JP3620161B2 - 織機におけるからみ耳形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジャカード装置の通糸により互いに逆方向へ往復動する前後一対の耳糸用綜絖と、これら往復動する一対の耳糸用綜絖によって交互に連行されて往復動する半綜絖とからなるからみ形成機構を備え、この半綜絖の往復動によって一対の耳糸にからみ耳形成動作を行わせるからみ耳形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のからみ耳形成装置が特開平2−19537号公報に開示されている。半綜絖は磁性体製であって2股形状をしている。前後一対の綜絖の下部側にはスリットが形成されており、半綜絖が各綜絖のスリットに挿入されている。各綜絖の下端部には一対の磁石が前記スリットの下端部を挟んで対向配置されており、半綜絖の2股の足の下端のいずれかが前記磁石に吸着保持されるようになっている。前後の綜絖の上下高さが同じである場合には、半綜絖の2股の足の下端がいずれも磁石に吸着する位置にあり、この状態から一方の綜絖を上昇すれば、この綜絖のスリットの下端が半綜絖の足の下端に当接して半綜絖を連行する。次いで、同じ綜絖を下降すればこの綜絖側の磁石に吸着されている半綜絖も下降する。このような構成のからみ耳形成装置の利点は軽量化できることである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなからみ耳形成装置を綜絖枠に取り付けて使用する場合には問題はない。しかし、通糸によって綜絖を吊り下げると共に、ばねによって綜絖を下方へ付勢するようにしてジャカード織機で使用する場合には、半綜絖が前後の綜絖から外れ易い。半綜絖は磁石の磁力のみによって前後の綜絖に吸着しているだけであり、前後の綜絖の高速の上下動に伴う綜絖の振動が半綜絖を綜絖からはずれさせる。
【0004】
本発明は、半綜絖が綜絖から外れ難いからみ耳形成装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、ジャカード装置の通糸により互いに逆方向へ往復動する一対の耳糸用綜絖と、これら往復動する一対の耳糸用綜絖によって交互に連行されて往復動する半綜絖とからなるからみ耳形成機構を備え、前記半綜絖の往復動によって一対の耳糸にからみ耳形成動作を行わせるからみ耳形成装置を対象とし、請求項1の発明では、隣接する複数のからみ耳形成機構の第1の耳糸用綜絖同士の往復経路を安定させる第1の経路安定手段と、隣接する複数のからみ耳形成機構の第2の耳糸用綜絖同士の往復経路を安定させる第2の経路安定手段とを備えたからみ耳形成装置を構成した。
【0006】
隣接する複数のからみ耳形成機構の第1の耳糸用綜絖は第1の経路安定手段によって往復経路を安定させられる。隣接する複数のからみ耳形成機構の第2の耳糸用綜絖は第2の経路安定手段によって往復経路を安定させられる。往復経路の安定は耳糸用綜絖からの半綜絖の外れを防止する。
【0007】
請求項2の発明では、隣合う第1の耳糸用綜絖の一端間を結合する経路安定体を前記第1の経路安定手段として採用し、隣合う第2の耳糸用綜絖の一端間を結合する経路安定体を前記第2の経路安定手段として採用した。
【0008】
経路安定体が隣合う耳糸用綜絖の一端を結合しており、隣合う一対の耳糸用綜絖及び経路安定体が四角形の3辺からなるコ字状の枠形状を形成する。このような枠形状は耳糸用綜絖の往復経路を安定させる。
【0009】
請求項3の発明では、前記第1の経路安定体と前記第2の経路安定体とを互いにスライド可能に連結した。
第1の経路安定体と第2の経路安定体とのスライド連結構成は、各耳糸用綜絖の往復経路の安定化に寄与する。
【0010】
請求項4の発明では、各耳糸用綜絖をスライド案内する補助目板を前記第1の経路安定手段及び第2の経路安定手段として採用した。
補助目板は各耳糸用綜絖の往復経路をそれぞれ安定させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、経糸切断検出用のドロッパ11を通された経糸Tは経糸用綜絖12に通されている。経糸用綜絖12は通糸14によって吊下されていると共に、引っ張りばね15によって下方へ付勢されている。通糸14は目板16を通ってジャカード装置13に繋がっており、ジャカード装置13は通糸14の上下動を制御する。
【0013】
図2に示すように、経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E1,E2は、第1の耳糸用綜絖17、第2の耳糸用綜絖18及び半綜絖19からなるからみ耳形成機構20に通されている。又、経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E3,E4は、第1の耳糸用綜絖21、第2の耳糸用綜絖22及び半綜絖23からなるからみ耳形成機構24に通されている。耳糸用綜絖17,18,21,22は非磁性体製であり、2股状の半綜絖19,23は磁性体製である。図5に示すように、からみ耳形成機構20,24はタオル織布Wの織幅方向に隣接しており、一幅分のタオル織布Wの隣接端部にはからみ耳形成機構20,24によってからみ耳W1,W2が形成される。
【0014】
図1及び図3に示すように、第1の耳糸用綜絖17,21の上下の中間部には屈曲部171,211が形成されている。図3に示すように屈曲部171,211付近より下部にはスリット172,212が耳糸用綜絖17,21の前縁に沿って形成されている。図1及び図3に示すように、第2の耳糸用綜絖18,22の上下の中間部には屈曲部181,221が形成されている。図2及び図3に示すように屈曲部181,221付近より下部にはスリット182,222が耳糸用綜絖18,22の後縁に沿って形成されている。2股状の半綜絖19の足191はスリット172に挿入されており、足192はスリット182に挿入されている。2股状の半綜絖23の足231はスリット212に挿入されており、足232はスリット222に挿入されている。半綜絖19,23の頂部には糸孔193,233が形成されている。
【0015】
スリット172,182,212,222の下端部付近には磁石36が止着されている。半綜絖19,23の足191,192,231,232の下端がスリット172,182,212,222の下端部付近にあるときには、磁石36が足191,192,231,232の下端部を吸着する。
【0016】
隣合うからみ耳形成機構20,24の第1の耳糸用綜絖17,21の上端部間には合成樹脂製の第1の経路安定板25が架け渡されている。同様に、隣合うからみ耳形成機構20,24の第2の耳糸用綜絖18,22の上端部間には合成樹脂製の第2の経路安定板26が架け渡されている。各耳糸用綜絖17,18,21,22の上端部には掛け止め片27が取り付けられている。図2〜図5に示すように掛け止め片27は、実線で示す掛け止め位置と、鎖線で示す着脱位置とに回動切換可能である。第1及び第2の経路安定板25,26には着脱孔251,261が透設されており、掛け止め片27が着脱孔251,261を通して経路安定板25,26に掛け止められている。経路安定板25,26には一対の糸孔252,262が形成されている。第1の耳糸用綜絖17,21に経路安定板25を取り付けた状態では、糸孔252,252同士は第1の耳糸用綜絖17,21の直上にある。同様に、第2の耳糸用綜絖18,22に経路安定板26を取り付けた状態では、糸孔262,262同士は第2の耳糸用綜絖18,22の直上にある。
【0017】
糸孔252,252には通糸28,29が通されており、第1の耳糸用綜絖17,21は経路安定板25を介して通糸28,29によって吊下されている。又、第1の耳糸用綜絖17,21は引っ張りばね30によって下方へ付勢されている。同様に、糸孔262,262には通糸32,33が通されており、第2の耳糸用綜絖18,22は経路安定板26を介して通糸32,33によって吊下されている。又、第2の耳糸用綜絖18,22は引っ張りばね31によって下方へ付勢されている。通糸28,29,32,33は目板16を通ってジャカード装置13に繋がっており、ジャカード装置13は通糸28,29,32,33の上下動を制御する。通糸28,29は同一方向に移動するように制御され、通糸32,33は通糸28,29とは逆方向に移動するように制御される。
【0018】
経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E1は半綜絖19の糸孔193に通されている。経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E2は、耳糸用綜絖17,18との間で半綜絖19の外周194と、耳糸用綜絖17,18の対向縁173,183との間に通されている。経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E3は半綜絖23の糸孔233に通されている。経糸切断検出用のドロッパ11を通された耳糸E4は、耳糸用綜絖21,22との間で半綜絖23の外周と、耳糸用綜絖21,22の対向縁との間に通されている。
【0019】
図2に示すように、第1の耳糸用綜絖17,21の高さ位置と第2の耳糸用綜絖18,22の高さ位置とが揃っている状態では、耳糸E1,E3の張力によって下方へ付勢されている半綜絖19,23がスリット172,182,212,222の下端に当接する。そして、磁石36が半綜絖19,23の足191,192,231,232の下端部を吸着する。
【0020】
図2の状態から第2の耳糸用綜絖18,22が上動すると共に、第1の耳糸用綜絖17,21が下動すると、図3に示すように半綜絖19,23が第2の耳糸用綜絖18,22によって上方へ連行される。図2の状態から第1の耳糸用綜絖17,21が上動すると共に、第2の耳糸用綜絖18,22が下動すると、図4に示すように半綜絖19,23が第1の耳糸用綜絖17,21によって上方へ連行される。半綜絖19,23を上方へ連行した綜絖が反転して下動すると、磁石36に吸着された半綜絖19,23も下方へ連行される。
【0021】
半綜絖19,23の上下往復動により耳糸E2,E4が半綜絖19,23の頂部を乗り越えて半綜絖19,23の前縁側と後縁側との間を行き来すると共に、耳糸E1,E2が上下動し、図5に示すからみ耳W1,W2が形成される。
【0022】
第1の実施の形態では以下の効果が得られる。
(1−1)スリット172,182に挿入されている半綜絖19は、磁石36の磁力のみによって耳糸用綜絖17,18に結合しているだけである。同様に、スリット212,222に挿入されている半綜絖23は、磁石36の磁力のみによって耳糸用綜絖21,22に結合しているだけである。このような結合構成では、耳糸用綜絖17,18,21,22が撓んだり、捩じれたりすると、半綜絖19,23が耳糸用綜絖17,18,21,22から外れるおそれがある。経路安定体となる経路安定板25は、一対の耳糸用綜絖17,18と共に四角形の3辺からなる枠形状を形成する。経路安定板25及び一対の耳糸用綜絖17,18によって形成される枠形状は、耳糸用綜絖17,18の高速の上下動作に対して耳糸用綜絖17,18の撓み、捩じれを防止する。即ち、耳糸用綜絖17,18,21,22の往復経路が安定し、半綜絖19,23が耳糸用綜絖17,18,21,22から外れるおそれがなくなる。
(1−2)合成樹脂製の経路安定板25,26は軽量であり、耳糸用綜絖17,18,21,22の開口運動速度の高速性が損なわれることはない。
(1−3)経路安定板25,26はそれぞれ一対の通糸28,29及び通糸32,33によって吊下されている。通糸28,29の吊下位置は耳糸用綜絖17,21の直上であり、通糸32,33の吊下位置は耳糸用綜絖18,22の直上である。このような吊下位置となる糸孔252,252から平行状態で目板16を目孔を通された通糸28,29による吊下状態は経路安定板25の鉛直線周りの回動を防止し、第1のからみ耳形成機構20全体の捩じれが防止される。同様に、糸孔262,262から平行状態で目板16を目孔を通された通糸32,33による吊下状態は経路安定板26の鉛直線周りの回動を防止し、第2のからみ耳形成機構24全体の捩じれが防止される。
(1−4)半綜絖19の糸孔193に対する耳糸E1の挿通状態と、半綜絖23の糸孔233に対する耳糸E3の挿通状態とは、経糸の糸方向の左右に関して面対称の関係にある。又、からみ耳形成機構20に対する耳糸E2の挿通状態と、からみ耳形成機構24に対する耳糸E4の挿通状態とは、経糸の糸方向の左右に関して面対称の関係にある。このような挿通対称状態では、耳糸E1の張力がからみ耳形成機構20を捩じる作用と、耳糸E2の張力がからみ耳形成機構24を捩じる作用とは互いに逆方向である。従って、耳糸E1,E2と耳糸E3,E4との前記挿通対称状態は、からみ耳形成機構20,24の捩じれ防止に寄与する。
【0023】
次に、図6及び図7の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
この実施の形態では、通糸28,32によって吊下される経路安定板37,38が図7に示すように凸条371と凹条381とを介してスライド可能に嵌合している。経路安定板37,38の往復動方向の長さは、経路安定板37,38の往復動長さよりも長くしてあり、経路安定板37,38は常に嵌合している。
【0024】
この実施の形態では、第1の経路安定板37と第2の経路安定板38との嵌合状態が両経路安定板37,38全体の鉛直線周りの回動を防止する。両経路安定板37,38全体の鉛直線周りの回動の防止は、耳糸用綜絖17,18,21,22からの半綜絖19,23の外れ防止に寄与する。
【0025】
次に、図8の第3の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
この実施の形態では、第1の耳糸用綜絖39,41及び第2の耳糸用綜絖40,42の上部側が単一の補助目板43の目孔431に通されている。補助目板43はブラケット44を介して目板16に取り付けられている。
【0026】
補助目板43の目孔431は各耳糸用綜絖39〜42の往復経路を規定し、各耳糸用綜絖39〜42の往復経路が安定する。
本発明では、3つ以上のからみ耳形成機構を隣接した実施の形態も可能である。又、織布の織幅の内側でからみ耳を形成する以外に、織布の端部にからみ耳を形成する場合にも本発明を適用できる。この場合、隣接するからみ耳形成機構のうちの内側のからみ耳形成機構のみによってからみ耳を形成すればよい。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、隣接する複数のからみ耳形成装置の第1の耳糸用綜絖同士の往復経路を第1の経路安定手段によって安定させると共に、隣接する複数のからみ耳形成装置の第2の耳糸用綜絖同士の往復経路を第2の経路安定手段によって安定させるようにしたので、半綜絖を耳糸用綜絖から外れ難くし得るという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示し、要部拡大側断面図を組み込んだ側面図。
【図2】一部省略要部斜視図。
【図3】第2の耳糸用綜絖を上動した状態を示す一部省略要部斜視図。
【図4】第1の耳糸用綜絖を上動した状態を示す一部省略要部斜視図。
【図5】からみ耳形成機構及びからみ耳の平面図。
【図6】第2の実施の形態を示す一部省略側断面図。
【図7】図6のA−A線拡大断面図。
【図8】第3の実施の形態を示す一部省略斜視図。
【符号の説明】
17,21…第1の耳糸用綜絖、18,22…第2の耳糸用綜絖、19,23…半綜絖、20,24…からみ耳形成機構、25…第1の経路案内手段となる経路安定板、26…第2の経路案内手段となる経路安定板、37,38…経路安定手段となる経路安定板、43…補助目板、E1,E2,E3,E4…耳糸。

Claims (4)

  1. ジャカード装置の通糸により互いに逆方向へ往復動する一対の耳糸用綜絖と、これら往復動する一対の耳糸用綜絖によって交互に連行されて往復動する半綜絖とからなるからみ耳形成機構を備え、前記半綜絖の往復動によって一対の耳糸にからみ耳形成動作を行わせるからみ耳形成装置において、
    隣接する複数のからみ耳形成機構の第1の耳糸用綜絖同士の往復経路を安定させる第1の経路安定手段と、
    隣接する複数のからみ耳形成機構の第2の耳糸用綜絖同士の往復経路を安定させる第2の経路安定手段とを備えた織機におけるからみ耳形成装置。
  2. 前記第1の経路安定手段は、隣合う第1の耳糸用綜絖の一端間を結合する経路安定体であり、前記第2の経路安定手段は、隣合う第2の耳糸用綜絖の一端間を結合する経路安定体である請求項1に記載の織機におけるからみ耳形成装置。
  3. 前記第1の経路安定体と前記第2の経路安定体とは互いにスライド可能に連結している請求項2に記載の織機におけるからみ耳形成装置。
  4. 前記第1の経路安定手段及び第2の経路安定手段は、各耳糸用綜絖をスライド案内する補助目板である請求項1に記載の織機におけるからみ耳形成装置。
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