができた。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、金属材の外周に形成する絶縁樹脂層に傾斜機能性を付与しているので、通電、停止、環境変動などの温度変化に対して、金属材と絶縁樹脂層との界面の剥離を防ぎ、長期間に亙って機械的、電気的特性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る樹脂モールド品に用いる絶縁材料を示す図。
【図2】図1の要部を示す拡大詳細図。
【図3】本発明の一実施例に係る樹脂モールド品の部分拡大断面図。
【図4】図3と異なる本発明の一実施例に係る樹脂モールド品の部分拡大断面図。
【図5】図4の部分拡大詳細図。
【図6】本発明の一実施例に係る樹脂モールド品を示す縦断面図。
【図7】本発明の一実施例に係る樹脂モールド品の注型を説明する図。
【図8】本発明の一実施例に係る樹脂モールド品の製造を説明する図。
【図9】従来の樹脂モールド品の一例を示す断面図。
【図10】図9と異なる従来の樹脂モールド品の一例を示す断面図。
【図11】図9、図10と異なる従来の樹脂モールド品の一例を示す断面図。
【図12】図9、図10、図11と異なる従来の樹脂モールド品の一例を示す断面図。
【図13】図9、図10、図11及び図12と異なる従来の樹脂モールド品の一例を示す部分断面図。
【図14】図13の要部を示す斜視図。
【図15】図13の要部を示す説明図。
【符号の説明】
1、1A…導体、3…ゴム粒子。4…シート、5…ベース材料、6…金属インサート、7…注型樹脂、8…柔軟粒子、9…樹脂超微粒子、10…樹脂付柔軟粒子、11…金型、12…緩衝層、14…スペーサ、15…スプレーガン、16…空気圧、20…ホッパー、21…バルブ、22…スタティックミキサ、23…ベルトコンベヤー。
Claims (2)
- 金属材の外周に絶縁樹脂層が形成された樹脂モールド品において、
前記絶縁樹脂層は、前記金属材外周の近傍ではベース材料に充填する柔軟粒子が多く、
外周に向かうほどベース材料に充填する前記柔軟粒子が少ないシートを巻き付けて硬化形成され、
外周に向かうほど硬度が増していく傾斜機能性を備えていることを特徴とする樹脂モールド品。 - 金属材の外周に絶縁樹脂層が形成された樹脂モールド品において、
前記絶縁樹脂層は、前記金属材外周の近傍に、柔軟粒子を配し、
この柔軟粒子の外側にベース材料を注型し、
前記ベース材料が前記柔軟粒子の隙間に浸透されて硬化形成されることを特徴とする樹脂モールド品。
Priority Applications (1)
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