JP3614303B2 - 植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材およびその製造方法ならびにその使用方法 - Google Patents

植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材およびその製造方法ならびにその使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材、特に通常植物葉面上では生息できない植物病原菌拮抗微生物によって植物病原菌を防除することができる植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材およびその製造方法ならびにその使用方法に関する。
【0002】
【背景技術】
現在、人類の主食である農産物の増産をはかる目的のもとに、農薬の使用が広く行われている。特に近年では、病原菌の農薬耐性が向上し、これと相まって、大量の農薬が使用されるにいたっている。こうしたことを背景に、農作物の残留農薬が大きな問題となっている。例えば人の健康面でも、食物アレルギーの多発や、免疫力の低下が指摘されている。また、環境面でも、水の汚染や生態系の破壊など、深刻な問題が生じている。そのため、農薬の使用量の削減は農業での最も大きな課題のひとつとなっている。しかし、現状では、農薬を使用せずに農作物を安定的に生産することは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、農薬を使用する以外に有効な方法がなかった植物病原菌の防除を安全で確実に行うことができる植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材およびその製造方法ならびにその使用方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る植物病原菌用防除材は、被担持体として、少なくとも、植物病原菌拮抗微生物が多孔性担体に担持されたことを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係る植物病原菌用防除材は、被担持体として、さらにキチン系物質が担持されていることが望ましい。
【0006】
本発明の植物病原菌用防除材の存在形態は、固体状の形態(以下「固体状の植物病原菌用防除材」という)であってもよいし、固体状の植物病原菌用防除材を水系媒質中に分散させた形態(以下「水系の植物病原菌用防除材」という)であってもよい。
【0007】
本発明の植物病原菌用防除材によれば、多孔性担体に担持された植物病原菌拮抗微生物(以下、これを「拮抗微生物」ともいう)が植物病原菌を分解して死滅させ、さらに拮抗微生物の種類によっては農薬に相当する抗菌物質を生産することから、植物病原菌を農薬を使用することなく、安全かつ確実に防除することができる。以下にその理由をさらに詳細に説明する。
【0008】
植物病原菌のほとんどは、その細胞壁にキチン,キトサンなどのキチン系物質を含有している。そして、これらの病原菌類はキチンを作ったり、分解しながら生長を続ける。これに対して、拮抗微生物は、これらの病原菌のキチン合成を阻害したり、またキチン質細胞壁を分解してこれを炭素源としている。従って、拮抗微生物が病原菌を十分に分解,死滅させるためには、拮抗微生物が長期間にわたって病原菌と共存し、同時にその活性を持ち続けることが重要である。本発明の防除材の最も大きな特徴は、多孔性担体、好ましくは活性炭に拮抗微生物および拮抗微生物の生息に必要なもの、例えば少なくとキチン系物質および必要に応じて加えられる栄養素や付着促進剤を担持させ、さらに拮抗微生物を増殖させて固定化することにより、安全かつ確実に植物病原菌の駆除を行うことができる。
【0009】
特に、植物の葉面においては通常拮抗微生物が存在することができないため、このような葉面における植物病原菌の駆除に本発明の防除材は極めて有用である。すなわち、通常、植物病原菌も拮抗微生物も土壌で生息しており、病害防除の目的のもとに土壌の中に拮抗微生物を混入させることが考えられる。しかし、土壌に植物が植え付けられると植物病原菌は土壌中から植物上に移動し、植物体を餌として増殖する。また、外部からの飛散や接触によっても植物病原菌は植物体に生息する。しかし、拮抗微生物、特に植物病原菌に対して有用な放線菌は栄養源も炭素源もない葉面上で生息することはできない。
【0010】
本発明の防除材によれば、拮抗微生物を担体に担持させ、この担体を介して拮抗微生物を植物の葉面上で長期間にわたって棲息かつ増殖させることにより、従来不可能であった葉面上での拮抗微生物による植物病原菌の防除が可能となった。
【0011】
【発明の実施の形態】
(固体状の植物病原菌用防除材)
本発明においては、前記多孔性担体は活性炭が最も好ましい。活性炭は多くの微細な孔を有し、その比表面積が大きいため、被担持体を効率よく担持することができる。さらに、活性炭は、表面に微細な多くの突起を有するため、植物の葉面などの細毛に良好に付着することができ、病原菌糸に対してもからみつくように良好に付着する点で、散布面において長期間にわたって存在することができるため、利点も大きい。
【0012】
さらに、活性炭は、植物体に対して悪影響を及ぼさない点から担持体として好ましいものである。
【0013】
多孔性担体としては、上述のように拮抗微生物の担持および培養を行うことができ、かつ植物体に対して悪影響を与えない範囲で選択することができ、活性炭の他にも、例えば、木炭、木材質粉体、ピートモス、鉱物質粉体などを使用することも可能である。
【0014】
多孔性担体に担持される被担持体としては、少なくとも、植物病原菌を防除するための植物病原菌拮抗微生物を含み、さらにこの拮抗微生物の栄養源となるキチン系物質が含まれことが望ましい。
【0015】
前記キチン系物質としては、キチン,キトサンまたはそれらの誘導体を用いることができ、特にキトサンが好ましい。キトサンは、糸状菌に対する抗菌作用があり、植物の自己防衛能を高める作用があることから、拮抗微生物との相乗効果を期待できる。また、キトサン分解物は、植物の成長を促進する働きがあり、拮抗微生物によって生じたキトサン分解物は、植物の栄養源となる利点がある。
【0016】
前記拮抗微生物としては、キチン系物質を分解することができ、かつ抗菌活性のあるもの、または抗菌物質を分泌するものであれば特に限定されないが、例えば放線菌、バチルス菌、乳酸菌などが例示され、特に放線菌が好ましい。また複数の拮抗微生物を混合して用いてもよい。特に、放線菌は、キチン系物質を分解するだけでなく、放線菌によるキチン系物質の分解物は植物にとって栄養素となる利点もある。
【0017】
また、被担持体としての拮抗微生物の栄養素としては、例えば窒素,リン酸,カリウム,マグネシウム,カルシウムなどを例示することができ、通常これらは塩の状態で用いられる。また、拮抗微生物の栄養素は、多孔性担体での雑菌の付着,増殖の防止の点から、有機化合物の少ないものが望ましい。
【0018】
さらに、被担持体としての付着促進剤は、特に葉面散布用の防除材に有用であり、拮抗微生物の生育に支障のないものであれば特に限定されないが、例えばアルギン酸,モロヘイヤ抽出液,生分解性界面活性剤等の、ある程度粘性ないしは粘着性を有するものが好ましい。この付着促進剤を用いることにより、被担持体の多孔性担体への固定をより確実に行うことができる。
【0019】
各種被担持体の多孔性担体に対する割合は特に限定されず、用途,材質,材質の大きさ,製造方法などによって適宜選択されるが、拮抗微生物の増殖,定着が効率よく行われる範囲で特定されることが望ましい。たとえば、キチン系物質
は、多孔性担体に対して、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは1〜5重量%の割合で用いられることが望ましい。また、水分は、多孔性担体に対して7〜20重量%程度含まれることが望ましい。
【0020】
固体状の植物病原菌用防除材の大きさは、用途によって適宜選択される。たとえば、防除材を葉面散布に用いる場合には、散布機による散布が可能であって、さらに葉面において安定に存在できるような粒径、たとえば好ましくは0.001〜0.3mm、より好ましくは0.01〜0.1mm程度に調整される。また、防除材を土壌中に混合する場合には、散布用と異なり特に制限されず、広範囲の粒径、たとえば0.01〜5mm程度に調整される。
【0021】
(固体状の植物病原菌用防除材の製造方法)
本発明の植物病原菌用防除材は、少なくとも、被担持体としての、粉体状もしくは溶液状のキチン系物質および植物病原菌拮抗微生物と、粒状の多孔性担体と、水と、を混合した後、前記植物病原菌拮抗微生物を培養して多孔性担体に定着させることを特徴とする。
【0022】
この製造方法によれば、主として、被担持体と担持体との混合工程、および拮抗微生物の培養工程による比較的簡易な工程によって製造することができる。拮抗微生物の培養工程の後に、必要に応じて、乾燥工程および担体の粉砕工程を含むことができる。
【0023】
前記拮抗微生物の培養は、10〜45℃の温度条件下が望ましい。また、拮抗微生物の培養が効率よく行われるためには、被担持体、多孔性担体および水の混合物をゆっくり攪拌しながら混合することが望ましい。拮抗微生物の培養時間は、培養条件によって異なるが、たとえば好ましくは5〜2000時間、より好ましくは70〜700時間が望ましい。また、水の混合割合は、多孔性担体に対し、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜40重量%が望ましい。
【0024】
また、粒状の多孔性担体の粒径は、特に限定されないが、拮抗微生物の培養の効率,混合効率などを考慮すると、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは1〜5mmが望ましい。キチン系物質は、粉体で使用する場合には、その粒径は、多孔性担体への固定のしやすさ,拮抗微生物の培養の効率などを考慮すると、好ましくは0.001〜1mm、より好ましくは0.035〜0.01mmが望ましい。
【0025】
前記キチン系物質は、固体あるいは液体状のいずれでもよいが、特にキトサンの酸性溶液が望ましい。具体的には、キトサンを任意な濃度、例えば3〜5重量%の濃度で酸(例えば酢酸などの有機酸)に溶解した溶液を、さらに10〜2000倍に希釈して用いることが望ましい。
【0026】
(水系の植物病原菌用防除材)
上述の固体状の植物病原菌用防除材は、水系媒質中に分散することができる。このように、固体状の植物病原菌用防除材を水系媒質に分散させることにより、固体状の植物病原菌用防除材と比べて、計量および使用の面において簡便化を図ることができる。
【0027】
また、拮抗菌、特に放射菌は、水系では、特性変化、すなわち、拮抗物質を生産しなくなるなどの本来の性質が変化する傾向がある。本発明において、拮抗菌は、多孔性担体に固定されているため、水中においても、前述の拮抗菌の特性の変化を最小限に抑えることができる。その結果、水系における拮抗菌の保存期間を長くすることができる。
【0028】
水系媒質としては、水または水溶液などを挙げることができる。
【0029】
水溶液は、植物および拮抗微生物の生育に悪影響を与えないものであれば、特に限定されない。好ましい水溶液としては、水系媒質中に、拮抗菌の炭素源であるキチン系物質を確保し、拮抗菌の増殖および活性の維持を確実に図ることを目的として、水溶性のキチン系物質、たとえばキトサンが溶解した水溶液が好ましい。また、水系媒質中に、不溶性のキチン系物質、たとえばキチンが分散されていてもよい。
【0030】
また、上述した拮抗微生物の栄養素が水系媒質中に溶解または分散されていてもよい。
【0031】
水系媒質に対する固体状の植物病原菌用防除材の割合は、たとえば1〜50重量%の範囲で特定される。
【0032】
固体状の植物病原菌用防除材を水系媒質中に分散させる場合には、固体状の植物病原菌用防除材の粒径は、特に限定されるものではないが、分散度を高めるために、好ましくは、0.001〜0.1mm程度に調整される。
【0033】
水系の植物病原菌用防除材には、固体状の植物病原菌用防除材の他に、さらに、窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの栄養素、アルギン酸などの付着剤などが分散されていてもよい。
【0034】
(植物病原菌用防除材の適用)
本発明の植物病原菌用防除材は、植物病原菌の極めて多くのもの、具体的には植物病原菌の約85%以上を占める糸状菌類に全て適用できるものである。そして、土壌中へ混入する方法で使用できることはもちろんであるが、特に、いままで困難とされていた植物葉面上への散布によって使用することができる点で極めて有用である。
【0035】
以上述べたように、本発明の植物病原菌用防除材およびそれが分散された水系分散体によれば、大量の拮抗微生物を活力のある状態で土壌中あるいは植物葉面上に付着させることが可能となり、農薬に近い即効性を有しながら、安全かつ確実に植物病原菌を防除することができ、大幅な農薬の削減が期待できる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0037】
(実施例1)
活性炭(粒径約1〜5mm)1kgに対して、放線菌培養液1g、キトサン(粒径約0.10〜0.35mm)50g、栄養素(アンモニウム,ナトリウム,マグネシウム,リン酸などの混合物)3g、付着促進剤(アルギンサン)2g、および水300gをミキサーでよく混合し、その後混合物を27〜30℃の温度下において約170時間ゆっくりと混合し、放線菌を充分に増殖させた。その後、得られた混合物を乾燥させ、担体の含有水分量を約12重量%とした。さらに、混合物を粉砕装置を用いて粉砕し、多孔性担体の粒径が約0.01〜0.1mm程度の微粉末の植物病原菌用防除材を得た。
【0038】
さらに、本実施例の防除材には、葉面上での拮抗微生物の増殖を促進させる物質として、キトサン溶液(0.5重量%の酢酸溶液)を300倍に希釈したものが加えられている。
【0039】
(実施例2)
本実施例では、2種の拮抗微生物を葉面に定着することができる防除材を調製した。具体的には、まず、実施例1と同様にして、多孔性担体として活性炭を用い、これに放線菌を担持させて第1の防除材を調製した。これと別途、乳酸菌を担持させた第2の防除材を調製した。
【0040】
第2の防除材は、以下のようにして得た。すなわち、活性炭(粒径約1〜5mm)1kgに対して、乳酸菌培養液10g、キトサン溶液(3重量%の酢酸溶液)150cc、グルコース20g、栄養素(チッソ,リン,カリウム,マグネシウム、スキンミルクなどの混合物)3g、付着促進剤(アルギンサン)2g、および水150gを混合し、その後混合物を27〜30℃の温度下においてゆっくりと混合しながら、乳酸菌を充分に増殖させた。その後、得られた混合物を乾燥させ、担体の含有水分量を約10〜12重量%として第2の防除材を得た。
【0041】
さらに、得られた第2の防除材を前記第1の防除材と混合した後、この混合物を粉砕装置を用いて粉砕し、多孔性担体の粒径が約0.01〜0.1mm程度の微粉末状の防除材を得た。この防除材では、2種の拮抗微生物が安定に共存することができる。例えば、本実施例の防除材は、乳酸菌は乳酸を生産することにより植物病原菌を予防し、放線菌は植物病原菌を分解して病害を防止することができ、異なる機能を有する拮抗微生物を共存させることができる利点を有する。
【0042】
(実施例3)
活性炭(粒径約1〜5mm)1kgに対して、放射菌培養液1g、キトサン(粒径約0.10〜0.35mm)50g、栄養素(アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸などの混合物)3g、付着促進剤(アルギンサン)2gおよび水300gをミキサーでよく混合し、その後、混合物を27〜30℃の温度下において、170時間ゆっくりと混合し、拮抗微生物を充分に増殖させた。その後、得られた混合物を乾燥させ、担体の含有水分量を約12重量%とする。さらに、混合物を粉砕装置を用いて粉砕し、多孔性担体の粒径が約0.01〜0.1mm程度の微粉末の植物病原菌用防除材を得る。
【0043】
次に、これとは別に、キトサン溶液、具体的には、アスコルビン酸2gを溶解した水50gにキトサン2gをさらに溶解した溶液に栄養素(アンモニウム、カリウム、リん酸、マグネシウム、カルシウム、アルギンサンなどの混合物)10gを添加した水溶液を調整する。
【0044】
さらに、ここで調整した水溶液に、先で微粉末化した固体状の植物病原菌用防除材を分散させた液状の植物病原菌用防除材を得る。
【0045】
(適用例1)
次に、本実施例の防除材を用いて行った、植物病原菌の防除効果の実験について説明する。
【0046】
(1)ウドンコ病
実施例1で得られた防除材を重量で500倍の水に分散させて散布剤を調製した。この散布剤をウドンコ病が発症した苺の葉面に散布したところ、散布後約4日目でウドンコ病の症状が消失した。比較のために、防除材を散布しなかったウドンコ病発症葉について観察したところ、さらにウドンコ病が広がっているのが確認された。
【0047】
このことをより明確に示すために、図1および図2に葉面の顕微鏡写真(倍率400倍)を示す。図1は、防除材を散布する直前の葉面のウドンコ病菌を示している。図2は、4日後における葉面の顕微鏡写真である。両者を比較することによって、ウドンコ病菌がほぼ完全に消失していることが確認された。なお、図1および図2において、黒い点は多孔性担体として用いられた活性炭である。
【0048】
(2)ハイイロカビ病(ボトリチス)
実施例1で得られた防除材を重量で500倍の水に分散させて散布剤を調製した。この散布剤をハイイロカビ病が発生した茄子の葉面に散布したところ、約4日でカビの消失が確認された。これに対し、防除材を散布しない比較例においてはカビの発生がさらに広がっていることが確認された。
【0049】
このことをより明確に示すために、顕微鏡写真(倍率400倍)の観察結果を示す。図3は、防除材を散布する直前のハイイロカビ病菌の顕微鏡写真であり、図4は4日後の顕微鏡写真である。両者を比較すると、防除材を散布したことによってハイイロカビ病の病原菌がほとんど消失していることが確認された。なお、図4において、黒い小さな点は活性炭であり、その周囲に拮抗微生物が生長していることがわかる。
【0050】
(3)フザリューム菌
実施例1で得られた防除材を重量で500倍の水に分散させて散布剤を調製した。この散布剤をフザリューム菌が増殖したミルトニアについて散布したところ、約15日でフザリューム菌の消失が確認された。
【0051】
このことをより明確に示すために、顕微鏡写真(倍率400倍)の観察結果を図5および図6に示す。図5は、防除材を散布しないときのものであり、フザリューム菌が多数見られる。これに対し、散布後15日目の顕微鏡写真においては、フザリューム菌がほとんど消失し、さらにフザリューム菌の周囲に拮抗微生物が増殖していることが確認された。なお、図5および図6において黒い点は活性炭である。
【0052】
(4)ススカビ病
実施例1で得られた防除材を重量で500倍の水に分散させて散布剤を調製した。この散布剤をススカビ病が発症したナスの葉面に散布したところ、散布後約11日目でススカビ病の症状がかなり消失した。比較のために、防除材を散布しなかったススカビ病の発症葉について観察したところ、さらにススカビ病が広がっているのが確認された。
【0053】
このことをより明確に示すために、図7および図8に葉面の顕微鏡写真(倍率400倍)を示す。図7は、防除材を散布する直前の葉面のススカビ病菌を示している。図8は、11日後における葉面の顕微鏡写真である。両者を比較することによって、ススカビ病菌がかなり消失していることが確認された。なお、図7および図8において、黒い点は多孔性担体として用いられた活性炭である。
【0054】
(5)紋枯病
実施例1で得られた防除材を重量で500倍の水に分散させて散布剤を調製した。この散布剤を紋枯病が発症したイネ(こしひかり)の葉面に散布したところ、散布後約3日目で紋枯病の症状がかなり消失した。比較のために、防除材を散布しなかった紋枯病の発症葉について観察したところ、さらに紋枯病が広がっているのが確認された。
【0055】
このことをより明確に示すために、図9および図10に葉面の顕微鏡写真(倍率400倍)を示す。図9は、防除材を散布する直前の葉面の紋枯病菌を示している。図10は、3日後における葉面の顕微鏡写真である。両者を比較することによって、紋枯病菌がかなり消失していることが確認された。なお、図9および図10において、黒い点は多孔性担体として用いられた活性炭である。
【0056】
(適用例2)
実施例3の防除材を用いて行った、植物病原菌および害虫の防除効果の実験について説明する。
【0057】
(1)ちちぐさ(俗名)のウドンコ病
実施例3で得た水系の植物病原菌用防除材を100倍に希釈し、展着剤を0.02重量%濃度になるように添加した散布剤を調整した。ここで、展着剤とは、界面活性剤を主成分とするもので、上記の防除材を葉面に均一に付着させる機能を有するものをいう。本適用例では、展着剤として、生分解性天然素材のものを使用した。
【0058】
この散布剤を、ウドンコ病が発症した葉面に散布した。これとは別に対照葉を設定した。対照葉とは、ウドンコ病が発症しており、散布剤が散布されていない葉をいう。
【0059】
散布剤を散布した葉面は、8日後には、ウドンコ病が消滅した。一方、対照葉は、病状が進行してウドンコ病により、葉の損失が見られ、被害が拡大した。
【0060】
このことを明確に示すために、図11および図12に葉面の顕微鏡写真(倍率400倍)を示す。図11は、散布後8日目の散布剤が散布された葉面におけるウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真を、図12は、散布後8日目の対照葉の葉面におけるウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真を示す。
【0061】
散布剤が散布された葉面において、病原菌は、図11に示すように、消滅していた。一方、対照葉においては、図12に示すように、病原菌の胞子まで発生している。
【0062】
以上のことから、適用例2においても、適用例1における(1)と同様の効果が得られた。このため、水系の植物病原菌用防除材においても、効果に変化が生じないことが確認された。
【0063】
(2)ナス ススカビ病
(1)と同様の散布剤を、ススカビ病が発症した葉面に散布した。
【0064】
散布してから2週間を経過した後、散布剤が散布された葉面は、ススカビ病の症状が消失した。
【0065】
このことをより明確に示すために、図13および図14に葉面の顕微鏡写真(倍率400倍)を示す。図13は、散布剤散布前のススカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。図14は、散布剤散布後2週間目におけるススカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。両者を比較することによって、散布してから2週間を経過した後、ススカビ病菌は、原形をとどめない程に消滅していたことがわかる。なお、顕微鏡写真に示されている黒い点は、レンズに付着した汚れである。
【0066】
本適用例においても、適用例1における(4)と同様の効果が得られた。このため、水系の植物病原菌用防除材においても、効果に変化が生じないことが確認された。
【0067】
(3)アブラ虫
(1)と同様の散布剤をアブラ虫が繁殖しているちちぐさに散布した。散布してから8日目には、花に白い点が付着している。白い点は、アブラ虫が死に、白いカビが生えたものである。
【0068】
この結果により、害虫に対しても防除効果が認められた。
【0069】
上記のように、本発明の水系の植物病原菌用防除材は、病気および害虫を同時に防除する性質を有している。また、拮抗菌、特に放射菌は、一般に、水系において特性変化をきたすとされているが、本発明の水系の植物病原菌用防除材によれば、その変化が生じなかった。そのため、本発明の水系の植物病原菌用防除材によれば、水系においても拮抗菌の能力を低減させることはない。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】防除材散布前のウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図2】防除材散布後4日目におけるウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】防除材散布前のハイイロカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図4】防除材散布後4日目のハイイロカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図5】防除材散布前のフザリューム菌の発生した状態を示す顕微鏡写真である。
【図6】防除材散布後15日目のフザリューム菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図7】防除材散布前のススカビ菌の発生した状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】防除材散布後11日目のススカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図9】防除材散布前の紋枯病菌の発生した状態を示す顕微鏡写真である。
【図10】防除材散布後3日目の紋枯病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】散布剤散布後8日目の散布された葉面におけるウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図12】散布剤散布後8日目の対照葉の葉面におけるウドンコ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図13】散布剤散布前のススカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。
【図14】散布剤散布後2週間目におけるススカビ病菌の状態を示す顕微鏡写真である。

Claims (11)

  1. 被担持体として、少なくとも、放線菌活性炭に担持されたことを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  2. 請求項1において、
    被担持体として、さらにキチン系物質が担持されたことを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  3. 請求項1または2において、
    前記活性炭に、被担持体として、さらに放線菌の栄養素が担持されたことを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  4. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記活性炭に、被担持体として、さらに付着促進剤が担持されたことを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載の植物病原菌用防除材が水系媒質中に分散されていることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  6. 請求項において、
    前記水系媒質中に、キチン系物質が溶解または分散されていることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  7. 請求項またはにおいて、
    前記水系媒質中に、放線菌の栄養素が溶解または分散されていることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材。
  8. 少なくとも放線菌を含む被担持体と、粒状の活性炭と、水と、を混合した後、前記放線菌を培養して前記活性炭に定着させることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材の製造方法。
  9. 請求項において、
    前記被担持体として、さらにキチン系物質が含まれることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材の製造方法。
  10. 請求項8または9において、
    前記被担持体として、さらに、放線菌の栄養素および付着促進剤の少なくとも一方が含まれることを特徴とする、植物の葉面に散布するための植物病原菌用防除材の製造方法。
  11. 請求項1ないしのいずれかに記載の植物病原菌用防除材を植物の葉面に散布することを特徴とする植物病原菌用防除材の使用方法。
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