JP3614498B2 - 作業車の作業状態模擬確認装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本願発明は、クレーン車等作業車の作業状態模擬確認装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にクレーン車や高所作業車等の作業車では、例えば作業現場での作業条件、環境条件に対応した適切な能力のものが必要とされる。このため、作業車のオペレータは、当該作業現場の状況を経験的に判断して該現場状況に応じた作業条件を充足する適切な能力の作業車の手配を作業車の保有者側に依頼するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、現在の上記作業現場における作業車の作業能力、すなわち予定されている全作業工程が過負荷になることなく実行可能か否かは、オペレータの経験によるか又は作業車の性能表を検討して確認することによって行われているだけであるため、実際の作業を開始した後に手配された作業車が能力不足であるといったケースが生じる問題があった。
【0004】
また、作業半径、揚程の変化、制約が多いなど作業行程が複雑な場合や再施行ができない場合などには上記検討に長時間を要する問題があった。
【0005】
本願発明は、このような従来の問題点を解決することを課題としてなされたものであって、作業現場における作業車のキャビン内において予定の作業行程のシュミレーションを行ない得るようにすることによって、実際に作業車を稼動させることなく、全行程の作業の遂行が可能か否かを判定できるようにした作業車の作業状態模擬確認装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、該目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0007】
すなわち、本願発明の作業車の作業状態模擬確認装置は、予定された作業行程に対応して使用される作業車の作業状態を固定的に設定する作業状態設定手段と、作業現場の作業状況に応じた作業車の作業状態の制限値を設定する作業状態制限値設定手段と、作業状態を上記予定の作業行程に従って順次対応する操作パラメータを入力することによって模擬的に入力する作業状態入力手段と、該作業状態入力手段により入力された操作パラメータに基いて対応する作業状態を模擬的に演算してゆく作業状態演算手段と、該作業状態演算手段によって模擬的に演算された作業状態が、上記作業状態制限値設定手段により設定された限界作業状態となったときに作動して限界作業状態であることを報知する報知手段とを備えて構成されている。
【0008】
そして、上記作業状態設定手段は、ブーム状態、アウトリガ状態、カウンタウエイト状態等の当該作業車の作業姿勢を特定するパラメータにより作業状態が設定されるように構成されている。
【0009】
また、上記作業状態制限値設定手段は、作業現場の作業状況に応じた作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角、ブーム旋回角等の上限値又は下限値により作業状態の制限値が設定されるように構成されている。
【0010】
さらに、上記作業状態入力手段は、当該作業車の運転操作手段である電気ジョイスティックの増大又は縮小方向への倒し量に対応した信号を操作パラメータとして作業状態を入力するように構成されている。
【0011】
【作用】
したがって、本願発明の作業車の作業状態模擬確認装置では、上記の構成に対応して次のような作用が得られる。
【0012】
すなわち、同装置の構成では、上述のように、予定された作業行程に対応して使用される作業車の例えばブーム状態、アウトリガ状態、カウンタウエイト状態等の作業状態を固定的に設定する作業状態設定手段と、作業現場の作業状況に応じた作業車の例えば作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角、ブーム旋回角各々の上限値および下限値等作業状態の制限値を設定する作業状態制限値設定手段と、作業状態を、例えば電気ジョイスティック等の当該作業車の運転操作手段を用いて、上記予定の作業行程に従って順次対応する操作量に応じた信号を操作パラメータとして入力することによって模擬的に入力する作業状態入力手段と、該作業状態入力手段により入力された操作パラメータに基いて対応する作業状態を模擬的に演算してゆく作業状態演算手段と、該作業状態演算手段によって模擬的に演算された作業状態が、上記作業状態制限値設定手段により設定された限界作業状態となったときに作動して限界作業状態であることを報知する報知手段とを備えており、例えば当該作業車の作業予定行程に対応して固定的に設定される作業状態、例えばブーム状態、アウトリガ状態、カウンタウエイト状態などを作業状態設定手段により予じめ設定するとともに当該作業現場の作業状況に応じた作業状態の制限値、例えば作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角、ブーム旋回角等の上限値又は下限値を作業状態制限値設定手段により設定し、その後上記作業車の作業状態を、例えば電気ジョイスティック等を用いた作業状態入力手段によって例えばブーム起伏角、伸縮量、旋回角、ウインチの巻き上げ・巻き下げ量等の作業車の種類に応じた所定の作業状態を変える操作パラメータによって任意に模擬入力して行くと、該入力された作業状態の変化および該作業状態の変化に対応した負荷率やジャッキ反力等が作業状態演算手段で演算されるとともに、さらに該演算された作業状態が上記作業状態制限値設定手段によって設定されている当該作業現場の作業状況に対応した作業状態の限界値と比較され、作業が無理な限界作業状態になると、報知手段が作動せしめられて限界作業状態であることがオペレータに報知される。
【0013】
したがって、それによりオペレータは、該作業車の作業能力又は該作業車による現在の作業状態では上記予定された作業行程の作業が困難であることを、実際に作業車を稼動させることなく容易に認識することができるようになる。
【0014】
【発明の効果】
以上の結果、本願発明の作業車の作業状態模擬確認装置によると、実際の作業条件の確認が可能な作業現場において、実際に作業車を稼動させることなく、そのキャビン内のみで予定の作業行程のシュミレーションを行うことができ、作業開始前に当該作業現場の具体的な作業状況に対応した作業車の能力および作業行程遂行の正確なチェックが可能となる。
【0015】
【実施例】
図1〜図6は、本願発明の実施例に係る作業車の作業状態模擬確認装置の構成および作用を示している。
【0016】
(作業車の構成)
本実施例では、上記作業車として例えば図1に示すように、車両1のシャーシ部1a上に旋回台2を設け、該旋回台2上にヒンジ部4を介してブーム3を起伏動自在に設置した移動式クレーン(クレーン車)が採用されている。そして、上記車両1のシャーシ部1a前後両端には、各々アウトリガ5F,5Rが装備されている。
【0017】
また、上記ブーム3は、例えば4段伸縮式の伸縮式ブームよりなり、上記旋回台2に支持されたベースブーム3aに対してセカンドブーム3b、サードブーム3c、トップブーム3dの3本の伸縮ブームを順次伸縮可能に嵌挿させて構成されている。上記トップブーム3dのブームヘッド部12には、また必要に応じてジブ等の継ぎ足しブームが設けられるようになっている。
【0018】
そして、上記ブーム3は上記ベースブーム3aと旋回台2との間に設けられた起伏シリンダ6の伸縮制御によって最小起伏角から最大起伏角の状態又は最大起伏角から最小起伏角の状態まで任意に起伏作動せしめられるようになっている。
【0019】
また、上記旋回台2の後部にはカウンタウエイト2aが設けられているとともに、同カウンタウエイト2a側後端部にはウインチ7が設けられている。また、上記ベースブーム3aの先端側上面部にはワイヤーガイド用のシーブ8が、さらにトップブーム3dの先端側ブームヘッド部12上下には図1〜図3に示すように上部側シーブ9と下部側シーブ10が各々設けられている。そして、上記ウインチ7のドラム部から繰り出されたワイヤー11が、上記シーブ8,9,10を介して図示のようにブームヘッド部12より下方に垂設され、その先端にフックブロックを介して玉掛け用のフック13が設けられている。
【0020】
さらに、符号14は当該移動式クレーンの運転室(キャビン)であり、該運転室14は上記旋回台2の一側に設けられている。そして、該運転室14内には上記クレーン部分および車両部分の各種運転操作手段が設けられているとともに、また、そのインストルメントパネル部には例えば図3に示すようなカラーモニター構成のマルチディスプレイ装置20が設置されており、当該クレーンの実作業状態およびシュミレーション作業状態の各々がモニター画面20a上に文字表示を伴ったキャラクタ表示状態(図6参照)で映し出されるようになっている。
【0021】
該マルチディスプレイ装置20は、上記モニター画面20aの周囲に作業状態の設定スイッチS1、作業状態の制限値設定スイッチS2、過負荷防止装置(AML)用の作業前点検スイッチS3、作業状態シュミレーションスイッチ(1回ONすると開始、次にONすると停止)S4、電源スイッチS5、メニュー画面選択用の画面選択スイッチS6、数値入力用のテンキーNo1〜No0(No9は上記S3と兼用、No0は上記S1と兼用されている)その他の各種のON/OFF操作スイッチ(図示参照)が設けられており、これらを使用して作業現場の状況に応じたクレーン作業状態の制限値の設定、予定された作業行程に対応したクレーン作業状態の設定、それらを前提とした作業前の過負荷防止装置(AML)の点検および作業状態全予定行程のシュミレーション表示および同シュミレーション時における制限値との抵触チェック、クレーン作業開始後の作業状況の安全確認などを行うことができるようになっている。
【0022】
上記電源スイッチS5は当該車両のスタータスイッチ又はACCスイッチのONを条件として独立にマルチディスプレイ装置20の電源をON,OFFするようになっている。
【0023】
本実施例の場合、特に上記のように作業状態のシュミレーションスイッチS4を備え、クレーン作業開始前の作業現場において、予定された全作業行程の作業状態可否の模擬確認、すなわち全作業行程のクレーン作業が作業不能又は過負荷等になることなく遂行可能か否かを事前にチェックすることができるようになっていることを特徴としている。
【0024】
また、本実施例の場合、上記クレーンの起伏、伸縮、旋回、ウインチ巻き上げ・巻き下げの各運転操作手段としては、ひとつの例として例えば操作レバーの増大又は縮小方向への操作量に応じて電磁アクチュエータを作動させる電気ジョイスティック構成が採用されている。そして、上記作業状態の入力に際しては、該電気ジョイスティックの起伏、伸縮、旋回、ウインチ巻き上げ・巻き下げ操作時の増大又は縮小方向への倒し量(ポテンショメータにより検出)を各アクチュエータへの指定速度Sd,St,Sw,Ssとして入力するようになっている(後述)。
【0025】
また、該クレーンには、例えば図4に示されるような上記ブーム3の起伏角度θを検出するブーム起伏角検出手段25、上記ブーム3の伸長長さLを検出するブーム長さ検出手段26、ブーム3の旋回角φを検出するブーム旋回角検出手段27、上記吊荷21の吊下げ荷重Waを検出する吊荷荷重検出手段28、上記ワイヤー11の上記ブームヘッド12からの繰出長lを検出するワイヤー繰出長検出手段29、アウトリガ5F,5Rの張出幅Aを検出するアウトリガ張出幅検出手段30などの各種検出センサが各々設けられており、該各センサの出力は後述の過負荷防止装置(AML)24に入力されるようになっている。
【0026】
そして、本実施例の場合、当該クレーンには、例えば図4に示すように、当該クレーンの転倒側モーメントを制御している周知の過負荷防止装置(AML)24と合わせて構成された作業状態シュミレーション回路が設けられている。
【0027】
(作業状態シュミレーション回路の構成)
該作業状態シュミレーション回路は、次のように構成されている。
【0028】
すなわち、先ず符号31は当該クレーンの作業現場で行う予定の作業行程に応じたクレーンの作業状態を固定的に設定する作業状態設定手段であり、先ず上記マルチディスプレイ装置20の上記メニュー画面選択用の画面選択スイッチS6をON操作して作業状態設定画面を呼び出し、その後、作業状態設定スイッチS1をONにした状態において、これから行う予定の作業状態に対応したクレーン状態を設定する。すなわち、該作業状態の設定は、後述のフローチャート(図5)によって明らかにされるように、上記作業状態設定スイッチS1をONにした状態において、上記マルチディスプレイ装置20のテンキーNo1〜No0を利用して、その時のブーム起伏角θ、ブーム旋回角φ、ワイヤー繰出長lを入力する。この時、吊荷荷重Waについては、同様に上記マルチディスプレイ装置20のテンキーNo1〜No0を使用して作業予定の吊荷荷重Waを入力しても良いし、又後述する吊荷荷重検出手段28を利用して実荷重を検出することによって入力するようにしてもよい。
【0029】
また、符号32は作業現場の状況に応じたクレーン作業状態の制限値を設定する作業状態制限値設定手段であり、上記作業状態設定の場合と同様に、画面選択スイッチS6により作業状態制限値設定画面を呼び出し、作業状態制限値設定スイッチS2をONにした状態において、上記テンキーNo1〜No0を使用し、後述のフローチャート(図5)に示されるように、作業現場の状況に対応して、例えばブーム作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角度、ブーム旋回角度各々の上限値および下限値並びに実荷重の負荷率、ジャッキ反力の限界値などを入力することによって作業状態の制限値が設定される。一方、実荷重の負荷率(限界値)は、上記過負荷防止装置24に本来設定されている当該クレーンの基準値(90%,100%)を読出して入力設定する。もちろん、該負荷率も上記テンキーNo1〜No0を利用して入力することはできる。また作業現場の状況から見て作業状態の制限値がない場合には設定されない。
【0030】
また、符号33は予定された作業行程に対応して当該クレーンの作業状態を入力する作業状態入力手段であり、前述のように本実施例では一つの方法としてブーム3の起伏、伸縮、旋回並びにウインチ巻き上げ・巻き下げの各電気ジョイスティック40の増大又は縮小方向への倒し量を各アクチュエータへの指示速度指令信号(操作パラメータ)Sd,St,Sw,Ssとして入力することによって予定されているクレーンの作業状態を順次入力して行くようになっている。
【0031】
また、符号34は、上記作業状態入力手段33により入力されたクレーン作業状態の入力データを基に、指示速度指令信号Sd,St,Sw,Ssに対するブーム起伏角度θ、ブーム長さL、ブーム旋回角度φ、ワイヤー繰出長lの前状態からの変化量Δθ、ΔL、Δφ、Δlを演算し、それに対応した各アクチュエータの変化後の値を演算して実車状態での新座標(L,θ,φ)、該新座標での自重、負荷率等作業状態を演算する。
【0032】
そして、さらに、それらに基いて演算された同作業状態が上記作業状態制限値設定手段32によって設定された作業状態制限値に抵触するか否かを演算する。
【0033】
また、符号35はジャッキ反力演算手段であり、例えばクレーンデータ記憶手段38のメモリデータに基いて先ずブーム部、旋回台部、キャリア部を含めた総重量、重心位置を演算し、該総重量、重心位置とアウトリガ数、アウトリガ位置によって各アウトリガに発生するジャッキ反力を算出し、また該算出値を所定のジャッキ反力の限界値と比較する。そして、それらの結果は、上記作業状態演算手段34に入力される。
【0034】
また、符号36は座標変換手段であり、上記実車状態でのクレーン新座標(L,θ,φ)を上記マルチディスプレイ装置20のモニター画面20a上に表示するための画像表示座標(マトリクス座標)に変換する。
【0035】
さらに、符号37はモニター駆動手段であり、上記座標変換手段36で座標変換された画像表示座標データを基にモニター画面20aを駆動して例えば図6に示すような文字表示および作業範囲の制限域表示(斜線部参照)を伴ったクレーン作業状態のキャラクタ表示を行う。
【0036】
また、符号39はアラーム報知手段であり、上記モニター画面20a上に表示されたクレーン作業状態が図6のように作業半径、ブーム揚程、旋回限界又は過負荷状態等上記作業状態の制限値を越えている場合や演算されたジャッキ反力値が安全基準値を越えている場合に駆動されてアラーム音を発生する。
【0037】
(作業状態シュミレーション回路による作業状態のシュミレーション制御)
次に、上記図4のシステム構成の作業状態シュミレーション回路によるクレーン車作業状態のシュミレーション制御の内容について図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0038】
すなわち、上記作業状態シュミレーション回路およびマルチディスプレイ装置20への電源ON後、先ずステップS1で各部のイニシャライズを行って具体的に制御をスタートする。そして、続くステップS2で、当該クレーンの作業状態を設定する。該作業状態の設定は、上記のようにマルチディスプレイ装置20のテンキーNo1〜No0を使用して、例えば(a)ブームおよびジブ状態、(b)アウトリガ張出幅、(c)カウンタウェイト状態、(d)ワイヤの掛け数n、(e)吊荷荷重Wa等の所定作業状態を示す各パラメータを入力することによって行われる。
【0039】
該(a)〜(e)の5つの入力パラメータの内、上記(e)の吊荷荷重については、例えば実荷重の判定が容易な吊荷の場合には上記のようにマルチディスプレイ装置20のテンキーNo1〜No0を使用してオペレータが経験的に推測した推測値又は判明している荷重値を入力するのが良いが、一方実荷重が不明であるか又は容易に推測できないような時は、実際に吊荷を吊り上げることにより検出した実荷重を入力するようにしても良い。吊荷の荷重は、他のパラメータに比べて一般に外観的かつ経験的な推測判断が難しく、また負荷量に与える影響が大きい。しかも吊荷の吊り上げ操作そのものは比較的簡単で、ブームの移動量も小さい。従って、少なくとも吊荷荷重パラメータの入力のみに関しては、実際に吊り上げ操作を行っても、それほどのデメリットはなく、むしろ正確なシュミレーションが可能となるメリットがある。
【0040】
なお、上記の各パラメータは、例えば上述の過負荷防止装置24を利用して設定するようにすることもでき、そのようにした場合には特に上記(a)のブームおよびジブ状態(ブーム長さL、起伏角度θ、旋回角度φ、ワイヤ繰出長l)は、その時のブームおよびワイヤの状態に応じて変化するデータなので、その時の状態のままとすればよい。
【0041】
次に該クレーン作業状態の設定が終了すると、続いてステップS3,S4に進んで、クレーン作業を行う現場の状況(配電線等障害物の有無に伴う作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角、旋回角の制約状況)をオペレータが判断して、上述のようにマルチディスプレイ装置20のテンキーNo1〜No0により作業状態の制限値を設定する。該作業状態の制限値は、当該作業現場付近の状況から見て作業状態の制約がないと判断される場合には設定されない。該制限値の設定は、先ずステップS3で例えば作業範囲、作業能力を特定する(イ)作業半径、(ロ)ブーム揚程、(ハ)ブーム起伏角度、(ニ)ブーム旋回角度の各々について上限値と下限値を設定するとともに、ステップS4で地盤状態を考慮して(ホ)アウトリガのジャッキ反力の限界値を例えば演算値Ctに対する割合値Pjで設定することによってなされる。
【0042】
なお、この場合にも、上記同様上述の過負荷防止装置24を利用して制限値を設定するようにすることが可能である。
【0043】
ここで、例えば実荷重の負荷率の制限値(転倒側モーメントの限界値)は、上記過負荷防止装置(AML)24に本来設定されている90%、100%の値を使用して設定する(もちろん、上記テンキーNo1〜No0によって別途設定するようにしてもかまわない)。
【0044】
また、上記ジャッキ反力の限界値割合Pjは、上記設定したクレーン作業状態で定格荷重Wtを吊り上げた時のジャッキ反力値をCt、実荷重Waを吊り上げた時のジャッキ反力値をCjとすると、限界値割合Pjは
Pj=Cj/Ct×100(%)
となる。
【0045】
Pj、Cj、Ctはアウトリガの本数分あり、またCj、Ctはブーム長さ、起伏角度、旋回角度の状態により時々刻々変化する。
【0046】
以上の各設定動作S2,S3,S4が終了すると、次にステップS5に進んで、上記マルチディスプレイ装置20のシュミレーションスイッチS1をON操作してシュミレーション制御を開始する。該シュミレーションスイッチS1も、例えば上記過負荷防止装置24側のテンキーを代用しても良い。
【0047】
続いて、ステップS6に進み、予定される作業行程に対応した当該クレーンの作業状態を入力する。
【0048】
該クレーン作業状態の入力は、前述の如くブームの起伏、伸縮、旋回、ウインチの巻き上げ、巻き下げの各々について操作部である各電気ジョイスティック40の増大又は縮小各方向への倒し量を電気的に検出して各アクチュエータへの指示速度指令信号として入力することによってなされる。
【0049】
指示速度Sd,St,Sw,Ssには、それぞれ増大側と縮小側(Sd(+),Sd(−),St(+),St(−),Sw(+),Sw(−),Ss(+),Ss(−))がある。もちろん、上記各指示速度は、あくまでもシュミレーション用のものであり、実際のアクチュエータ駆動信号としては使用されない。
【0050】
次に、ステップS7〜S15に進んで、上記ステップS5で入力されたクレーンの作業状態を順次シュミレーション演算してゆく。
【0051】
すなわち、先ずステップS7では、上記指示速度指令信号に対するブームの起伏角度θ、ブームの長さL、旋回角度φ、ワイヤ繰出長lそれぞれの初期状態からの変化量Δθ,ΔL,Δφ,Δlを計算する。
【0052】
ここで、今当該シュミレーション制御のサンプリング時間をtとすると、各アクチュエータの変化量Δθ,ΔL,Δφ,Δlは、
Δθ=Sd+・tまたはSd−・t(起伏角度)
ΔL=St+・tまたはSt−・t(ブーム長さ)
Δφ=Ss+・tまたはSs−・t(旋回角度)
Δl=Sw+・tまたはSw−・t(ワイヤ繰出長)
となる。
【0053】
次に、ステップS8で各アクチュエータの変化後の値を演算し、それに対応して実車状態でのクレーン新座標データ(θ,L,φ,l)を演算する。
【0054】
ここで、各アクチュエータ値は、
θ=θ+Δθ、L=L+ΔL、φ=φ+Δφ、l=l+Δlとなる。そして、ブームヘッドの新座標を旋回中心とし、クレーン前方を原点として表すと(L、θ、φ)となる。従って、ブームヘッドからのフック位置dは(1−L)/nとなる。
【0055】
次に、ステップS9で当該新座標(θ,L,φ,l)上でのクレーンの自重を演算する。
【0056】
該演算は、上記新座標(θ,L,φ,l)のブーム重量重心データWb、Lbを上記クレーンデータ記憶器手段38から読みだすことによってなされる。
【0057】
次に、ステップS10で当該作業状態の負荷率を演算する。該負荷率は、ブーム根元支点ピンからの半径をRoとして、(Wa・Ro+Wb・Lb・cosθ)/(Wt・Ro+Wb・Lb・cosθ)×100(%)となる。
【0058】
次に、ステップS11で上記演算により算出された作業状態が上記ステップS2で設定された作業状態制限値に抵触するか否かを演算する。該抵触演算の結果、上記設定されている制限値に抵触することとなる場合には警報フラグAFをセットする。
【0059】
次にステップS12〜S15でジャッキ反力を演算する。
【0060】
該ジャッキ反力の演算に当っては、先ずステップS12でブーム部、旋回台部、キャリア部を含めた当該クレーンの総重量、重心位置を計算する。
【0061】
すなわち、旋回台部、キャリア部の重量重心Ws、Ls、Wc、Lcを上記クレーンデータ記憶手段38から読み出し、ブーム重量重心データWb、Lbおよび実荷重、定格荷重のWa、Ro、Wt、Roと合わせて総合重量重心Wo、LoとWot、Lotを計算する(Wo:実荷重時、Wot:定格荷重時)。
【0062】
次いで、ステップS13で総重量、重心位置、アウトリガ数、アウトリガ位置により各アウトリガに発生する反力を計算する。
【0063】
すなわち、総合重量重心の旋回角度φおよびアウトリガ位置を考慮して各アウトリガのジャッキ反力CjとCtを計算する。
【0064】
そして、さらにステップS14で該演算値が所定の基準値内にあるか否かを判定し、基準値内にない場合にはステップS15で警報フラグAFをセットする。
【0065】
さらに、上記ジャッキ反力の演算が終ると、続いてステップS16でモニター表示画面20a上の新座標を演算する。該演算は、上記クレーン座標(L、θ、φ)をモニター画面20a上に表示するため各々を画像表示座標(マトリクス座標)に変換することによってなされる。
【0066】
そして、ステップS17で上記マルチディスプレイ装置20のモニター画面20a上に上記画像表示座標に基く新なクレーン作業状態を例えば図6のように、作業状態制限値(斜線部)とともに3面状態(真上、真後、真横)で該作業状態の現在値を示す数字と併せて表示し、上記ステップS11,S15で警報フラグAFが各々セットされている場合には併せて警報表示を行ない又は警報音を発生させる。
【0067】
次に、その後ステップS18でシュミレーションスイッチS4がOFF操作されたか否かを判定し、シュミレーションスイッチS4がOFF操作されたYESのシュミレーション完了の場合には以上のシュミレーション制御を終了処理する一方、NOのシュミレーション継続中の場合には上記ステップS6〜S18の制御動作を繰り返す。
【0068】
以上のように、本実施例のクレーン車の作業状態模擬確認装置の構成では、例えば当該クレーン車の作業予定行程に対応して使用されるクレーンの固定的な作業状態を、ブームジブ状態、アウトリガ張出幅、カウンタウエイト状態、ワイヤ掛数、吊荷荷重等の所定の作業状態特定パラメータによって設定して置き、その後実際の作業状態に対応した作業状態を電気ジョイスティック等のクレーン操作手段を使用して任意に模擬的に入力して行くと、該入力された作業状態の負荷率、ジャッキ反力、作業範囲等が作業状態演算手段で演算され、さらに該演算された作業状態の負荷率、ジャッキ反力、作業範囲等が作業状態制限値設定手段によって前もって設定されている当該作業車の作業状態の負荷率、ジャッキ反力、作業範囲等の制限値と比較され、過負荷状態等作業が無理な限界作業状態になると、報知手段が作動して限界作業状態であることがオペレータに報知される。
【0069】
したがって、それによりオペレータは、該作業車、または該作業車の現在の作業状態では設定された当該作業が困難であることを、実際に作業車を稼動させることなく容易に認識することができるようになる。
【0070】
その結果、該本実施例のクレーン車の作業状態模擬確認装置によると、実際の作業条件の確認が可能な作業現場において、実際に作業車を稼動させることなく、そのキャビン内のみで予定の作業行程のシュミレーションを行うことができ、作業開始前に当該作業車の能力および当該作業行程の正確なチェックが可能となる。
【0071】
(他の実施例)
(1) 上記実施例では、例えば図4の回路に示すように、作業状態演算手段34を作業車が本来持っている過負荷防止装置(AML)24に並設する形で形成したが、該作業状態演算手段34は例えば当該過負荷防止装置24のマイクロコンピュータの制御機能中に組込んで構成しても良いことは言うまでもない。
【0072】
(2) また、上記実施例では作業状態入力手段として、例えば電気ジョイスティックの倒し量を利用したが、これは又電磁アクチュエータを使わずに直接操作レバーで方向切換弁を作動させる油圧操作レバーの倒し量又はそれに対応した油圧値を検出することによって行うように構成してもよく、また上記マルチディスプレイ装置のテンキー或いは別設の専用のスイッチを利用して行うようにしてもよいことは勿論である。
【0073】
(3) また、上記実施例では、作業車として移動式クレーン(クレーン車)を採用して構成したが、該作業車は例えば伸縮ブームを備えた高所作業車であっても良いことはもちろんである。
【0074】
(4) また、上記アラーム報知手段39は、例えばブザー、チャイム等の音声手段のみに限られることなく、光学的な表示手段でもよい。
【0075】
(5) なお、上記実施例では、作業状態、作業状態制限値の設定に際し、マルチディスプレイ装置20のメニュー画面選択スイッチS6を併用するようにしたが、これは画面選択スイッチS6を併用することなく、作業状態設定スイッチS1、作業状態制限値設定スイッチS2のONのみのワンタッチ表示システムとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係る移動式クレーンにおけるクレーン全体の構成を示す側面図である。
【図2】図2は、同クレーンのブーム先端部の構成を示す要部のスケルトン図である。
【図3】図3は、同クレーンの運転席に設けられているマルチディスプレイ装置の正面図である。
【図4】図4は、同クレーンの作業状態シュミレーション装置のシステム回路構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、同クレーンの作業状態シュミレーション装置の作業状態シュミレーション制御の内容を示すフローチャートである。
【図6】図6は、同クレーンの作業状態シュミレーション装置によるマルチディスプレイを使用した作業状態の表示パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
1は車両、2は旋回台、3はブーム、7はウインチ、11はワイヤー、12はブームヘッド、13はフック、20はマルチディスプレイ装置、20aはモニター画面、24は過負荷防止装置、25はブーム起伏角検出手段、26はブーム長さ検出手段、27はブーム旋回角検出手段、29はワイヤー繰出長検出手段、31は作業状態設定手段、32は作業状態制限値設定手段、33は作業状態入力手段、34は作業状態演算手段、39はアラーム報知手段である。
Claims (4)
- 予定された作業行程に対応して使用される作業車の作業状態を固定的に設定する作業状態設定手段と、作業現場の作業状況に応じた作業車の作業状態の制限値を設定する作業状態制限値設定手段と、作業状態を上記予定の作業行程に従って順次対応する操作パラメータを入力することによって模擬的に入力する作業状態入力手段と、該作業状態入力手段により入力された操作パラメータに基いて対応する作業状態を模擬的に演算してゆく作業状態演算手段と、該作業状態演算手段によって模擬的に演算された作業状態が、上記作業状態制限値設定手段により設定された限界作業状態となったときに作動して限界作業状態であることを報知する報知手段とを備えてなる作業車の作業状態模擬確認装置。
- 作業状態設定手段は、ブーム状態、アウトリガ状態、カウンタウエイト状態等の当該作業車の作業姿勢を特定するパラメータにより作業状態が設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の作業車の作業状態模擬確認装置。
- 作業状態制限値設定手段は、作業現場の作業状況に応じた作業半径、ブーム揚程、ブーム起伏角、ブーム旋回角等の上限値又は下限値により作業状態の制限値が設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の作業車の作業状態模擬確認装置。
- 作業状態入力手段は、当該作業車の運転操作手段である操作レバーの倒し量に対応した信号を操作パラメータとして作業状態を入力するように構成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の作業車の作業状態模擬確認装置。
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