JP3614396B2 - ふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法及びミリメートル波帯域通信用のふっ素樹脂基板 - Google Patents

ふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法及びミリメートル波帯域通信用のふっ素樹脂基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法及びミリメートル波帯域通信用のプリント回路やアンテナ等に用いられるふっ素樹脂基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
GHz帯域の高周波帯域の周波数の用途としては、表1に示すものがあり、表1に掲げるもの以外にも、ミリメートル波レーダを用いた自動車の衝突防止システムなどでは、70GHz以上になると予想される。
【0003】
【表1】
Figure 0003614396
【0004】
上記のような高周波帯域用のプリント回路やアンテナに使用される基板にあっては、通信速度を速くするため低誘電率であること、及び通信損失を低くするために低誘電正接であることが求められる。下記表2は、従来の基板の誘電特性を示している。
【0005】
【表2】
Figure 0003614396
【0006】
表2の3つの基板の中で、GHz帯域での使用に適している基板は「ガラス繊維クロス/ふっ素樹脂基板」である。このガラス繊維クロス/ふっ素樹脂基板は、1MHzの測定で低誘電率(2.2〜3.0)・低誘電正接(0.0001〜0.001)を実現している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ガラス繊維クロス/ふっ素樹脂基板では、高周波数帯域、特にミリメートル波帯域(30GHz〜300GHz)では、誘電正接が増大し、通信損失が大きくなるという問題がある。
すなわち、高周波帯域に用いる基板としては、誘電率及び誘電正接が単に低いだけでなく、周波数が上昇しても誘電正接が高くならないものが求められる。
しかし、従来のガラス繊維クロス/ふっ素樹脂基板では、周波数帯域が上昇すると誘電正接が高くなり、波形が劣化し通信損失が増大するという欠点あった。しかも、ミリメートル波帯域における今後の用途の広がりに対応するには、かかる欠点の克服は重要である。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、周波数帯域の上昇に対する誘電正接の上昇を抑制して通信損失を低く抑える方法及びミリメートル波帯域通信用のふっ素樹脂基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明は、次の技術的手段を採用した。すなわち、本発明は、アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率60重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.005の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を10以下としたプリプレグを絶縁材として用いたふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法である。
また、他の側面からみた本発明は、アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率80重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.002の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を4以下としたプリプレグを絶縁材として用いたふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法である。
さらに、他の面からみた本発明は、アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率60重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.005の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を10以下としたプリプレグを絶縁材として用いたことを特徴とするミリメートル波帯域通信用のふっ素樹脂基板である。
アラミド繊維シート材は誘電正接がそれほど低くないが、誘電率及び誘電正接の低いふっ素樹脂を含浸させることで、高周波帯域用として十分に低い誘電率及び誘電正接が得られる。
しかも、ふっ素樹脂をアラミド繊維に含浸させると、周波数帯域が上昇しても誘電正接はさほど上昇しないことを本発明者らは見いだした。これは、アラミドのポリマー分子は双極子性が小さいことに加えて、曲がりにくい分子(剛直性分子)で構成されており、分子が剛直であることから、GHz以上では分子の運動は電の変化に追従できなくなり、誘電正接の変化がさほど発生しないためであると考えられる。
周波数帯域が上昇しても誘電正接がさほど上昇しないことにより、ミリメートル波帯域用通信における通信損失を低く抑えることができる。
【0010】
なお、ふっ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)などを用いることができる。
【0011】
なお、ふっ素樹脂が95重量%より多いと、ふっ素樹脂の含有率が多すぎて基板の強度が十分でなくなり、ふっ素樹脂が60重量%より少ないと誘電率及び誘電正接が高くなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態におけるふっ素樹脂基板1の基本構成を示す断面図である。基板1は、絶縁層2と導電体層3とを備えており、絶縁層2を構成する絶縁材としてアラミド繊維シート材にふっ素樹脂を含浸させたプリプレグ4が用いられ、この絶縁層2の上下両面に導電体層3として銅箔が形成されている。なお、絶縁層2としてはプリプレグ4を2枚積層したものが図示されているが、積層数は何層でもよい。
【0013】
【実施例】
実施例として、アラミド繊維の不織布(アラミド繊維ペーパー:デュポン帝人アドバンスドペーパ社製THERMOUNT#80坪量56g/m)に、PTFE(三井・デュポンフロロケミカル社製PTFEディスパージョン34J)を含浸したプリプレグの上下面に銅箔(福田金属箔粉工業社製18m銅箔CFT9LP)を配し熱プレス成形(成型プレス条件は385℃、5MPa、60min)することによって、アラミド繊維ペーパー補強/ふっ素樹脂基板1を作成した。実施例におけるふっ素樹脂の含浸率としては、95重量%のもの(実施例1)、80重量%のもの(実施例2)、60重量%のもの(実施例3)の三種類の基板を作成した。
【0014】
また、比較例として、ガラス繊維クロス(有沢製作所社製#108ガラスクロス坪量48g/m)にPTFE(三井・デュポンフロロケミカル社製PTFEディスパージョン34J)を含浸したプリプレグの上下面に銅箔(福田金属箔粉工業社製18m銅箔CFT9LP)を配し熱プレス成形(成型プレス条件は実施例と同様)することによって、ガラス繊維クロス補強/ふっ素樹脂基板を作成した。比較例におけるふっ素樹脂の含浸率としては、実施例と同様に、95重量%のもの(比較例1)、80重量%のもの(比較例2)、60重量%のもの(比較例3)の三種類の基板を作成した。
【0015】
なお、下記表3に示すように、実施例1の基板はプリプレグ枚数が2枚であって銅箔を含む基板厚さが1.10mmであり、実施例2の基板はプリプレグ枚数が4枚であって銅箔を含む基板厚さが0.61mmであり、実施例3の基板はプリプレグ枚数が6枚であって銅箔を含む基板厚さが0.51mmである。
また、比較例1の基板はプリプレグ枚数が3枚であって銅箔を含む基板厚さが1.12mmであり、比較例2の基板はプリプレグ枚数が6枚であって銅箔を含む基板厚さが0.62mmであり、比較例3の基板はプリプレグ枚数が9枚であって銅箔を含む基板厚さが0.50mmである。
【0016】
【表3】
Figure 0003614396
【0017】
実施例1〜3及び比較例1〜3の誘電特性を測定した結果を表4及び図2に示す。測定方法は摂動方であり、測定機器はアジレトテクノロジー社製ベクトルネットワークアナライザーHP−8720を用いた。
【0018】
【表4】
Figure 0003614396
【0019】
表4に示すように、1GHz程度の周波数では、実施例1〜3及び比較例1〜3ともに低誘電率及び低誘電正接を達成している。しかし、表4の誘電正接の値をグラフ化した図2からも明らかなように、比較例1〜3では、周波数帯域が上昇すると誘電正接が増大しており、特にミリメートル波帯域付近になると誘電正接の顕著な増加が見られる。すなわち、比較例1では測定周波数1GHzにおける誘電正接(0.0001)に対する測定周波数75GHzにおける誘電正接(0.005)の上昇比が50であり、比較例2では同上昇比が約21であり、比較例3では同上昇比が40であり、比較例1〜3では、いずれも上昇比が非常に大きい。したがって、比較例1〜3の基板を高周波帯域用、特にミリメートル波帯域用に用いると通信損失が増大するなどの弊害が生じる。
【0020】
一方、実施例1〜3では、周波数帯域が上昇しても、比較例1〜3に比べて誘電正接の増大は緩やかである。すなわち、実施例1では前記上昇比が9.8であり、実施例2では前記上昇比が4であり、実施例3では前記上昇比が5であり、実施例では上昇比がいずれも10以下であり比較例に比べて小さい。しかも、実施例と比較例においてふっ素樹脂含浸率が同じもの(実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3)を比較すると、実施例におけるミリメートル波帯域における誘電正接は比較例に比べて非常に小さい。したがって、実施例1〜3の基板を高周波帯域用に用いれば通信損失を低く抑えることができ、特にミリメートル波帯域用として非常に有益である。
【0021】
また、実施例の場合、PTFEとアラミド繊維が均質に分散されているため、レーザ穴あけ加工性、プラズマ表面処理製が優れるのに対し、比較例の場合は、平織ガラスクロスを用いているためガラス分の多い部分とPTFE分の多い部分が混在するため、ガラス分の多い部分はレーザ穴あけ加工性が悪く、PTFE分の多い部分はプラズマ表面処理製が悪い。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、周波数帯域が上昇しても誘電正接がさほど上昇しないことにより、ミリメートル波帯域通信における損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基板の基本構成を示す断面図である。
【図2】実施例と比較例の誘電正接を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 絶縁層(絶縁材)
3 導電体層
4 プリプレグ

Claims (3)

  1. アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率60重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.005の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を10以下としたプリプレグを絶縁材として用いたふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法
  2. アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率80重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.002の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を4以下としたプリプレグを絶縁材として用いたふっ素樹脂基板をミリメートル波帯域通信に使用する方法
  3. アラミド繊維シート材に、ふっ素樹脂を含有率60重量%〜95重量%で含浸させ、誘電正接が1GHzから75GHzの間で0.0001から0.005の範囲にあり、1GHzにおける誘電正接に対する75GHzにおける誘電正接の上昇比を10以下としたプリプレグを絶縁材として用いたことを特徴とするミリメートル波帯域通信用のふっ素樹脂基板。
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