JP3616809B2 - サーマルヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビデオプリンタやラベルプリンタ等に使用され、高速印字および画像用印画に際して印字、印画品質の向上を図り得るサーマルヘッドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平面型のサーマルヘッドの例としては、図3(A),(B)に示すように、アルミニウム等のヒートシンク1上にアルミナセラミックス基板8およびPCB基板12を載せ、アルミナ基板8上に、後述する発熱部7の電極駆動用IC回路部10を設置するか(同図(A))、あるいはPCB基板12上に駆動用IC回路部10を設置し(同図(B))、前記発熱部7の電極とワイヤボンディング9を行った後、そのまわりをモールド樹脂13で固定し、さらにこれらをカバー11で覆った構造を有していた。
【0003】
ここで前記発熱部7の構成は、図3(C)に図3(A),(B)のD部を拡大して示すように、アルミナ基板8上にスクリーン印刷法あるいはスプレー法により、まず蓄熱層となるグレーズ層3を形成し、その上に例えば窒化チタン等の発熱抵抗体層4をスパッタ蒸着法等で成膜し、さらにその上に電極膜を付けフォトエッチングで発熱ドット部の間隔を空けかつ所定パターンでコモン電極層5aとリード電極層5bを形成していた。この発熱部7の最外層には耐摩耗保護層6が形成される。
【0004】
上記の構成で高速印字に対応させようとすると、グレーズ層3の蓄熱による影響を考慮に入れ、グレーズ層3の厚みをなるべく薄くする必要があり、さらに印字紙(またはインクリボン)送りの高速化に際してカバー11等の実装部が前記印字紙等の走行に支障をきたす場合がある。また画像用印画に対応させようとすると、カバー11等の実装部をプラテンローラとの干渉を避けるように発熱部7に対して大きな距離をとって基板面に実装しなければならず、基板が大形化してコスト高となるとともに全体の形状も大形になっていた。
【0005】
このような不都合をなくして高速熱応答性および紙(またはインクリボン)送りを良好にし、プラテンローラと駆動回路実装部との干渉を考慮しなくてもいいようにするために、近年、図1、図2に示す如くアルミナ基板8自体の主表面に台形状の凸状部2を設け、この凸状部2を含めてアルミナ基板8の上面全面にスプレー法によってグレーズ層3を付着し、その上に発熱抵抗体層4、電極層5a,5bおよび耐摩耗保護層6を形成し、発熱部7を凸状部2の頂部の中央に位置せしめたサーマルヘッドが実現している。この場合、グレーズ層3は基板凸状部2の頂部中央付近で盛り上がり(中央部の厚みT)、凸状部2の先端稜部2aでグレーズ層3が薄くなった構造となり、その盛り上がりの最頂部上に発熱部7が形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アルミナ基板上に凸状部2を形成した平面型サーマルヘッドは、凸状部2のために発熱部7における紙(またはインクリボン)の走行位置が駆動回路部より高くなり、カバー11との干渉が避けられ、また前記凸状部上に被着されるグレーズ層3の曲率半径を適度に設定することにより感熱紙やカードとの接触性は良くなるものの、発熱層直下のグレーズ層3の厚みの調節が困難である。例えば高速印字においては、グレーズ層3が厚すぎると信号オフ時にも蓄熱が残って尾引き現象や印字潰れが生じ、一方、画像印画においては、グレーズ層3の蓄熱効果で印画濃度を確保するために或る程度の層厚が必要となるが、この厚みを適切に制御することが難しかった。
【0007】
本発明は、発熱部と感熱紙(またはインクリボン)等の印刷媒体との接触および紙送りを良好にするとともに、通常調節することが困難な基板凸状部上のグレーズ層の厚み調節とグレーズ層の頂部中央の曲率半径を適切化することにより、印字、印画品質、特に高速印字に際しての印字品質の向上を図ったサーマルヘッドおよびグレーズ層の厚み調節を容易に行えるサーマルヘッドの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るサーマルヘッドは、ヒートシンク上に設けられかつ上面に凸状部を備えた発熱体形成基板と、前記凸状部を含んで前記発熱体形成基板上に被着されたグレーズ層とを有し、前記凸状部の頂部平面の幅が0.1〜1.5mm、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の層厚が25〜85μmでかつその曲率半径が5mm以下とされている。
【0009】
また本発明によれば、ヒートシンク上に設けられかつ上面に凸状部を備えた発熱体形成基板と、前記凸状部を含んで前記発熱体形成基板上に被着されたグレーズ層とを有し、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の曲率半径を5mm以下としたサーマルヘッドの製造方法において、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の層厚が25〜85μmとなるように前記凸状部の頂部平面の幅を0.1〜1.5mmにして前記基板上へのグレーズの供給量を9.2〜17.2(mg/cmとするサーマルヘッドの製造方法が提供される。
【0010】
【実施例】
次に、本発明を実施例について図面を参照して説明する。アルミナ基板上に凸状部が形成された本発明のサーマルヘッドの例を図1および図2を用いて説明する。アルミニウム等のヒートシンク1の上面部に凸状部2を備えたアルミナ等の基板8を載せ、このアルミナ基板8の上面全面に、凸状部2も含めて、後述する範囲にある或る一定量のグレーズをスプレー法によって基板上面の露出がないように付着させてなめらかなグレーズ層3を得る。このグレーズ層3の上に発熱抵抗体層4および電極層を成膜し、エッチング処理によりこれらの層を所定の形状にし、発熱部7、リード電極層5b、コモン電極層5aを形成し、さらに最外層に耐摩耗保護層6を被着する。発熱部7を発熱させるための駆動用IC10はPCB基板12上に形成され、その電気的接続はボンディングワイヤ9によってなされる。駆動用IC10およびボンディングワイヤ9はモールド樹脂13によって固定され、さらにカバー11で保護される。
【0011】
このグレーズ層3は、図2(A)に示すように、基板8の凸状部2の位置でその頂部の中央部が中高に盛り上がり、凸状部2の頂上の稜部2aで厚みが薄くなった全体として山形の表面形状となっている。この実施例では、凸状部2は略台形状を成し、その頂部の平坦部の幅をWとし、凸状部2の頂部におけるグレーズ層3の盛り上がりの厚みをTとする。厚みT(μm)と幅W(mm)の関係は種々のグレーズ供給量に対して図4に示す如くになる。ただし図4においては凸状部2の高さhは発熱部7の駆動回路部の実装面(カバー11が取り付けられるときはカバー上面、カバー11がないときはモールド樹脂13の頂部)より高く設定され、h=1mm、凸状部2の立ち上げ角P=45゜、凸状部2の頂部両端の曲率半径r=1mmのときの厚みTと幅Wの関係を示している。
【0012】
図4において(イ)はグレーズ供給量9.2(mg/cm)の場合、(ロ)は同じく10.87、(ハ)は12.13、(ニ)は13.4、(ホ)は17.2の場合であり、単位はいずれもmg/cmである。この図からも明らかなように、凸状部2の頂部の中央部におけるグレーズ層3の盛り上がり厚みTは、凸状部2の頂部の平坦部の幅Wが狭くなればそれにつれて厚みTも薄くなり、幅Wが広くなれば厚みTも厚くなることが分る。また凸状部2の幅の広い所では、グレーズのスプレーによる供給量によってもグレーズ層3の厚みTが変わる。このことは、グレーズ層3の凸状部中央の厚みTが凸状部2の頂部の平坦部の幅Wとグレーズのスプレー供給量との組み合せで調節できることを示している。全体としてみれば、頂部の平坦部の幅Wが0.1〜1.5mmの範囲で図4の(イ)〜(ホ)のグレーズ供給量、即ち9.2〜17.2(mg/cm)のスプレー供給量により、サーマルヘッドとして適切な蓄熱、熱拡散を与えるグレーズ層が実現できるのが分る。なおグレーズ層3の薄い凸状部2の頂部の両端においては、下地の凸状部を有するアルミナ基板8が露出することはない。
【0013】
図2(A)のように発熱部7が凸状部中央位置の上方に形成されている場合、高速印字に対応させるのには、発熱部7の直下のグレーズ層の厚みTを薄くする必要があり、この場合は前記幅Wを狭くすればグレーズ塗布量に依存しないで(9.2〜17.2(mg/cm)の任意塗布量において)グレーズ層の厚みTを薄くすることができる。ここで厚みTは25〜50μm程度が好ましく、その場合図4より、幅Wは0.1〜0.3mmとするのがよいことが分る。なお、高速印字の場合に厚みTを薄くする必要があるのは、厚みTが厚過ぎると、発熱部7直下のグレーズ層3が蓄熱し過ぎて印字の際に尾引きや印字潰れを生じるからである。
【0014】
一方、画像用のサーマルヘッドのように熱転写の熱量に蓄熱を利用するものについては、発熱部7直下のグレーズ層3に蓄熱効果をもたせ、熱転写による印画濃度を出すために、ある程度グレーズ層の厚みTを厚くする必要があり、その場合は、前記幅Wを広くすればよい。ここで厚みTは最大でも85μm以下程度が好ましく、しかも画像用のサーマルヘッドではプラテンによる感熱紙またはインクリボンへの押付圧力を上げるために発熱体は或る曲率をもったところに形成されなければならない。図5にグレーズ層形成後の曲率半径R(mm)と凸状部2の頂部の幅W(mm)との関係を種々のグレーズ供給量に対して示した。図5中、(イ)は9.2、(ロ)は10.87、(ハ)は12.13、(ニ)は13.4、(ホ)は17.2(単位はいずれもmg/cm)のグレーズ供給量の場合である。図5の結果からグレーズ層形成後の曲率半径を5mm以下にしてプラテン押付圧力を上げ得るようにするには頂部の幅Wは1.5mm以下とすればよいことがわかる。
【0015】
サーマルヘッドの印字品質を考慮に入れると、発熱部直下のグレーズ層の厚みTは25〜85μm必要であり、この状態のグレーズ層厚みを得るには凸状部の頂部の平坦部の幅Wを0.1〜1.5(mm)、グレーズ供給量を9.2〜17.2(mg/cm)の範囲で調節すればよい。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、従来困難であった凸状部の頂部中央におけるグレーズ層の盛り上がり厚みとその曲率半径(発熱部直下)を調節するのに、グレーズの供給量とアルミナ基板の凸状部形状、特に凸状部中央の平坦部の幅を定めることできわめて簡単に調節することができる。また本発明では発熱部が駆動回路部の実装面あるいは駆動回路部のカバー実装面より高い位置に設けられているので、感熱紙やカード等の印刷物を支障なく良好に送り出すことができ、高速印字を確保しながら高品質の印画を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるサーマルヘッドの横断面図である。
【図2】図1に示すサーマルヘッドの発熱部および凸状部の拡大横断面図である。
【図3】平坦な基板に発熱部を形成した従来のサーマルヘッドの横断面図である。
【図4】凸状部の頂部の平坦部幅Wと発熱部直下のグレーズ層の厚みTとの関係を示す図である。
【図5】凸状部の頂部の平坦部幅Wとグレーズ層形成後の発熱部直下の曲率半径Rとの関係を示す図である。
【符号の説明】
2 凸状部
3 グレーズ層
5a,5b 電極層
6 耐摩耗保護層
7 発熱部
8 アルミナ基板
10 駆動用IC
11 カバー

Claims (2)

  1. ヒートシンク上に設けられかつ上面に凸状部を備えた発熱体形成基板と、前記凸状部を含んで前記発熱体形成基板上に被着されたグレーズ層とを有し、前記凸状部の頂部平面の幅が0.1〜1.5mm、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の層厚が25〜85μmでかつその曲率半径が5mm以下とされていることを特徴とするサーマルヘッド。
  2. ヒートシンク上に設けられかつ上面に凸状部を備えた発熱体形成基板と、前記凸状部を含んで前記発熱体形成基板上に被着されたグレーズ層とを有し、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の曲率半径を5mm以下としたサーマルヘッドの製造方法において、前記凸状部の頂部中央位置での前記グレーズ層の層厚が25〜85μmとなるように前記凸状部の頂部平面の幅を0.1〜1.5mmにして前記基板上へのグレーズの供給量を9.2〜17.2(mg/cm)とすることを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
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