JP3618910B2 - 電磁石装置の磁界補正方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば核磁気共鳴断層撮影装置(以下、MRIと呼ぶ)などの一様磁界を必要とする電磁石装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
MRI用の電磁石装置では同心状に巻回したコイル群を配置し、中央部に所要の均一度をもつ磁界領域(以下、均一磁界領域と呼ぶ)を形成させている。同心状に配置したコイル群が均一磁界領域内に作る磁界のZ軸成分Bczは次式のように表すことができる。
cz=B+A+A+A+A+・・・ (1)
ここでB は原点(0,0,0)での磁界を、Aはn次の誤差磁界を表し、当該次数の誤差磁界はZ に比例することを示している。
一般に、磁界の高い均一性を求める電磁石装置においては、1式の第2項以下を各コイルで互いに打消し合い、誤差磁界が小さくなるようにコイル群を配置している。
具体的には、各コイルを原点に対して対称に配置することにより、1式における奇数次項を打ち消している。また、次数が大きくなるに従って誤差成分は小さくなるので、MRI等に用いられる電磁石装置では8次項程度までを打ち消す様に、コイル群の位置および起磁力が決められる。コイル群の設計方法については、■SUPER CONDUCTING MAGNET FOR MRI■,John E.C. Williams,IEEE Transaction on Nuclear Science,Vol.NS−31,No.4,August 1984 等に詳しい。
【0003】
しかし、電磁石装置には工作上の誤差や設置場所周囲の磁界環境により誤差磁界が生じる。従って、均一磁界領域内の磁界均一性を高めるためにこれらの誤差磁界を打ち消すような磁界補正装置が必要である。磁界補正装置として、磁界補正用シムコイルや磁性体シムが用いられている。近年、低コストおよびメンテナンスを容易にする等の点から磁性体シムを用いることが多い。
磁性体シムを磁界補正手段として用いることは■“Magnet Field Profiling:Analysis and Correcting Coil Design■,F.Romeo and D.I.Holt,MAGNETIC RESONANCE IN MEDICINE 1,44−65(1984)に詳しい。
主磁界方向(Z軸方向)に沿って、断面積Aを有する磁性体シムを取付位半径a、取付角Φで配置したとき、均一磁界領域内の任意の点P(r,θ,φ)に作る磁界のZ方向成分は次式によって求めることができる。
【0004】
【数1】
Figure 0003618910
【0005】
磁性体シムが作る磁界成分は無数の次数成分からなるが、一般にa>rであるから、nの大きい磁界成分、すなわち次数の大きい項は(r/a) が小さくなり、その磁界成分は無視することができる。
2式は極座標表示であるが、通常用いられる直交座標系との対応は表1の通りである。
【0006】
【表1】
Figure 0003618910
【0007】
表1に示すm=0の場合が1式のZ項に対応する。
2式において、
【0008】
【数2】
Figure 0003618910
【0009】
とする。角度αにおける磁性体のZ軸方向の位置を取付位置の半径aで規格化してβとおけば、角度αは、α=tan−1(1/β)となり、3式より
【0010】
【数3】
Figure 0003618910
【0011】
を得る。
4式から、均一磁界領域での磁性体シムの取付位置と当該磁界成分の関係が求められる。
図1に示したように、コイル収納容器の長さ2Lとすると、磁性体シムの取付位置は、β<L/aという制約を受ける。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、ある磁気特性をもつ磁性体シムは、その取付位置と断面積によって発生する磁界成分が決まる。磁界の均一度補正装置として磁性体シムを用いる場合、一般に入手が容易でかつ安価な鉄が用いられる。また、例えばMRI用の電磁石装置では、小型で短尺、かつ大きな均一磁界領域を要求されるため、磁性体シムの取付位置には多くの制約を受け、磁性体シムにより発生しうる磁界成分は大きさ、極性ともに制限が生じる。このため、磁界の均一度補正に必要な磁界を得るための磁性体シムの必要量が増加することになり、条件によっては所望の磁界補正が不可能になる等の問題があった。
本発明は、より少量の磁性体シムで磁界補正を実現することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による電磁石装置の磁界補正方法においては、同心状に巻回し主磁界を発生するとともに、誤差磁場成分を発生するコイル群と、このコイル群の中央部近傍に設定する均一磁界領域における前記主磁界の均一性を補正するための磁性体シムを備え、磁性体シムの一部をそれによって生成する補正磁界を多項式で表示したときの前記均一磁界領域における特定高次成分がほぼゼロとなる位置に配設するとともに、主磁界を多項式で表示したときの特定高次成分以外の高次成分の一部が、その次数と一致する磁性体シムによる前記補正磁界の高次成分と逆極性の高次磁界成分を誤差磁場成分としてあらかじめ有するようになされた前記コイル群によって補正されるものである。
また、補正磁界の特定高次成分が4次成分、6次成分あるいは8次成分であるとき、補正磁界の一部の高次成分とは逆極性の高次磁界成分をそれぞれ2次成分および8次成分、2次成分および8次成分、2次成分および6次成分とした。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
以下、図を用いてこの発明による電磁石装置の実施形態を説明する。
第1図はこの発明による電磁石装置を示す断面図であり、1はコイル群、2は均一磁界領域、3は磁性体シム、4はコイル群を収納する容器である。
図2および図3は磁性体シムの配置を模式的に示したものである。
MRI用電磁石装置は、開口径が1000mm前後、長さが2000mm前後であり、磁性体シムには長さが10〜200mm程度の鉄片を用いている。実際には、同一形状の鉄片を多数組合せて、鉄片の組合せ個数と取付位置を適当に選び必要な磁場を得ている。
【0015】
磁性体シムによる磁界は、2式によって説明したように関数f(β)の差により決まる。
図4は上述の4式に示した関数f(β)を2次、4次、6次および8次について求めたグラフに、磁性体シムの長さを0.2aとしたとき、2次、4次、6次および8次のそれぞれについて関数f(β)の差が0となるβの2点を書込んだものである。以下、関数f(β)のn次成分をf(β) と記す。
図4から、磁性体シムをβ41からβ42の範囲に取付ければ、f(β) の差がゼロとなり、磁性体シムによる4次の磁界がゼロとなることがわかる。便宜上、上記β41からβ42の範囲に取付ける磁性体シムを磁性体シム4と呼ぶ。このとき他の次数の磁界は、2次すなわちf(β) の差は同極性、6次すなわちf(β) の差は逆極性、8次すなわちf(β) の差は同極性である。
【0016】
(β) の差がゼロとなる位置は上記β41からβ42の範囲のみではなく、β43からβ44の範囲があり、このときf(β) の差は逆極性、f(β) の差は同極性、f(β) の差は逆極性となるが、この場合はβ41からβ42の範囲に取付けた場合に比べて他の次数の磁界は小さくなり補正効果が減少するのでβ41からβ42の範囲に取付けるのがもっとも効果的である。
【0017】
磁性体シム4による2次、6次および8次の成分とは極性が逆の誤差磁場成分をコイル群によって生成するようにしておくことにより、磁界補正に用いる磁性体シムの量を少なくすることができる。
【0018】
誤差磁界の補正は電磁石装置における開口内部の数箇所に取り付けた磁性体シム群により行われるのが一般的である。磁性体シム4による4次の磁界はゼロとなるので、4次の磁界は他の位置に取付ける磁性体シム群により補正する必要がある。これらの磁性体シム群は4次以外の磁界を発生するので、それらを打ち消す必要がある。磁性体シム4による4次以外の磁場も含めて、磁性体の量を決めればよい。
【0019】
同様の観点から、β61からβ62の範囲に磁性体シム(この磁性体シムを磁性体シム6と呼ぶ)を取付ければ、f(β) の差がゼロとなり、6次の磁界がゼロとなる。このとき他の次数の磁界は、2次については逆極性、4次については同極性、8次については逆極性である。
磁性体シム6による2次、4次および8次の成分とは極性が逆の誤差磁場成分をコイル群によって生成するようにしておくことにより、磁界補正に用いる磁性体シムの量を少なくすることが可能である。
β63からβ64の範囲に磁性体シムを取付ければf(β) の差がゼロとなるのはf(β) と同様であり、このとき2次については逆極性、4次については同極性、8次については逆極性である。
【0020】
さらに、β81からβ82の範囲に磁性体シム(この磁性体シムを磁性体シム8と呼ぶ)を取付ければ、f(β) の差がゼロとなり、8次の磁界がゼロとなる。このとき他の次数の磁界は、2次については同極性、4次については逆極性、6次については同極性である。
磁性体シム8による2次、4次および6次の成分とは極性が逆の誤差磁場成分をあらかじめコイル群によって生成するようにしておくことにより、磁界補正に用いる磁性体シムの量を少なくすることが可能である。
β83からβ84の範囲に磁性体シムを取付ければf(β) の差がゼロとなるのもf(β) と同様であり、このとき2次については逆極性、4次については同極性、6次については逆極性である。
【0021】
磁性体シム4、6および8を単独で用いるものとして説明したが、磁性体シム4、6および8を組合せて用いることも可能である。もちろん、磁性体シムの長さを0.2aに限定する必要はなく、任意の長さの磁性体シムを用いた場合もこの発明の範囲を逸脱するものではない。
【0022】
本発明による電磁石装置の磁界補正方法においては、同心状に巻回し主磁界を発生するとともに、誤差磁場成分を発生するコイル群と、このコイル群の中央部近傍に設定する均一磁界領域における前記主磁界の均一性を補正するための磁性体シムを備え、磁性体シムの一部をそれによって生成する補正磁界を多項式で表示したときの前記均一磁界領域における特定高次成分がほぼゼロとなる位置に配設するとともに、主磁界を多項式で表示したときの特定高次成分以外の高次成分の一部が、その次数と一致する磁性体シムによる前記補正磁界の高次成分と逆極性の高次磁界成分を誤差磁場成分としてあらかじめ有するようになされた前記コイル群によって補正されるので、
あるいは、補正磁界の特定高次成分が4次成分、6次成分あるいは8次成分であるとき、補正磁界の一部の高次成分とは逆極性の高次磁界成分をそれぞれ2次成分および8次成分、2次成分および8次成分、2次成分および6次成分としたので、
磁性体シムにより発生する特定高次成分以外の高次成分とは極性が逆の磁界成分をコイル群によってあらかじめ生成することができ、磁界補正に用いる磁性体シムの量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電磁石装置を示す断面図である。
【図2】本発明による電磁石装置の磁性体シムの配置を説明するための模式図である。
【図3】本発明による電磁石装置の磁性体シムの配置を説明するための模式図である。
【図4】本発明による電磁石装置の磁性体シムの取付位置を決定するための関数f(β)における2次、4次、6次および8次のグラフである。
【符号の説明】
1 コイル群 2 均一磁界領域 3 磁性体シム 4 容器

Claims (4)

  1. 同心状に巻回し主磁界を発生するとともに、誤差磁場成分を発生するコイル群と、
    このコイル群の中央部近傍に設定する均一磁界領域における前記主磁界の均一性を補正するための磁性体シムを備える電磁石装置の磁界補正方法において、
    前記磁性体シムの一部をそれによって生成する補正磁界を多項式で表示したときの前記均一磁界領域における特定高次成分がほぼゼロとなる位置に配設するとともに、
    前記主磁界を多項式で表示したときの特定高次成分以外の高次成分の一部が、その次数と一致する磁性体シムによる前記補正磁界の高次成分と逆極性の高次磁界成分を誤差磁場成分としてあらかじめ有するようになされた前記コイル群によって補正されることを特徴とする電磁石装置の磁界補正方法
  2. 前記補正磁界の特定高次成分が4次成分であって、前記補正磁界の一部の高次成分とは逆極性の高次磁界成分が2次成分および8次成分であることを特徴とする請求項1記載の電磁石装置の磁界補正方法
  3. 前記補正磁界の特定高次成分が6次成分であって、前記補正磁界の一部の高次成分とは逆極性の高次磁界成分が2次成分および8次成分であることを特徴とする請求項1記載の電磁石装置の磁界補正方法
  4. 前記補正磁界の特定高次成分が8次成分であって、前記補正磁界の一部の高次成分とは逆極性の高次磁界成分が2次成分および6次成分であることを特徴とする請求項1記載の電磁石装置の磁界補正方法
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