JP3618397B2 - 舶用減速逆転機 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、主に、左右に並設するスクリュー軸を、反転方向に回転する所謂二基二軸型の船舶動力系に使用する舶用減速逆転機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、舶用減速逆転機のギア配置構成は、例えば実公昭57−24998号公報中の第4図及び第5図に示す如きもので、入力軸と同軸上に配置した、正転ギア又は逆転ギア(以後、総称して「正逆転ギア」)と、別軸とした逆転ギア又は正転ギアを、出力ギアに噛合させた構成のものであって、正転ギア軸と逆転ギア軸がクラッチ軸となっており、いずれかのクラッチを嵌脱することで、出力軸の回転方向を決定していた。
【0003】
また、二つの機関を有し、各々減速逆転機を介して、左右二つのスクリュー軸を駆動する、いわゆる二基二軸型の動力系は、従来、特公昭56−40079号公報中の第10図にて開示されている如きものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上のような従来の舶用減速逆転機において、まず、従来のギア配設構成においては、入力軸が正転ギアまたは逆転ギアのどちらかのギア軸に直結された構成となっていて、正逆転ギアの増速比を大きく取れない。
つまり、正逆転ギアのクラッチ軸の回転数を多く取れないので、クラッチ負荷が高く、大規模クラッチを必要とする。
また、入力軸を正逆転ギアのギア軸と別個にて、入力軸付設の入力ギアに正逆転ギアを噛合させる構成とすれば、正逆転ギアの増速比は大きく取れて、クラッチ負荷も少なくてすむが、正逆転ギアのクラッチ軸に付設するピニオンに直接出力ギアを噛合させると、入力軸と両クラッチ軸との間が離れているために、今度は入力軸と出力軸との高低差が逆に取れなくなるという不具合が生じる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような手段を用いる。
舶用減速逆転機Aにおいて、入力軸IS上の入力ギアIGに、クラッチ軸CS2を有する正転ギアG2、及びクラッチ軸CS1を有する逆転ギアG1の一方を噛合させ、各クラッチ軸CS2・CS1のクラッチCL2・CL1を挟んで正転ギアG2及び逆転ギアG1の反対側にピニオンP2・P1を付設し、両ピニオンP2・P1を中間ギアMGに噛合させ、該中間ギアMGに出力軸OS上の出力ギアOGを噛合させ、前記入力軸ISと出力軸OSとの間の高低差Hを構成し、該舶用減速逆転機Aを内装するハウジングAHは、上下に四つのハウジングAH1・AH2・AH3・AH4に分割され、上部の二つのハウジングAH1・AH2の分割面はクラッチ軸CS1・CS2を軸受支持する上下中間分割面に、中間の二つのハウジングAH2・AH3の分割面は入力軸ISを軸受支持する上下中間分割面に、下部の二つハウジングAH3・AH4の分割面は出力軸OSを軸受支持する上下中間分割面に構成し、中間軸MSは中間のハウジングAH2内に固設され、中間ギアMGが軸受を介して中間軸MS上に遊嵌環設されているのである。
【0006】
【作用】
まず、舶用減速逆転機のギア配設構造においては、入力軸と正逆転ギア軸とを別個とすることで、正逆転ギアの増速比を確保でき、該正逆転ギア軸であるクラッチ軸のクラッチ負荷を少なくできる。また、ピニオンと出力ギアとの間に中間ギアを介設することで、出力軸と入力軸との高低差が確保できるのである。
【0007】
【実施例】
次に、添付の図面に示した実施例に基づいて、本発明の構成を説明する。
図1は舶用減速逆転機Aのギア構成を示す後面略図、
図2は同じく組立斜視図、
図3は舶用減速逆転機Aの後面図、
図4は同じく縦断面図、
図5は船舶の左舷側機関室に配設した舶用減速逆転機Aの後面図である。
【0008】
図6は舶用減速逆転機BのハウジングBHの正面図、
図7は同じく後面図、
図8は入出力軸間の高低差をH1に設定した左舷側舶用減速逆転機BLのギア構成を示す後面略図、
図9は同じく平面略図、
図10は入出力軸間の高低差をH1に設定した右舷側舶用減速逆転機BRのギア構成を示す後面略図である。
【0009】
図11は同じく平面略図、
図12は入出力軸間の高低差をH2に設定した左舷側舶用減速逆転機BL’のギア構成を示す後面略図、
図13は同じく平面略図、
図14は入出力軸間の高低差をH2に設定した右舷側舶用減速逆転機BR’のギア構成を示す後面略図、
図15は同じく平面略図、
図16は入出力軸間の高低差をH1に設定した舶用減速逆転機Bの側面略図である。
【0010】
図17は入出力軸間の構成差をH2に設定した舶用減速逆転機B’の側面略図、
図18は舶用減速逆転機BL’・BR’よりなる二基二軸型船舶動力系を示す船尾部分の平面略図、
図19は二基二軸型船舶動力系における油圧クラッチ駆動用油圧回路図、
図20は潤滑油調圧弁V3の低圧調圧時における側面断面図、
図21は同じく高圧調圧時における側面断面図、
図22は潤滑油調圧弁V3の特性を示すためのポンプ入力軸回転数Fに対する潤滑油圧OPの変位を示すグラフである。
【0011】
まず、図1乃至図5に示す、舶用減速逆転機Aの構成について説明する。
このギア構成を図1及び図2より説明する。
エンジン出力軸にて伝動される入力軸IS端に固設される入力ギアIGの上方にて、逆転ギアG1が噛合しており、該逆転ギアG1に正転ギアG2が噛合している(入力ギアIGと正転ギアG2は噛合していない。)。
逆転ギアG1及び正転ギアG2のギア軸は、クラッチ軸CS1・CS2となっていて、各々クラッチCL1・CL2が介設されている。各クラッチ軸CS1・CS2において、各クラッチCL1・CL2を挟んで該逆転ギアG1及び正転ギアG2と反対側に、各々ピニオンP1・P2が固設されており、両ピニオンP1・P2の下方にて中間ギアMGが噛合し、更にその下方にて出力ギアOGが噛合している。出力ギアOGのギア軸である出力軸OSはスクリュー軸Sに直結している。
【0012】
このようなギア配設構成において、クラッチCL1を嵌合、クラッチCL2を離脱させると、入力軸IS〜逆転ギアG1〜ピニオンP1〜中間ギアMG〜出力ギアOGと伝動され、出力軸OSは入力軸ISと逆側に回転駆動される。
また、クラッチCL1を離脱、クラッチCL2を嵌合させると、入力軸IS〜正転ギアG2〜ピニオンP2〜中間ギアMG〜出力ギアOGと伝動され、出力軸OSは入力軸ISと同一側に回転駆動される。
二基二軸型の舶用減速逆転機として使用する場合には、図18の如く、左右にこの構成の減速逆転機を並設し(この実施例は後記の減速逆転機B’に関するものであるが、減速逆転機Aも同様にして配設される。)、前進または後進の直進時には、片方の出力軸OSを正転させる場合には、もう片方の出力軸OSを逆転駆動させて、互いに反転方向に回転駆動させて推進力を得る。
また、左右に旋回する場合には、片方の減速逆転機の出力軸OSは駆動停止し、もう片方の減速逆転機の出力軸OSのみを正転または逆転させて、前進旋回または後進旋回させるものである。
【0013】
このようなギア構成の中で、従来は入力軸を逆転ギアまたは正転ギアのギア軸(クラッチ軸)と同一軸、即ち直結していたが、本実施例では、入力軸ISを該ギア軸と別体とし、入力ギアIGを設けて、逆転ギアG1に噛合させたので、逆転ギアG1のギア軸であるクラッチ軸CS1は、ギア噛合によって、例えば入力軸ISの回転数の1.2〜1.3倍に増速回転される。
また、該逆転ギアG1と正転ギアG2との噛合により、クラッチ軸CS2も同様である。つまり、両クラッチ軸CS1・CS2が、従来の入力軸ISと同一である場合よりも増速回転されている。その分、各クラッチ軸CS1・CS2に介設されるクラッチCL1・CL2の嵌脱負荷が少なくてすむ。
【0014】
また、入力軸ISをクラッチ軸CS1と別体とすることで、従来は、各クラッチ軸CS1・CS2のピニオンP1・P2と噛合するギアを出力ギアとしていたものの、これでは入力ギアIGと重合する位置関係となって、入力軸と出力軸との軸間距離が得られない。 通常、船体機関室内に配設され、入力軸ISに直結されるエンジン出力軸と、船底より下方に突設されるスクリュー軸に直結される出力軸とは、高低差を設けなければならず、その差も概ね一定に規格されている。
例えば図5の如く配設した舶用減速逆転機Aにおいては、入力軸ISと出力軸OSとの間に高低差Hをつけなければならない。
そこで入力軸ISよりも出力軸OSを下方に配設して、入力軸ISと出力軸OSとの高低差を確保すべく、両ピニオンP1・P2に噛合するギアを中間ギアMGとし、更にその下方にて出力ギアOGを噛合させるようにし、これによって、入力軸ISと出力軸OSとの高低差Hを得ているのである。
【0015】
次に、このようなギア構成である減速逆転機のハウジングAHの構成を、図3及び図4より説明する。
ハウジングAHは、入力軸IS、クラッチ軸CS1・CS2、中間ギアMGのギア軸である中間軸MS、及び出力軸OSを軸支可能とすべく、上下に四つに分割されており、上方よりハウジングAH1・AH2・AH3・AH4となっている。
ハウジングAH4・AH3の分割面は出力軸OSを軸受支持する上下中間分割面、ハウジングAH3・AH2の分割面は入力軸ISを軸受支持する上下中間分割面、ハウジングAH2・AH1の分割面はクラッチ軸CS1・CS2を軸受支持する上下中間分割面となっている。
また、入力軸IS、クラッチ軸CS1・CS2、及び出力軸OSはハウジングAH内において軸受にて遊嵌軸支されており、中間軸MSはハウジングAH内にて固設されているが、中間ギアMGが軸受を介して中間軸MS上に遊嵌環設されていて、ピニオンP1・P2の回転に追従して中間ギアMGが自由に回転可能となっている。
また、入力軸IS・出力軸OSのハウジングAHより外部に突出した部位は、それぞれハウジング側面に固設した入力継手1・出力継手2にて軸支されている。
【0016】
なお、油圧クラッチである各クラッチCL1・CL2、更にハウジングAH内における各軸受等に作動油や潤滑油を供給すべく、該ハウジングAH内には、油路(例えばR)が穿設されている。また、ハウジングAHの外側に各種の油圧バルブV等が配設されていて、これらの油路に圧油供給を行っている。
【0017】
舶用減速逆転機Aの構成は以上の如くであり、次に、図6乃至図18図示の舶用減速逆転機B・B’の構成について説明する。
該舶用減速逆転機B・B’のギア構成は、入力軸ISを、正逆転ギアG1’・G2’の各ギア軸であるクラッチ軸CS1’・CS2’のいずれかに直結し、両クラッチ軸CS1’・CS2’に付設するピニオンP1’・P2’に直接出力ギアOSを噛合させたものであって、どちらとも同一構成のハウジングBHを使用するが、入出力軸間の高低差の違いにより、入力軸の取付仕様を異にする。
【0018】
舶用減速逆転機B・B’共通のハウジング内のギア構成を図8乃至図17より説明する。
出力ギアOGの上方にピニオンP1’が、また、斜め上方にピニオンP2’が噛合しており、各ピニオンP1’・P2’の回転軸であるクラッチ軸CS1’・CS2’において、クラッチCL1’・CL2’を介して正逆転ギアG1’・G2’が各々付設されており、両正逆転ギアG1’・G2’が噛合している。
【0019】
両ピニオンP1’・P2’及び正逆転ギアG1’・G2’は同径であることから、出力軸ISとクラッチ軸CS1’との軸間距離と、出力軸ISとクラッチ軸CS2’との軸間距離は同一で、減速比も等しい。但し、噛合箇所が相違する。入力軸ISはクラッチ軸CS1’・CS2’のどちらかに直結させるが、ここで、船舶の形状や大きさによって、入力軸と出力軸との高低差が大きい規格のもの(高低差H1)と小さい規格のもの(高低差H2)とがある。
高低差が大きい場合、即ち、高低差H1としたい場合には、図8乃至図11及び図16の如く、入力軸ISを、出力ギアOGの上方の正逆転ギアG1’のクラッチ軸CS1’に直結させる。
この場合において、クラッチ軸CS1’のクラッチCL1’を嵌合、クラッチ軸CS2’のクラッチCL2’を離脱すると、クラッチ軸CS1’よりピニオンP1’を介して出力ギアOGを入力軸ISと逆側に回転駆動させる。クラッチ軸CS1’のクラッチCL1’を離脱、クラッチ軸CS2’のクラッチCL2’を嵌合させると、正逆転ギアG1’・正逆転ギアG2’・ピニオンP2’を介して出力ギアOGを入力軸ISと逆側に回転駆動させる。
この入力軸配置構成の減速逆転機においては、側面視では図16のように長い高低差H1が確保できている一方、平面視では図9及び図11のように、入力軸ISと出力軸OS(入力継手1と出力継手2)とが略一直線上に配置される。
【0020】
一方、入力軸と出力軸との高低差を小さくしたい時には、入力軸ISをクラッチ軸CS2’に直結させる。この場合、クラッチ軸CS2’のクラッチCL2’を嵌合、クラッチ軸CS1’のクラッチCL1’を離脱させると、クラッチ軸CS2’よりピニオンP2’を介して出力ギアOGを入力軸ISの回転側と逆側に回転駆動させ、クラッチ軸CS2’のクラッチCL2’を離脱、クラッチ軸CS1’のクラッチCL1’を嵌合すると、正逆転クラッチCS2’・CS1’、ピニオンP1’を介して、出力ギアOGを入力軸ISの回転側に回転駆動させる。この構成にすると、側面視では図17のように、入力軸ISと出力軸OSとの高低差が短い高低差H2となっており、更に平面視では、図13及び図15のように、入力軸ISと出力軸OS(入力継手1と出力継手2)との間に左右方向にLのずれ幅がある。
【0021】
このようなギア構成の減速逆転機Bにおいて、ハウジングBHは、図6及び図7の如く、クラッチ軸CS1’・CS2’の軸芯を結ぶ面によってハウジングBH1・BH2に分割され、また、出力軸ISを軸受支持する上下中間分割面において、上下にBH2・BH3に分割されて、上下に3つに分割可能として、各クラッチ軸CS1’・CS2’及び出力軸OSをハウジング内に軸支できるようにしている。
【0022】
この舶用減速逆転機BのハウジングBHにおいて、前後面は図8及び図9の如く、反転状の同一形状であり、どちらを前面、後面にしても、入力継手1及び出力継手2を取付可能としている。従って、該ハウジングBHを前後反転してギアを取り付けることによって、二基二軸の左舷用・右舷用の減速逆転機を構成することができる。
【0023】
例えば、入力軸ISをクラッチ軸CS1’に直結させて、入出力軸間の高低差をH1とした状態で二基二軸型の動力系を構成する場合には、左舷側に配設する減速逆転機BLの構成は、図8及び図9に示すものとなり、右舷側の減速逆転機BRは、図10及び図11に示すものとなる。
【0024】
また、入出力軸間の高低差をH2とし、また、入出力軸間に左右にLのずれ幅を持たせて、図18に示す如き二基二軸型の動力系を構成したい時には、左舷側に配設する減速逆転機BL’の構成は図12及び図13の如きものとし、右舷側に配設する減速逆転機BR’の構成は図14及び図15の如きものとなる。こうして、同一構成のハウジングBHを反転させてギアを内設することにより、二基二軸型動力系を構成する左右舷に反転構成の減速逆転機を配設できるものであり、左舷用、右舷用と別のハウジングを用意する必要がない。
【0025】
次に、舶用減速逆転機の油圧クラッチの潤滑油調圧機構について説明する。
図19図示の油圧クラッチ駆動用の油圧回路において、ポンプPより切換バルブV1を介して油圧クラッチCL1・CL2に油路R1が介設されているが、切換バルブV1の手前において、該切換バルブV1及び油圧クラッチCL1・CL2への油圧を調節するための調圧弁V2を有する調圧油路R2が分岐しており、この調圧油路R2より更に低圧油を取り出して、各油圧クラッチCL1・CL2への潤滑油路R3を設けている。この潤滑油路R3への油圧調節のため、調圧油路R2の潤滑油路R3への分岐点とドレンタンクDTとの間に潤滑油調圧弁V3が介設されている。
【0026】
この中で、調圧弁V2は、油圧クラッチ作動油の油圧を調節するもので、エンジン低速回転時には一定の低圧作動油を、高速回転時には高圧作動油を供給する構造となっており、例えば特開昭59−26628に開示されている如きものがある。また、潤滑油調圧弁V3も、油圧クラッチの潤滑油を、エンジン低速回転時には、潤滑油の油圧に油圧クラッチが誤作動しないように低圧にて供給し、高速回転時には、潤滑及び冷却効果を高めるため、高圧で供給する構造となっている。
【0027】
図20及び図21に示す実施例は、この潤滑油調圧弁V3についての改良構成に関する。従来の潤滑油調圧弁は、シリンダー内においてバネ係数の高いバネを嵌入し、バネの摺動量によって潤滑油路の開口面積を調節する型式のものであった。即ち、シリンダーにおける圧油吸入口側に連通した潤滑油路が、油圧ポンプ側からの油圧が低圧の場合、バネの摺動量が少ないので、潤滑油路への圧油流入量が少なくなり、高圧の場合は、バネ摺動量が多くなって、潤滑油路への圧油流入量が多くなるという構成である。
【0028】
しかし、この場合、シリンダー内スペースの限定等の条件から、バネ係数の設定が困難である。バネ係数を高く設定した場合には、急速に高圧の潤滑圧油を得たくても、なかなかバネが収縮せず、急には高圧の潤滑圧油が得られない。これは、油圧クラッチの潤滑不足及び冷却不足を招き、油圧クラッチの摩耗を早めることとなる。逆にバネ係数を低くすれば、少しの油圧変動にも摺動し、摺動頻度が高いことから、バネ形状に歪みが生じて、一定の低圧に潤滑油圧を抑えた状態からの圧力上昇点に当たるポンプ入力軸の回転数(図22にあってはXに当たる)に変動を生じる。つまり圧力の設定精度が悪くなる。
【0029】
図20及び図21図示の本実施例の潤滑油調圧弁V3においては、シリンダー3内において、ピストン4を設け、該ピストン4より圧油吸入側と反対側にリミッター5を延設し、該リミッター5にバネ係数の低いバネ6を巻回している。リミッター5は、ポンプ側からピストンを押し込む油圧が高圧限界となった時に、シリンダー壁面に押当するようになっており、図22の(c)のように、ポンプ回転数(エンジン回転数)Fが一定以上多くなって、高圧限界を越える高圧油が弁内に吸入されても、一定の高圧潤滑油を潤滑油路C3に流入させる構成となっている。
また、バネ6のバネ係数を低く抑えることにより、図22中(b)で表される高圧への立ち上がりが急勾配になり、速やかに潤滑及び冷却に充分な潤滑油量を得られる。そして、ポンプ(エンジン)回転数の低い時には、図22中(a)の如く、油圧クラッチの潤滑油量が低く一定に抑えられて、高圧潤滑油によってクラッチが不必要に作動してしまうのを回避するのである。なお、低速設定から油圧上昇開始点のポンプ回転数Xは、リミッター5とピストン4との間に介設するシム7の調節に基づくピストン4の位置調節にて調節される。
【0030】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、次のような効果を奏する。
舶用減速逆転機Aにおいて、入力軸IS上の入力ギアIGに、クラッチ軸CS2を有する正転ギアG2、及びクラッチ軸CS1を有する逆転ギアG1の一方を噛合させ、各クラッチ軸CS2・CS1のクラッチCL2・CL1を挟んで正転ギアG2及び逆転ギアG1の反対側にピニオンP2・P1を付設し、両ピニオンP2・P1を中間ギアMGに噛合させ、該中間ギアMGに出力軸OS上の出力ギアOGを噛合させ、前記入力軸ISと出力軸OSとの間の高低差Hを構成し、該舶用減速逆転機Aを内装するハウジングAHは、上下に四つのハウジングAH1・AH2・AH3・AH4に分割され、上部の二つのハウジングAH1・AH2の分割面はクラッチ軸CS1・CS2を軸受支持する上下中間分割面に、中間の二つのハウジングAH2・AH3の分割面は入力軸ISを軸受支持する上下中間分割面に、下部の二つハウジングAH3・AH4の分割面は出力軸OSを軸受支持する上下中間分割面に構成し、中間軸MSは中間のハウジングAH2内に固設され、中間ギアMGが軸受を介して中間軸MS上に遊嵌環設されているので、入力軸とクラッチ軸を直結せず別体として、ギア噛合させることによって、クラッチ軸が増速可能、即ち、回転数を多くすることができ、クラッチの負荷を軽減することができ、従って、クラッチをコンパクトにすることが可能となる。
また、入力軸とクラッチ軸とを別体としたことに伴って、クラッチ軸のピニオンと噛合するギアを中間ギアとし、中間ギアの下方に更に出力ギアを噛合させることで、入力軸と出力軸との規格の高低差Hを確保することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】舶用減速逆転機Aのギア構成を示す後面略図である。
【図2】同じく組立斜視図である。
【図3】舶用減速逆転機Aの後面図である。
【図4】同じく縦断面図である。
【図5】船舶の左舷側機関室に配設した舶用減速逆転機Aの後面図である。
【図6】舶用減速逆転機BのハウジングBHの正面図である。
【図7】同じく後面図である。
【図8】入出力軸間の高低差をH1に設定した左舷側舶用減速逆転機BLのギア構成を示す後面略図である。
【図9】同じく平面略図である。
【図10】入出力軸間の高低差をH1に設定した右舷側舶用減速逆転機BRのギア構成を示す後面略図である。
【図11】同じく平面略図である。
【図12】入出力軸間の高低差をH2に設定した左舷側舶用減速逆転機BL’のギア構成を示す後面略図である。
【図13】同じく平面略図である。
【図14】入出力軸間の高低差をH2に設定した右舷側舶用減速逆転機BR’のギア構成を示す後面略図である。
【図15】同じく平面略図である。
【図16】入出力軸間の高低差をH1に設定した舶用減速逆転機Bの側面略図である。
【図17】入出力軸間の構成差をH2に設定した舶用減速逆転機B’の側面略図である。
【図18】舶用減速逆転機BL’・BR’よりなる二基二軸型船舶動力系を示す船尾部分の平面略図である。
【図19】二基二軸型船舶動力系における油圧クラッチ駆動用油圧回路図である。
【図20】潤滑油調圧弁V3の低圧調圧時における側面断面図である。
【図21】同じく高圧調圧時における側面断面図である。
【図22】潤滑油調圧弁V3の特性を示すためのポンプ入力軸回転数Fに対する潤滑油圧OPの変位を示すグラフ図である。
【符号の説明】
A・B・B’ 舶用減速逆転機
IS 入力軸
IG 入力ギア
OS 出力軸
OG 出力ギア
CS1・CS2・CS1’・CS2’ クラッチ軸
CL1・CL2・CL1’・CL2’ 油圧クラッチ
G1 逆転ギア
G2 正転ギア
G1’ 正逆転ギア
G2’ 正逆転ギア
P1・P2・P1’・P2’ ピニオン
MS 中間軸
MG 中間ギア
AH・BH ハウジング
1 入力継手
2 出力継手

Claims (1)

  1. 舶用減速逆転機Aにおいて、入力軸IS上の入力ギアIGに、クラッチ軸CS2を有する正転ギアG2、及びクラッチ軸CS1を有する逆転ギアG1の一方を噛合させ、
    各クラッチ軸CS2・CS1のクラッチCL2・CL1を挟んで正転ギアG2及び逆転ギアG1の反対側にピニオンP2・P1を付設し、両ピニオンP2・P1を中間ギアMGに噛合させ、該中間ギアMGに出力軸OS上の出力ギアOGを噛合させ、
    前記入力軸ISと出力軸OSとの間の高低差Hを構成し、
    該舶用減速逆転機Aを内装するハウジングAHは、上下に四つのハウジングAH1・AH2・AH3・AH4に分割され、
    上部の二つのハウジングAH1・AH2の分割面はクラッチ軸CS1・CS2を軸受支持する上下中間分割面に、中間の二つのハウジングAH2・AH3の分割面は入力軸ISを軸受支持する上下中間分割面に、下部の二つハウジングAH3・AH4の分割面は出力軸OSを軸受支持する上下中間分割面に構成し、
    中間軸MSは中間のハウジングAH2内に固設され、中間ギアMGが軸受を介して中間軸MS上に遊嵌環設されていることを特徴とする舶用減速逆転機。
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