JP3615386B2 - 半導体素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN系、SiC系の材料は、青色発光に適した材料として注目され、現在様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば特開平8−64910号公報では、図3(A)に示すように、n型SiC基板10上にn型SiCクラッド層11、InGaN活性層12、p型SiCクラッド層13が順に積層され、このp型SiCクラッド層13上部中央にAl電極14が、n型SiC基板10下部中央にNi電極15が形成された青色発光が可能な半導体素子(以下、従来構造A)が提案されている。
【0004】
また、同公報には、その従来技術として、図3(B)に示すように、サファイヤ基板20上に、AlGaNバッファ層21、n型GaN層22、n型AlGaNクラッド層23、InGaN活性層24、p型AlGaNクラッド層25、p型GaN層26、p型透明電極27が順に積層され、更にこのp型透明電極27の上にp型電極28が、n型GaN層22の一部にn型電極29が形成された青色発光が可能な半導体素子(以下、従来構造B)も開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来構造Aにおいては、低温成長(約800℃)のInGaN活性層12の上部に高温成長(1400〜1500℃)のp型SiCクラッド層13を成長させるため、p型SiCクラッド層13の成長中にInGaN活性層12中のNが離脱して格子欠陥を生じやすく、良好な結晶が得られない、素子特性が低下するなどの課題がある。
【0006】
また、従来構造Bにおいては、p型GaN層26及びp型AlGaNクラッド層25を形成する際、アクセプタ添加層を成長後にアニール処理、電子線照射処理などの後処理が必要であるため、製造工程が複雑化するという課題がある。そしてまた、このような後処理によってp型層は得られるが、その比抵抗値が数オーム・cmと高く、十分低抵抗なp型層が得られないため、電流の広がりを図るための透明電極27を別途設ける必要があり、製造工程が複雑化するという課題がある。この透明電極27は一般に、遮光性の金属材料を光を透過できる程度に薄く成膜して形成する必要があるので、透明電極27を作成するための工程に高い制御性が必要になるという課題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、基本的な特徴は、p型SiCからなる第1の層、In(1-X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層、n型Al (1-Y) Ga Y N(0≦Y≦1)化合物半導体からなる第3の層を順に積層し、前記第3の層の上に直接もしくはキャップ層を介してn型電極を形成した半導体素子であって、前記第2の層は、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜で構成したことにある。
【0008】
これにより、成膜工程において、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層の上部に、SiC層(成長温度:1400〜1500℃)に比べて低温成長可能なn型GaN系の第3層(成長温度:1100℃)を成長させるため、In(1−X)GaXNからなる第2の層の熱分解による格子欠陥の発生を防止することができる。
【0009】
また、p型SiCからなる第1の層とn型GaN系化合物半導体からなる第3の層との間に、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜からなる第2の層を設けたので、この第2の層がバッファ層として機能し、第1の層と第2の層の間、並びに第2の層と第3の層の間に生じる格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を解消して、結晶品位を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を、図1に示す青色発光に適した半導体素子(発光ダイオード)を例にとって説明する。
【0011】
この半導体素子は、p型SiC単結晶基板1上にp型SiC単結晶からなるp型クラッド層2、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる活性層3、n型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)単結晶からなるn型クラッド層4を順に積層した構造となっている。
【0012】
前記活性層3は、少なくともクラッド層2、4と接するように配置したIn(1−X1)GaX1N(0<X1<1)単結晶からなる複数の第1のInGaN層3aと、第1のInGaN層3aに挟まれるように配置した少なくとも1以上のIn(1−X2)GaX2N(0≦X2<X1<1)単結晶からなる第2のInGaN層3bを交互に積層した多層膜からなる多層膜活性層(多重量子井戸構造層)構造としている。この活性層3は、図1中に拡大して示すように、例えば、In0。1Ga0。9Nからなる3つの第1のInGaN層3aとIn0。3Ga0。7Nからなる2つの第2のInGaN層3bを交互に積層して構成している。第1、第2のInGaN層3a、3bは、量子効果が得られるように300オングストローム以下の膜厚に設定され、この例では、各第1のInGaN層3aの膜厚を100オングストロームに、各第2のInGaN層3bの膜厚を80オングストロームに設定している。
【0013】
このように、第1、第2のInGaN層3a,3bが結晶格子の弾性変形が可能な範囲内である100オングストローム前後の膜厚に設定され、それらを複数積層して活性層3を構成しているので、活性層3が格子定数差に伴う結晶格子の歪みを吸収するバッファ層として機能し、前記p型クラッド層2と活性層3の間、並びに活性層3と前記n型クラッド層4間の格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を有効に防止して結晶品位を高めることができる。
【0014】
すなわち、In組成(1−X)の小さい第1のInGaN層3aは、SiC,GaN系化合物半導体に近い格子定数を有する。したがって、第1のInGaN層3aにより、p型SiCクラッド層2、n型AlGaNクラッド層4との格子整合がとられるため、結晶転位やクラックの発生を防止することができる。
【0015】
また、In組成(1−X)の大きい第2のInGaN層3bは、SiC,GaN系化合物半導体に比べて小さいバンドギャップを有し、しかも、In組成(1−X)の小さい第1のInGaN層3aよりも小さいバンドギャップを有する。したがって、第2のInGaN層3bは、p型クラッド層2、並びにn型クラッド層4とのバンドギャップ差を大きくすることができる。
【0016】
以上のことにより、結晶転位やクラックの発生を防止しつつ活性層3の膜厚を厚くできるため、キャリアを効果的に活性層3に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を高めることができる。
【0017】
n型クラッド層4上には、TiとAlとAuからなるn型電極5が形成され、基板1裏面にはSiとAlとAuからなるp型電極6が形成されている。
【0018】
図2に前記各層を構成する各種材料の物性定数を示す。本実施例で使用するSiC材料には、6H−SiC,4H−SiC,2H−SiCなど、各種多形が存在し、それぞれで物性定数が異なる。またIn(1−X)GaXN,Al(1−Y)GaYNの3元混晶材料の物性定数は、それぞれの2元材料の間の値になる。また、本実施例のダブルヘテロ構造では、活性層3のバンドギャップエネルギより、p型クラッド層2及びn型クラッド層4のバンドギャップエネルギを高くする必要がある。
【0019】
この実施例の半導体素子において、例えば青色発光させる場合には、活性層3のGa比率を0.6〜0.9程度とし、かつ膜厚を500オングストローム前後とすることが好適である。また、このような活性層3において、効率よく発光を行わせるためには、活性層3と各クラッド層2,4間のバンドギャップ差を大とすることが好ましい。従って、p型クラッド層2は0.5μm以上の厚みの2H−SiCで構成し、一方、n型クラッド層4はGa比率が0.8〜0.9程度で、かつ、層厚0.5μm以上のn型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)で構成することが好ましい。
【0020】
次に上記半導体素子の製造方法を以下に説明する。
【0021】
まず第1の工程として、p型SiC単結晶基板1上にp型SiC単結晶からなるp型クラッド層2をCVD(化学気相成長)法を用いて成長させる。具体的には、SiH4を流量0.5CC/分、C3 H8 を流量0.3CC/分の割合で注 入し、基板温度を1500℃に加熱する。また、Alをドープする為にド−パントガスとしてTMA[トリメチルアルミニウム:(CH3)3Al]を流量0.06CC/分の割合で注入する。また、本実施例ではp形SiC基板1の成長面として(0001)面を用いている。
【0022】
次に第2の工程として、InGaN多層膜活性層3をMOCVD(有機金属化学気相成長)法を用いて成長させる。具体的には、TMI[トリメチルインジウム:(CH3)3In]を流量5μmol/分、TEG[トリエチルガリウム:(C2H5)3Ga]を流量0.7μmol/分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を800℃に加熱して第1のInGaN層3aを成長させ、続いて、TMI[トリメチルインジウム:(CH3)3In]を流量15μmol/分、TEG[トリエチルガリウム:(C2H5)3Ga]を流量0.7μmol/ 分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を800℃に加熱して 第2のInGaN層3bを成長させ、これを繰り返して行う。
【0023】
最後に第3の工程としてn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層4をMOCVD成長法を用いて成長させる。具体的には、TMAを流量4.0μmol/分、TMGを流量27μmol/分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を1100℃に加熱する。また、Siを添加する為にドーパントガスとしてSiH4を流量1.5nmol/分の割合で注入する。
【0024】
このように、InGaN活性層3の上部には、SiCに比べて低温成長可能なAl0.1Ga0.9Nクラッド層4を成長させるので、Al0.1Ga0.9Nクラッド層4の成長中に、InGaN活性層3が格子欠陥を生じる危険性を低減することができる。
【0025】
上記実施例の構造によれば、GaN系化合物クラッド層4はn型であるため、従来構造BのようにGaN系の層をp型にする場合に比べて、比抵抗値を小さくすることができ、従来構造Bの場合のようなp型化するためのアニール処理や電子線照射処理等の後処理を不要として製造工数の削減を図ることができる。
【0026】
また、GaN系化合物クラッド層4はn型であり、p型である場合に比べて比抵抗値が小さいため、従来構造Bのような透明電極の形成も不要となり、透明電極形成のための工程を不要として、構成部材の削減と製造工数の削減を図ることができる。
【0027】
尚、上記実施例ではp型SiC基板の成長面として、(0001)面を用いたが、結晶の低指数面から10°以下に傾いた、所謂オフアングル面を用いても良い。
【0028】
また、n型AlGaNクラッド層4の上部に必要に応じてn型GaN層をキャップ層として積層し、その上部にn型電極を形成することもでき、このようにすれば、n型電極とのオーミック特性を良好(電極の接触抵抗が小さい)にして素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0029】
さらに、上記実施例ではp型SiC基板にp型SiCクラッド層、活性層、n型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)クラッド層を順に積層してなる構成について説明したが、n型SiC基板上にn型SiCクラッド層、活性層、p型GaN系化合物半導体層(クラッド層)を順に積層させた場合も上述の実施例と同様の効果は得られる。しかし、p型GaN系化合物半導体層はn型GaN系に比べて高抵抗であるため、透明電極の形成など接合面での均一な電流分布を得るための構造が別途必要となる。
【0030】
また、n型またはi形(高抵抗)SiC基板上にp型SiCクラッド層、活性層、n型GaN系化合物半導体層(クラッド層)を順に積層させた場合も上述の実施例と同様の効果は得られる。しかし、SiC基板にp型電極を設けることができないので、従来構造Bと同様な電極構造が別途必要となる。但し、この場合は、透明電極の形成は不要である(n型GaN系クラッド層が低抵抗であるため)。
【0031】
尚、上記実施例は発光ダイオードを例に取り説明したが、本発明は受光素子、半導体レーザ等の他の半導体素子にも適応することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の半導体素子は、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層(活性層)の上部にSiCに比べて低温成長可能なGaN系化合物半導体からなる第3の層(Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)からなるクラッド層)を成長させるので、第3の層の成長中の第2の層の熱分解による格子欠陥の発生を回避することができる。
【0033】
また、p型SiCからなる第1の層とn型GaN系化合物半導体からなる第3の層との間に、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜からなる第2の層を設けたので、この第2の層がバッファ層として機能し、第1の層と第2の層の間、並びに第2の層と第3の層の間に生じる格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を解消して、結晶品位を高めることができる。
【0034】
以上のことから、本発明によれば、発光効率が高く高品質な半導体素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における半導体素子の構造を示した図である。
【図2】本発明の実施例における半導体素子に使用する各種材料の物性定数を示した図である。
【図3】(A)(B)は、従来技術による半導体素子の構造を示した図である。
【符号の説明】
1 p型SiC基板
2 p型SiCクラッド層
3 InGaN多層膜活性層
4 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層
5 n型電極
6 p型電極
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN系、SiC系の材料は、青色発光に適した材料として注目され、現在様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば特開平8−64910号公報では、図3(A)に示すように、n型SiC基板10上にn型SiCクラッド層11、InGaN活性層12、p型SiCクラッド層13が順に積層され、このp型SiCクラッド層13上部中央にAl電極14が、n型SiC基板10下部中央にNi電極15が形成された青色発光が可能な半導体素子(以下、従来構造A)が提案されている。
【0004】
また、同公報には、その従来技術として、図3(B)に示すように、サファイヤ基板20上に、AlGaNバッファ層21、n型GaN層22、n型AlGaNクラッド層23、InGaN活性層24、p型AlGaNクラッド層25、p型GaN層26、p型透明電極27が順に積層され、更にこのp型透明電極27の上にp型電極28が、n型GaN層22の一部にn型電極29が形成された青色発光が可能な半導体素子(以下、従来構造B)も開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来構造Aにおいては、低温成長(約800℃)のInGaN活性層12の上部に高温成長(1400〜1500℃)のp型SiCクラッド層13を成長させるため、p型SiCクラッド層13の成長中にInGaN活性層12中のNが離脱して格子欠陥を生じやすく、良好な結晶が得られない、素子特性が低下するなどの課題がある。
【0006】
また、従来構造Bにおいては、p型GaN層26及びp型AlGaNクラッド層25を形成する際、アクセプタ添加層を成長後にアニール処理、電子線照射処理などの後処理が必要であるため、製造工程が複雑化するという課題がある。そしてまた、このような後処理によってp型層は得られるが、その比抵抗値が数オーム・cmと高く、十分低抵抗なp型層が得られないため、電流の広がりを図るための透明電極27を別途設ける必要があり、製造工程が複雑化するという課題がある。この透明電極27は一般に、遮光性の金属材料を光を透過できる程度に薄く成膜して形成する必要があるので、透明電極27を作成するための工程に高い制御性が必要になるという課題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、基本的な特徴は、p型SiCからなる第1の層、In(1-X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層、n型Al (1-Y) Ga Y N(0≦Y≦1)化合物半導体からなる第3の層を順に積層し、前記第3の層の上に直接もしくはキャップ層を介してn型電極を形成した半導体素子であって、前記第2の層は、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜で構成したことにある。
【0008】
これにより、成膜工程において、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層の上部に、SiC層(成長温度:1400〜1500℃)に比べて低温成長可能なn型GaN系の第3層(成長温度:1100℃)を成長させるため、In(1−X)GaXNからなる第2の層の熱分解による格子欠陥の発生を防止することができる。
【0009】
また、p型SiCからなる第1の層とn型GaN系化合物半導体からなる第3の層との間に、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜からなる第2の層を設けたので、この第2の層がバッファ層として機能し、第1の層と第2の層の間、並びに第2の層と第3の層の間に生じる格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を解消して、結晶品位を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を、図1に示す青色発光に適した半導体素子(発光ダイオード)を例にとって説明する。
【0011】
この半導体素子は、p型SiC単結晶基板1上にp型SiC単結晶からなるp型クラッド層2、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる活性層3、n型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)単結晶からなるn型クラッド層4を順に積層した構造となっている。
【0012】
前記活性層3は、少なくともクラッド層2、4と接するように配置したIn(1−X1)GaX1N(0<X1<1)単結晶からなる複数の第1のInGaN層3aと、第1のInGaN層3aに挟まれるように配置した少なくとも1以上のIn(1−X2)GaX2N(0≦X2<X1<1)単結晶からなる第2のInGaN層3bを交互に積層した多層膜からなる多層膜活性層(多重量子井戸構造層)構造としている。この活性層3は、図1中に拡大して示すように、例えば、In0。1Ga0。9Nからなる3つの第1のInGaN層3aとIn0。3Ga0。7Nからなる2つの第2のInGaN層3bを交互に積層して構成している。第1、第2のInGaN層3a、3bは、量子効果が得られるように300オングストローム以下の膜厚に設定され、この例では、各第1のInGaN層3aの膜厚を100オングストロームに、各第2のInGaN層3bの膜厚を80オングストロームに設定している。
【0013】
このように、第1、第2のInGaN層3a,3bが結晶格子の弾性変形が可能な範囲内である100オングストローム前後の膜厚に設定され、それらを複数積層して活性層3を構成しているので、活性層3が格子定数差に伴う結晶格子の歪みを吸収するバッファ層として機能し、前記p型クラッド層2と活性層3の間、並びに活性層3と前記n型クラッド層4間の格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を有効に防止して結晶品位を高めることができる。
【0014】
すなわち、In組成(1−X)の小さい第1のInGaN層3aは、SiC,GaN系化合物半導体に近い格子定数を有する。したがって、第1のInGaN層3aにより、p型SiCクラッド層2、n型AlGaNクラッド層4との格子整合がとられるため、結晶転位やクラックの発生を防止することができる。
【0015】
また、In組成(1−X)の大きい第2のInGaN層3bは、SiC,GaN系化合物半導体に比べて小さいバンドギャップを有し、しかも、In組成(1−X)の小さい第1のInGaN層3aよりも小さいバンドギャップを有する。したがって、第2のInGaN層3bは、p型クラッド層2、並びにn型クラッド層4とのバンドギャップ差を大きくすることができる。
【0016】
以上のことにより、結晶転位やクラックの発生を防止しつつ活性層3の膜厚を厚くできるため、キャリアを効果的に活性層3に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を高めることができる。
【0017】
n型クラッド層4上には、TiとAlとAuからなるn型電極5が形成され、基板1裏面にはSiとAlとAuからなるp型電極6が形成されている。
【0018】
図2に前記各層を構成する各種材料の物性定数を示す。本実施例で使用するSiC材料には、6H−SiC,4H−SiC,2H−SiCなど、各種多形が存在し、それぞれで物性定数が異なる。またIn(1−X)GaXN,Al(1−Y)GaYNの3元混晶材料の物性定数は、それぞれの2元材料の間の値になる。また、本実施例のダブルヘテロ構造では、活性層3のバンドギャップエネルギより、p型クラッド層2及びn型クラッド層4のバンドギャップエネルギを高くする必要がある。
【0019】
この実施例の半導体素子において、例えば青色発光させる場合には、活性層3のGa比率を0.6〜0.9程度とし、かつ膜厚を500オングストローム前後とすることが好適である。また、このような活性層3において、効率よく発光を行わせるためには、活性層3と各クラッド層2,4間のバンドギャップ差を大とすることが好ましい。従って、p型クラッド層2は0.5μm以上の厚みの2H−SiCで構成し、一方、n型クラッド層4はGa比率が0.8〜0.9程度で、かつ、層厚0.5μm以上のn型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)で構成することが好ましい。
【0020】
次に上記半導体素子の製造方法を以下に説明する。
【0021】
まず第1の工程として、p型SiC単結晶基板1上にp型SiC単結晶からなるp型クラッド層2をCVD(化学気相成長)法を用いて成長させる。具体的には、SiH4を流量0.5CC/分、C3 H8 を流量0.3CC/分の割合で注 入し、基板温度を1500℃に加熱する。また、Alをドープする為にド−パントガスとしてTMA[トリメチルアルミニウム:(CH3)3Al]を流量0.06CC/分の割合で注入する。また、本実施例ではp形SiC基板1の成長面として(0001)面を用いている。
【0022】
次に第2の工程として、InGaN多層膜活性層3をMOCVD(有機金属化学気相成長)法を用いて成長させる。具体的には、TMI[トリメチルインジウム:(CH3)3In]を流量5μmol/分、TEG[トリエチルガリウム:(C2H5)3Ga]を流量0.7μmol/分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を800℃に加熱して第1のInGaN層3aを成長させ、続いて、TMI[トリメチルインジウム:(CH3)3In]を流量15μmol/分、TEG[トリエチルガリウム:(C2H5)3Ga]を流量0.7μmol/ 分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を800℃に加熱して 第2のInGaN層3bを成長させ、これを繰り返して行う。
【0023】
最後に第3の工程としてn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層4をMOCVD成長法を用いて成長させる。具体的には、TMAを流量4.0μmol/分、TMGを流量27μmol/分、NH3を流量2.0l/分の割合で注入し、基板温度を1100℃に加熱する。また、Siを添加する為にドーパントガスとしてSiH4を流量1.5nmol/分の割合で注入する。
【0024】
このように、InGaN活性層3の上部には、SiCに比べて低温成長可能なAl0.1Ga0.9Nクラッド層4を成長させるので、Al0.1Ga0.9Nクラッド層4の成長中に、InGaN活性層3が格子欠陥を生じる危険性を低減することができる。
【0025】
上記実施例の構造によれば、GaN系化合物クラッド層4はn型であるため、従来構造BのようにGaN系の層をp型にする場合に比べて、比抵抗値を小さくすることができ、従来構造Bの場合のようなp型化するためのアニール処理や電子線照射処理等の後処理を不要として製造工数の削減を図ることができる。
【0026】
また、GaN系化合物クラッド層4はn型であり、p型である場合に比べて比抵抗値が小さいため、従来構造Bのような透明電極の形成も不要となり、透明電極形成のための工程を不要として、構成部材の削減と製造工数の削減を図ることができる。
【0027】
尚、上記実施例ではp型SiC基板の成長面として、(0001)面を用いたが、結晶の低指数面から10°以下に傾いた、所謂オフアングル面を用いても良い。
【0028】
また、n型AlGaNクラッド層4の上部に必要に応じてn型GaN層をキャップ層として積層し、その上部にn型電極を形成することもでき、このようにすれば、n型電極とのオーミック特性を良好(電極の接触抵抗が小さい)にして素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0029】
さらに、上記実施例ではp型SiC基板にp型SiCクラッド層、活性層、n型Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)クラッド層を順に積層してなる構成について説明したが、n型SiC基板上にn型SiCクラッド層、活性層、p型GaN系化合物半導体層(クラッド層)を順に積層させた場合も上述の実施例と同様の効果は得られる。しかし、p型GaN系化合物半導体層はn型GaN系に比べて高抵抗であるため、透明電極の形成など接合面での均一な電流分布を得るための構造が別途必要となる。
【0030】
また、n型またはi形(高抵抗)SiC基板上にp型SiCクラッド層、活性層、n型GaN系化合物半導体層(クラッド層)を順に積層させた場合も上述の実施例と同様の効果は得られる。しかし、SiC基板にp型電極を設けることができないので、従来構造Bと同様な電極構造が別途必要となる。但し、この場合は、透明電極の形成は不要である(n型GaN系クラッド層が低抵抗であるため)。
【0031】
尚、上記実施例は発光ダイオードを例に取り説明したが、本発明は受光素子、半導体レーザ等の他の半導体素子にも適応することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の半導体素子は、In(1−X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層(活性層)の上部にSiCに比べて低温成長可能なGaN系化合物半導体からなる第3の層(Al(1−Y)GaYN(0≦Y≦1)からなるクラッド層)を成長させるので、第3の層の成長中の第2の層の熱分解による格子欠陥の発生を回避することができる。
【0033】
また、p型SiCからなる第1の層とn型GaN系化合物半導体からなる第3の層との間に、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜からなる第2の層を設けたので、この第2の層がバッファ層として機能し、第1の層と第2の層の間、並びに第2の層と第3の層の間に生じる格子定数差に起因する結晶転位やクラックの発生を解消して、結晶品位を高めることができる。
【0034】
以上のことから、本発明によれば、発光効率が高く高品質な半導体素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における半導体素子の構造を示した図である。
【図2】本発明の実施例における半導体素子に使用する各種材料の物性定数を示した図である。
【図3】(A)(B)は、従来技術による半導体素子の構造を示した図である。
【符号の説明】
1 p型SiC基板
2 p型SiCクラッド層
3 InGaN多層膜活性層
4 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層
5 n型電極
6 p型電極
Claims (4)
- p型SiCからなる第1の層、In(1-X)GaXN(0≦X<1)からなる第2の層、n型Al (1-Y) Ga Y N(0≦Y≦1)化合物半導体からなる第3の層を順に積層し、前記第3の層の上に直接もしくはキャップ層を介してn型電極を形成した半導体素子であって、前記第2の層は、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜で構成していることを特徴とする半導体素子。
- SiC基板上にp型SiCからなる第1のクラッド層、In(1-X)GaXN(0≦X<1)からなる活性層、n型Al(1-Y)GaYN(0≦Y≦1)からなる第2のクラッド層を順に積層し、前記第2のクラッド層の上に直接もしくはキャップ層を介してn型電極を形成した半導体素子であって、前記活性層は、In組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜で構成していることを特徴とする半導体素子。
- SiC基板上にCVD成長法によりp型SiCからなるクラッド層を成膜する第1の工程と、前記クラッド層上にIn組成の小さい複数の第1のInGaN層とIn組成が第1のInGaN層よりも大きい1以上の第2のInGaN層を交互に積層した多層膜からなる活性層をMOCVD成長法により成膜する第2の工程と、前記活性層上にn型Al(1-Y)GaYN(0≦Y≦1)からなるクラッド層をMOCVD成長法により成膜する第3の工程とを有し、前記n型Al(1-Y)GaYNからなるクラッド層の上に直接もしくはキャップ層を介してn型電極を形成することを特徴とする半導体素子の製造方法。
- 前記第1のInGaN層と第2のInGaN層は、それぞれの膜厚が300オングストローム以下であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の半導体素子。」
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