JP3620922B2 - 熱伝導率可変の断熱材およびその使用方法 - Google Patents

熱伝導率可変の断熱材およびその使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅用等の窓材としての透明な断熱材、建材として住宅の壁に用いる断熱材、冷蔵庫の断熱材、また徳利のように加熱と保温、加熱浄水型冷水器等の加熱、保温、冷却、保冷を同じ容器中で行う家庭用調理用容器等に用いられる熱伝導率可変の断熱材、その使用方法、およびの断熱材への気体充填方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の断熱材としては、壁用としてはグラスウールを埋め込んだボード、窓用としては内部に空気層が形成された二重窓、内部を真空にした二重窓等が用いられていた。
一方、加熱浄水を行った後冷却を行う冷水器にも断熱材は用いらていたが、加熱後、冷却する前に放冷するために断熱解除をする機能は有していなかった。
また、冷蔵庫等の断熱材には、ウレタン等の発泡断熱材が用いられてきたが、断熱を解除する機能はなかった。
また、発泡ウレタンを用いた断熱材中で、発泡後に二酸化炭素をエポキシ化合物と反応させてカーボネートとして固定することで断熱性の高い断熱材を得ることが提案されている(特開平7ー53757号公報、特開平7ー173314号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上で述べた建築材料としての断熱材は、壁材や窓材があるが、外気が20℃程度であれば断熱の必要がなく、それから大きく外れる場合には断熱の必要が生じてくる。特に、外気温の変動大きい季節あるいは地方では、室温が20℃から外れているときに、外気が20℃程度になることがあり、この場合は、断熱の解除を行うことが、空調の省エネルギ−に効果的である。
また、加熱浄水型冷水器でも、省エネの観点から、加熱、保冷時には断熱し、冷却初期には水の温度が高いために積極的に熱を逃がすことが好ましい。また、冷蔵庫においても霜とり時等には、断熱を解除して室内の熱を取り込みやすくすることが好ましい。
しかし、断熱とその解除が可能な断熱材がないため、上のような要請に応えることができなかった。
本発明は、以上に鑑み、熱伝導率可変の断熱材を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材は、伝熱方向に積層した2個の中空の断熱層を有し、各々の断熱層の内部が互いに熱伝導率の異なる気体により満たされ、かつ前記断熱層の厚みが可変に構成されている。
また、本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材は、断熱材全体の厚みが一定で、断熱層中の気体の圧力が大気圧以下であることが好ましい。
また、本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材は、一つの断熱層内部が主としてキセノン、クリプトンのいずれかで満たされるか、断熱層内の気体の圧力が低いために実質的に真空状態にあり、かつ/あるいは他方の断熱層内部がヘリウムあるいは水素で満たされていることが好ましい。
【0005】
本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材は、熱伝導率の低い気体で満たされた断熱層の厚みを薄くすることによって断熱材の断熱性を下げ、熱伝導率の低い断熱層の厚みを増加させることによって断熱材全体の断熱性を上げることで、断熱材の断熱性を調整することができる。
【0006】
本発明の第二の熱伝導率可変の断熱材は、上板と下板の間に中空の閉じた断熱層が形成され、前記上板および下板の各々から複数の伝熱板が前記断熱層内部へ向かって突出して形成され、前記上板の伝熱板と下板の伝熱板とを可逆的に接触できるように構成されている。
この第二の熱伝導率可変の断熱材においては、上板からの伝熱板と下板からの伝熱板を可逆的に接触させて断熱状態の制御が行える。
【0007】
本発明の第一および第二の熱伝導率可変の断熱材への気体の充填方法では、断熱層中を二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素固定化剤と二酸化炭素で希釈された気体あるいは二酸化炭素で置換し、前記二酸化炭素を固定することにより、前記断熱層中の中空部を前記気体あるいは二酸化炭素で大気圧以下の分圧で充填する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材の構成を、典型的な例を模式的に示した図1を参照して説明する。
この断熱材1は、断熱性材料からなる容器として構成され、その内部は上下に可動できる仕切り板2によって中空の断熱層3と断熱層4とに仕切られ、断熱層3の内部には熱伝導率の低い気体が満たされ、断熱層4の内部には前記の気体よりも熱伝導率の高い気体が満たされている。そして、仕切り板2を上下することによって、断熱層3、4の厚みを変化させることができる。
図1では、伝熱方向に2個の断熱層を積層した例を示しているが、3個以上の断熱層を積層していても、その厚みが可変であれば同様の機能を持ち得る。また、厚みの変化がない場合でも、その断熱性が他の断熱層に比較して特に高くなければ差し支えない。また、断熱層は気体で満たされているが、気体の圧力が極端に低い場合には、気体の熱伝導が無視できる程度になることもある。このように、気体は存在するものの実質的に真空状態とみなされる場合も本発明に含まれる。
【0009】
上記の本発明の第一の断熱材の断熱性の変化は、断熱性能が断熱層の厚さが厚くなれば大きくなることで説明できる。これは、断熱層中の気体の圧力が極端に低く真空状態とみなされる場合を除けば、厚さの変化に伴う体積変化で圧力減少が生じても、気体の熱伝導率は減少せず、単位厚さ当たりの断熱性能は同じであるという一般則に基づくものである。従って、一定量の気体を封じ込んだ厚み可変の断熱層を有する本発明の第一の断熱材の構成を持つことで、断熱層の厚みを変えて体積を変化させる場合に、新たに気体を充填あるいは排気する必要なしに、断熱材全体の断熱性を調整することが可能となる。
【0010】
次に、本発明の第一の熱伝導率可変の断熱材の使用方法を説明する。
断熱材として断熱性の高い状態にしておきたい場合は、図1(b)のように、熱伝導率の低い気体で満たされている断熱層の厚みを増加させて体積増加を図る。また、断熱する必要のない時には、図1(a)のように、熱伝導率の低い気体が封入されている断熱層の体積を減少させるために、該当する断熱層の厚みを薄くする。
図1の構成では、断熱層3と4とは、一方を厚くすれば他方は薄くなるが、両者の厚みを独立に可変できる構成の場合は、断熱性を高めようとするときは、熱伝導率の高い気体で満たされている断熱層の厚みを厚くし、断熱する必要のない時には、熱伝導率の高い気体で満たされている断熱層の厚みを薄くすることも、相対的には小さいが効果があることは言うまでもない。
【0011】
厚みを変化させる手段に関しては、断熱材全体の厚みを一定にして断熱層間を区分する仕切り板を移動させる方法が最も簡単でエネルギーを必要としない。また、断熱層間の厚みの割合が変化するだけで、断熱材の外寸が変わらないことは、使用上の利便性の観点からも好ましい。仕切り板移動のための駆動力としては、機械的な力、断熱層内部の気体の圧力変化あるいは磁力等を用いることが可能であり、これらは、外部からの気体の侵入、断熱層間の気体の混合が避けられる範囲内で、特に制限を受けるものではない。もちろん、断熱材の外寸を一定にして仕切り板を移動させる以外にも、断熱材側面を柔軟性があり、伸縮可能な構造として断熱材の上板と下板間の距離を変化させることももちろん可能である。
また、本発明の第一の断熱材では、その断熱層中の気体の圧力が大気圧以下であることが好ましい。これは、断熱層中の気体の圧力が高いと、断熱層中の厚みを薄くする際に、封入してある気体の圧力が高くなり圧縮に困難を伴うためでる。断熱層の厚みが、最も厚くなった時に10mmHg〜1/10mmHg程度以下の圧力であれば、実質的に十分な圧縮が可能である。また、大気圧以下で少量の気体を充填するために気体がキセノンやクリプトンのように高価な場合、あるいは水素のように危険な場合には、順にコストの削減、安全性の向上につながる効果もあるため上記のように少量を用いることが好ましい。
【0012】
さらに、熱伝導率の高い断熱層の内壁の少なくとも一方に凹凸構造があることが好ましい。図2では、熱伝導率の高い気体が充填されている断熱層3の内側に面する仕切り板2の表面に凹凸部2aが形成されている。この場合、熱伝導率の低い気体の充填されている断熱層3の厚みを薄くし断熱材全体の断熱性を下げようとする場合に、断熱層3の体積が0になる前に内壁同士が接触するために、圧縮に伴う困難を避けることができる。
【0013】
本発明の第一の断熱材においては、一方の断熱層に含まれる気体の熱伝導率がより高く、他方の断熱層に含まれる気体の熱伝導率がより低いことが、断熱時の高い断熱性と断熱解除時の低い断熱性が実現できるために好ましい。高い断熱性を実現するための気体として、熱伝導率が低く毒性のないキセノン、クリプトンが好ましい。トリフルオロメチルアイオダイド等のフッ素化ヨウ化炭化水素等も低熱伝導率の気体として用いることができる。その他、必要な断熱性に応じて適当な熱伝導率を有する気体を用いることは可能である。高い断熱性を実現するためには、断熱層中に他の気体が存在する場合でも気体の圧力が低いために実質的に気体による熱伝導が無視できる状態も利用できる。この状態を、実質的な真空状態と表現することにするが、実質的な真空状態に達するには、0.0001mmHg程度以下の低い圧力にする必要がある。また、他の熱伝導率の高い断熱層の中空部がヘリウムあるいは水素で満たされていることが、その熱伝導率の高さから特に好ましい。水素を用いる場合は、大気圧より低い圧力で空気と混じった場合にでも爆発が起きないように0.04気圧未満の圧力で満たされていることが好ましい。
【0014】
次に、本発明の第一の断熱材への気体充填方法について説明する。
まず、各断熱層中を二酸化炭素あるいは二酸化炭素で希釈された気体で置換する。その後に、二酸化炭素固定化剤と二酸化炭素あるいは前記の二酸化炭素で希釈された気体を封入して、二酸化炭素のみを二酸化炭素固定化剤の作用により固定する。このように、あらかじめ二酸化炭素で置換することで高性能の真空ポンプを使わなくても、断熱層中の中空部を前記気体により大気圧以下の圧力でしかも空気の混入をさけて高純度の充填が可能になる。
なお、本発明で用いられる二酸化炭素固定化剤は、エポキシ化合物と二酸化炭素固定触媒から構成され、エポキシ化合物は二酸化炭素と反応することで環状カーボネートとなって固定される。
【0015】
二酸化炭素固定触媒としては、金属ハロゲン化物とオニウム塩の組合せ、あるいはオニウム塩が単独で用いらる。金属ハロゲン化物としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化銅、塩化鉄、塩化コバルト、塩化マンガン、塩化クロム、臭化リチウム、塩化リチウムに加えて、ナトリウム、カリウムのハロゲン化物等がある。また、ハロゲン化物以外にも、亜鉛や遷移金属の錯体もオニウム塩との併用で用いられる。オニウム塩としては、アンモニウムハライド、ホスホニウムハライド、スルホニウムハライドなどが用いられ、エポキシ化合物との相溶性が良いという点で炭素数4以上のアルキル鎖を有したものが好ましい。例えば、テトラノルマルブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルノルマルブチルアンモニウムアイオダイド等がある。
エポキシ化合物としては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、へキシレンオキシド等のアルキレンオキシドの他、グリシドール、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリシジルトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルフタルイミド、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等がある。
その他二酸化炭素固定化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物や、ゼオライトのような吸着剤を用いることもできる。
【0016】
次に、本発明の第二の熱伝導率可変の断熱材の構成を、典型的な例を模式的に示した図3を用いて説明する。
断熱性材料からなる側板5、5の間に、上板6と下板8が取り付けられて中空の閉じた断熱層が形成され、上板6および下板8の各々からそれぞれ複数の伝熱板7および9が前記断熱層内部へ向かって突出して形成されている。そして、上板6の伝熱板7と下板8の伝熱板9とを可逆的に接触できるように構成してある。伝熱板7と9とは、最も簡単には、下板8あるいは上板6を僅かにずらすことで、あるいは回転させることで可逆的に接触させることが可能である。図3では、下板8を水平方向にずらすことにより伝熱板9を伝熱板7に接触させることができる。
伝熱板が接した状態では断熱が解除され、伝熱板が離れた状態では、充填された気体により断熱が保たれる。ここでは伝熱板は、上板、下板に垂直に形成されているが、垂直である必要はない。また、横方向にずらすことで伝熱板が接触するが、縦方向へずらして接触するように、伝熱板間のギャップが垂直方向にとられる場合もある。その場合、断熱層内が大気圧あるいはそれ以上の圧力であれば、伝熱板を引き離すために大気圧に抗して大きな仕事をする必要はないため好ましい。
断熱層内部は、断熱解除時の断熱性が高く保たれるように真空状態かキセノン、クリプトン等の熱伝導率の低い気体で充填されていることが好ましい。また、充填されている気体の圧力が低いことが、コストの面、あるいは可燃性、毒性等の危険性の低減の観点からも好ましい。断熱層中での気体は10mmHg程度あれば不純物の影響を受けにくいために、それ以下の圧力であることが好ましい。なお、この第二の熱伝導率可変の断熱材への気体の大気圧以下の圧力での充填も、既に述べた第一の熱伝導率可変の断熱材の場合と同じ方法で行うことができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。以下の実施例では、気体を封じ込めるためにアルミラミネートフィルムAおよびBを用いた。その構成は、アルミラミネートフィルムAが/12ミクロン厚のポリエチレンテレフタレ−ト層/13ミクロン厚のポリエチレン層/30ミクロンのアルミ層/40ミクロン厚のポリエチレン層/の4層構造となったものであり、アルミラミネートフィルムBが、/40ミクロン厚のポリエチレン層/12ミクロン厚のポリエチレンテレフタレ−ト層/13ミクロン厚のポリエチレン層/23ミクロンのアルミ層/の4層構造を持つものである。しかし、高分子の種類や厚さ、金属の種類は、気体の透過を防ぐことができ適度の柔軟性を有する材料ならば、特にこれらに限られるものではない。
【0018】
《実施例1》
本実施例では、2つの断熱層が設けられ、一方の断熱層が水素で、他方の断熱層がキセノンでそれぞれ満たされた透明な第一の断熱材と、その気体の充填方法について述べる。
図4は本実施例の断熱材の断面図である。両側面に発泡ウレタンの外壁11、11を配し、上下に厚さ4mmのガラス板12、13を固定し、ガラス板12と13との間には厚さ2mmのガラス板からなる仕切り板14が配してある。発泡ウレタン側板11の内側とガラス板12の内側の端部は、上記アルミラミネートフィルムAからなるフィルム15で封じられている。また、仕切り板14の端部からガラス板13にわたっては、同じく上記アルミラミネートフィルムAからなるフィルム16で封じられている。ここで、ガラス板12と仕切り板14との間に形成される厚さtmmの中空の断熱層24にはキセノンが充填され、ガラス板13と仕切り板14との間に形成される厚さtmmの中空の断熱層には水素が充填されている。ここで、t+t=5mmである。断熱層24と25の間を実質的に仕切っている仕切り板14には、永久磁石22が取り付けられており、発泡ウレタンの側板11の下部に埋め込まれている電磁石23との反発力、引力で仕切りガラス板14が上下に移動して、断熱層24、25の厚みが変化するようになっている。
【0019】
また、断熱層25内には、発泡ウレタン側板11の凹部に対応する位置に、二酸化炭素固定化剤タンク17を有し、同じく断熱層24内には二酸化炭素固定化剤タンク26を有する。また、断熱層24は、ガラス製の気体注入口18および排出口19を有する。同様に断熱層25は、ガラス製の気体注入口20および排出口21を有する。これらの気体注入口18、20および排出口19、21にはバルブが備えてある。二酸化炭素固定化剤タンク17、26には、二酸化炭素固定化剤としてテトラノルマルブチルアンモニウムブロマイド、塩化亜鉛、およびグリシジルフタルイミドのモル比4/1/20の混合物が入っている。二酸化炭素固定化剤の量としては、断熱層24およ25を1気圧で満たす二酸化炭素のモル数の2倍に相当する量のグリシジルフタルイミドを含有する量を、二酸化炭素固定化剤タンクに入れてある。
断熱層25への水素の充填に際しては、注入口20を開けて二酸化炭素を注入しつつ排出口21からフロ−させる。その後、二酸化炭素で1%に希釈された水素を導入して注入口20と排出口21を封じる。
断熱層24についても、断熱層25と同様に二酸化炭素でフローした後、二酸化炭素で1%に希釈したキセノンを封入する。
【0020】
上記のように気体を封入した3日後に、断熱状態と断熱解除状態の断熱性を比較した。断熱剤中のガラス板を永久磁石と電磁石の反発力を用いて断熱層24の厚みを増加させた。同様に、電磁石を用いて断熱層25の厚みを増加させた。各々の状態について、上面を40℃、下面を10℃に保ち熱流の相対量を測定したところ、断熱状態の熱流は、断熱解除状態の23%であった。
このように、高性能な真空ポンプを使わずに、断熱性能の制御が可能な透明断熱体の製造が可能になった。これは、断熱層に気体を封入した後、二酸化炭素が固定され、減圧状態のキセノン、水素が残ったためであると考えられる。
また、上述方法と同じ方法でキセノンの代わりに空気を断熱層25に封入した場合、断熱時と断熱解除時の熱流量を相対的に比較したところ、断熱状態の熱流は、断熱解除状態の32%であり、良好な断熱性の制御が可能であった。
【0021】
《実施例2》
本実施例では、第一の断熱材について、実施例1の仕切り板14の上部に、高さ1mm、幅2mmの凸条を2mm間隔で付けたものを用いた。断熱層への封入気体は水素とキセノンを用い、上述の仕切り板の構造以外は、実施例1と同様の構成の断熱材を用い、同様に気体を封入した。得られた断熱材は実施例1の方法で断熱時と断熱解除時の熱流量を相対的に比較したところ、断熱状態の熱流は、断熱解除状態の20%であった。このように断熱時と断熱解除時の熱流の差が大きくなったのは、主として断熱解除状態の仕切り板と上部ガラス板の接触面積が増加し、熱流が増加したためと考えられる。
【0022】
《実施例3》
本実施例では、2つの中空の断熱層が設けられ、一方がヘリウムで、他方が真空状態となった第一の断熱材について述べる。
図5は本実施例の断熱材の断面図である。真空状態にあるガラス容器31中には、上記アルミラミネートフィルムBからなる袋36および袋の開口部を封じたアルミ板製の仕切り板33が挿入されている。そして、仕切り板33の上部が実質的に断熱層38となり、袋36の内部が断熱層39となる。断熱層38は真空状態にあり、断熱層39はヘリウムが減圧状態で封入されている。ヘリウムは、断熱層39の体積が最大になったときに分圧が5mmHgになるように封入してある。ここで、断熱層39の体積が最大になるときとは、仕切り板33を上部へ動かし、仕切り板33がガラス容器内部の天上部に接触したときのことである。断熱層38と39の間を実質的に仕切っている仕切り板33には、永久磁石34が取り付けられており、ガラス容器の下部に埋め込まれている電磁石35との反発力、引力で仕切り板33が上下に移動して、断熱層38、39の厚みが変化するようになっている。
【0023】
断熱材への気体の封入は次のように行った。仕切り板33が固定された袋36の開口部の注入口37をとおして袋36を真空ポンプで真空にし、ヘリウムをガラス容器の体積の1/20注入して、注入口37を熱シールして封じた。これを、注入口32からガラス容器31内へ挿入し、注入口32をとおして、真空ポンプでガラス容器内を排気して真空状態にし、真空ポンプで引きつつ注入口32を加熱して封じた。40はその封じた部分を表す。
実施例1と同様の方法で断熱時と断熱解除時の熱流量を相対的に比較したところ、断熱状態の熱流は、断熱解除状態の18%であった。このように断熱時と断熱解除時の熱流の差が大きいのは、ヘリウムが充填された断熱層39の熱伝導率に対して、断熱層38内が真空状態に近くなり断熱性が高いことに起因し、これらが仕切り板33の移動によって切り替えられているためと考えられる。
【0024】
《実施例4》
本実施例では、第二の断熱材について述べる。
断熱材は基本的には図3と同じ構成とした。すなわち、鉄製の伝熱板7を一体にした鉄製の上板6と、同じく鉄製の伝熱板9を一体化した下板8とを、アルミラミネートフィルムで包まれ発泡ウレタン製の側板5、5に組み込んで固定した。下板の組み込み部の一方には十分な遊びがあるため、機械的に横方向にずらして伝熱板7と9を接触させることができる。断熱解除時の上下伝熱板間の距離は0mm、断熱時の上下伝熱板距離は5mmとした。断熱材の組み立てはキセノン雰囲気で行ったため、断熱層内部にはキセノンが充填されている。
この断熱材について、実施例1と同様の方法で断熱時と断熱解除時の熱流量を相対的に比較したところ、断熱状態の熱流は、断熱解除状態の5%であった。このように断熱時と断熱解除時の熱流の差が大きいのは、断熱解除時に、熱伝導率の大きい鉄を大量の熱が伝導したためと考えられる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の厚みが可変の二つ断熱層を有する第一の断熱材を用いることにより、あるいは伝熱板を可逆的に接触させることが可能な第二の断熱材を用いることにより、断熱の保持、解除が可能な断熱材が得られる。
また、本発明の二酸化炭素に希釈して封入し二酸化炭素を固定することにより、断熱層内に大気圧以下の圧力で気体を充填することが可能になり、使用する気体が減少するため、コストの低減、製造時と使用時の安全性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の断熱材の構成を示す縦断面略図である。
【図2】本発明の第一の断熱材の変形例を示す縦断面略図である。
【図3】本発明の第二の断熱材の構成を示す縦断面略図である。
【図4】本発明の実施例1の断熱材の断面図である。
【図5】本発明の実施例3の断熱材の断面図である。
【符号の説明】
1 断熱材
2、2a 仕切り板
3、4 断熱層1
5 側板
6 上板
7、9 伝熱板
10 断熱層
11 外壁
12、13 ガラス板
14 仕切り板
15、16 アルミラミネートフィルム
17、26 二酸化炭素固定化剤タンク
18、20 ガス注入口
19、21 排出口
22 永久磁石
23 電磁石23
24、25 断熱層
31 ガラス容器
32 注入口
33 仕切り板
34 永久磁石
35 電磁石
36 袋
37 注入口
38、39 断熱層
40 封じた部分

Claims (6)

  1. 伝熱方向に積層した2個の中空の断熱層を有し、各々の断熱層の内部が互いに熱伝導率の異なる気体により満たされ、かつ前記断熱層の厚みが可変であることを特徴とする熱伝導率可変の断熱材。
  2. 断熱材全体の厚みが一定で、断熱層中の気体の圧力が大気圧以下である請求項1に記載の熱伝導率可変の断熱材。
  3. 一方の断熱層の内部が主としてキセノンまたはクリプトンで満たされるか、実質的に真空状態にあり、他方の断熱層の内部がヘリウムまたは水素で満たされている請求項1または2に記載の熱伝導率可変の断熱材。
  4. 上板と下板の間に中空の閉じた断熱層が形成され、前記上板および下板の各々から複数の伝熱板が前記断熱層内部へ向かって突出して形成され、前記上板の伝熱板と下板の伝熱板とを可逆的に接触できるように構成したこと特徴とする熱伝導率可変の断熱材。
  5. 伝熱方向に積層した2個の中空の断熱層を有し、各々の断熱層内部が互いに熱伝導率の異なる気体により満たされ、かつ前記断熱層の厚みが可変である熱伝導率可変の断熱材を用いて、熱伝導率の低い気体で満たされた断熱層の厚みを増減することにより断熱材の断熱性を増減し、断熱材の断熱性を調整することを特徴とする熱伝導率可変の断熱材の使用方法。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の断熱材の少なくとも一方の断熱層中、または請求項4に記載の断熱材の断熱層中を、二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素固定化剤と二酸化炭素で希釈された気体あるいは二酸化炭素で置換し、前記二酸化炭素を固定することにより、前記断熱層中の中空部を前記気体あるいは二酸化炭素で大気圧以下の分圧で充填することを特徴とする熱伝導率可変の断熱材への気体充填方法。
JP14758496A 1996-06-10 1996-06-10 熱伝導率可変の断熱材およびその使用方法 Expired - Fee Related JP3620922B2 (ja)

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