JP3618971B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、詳しくは特定の樹脂を含有する表面層を有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法は、米国特許第2297691号明細書に示されているように、画像露光の間に受けた照射量に応じて電気抵抗が変化し、かつ暗所では絶縁性である物質をコーティングした支持体よりなる光導電性材料を用いる。この光導電性材料を用いた電子写真感光体に要求される基本的な特性としては、(1)暗所で適当な電位に帯電できること、(2)暗所において電位の逸散が少ないこと、(3)光照射によって速やかに電荷を逸散せしめることなどが挙げられる。
【0003】
従来より、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する無機感光体が広く使用されてきた。しかし、これらは前記(1)〜(3)の条件は満足するが、熱安定性、耐湿性、耐久性、生産性において必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
無機感光体の欠点を克服する目的で、様々な有機光導電性化合物を主成分とする電子写真感光体の開発が近年盛んに行われている。たとえば米国特許第3837851号明細書には、トリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する感光体、米国特許第3871880号明細書にはペリレン顔料の誘導体からなる電荷発生層と3−プロピレンとホルムアルデヒドの縮合体からなる電荷輸送層とからなる感光体等が公知である。
【0005】
さらに有機光導電性化合物は、その化合物によって電子写真感光体の感光波長域を自由に選択することが可能であり、たとえばアゾ顔料では特開昭61−272754号公報、特開昭56−167759号公報に示された物質は、可視領域で高感度を示すと記載されており、また特開昭57−19576号公報、特開昭61−228453号公報で示された化合物は、赤外領域まで感度を有していることが記載されている。
【0006】
これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは、近年進歩の著しいレーザービームプリンター(以下LBPと略す)やLEDプリンターに使用され、その需要度は高くなってきている。
【0007】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は、電気的、機械的双方の特性を満足させるために、電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方、当然のことながら電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。
【0008】
特に繰り返し使用される電子写真感光体においては、その電子写真感光体表面にコロナまたは直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程、表面クリーニングなどの電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性も要求される。
【0009】
具体的には、帯電時のオゾン、および窒素酸化物による電気的劣化や、帯電時の放電、クリーニング部材の摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生したりする機械的劣化、電気的劣化に対する耐久性などが求められている。
【0010】
機械的劣化は、特に無機感光体と異なり、物質的に柔らかいものが多い有機感光体にとって重要で、耐久性向上は特に切望されているものである。
【0011】
上記のような感光体に要求される耐久特性を満足させるために、従来からいろいろ試みがなされてきた。
【0012】
表面層によく使用され摩耗性、電気特性に良好な樹脂としては、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂が注目されているが、前述したような問題点すべてを解決できるわけでもなく、次のような問題点を有している。
【0013】
(1)溶解性に乏しく、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類の一部にしか良好な溶解性を示さないうえ、これらの溶剤は低沸点のため、これらの溶剤で調製した塗工液を用いて感光体を製造すると、塗工面が白化しやすい。また塗工液の固形分管理などにも手間がかかる。
【0014】
(2)ハロゲン化脂肪族炭化水素以外の溶剤に対しては、テトラヒドラフラン、ジオキサン、シクロヘキサンノンあるいはそれらの混合溶剤に一部可溶であるが、その溶液は数日でゲル化するなど経時性が悪く、感光体製造には不向きである。
【0015】
(3)さらに上記(1)、(2)の問題点が改善されたとしても、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂にはソルベントクラックが発生しやすい。
【0016】
(4)加えて従来のポリカーボネート樹脂では、該樹脂で形成された被膜に潤滑性がないため、感光体に傷がつきやすく、電子写真感光体の摩耗量を低くするようなクリーニング設定では画像欠陥になったり、クリーニングブレードの早期の劣化によるクリーニング不良、トナー融着などが生じてしまうことがあった。
【0017】
前記(1)、(2)に挙げた溶液安定性については、ポリマーの構成単位として嵩高いシクロヘキシレン基を有するポリカーボネートZ樹脂を使用するか、あるいはビスフェノールZ、ビスフェノールCなどと共重合させることによって解決されてきた。
【0018】
またソルベントクラックについても、特開平6−51544号公報、特開平6−75415号公報に開示されているように、シリコーン変成ポリカーボネート、エーテル変成ポリカーボネートを用いることにより解決することが可能である。ところが、これら変成ポリカーボネートは、従来のポリカーボネート樹脂に比べソルベントクラックを対策とするためにポリマー内の内部応力に対して柔軟性を持たせている構造をとっているため、結果、重合体本体の機械的強度が低下するという欠点があった。
【0019】
さらに近年、特開昭57−17826号公報、特開昭58−40566号公報に開示してあるような、帯電部材に直接電圧をかけて電子写真感光体に電荷を印加する直接帯電方式が主流となりつつある。
【0020】
これは、導電ゴムなどで構成されたローラー状の帯電部材を直接電子写真感光体に当接させて電荷を印加する方法であり、スコロトロンなどに比べ、オゾン発生量が格段に少ないこと、スコロトロンは帯電器に流す電流の80%前後はシールドに流れるため浪費されるのに対して、直接帯電はこの浪費分がなく非常に経済的であること、などのメリットをもつ。
【0021】
しかし、直接帯電は、パッシュン則による放電による帯電であるため、帯電安定性が非常に悪いという欠点をもつ。この対策として、直流電圧に交流電圧を重畳させた、いわゆるAC/DC帯電方式が考案されている(特開昭63−149668号公報)。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
この帯電方式により、帯電時の安定性は良化したが、ACを重畳するために、電子写真感光体表面の放電量は大幅に増大してしまい、電子写真感光体の削れ量が増加してしまうという欠点を新たに生じ、機械的強度のみならず、電気的強度も要求されるようになってきた。
【0023】
本発明の目的は、従来のポリカーボネート樹脂を表面層として有していた電子写真感光体の問題点を解決し、耐ソルベントクラック性を持ちつつ、機械的強度が強く、かつ直接帯電による耐電気特性が良好であり、製造が容易な電子写真感光体を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明の目的は、導電性支持体および感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1−1)で示される構成単位を有する重合体、下記式(1−2)で示される構成単位を有する重合体、または、下記式(1−3)で示される構成単位を有する重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体によって達成される。
【0025】
【化2】
【0026】
このような構造の重合体または共重合体を含有する表面層を有する本発明の電子写真感光体は、特に優れた耐ソルベントクラック性と機械的強度とAC帯電における耐電気特性を併せ持ち、良好な電子写真特性を持つものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
上記の構成単位において、特に上記式(1−1)で示される構成単位が好ましい。
【0028】
本発明において、上記式(1−1)で示される構成単位を有する重合体は、下記式(3−1)で示されるジオールを、溶解性を上げるためにテレフタル酸塩化物、イソフタル酸塩化物の混合物とアルカリ下で溶媒/水系中で撹拌することにより行われる界面重合で得ることができる。
【0029】
【化3】
【0030】
本発明において、上記式(1−2)で示される構成単位を有する重合体は、下記式(3−2)で示されるジオールを、溶解性を上げるためにテレフタル酸塩化物、イソフタル酸塩化物の混合物とアルカリ下で溶媒/水系中で撹拌することにより行われる界面重合で得ることができる。
【0031】
【化4】
【0032】
本発明において、上記式(1−3)で示される構成単位を有する重合体は、下記式(3−3)で示されるジオールを、溶解性を上げるためにテレフタル酸塩化物、イソフタル酸塩化物の混合物とアルカリ下で溶媒/水系中で撹拌することにより行われる界面重合で得ることができる。
【0033】
【化5】
【0034】
テレフタル酸塩化物、イソフタル酸塩化物の比率は、その重合体の溶解性を考慮して決定されるもので、定説はない。ただし、いずれかの塩化物が30mol%以下になると、合成した重合体の溶解性が極端に低下するので注意が必要である。通常は1/1の比率で合成するのが好ましい。
【0035】
さらに、重合時に溶解性を考慮し、ビスフェノールZやビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールAFなどの他の一般的なビスフェノールから誘導されるジオールと共重合体を作成してもよい。ただし、この場合は上記式(1−1)で示される構成単位、上記式(1−2)で示される構成単位または上記式(1−3)で示される構成単位が全重合体のうち20〜99mol%存在するのが好ましく、より好ましくは50〜99mol%である。
【0036】
本発明による電子写真感光体は、特に優れた耐ソルベントクラック性と機械的強度とAC帯電における耐電気特性をあわせもち、良好な電子写真特性を持っているものである。
【0037】
本発明で用いられる重合体は、構成単位中に剛直性を有するユニットが含有され、電子写真感光体形成時にそのユニットが部分的にガラス化することによって、高分子被膜全体の耐久性を上げるものである。
【0038】
またこの分子内部における部分的ガラス化により分子内密度を上げ且つ非晶質部分と結晶質部分を同一分子内に併せ持つため塗膜形成時に発生する分子内応力をも緩和することができ、それによりソルベントクラックの要因となる薬品が侵入しても内部応力を維持しクラックが生じないと推定される。
【0039】
機械的強度は結晶質部分の存在により強固になるものと推測される。
【0040】
耐電気特性においては電気的劣化による分子切断が中心骨格に活性プロトンが存在せず、さらに、カーボネート結合に比較してアリール基のエステル結合はAC帯電による電流に強く特に耐電気性能が上がっていると考えられる。この理由は確認されていないがカーボネート結合はカルボキシ基の両側に酸素原子があるためダイポールモーメントが大きく電気エネルギーにたいして弱いためと推測される。
【0041】
以下、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0042】
本発明の電子写真感光体は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。
【0043】
使用する導電性支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチックなどが挙げられ、形状はシート状、円筒状などがあげられる。
【0044】
LBPなど画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これはカーボンブラック、金属粒子などの導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μmが適当である。
【0045】
その上に接着機能を有する中間層を設ける。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、などが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μm、好ましくは0.3〜1μmが適当である。
【0046】
中間層の上には電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。機能分離型の場合、電荷発生層は前記電荷発生材料を0.3〜4倍量の結着剤樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は5μm以下、好ましくは0.1〜2μmが適当である。
【0047】
電荷輸送層は、主として電荷輸送材料とバインダー樹脂とを溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成することができる。用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物、チアゾール系化合物などが挙げられる。
【0048】
これらは0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ、塗工、乾燥により電荷輸送層を形成する。電荷輸送層の膜厚は5〜40μm、好ましくは15〜30μmが適当である。
【0049】
【実施例】
以下実施例に従って説明する。
【0050】
(実施例1)
30φ、254mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸せき法で塗布し、140℃、30分熱硬化して、膜厚15μmの導電層を形成した。
【0051】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール、メトキシプロパノール0.2/0.8 20部
【0052】
次にこの上にN−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール65部、n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸せき法で塗布し、膜厚0.5μmの中間層を形成した。
【0053】
次にCuKαのX線回折スペクトルにおける回折角2θ±0.2°が9.0°、14.2°、23.9°、27.1°に強いピークを有するTiOPc4部とポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部およびシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸せき法で塗布し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0054】
次に下記構造式のアミン化合物9部
【0055】
【化6】
【0056】
下記構造式のアミン化合物1部
【0057】
【化7】
【0058】
と表1の条件1に記載の重合体10部をモノクロロベンゼン30部にジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。この塗料を浸せき法で塗布し120℃1時間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
【0059】
この重合体はビフェノールにエチレンオキシドを付加させたジオールを購入し、これを約100倍量の1%水酸化ナトリウム水溶液中に溶解し塩化テトラエチルアンモニウムを加え、これにテレフタル酸クロリドとイソフタル酸クロリドを1:1の比率で溶解させた1,2−ジクロロエタンを投入し10分程度強撹拌したのち大量のヘキサンを投入し回収したものである。なお回収後水洗浄、クロロホルム溶解、メタノール滴下による精製工程を行ったものを用いた。
【0060】
次に評価について説明する。
【0061】
装置はヒューレットパッカード製LBP「レーザージェット4plus」(プロセススピード71mm/sec)を改造して用いた。改造は一次帯電の制御を定電流制御を定電圧制御とした。作成した電子写真感光体をこの装置で28℃90%RH下で通紙耐久をおこなった。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとした。
【0062】
トナーがなくなったならば補給し画像で問題がでるまで耐久した。
【0063】
また、研磨テープを用いたテーパー摩耗試験機を用い15分摩耗させそのときの重量減少分を測定した。
【0064】
さらにソルベントクラック性は表面に樹脂を付着させ48時間放置し顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を観察した。
【0065】
その結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2−10)
電荷輸送層のバインダーに表1の条件2から10に記載のものを用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価した。その結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
なおテレフタル酸塩化物とイソフタル酸塩化物の混合比はモル比で1:1とした。分子量はゲルパーミネーションクロマトグラフィーで測定した。
【0069】
【表2】
【0070】
(比較例1−3)
電荷輸送層のバインダーに表3の条件1から3に記載のものを用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価した。その結果を表4に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、機械的強度を損なうことなく優れた耐ソルベントクラック性を有し、さらに直接帯電による放電に対する耐電気特性が良好であり、製造が容易な、直接帯電に適した電子写真感光体を提供することが可能となった。
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