JP3617788B2 - Fm受信装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせるFM受信装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、放送局の増加によって他の放送局との周波数間隔が近接してきており、これにともなって、FM受信装置で受信した希望放送局の同調周波数信号と隣接する他の放送局の周波数信号との間の干渉や混信により良好な受信が阻害される、いわゆる、隣接妨害と呼ばれる受信障害の発生が多くなって来ている。
【0003】
従来のFM受信装置は、上記のような隣接妨害が検出された際に、IFフィルタを切り替えることによって、隣接妨害を除去している。
【0004】
すなわち、従来のFM受信装置は、図8に示されるように、隣接妨害が無いときには、フロントエンド1から出力される中間周波数(IF)信号を、広帯域のフィルタ特性を有する広帯域IFフィルタ2Aに入力して、その帯域通過信号がリミッタ回路3に出力されるようになっているが、図示しないマイクロコンピュータが、受信波をAM検波したSメータ出力に基づいて隣接妨害信号を検知した際にフィルタ切替スイッチSWを切り替えることにより、IF信号を狭帯域のフィルタ特性を有する狭帯域IFフィルタ2Bに入力して、この狭帯域IFフィルタ2Bにより隣接妨害信号を除去するようになっている。
【0005】
しかしながら、このような従来のFM受信装置では、IFフィルタの切替時に急激なSN比やTHDが悪化するという問題がある。
そして、隣接妨害を除去するために帯域が異なる複数のIFフィルタを備える必要があり、製品コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本件出願人は、上記のような従来のFM受信装置における問題点を解決するために、隣接妨害が生じている方向を検出してFM受信装置の同調周波数を妨害が生じている方向と反対方向にシフトさせることにより隣接妨害を除去する新規なFM受信装置を提案している。
【0007】
しかしながら、このような同調周波数をシフトさせることによって隣接妨害を除去するFM受信装置においては、隣接妨害波の電界強度が大きい場合には、それにともなって同調周波数が過量にシフトされてしまい、希望波が歪んでしまうという問題が発生してくる。
【0008】
また、希望波の電界強度が小さい場合に、隣接妨害の検出によって同調周波数が過量にシフトされると、希望波に歪みが生じるという問題が発生する。
さらにまた、希望波のFM変調度を深くすると実質的に音質が良くなるが、この希望波のFM変調度が深い場合に、隣接妨害の検出によって同調周波数が過量にシフトされると、希望波に歪みが生じるという問題が生じる。
【0009】
この発明は、上記のような隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせるFM受信装置において発生する問題点を解決するために為されたものである。
すなわち、この発明は、隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせる際に、希望波に歪みが生じるのを防止することが出来るFM受信装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明によるFM受信装置は、上記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、この電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
この第1の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
【0012】
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
すなわち、このシフト幅制限手段は、電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。すなわち、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定する。
【0013】
以上のように、上記第1の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、電界強度が小さい場合にはその大きさに対応して同調周波数の最大シフト幅が小さくなるように制限され、電界強度が所定値よりも大きい場合には、所定の一定値よりも大きくならないように制限されるので、電界強度の大きさに対応した同調周波数の最大シフト幅の制限が行われて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
【0017】
第2の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記シフト幅制限手段が、受信信号の中間周波信号をAM検波したAM検波出力に基づいて電界強度を検出することを特徴としている。
【0018】
この第2の発明によるFM受信装置によれば、シフト幅制限手段における同調周波数の最大シフト幅の設定基準となる電界強度が、受信信号の中間周波信号をAM検波したAM検波出力に基づいて検出される。
【0019】
第3の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、この変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴としている。
【0020】
この第3の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。
このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
このシフト幅制限手段は、変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0021】
すなわち、FM検波出力の変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行い、FM検波出力の変調レベルが前記所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0022】
以上のように、上記第3の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、FM検波出力の変調レベルが小さい場合には同調周波数の最大シフト幅が所定の一定値よりも大きくならないように制限され、変調レベルが所定値よりも大きい場合にはその大きさに対応して同調周波数の最大シフト幅が小さくなるように制限されるので、FM検波出力の変調レベルに対応した同調周波数の最大シフト幅の制限が行われて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
【0023】
第4の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、第3の発明の構成に加えて、前記シフト幅制限手段が、FM検波出力をAM検波したAM検波出力に基づいて変調レベルを検出することを特徴としている。
【0024】
この第4の発明によるFM受信装置によれば、シフト幅制限手段における同調周波数の最大シフト幅の設定基準となるFM検波出力の変調レベルが、FM検波出力をAM検波したAM検波出力に基づいて検出される。
【0025】
第5の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、前記電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第1最大シフト幅設定手段と、前記変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第2最大シフト幅設定手段とを備え、前記同調周波数シフト手段が、前記第1最大シフト幅設定手段と第2最大シフト幅設定手段によってそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち小さい方の最大シフト幅によって同調周波数をシフトさせることを特徴としている。
【0026】
この第5の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。
このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
このシフト幅制限手段は、第1最大シフト幅設定手段により、電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行うとともに、第2最大シフト幅設定手段により、変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、FM検波出力の変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行い、FM検波出力の変調レベルが前記所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0027】
そして、同調周波数シフト手段が、第1最大シフト幅設定手段と第2最大シフト幅設定手段によってそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち小さい方の最大シフト幅の設定値に基づいて同調周波数のシフトを行う。
【0028】
以上のように、上記第5の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、同調周波数の最大シフト幅が電界強度とFM検波出力の変調レベルに基づいて設定され、双方に基づいてそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち、小さい方の設定値によって同調周波数の最大シフト幅が制限されるので、希望波に歪みが生じるのが確実に防止される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も好適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0030】
図1は、この発明によるFM受信装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
この図1において、図示しないアンテナ回路によって受信された放送波が高周波増幅回路によって増幅されることにより生成された希望波(RF信号)は、混合器10に入力される。
【0031】
そして、この混合器10において、RF信号は、局部発振回路11から入力される局部発振信号と混合されて中間周波数(IF)信号に変換され、さらに、IF増幅回路12によって増幅される。
【0032】
このIF信号は、次に、リミッタ回路13に入力されて振幅が一定のFM信号に生成された後、FM検波回路14においてFM検波されて、そのFM検波出力aが、図示しないステレオ復調回路およびディエンファシス,低周波増幅回路を通ってステレオ再生される。
以上の構成は、従来のFM受信装置と同様の構成である。
【0033】
このFM受信装置は、さらに、上記構成に加えて、リミッタ回路13に入力される前のIF信号をAM検波するAM検波回路15と、このAM検波回路15からのAM検波出力(Sメータ出力)bとFM検波回路14からのFM検波出力aが入力されて隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて高いか低いかを検出する妨害方向検出回路16と、この妨害方向検出回路16からの検出信号に基づいて局部発振回路11に同調周波数データ信号cを出力して局部発振回路11から出力される局部発振信号の周波数を制御するマイクロコンピュータ17と、FM検波回路14から出力されるFM検波出力aが入力されてこのFM検波出力aをAM検波することによりFM変調レベルの検出を行い、そのFM変調レベル検出信号dをマイクロコンピュータ17に出力する変調レベル検出回路18を備えている。
【0034】
そして、AM検波回路15から出力されるAM検波出力(Sメータ出力)bの一部がマイクロコンピュータ17に入力されるようになっている。
【0035】
図2は、妨害方向検出回路16の構成を示すブロック図である。
この図2において、妨害方向検出回路16は、AM検波回路15から出力されたAM検波出力bが入力されるHPF16Aと、このHPF16Aを通過したAM検波出力bが入力されてこのAM検波出力bのビート周期を検出するコンパレータ16Bと、FM検波回路14から出力されたFM検波出力aが入力されるHPF16Cと、このHPF16Cを通過したFM検波出力aとコンパレータ16Bにおいて検出されたAM検波出力bのビート周期によりFM検波出力aのAC成分のサンプリング(FM検波出力aとAM検波出力bの乗算)を行うサンプリング回路16Dと、このサンプリング回路16Dからのサンプリング出力が入力されるLPF16Eと、このLPF16Eを通過した乗算出力が入力されてこの乗算出力をあらかじめ設定された上基準値および下基準値と比較してHI信号またはLO信号を出力する第1ウインドコンパレータ16Fと、FM検波回路14からのFM検波出力aが入力されるLPF16Gと、このLPF16Gを通過したFM検波出力aが入力されてこのFM検波出力aのDC成分をあらかじめ設定された上基準値および下基準値と比較してHI信号またはLO信号を出力する第2ウインドコンパレータ16Hと、第1ウインドコンパレータ16Fおよび第2ウインドコンパレータ16HのそれぞれからHI信号またはLO信号が入力されてこの第1ウインドコンパレータ16Fまたは第2ウインドコンパレータ16HからのHI信号またはLO信号をマイクロコンピュータ17に出力する制御回路16Iとから構成されている。
【0036】
次に、上記の妨害方向検出回路16における隣接妨害の方向検出の動作について説明を行う。
ここで、この妨害方向検出回路16の作動の説明の前に、先ず、FM検波出力aの特性についての説明を行う。
【0037】
図3および4は、FM検波出力aとAM検波出力bの周波数変動を、それぞれ、希望波と妨害波の比(D/U比)をシュミレーションによって時間とともに変化させてプロットすることにより示したグラフであり、図3は、隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて高い(+200kHz)場合(以下、上側妨害という)の周波数変動を、また、図4は、隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて低い(−200kHz)場合(以下、下側妨害という)の周波数変動を示している。
【0038】
この図3および4から、隣接妨害が生じているときには、FM検波出力aとAM検波出力bの双方に妨害に伴うビート成分が生じているのが分かる。
そしてさらに、隣接妨害によって、以下の特性が現れているのが分かる。
すなわち、
(1)隣接妨害波が希望波よりも弱い(D/U比がマイナス)のとき、
a)上側妨害(図3)のときには、FM検波出力aのビート成分とAM検波出力bのビート成分が互いに同相となり、
b)下側妨害(図4)のときには、FM検波出力aのビート成分とAM検波出力bのビート成分が互いに逆相になり、
(2)隣接妨害波が希望波よりも強い(D/U比がプラス)のとき、
c)上側妨害(図3)のときには、FM検波出力aのDCが妨害波の離調周波数分だけプラスの方向にずれており、
d)下側妨害(図4)のときには、FM検波出力aのDCが妨害波の離調周波数分だけマイナスの方向にずれている。
【0039】
妨害方向検出回路16は、以上のようなFM検波出力aの特性を利用して、上記(1)の隣接妨害波が希望波よりも弱い(D/U比がマイナス)場合については、第1ウインドコンパレータ16Fによって妨害方向の検出を行い、上記(2)の隣接妨害波が希望波よりも強い(D/U比がプラス)場合については、第2ウインドコンパレータ16Hによって妨害方向の検出を行う。
【0040】
すなわち、妨害方向検出回路16は、FM検波出力aのHPF16Cを通過したAC成分を、サンプリング回路16Dにおいて、HPF16Aを通過したAM検波出力bが入力されるコンパレータ16Bから得られるビート周期で、サンプリング(FM検波出力aとAM検波出力bを乗算)する。
【0041】
次に、LPF16Eを通過したサンプリング回路16Dの乗算出力のDC成分を、第1ウインドコンパレータ16Fに入力する。
そして、この第1ウインドコンパレータ16Fにおいて、乗算出力のDC成分値を、あらかじめ設定されている上基準値および下基準値と比較する。
【0042】
ここで、この第1ウインドコンパレータ16Fに設定された上基準値と下基準値は、隣接妨害が有ったときに後述する同調周波数のシフトを行うか否かを判定するための乗算出力のDC成分値の上限と下限の値を示すものである。
また、サンプリング回路16Dからの乗算出力は、前述したように、上側妨害(妨害波周波数>希望波周波数)の場合には、FM検波出力aとAM検波出力bのビート成分が互いに同相であるためプラスとなり、下側妨害(妨害波周波数<希望波周波数)の場合には互いに逆相であるためマイナスとなる。
【0043】
従って、第1ウインドコンパレータ16Fにおける比較において、
i)DC成分値>上基準値の場合には、サンプリング回路16Dからの乗算出力がプラスであり隣接妨害が設定された上基準値よりも大きいことを示すHI信号を制御回路16Iに出力し、
ii) DC成分値<下基準値の場合には、サンプリング回路16Dからの乗算出力がマイナスであり隣接妨害が設定された下基準値よりも小さいことを示すLO信号を制御回路16Iに出力し、
iii) 下基準値<DC成分値<上基準値の場合には、制御回路16Iに何も信号を出力しない。
【0044】
制御回路16Iは、第1ウインドコンパレータ16Fから上記のHI信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行い、LO信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行う。
また、妨害方向検出回路16は、FM検波出力aのLPF16Gを通過したDC成分を、第2ウインドコンパレータ16Hに入力して、このFM検波出力aのDC成分値を、あらかじめ設定されている上基準値および下基準値と比較する。
【0045】
ここで、この第2ウインドコンパレータ16Hに設定された上基準値と下基準値は、隣接妨害が有ったときに後述する同調周波数のシフトを行うか否かを判定するためのFM検波出力aのDC成分のオフセット量の上限と下限の値を示すものである。
【0046】
また、FM検波出力aのDC成分は、前述したように、上側妨害(妨害波周波数>希望波周波数)の場合にはプラスの方向にずれ、下側妨害(妨害波周波数<希望波周波数)の場合にはマイナスの方向にずれる。
従って、第2ウインドコンパレータ16Hにおける比較において、
iv) DC成分値>上基準値の場合には、DC成分がプラス方向にずれており隣接妨害が設定された上基準値よりも大きいことを示すHI信号を制御回路16Iに出力し、
v) DC成分値<下基準値の場合には、DC成分がマイナス方向にずれており隣接妨害が設定された下基準値よりも小さいことを示すLO信号を制御回路16Iに出力し、
vi) 下基準値<DC成分値<上基準値の場合には、制御回路16Iに何も信号を出力しない。
【0047】
制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hから上記のHI信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行い、LO信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行う。
【0048】
そして、制御回路16Iは、第1ウインドコンパレータ16Fと第2ウインドコンパレータ16HからともにHI信号またはLO信号が入力されるときには、第2ウインドコンパレータ16Hからの信号を優先させて妨害方向の判断を行い、第2ウインドコンパレータ16Hから何も信号が入力されないときには、第1ウインドコンパレータ16Fからの信号に基づいて妨害方向の判断を行う。
【0049】
そして、制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hまたは第1ウインドコンパレータ16FからのHI信号によって、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があると判断した場合には、マイクロコンピュータ17に妨害検出出力HI信号を出力する。
【0050】
また、制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hまたは第1ウインドコンパレータ16FからのLO信号によって、隣接妨害が下側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があると判断した場合には、マイクロコンピュータ17に妨害検出出力LO信号を出力する。
【0051】
そして、マイクロコンピュータ17は、この制御回路16Iから入力される妨害検出出力HI信号およびLO信号に基づいて、局部発振回路11に、この局部発振回路11から混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数(局発周波数)を隣接妨害が生じている方向と反対方向にシフトさせる同調周波数データ(直流電圧)信号cを出力する。
【0052】
すなわち、マイクロコンピュータ17に妨害方向検出回路16から妨害検出出力HI信号が入力されるときには、隣接妨害が上側妨害であり除去する必要があるほどに大きい場合であるから、マイクロコンピュータ17は、局部発振回路11のPLLにVOCから混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数を小さくなる方向にシフトさせる同調周波数データ信号cを出力する。
【0053】
反対に、マイクロコンピュータ17に妨害方向検出回路16から妨害検出出力LO信号が入力されるときには、隣接妨害が下側妨害であり除去する必要があるほどに大きい場合であるから、マイクロコンピュータ17は、局部発振回路11のPLLにVOCから混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数を大きくなる方向にシフトさせる同調周波数データ信号cを出力する。
【0054】
この同調周波数データ信号cによってシフトされる同調周波数の最大シフト幅は、マイクロコンピュータ17により、AM検波回路15から入力されるAM検波出力bによって示される電界強度と、変調レベル検出回路18から入力されるFM変調レベル検出信号dによって示されるFM変調レベルに基づいて、設定される。
【0055】
このマイクロコンピュータ17による同調周波数のシフト幅の設定は、以下のようにして行われる。
すなわち、マイクロコンピュータ17は、AM検波回路15から入力されるAM検波出力bによって示される受信波の電界強度に基づいて、その電界強度があらかじめ定められた所定の値よりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度があらかじめ定められた所定の値よりも大きいときには、シフト幅があらかじめ定められた一定の値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0056】
図5は、上記のような受信波の電界強度と同調周波数の最大シフト幅の設定値との関係を示すグラフであって、(a)はAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさと受信波の電界強度の関係を示しており、(b)は電界強度と同調周波数の最大シフト幅との関係を示している。
【0057】
この図5(a)に示されるように、電界強度の大きさはAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさに比例しており、マイクロコンピュータ17は、このAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさに基づいて電界強度の大きさを認識する。
【0058】
そして、マイクロコンピュータ17は、図5(b)に示されるように、電界強度が所定の値eよりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅f’が小さくなるように最大シフト幅を設定し、電界強度が所定の値eよりも大きいときには、最大シフト幅を一定のシフト幅fになるように設定する。
【0059】
さらに、マイクロコンピュータ17は、変調レベル検出回路18から入力されるFM変調レベル検出信号dによって示されるFM検波出力aのFM変調レベルに基づいて、そのFM変調レベルがあらかじめ定められた所定の値よりも小さいときには、シフト幅があらかじめ定められた一定の値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、FM変調レベルがあらかじめ定められた所定の値よりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0060】
図6は、上記のようなFM検波出力のFM変調レベルと同調周波数の最大シフト幅の設定値との関係を示すグラフであって、(a)はFM変調レベル検出信号dの出力とFM変調レベルの関係を示しており、(b)はFM変調レベルと同調周波数の最大シフト幅との関係を示している。
【0061】
この図6(a)に示されるように、FM変調レベルはFM変調レベル検出信号dの大きさに比例しており、マイクロコンピュータ17は、このFM変調レベル検出信号dの大きさに基づいてFM変調レベルを認識する。
【0062】
そして、マイクロコンピュータ17は、図6(b)に示されるように、FM変調レベルが所定の値gよりも小さいときには、最大シフト幅を一定のシフト幅hに設定し、FM変調レベルが所定の値gよりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅h’が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0063】
ここで、マイクロコンピュータ17が受信信号の電界強度とFM検波出力のFM変調レベルの双方から同調周波数の最大シフト幅の設定を行うときには、マイクロコンピュータ17は、受信信号の電界強度に基づく同調周波数の最大シフト幅の値とFM検波出力のFM変調レベルに基づく同調周波数の最大シフト幅の値のうち、小さい方の値によって同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0064】
図7は、上記のようなマイクロコンピュータ17における同調周波数の最大シフト幅の設定の手順を示すフローチャートである。
この図7において、マイクロコンピュータ17は、受信信号の電界強度の大きさとあらかじめ定められている電界強度の値eとを比較して(ステップs1)、電界強度が値eよりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応して小さくなるシフト幅の値f’を選択し(ステップs2)、電界強度が値eよりも大きいときには、一定のシフト幅の値fを選択する(ステップs3)。
【0065】
次に、FM検波出力のFM変調レベルとあらかじめ定められているFM変調レベルの値gとを比較して(ステップs4)、FM変調レベルが値gよりも小さいときには、一定のシフト幅の値hを選択し(ステップs5)、FM変調レベルが値gよりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応して小さくなるシフト幅の値h’を選択する(ステップs6)。
【0066】
次に、上記のようにして選択された電界強度に基づくシフト幅の値fまたはf’とFM変調レベルに基づくシフト幅の値hまたはh’とを比較して(ステップs7)、電界強度に基づくシフト幅の値fまたはf’のほうが小さいときには、同調周波数の最大シフト幅を値fまたはf’に設定し(ステップs8)、FM変調レベルに基づくシフト幅の値hまたはh’のほうが小さいときには、同調周波数の最大シフト幅を値hまたはh’に設定する(ステップs9)。
【0067】
そして、この設定された同調周波数の最大シフト幅の値を隣接妨害が下側妨害の場合は同調周波数の初期値に加算し、上側妨害の場合は同調周波数の初期値から減算して、その周波数データを同調周波数データ信号cによって局部発振回路11に出力する(ステップs10)。
局部発振回路11は、以上のようにして設定された同調周波数の最大シフト幅内において、隣接妨害検出時に、同調周波数を隣接妨害が存在する方向と反対方向にシフトさせる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態における一例を示すブロック図である。
【図2】同例における妨害方向検出回路の構成を示すブロック図である。
【図3】上側妨害のときのFM受信機におけるFM検波出力とAM検波出力の周波数変動を示すグラフである。
【図4】下側妨害のときのFM受信機におけるFM検波出力とAM検波出力の周波数変動を示すグラフである。
【図5】(a)はSメータ出力と電界強度の関係を示すグラフであり、(b)は最大シフト幅と電界強度の関係を示すグラフである。
【図6】(a)は変調検出出力と変調レベルの関係を示すグラフであり、(b)は最大シフト幅と変調レベルの関係を示すグラフである。
【図7】同例における固定周波数の最大シフト幅の設定の手順を示すフローチャートである。
【図8】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 …混合器
11 …局部発振回路(同調周波数シフト手段)
12 …IF増幅回路
13 …リミッタ回路
14 …FM検波回路
15 …AM検波回路(電界強度検出手段)
16 …妨害方向検出回路(隣接妨害検出手段)
16A…HPF
16B…コンパレータ
16C…HPF
16D…サンプリング回路
16E…LPF
16F…ウインドコンパレータ
16G…LPF
16H…ウインドコンパレータ
16I…制御回路
17 …マイクロコンピュータ(同調周波数シフト手段,シフト幅制限手段,シフト幅設定手段)
18 …変調レベル検出回路(変調レベル検出手段)
a …FM検波出力
b …AM検波出力(Sメータ出力)
c …同調周波数データ信号
d …変調レベル検出信号
【発明の属する技術分野】
この発明は、隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせるFM受信装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、放送局の増加によって他の放送局との周波数間隔が近接してきており、これにともなって、FM受信装置で受信した希望放送局の同調周波数信号と隣接する他の放送局の周波数信号との間の干渉や混信により良好な受信が阻害される、いわゆる、隣接妨害と呼ばれる受信障害の発生が多くなって来ている。
【0003】
従来のFM受信装置は、上記のような隣接妨害が検出された際に、IFフィルタを切り替えることによって、隣接妨害を除去している。
【0004】
すなわち、従来のFM受信装置は、図8に示されるように、隣接妨害が無いときには、フロントエンド1から出力される中間周波数(IF)信号を、広帯域のフィルタ特性を有する広帯域IFフィルタ2Aに入力して、その帯域通過信号がリミッタ回路3に出力されるようになっているが、図示しないマイクロコンピュータが、受信波をAM検波したSメータ出力に基づいて隣接妨害信号を検知した際にフィルタ切替スイッチSWを切り替えることにより、IF信号を狭帯域のフィルタ特性を有する狭帯域IFフィルタ2Bに入力して、この狭帯域IFフィルタ2Bにより隣接妨害信号を除去するようになっている。
【0005】
しかしながら、このような従来のFM受信装置では、IFフィルタの切替時に急激なSN比やTHDが悪化するという問題がある。
そして、隣接妨害を除去するために帯域が異なる複数のIFフィルタを備える必要があり、製品コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本件出願人は、上記のような従来のFM受信装置における問題点を解決するために、隣接妨害が生じている方向を検出してFM受信装置の同調周波数を妨害が生じている方向と反対方向にシフトさせることにより隣接妨害を除去する新規なFM受信装置を提案している。
【0007】
しかしながら、このような同調周波数をシフトさせることによって隣接妨害を除去するFM受信装置においては、隣接妨害波の電界強度が大きい場合には、それにともなって同調周波数が過量にシフトされてしまい、希望波が歪んでしまうという問題が発生してくる。
【0008】
また、希望波の電界強度が小さい場合に、隣接妨害の検出によって同調周波数が過量にシフトされると、希望波に歪みが生じるという問題が発生する。
さらにまた、希望波のFM変調度を深くすると実質的に音質が良くなるが、この希望波のFM変調度が深い場合に、隣接妨害の検出によって同調周波数が過量にシフトされると、希望波に歪みが生じるという問題が生じる。
【0009】
この発明は、上記のような隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせるFM受信装置において発生する問題点を解決するために為されたものである。
すなわち、この発明は、隣接妨害の検出によって同調周波数をシフトさせる際に、希望波に歪みが生じるのを防止することが出来るFM受信装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明によるFM受信装置は、上記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、この電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
この第1の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
【0012】
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
すなわち、このシフト幅制限手段は、電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。すなわち、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定する。
【0013】
以上のように、上記第1の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、電界強度が小さい場合にはその大きさに対応して同調周波数の最大シフト幅が小さくなるように制限され、電界強度が所定値よりも大きい場合には、所定の一定値よりも大きくならないように制限されるので、電界強度の大きさに対応した同調周波数の最大シフト幅の制限が行われて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
【0017】
第2の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記シフト幅制限手段が、受信信号の中間周波信号をAM検波したAM検波出力に基づいて電界強度を検出することを特徴としている。
【0018】
この第2の発明によるFM受信装置によれば、シフト幅制限手段における同調周波数の最大シフト幅の設定基準となる電界強度が、受信信号の中間周波信号をAM検波したAM検波出力に基づいて検出される。
【0019】
第3の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、この変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴としている。
【0020】
この第3の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。
このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
このシフト幅制限手段は、変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0021】
すなわち、FM検波出力の変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行い、FM検波出力の変調レベルが前記所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0022】
以上のように、上記第3の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、FM検波出力の変調レベルが小さい場合には同調周波数の最大シフト幅が所定の一定値よりも大きくならないように制限され、変調レベルが所定値よりも大きい場合にはその大きさに対応して同調周波数の最大シフト幅が小さくなるように制限されるので、FM検波出力の変調レベルに対応した同調周波数の最大シフト幅の制限が行われて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
【0023】
第4の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、第3の発明の構成に加えて、前記シフト幅制限手段が、FM検波出力をAM検波したAM検波出力に基づいて変調レベルを検出することを特徴としている。
【0024】
この第4の発明によるFM受信装置によれば、シフト幅制限手段における同調周波数の最大シフト幅の設定基準となるFM検波出力の変調レベルが、FM検波出力をAM検波したAM検波出力に基づいて検出される。
【0025】
第5の発明によるFM受信装置は、前記目的を達成するために、希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、前記電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第1最大シフト幅設定手段と、前記変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第2最大シフト幅設定手段とを備え、前記同調周波数シフト手段が、前記第1最大シフト幅設定手段と第2最大シフト幅設定手段によってそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち小さい方の最大シフト幅によって同調周波数をシフトさせることを特徴としている。
【0026】
この第5の発明によるFM受信装置は、隣接妨害が生じた際に、隣接妨害検出手段によって、例えばFM検波回路から出力されるFM検波出力とAM検波回路から出力されるSメータ出力との相関に基づいて、隣接妨害波の検出を行う。
そして、この隣接妨害検出手段による検出結果に基づいて、同調周波数シフト手段が,FM受信装置の同調周波数を隣接妨害を生じさせる放送波から離調する方向にシフトさせることにより、隣接妨害を除去する。
このとき、シフト幅制限手段が、隣接妨害が検出された際の同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない所要の範囲に制限する。
このシフト幅制限手段は、第1最大シフト幅設定手段により、電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行うとともに、第2最大シフト幅設定手段により、変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、FM検波出力の変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように設定を行い、FM検波出力の変調レベルが前記所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0027】
そして、同調周波数シフト手段が、第1最大シフト幅設定手段と第2最大シフト幅設定手段によってそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち小さい方の最大シフト幅の設定値に基づいて同調周波数のシフトを行う。
【0028】
以上のように、上記第5の発明によれば、隣接妨害が検出された際に、FM受信装置の同調周波数が隣接妨害波から離調する方向にシフトされることによって隣接妨害が除去されるとともに、同調周波数が過量にシフトされるのが防止されて、希望波に歪みが生じるのが防止される。
すなわち、同調周波数の最大シフト幅が電界強度とFM検波出力の変調レベルに基づいて設定され、双方に基づいてそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち、小さい方の設定値によって同調周波数の最大シフト幅が制限されるので、希望波に歪みが生じるのが確実に防止される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も好適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0030】
図1は、この発明によるFM受信装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
この図1において、図示しないアンテナ回路によって受信された放送波が高周波増幅回路によって増幅されることにより生成された希望波(RF信号)は、混合器10に入力される。
【0031】
そして、この混合器10において、RF信号は、局部発振回路11から入力される局部発振信号と混合されて中間周波数(IF)信号に変換され、さらに、IF増幅回路12によって増幅される。
【0032】
このIF信号は、次に、リミッタ回路13に入力されて振幅が一定のFM信号に生成された後、FM検波回路14においてFM検波されて、そのFM検波出力aが、図示しないステレオ復調回路およびディエンファシス,低周波増幅回路を通ってステレオ再生される。
以上の構成は、従来のFM受信装置と同様の構成である。
【0033】
このFM受信装置は、さらに、上記構成に加えて、リミッタ回路13に入力される前のIF信号をAM検波するAM検波回路15と、このAM検波回路15からのAM検波出力(Sメータ出力)bとFM検波回路14からのFM検波出力aが入力されて隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて高いか低いかを検出する妨害方向検出回路16と、この妨害方向検出回路16からの検出信号に基づいて局部発振回路11に同調周波数データ信号cを出力して局部発振回路11から出力される局部発振信号の周波数を制御するマイクロコンピュータ17と、FM検波回路14から出力されるFM検波出力aが入力されてこのFM検波出力aをAM検波することによりFM変調レベルの検出を行い、そのFM変調レベル検出信号dをマイクロコンピュータ17に出力する変調レベル検出回路18を備えている。
【0034】
そして、AM検波回路15から出力されるAM検波出力(Sメータ出力)bの一部がマイクロコンピュータ17に入力されるようになっている。
【0035】
図2は、妨害方向検出回路16の構成を示すブロック図である。
この図2において、妨害方向検出回路16は、AM検波回路15から出力されたAM検波出力bが入力されるHPF16Aと、このHPF16Aを通過したAM検波出力bが入力されてこのAM検波出力bのビート周期を検出するコンパレータ16Bと、FM検波回路14から出力されたFM検波出力aが入力されるHPF16Cと、このHPF16Cを通過したFM検波出力aとコンパレータ16Bにおいて検出されたAM検波出力bのビート周期によりFM検波出力aのAC成分のサンプリング(FM検波出力aとAM検波出力bの乗算)を行うサンプリング回路16Dと、このサンプリング回路16Dからのサンプリング出力が入力されるLPF16Eと、このLPF16Eを通過した乗算出力が入力されてこの乗算出力をあらかじめ設定された上基準値および下基準値と比較してHI信号またはLO信号を出力する第1ウインドコンパレータ16Fと、FM検波回路14からのFM検波出力aが入力されるLPF16Gと、このLPF16Gを通過したFM検波出力aが入力されてこのFM検波出力aのDC成分をあらかじめ設定された上基準値および下基準値と比較してHI信号またはLO信号を出力する第2ウインドコンパレータ16Hと、第1ウインドコンパレータ16Fおよび第2ウインドコンパレータ16HのそれぞれからHI信号またはLO信号が入力されてこの第1ウインドコンパレータ16Fまたは第2ウインドコンパレータ16HからのHI信号またはLO信号をマイクロコンピュータ17に出力する制御回路16Iとから構成されている。
【0036】
次に、上記の妨害方向検出回路16における隣接妨害の方向検出の動作について説明を行う。
ここで、この妨害方向検出回路16の作動の説明の前に、先ず、FM検波出力aの特性についての説明を行う。
【0037】
図3および4は、FM検波出力aとAM検波出力bの周波数変動を、それぞれ、希望波と妨害波の比(D/U比)をシュミレーションによって時間とともに変化させてプロットすることにより示したグラフであり、図3は、隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて高い(+200kHz)場合(以下、上側妨害という)の周波数変動を、また、図4は、隣接妨害波の周波数が希望波の周波数に比べて低い(−200kHz)場合(以下、下側妨害という)の周波数変動を示している。
【0038】
この図3および4から、隣接妨害が生じているときには、FM検波出力aとAM検波出力bの双方に妨害に伴うビート成分が生じているのが分かる。
そしてさらに、隣接妨害によって、以下の特性が現れているのが分かる。
すなわち、
(1)隣接妨害波が希望波よりも弱い(D/U比がマイナス)のとき、
a)上側妨害(図3)のときには、FM検波出力aのビート成分とAM検波出力bのビート成分が互いに同相となり、
b)下側妨害(図4)のときには、FM検波出力aのビート成分とAM検波出力bのビート成分が互いに逆相になり、
(2)隣接妨害波が希望波よりも強い(D/U比がプラス)のとき、
c)上側妨害(図3)のときには、FM検波出力aのDCが妨害波の離調周波数分だけプラスの方向にずれており、
d)下側妨害(図4)のときには、FM検波出力aのDCが妨害波の離調周波数分だけマイナスの方向にずれている。
【0039】
妨害方向検出回路16は、以上のようなFM検波出力aの特性を利用して、上記(1)の隣接妨害波が希望波よりも弱い(D/U比がマイナス)場合については、第1ウインドコンパレータ16Fによって妨害方向の検出を行い、上記(2)の隣接妨害波が希望波よりも強い(D/U比がプラス)場合については、第2ウインドコンパレータ16Hによって妨害方向の検出を行う。
【0040】
すなわち、妨害方向検出回路16は、FM検波出力aのHPF16Cを通過したAC成分を、サンプリング回路16Dにおいて、HPF16Aを通過したAM検波出力bが入力されるコンパレータ16Bから得られるビート周期で、サンプリング(FM検波出力aとAM検波出力bを乗算)する。
【0041】
次に、LPF16Eを通過したサンプリング回路16Dの乗算出力のDC成分を、第1ウインドコンパレータ16Fに入力する。
そして、この第1ウインドコンパレータ16Fにおいて、乗算出力のDC成分値を、あらかじめ設定されている上基準値および下基準値と比較する。
【0042】
ここで、この第1ウインドコンパレータ16Fに設定された上基準値と下基準値は、隣接妨害が有ったときに後述する同調周波数のシフトを行うか否かを判定するための乗算出力のDC成分値の上限と下限の値を示すものである。
また、サンプリング回路16Dからの乗算出力は、前述したように、上側妨害(妨害波周波数>希望波周波数)の場合には、FM検波出力aとAM検波出力bのビート成分が互いに同相であるためプラスとなり、下側妨害(妨害波周波数<希望波周波数)の場合には互いに逆相であるためマイナスとなる。
【0043】
従って、第1ウインドコンパレータ16Fにおける比較において、
i)DC成分値>上基準値の場合には、サンプリング回路16Dからの乗算出力がプラスであり隣接妨害が設定された上基準値よりも大きいことを示すHI信号を制御回路16Iに出力し、
ii) DC成分値<下基準値の場合には、サンプリング回路16Dからの乗算出力がマイナスであり隣接妨害が設定された下基準値よりも小さいことを示すLO信号を制御回路16Iに出力し、
iii) 下基準値<DC成分値<上基準値の場合には、制御回路16Iに何も信号を出力しない。
【0044】
制御回路16Iは、第1ウインドコンパレータ16Fから上記のHI信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行い、LO信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行う。
また、妨害方向検出回路16は、FM検波出力aのLPF16Gを通過したDC成分を、第2ウインドコンパレータ16Hに入力して、このFM検波出力aのDC成分値を、あらかじめ設定されている上基準値および下基準値と比較する。
【0045】
ここで、この第2ウインドコンパレータ16Hに設定された上基準値と下基準値は、隣接妨害が有ったときに後述する同調周波数のシフトを行うか否かを判定するためのFM検波出力aのDC成分のオフセット量の上限と下限の値を示すものである。
【0046】
また、FM検波出力aのDC成分は、前述したように、上側妨害(妨害波周波数>希望波周波数)の場合にはプラスの方向にずれ、下側妨害(妨害波周波数<希望波周波数)の場合にはマイナスの方向にずれる。
従って、第2ウインドコンパレータ16Hにおける比較において、
iv) DC成分値>上基準値の場合には、DC成分がプラス方向にずれており隣接妨害が設定された上基準値よりも大きいことを示すHI信号を制御回路16Iに出力し、
v) DC成分値<下基準値の場合には、DC成分がマイナス方向にずれており隣接妨害が設定された下基準値よりも小さいことを示すLO信号を制御回路16Iに出力し、
vi) 下基準値<DC成分値<上基準値の場合には、制御回路16Iに何も信号を出力しない。
【0047】
制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hから上記のHI信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行い、LO信号が入力されたときには、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があるとの判断を行う。
【0048】
そして、制御回路16Iは、第1ウインドコンパレータ16Fと第2ウインドコンパレータ16HからともにHI信号またはLO信号が入力されるときには、第2ウインドコンパレータ16Hからの信号を優先させて妨害方向の判断を行い、第2ウインドコンパレータ16Hから何も信号が入力されないときには、第1ウインドコンパレータ16Fからの信号に基づいて妨害方向の判断を行う。
【0049】
そして、制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hまたは第1ウインドコンパレータ16FからのHI信号によって、隣接妨害が上側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があると判断した場合には、マイクロコンピュータ17に妨害検出出力HI信号を出力する。
【0050】
また、制御回路16Iは、第2ウインドコンパレータ16Hまたは第1ウインドコンパレータ16FからのLO信号によって、隣接妨害が下側妨害であり同調周波数のシフトを行う必要があると判断した場合には、マイクロコンピュータ17に妨害検出出力LO信号を出力する。
【0051】
そして、マイクロコンピュータ17は、この制御回路16Iから入力される妨害検出出力HI信号およびLO信号に基づいて、局部発振回路11に、この局部発振回路11から混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数(局発周波数)を隣接妨害が生じている方向と反対方向にシフトさせる同調周波数データ(直流電圧)信号cを出力する。
【0052】
すなわち、マイクロコンピュータ17に妨害方向検出回路16から妨害検出出力HI信号が入力されるときには、隣接妨害が上側妨害であり除去する必要があるほどに大きい場合であるから、マイクロコンピュータ17は、局部発振回路11のPLLにVOCから混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数を小さくなる方向にシフトさせる同調周波数データ信号cを出力する。
【0053】
反対に、マイクロコンピュータ17に妨害方向検出回路16から妨害検出出力LO信号が入力されるときには、隣接妨害が下側妨害であり除去する必要があるほどに大きい場合であるから、マイクロコンピュータ17は、局部発振回路11のPLLにVOCから混合器10に出力される局部発振信号の同調周波数を大きくなる方向にシフトさせる同調周波数データ信号cを出力する。
【0054】
この同調周波数データ信号cによってシフトされる同調周波数の最大シフト幅は、マイクロコンピュータ17により、AM検波回路15から入力されるAM検波出力bによって示される電界強度と、変調レベル検出回路18から入力されるFM変調レベル検出信号dによって示されるFM変調レベルに基づいて、設定される。
【0055】
このマイクロコンピュータ17による同調周波数のシフト幅の設定は、以下のようにして行われる。
すなわち、マイクロコンピュータ17は、AM検波回路15から入力されるAM検波出力bによって示される受信波の電界強度に基づいて、その電界強度があらかじめ定められた所定の値よりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度があらかじめ定められた所定の値よりも大きいときには、シフト幅があらかじめ定められた一定の値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0056】
図5は、上記のような受信波の電界強度と同調周波数の最大シフト幅の設定値との関係を示すグラフであって、(a)はAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさと受信波の電界強度の関係を示しており、(b)は電界強度と同調周波数の最大シフト幅との関係を示している。
【0057】
この図5(a)に示されるように、電界強度の大きさはAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさに比例しており、マイクロコンピュータ17は、このAM検波出力(Sメータ出力)bの大きさに基づいて電界強度の大きさを認識する。
【0058】
そして、マイクロコンピュータ17は、図5(b)に示されるように、電界強度が所定の値eよりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅f’が小さくなるように最大シフト幅を設定し、電界強度が所定の値eよりも大きいときには、最大シフト幅を一定のシフト幅fになるように設定する。
【0059】
さらに、マイクロコンピュータ17は、変調レベル検出回路18から入力されるFM変調レベル検出信号dによって示されるFM検波出力aのFM変調レベルに基づいて、そのFM変調レベルがあらかじめ定められた所定の値よりも小さいときには、シフト幅があらかじめ定められた一定の値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、FM変調レベルがあらかじめ定められた所定の値よりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0060】
図6は、上記のようなFM検波出力のFM変調レベルと同調周波数の最大シフト幅の設定値との関係を示すグラフであって、(a)はFM変調レベル検出信号dの出力とFM変調レベルの関係を示しており、(b)はFM変調レベルと同調周波数の最大シフト幅との関係を示している。
【0061】
この図6(a)に示されるように、FM変調レベルはFM変調レベル検出信号dの大きさに比例しており、マイクロコンピュータ17は、このFM変調レベル検出信号dの大きさに基づいてFM変調レベルを認識する。
【0062】
そして、マイクロコンピュータ17は、図6(b)に示されるように、FM変調レベルが所定の値gよりも小さいときには、最大シフト幅を一定のシフト幅hに設定し、FM変調レベルが所定の値gよりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅h’が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する。
【0063】
ここで、マイクロコンピュータ17が受信信号の電界強度とFM検波出力のFM変調レベルの双方から同調周波数の最大シフト幅の設定を行うときには、マイクロコンピュータ17は、受信信号の電界強度に基づく同調周波数の最大シフト幅の値とFM検波出力のFM変調レベルに基づく同調周波数の最大シフト幅の値のうち、小さい方の値によって同調周波数の最大シフト幅の設定を行う。
【0064】
図7は、上記のようなマイクロコンピュータ17における同調周波数の最大シフト幅の設定の手順を示すフローチャートである。
この図7において、マイクロコンピュータ17は、受信信号の電界強度の大きさとあらかじめ定められている電界強度の値eとを比較して(ステップs1)、電界強度が値eよりも小さいときには、電界強度が小さくなるのに対応して小さくなるシフト幅の値f’を選択し(ステップs2)、電界強度が値eよりも大きいときには、一定のシフト幅の値fを選択する(ステップs3)。
【0065】
次に、FM検波出力のFM変調レベルとあらかじめ定められているFM変調レベルの値gとを比較して(ステップs4)、FM変調レベルが値gよりも小さいときには、一定のシフト幅の値hを選択し(ステップs5)、FM変調レベルが値gよりも大きいときには、FM変調レベルが大きくなるのに対応して小さくなるシフト幅の値h’を選択する(ステップs6)。
【0066】
次に、上記のようにして選択された電界強度に基づくシフト幅の値fまたはf’とFM変調レベルに基づくシフト幅の値hまたはh’とを比較して(ステップs7)、電界強度に基づくシフト幅の値fまたはf’のほうが小さいときには、同調周波数の最大シフト幅を値fまたはf’に設定し(ステップs8)、FM変調レベルに基づくシフト幅の値hまたはh’のほうが小さいときには、同調周波数の最大シフト幅を値hまたはh’に設定する(ステップs9)。
【0067】
そして、この設定された同調周波数の最大シフト幅の値を隣接妨害が下側妨害の場合は同調周波数の初期値に加算し、上側妨害の場合は同調周波数の初期値から減算して、その周波数データを同調周波数データ信号cによって局部発振回路11に出力する(ステップs10)。
局部発振回路11は、以上のようにして設定された同調周波数の最大シフト幅内において、隣接妨害検出時に、同調周波数を隣接妨害が存在する方向と反対方向にシフトさせる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態における一例を示すブロック図である。
【図2】同例における妨害方向検出回路の構成を示すブロック図である。
【図3】上側妨害のときのFM受信機におけるFM検波出力とAM検波出力の周波数変動を示すグラフである。
【図4】下側妨害のときのFM受信機におけるFM検波出力とAM検波出力の周波数変動を示すグラフである。
【図5】(a)はSメータ出力と電界強度の関係を示すグラフであり、(b)は最大シフト幅と電界強度の関係を示すグラフである。
【図6】(a)は変調検出出力と変調レベルの関係を示すグラフであり、(b)は最大シフト幅と変調レベルの関係を示すグラフである。
【図7】同例における固定周波数の最大シフト幅の設定の手順を示すフローチャートである。
【図8】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 …混合器
11 …局部発振回路(同調周波数シフト手段)
12 …IF増幅回路
13 …リミッタ回路
14 …FM検波回路
15 …AM検波回路(電界強度検出手段)
16 …妨害方向検出回路(隣接妨害検出手段)
16A…HPF
16B…コンパレータ
16C…HPF
16D…サンプリング回路
16E…LPF
16F…ウインドコンパレータ
16G…LPF
16H…ウインドコンパレータ
16I…制御回路
17 …マイクロコンピュータ(同調周波数シフト手段,シフト幅制限手段,シフト幅設定手段)
18 …変調レベル検出回路(変調レベル検出手段)
a …FM検波出力
b …AM検波出力(Sメータ出力)
c …同調周波数データ信号
d …変調レベル検出信号
Claims (5)
- 希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、
この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、
この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、
このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、この電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴とするFM受信装置。 - 前記シフト幅制限手段が、受信信号の中間周波信号をAM検波したAM検波出力に基づいて電界強度を検出する請求項1に記載のFM受信装置。
- 希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、
この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、
この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、
このシフト幅制限手段が、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、この変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する最大シフト幅設定手段とを備えていることを特徴とするFM受信装置。 - 前記シフト幅制限手段が、FM検波出力をAM検波したAM検波出力に基づいて変調レベルを検出する請求項3に記載のFM受信装置。
- 希望波に隣接する放送波による妨害を検出する隣接妨害検出手段と、
この隣接妨害検出手段から出力される妨害検出信号に基づいて同調周波数を隣接する放送波から離調する方向にシフトさせる同調周波数シフト手段と、
この同調周波数シフト手段による同調周波数のシフト幅を希望波に歪みが生じない範囲に制限するシフト幅制限手段とを備え、
このシフト幅制限手段が、受信信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、FM検波出力の変調レベルを検出する変調レベル検出手段と、前記電界強度検出手段によって検出された受信信号の電界強度に基づいて、受信信号の電界強度が所定の値よりも小さいときには電界強度が小さくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、電界強度が前記所定の値よりも大きいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第1最大シフト幅設定手段と、前記変調レベル検出手段によって検出されたFM検波出力の変調レベルに基づいて、変調レベルが所定の値よりも小さいときにはシフト幅が所定の一定値になるように同調周波数の最大シフト幅を設定し、変調レベルが所定の値よりも大きいときには変調レベルが大きくなるのに対応してシフト幅が小さくなるように同調周波数の最大シフト幅を設定する第2最大シフト幅設定手段とを備え、
前記同調周波数シフト手段が、前記第1最大シフト幅設定手段と第2最大シフト幅設定手段によってそれぞれ設定された同調周波数の最大シフト幅のうち小さい方の最大シフト幅によって同調周波数をシフトさせることを特徴とするFM受信装置。
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