JP3620816B2 - フリクション機構付きモータおよびこのモータを用いた流体の流量制御装置 - Google Patents

フリクション機構付きモータおよびこのモータを用いた流体の流量制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリクション機構付きモータおよびそのモータを用いた流体の流量制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷蔵庫や空調機の冷媒の流量を制御するものとして、従来は、電磁弁を用いたものやニードル弁を用いたものがある。
【0003】
しかし、電磁弁を用いた流量制御装置は、一般には、開か閉のいずれかの設定を行うものであり、流量を微調整するには不向きである。また、開閉動作時の音が大きいいことも問題点の一つであり、さらに、開あるい閉のいずれの状態にあっても、その状態を保持するには電磁弁を通電状態にしておく必要があり、消費電力の面でも問題がある。
【0004】
一方、ニードル弁を用いた流量制御装置は、たとえば、ステッピングモータなどを駆動源として用い、そのステッピングモータの回転力をニードル弁の推力に変えて流体の流量を制御するものであり、電磁弁によるものに比べると、動作音の問題も少なく、また、流量を微調整することも可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このニードル弁を用いた流量制御装置は、駆動源としてのモータのサイズが一般に大きなサイズのものが多い。これは、主に、空調機などの冷媒の流量制御に用いられているものが多いためと考えられる。つまり、空調機の場合は、冷媒の流入側の圧力と、その冷媒を遮断したときの流出側の圧力差が大きいため、大きな推力でニードル弁を動かす必要がある。これによって、必然的に弁を駆動するためのモータサイズが大きいものとなる。
【0006】
しかし、冷蔵庫などにおける冷媒の流量制御装置に、このニードル弁を用いたものをそのまま使うには、スペース的に問題がある。冷蔵庫の場合、特に、食品庫内のスペースを大きくとるため、できる限り各部品を小さくすることが要求される。したがって、冷媒の流体制御装置も当然のことながら最大限の小型化が要求される。ただし、モータサイズを小さくすれば、確実な流量制御を行うために必要なトルクが得られないという問題が生じてくる。
【0007】
さらに、ニードル弁は、高精度な制御を行わせるために、ニードル弁の移動方向の中心軸とこのニードル弁が挿入される流路の中心軸の位置関係などが微妙なものとなってくるため、高精度な設計技術や組立時における経験的なノウハウが必要となってくるという問題点もある。
【0008】
また、この種の流体制御装置に用いられるモータには、弁を閉じる方向に回転しているとき、弁が閉状態となったにも係わらずそれ以上の無理な負荷が加わろうとした場合、その力を吸収するためのフリクション機構が設けられるのが普通である。すなわち、ニードル弁あるいは他の弁であっても、モータの回転力を弁を動かす力に変えて、流路の中に弁の一部が挿入されることによって流路を閉じるように制御するものにあっては、弁が流路に密封した状態となっても、さらに弁を押し込む方向に力が加えられると、弁がロックした状態となって、弁を開動作させるとき、弁を動かして元の状態に復帰させることができなくなることがある。
【0009】
このような不都合を生じないようにするために、たとえば、ストッパなどを設けて、弁が閉状態となる位置に達すると同時に、それ以上、弁を動かす力を与えないようにしたり、あるいは、モータにフリクション機構を設けて、弁が閉状態となったにも係わらず、それ以上の無理な負荷が加わろうとした場合、ロータの回転を空回りさせて弁をそれ以上駆動させないようにするなどの手段を施している。
【0010】
しかし、ストッパなどによる弁の移動を規制する方式では、ストッパに当接する際の衝撃音による騒音の問題があり、また、フリクション機構は、一般に、部品点数が多かったり、構造が複雑で組立作業性が悪いものが多いなどの問題点がある。特に、この種の小型化が強く要求される装置においては、限られた小さいスペースの中にフリクション機構を設ける必要があるため、構造が簡単でしかも組立時の作業性がよく、しかも、確実なフリクション機能を果たすものが必要となってくる。
【0011】
そこで本発明は、構造が簡単で確実なフリクション動作を行うフリクション機構付きモータおよび、このモータを用い、構造が簡単で確実な流量制御を可能とする流体の流量制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1の流体の流量制御装置は、コイルが巻装されたステータと、このステータに対向配置されるロータ部と、このロータ部の中心軸方向に設けられた貫通孔に回転自在に支持される回転軸と、一端がロータ部に係合され、その内孔に回転軸が挿通されたコイルバネと、回転軸が挿入される流体の流量を制御するための筒状の本体部と、回転軸の回転を直線運動に変換する変換手段と、流体を流出させる流体流出路と、本体部に設けられると共に、回転軸の直線運動により流体流出路の開閉具合を調整し、流体の流体流出路から流れる流量を制御する流量制御手段と、を有し、ロータ部が一方の回転方向に回転する際は、コイルバネによってそのコイルバネが有する所定の締め付け力を利用してロータ部の回転力を回転軸に伝達し、変換手段により、回転軸の回転を直線運動に変換し、その回転軸に所定以上の負荷が加わったときは、コイルバネはロータ部の回転に伴って回転軸上を滑って回転し、ロータ部が他方の回転方向に回転する際は、ロータ部の回転に伴ってコイルバネが回転軸を所定の締め付け力よりも大きな締め付け力により締め付けて、ロータ部の回転力を回転軸に伝達し、さらに一方の回転方向への回転による変換手段での直線運動によって流体流出路を閉状態とし、他方の回転方向への回転による変換手段での直線運動によって流体流出路を開状態とするようにしている。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、コイルバネには少なくとも一端にコイルバネの円周方向から突出する突出部を設け、ロータ部は、コイルバネが巻着された回転軸を挿入可能とするために、コイルバネの外径よりも大きな径を有する大径部が貫通孔に形成されるとともに、この大径部にコイルバネの突出部を隙間なく差し込み可能としたスリットが形成され、コイルバネの突出部をロータ部のスリットに差し込むことで、コイルバネの一端がロータ部に支持されるようにしている。
【0015】
このように、本発明のフリクション機構付きモータは、そのフリクション機構としての主な部品はコイルバネだけであり、そのコイルバネの一端をロータに支持し、他端をフリー状態または回転軸に係合させ、そのコイルバネの内孔に上記回転軸を挿通することでフリクション機構を構成している。このような簡単な構成であっても確実なフリクション動作を行うことができる。
【0016】
その動作の一例としては、たとえば、ロータ部が一方の回転方向(正回転とする)に回転する際は、コイルバネに対して拡開する方向の力が働くが、コイルバネの持つ所期の締め付け力を利用してロータ部の回転力が回転軸に伝達され、回転軸を回転させることができる。そして、その回転状態において、回転軸にコイルバネの所期の締め付け力以上の負荷が加わったときは、上記コイルバネがロータ部の回転に伴って回転軸上を滑って回転し、ロータ部が空回りする状態となる。これは、コイルバネの滑りトルクをロータ部の回転トルクより小さくしているためである。
【0017】
一方、ロータ部が逆回転する際は、コイルバネに巻き締め方向の大きな締め付け力が働き、回転軸を締め付けるので、ロータ部の回転力を確実に回転軸に伝達することができる
【0018】
したがって、本発明のフリクション機構付きモータは、ロータ部を正回転させて何らかの動作を行った後、逆回転させて元の状態に戻すという一連の動作を行わせる際に最適なモータであるといえる。たとえば、流体の流量制御装置の流量制御を行うための駆動源として用いることにより、流量制御を行う際、回転軸が一定量動作して、ある流量設定終了時に、回転軸に一定以上の負荷が加わった時点で回転軸の動作を停止させるような動作を行わせる場合、ロータ部の回転をそれ以上回転軸に伝達しないようにできる。
【0019】
また、その状態から、ロータ部を逆回転させて元の状態に復帰させるときは、回転軸にロータ部の回転力を確実に伝達させる必要があるが、本発明のフリクション機構付きモータは、このような動作を確実に行うことができる。
【0020】
このように、本発明のフリクション機構付きモータは、フリクション機構を構成する部品点数が少ないことや構造がきわめて簡単なことからコストの面や組立のし易さという点でも優れたものとすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を図1から図4に基づき説明する。
【0022】
図1および図2は、本発明の実施の形態を説明するもので、図1は、本発明のフリクション機構付きモータが用いられた流体の流量制御装置の構成を示す側断面図で、図2は、図1を矢印A方向側から見た正面図である。
【0023】
この図1および図2に示される流体の流量制御装置1は、その外観上の構成を大きく分けて説明すると、本体部2と、この本体部2の後端側に取り付けられ、弁(詳細は後述する)の開閉を駆動する駆動源としてのモータ(本発明のフリクション機構付きモータであり、この実施の形態ではステッピングモータを用いているので以下ではステッピングモータという)3と、本体部2の先端側に取り付けられた流体(冷媒とする)の流入側のパイプ(以下、流入パイプという)4と、流体の流出側のパイプ(以下、流出パイプという)5とにより構成されている。
【0024】
ステッピングモータ3は、コイル31が巻装されたステータ32、このステータ32の内側にステータと対向配置されたロータ部33、このロータ部33の中心軸方向に設けられた貫通孔33aに回転自在に支持される回転軸34、一端がロータ部33に支持され他端をフリー状態とし、その内孔に回転軸34が挿通され、この回転軸34を自己の有する所期の締め付け力により保持するコイルバネ35を有した構成となっている。
【0025】
この状態で、電源供給端36からコイル31に電源を供給することにより、ロータ部33が回転するようになっている。なお、コイルバネ35はフリクション機構の一部を構成するものであり、このフリクション機構については後に説明する。また、以下では、コイルバネ35をフリクションバネ35という。
【0026】本体部2は、円筒状をなし、その後端側にステッピングモータ3の回転軸34を回転自在に支持する軸受け21が内部に挿入された状態で固定される。また、本体部2の後端部には、鍔部22が設けられ、その鍔部22にはステッピングモータ3のロータ部33を収納するロータ部収納体23が取り付けられる。このロータ部収納体23は、SUS(サス)と呼ばれる材質で形成され、その内側底部には、ロータ部33の動き(回転軸34の中心軸方向の動き)を規制する規制部材38が設けられる。
【0027】この規制部材38は、板バネで形成され、ロータ部33が回転しながら収納体23の底部方向に向かって移動したとき、ロータ部33の下端部に設けられた突起33bが規制部材38に当接することにより、その動きを規制するものであるが、これについては、本発明の要旨とするところではないので詳細な説明は省略する。
【0028】
また、ステッピングモータ3の回転軸34は、本体部2の軸受け21に対して回転自在に支持されているが、回転軸34にはネジが刻まれており、一方、軸受け21にもネジが刻まれていて、両者が螺合するようになっている。これら両者は、変換手段に対応する。
【0029】これにより、ロータ部33が回転すると、ロータ部33とその回転軸34は、回転軸34の中心軸方向に沿って、本体部2の内部を回転しながら軸方向に直線的に移動する。なお、回転軸34を本体部2の挿入方向(本体部2の先端方向)に進ませるロータ部33の回転方向を、ここでは正回転という。したがって、ロータ部33の回転が反転(逆回転)すると、ロータ部33とその回転軸34は、本体部2の後端側方向に移動する。この後端側に移動するときに、前述した規制部材38によりロータ部33の位置をステータ32に対して適正な位置で停止させる。
【0030】
そして、回転軸34のさらに先方にはキャリッジ24が取り付けられている。このキャリッジ24は、ロータ部33の正逆回転に伴って回転軸34とともに本体部2内を移動するものである。このキャリッジ24の内部でかつキャリッジ24の先端付近には弁および流量制御手段としての働きをする球体25が収納されるとともに、その球体25と前述の回転軸34との間にはコイル状のバネ26が介在される。なお、球体25は、その球面の一部がキャリッジ24から露出するようにキャリッジ24内に保持される。また、球体25とバネ26の間にはプレート27が介在され、バネ26の伸張力により、球体25にはキャリッジ24の先端方向に押しつけられる力が与えられている。
【0031】
また、本体部2の先端付近の側面には、流入パイプ4が取り付けらるとともに、先端には流出パイプ5が取り付けられ、流入パイプ4を通った流体(ここでは冷媒)は、一旦、本体部2内に入ったのち、本体部2の先端に設けられた細い流体流出路28を通って流出パイプ5に出るようになっている。このとき、冷媒の流れは、球体25の位置によって制御される。なお、この実施の形態では、冷媒の流量を変化させるという制御ではなく、説明を簡略化するため、冷媒を通過させるか、その流れを阻止するか、つまり、オン(冷媒を通過させる状態)かオフ(冷媒の流れを阻止する状態)かのいずれかの状態に設定する例について説明する。
【0032】
ところで、本体部2に設けられた上述の流体流出路28は、キャリッジ24に保持された球体25の球面が当接することで、冷媒の流れをオフするようになっているが、確実なオフ状態を得るために流体流出路28の球体25の当接部分は球体25の球面と同じ曲率を有する曲面(凹面)となっている。これは、製造段階で球体25と同一形状の球体を強く押しつけることでその曲面を得ることができる。
【0033】
次に前述したフリクション機構について図3、図4を参照しながら説明する。
【0034】
ロータ部33は、合成樹脂製の円筒部材331と、その周囲に装着されたマグネット332からなっている。そして、円筒部材331の中心部には回転軸34が着脱自在に挿入される貫通孔33aが設けられ、その貫通孔33aの軸受け21側には、貫通孔33aよりも内径の大きな大径部が形成されている。この大径部は、第1の大径孔333と、その第1の大径孔333と端部33cとの間に形成された第1の大径孔333よりも大径の第2の大径孔334により構成されている。そして、これら第1の大径孔333と第2の大径孔334の側壁には第2の大径孔334から第1の大径孔333を直線的に通るスリット335が形成されている。
【0035】
一方、回転軸34にはフリクション機構の一部としてのフリクションバネ35が巻着される。このフリクションバネ35は図4に示すように、一端部がフリクションバネ35の円周の接線に対して直角方向に突出し(第1の突出部35aという)、他方の端部はフリクションバネ35の接線方向に突出している(第2の突出部35bという)。この第2の突出部35bは、図4(C)からもわかるように、わずかに下側(第1の突出部35a側)に折れ曲がっている。
【0036】
そして、このフリクションバネ35は、図4(A)に示すように、第2の突出部35b側を上にしてその上方からみたとき、第2の突出部35bを基点に右巻き(時計方向巻き)で第1の突出部35aに至るようになっている。なお、このフリクションバネ35の内径dは、回転軸34の外径より小さいものとしている。このため、回転軸34をフリクションバネ35の第2の突出部35bから、フリクションバネ35の径を押し広げるようにして挿入することで、フリクションバネ35を回転軸34に巻着するものとなっている。そして、通常の状態では、フリクションバネ35がもともと持っている所期の締め付け力によって回転軸34とフリクションバネ35とは一体化された状態となる。なお、このフリクションバネ35の回転軸34に対する締め付け力は、ステッピングモータ3のトルク(ロータ部33の回転トルク)よりも小さくしている。
【0037】
また、図3と図4では、図示されていないが、このフリクションバネ35の第2の突出部35b側には、回転軸34に固定されたEリング37によってフリクションバネ35が、回転軸34の先端方向に動くのを規制している(図1参照)。
【0038】
そして、フリクションバネ35が巻着された回転軸34を、ロータ部33の円筒部材331の貫通孔33aに挿入する際、フリクションバネ35の第1の突出部35aがスリット335内に入り込むようにして、回転軸34を貫通孔33aに挿入して行く。これにより、フリクションバネ35の第1の突出部35aは、スリット335をガイドとして第1の大径孔333の終端部まで進み、そこで回転軸34のそれ以上の挿入が規制される。また、第2の突出部35bは、ロータ部33の円筒部材331には固定されることなく、第2の大径孔334の終端面上を自由に摺動可能となっている。
【0039】
なお、ロータ部33の円筒部材331に設けられたスリット335の溝の深さ(=径方向の長さ)は、第1の突出部35aを先端から根本まで保持できる深さとしている。これは、ロータ部33の回転力をフリクションバネ35に伝達する際、第1の突出部35a全体でロータ部33の回転力を受けることにより、確実な回転力の伝達を行うためと、フリクションバネ35の耐久性を向上させるためである。
【0040】
また、スリット335の溝の幅は、第1の突出部35aの太さ(フリクションバネ35を形成する部材の太さ)とほぼ同じとし、第1の突出部35aをスリット335に差し込んだ状態としたとき、ロータ部33の回転方向にがたつきがないようにしている。これは、もし、第1の突出部35aがスリット335に対し、がたつきのある状態で差し込まれていると、ロータ部33の回転に伴って、がたつきによる騒音が発生するおそれがあるからであり、それを防ぐためである。
【0041】
また、第2の突出部35bは、前述したように、動きが自由となっている。この第2の突出部35bは特に設ける必要性はないが、フリクションバネ35の端部をそのままとしておくと、その端部が前述のEリング37に接触することによる摩擦などで、フリクショントルクに影響を与え、正常なフリクション作動が行えなくおそれがあるので、それを防止するために、フリクションバネ35の端部を少し突出させ、しかもそれを下方にわずかに折り曲げている。
【0042】
次に、このような構成の実施の形態の動作について説明する。なお、ここでは主にフリクション機構の動作についてを説明するが、まず、この実施の形態で示される流体の流量制御装置における冷媒の流れのオン・オフ制御について簡単に説明する。
【0043】
まず、キャリッジ24内の球体25が本体部2の流体流出路28に当接していない状態では、流入パイプ4を流れる冷媒は、本体部2内に入った後、流体流出路28を取って流出パイプ5に流れ出て行く。この状態で、冷媒の流れをオフする動作を行うには、ステッピングモータ3のロータ部33を正回転させるようにコイル31を通電状態とする。これにより、ロータ部33が正回転し、その回転軸34も正回転する。このとき、ロータ部33の回転力は、フリクションバネ35を介して回転軸34に伝えられる。
【0044】
すなわち、フリクションバネ35は、回転軸34に対し一定の力(フリクションバネ35がもともと持っている所期の締め付け力)で締め付けた状態で巻着されており、また、第1の突出部35aがロータ部33の円筒部材331のスリット335に差し込まれているので、ロータ部33が回転することにより、その回転力が回転軸34に伝達される。これにより、回転軸34は、ロータ部33の回転とともに回転する。
【0045】
また、回転軸34に刻まれたネジと軸受け21に刻まれたネジが螺合しているので、ロータ部33が回転(ここでは正回転)することにより、ロータ部33と回転軸34はともに直線的に本体部2内をその先端方向に向かって移動し、やがて、回転軸34の先端部に取り付けられたキャリッジ24内の球体25が、本体部2の先端部に設けられた流体流出路28に当接する。なお、この球体25が流体流出路28に当節するに必要な移動距離、つまり、冷媒が流れる状態(オン状態)の位置から冷媒の流れを阻止する位置(オフ状態)までの移動距離は1mm程度とほんのわずかな距離である。
【0046】
このようにして、球体25が本体部2の流体流出路28に当接すると、球体25の球面が流体流出路28に形成された曲面と面接触することにより、確実に冷媒の流れを阻止することができる。なお、この状態でステッピングモータ3の駆動を停止させても良いが、組み立て誤差等を吸収させるため、通常はさらに駆動を継続させる。しかし、球体25を押しつける力は、バネ26によって吸収される。そして、球体25にはそのバネ26の伸張力により流体流出路28を一定以上の力で押しつける力が働いて確実な当接状態を得ることができる。
【0047】
このように球体25が本体部2の流体流出路28に当接した状態で、さらにロータ部33が回転を続けようとした場合、フリクション機構が働く。すなわち、球体25が本体部2の流体流出路28に当接した状態で、さらにロータ部33が回転すると、その回転力によってフリクションバネ35の第1の突出部35aも一緒に回転しそれに伴いフリクションバネ35も回転して、回転軸34も回転しようとする。しかし、このとき、回転軸34は、球体25が本体部2の流体流出路28に一定以上の力で当接状態となっていることにより、その動きが規制され、いわゆるロック状態となっている。
【0048】
このような状態でロータ部33がさらに回転しようとすると、ロータ部33の回転トルクは、フリクションバネ35の回転軸34に対する滑りトルクよりも大きいので、フリクションバネ35は、回転軸34上を滑って回転し、ロータ部33は空回りの状態となり、回転軸34をそれ以上回転させ前進させるのを防止できる。
【0049】
このような冷媒の流れをオフした状態から今度は、冷媒の流れをオン状態とするために、ロータ部33の回転を逆回転させるように、ステッピングモータ3のコイル31に通電したとする。すると、ロータ部33は、逆回転し始める。このとき、球体25が本体部2の流体流出路28に一定以上の力で当接状態となっていることにより、回転軸34はロック状態となっている。
【0050】
このロック状態では、ロータ部33の回転力をフリクションバネ35を介して回転軸34に伝達できない状態(フリクション機構が働いてロータ部33が空回りする状態)になりがちであるが、本発明のフリクション機構では、ロータ部33が逆回転すると、その円筒部材331のスリット335に差し込まれたフリクションバネ35の第1の突出部35aも共に逆回転方向に動こうとする。このフリクションバネ35は、図3で説明したように、右巻きのコイルバネであるので、ロータ部33が逆回転すると、第1の突出部35aはフリクションバネ35の内径を小さくしようとする動作、つまり、フリクションバネ35が回転軸34を、より大きく締め付けるような動作を行う。
【0051】
これにより、ロータ部33の回転力は、回転軸34に伝達され、回転軸34はロータ部33とともに逆回転動作を行い、本体部2から抜け出るような方向に動き、ステッピングモータ3が所定のステップ数だけ動作すると、球体25はキャリッジ24の先端に係合する。その後、さらにロータ部33が逆回転すると、球体25はキャリッジ24と共に移動し始め、本体部2の流体流出路28から離れ、冷媒が流れる状態(オン状態)となる。
【0052】
以上のような実施の形態では、ステッピングモータ3のフリクション機構として、コイルバネをフリクションバネ35として用い、ロータ部33が正回転方向に回転する際は、フリクションバネ35の持つ所期の締め付け力を利用してロータ部33の回転力が回転軸34に伝達され、回転軸34を回転させることができる。そして、その回転状態において、回転軸34に大きな負荷が加わったときは、フリクションバネ35がロータ部33の回転に伴って回転軸34上を滑って回転し、ロータ部33が空回りする状態となり、回転軸34がそれ以上無理に動くのを防止できる。このため、回転軸34がロック状態となるのを回避できる。
【0053】
一方、このような状態から回転軸34を元に復帰させようとして、ロータ部33を逆回転させると、フリクションバネ35が回転軸34を大きな力で締め付けるので、ロータ部33の回転力を確実に回転軸34に伝達することができる。したがって、回転軸34が仮にロックされていても、その状態から、その回転軸34を元の位置に復帰させようとする場合、ロータ部33の回転力を確実に回転軸34に伝達することができ、ロック状態を外すことができる。
【0054】
以上のように、本発明のフリクション機構付きモータは、ロータ部33を正回転させ、それに伴う回転軸34の動きを利用して何らかの動作を行った後、ロータ部33を逆回転させて元の状態に戻すという一連の動作を行わせる際の駆動源として最適なモータであるといえる。
【0055】
たとえば、前述の実施の形態で説明した流体の流量制御装置における流量制御を行うための駆動源として用いることにより、流量制御を行う際、回転軸34が一定量動作して、ある流量設定終了時に回転軸34に対し、一定以上の負荷が加わった時点で、回転軸34の動作を停止させるような動作を行わせる場合、ロータ部33の回転をそれ以上回転軸34に伝達しないようにできる。また、その状態から、元の状態に復帰させるときは、ロータ部33を逆回転させそれに伴って回転軸34も逆回転させる必要があるが、本発明のフリクション機構付きモータは、このような動作を確実に行うことができる。
【0056】
これにより、このようなフリクション機構付きのモータを用いた流体の流量制御装置にあっては、冷媒の流れをオンまたはオフとする際、弁としての働きをする球体25を確実に動作させることができ、しかも、球体25が冷媒の流れをオフする位置に達した状態でのフリクション動作を的確に行うことができ、また、冷媒の流れがオフ状態となっている状態からオン状態に移行する際もスムースな動作が可能となり、確実な冷媒の制御が可能となる。
【0057】
この実施の形態の流体の流量制御装置1は、回転軸34の球体25側の先端が、キャリッジ24のバネ26が挿入されている細径孔部24aから突出し太径孔部24bまで届いている。また、細径孔部24aと太径孔部24bとの間に傾斜面を設けている。このため、球体25がキャリッジ24内に沈み込んだとき、プレート27が回転軸34の先端に当たることとなり、バネ26が圧縮されたときの不具合、例えばバネ26が細径孔部24a内に入り込み、復帰できなくなったり、プレート27が太径孔部24b内で傾いた位置に固定される等の不具合を回避することができる。
【0058】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施可能である。たとえば、上述の実施の形態では、フリクションバネ35の一端をロータ部33に係合させ、他端をフリーにしているが、他端を回転軸34に係合させるようにしても良い。また、フリクションバネ35の第1の突出部35aや第2の突出部35bは、図5に示すように、高さ方向外方に伸びた突出部35cとしても良い。
【0059】
また、上述の実施の形態では、ロータ部33にフリクションバネ35の外径よりも大きな径を有する大径部が貫通孔33aに形成されているが、図6に示すようなロータ部33としても良い。すなわち、フリクションバネ35の第1の突出部35aが入り込む2つのスリット形成用突起33dをロータ部33の軸方向端面に設けるようにしても良い。
【0060】
さらに、上述の実施の形態では、モータとしてステッピングモータ3を例にとって説明したが、本発明のフリクション機構付きモータは、ステッピングモータ3に限られるものではない。また、このようなフリクション機構付きのモータが適用されるものとしては、上述の実施の形態で説明したような流体の流量を制御する装置に限らず広い分野での使用が可能となる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、フリクション機構としての主な部品はフリクションバネとしてのコイルバネだけであり、そのコイルバネの一端をロータ部に係合させ、コイルバネの内孔に回転軸を挿通してフリクション機構を構成している。このような簡単な構成でありながら、ロータ部が一方の回転方向に回転する際は、コイルバネの持つ所期の締め付け力を利用してロータ部の回転力が回転軸に確実に伝達され、その回転軸に大きな負荷が加わったときは、コイルバネがロータ部の回転に伴って回転軸上を滑って回転することで回転軸にそれ以上の前進力を与えるのを防止できる。このため、回転軸がロック状態となるのを防止できる。
【0062】
また、ロータ部が他方の回転方向に回転する際は、コイルバネが回転軸を所期の締め付け力よりも大きな締め付け力により締め付けて、ロータ部の回転力を回転軸に伝達するようにしたので、回転軸が、仮にロック状態にあったとしてもロータ部の回転力を確実に回転軸に伝達することができ、ロック状態を解除させることができる。このように、本発明のフリクション機構付きモータは、確実なフリクション動作が行え、また、フリクション機構を構成する部品点数が少なく、構造もきわめて簡単なことからコストの面でもまた組立のし易さという点でも優れたものとすることができる。
【0063】
また、請求項2記載の発明は、フリクション機構の一部としてのコイルバネは、その一端を突出させ、その突出部をロータ部に形成したスリットに差し込むようにしてロータ部に支持させるようにしたので、フリクション機構の構造が簡単で組立がきわめて容易なものとなる。また、コイルバネの突出部をロータ部のスリットに隙間なく差し込む構造としているので、これらの部品間でのいわゆるがたつきがなく、動作時における騒音の発生を防ぐことができる。
【0064】
また、流量制御を行う際、回転軸が一定量動作して、ある流量に設定した時点で回転軸に負荷がかかって回転軸の動作が停止したような場合、ロータ部の回転をそれ以上回転軸に伝達しないようにするフリクション動作を確実に行うことができる。また、その状態から元の状態に復帰させるときは、ロータ部を逆回転させたとき、その回転力を回転軸に確実に伝達することができる。これにより、流体の流量制御を確実に効率よく行うことができ、しかも、フリクション動作音が殆どない静かな流量制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフリクション機構付きモータを用いた流体の流量制御装置の実施の形態を示す側断面図である。
【図2】図1を矢印A方向から見た正面図である。
【図3】図1の流体の流量制御装置に使用されているフリクション機構付きモータのロータ部を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図4】図1の流体の流量制御装置に使用されているフリクション機構付きモータに用いられるフリクションバネを示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の矢示B方向から見た正面図 、(C)は(A)の矢示C方向から見た側面図である。
【図5】図1の流体の流量制御装置に使用されているフリクション機構付きモータに用いられるフリクションバネの変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図6】図1の流体の流量制御装置に使用されているフリクション機構付きモータのロータ部の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
1 流体の流量制御装置
2 本体部
3 ステッピングモータ(フリクション機構付きモータ)
21 軸受け
22 鍔部
23 ロータ部収納体
24 キャリッジ
25 球体
31 コイル
32 ステータ
33 ロータ部
33a 貫通孔
34 回転軸
35 フリクションバネ(コイルバネ)

Claims (2)

  1. コイルが巻装されたステータと、
    このステータに対向配置されるロータ部と、
    このロータ部の中心軸方向に設けられた貫通孔に回転自在に支持される回転軸と、
    一端が上記ロータ部に係合され、その内孔に上記回転軸が挿通されたコイルバネと、
    上記回転軸が挿入される流体の流量を制御するための筒状の本体部と、
    上記回転軸の回転を直線運動に変換する変換手段と、
    上記流体を流出させる流体流出路と、
    上記本体部に設けられると共に、上記回転軸の直線運動により上記流体流出路の開閉具合を調整し、上記流体の上記流体流出路から流れる流量を制御する流量制御手段と、
    を有し、
    上記ロータ部が一方の回転方向に回転する際は、上記コイルバネによってそのコイルバネが有する所定の締め付け力を利用して上記ロータ部の回転力を上記回転軸に伝達し、
    上記変換手段により、上記回転軸の回転を直線運動に変換し、
    その回転軸に所定以上の負荷が加わったときは、上記コイルバネは上記ロータ部の回転に伴って上記回転軸上を滑って回転し、
    上記ロータ部が他方の回転方向に回転する際は、上記ロータ部の回転に伴って上記コイルバネが上記回転軸を所定の締め付け力よりも大きな締め付け力により締め付けて、上記ロータ部の回転力を上記回転軸に伝達し、
    さらに上記一方の回転方向への回転による上記変換手段での直線運動によって上記流体流出路を閉状態とし、上記他方の回転方向への回転による上記変換手段での直線運動によって上記流体流出路を開状態とする、
    ことを特徴とする流体の流量制御装置。
  2. 前記コイルバネには少なくとも一端にコイルバネの円周方向から突出する突出部を設け、前記ロータ部は、前記コイルバネが巻着された回転軸を挿入可能とするために、前記コイルバネの外径よりも大きな径を有する大径部が前記貫通孔に形成されると共に、この大径部に上記コイルバネの突出部を隙間なく差し込み可能とするスリットが形成され、前記コイルバネの上記突出部を前記ロータ部のスリットに差し込むことで、前記コイルバネの一端が前記ロータ部に支持されることを特徴とする請求項1記載の流体の流量制御装置。
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