JP3618171B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)、特に被検体の体軸に直交する方向に静磁場を形成する方式の傾斜磁場発生装置が発生する振動及び騒音低減を図ったMRI装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は、静磁場内に置かれた検査対象に電磁波を照射したときに検査対象を構成する原子の原子核に生じる核磁気共鳴現象を利用し、検査対象からの核磁気共鳴信号を検出し、この信号を使って画像再構成することにより検査対象の物理的性質をあらわす画像を得るものであり、イメージングの位置情報を付与するために静磁場に重畳して傾斜磁場が印加される。
【0003】
この傾斜磁場は互いに直交する3軸方向についてそれぞれ発生させるために3つの傾斜磁場コイルが設けられ、これら傾斜磁場コイルは通常FRP等の絶縁性の保持部材に一体化されて静磁場発生装置の発生する磁場内に配置される。これら傾斜磁場コイルは静磁場の方向によって形状が異なり、静磁場方向が被検者の体軸方向と平行な方向の場合には円筒状傾斜磁場コイルが、静磁場方向が被検者の体軸方向と直交する方向の場合には平板状の傾斜磁場コイルが一般的に採用される。
【0004】
また3つの傾斜磁場コイルはそれぞれ電源装置に接続され、MRI装置の検査条件に応じて、適当なタイミング及び電圧で駆動され、パルス状電流が印加される。磁場内でパルス電流を流すことによってフレミングの左手の法則に従い、ローレンツ力が作用する。そしてこの電磁力が傾斜磁場コイルを変形させようとし、騒音、振動が発生する。
【0005】
この消音のため、従来、1)装置外周を覆う化粧カバーの内側に吸音材等を設け傾斜磁場の騒音を低減すると共に、傾斜磁場コイルを保持する保持部材に制振材料を用い、制振材料のダンピング特性を利用して振動振幅の絶対値を軽減すると共に、減衰時間を短くする方法、2)傾斜磁場コイルの騒音を被検者耳元に配置したマイクで検出し、その音と逆位相の音を被検者耳元のスピーカで発生するとともに、さらにスピーカからの音がマイクで検出されるので、その時の音響エネルギーが最小になるようにスピーカ出力をコントロールする方法等が提案されている。
【0006】
しかし、1)の方法では騒音は十分に減衰せず、十分なダンピング効果を得ようとすると、保持部材の剛性が下がることになり、傾斜磁場コイルの変位が大きくなるため、高精度化の要請に合わないという問題があり、2)の方法ではスピーカを常に被検者の耳もとに位置させる必要があるため、被検者に違和感や不快感を与えるという問題があった。
【0007】
このため本発明者らは、円筒状傾斜磁場コイルについてその駆動時に生じる上記ローレンツ力を打ち消すように電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する変換素子を配置したMRI装置を提案している(特願平6−68732号、特願平6−177137号等)。またMRI装置への適用ではないが、圧電素子を使用して装置振動を検出し、さらにその検出信号と逆位相の振動を発生させ振動を打ち消す方法は、米国特許第5022272号に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら円筒状傾斜磁場コイルでは、ローレンツ力はコイルの配置された面に対し直交する方向に働き、これにより保持部材が変形し或いは変形のモーメントを生じるのに対し、平板状傾斜磁場コイルでは、ローレンツ力は平板の面内方向に生じる。このため圧電素子のような電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する変換素子を、ローレンツ力を打ち消すような配置で円筒状傾斜磁場コイルに設ける振動抑制方法を、平板状傾斜磁場コイルにそのまま採用することはできない。
【0009】
また米国特許第5022272号に記載されたように圧電素子によって振動を検出し、その検出信号をフィードバックして振動を打ち消す方法では、複雑な変形を伴うMRI装置の傾斜磁場コイルに適用することは困難であり、また応答性の点からも傾斜磁場コイルの位置の高精度が必要とされるMRI装置の要請を満たすことができない。
【0010】
そこで本発明の目的は、被検体の体軸に直交する方向に静磁場を形成するMRI装置において傾斜磁場コイルの振動、騒音を効率良くキャンセルすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成する本発明のMRI装置は、傾斜磁場発生手段が、少なくとも1つの傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル導体と、この傾斜磁場コイル導体を保持する平板状保持部材とを備え、この保持部材にその振動モードを打ち消すように複数の電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換可能な変換素子を配置したものである。
【0012】
傾斜磁場コイル駆動時には平板の面内にローレンツカが働き、それによって保持部材はその形状に依存する固有振動モードで振動する。この振動モードを打ち消すように変換素子を配置することにより、振動とそれに伴う騒音を効率良くキャンセルすることができる。振動モードを打ち消す配置とは、保持部材の振動による節を横切るように配置することであり、保持部材が略円盤状保持部材の場合には略同心円状に配置する。
【0013】
また本発明のMRI装置は、傾斜磁場発生手段が、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル導体と、この傾斜磁場コイル導体を保持する第一の平板状保持部材と、傾斜磁場コイル導体によって発生する傾斜磁場が静磁場発生手段側に漏れるのを遮蔽するシールドコイル導体と、このシールドコイル導体を保持する第二の平板状保持部材とを備え、第一及び第二の保持部材を同一周波数に対する振動モードが同一になるように連結部材で連結したものである。
【0014】
傾斜磁場コイル導体及びその保持部材と、シールドコイル導体及びその保持部材とは、静磁場発生手段と傾斜磁場コイルとの位置関係で決まる所定間隔を置いて配置され、それぞれ独立した振動源となり得る。これらを連結部材で連結することにより、同一の振動モードで振動することになるので一体として振動の抑制することが可能となる。従って、第一及び第二の保持部材の少なくとも一方に振動モードを打ち消す変換素子を配置することにより、一体として振動、騒音を効率良くキャンセルすることができ、変換素子数を低減できる。
【0015】
更に本発明のMRI装置は、複数の変換素子の電圧を制御する変換素子制御手段を備え、この変換素子制御手段は、MRI装置の検査条件より決定される傾斜磁場コイル駆動電流波形に応じて変換素子の電圧を制御するものである。これにより、フィードフォワード制御できるので、フィードバック制御の場合のような制御の遅れがなく応答性よく振動、騒音をキャンセルできる。
【0016】
尚、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換可能な変換素子としては、好適には圧電素子を用いる。圧電素子は上述した駆動の制御を容易に行うことができかつ応答性がよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図2は本発明の一実施例のMRI装置の全体構成図を示すブロック図である。このMRI装置は、磁気共鳴(NMR)現象を利用して被検体1の断層画像を得るもので、そのために、必要な充分大きなボア径をもった静磁場発生磁気回路2と、静磁場に重畳される傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生系3と、被検体の組織を構成する原子の原子核にNMR現象を生じさせる高周波磁場を印加するための送信系4と、被検体から発生するNMR信号を検出するための受信系5と、NMR信号を処理して画像再構成する信号処理系6と、これら傾斜磁場発生系3から信号処理系6までを所定のシーケンスに従って動作させるシーケンサ7と、中央処理装置(以下、CPUという)8とを備えている。
【0018】
本発明において静磁場発生磁気回路2は、被検体1の周りにその体軸方向と直交する方向に均一な磁束を発生するもので、永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の磁場発生手段が配置されている。図3に静磁場発生磁気回路2の一実施例として、永久磁石を用いて磁気回路を構成した垂直磁場発生装置を示す。この静磁場発生磁気回路2は、被検体を挟んで上下の対向する位置に配置された一対の永久磁石40と、これら永久磁石40を固定するとともに磁気回路を構成する鉄製ヨーク42と、各永久磁石40に配置された鉄製のポールピース41とから成る。ポールピース41は被検体が入る空間の均一度をより均一にするために周辺部が突出した形状を有し、このポールピースの中央凹部内に傾斜磁場発生系3を構成する傾斜磁場コイル9、RF照射コイル、RF受信コイル(図示せず)が配置される。
【0019】
傾斜磁場発生系3はX、Y、Zの三方向に巻かれた傾斜磁場コイル9とそれぞれのコイルを駆動する傾斜磁場電源10とからなり、シーケンサ7からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X、Y、Z三方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを被検体1に印加する。この傾斜磁場の加え方により、被検体1に対するスライス面を設定することができる。さらに本発明においては、傾斜磁場コイル9駆動時に発生する振動、騒音を防止するために電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する素子として圧電素子30が傾斜磁場コイル9に設けられ、これら素子を駆動するための回路60が備えられている。その詳細については後述する。
【0020】
送信系4は、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側高周波コイル14aとからなり、高周波発信器11から出力された高周波パルスをシーケンサ7の命令に従って、変調器12で振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、電磁波が被検体1に照射される。
【0021】
受信系5は、受信側高周波コイル14bと増幅器15と直交位相検波器16とA/D変換器17とからなり、送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波による被検体の応答の電磁波(NMR信号)を被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出し、増幅器15及び直交位相検波器16を介してA/D変換器17に入力してデジタル量に変換する。この際、A/D変換器17はシーケンサ7からの命令によるタイミングで、直交位相検波器16から出力された二系列の信号をサンプリングし、二系列のデジタルデータを出力する。それらのデジタル信号は信号処理系6に送られフーリエ変換される。
【0022】
信号処理系6は、CPU8と磁気ディスク18及び磁気テープ19等の記録装置とCRT等のディスプレイ20とからなり、受信系5からのデジタル信号を用いてフーリエ変換、補正係数計算、像再構成等の処理を行ない、任意断面の信号強度分布あるいは複数の信号に適当な演算を行なって得られた分布を画像化してディスプレイ20に表示する。
【0023】
シーケンサ7は、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系4及び傾斜磁場発生系3並びに受信系5に送るものである。
【0024】
次に傾斜磁場コイル9の構成について詳述する。傾斜磁場コイル9は、X、Y、Zの3方向の線形勾配(一次関数)磁場を発生するもので、図1に示すように円盤状の保持部材である絶縁板53に形成されたX方向傾斜磁場コイル50とY方向傾斜磁場コイル51とZ方向傾斜磁場コイル52とから成る。これらX方向及びY方向のコイルのパターンは図示しないが、分析用NMR用電流シムコイルとして用いられている1次の補正用コイルが採用でき、特に直線性、効率に優れている公知のゴーレイコイル(Golay coil)方式が好適に用いられる。Z方向の傾斜磁場コイル52としては、円形のへルムホルツコイルが使用される。
【0025】
このような傾斜磁場コイル9の製造方法は特に限定されないが、通常、絶縁板53の上に傾斜磁場発生パターンに相当部分に溝を切り、その中に銅より線を挿入することでX方向傾斜磁場コイル50を作成し、次いでX方向傾斜磁場コイル50のパターンを90゜回転させたパターンで絶縁板53の反対側に溝を切り、その中に銅より線を挿入することでY方向傾斜磁場コイル51を作成する。これらX方向傾斜磁場コイル50及びY方向傾斜磁場コイル51が溝から脱落するのを防止するため、絶縁板53の両面に絶縁性の部材54を貼付ける。またZ方向の傾斜磁場コイル52は、絶縁性部材54を介して絶縁板53にネジ止めされている。絶縁板53は、コイル取付板56を介してポールピース41の側面にネジ止めされた支持具55にネジ止めされている。
【0026】
このような傾斜磁場コイル9の振動、騒音を防止するために、絶縁板53或いは部材54に圧電素子30が配置される。図示する実施例では、圧電素子30は部材54に同心円状に2列配置されている。この同心円状の配置は、円盤状の傾斜磁場コイルにパルス状電流を印加したときに発生するローレンツ力によってが生じる振動の節を横切る配置となる。
【0027】
即ち、傾斜磁場コイル9のコイル導体は絶縁板53の面と平行に形成されており、一方、静磁場は絶縁板53の面と直交する方向に形成されている。従ってコイル導体に電流が流れるとフレミング左手の法則によりローレンツ力は、絶縁板53の面と平行な方向に発生する。この面内力は直接的には面外方向への変位の原因とならず、絶縁板53の形状に依存する固有振動モードによる変形を誘発する。一般に円盤状の物が固有振動モードで振動するとき、低次の振動では半径方向に節nを有する振動となるので、実施例における傾斜磁場コイル9の場合には、節nを中心として節を横切る方向に変形が誘発される。従って節を横切る方向に配置した圧電素子に、このような変形と逆の変形を生じるように電圧を印加することにより、円盤状傾斜磁場コイルの変形、振動を効率良くキャンセルできる。
【0028】
尚、図示する実施例では圧電素子30を同心円状に2列配列した場合を示したが、少なくとも1列配置されていれば本願の効果を得ることができる。2列以上配列した場合には、圧電素子の駆動回路が大型化するが、振動をキャンセルする効果を高めることができる。
【0029】
次に圧電素子の制御回路について説明する。図4は、圧電素子制御回路の一実施例を示すブロック図で、図示する実施例ではシーケンサ7の傾斜磁場駆動情報を取込み圧電素子30に印加する電圧をコントロールするデジタルシグナルプロセッサ(DSP)60と、DSPの指令により所定の電圧を各圧電素子に印加する圧電素子アンプ(電源回路)61とから成る。ここでシーケンサ7の傾斜磁場駆動情報としては、傾斜磁場強度、印加タイミング、印加軸が利用される。
【0030】
DSP60は、予め各圧電素子に印加する電圧の比率(重み付量)を求めメモリに格納しておき、シーケンサ7からの情報とこの重み付量に基づき各圧電素子に印加する電圧を決定する。重み付量は、以下のように決定される。まず3軸の傾斜磁場コイルのうちX軸のみをある傾斜磁場強度(G0)で駆動し、そのときに発生する各部の圧電素子の電圧をA/D変換し、その値をメモリに格納する。同様にY、Z軸の傾斜磁場の場合についても圧電素子に発生する電圧を求める。次いで、これら電圧の値をもとに各軸の傾斜磁場駆動に伴う各圧電素子30に加える電圧の比率を演算し、重み付け量(kx、ky、kz)としてメモリへ格納しておく。
【0031】
実際の撮影に際してDSP60は、シーケンサ7からの傾斜磁場駆動情報を取込み、印加軸とその傾斜磁場強度の情報から全体の傾斜磁場強度を求め、その値を各圧電素子ごとに重み付けし、その信号で各圧電素子の電源61を駆動し圧電素子に電圧を印加する。この圧電素子駆動のタイミングは、シーケンサ7からの印加タイミング情報に合わせて行う。尚、実際の撮像シーケンス実行時には、複数の傾斜磁場は同時に印加される場合が多い。その場合、1つの圧電素子に印加する電圧は、例えば撮影時の傾斜磁場強度をGx、Gy、Gzとし3軸同時に印加したとし、その圧電素子の重み付量をkx、ky、kzとすると、次式
−(Gx・kx+Gy・ky+Gz・kz)/G0
より求めることができる。
【0032】
このようにシーケンサ7の情報を利用することにより、圧電素子に印加する電圧をフィードフォワードによって制御することができるので、応答性よく振動、騒音をキャンセルすることができる。
【0033】
尚、本実施例では平板状の傾斜磁場コイルとして円盤状のものについて説明したが、本発明はこれに限定されず、略平板状のものや矩形等円盤以外の形状のものにも適用できる。その場合、各形状によって固有振動モードが異なるので、各固有振動モードに合わせて圧電素子を配置すればよい。例えば、矩形の場合には縦と横に数本、節が発生するため、それを横切るように圧電素子を配置すればよい。
【0034】
また以上の実施例では、傾斜磁場発生系として傾斜磁場コイル9のみを備えた場合を説明したが、傾斜磁場コイルの傾斜磁場が静磁場発生系側に漏れるのを防止するためのシールドコイルを備える場合には、このようなシールドコイルにおいても傾斜磁場コイルと同様に圧電素子を配置することができる。即ち、平板状傾斜磁場コイルと合わせて用いられるシールドコイルは、傾斜磁場コイルと同様に傾斜磁場を発生する平板状コイルで構成され、傾斜磁場コイルの駆動に合わせたタイミング、磁場強度で駆動されるので、上述した傾斜磁場コイルの場合と同様に固有振動モードによる変形を生じる。従って、この振動モードによる振動の節を横切るように圧電素子を配置することにより振動を効率よく抑制することができる。この際、傾斜磁場コイルとシールドコイルとが別個に静磁場発生磁気回路2内に固定されている場合には、それぞれ独立の振動系となるので、個々に圧電素子を配置することになるが、本発明の好適な実施例では、傾斜磁場コイルとシールドコイルとを振動系として一体化することにより、一体として振動防止を図る。
【0035】
このような実施例を図5に示す。図5において傾斜磁場発生手段は、計測空間に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル9と、この傾斜磁場コイル9が発生する傾斜磁場が静磁場発生磁石側に漏れるのを防止するためのシールドコイル9’と、これら傾斜磁場コイル9及びシールドコイル9’とを連結する連結部材55と、傾斜磁場コイル9に設けられた圧電素子30とから構成される。
【0036】
傾斜磁場コイル9は、図1に示す実施例の傾斜磁場コイルと同様に傾斜磁場コイル導体(X方向用コイル導体50、Y方向用コイル導体51、Z方向用コイル導体52)と、これら傾斜磁場コイル導体を保持する絶縁板53と、コイル導体脱落防止のための部材54とから成る。シールドコイル9’も傾斜磁場コイル9と同様にX、Y、Z三方向用のコイル導体50’〜52’とこれらを保持する絶縁板53’と、部材54’とから成り、シールドコイル9’用のコイル導体50’〜52’は、傾斜磁場コイル9の外側で傾斜磁場コイル9と極性が異なり大きさが同じである傾斜磁場を発生できる導体パターンが形成されている。保持部材53、53’へのコイル導体の固定法は前述した実施例と同一であるので省略する。
【0037】
連結部材55は、絶縁板53、53’を連結し、傾斜磁場コイル9とシールドコイル9’が同一の振動モードで振動するように傾斜磁場コイル9とシールドコイル9’とを一体化する。一体化するためには、連結部材55は絶縁板53、53’の間を隙間なく結合するのが望ましいが、傾斜磁場発生手段の軽量化という観点からは、図示するように所々に設けてもよく、この場合、振動モードを考慮して、振動で生ずる節を横切るように連結部材55を配置することが好ましい。これにより傾斜磁場コイル9とシールドコイル9’とを部分的に連結した場合でも、振動系として一体化するという所期の目的を達成できる。
【0038】
このように傾斜磁場コイル9とシールドコイル9’は一体化されているので、これらの振動をキャンセルするための圧電素子30は、少なくとも一方のコイルの絶縁板に設けられればよく、図示する実施例では傾斜磁場コイル9の絶縁板53(部材54)の一面に接着されている。圧電素子30は、一体化したコイルの固有振動モードによる振動の節を横切るように配置される。本実施例では一体化した両コイルも略円盤状の形状であるので、コイル導体に電流を流したときに生じるローレンツ力により、半径方向に節を有する振動が誘発される。従って、円盤と同心円状に圧電素子を配置し、このような振動による変形と逆の変形を生じるように圧電素子に電圧を印加することにより、振動、騒音を効率よくキャンセルできる。
【0039】
この場合、傾斜磁場コイルとシールドコイルにおけるコイル導体の駆動タイミングは同じであるので、予め両コイルを駆動した場合に圧電素子に発生する電圧から各圧電素子の重み付量を求めておくことにより、図4で示したような圧電素子制御回路によって、シーケンサ7からの傾斜磁場駆動情報を利用して圧電素子をフィードフォワード制御することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、平板状の傾斜磁場コイルを備えたMRI装置において、傾斜磁場コイルの保持手段に電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する素子を特定の配置で設けることにより、その振動モートによる振動を打消すことができ、MRI装置における振動、騒音を軽減し、被検者の恐怖感や不快感を解消することができる。特に変換素子に印加する電圧を、シーケンサからの傾斜磁場コイル駆動情報を利用してコントロールすることにより、応答性よく振動、騒音のキャンセルが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による傾斜磁場コイルの一実施例を示す図
【図2】本発明のMRI装置の一実施例の全体構成ブロック図
【図3】本発明のMRI装置の静磁場発生系と傾斜磁場コイルとの配置を示す図
【図4】本発明による圧電素子の制御ブロック図
【図5】本発明による傾斜磁場コイルの他の実施例の構造を示す図
【符号の説明】
7・・・・・・シーケンサ(制御手段)
9・・・・・・傾斜磁場コイル(傾斜磁場発生手段)
9’・・・・・・シールドコイル(傾斜磁場発生手段)
50、51、52・・・・・・傾斜磁場コイル導体
50’、51’、52’・・・・・・シールドコイル導体
30・・・・・・圧電素子(変換素子)
53、53’・・・・・・絶縁板(保持部材)
55・・・・・・連結部材
60・・・・・・制御装置(変換素子制御手段)
61・・・・・・電源

Claims (5)

  1. 静磁場、傾斜磁場の各磁場発生手段と、検査対象に電磁波を照射したり、検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する高周波コイルと、前記検出信号を使って対象物体の物理的性質を表す画像を得る画像再構成手段と、検査条件を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場発生手段は、少なくとも1つの傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル導体と、この傾斜磁場コイル導体を保持する平板状保持部材とを備え、前記保持部材に複数の電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換可能な変換素子を前記保持部材の振動によって生じる節を横切るように配置し、前記検査条件より決定される傾斜磁場コイル駆動電流波形に応じて前記変換素子の電圧を制御する変換素子制御手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 静磁場、傾斜磁場の各磁場発生手段と、検査対象に電磁波を照射したり、検査対象からの核磁気共鳴信号を検出する高周波コイルと、前記検出信号を使って対象物体の物理的性質を表す画像を得る画像再構成手段と、検査条件を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記傾斜磁場発生手段は、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル導体と、この傾斜磁場コイル導体を保持する第一の平板状保持部材と、前記傾斜磁場コイル導体によって発生する傾斜磁場が前記静磁場発生手段側に漏れるのを遮蔽するシールドコイル導体と、このシールドコイル導体を保持する第二の平板状保持部材とで構成され、前記第一及び第二の保持部材を同一周波数に対する振動モードが同一になるよう連結部材で連結するとともに、前記第一及び第二の保持部材の少なくとも一方に複数の電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換可能な変換素子を配置し、前記検査条件より決定される傾斜磁場コイル駆動電流波形に応じて前記変換素子の電圧を制御する変換素子制御手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記変換素子は、前記保持部材の振動によって生じる節を横切るように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記平板状保持部材が略円盤状であって、前記変換素子は前記略円盤の少なくとも1つの略同心円上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 前記変換素子が圧電素子であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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