JP3590077B2 - 絶縁樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば、電力機器に使われるレジンがいしなどの絶縁樹脂成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力機器に使われる絶縁樹脂成形品は、絶縁材料や構造材料として多くの機器に用いられているが、なかでも、エポキシ樹脂は、耐湿性、耐薬品性、寸法安定性、電気的特性等に優れているので、従来から広く使用されている。
【0003】
しかし、このエポキシ樹脂は、靭性に劣るので、成形部品の形状によって生じる応力集中部や、微小き裂、異物、硬化剤の不均一などに起因する欠陥やボイド等があると、機械的強度が著しく低下する。また、例えば、図4に示すレジンがいしのように、エポキシ樹脂22の両端に導体固定用の金属インサート20を埋め込んだり、レジンブッシングのように、軸心に金属導体を埋設したときには、電力機器の運転時の内部と表面との温度差や、運転・停止のヒートサイクルで、樹脂と金属との界面のうち、たとえば、図4の応力集中部2に発生する熱応力で、微小なき裂が発生するおそれがある。もし、き裂が発生すると、上述した電力機器の運転による絶縁樹脂成形品の内部と表面の温度差や、運転・停止のヒートサイクルによって、除々に内部に進展して、電機機器の相間短絡や地絡に発展するおそれもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題を解決する方法の一つとして、従来から、異種の注型材料による多段注型法がある。例えば、図4に示すように金属インサート20が埋設された樹脂成形品においては、まず、金属インサート20の周りに柔らかいシリコーンゴム等からなる薄い緩衝層を形成し、その後、この緩衝層の外周に無機質の充てん剤を充てんしたエポキシ樹脂で注型することで、外層のエポキシ樹脂22に加えられた外力を緩衝層で吸収して応力集中部に発生するき裂を防ぐ方法である。
【0005】
しかしながら、この方法では、絶縁樹脂成形品中の緩衝層とエポキシ樹脂の間に新たな界面を形成することとなる。また、緩衝層は、エポキシ樹脂による注型前に形成し、硬化させておく必要がある。ところが、硬化した緩衝層を注型樹脂と接着させるのは非常に困難である。
【0006】
例えば、シリコーンゴムを金属インサートの周りに薄く塗って、これを硬化させた後、その外周をエポキシ樹脂で注型すると、熱衝撃に対する強度は向上するが、接着力のないシリコーンゴムとエポキシ樹脂の界面で剥離し、電気的特性や機械的特性が著しく低下する。しかも、シリコーンゴムを硬化させておかなければ、注型時の高温に耐えられなくて流出するので、金属インサートの周りのシリコーンゴムを所定の位置に薄く保持しておくことはできない。
【0007】
また、可とう性エポキシ樹脂を内側にして、その外周に通常のエポキシ樹脂注型材料で成形する方法も採用されているが、この方法も、剥離と電気的特性の低下、低温時の可とう性エポキシ樹脂の脆化によるき裂の発生を防ぐことはできない。
そこで、本発明の目的は、電界集中部や応力集中部の電気的・機械的な特性を上げることのできる絶縁樹脂成形品の製造方法を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、硬化剤と充てん剤を主剤に混合した絶縁樹脂注形材料を金型に注入して成形する絶縁樹脂成形品の製造方法において、前記金型に前記充てん剤の混合比を変化させた前記絶縁樹脂注形材料を注入して前記充てん剤の混合比の傾斜を形成し、硬化させたことを特徴とする絶縁樹脂成形品の製造方法。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の絶縁樹脂成形品の製造方法において、前記金型を区画材で複数に区画し、この複数の区画に、前記充てん剤の混合比を変化させた前記絶縁樹脂注形材料を前記充てん剤の混合比の傾斜を形成するように注入し、前記区画材を除去して硬化させたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の絶縁樹脂成形品の製造方法において、前記金型に、前記充てん剤の混合比を連続的に変化させた複数の前記絶縁樹脂注形材料を前記充てん剤の濃度の傾斜を形成するように注入し、硬化させたことを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1に記載の発明においては、異なる混合比に充てん剤が混入された絶縁樹脂注型材が注入された各区画の境界は、区画の除去によって消滅し、絶縁樹脂成形品の各部位は、この各部位によって異なる使用条件に対応した特性を発揮することになる。
【0012】
請求項2及び請求項3に記載の発明においては、異なる混合比に充てん剤が混入された絶縁樹脂注型材は連続的に金型に注入され、絶縁樹脂成形品の各部位はこの各部位によって異なる使用条件に対応した特性を発揮することになる。
【0013】
【実施例】
以下、請求項1に記載の発明の絶縁樹脂成形品の製造方法の一実施例を説明する。まず、あらかじめ、ポリエステルフィルム等の区画材で、金型の内部を内側から外側に向けて区画しておく。これに充てん剤の濃度や組成を少しずつ変えた注型樹脂をそれぞれ注入していく。このとき、樹脂主剤と硬化剤の組み合わせを一定にしておくことで、区画材を取り除いた後に同一硬化条件で同時に硬化させる。
【0014】
硬化後の絶縁樹脂成形品の内部には、部位によって、充てん剤の濃度、あるいは、組成の異なる傾斜が形成される。また、同種の注型樹脂をマトリックスとする注型材料を同時に硬化させることにより、各区画の境界面は完全に混合し、界面は消滅する。その結果、界面の形成による剥離や熱的,機械的応力の集中が解消され、電気的,機械的特性に優れた絶縁樹脂成形品となる。
【0015】
図1は、請求項1に記載の発明の絶縁樹脂成形品の製造方法の一実施例を示す説明図である。図1において、まず、エポキシ注型樹脂(本実施例ではビスフェノール系固形樹脂、CT200、チバ・ガイギー社の商品名)と硬化剤(酸無水物系硬化剤、HT903、チバ・ガイギー社の商品名)を基材として、これに充てん剤(電気絶縁用シリカ粉末、A1、(株)龍森の商品名)の充てん量を0から250phr(per handred of resin by weight)まで、 50phrきざみで6通りに変えた注型材料を準備する。
【0016】
次に、このようにして調整した充てん剤1の濃度を変えた注型材料2を図1に示すように、直径の異なる環状の仕切り板4で区切った環状の金型5に耐熱容器3でそれぞれ注入していく。内側の充てん剤1の充てん量を0phr とし、その外側が 50phrその外他が100phr…最外周が250phrとなるように設定する。次に、仕切り板4を取り除くと、環状の界面は消滅して、樹脂は連続したマトリックスになる。このとき、金型5を振動すると各界面の樹脂が混合するので、更に効果的である。最後に所定の条件で加熱して硬化させる。
【0017】
このようにして成形された絶縁樹脂成形品においては、図2に示すように、樹脂6の内部に充てん剤1の濃度の傾斜が形成される。充てん剤1を付与すると、複合則に従って特性が変化する。例えば、熱膨脹率、誘電率は、シリカ粉末充てん量に比例して低下し、弾性率は増加する。
【0018】
次に、シリコーンの微粒子をエポキシ樹脂に充てんする場合を説明する。シリコーンの微粒子はエポキシ樹脂に充てんすると、絶縁樹脂成型品の靭性が上がり、熱衝撃に対する強度も向上する。シリカ粉末等と併用すると特に効果的であるが、混合物の粘度が激増するので、作業性が低下し、注型法には適していない。
【0019】
温度変化により大きな熱応力が特に発生しやすいのは、金属インサートを内蔵する絶縁樹脂成形品において、金属インサートと樹脂の界面であり、この界面から剥離やき裂が発生し、機械的特性と電気的特性が低下する。これは、樹脂とインサートの熱膨脹率の差,樹脂の靭性,熱伝導・熱伝達率及びヤング率等がその因子となるが、前述の柔らかいシリコーンの微粒子を充てんした樹脂を金属インサートの周りに部分的に配置することで解決する。しかし、シリコーンの微粒子が多量に充てんされた樹脂は、一旦固まると、エポキシ樹脂と接着しにくくなって剥離し易くなる。したがって、従来の二段注型法では、十分な特性の絶縁樹脂成形品は得られない。
【0020】
これに対し、本発明では、金属インサートの外周から外側に向かって段階的に充てん剤の充てん濃度を減らし、同時に硬化させる。発明者らは、前述のエポキシ注型樹脂(100phr)及び硬化剤( 30phr)とシリカ粉末(250phr)の一般的な電力用注型材料の構成要素と比率を固定しておき、これにシリコーンゴム(RTV、東芝シリコーンの商品名)を充てんした。これを用いて、図3に示すようなブッシング7を注型した。このとき、金属インサート8の周りを三層(5mm、5〜10mm、10〜15mmの範囲)に区切って、それぞれ、シリコーンゴムを 20phr、 10phr、5phr 加えた材料で緩衝層9を形成した。更にその周りを、シリコーンゴムを加えない基本構成の注型材料2で注型した。
【0021】
このような絶縁樹脂成形品の製造方法で成形された絶縁樹脂成形品においては、急激な温度変化によって、金属インサートと樹脂の界面に発生する熱歪みは、柔らかく靭性に富み緩衝効果を持つシリコーンゴム充てん層( 20phr)で完全に吸収される。これに直接シリコーンゴムを充てんしない材料を注型すると、やはり、熱膨脹率等両者の物性値の差から剥離し易くなる場合がある。この場合には、シリコーンゴムの充てん量を20、10、5phr と段階的に減らしていくと、この間での熱歪み、接着強度の低下も著しく緩和され、良好な結果が得られる。
【0022】
また、金属インサートから外側まで同一の注型樹脂を用い、同時に硬化させることにより、マトリックス樹脂を連続させることができ、明確な界面は存在せず、硬化収縮による剥離、き裂の発生という問題も完全に解消する。さらに、緩衝層の厚さは、それぞれ自由に設定することができ、また、外周にひだ部等が形成される絶縁樹脂成形品においても、複雑な形状となる外周部分は、従来の粘度の低い材料とすることができる。このため、緩衝層のシリコーンゴム充てんによる粘度の増加、注型の作業性の低下を最小限に抑えることができる。
【0023】
このようにして製造した本発明によるブッシングと従来の一体注型法によるブッシング、緩衝層と従来の注型を別々に行う二段注型法によるブッシングの供試品を3個製作し、0℃−1時間、 100℃−1時間の液相ヒートサイクル試験を10回行い、き裂の発生の有無を調べた。その結果、従来の一体化注型法で製造したブッシングでは、5サイクル課した後に表面に達するき裂がすべての供試品で認められた。ところが、本発明による供試品および、二段注型法によるブッシングは、10サイクル課した後においても、き裂の発生は認められなかった。
【0024】
さらに、部分放電試験を行い、パルス発生頻度 50ppsで交流を印加したところ、本発明によるブッシングは、40kVにおいてもコロナ放電による放電電荷量は10pC未満であった。これに対し、二段注型法によるブッシングは、同一条件で、14kVにおいて、コロナ放電による放電電荷量が10pCを超えた。
【0025】
上記実施例では、ヒートサイクルによる電気的・機械的特性の試験結果の例で説明したが、絶縁樹脂成形部品中に混合した充てん剤の材料を変えることで、多くの優れた特性を与えることができる。例えば、充てん剤としてポリエチレンの粉末を使って誘電率の傾斜をもたらせることにより、外部の電界に対して電気的ストレスを緩和することができる。また、瞬間的に温度上昇する導体部を支える絶縁樹脂成形部品には、ポリプロピレンの粉末を充てん剤として採用することで、かれや割れを防ぐことができるので、設計の自由度が増加し、従来製作することのできなかった絶縁樹脂成形部品を得ることができる。
【0026】
また、上記実施例では、仕切り板4を環状として同軸に配置することで、樹脂6中の充てん剤1の濃度の傾斜を同軸状に形成した例で説明したが、絶縁樹脂成形品の用途によって電気的・機械的応力の印加形態が異なるときには、それに応じて例えば扇状にしてもよく、放射状にしてもよい。また、同軸の仕切り板は、渦巻状にして挿脱をワンタッチで行ってもよい。
【0027】
さらに、上記実施例では、電気的・機械的特性を上げた例で説明したが、例えば外層を除いて鉄粉などを充てんして、耐食性にすぐれた電気的,磁気的遮蔽部品を製作することもできる。
【0028】
次に、請求項2記載の発明及び請求項3記載の発明の一実施例を説明する。本発明では、絶縁樹脂成形品を注型する際に、ベースとなる基材と充てん材等の構成を変えた二次材料をスタティックミキサーで混合しながら、注型材料を調整して金型に注入する。基材と二次材料の混合比を流量コントローラで連続的に制御することにより、混合後の注型材料を任意の組成に調整する。この充てん剤の濃度、あるいは、組成を少しずつ変えた樹脂を金型に連続的に注入する。
【0029】
この際、金型に仕切りを設けたり、厚さ方向での注入時間に差を与え、また、基本的な樹脂主剤と硬化剤の組み合わせを一定にしておき、注入後に同じ硬化条件で同時に硬化させる。
【0030】
硬化後の絶縁樹脂成形品の内部には、部品によって充てん剤の濃度や組成の異なる傾斜が形成される。また、同種の樹脂をマトリックスとする注型材料を同時に硬化させることにより、各区画の環境面は完全に消滅する。
その結果、界面の形成による剥離や熱的,機械的応力の集中が解消され、電気的,機械的特性に優れた絶縁樹脂成形品となる。
【0031】
図5は、請求項2と請求項3に記載の発明の絶縁樹脂成形品の製造方法の一実施例を示す断面図である。図5において、まず、エポキシ樹脂(本実施例ではビスフェノール系固形樹脂、CT200、チバ・ガイギー社の商品名)と硬化剤(酸無水物系硬化剤、HT903、チバ・ガイギー社の商品名)を基材として、これに充てん剤(電気絶縁用シリカ粉末、A1、(株)龍森の商品名)の充てん量が零の基本材料11と250phr(per hundred of resin by weight)充てんした二次材料12を準備する。
【0032】
次に、図5に示すように、基本材料11と二次材料12を、流量コントローラ16とスタティックミキサ13から金型14に注入する。このとき,まず、最初は基本材料11だけを注入し、次に二次材料12をスタテックミキサ13で基本材料1に混合して金型14に注入する。二次材料12の混合比は、流量コントローラ6で所定のパターンに従って制御する。最後の所定の条件で加熱して硬化させる。
【0033】
このようにして成形された、絶縁樹脂成形品においては、図6に示すように、樹脂16の内部に充てん剤18の濃度の傾斜が形成される。充てん剤18を付与すると、複合則に従って特性が変化する。例えば、熱膨脹率、誘電率は、シリカ粉末充てん量に比例して低下し、弾性率は増加する。
【0034】
次に、シリコーンの微粒子をエポキシ樹脂に充てんする場合を説明する。シリコーンの微粒子はエポキシ樹脂に充てんすると、絶縁樹脂成形品の靭性が上がり、熱衝撃に対する強度も向上する。シリカ粉末等と併用すると特に効果的であるが、混合物の粘度が激増するので、作業性が低下し、注型用樹脂には適していない。
【0035】
温度変化により大きな熱応力が特に発生しやすいのは、金属インサートを内蔵する絶縁樹脂成形品において、金属インサートと樹脂の界面であり、この界面から剥離やき裂が発生し、機械的特性と電気的特性が低下する。これは、樹脂とインサートの熱膨脹率の差,樹脂の靭性,熱伝導・熱伝達率及びヤング率等がその因子となるが、前述の柔らかいシリコーンの微粒子を充てんした樹脂を金属インサートの周りに部分的に配置することで解決する。しかし、シリコーンの微粒子が多量に充てんされた樹脂は、一旦固まると、エポキシ樹脂と接着しにくくなって剥離し易くなる。したがって、従来の二段注型法では、十分な特性の樹脂成形品は得られない。
【0036】
これに対し、本発明では、金属インサートの外周から外側に向かって段階的に充てん剤の充てん濃度を減らし、同時に硬化させる。発明者らは、前述のエポキシ注型樹脂(100phr)及び硬化剤(30phr)とシリカ粉末(250phr)の一般的な電力用注型材料の構成要素と比率を固定しておき、これにシリコーンゴム(例えば、RTV、東芝シリコーンの商品名)20phrを充てんしたものを二次材料とした。これを用いて、図7に示すようなブッシング17を注型した。このとき、金属インサート10の周りを三層(例えば、5mm、5〜10mm、10〜15mmの範囲)に区切って、それぞれ、基本材料と二次材料の比を0:100,50:50,75:25,100:0となるように流量コントローラで調整した。この結果、ブッシング17には、内部から、シリコーンゴムが20phr、10phr、5phrの緩衝層19が形成された。更にその周りを、シリコーンゴムを加えない基本構成の注型材料16で注型することで、マトリックスである樹脂を内側から外側まで連続した状態で同時に硬化させることができた。
【0037】
このような絶縁樹脂成形品の製造方法で成形された絶縁樹脂成形品においては、急激な温度変化によって、金属インサートと樹脂の界面に発生する熱歪みは、柔らかく靭性に富み緩衝効果を持つシリコーンゴム充てん層( 20phr)で完全に吸収される。これに直接シリコーンゴムを充てんしない材料を注型すると、やはり、熱膨脹率等両者の物性値の差から剥離し易くなる場合がある。この場合には、シリコーンゴムの充てん量を20、10、5phr と段階的に減らしていくと、この間での熱歪み、接着強度の低下も著しく緩和され、良好な結果が得られる。
【0038】
また、金属インサートから外側まで同一の注型樹脂を用い、同時に硬化させることにより、マトリックス樹脂を連続させることができ、明確な界面は存在せず、硬化収縮による剥離、き裂の発生という問題も完全に解消する。さらに、緩衝層の厚さは、それぞれ自由に設定することができ、また、ひだ部等が形成される絶縁樹脂成形品においても、複雑な形状となる外周部分は、従来の粘度の低い材料とすることができる。このため、緩衝層のシリコーンゴム充てんによる粘度の増加、注型の作業性の低下を最小限に抑えることができる。
【0039】
発明者らは、このようにして製造した本発明によるブッシングと従来の一体注型法によるブッシング、緩衝層と従来の注型を別々に行う二段注型法によるブッシングの供試品を3個製作し、0℃−1時間、 100℃−1時間の液相ヒートサイクル試験を10回行い、き裂の発生の有無を調べた。その結果、従来の一体化注型法で製造したブッシングでは、5サイクル課した後に表面に達するき裂がすべての供試品で認められた。ところが、本発明による供試品、および、二段注型法によるブッシングは、10サイクル課した後においても、き裂の発生は認められなかった。
【0040】
さらに、部分放電試験を行い、パルス発生頻度 50ppsで交流を印加したところ、本発明によるブッシングは、40kVにおいてもコロナ放電による放電電荷量は10pC未満であった。これに対し、二段注型法によるブッシングでは、同一条件で、14kVにおいて、コロナ放電による放電電荷量が10pCを超えた。
【0041】
上記実施例では、ヒートサイクルによる電気的・機械的特性の試験結果の例で説明したが、絶縁樹脂成形部品中に混合した充てん剤の材料を変えることで、多くの優れた特性を与えることができる。例えば、充てん剤としてポリエチレンの粉末を使って誘電率の傾斜をもたらせることにより、外部の電界に対して電気的ストレスを緩和することができる。また、瞬間的に温度上昇する導体部を支える絶縁樹脂成形部品には、ポリプロピレンの粉末を充てん剤として採用することで、かれや割れを防ぐことができるので、設計の自由度が増加し、従来製作することのできなかった絶縁樹脂成形部品を得ることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上、請求項1に記載の発明によれば、硬化剤と充てん剤を主剤に混合した絶縁樹脂注形材料を金型に注入して成形する絶縁樹脂成形品の製造方法において、金型を複数に区画し、この区画に、充てん剤の混合比の異なる絶縁樹脂注形材料を注入し、区画を除去して硬化させることで、異なる混合比に充てん剤が混入された絶縁樹脂注型材が注入された各区画の境界を、区画の除去によって消滅させ、絶縁樹脂成形品の各部位が、この各部位によって異なる使用条件に対応した特性を発揮するようにしたので、電界集中部や応力集中部の電気的・機械的特性を上げることのできる樹脂成形品の製造方法を得ることができる。
【0043】
また、請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、硬化剤と充てん剤を主剤に混合した絶縁樹脂注形材料を金型に注入して成形する絶縁樹脂成形品の製造方法において、金型を区画材で複数に区画し、この複数の区画に、充てん剤の混合比を変化させた絶縁樹脂注形材料を充てん剤の混合比の傾斜を形成するように注入し、区画材を除去して硬化させたことで、絶縁樹脂成型品の各部位は、この各部位によって異なる使用条件に対応した特性を発揮するようにしたので、電界集中部や応集中部の電気的・機械的特性を上げることのできる絶縁樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の一実施例を示す部分縦断面図。
【図2】請求項1に記載の発明の一実施例を示す図1と異なる部分縦断面図。
【図3】請求項1に記載の発明の作用を示す縦断面図。
【図4】従来の絶縁樹脂成形品の一例を示す縦断面図。
【図5】請求項2及び3に記載の発明の一実施例を示す説明図。
【図6】請求項2及び3に記載の発明の作用を示す断面図。
【図7】請求項2及び3に記載の発明の作用を示す図6と異なる説明図。
【符号の説明】
1…充てん剤、2,15…注形材料、3…耐熱容器、4…仕切り板、5,14…金型、6,16…樹脂、7,17…ブッシング、8,10…金属インサート、9…緩衝層、11…基本材料、12…二次材料、13…スタティックミキサ。
Claims (3)
- 硬化剤と充てん剤を主剤に混合した絶縁樹脂注形材料を金型に注入して成形する絶縁樹脂成形品の製造方法において、前記金型に前記充てん剤の混合比を変化させた前記絶縁樹脂注形材料を注入して前記充てん剤の混合比の傾斜を形成し、硬化させたことを特徴とする絶縁樹脂成形品の製造方法。
- 前記金型を区画材で複数に区画し、この複数の区画に、前記充てん剤の混合比を変化させた前記絶縁樹脂注形材料を前記充てん剤の混合比の傾斜を形成するように注入し、前記区画材を除去して硬化させたことを特徴とする請求項1記載の絶縁樹脂成形品の製造方法。
- 前記金型に、前記充てん剤の混合比を連続的に変化させた複数の前記絶縁樹脂注形材料を前記充てん剤の濃度の傾斜を形成するように注入し、硬化させたことを特徴とする請求項1記載の絶縁樹脂成形品の製造方法。
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