JP3612969B2 - 車両用駆動力調整装置 - Google Patents

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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
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    • F16H48/00Differential gearings
    • F16H48/06Differential gearings with gears having orbital motion
    • F16H48/08Differential gearings with gears having orbital motion comprising bevel gears
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H48/00Differential gearings
    • F16H48/20Arrangements for suppressing or influencing the differential action, e.g. locking devices
    • F16H48/30Arrangements for suppressing or influencing the differential action, e.g. locking devices using externally-actuatable means

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両(自動車)の前後の駆動軸間又は左右の駆動軸間にそなえられ、エンジンからの駆動力を前後の駆動輪又は左右の駆動輪へその配分を調整して伝達しうる車両用駆動力調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車では、前後の駆動輪間や左右の駆動輪間に、旋回時等に生じる差動を許容するための差動機構(センタデファレンシャル,左右デファレンシャル)が設けられている。この差動機構では、前後又は左右の駆動輪のうちの一方の駆動輪側が空転すると、この一方の駆動輪側のみが回転して他方の駆動輪側はほとんど回転しなくなって、路面に駆動力を伝達できない状態が生じることがある。
【0003】
そこで、このような不具合を回避できるように、その前後又は左右の駆動輪間でその差動を制限する差動制限機構が開発されている。この差動制限機構によれば、一方の駆動輪側の空転を抑制しながら他方の駆動輪側から路面に確実に駆動力を伝達することができる。
このような差動制限機構には、左右輪の回転速度差に比例するタイプのものや、入力トルクに比例するタイプのものがある。この回転速度差比例タイプには、液体の粘性を利用したVC(ビスカスカップリング)式のものなどがあり、車両の走行安定性を向上しうる利点がある。一方、入力トルク比例タイプのものには、一般的なLOM(ロックオートマチック)式のフリクションタイプのものなどのメカニカルタイプのものがあり、特に、左右輪間のものにあっては車両の旋回性能を向上しうる利点がある。
【0004】
しかしながら、上述のような各種の差動制限機構では、その差動制御特性が物性などによって定まっており、必ずしも常に適切に差動制御を行なえるように差動制御特性を調整できるようにはなっていない。
また、左右輪間のものにあってはLSDを電子制御化したいわゆる電子制御LSDと呼ばれるシステムもあるが、このようなものにおいても駆動輪間のトルク移動は、高速側から低速側へのみに限られており、したがって、例えば特に車両の旋回走行中等に、その走行性能を十分に高めることまではできないものと考えられる。
【0005】
そこで、本出願人は、大きなトルクロスやエネルギロスを招かずに車両の種々の走行状態において左右輪間でのトルク配分を行なえるようにすべく、例えば特開平5−131855号,特開平7−61251号,特開平7−108840号,特開平7−108841号,7−108842号,特開平7−108843号,特開平7−156681号,特開平8−40103号の各公報等に開示されているような、車両用左右輪間トルク移動制御装置を提案した。
【0006】
また、本出願人は、大きなトルクロスやエネルギロスを招かずに車両の種々の走行状態において前後輪間又は左右輪間でのトルク配分を行なえるようにすべく、例えば特開平4−232125号,特開平7−61252号,特開平7−61253号の各公報等に開示されているような、車両用トルク移動制御装置を提案した。
【0007】
これらのトルク移動制御装置は、同軸上に配設された2つの回転体を互いに回転速度の異なる状態で摺接させると、回転速度の高い方の回転体から回転速度の低い方の回転体へとトルクが伝達するという特性を利用したものである。
すなわち、これらの装置は、例えば、差動装置に入力された回転速度又は一方の車輪軸の回転速度を高速並びに低速に変速して出力する変速機構と、この変速機構のそれぞれの出力を受けて差動装置又は一方の車輪軸とは異なる回転速度で回転する複数の変速連動部材と、前後輪又は左右輪のうちの他方の車輪の駆動軸と等しい速度で回転する等速連動部材と、これらの変速連動部材と等速連動部材との間に設けられた湿式油圧多板クラッチ等の複数のトルク伝達カップリングをそなえたものである。
【0008】
このような装置では、前後輪又は左右輪がたとえ等速で回転していても、トルク伝達カップリングにおいては、変速連動部材側と等速連動部材側とで回転速度が異なるため、湿式油圧多板クラッチを係合させるなどしてトルク伝達カップリングを作用させれば、変速連動部材側と等速連動部材側とのうち速度の高い方から速度の低い方へとトルクが伝達される。変速機構による変速度合を一定以上に大きくしておけば、例えば旋回時に回転速度の低い内輪側から回転速度の高い外輪側へのトルク伝達も実現する。
【0009】
また、例えば湿式油圧多板クラッチのようなトルク伝達カップリングでは、それぞれの多板クラッチの係合の切換並びに係合度合等の制御を行なうことにより、一方の車輪軸への伝達トルクを増加又は減少させたり、他方の車輪軸への伝達トルクを増加又は減少させたりすることができる。したがって、伝達トルク容量を可変制御できるため、前後輪間又は左右輪間において所望の方向へ所望の伝達トルク容量でトルクを伝達させることができる。
【0010】
例えば図18は、特開平8−40103号公報に開示された車両用左右駆動力調整装置(差動制限機構)を示すものである(以下、図18に示す技術を第1従来技術という)。この駆動力調整装置は、自動車の後輪である左右駆動輪への駆動力配分の調整を行なうものであり、図18に示すように、リヤデファレンシャル(差動機構)101と一体的に設けられている。
【0011】
図18において、102は図示しないプロペラシャフトに連結された入力軸(ドライブピニオン)、103はドライブピニオンと噛合するリングギヤであり、リングギヤ103は、リヤデファレンシャル101のデファレンシャルケース(以下、デフケースという)104に固設されている。
リヤデファレンシャル101はベベルギヤ式になっており、デフケース104に枢着されたピニオン105,105と、これらのピニオン105,105と噛合するサイドギヤ106L,106Rとから構成される。なお、サイドギヤ106Lは左輪側駆動軸111に固設され、サイドギヤ106Rは右輪側駆動軸112に固設されている。
【0012】
そして、デフケース104と右輪側駆動軸112との間には、歯数の異なる3連ギヤ機構(131と141,132と142,133と143)からなる増減速機構120が設けられている。
つまり、右輪側駆動軸112の外周には、第1中空軸121,第2中空軸122,第3中空軸123がいずれも駆動軸112の同心上に装備されており、第1中空軸121はデフケース104と一体回転するように結合され、第2中空軸122,第3中空軸123は第1中空軸121に隣接して設けられ、第3中空軸123は第2中空軸122の外周に設けられている。
【0013】
そして、これらの中空軸121,122,123には、それぞれ第1ギヤ131,第2ギヤ132,第3ギヤ133が固設されている。これらの第1ギヤ131,第2ギヤ132,第3ギヤ133の外周には、ギヤ131,132,133とそれぞれ噛合する第1カウンタギヤ141,第2カウンタギヤ142,第3カウンタギヤ143がデファレンシャルキャリア107の支持軸(固定部材)107Aに枢支されてそなえられている。これらのカウンタギヤ141,142,143は、3連ギヤ140として一体に構成されている。
【0014】
また、各ギヤ131,132,133の歯数は、それぞれの歯数をZ ,Z ,Z とすると、Z <Z <Z の関係に設定されている。これに応じて、3連ギヤの各カウンタギヤ141,142,143の歯数は、それぞれの歯数をZ,Z,Zとすると、Z <Z <Z の関係に設定されている。
このような歯数設定により、第1ギヤ131の回転速度に対して、第2ギヤ132はこれよりも高速で回転し、第3ギヤ133はこれよりも低速で回転することになる。このため、第2ギヤ132と一体回転する第2中空軸122は、第1ギヤ131と一体回転する第1中空軸121及びデフケース104よりも高速回転し、第3ギヤ133と一体回転する第3中空軸123は、第1ギヤ131と一体回転する第1中空軸121及びデフケース104よりも低速回転する。
【0015】
すなわち、増減速機構120を介して、第2中空軸122は増速され、第3中空軸123は減速されることになる。
このように、増減速機構120により増速される第2中空軸(進み軸)122と右輪側駆動軸112との間、及び、増減速機構120により減速される第3中空軸(遅れ軸)123と右輪側駆動軸112との間には、例えば湿式油圧多板クラッチで構成され第1カップリング113,第2カップリング114がそれぞれ介装されており、駆動力伝達を行なうことができるようになっている。
【0016】
これらのカップリング113,114は例えば湿式油圧多板クラッチで構成され、これらの油圧多板クラッチ113,114の接続することで、第2中空軸(進み軸)122と右輪側駆動軸112との間、及び、第3中空軸(遅れ軸)123と右輪側駆動軸112との間で、それぞれ回転速度の速い方から遅い方へと駆動力伝達が行なわれるようになっている。
【0017】
つまり、リヤデファレンシャル101において、左右のサイドギヤ106L,106R間での差動が小さければ、右輪側駆動軸112は、デフケース104即ち第1中空軸121に近い速度で回転するので、増速された第2中空軸122は右輪側駆動軸112よりも高速回転することになり、減速された第3中空軸123は右輪側駆動軸112よりも低速回転することになる。
【0018】
したがって、第2中空軸122と右輪側駆動軸112との間の油圧多板クラッチ113を接続すると、高速回転している第2中空軸122側から右輪側駆動軸112側へ駆動力が伝達され、第3中空軸123と右輪側駆動軸112との間の油圧多板クラッチ113を接続すると、高速回転している右輪側駆動軸112側から第3中空軸123側へ駆動力が伝達される。
【0019】
したがって、左右輪のうち右輪側への駆動力を増加させるには、第2中空軸122と右輪側駆動軸112との間の油圧多板クラッチ113を接続させて第2中空軸122側から右輪側駆動軸112側へ駆動力を伝達させればよく、左右輪のうち左輪側への駆動力を増加させるには、第3中空軸123と右輪側駆動軸112との間の油圧多板クラッチ114を接続させて右輪側駆動軸112側から第3中空軸123側へ駆動力を伝達させて右輪側への駆動力を減少させればよい。
【0020】
また、油圧多板クラッチ113,114をそれぞれクラッチ板を滑らせながら接続するようにし、この時のクラッチ板の押し付け圧(係合圧)を調整することで、駆動力の伝達量を調整することができる。
ところで、図18に示す車両用駆動力調整装置(第1従来技術)では、動力伝達用のカップリング(図18の場合は湿式油圧多板クラッチ)を回転する部材間に介装しているが、このような動力伝達用のカップリングを、回転部材と固定部材との間に介装した車両用駆動力調整装置も提案されている。
【0021】
例えば図21は、回転部材と固定部材との間にカップリング(ブレーキ)を介装した車両用駆動力調整装置を示すものであり、この種の車両用駆動力調整装置は特開平8−114255号公報等に開示されている(以下、図21に示す技術を第2従来技術という)。
この駆動力調整装置は、自動車の左右駆動輪への駆動力配分の調整を行なうものであり、図21に示すように、デファレンシャル(差動機構)201と一体的に設けられている。
【0022】
デファレンシャル201は、図21に示すように、プラネタリギヤ式になっており、リングギヤ202と、このリングギヤ202と同心上に配設されたサンギヤ203と、リングギヤ202とサンギヤ203との間に介設されたプラネタリピニオン204,205と、プラネタリピニオン204,205を枢支するプラネタリキャリア206とから構成されている。
【0023】
そして、リングギヤ202には、外周にエンジンからの駆動力を入力される入力ギヤ207が設けられており、サンギヤ203は左輪側駆動軸211に結合され、プラネタリキャリア206は右輪側駆動軸212に結合されている。
また、プラネタリピニオン204,205のうち外側のもの(アウタピニオン)204は、リングギヤ202と噛合し、内側のもの(インナピニオン)205は、サンギヤ203と噛合しており、これらのアウタピニオン204とインナピニオン205とが互いに噛合している。
【0024】
したがって、エンジンからの駆動力は、入力ギヤ207を通じてリングギヤ202に入力され、リングギヤ202からアウタピニオン204及びインナピニオン205を通じてサンギヤ203から左輪側駆動軸211へ、及び、プラネタリキャリア206から右輪側駆動軸212へと伝達される。つまり、アウタピニオン204及びインナピニオン205の自転に応じてサンギヤ203及び左輪側駆動軸211が回転し、アウタピニオン204及びインナピニオン205の公転に応じてプラネタリキャリア206及び右輪側駆動軸212が回転する。
【0025】
また、左輪側駆動軸211の外周には、キャリア部材220が回転自在に軸支されており、このキャリア部材220には、等ピッチで複数のピニオン軸221が設けられており、このピニオン軸221に3連ピニオンギヤ230が回転自在に軸支されている。3連ピニオンギヤ230には、第1ピニオン231,第2ピニオン232,第3ピニオン233がそなえられている。
【0026】
一方、左輪側駆動軸211の外周には、プラネタリキャリア206に連結された中空軸241Aが回転自在に支持されており、この中空軸241Aには、第1ピニオン231と噛合する第1サンギヤ241が固設されている。また、左輪側駆動軸211の外周には、第2ピニオン232と噛合する第2サンギヤ242が直接固設され、さらに、左輪側駆動軸211の外周には、もう一つの中空軸243Aが回転自在に支持されており、この中空軸243Aには、第3ピニオン233と噛合する第3サンギヤ243が固設されている。
【0027】
ところで、第1ピニオン231の歯数Z02,第2ピニオン232の歯数Z04,第3ピニオン233の歯数Z06,第1サンギヤ241の歯数Z01,第2サンギヤ242の歯数Z03,第3サンギヤ243の歯数Z05は、それぞれ、Z02=16,Z04=16,Z06=32,Z01=30,Z03=26,Z05=28に設定されている。
【0028】
また、キャリア部材220とケーシング(固定部材)208との間には、油圧クラッチ(ブレーキ)251が介装され、中空軸243Aとケーシング(固定部材)208との間には、油圧クラッチ(ブレーキ)252が介装されており、各クラッチ251,252は、油圧供給を受けると係合するようになっている。したがって、油圧クラッチ251を結合するとキャリア部材220の回転が規制され、油圧クラッチ252を結合すると中空軸243A即ち第3ピニオン233の回転が規制されるようになっている。
【0029】
油圧クラッチ251を結合した場合には、キャリア部材220が回転を停止するため、第1ピニオン231,第2ピニオン232,第3ピニオン233は自転のみ行なうようになり、左輪側駆動軸211の回転数(回転速度)Nと右輪側駆動軸212の回転数(回転速度)Nとの比の値は、以下のようになる。
Figure 0003612969
したがって、油圧クラッチ251を結合した場合には、左輪側駆動軸211は右輪側駆動軸212よりも高速回転するようになる。つまり、左輪は右輪よりも高速回転することになり、左輪から路面に伝達される駆動力は、右輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0030】
また、油圧クラッチ252を結合した場合には、第3サンギヤ243が回転を停止するため、第3ピニオン233はこの条件下で自転及び公転を行ない、第1ピニオン231,第2ピニオン232が第3ピニオン233と一体に公転及び自転することから、左輪側駆動軸211の回転数N左輪側駆動軸211の回転数Nとの比の値は、以下のようになる。
【0031】
Figure 0003612969
したがって、油圧クラッチ252を結合した場合には、右輪側駆動軸212は左輪側駆動軸211よりも高速回転するようになる。つまり、右輪は左輪よりも高速回転することになり、右輪から路面に伝達される駆動力は、左輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0032】
そして、油圧クラッチ251に加える油圧を調整することで、左輪側の駆動力の増加を調整することができ、油圧クラッチ252に加える油圧を調整することで、右輪側の駆動力の増加を調整することができるようになっている。
また、この図21に示す例では、左輪側駆動軸211に機械式油圧ポンプ260が装備されており、この油圧ポンプ260で発生した油圧を油圧クラッチ251,252へ供給しうるようになっている。
【0033】
ところで、上述のような車両用駆動力調整装置(第1及び第2従来技術)において、各部のトルク伝達量について速度線図を参照しながら説明する。
図18に示す車両用駆動力調整装置(第1従来技術)の場合の速度線図は、例えば図19に示すようになる。なお、図19において、Iは入力系であるデフケース104,第1中空軸121及び第1ギヤ131の回転速度を、Aは第2中空軸122及び第2ギヤ132の回転速度を、Bは第3中空軸123及び第3ギヤ133の回転速度を、Cは支持軸(固定部材)107Aを示し、Lは左輪側回転軸111の回転速度を、Rは右輪側回転軸112の回転速度を、それそれ示している。また、この速度線図は、左輪側回転軸111及び右輪側回転軸112がいずれも入力系Iと等速で回転している場合を示している。
【0034】
第1ギヤ131の歯数はZ、第1カウンタギヤ141の歯数はZなので、入力系(第1ギヤ131)Iが1/Z回転(第1ギヤ131の1歯数分だけの回転)すると、第1カウンタギヤ141側(3連ギヤ140)は1/Z回転(第1カウンタギヤ141の1歯数分だけの回転)する。したがって、入力系(第1ギヤ131)Iの回転速度は、3連ギヤ140の回転速度のZ/Z倍になる。
【0035】
同様に、第2ギヤ132の歯数はZ、第2カウンタギヤ142の歯数はZなので、第2中空軸122系Aの回転速度は、3連ギヤ140の回転速度のZ/Z倍になる。また、第3ギヤ133の歯数はZ、第3カウンタギヤ143の歯数はZなので、第3中空軸123系Bの回転速度は、3連ギヤ140の回転速度のZ/Z倍になる。
【0036】
ここでは、Z <Z <Z ,Z <Z <Z に設定されているので、入力系Iの回転速度Z/Zと、第2中空軸122系Aの回転速度Z/Zと、第3中空軸123系Bの回転速度Z/Zとの関係は、以下のようになり、図19に示すように表すことができる。
/Z<Z/Z<Z/Z
図19では、入力トルクTiが、左右輪へ等分される状況を示しており、左輪軸トルクTlと右輪軸トルクTrとは等しくなっている。
【0037】
ここで、第2中空軸122系Aと右輪側回転軸112系Rとの間にある油圧多板クラッチ(第2カップリング)114を係合させると、高速側の第2中空軸122系Aから低速側の右輪側回転軸112系Rへクラッチの伝達トルク(右クラッチ伝達トルク)Tcrに応じてトルク伝達が行なわれ、これにより、右輪軸トルクTrは増大し左輪軸トルクTlは減少する。
【0038】
また、第3中空軸123系Bと右輪側回転軸112系Rとの間にある油圧多板クラッチ(第1カップリング)113を係合させると、高速側の右輪側回転軸112系Rから低速側の第3中空軸123系Bへクラッチの伝達トルク(左クラッチ伝達トルク)Tclに応じてトルク伝達が行なわれ、これにより、左輪側出力トルクTlは増大し右輪側出力トルクTrは減少する。
【0039】
ここで、右輪側へトルク移動を行なう油圧多板クラッチ(第2カップリング)114を係合させた場合のトルクの釣り合いについて考える。図20(A)はリヤデファレンシャル101におけるトルクの釣り合いを示し、図20(B)は3連ギヤ部分におけるトルクの釣り合いを示している。
まず、リヤデファレンシャル101の入力側(デフケース104側)には、エンジンからの入力トルク(回転を促進する側のトルク)Tiがドライブピニオン102から入力され、これに抗するように、左輪側(左輪サイドギヤ106L側)には左輪からの反力トルク(回転を抑制する側のトルク)Tlが、右輪側(右輪サイドギヤ106R側)には右輪からの反力トルク(回転を抑制する側のトルク)Trが、それぞれ作用される。
【0040】
また、油圧多板クラッチ114の係合に伴い右輪側(右輪サイドギヤ106R側)にはエンジントルクの入力方向にクラッチ114からの右クラッチ伝達トルクTcrが回転を促進する側に入力され、入力側(デフケース104側)には、このクラッチ伝達トルクTcrに抗する反力トルク(回転を抑制する側のトルク)Txが作用する。
【0041】
したがって、リヤデファレンシャル101におけるトルクの釣り合い(入出力の釣り合い及び入力系I回りのモーメントの釣り合い)を考慮すると、次式が成立する。
Ti−Tx−Tl−Tr+Tcr=0 ・・・(2.1)
Tl−Tr+Tcr=0 ・・・(2.2)
また、3連ギヤ部分では、第2中空軸122系Aに、油圧多板クラッチ114の係合に伴うクラッチ反力トルク(回転を抑制する側のトルク)Tcrが作用して、入力系(第1中空軸121系)Iには、このクラッチ反力トルクTcrに抗するトルク(回転を促進する側のトルク)Cxが作用する。
【0042】
したがって、リヤデファレンシャル101におけるトルクの釣り合い(支持軸(固定部材)107A系C回りのモーメントの釣り合い)を考慮すると、次式が成立する。
(Z/Z)Tx−(Z/Z)Tcr=0 ・・・(2.3)
上式(1.1)〜(1.3)より、左右の車輪トルク(左輪軸トルクTl,右輪軸トルクTr)に関し、次式が成立する。
【0043】
Tl=(1/2)Ti−(Z/2Z)Tcr・・・(2.4)
Tr=(1/2)Ti+(1−Z/2Z)Tcr・・・(2.5)
上式(1.4),(1.5)より、左右輪のトルク差(Tl−Tr)を算出すると、次式のようになる。
【0044】
Tl−Tr=Tcr ・・・(2.6)
つまり、第1従来技術では、左右輪の駆動力差(トルク差:Tl−Tr)と等しい駆動力(トルク)を油圧クラッチにより伝達する必要がある。
一方、図21に示す車両用駆動力調整装置(第2従来技術)の場合の速度線図は、例えば図22に示すようになる。なお、図22において、Iは入力系であるリングギヤ202系について、RSは第1サンギヤ(右サンギヤ)241系について、CSは第2サンギヤ(中サンギヤ)242系について、LSは第3サンギヤ(左サンギヤ)243系について、Cはキャリア部材220系について、それぞれ示している。
【0045】
また、Lは左輪側(左輪側駆動軸211)について、Rは右輪側(右輪側駆動軸212)について、それぞれ示しており、左輪側Lは第2サンギヤ(中サンギヤ)242系CSと一体回転し、右輪側Rは第1サンギヤ(右サンギヤ)241系RSと一体回転するので、それぞれ一体に示している。さらに、CLは第3サンギヤ243側に設けられた油圧クラッチ(ブレーキ)252を、CRはキャリア部材220側に設けられた油圧クラッチ(ブレーキ)251を、それぞれ示している。
【0046】
いま、キャリア部材220側の回転を拘束する油圧クラッチ(ブレーキ)CR(図21の符号251参照)を作動させると、前述のように左輪側の回転速度が左輪側よりも大きくなって、左輪側Lから路面に伝達される駆動トルクTlが増大し逆に右輪側Rから路面に伝達される駆動トルクTrが減少する。
3連ピニオンギヤ230を介して結合された第1サンギヤ241系RS,第2サンギヤ242系CS,第3サンギヤ243系LS及びキャリア部材220系Cに作用するトルクに着目すると、左右輪の回転を促進する側に働くエンジンからの入力トルクTiに対して、左輪側からの反力トルクTl,右輪側からの反力トルクTr及び油圧クラッチ(ブレーキ)CRの反力トルク(いずれも、回転を抑制する側のトルク)が作用する。
【0047】
なお、図22において、16/30は第1サンギヤ241系RSにかかる第1ピニオン231の歯数Z02と第1サンギヤ241の歯数Z01との比の値であり、16/26は第2サンギヤ242系CS第2ピニオン232の歯数Z04と第2サンギヤ242の歯数Z03との比の値であり、32/28は第3サンギヤ243系LS第3ピニオン233の歯数Z06と第3サンギヤ243の歯数Z05との比の値である。
【0048】
したがって、これらの系におけるトルクの釣り合い(入出力の釣り合い及びキャリア部材220系C回りのモーメントの釣り合い)を考慮すると、次式が成立する。
Figure 0003612969
上式(2.1),(2.2)より、左右の車輪トルク(左輪軸トルクTl,右輪軸トルクTr)に関し、次式が成立する。
【0049】
Figure 0003612969
上式(2.3),(2.4)より、左右輪のトルク差(Tl−Tr)を算出すると、次式のようになる。
【0050】
Tl−Tr=14Tcr ・・・(3.5)
つまり、第2従来技術では、左右輪の駆動力差(トルク差:Tl−Tr)の14分の1と極めて小さな駆動力(トルク)を油圧クラッチにより伝達するだけでよい。
【0051】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の第1従来技術及び第2従来技術については、以下のような課題がある。
つまり、第1従来技術及び第2従来技術ともに、油圧クラッチ(通常、油圧多板クラッチ)を用いて駆動力(トルク)の調整を行なっているが、このような油圧クラッチの場合、油圧ポンプ等の油圧源が必要であり、この油圧源のためにコスト高を招いてしまうという課題がある。
【0052】
第1従来技術の場合、左右輪間(又は前後輪間)に加えたい駆動力差(トルク差:Tl−Tr)と等しい駆動力(トルク)を油圧クラッチにより伝達する必要があり、油圧クラッチの負担が大きいため、油圧クラッチの大型化を招くことになり、装置の大型化や重量化を招くという課題がある。
第2従来技術の場合、固定部材との間に油圧クラッチというカップリング(ブレーキ)を設けているため、左右輪間(又は前後輪間)に加えたい駆動力差(トルク差:Tl−Tr)に対して油圧クラッチの負荷となる駆動力(トルク)は極めて小さなもので十分となる。しかし、この第2従来技術でブレーキとして用いている油圧多板クラッチは、比較的大きなトルクを伝達しうるものの、引きずり防止上、クラッチ板間のクリアランスを十分に確保する必要があり、制御応答性の悪化を招くという課題がある。
【0053】
また、第2従来技術の場合、差動機構としてプラネタリギヤを用いているが、このプラネタリギヤはコスト高であるため、装置のコスト増を招くという課題もある。
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、低コストでしかも装置の大型化を招くことなく十分な量の駆動力の調整を応答性良く行なうことができるようにした、車両用駆動力調整装置を提供することを目的とする。
【0054】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の車両用駆動力調整装置は、エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、該駆動力調整機構は、4要素2自由度型遊星歯車機構と、該遊星歯車機構を収容するケーシングと、該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、該第1固定手段は、該第3の要素に連結された第1回転部材と、該ケーシング側に固定された第1固定部材と、該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成され、該第2固定手段は、該第4の要素に連結された第2回転部材と、該ケーシング側に固定された第2固定部材と、該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成されるとともに、該遊星歯車機構は、互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤと、該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤと、該第2サンギヤ及び該第1ピニオンギヤに噛合する第2ピニオンギヤと、該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、該第2ピニオンギヤに噛合するアニュラスギヤとから構成されていることを特徴としている。
したがって、請求項1記載の本発明の車両用駆動力調整装置では、エンジンからの駆動力が入力されると、この駆動力は差動機構を介して2本の駆動軸にそれぞれ入力されるが、この際、駆動力調整機構によって、両駆動軸への駆動力が分配調整されるようになっている。
【0055】
駆動力調整機構は、第1〜第4の要素をもった4要素2自由度型遊星歯車機構をそなえ、この遊星歯車機構では、第1連結手段により、遊星歯車機構の第1の要素を両駆動軸のうちの一方に連結することができ、第2連結手段により、遊星歯車機構の第2の要素を差動機構に連結することができ、第1固定手段により、遊星歯車機構の第3の要素を遊星歯車機構を収容するケーシングに固定することができ、第2固定手段により、遊星歯車機構の第4の要素をケーシングに固定することができる。
【0056】
このような第1連結手段,第2連結手段,第1固定手段,第2固定手段のいずれかを選択して連結又は固定することで、駆動力調整機構による両駆動軸への駆動力の分配調整を行なうことができる。
この際、第1固定手段では、第3の要素に連結された第1回転部材とケーシング側に固定された第1固定部材との間に介装された第1ブレーキ力付与手段を通て、第1回転部材にブレーキ力(回転抑制力)が与えられ、第2固定手段では、第4の要素に連結された第2回転部材とケーシング側に固定された第2固定部材との間に介装された第2ブレーキ力付与手段を通じて、第2回転部材にブレーキ力(回転抑制力)が与えられる。
なお、上記の第1固定手段及び第2固定手段は、軸方向において、該差動機構と該遊星歯車機構の間に配置されることが好ましい。
【0057】
請求項2記載の本発明の車両用駆動力調整装置は、請求項1記載の装置において、該遊星歯車機構の該第1の要素が該キャリアと該アニュラスギヤとのいずれか一方であり、該遊星歯車機構の該第2の要素が該キャリアと該アニュラスギヤとのいずれか他方であり、該遊星歯車機構の該第3の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか一方であり、該遊星歯車機構の該第4の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか他方であることを特徴としている。
【0058】
請求項3記載の本発明の車両用駆動力調整装置は、エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、該駆動力調整機構は、4要素2自由度型遊星歯車機構と、該遊星歯車機構を収容するケーシングと、該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、該第1固定手段は、該第3の要素に連結された第1回転部材と、該ケーシング側に固定された第1固定部材と、該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成され、該第2固定手段は、該第4の要素に連結された第2回転部材と、該ケーシング側に固定された第2固定部材と、該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成されるとともに、該遊星歯車機構は、互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤ及び第3サンギヤと、該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤ及び該第2サンギヤに噛合する第2ピニオンギヤ及び該第3サンギヤに噛合する第3ピニオンギヤと、該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤ及び該第3ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、から構成され、該第1ピニオンギヤと該第2ピニオンギヤと該第3ピニオンギヤとが互いに連結されていることを特徴としている。
したがって、請求項3記載の本発明の車両用駆動力調整装置の遊星歯車機構では、第1サンギヤ,第2サンギヤ,第3サンギヤ,キャリアの4つの要素を、それぞれ上記の第1〜第4の要素のいずれかに設定することで、4要素2自由度型遊星歯車機構が構成される。
請求項4記載の本発明の車両用駆動力調整装置は、請求項3記載の装置において、該遊星歯車機構の該第1の要素が該第1サンギヤであり、該遊星歯車機構の該第2の要素が該第2サンギヤであり、該遊星歯車機構の該第3の要素が該第3サンギヤであり、該遊星歯車機構の該第4の要素が該キャリアであることを特徴としている。
【0059】
請求項5記載の本発明の車両用駆動力調整装置は、エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、該駆動力調整機構は、4要素2自由度型遊星歯車機構と、該遊星歯車機構を収容するケーシングと、該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、該第1固定手段は、該第3の要素に連結された第1回転部材と、該ケーシング側に固定された第1固定部材と、該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段と、から構成され、該第2固定手段は、該第4の要素に連結された第2回転部材と、該ケーシング側に固定された第2固定部材と、該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段と、から構成され、該遊星歯車機構は、互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤ及び第3サンギヤと、該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤと、該第2サンギヤに噛合する第2ピニオンギヤと、該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、を有して構成され、該遊星歯車機構の該第3の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか一方であり、該遊星歯車機構の該第4の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか他方であることを特徴としている。
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、上記の第1及び第2の固定手段のうちの少なくとも一方はオイルポンプであって、このオイルポンプで駆動される作動油が、該一方の固定手段を構成するブレーキ力付与手段として用いられる。そして、吐出量制御手段によりオイルポンプの吐出量を制御することで、ブレーキ力付与状態が調整され、駆動力が調整される。
【0060】
なお、上記のオイルポンプに、該作動油を貯留するオイルタンクと、該オイルタンクと該オイルポンプの吸込側とを連結する連結油路とを付設して、該吐出量調整手段からの排出油路を該連結油路に連結することが好ましい。
また、該オイルポンプはベーンポンプ或いは内歯式ポンプであることが好ましい。
【0061】
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、上記の第1固定手段及び第2固定手段のうちの少なくとも一方は電動モータであって、この電動モータで放電または充電される電流が、該一方の固定手段を構成するブレーキ力付与手段として用いられる。そして、通電量制御手段により、該一方の固定手段にそなえられた固定部材への通電量を制御することで、ブレーキ力付与状態が調整され、駆動力が調整される。
【0062】
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置では、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置において、該第3の要素の回転は第1カウンタギヤを介して該第1回転部材に伝達され、該第4の要素の回転は第2カウンタギヤを介して該第2回転部材に伝達されるので、各要素の回転は各カウンタギヤを介して増速可能となり、各回転部材の回転を増速させて、対応する固定部材との差回転を大きくすることができる。
なお、上記の差動機構は、ベベルギヤ式のものが好ましい。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明すると、図1〜図7は本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置を示すものであり、図8,図9は本発明の第2実施形態としての車両用駆動力調整装置を示すものであり、図10〜図13は本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置を示すものであり、図14,図15は本発明の第4実施形態としての車両用駆動力調整装置を示すものであり、図16,図17は本発明の第5実施形態としての車両用駆動力調整装置を示すものである。
【0064】
なお、各実施形態の車両用駆動力調整装置は、一対の駆動輪間に設けられており、4輪駆動車にあっては、前輪側駆動軸と後輪側駆動軸との間や、前輪の左右駆動輪間や、後輪の左右駆動輪間にそれぞれ介装することができ、前輪駆動車の場合には前輪の左右駆動輪間に、後輪駆動車の場合には後輪の左右駆動輪間に、それぞれ介装することができる。
【0065】
本装置が前輪側駆動軸と後輪側駆動軸との間に装備される場合は、各実施形態にかかるデファレンシャル1はセンタデファレンシャルとなり、各実施形態にかかる駆動軸11,12は前輪側駆動軸,後輪側駆動軸となる。また、本装置が前輪又は後輪の左右輪間に装備される場合は、各実施形態にかかるデファレンシャル1はフロントデファレンシャル又はリヤデファレンシャルとなり、各実施形態にかかる駆動軸11,12は左輪側駆動軸,右輪側駆動軸となる。ここでは、各実施形態ともに、前輪又は後輪の左右駆動輪間に配設されているものとして説明する。
【0066】
まず、図1〜図7を参照して第1実施形態の車両用駆動力調整装置について説明する。
図1に示すように、本車両用駆動力調整装置は、図示しないエンジンからの駆動力(トルク)が入力されるデファレンシャル(差動機構)1と、このデファレンシャル1を介してエンジンからの駆動力が入力される2本の駆動軸11,12と、これらの駆動軸11,12へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構20とから構成されている。
【0067】
図1に示すように、デファレンシャル1のデファレンシャルケース(デフケース)2の外周には、図示しないエンジンからの駆動力を入力されるリングギヤ3が固設されている。また、デファレンシャル1はベベルギヤ式になっており、デフケース2に枢着されたピニオン4,4と、これらのピニオン4,4に噛合するサイドギヤ5L,5Rとから構成される。なお、サイドギヤ5Lは左輪側駆動軸11に固設され、サイドギヤ5Rは右輪側駆動軸12に固設されている。
【0068】
そして、デフケース2と右輪側駆動軸12と非回転部材であるケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)6との間に、左輪側駆動軸11及び右輪側駆動軸12への駆動力配分を調整しうる駆動力調整機構20が介装されている。
この駆動力調整機構20は、4要素2自由度型遊星歯車機構であるラビニオ式プラネタリギヤ機構30Aとこのプラネタリギヤ機構30Aを収容するケーシングとしてのデフキャリア6とをそなえると共に、プラネタリギヤ機構30Aの第3の要素をケーシング6に固定しうる第1固定手段(第1ブレーキともいう)としての第1オイルポンプ40L及びプラネタリギヤ機構30Aの第3の要素をケーシング6に固定しうる第2固定手段(第2ブレーキともいう)としての第2オイルポンプ40Rをそなえている。
【0069】
なお、第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rでは、作動油を加圧するが、この作動油は、第1オイルポンプ40Lにおいては第3の要素にブレーキ力を付与する第1ブレーキ力付与手段として機能し、第1オイルポンプ40Lにおいては第4の要素にブレーキ力を付与する第2ブレーキ力付与手段として機能する(以下、第2〜5実施形態でも同様である)。
【0070】
プラネタリギヤ機構30Aは、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備された第1サンギヤ31及び第2サンギヤ32と、第1サンギヤ31に噛合する複数の第1ピニオンギヤ33と、第2サンギヤ32及び第1ピニオンギヤ33に噛合する複数の第2ピニオンギヤ34と、第2ピニオンギヤ34に噛合するアニュラスギヤ35とをそなえている。
【0071】
第1サンギヤ31は右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第1中空軸36に固設され、第2サンギヤ32は第1中空軸36のさらに外周に回転自在に軸支された第2中空軸37に固設されている。第1ピニオンギヤ33及び第2ピニオンギヤ34は、中間部材38Aを介して右輪側駆動軸12に一体回転するように固設されたプラネタリキャリア38に回転自在に軸支されている。また、アニュラスギヤ35は中間部材39を介してデフケース2に結合されている。
【0072】
このようなプラネタリギヤ機構30Aは、4つの要素が駆動力調整機構20の他の要素と連携しうるように結合されている。
つまり、プラネタリキャリア38が第1の要素であり、この第1の要素38は、第1連結手段としての中間部材38Aを介して両駆動軸のうちの一方である右輪側駆動軸12に連結されている。また、アニュラスギヤ35が第2の要素であり、この第2の要素35は、第2連結手段としての中間部材39を介してデフケース(差動機構)2に連結されている。
【0073】
また、第1サンギヤ31が第3の要素であり、第2サンギヤ32が第4の要素である。そして、第3の要素である第1サンギヤ31は、第1中空軸36を介して第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40Lに連結され、第4の要素である第2サンギヤ32は、第2中空軸37を介して第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rに連結されている。
【0074】
これらの第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rは、例えばベーンポンプを用いたり、或いは、タービンポンプ,ボリュートポンプ等のうず巻きポンプを用いたり、内歯歯車ポンプ,トロコイドポンプ等の歯車ポンプを用いることができる。
いずれにしてもこれらの第1及び第2のオイルポンプ40L,40Rは、ポンプケーシング等の第1及び第2の固定部材40a,40b内に、ベーンや歯車等を装備した第1及び第2の回転部材40c,40dをそなえたものである。
【0075】
ところで、これらのオイルポンプ40L,40Rは、その負荷状態に応じて、回転部材40c,40dに、その回転を抑制するブレーキ力(ブレーキトルク)Tが加わるが、このブレーキトルクTを調整しうるように構成されている。つまり、このブレーキトルクT(Nm)は、オイルポンプ40L,40Rの入出力間の圧力差P(Pa)及びオイルポンプ40L,40Rの1回転当たりの吐出量Q(m)を用いて、次式のような理論式で示すことができる。
【0076】
=P・Q/2π
ポンプの諸元が決まれば、吐出量Qは一定であるから、オイルポンプ40L,40Rの入出力間の圧力差Pを制御すれば、ブレーキトルクTを調整することができる。
そこで、本装置のオイルポンプ40L,40Rには、図2に示すように、ポンプの入口(吸込口)と出口(吐出口)との間に、吐出したオイルを入口側へ戻す返戻路40eが介設されており、この返戻路40eに、出口側から入口側へのオイルの戻り量を調整して入出力間の圧力差Pを調整する可変調圧バルブ40fがそなえられている。
【0077】
なお、返戻路40eは、各オイルポンプ40L,40Rの出口側と入口側とを短い距離で連絡しており、オイルポンプ40L,40Rの出口側からリザーバタンク40gへ吐出し、このリザーバタンク40gからオイルポンプ40L,40Rの入口側へ吸入する場合に比べて、大幅に流通抵抗が小さくなるように配慮されている。
【0078】
また、可変調圧バルブ40fは、例えばリニアソレノイドバルブで構成されており、指令信号(又は供給電流又は供給電圧)に応じて返戻路43を開度調整することができるようになっている。
したがって、可変調圧バルブ40fの開度を最大にすると、オイルポンプ40L,40Rの入出力間の圧力差Pは最小となってブレーキトルクTも最小となり、可変調圧バルブ40fの開度を最小にすると、オイルポンプ40L,40Rの入出力間の圧力差Pは最大となってブレーキトルクTも最大となるように構成されている。
【0079】
第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rがこのように構成されるため、例えば第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクTを最小にすると、第3の要素である第1サンギヤ31はほとんど回転を拘束されなくなりほぼ自由に回転することができ、第2のオイルポンプ40RによるブレーキトルクTを最小にすると、第4の要素である第2サンギヤ32はほとんど回転を拘束されるなくなりほぼ自由に回転することができる。
【0080】
つまり、両オイルポンプ40L,40RのブレーキトルクTをいずれも最小にしておけば、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれ、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方のブレーキトルクTを増大させると、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、これとともに左右輪間での駆動力配分状態が調整されるようになっている。
【0081】
例えば、アニュラスギヤ35,プラネタリキャリア38,第1サンギヤ31,第2サンギヤ32がいずれも等速で回転している状態から、図3(A)に示すように、第1オイルポンプ(第1固定手段)40Lを作動させ第1サンギヤ31の回転を拘束して第1サンギヤ31の回転速度VS1を低下させると、第1プラネタリギヤ33が系の回転方向(ここでは、右回り)に自転(速度VP1)を行なうようになり、第2プラネタリギヤ34は第1プラネタリギヤ33とは逆方向(ここでは、左回り)に自転(速度VP2)を行なうようになる。
【0082】
これにより、第1プラネタリギヤ33及び第2プラネタリギヤ34の公転速度、即ち、プラネタリキャリア(第1の要素)38の回転速度Vは、入力側Iのアニュラスギヤ(第2の要素)35の回転速度Vよりも高速で(V>V)で回転するようになる。
したがって、プラネタリキャリア38に連結された右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していくようになっている。
【0083】
逆に、アニュラスギヤ35,プラネタリキャリア38,第1サンギヤ31,第2サンギヤ32がいずれも等速で回転している状態から、図3(B)に示すように、第2オイルポンプ(第2固定手段)40Rを作動させ第2サンギヤ32の回転を拘束して第2サンギヤ32の回転速度VS2を低下させると、第2プラネタリギヤ34が系の回転方向(ここでは、右回り)に自転(速度VP2)を行なうようになる。
【0084】
これにより、第1プラネタリギヤ33及び第2プラネタリギヤ34の公転速度、即ち、プラネタリキャリア(第1の要素)38の回転速度Vは、入力側Iのアニュラスギヤ(第2の要素)35の回転速度Vよりも低速で(V<V)で回転するようになる。
したがって、プラネタリキャリア38に連結された右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していくようになっている。
【0085】
なお、図3(A),(B)においては、第1プラネタリギヤ33及び第2プラネタリギヤ34をそれぞれ4個ずつそなえているが、これは一例であり、プラネタリギヤ33,34の個数は限定されない。
ところで、プラネタリギヤ機構30Aにおける4要素を構成する各ギヤ、即ち、アニュラスギヤ35,第1サンギヤ31,第2サンギヤ32の歯数関係の設定について、図4(A)〜(C)を参照しながら説明する。
【0086】
なお、図4(A)〜(C)において、Iは入力系即ちデフケース2系を、Rは右輪回転系即ち右輪回転軸12系を、Bは左輪側ブレーキ即ち第1オイルポンプ40Lを、Bは右輪側ブレーキ即ち第2オイルポンプ40Rを、Aはアニュラスギヤ35を、Cはプラネタリキャリア38を、S1は第1サンギヤ31を、S2は第2サンギヤ32を、それぞれ示している。
【0087】
歯数関係の設定に当たり要求されるのは、一定の旋回時にも旋回内輪側から旋回外輪側へ駆動力移動を行なえるようにすることであり、次のように定義する左右輪の速度比(最大差動速度比)Smを所望の値に設定する必要がある。
ただし、Ni:入力回転速度
Nrmax :入力回転速度Niに対する右輪最大速度
Nrmin :入力回転速度Niに対する右輪最小速度
Nlmax :入力回転速度Niに対する左輪最大速度
Nlmin :入力回転速度Niに対する左輪最小速度
Figure 0003612969
この最大差動速度比Smは、点B(即ち、第1オイルポンプ40L)又は点B(即ち、第2オイルポンプ40R)において、第1サンギヤ31又は第2サンギヤ32が停止した状態に相当する。
【0088】
したがって、点Bの第1オイルポンプ40Lにおいて第1サンギヤ31が停止した場合(速度V=0)には、入力系I〔即ち、アニュラスギヤ35〕に対する右輪回転系R〔即ち、プラネタリキャリア38〕,左輪回転系L,第2オイルポンプ40R〔第2サンギヤ32〕の速度の関係は、図4(A)に示す直線L1のようになる。
【0089】
つまり、右輪回転系Rの速度は、入力系Iに対して最大Vlmax となり、左輪回転系Lの速度は、入力系Iに対して最小Vrmin となる。
式(4.1)より、
Vrmax =1+Sm ・・・(4.2)
Vlmin =1−Sm ・・・(4.3)
また、点Bの第2オイルポンプ40Rにおいて第2サンギヤ32が停止した場合(速度V=0)には、入力系I〔即ち、アニュラスギヤ35〕に対する右輪回転系R〔即ち、プラネタリキャリア38〕,左輪回転系L,第2オイルポンプ40R〔第2サンギヤ32〕の速度の関係は、図4(A)に示す直線L2のようになる。
【0090】
つまり、右輪回転系Rの速度は、入力系Iに対して最小Vlmin となり、左輪回転系Lの速度は、入力系Iに対して最大Vrmax となる。
式(4.1)より、
Vrmin =1−Sm ・・・(4.4)
Vlmax =1+Sm ・・・(4.5)
したがって、右輪回転系Rのプラネタリキャリア35を基準に、入力系Iであるアニュラスギヤ35の歯数Z,第1オイルポンプ系である第1サンギヤ31の歯数ZS1,第2オイルポンプ40R系である第2サンギヤ32の歯数ZS2の比は、次のようになる。
【0091】
Figure 0003612969
ただし、このような設定が困難な場合には、
1/Z:1/ZS1:1/ZS2=1:LS1:LS2 ・・・(4.7)
と設定し、LS1は、LS1<(1−Sm)/Smで且つ(1−Sm)/Smに可能なかぎり近い値とし、LS2は、LS2<1/Smで且つ1/Smに可能なかぎり近い値とする。
【0092】
ここで、所望の最大速度比Smの具体値として、例えばSm=0.125=1/8と設定すると、
Figure 0003612969
となる。
【0093】
したがって、これを満たすアニュラスギヤ35,第1サンギヤ31,第2サンギヤ32の各歯数の比Z:ZS1:ZS2は、次のようになる。
:ZS1:ZS2=56:8:7
となる。
このような歯数比に設定することで、最大差動速度比Sm=0.125により、差動制限を通じての駆動力配分調整を行なうことができるのである。
【0094】
本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fを制御することにより、左右輪間のトルク(駆動力)配分状態を自由に調整することができる。
つまり、第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を最大にすると、オイルポンプ40L,40Rの入出力間の圧力差Pは最小となって各ブレーキトルクTも最小となり、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれる。
【0095】
そして、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方の可変調圧バルブ40fの開度を縮小していきブレーキトルクTを増大させていくと、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、左右輪間での駆動力配分状態が調整される。
そして、例えば図5に示すように、第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第3の要素である第1サンギヤ31が回転を拘束されるようになる。第1サンギヤ31が回転を拘束されると、右輪回転系Rのプラネタリキャリア(第1の要素)38はこれに応じて回転を促進され、右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも低速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していく。
【0096】
一方、図6に示すように、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第4の要素である第2サンギヤ32が回転を拘束されるようになる。第2サンギヤ32が回転を拘束されると、右輪回転系Rのプラネタリキャリア(第1の要素)38は回転を抑制され、右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、逆に、左輪回転系Lは入力側Iよりも高速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していく。
【0097】
このような路面への伝達トルク(駆動力)の調整は、可変調圧バルブ40fの開度に応じて即ちブレーキトルクTの大きさに応じたレベルで行なうことができ、例えば右輪側への駆動力を僅かに増大させたければ、第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を全開よりもやや縮小させて第1オイルポンプ40LによるブレーキトルクTをやや加えればよく、右輪側への駆動力を大幅に増大させたければ、第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を大きく縮小させて第1オイルポンプ40LによるブレーキトルクTを大きく加えればよい。
【0098】
逆に、左輪側への駆動力を僅かに増大させたければ、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を全開よりもやや縮小させて第2オイルポンプ40RによるブレーキトルクTをやや加えればよく、左輪側への駆動力を大幅に増大させたければ、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を大きく縮小させて第2オイルポンプ40RによるブレーキトルクTを大きく加えればよい。
【0099】
このように、本車両用駆動力調整装置によれば、固定手段、即ち、ブレーキとして機能するオイルポンプ40L,40Rのブレーキ力を制御することで、左右輪への駆動力配分を自由に調整することかでき、例えば旋回時に、旋回外輪側への駆動力配分を増大させて旋回性能を向上させたり、これとは逆に、旋回収束時に、旋回内輪側への駆動力配分を増大させて旋回収束性能を向上させたりすることができるのである。
【0100】
しかも、本車両用駆動力調整装置では、小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができ、装置コストを低減しうる利点がある。
つまり、本車両用駆動力調整装置の動力伝達系におけるトルクの釣り合いを図7を参照しながら説明する。なお、Tiは入力トルクであり、Tl,Tr,Tlb,Trbは出力トルクであり、このうち、Tlは左輪側の配分トルク(発生トルク)、Trは右輪側の配分トルク(発生トルク)、Tlbは第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクT(左ブレーキトルク)、Trbは第2のオイルポンプ40RによるブレーキトルクT(右ブレーキトルク)であり、Smは左右輪の最大差動速度比である。
【0101】
まず、第1のオイルポンプ40Lによる左ブレーキトルクTlbを加える〔このときには、第2のオイルポンプ40Rによる右ブレーキトルクTrbは0とする〕と、点R(右輪回転系RであるプラネタリキャリアC)回りの釣り合いから、次式が成立する。
Figure 0003612969
左右輪の発生トルク差ΔTは、
ΔT=Tl−Tr=−(1/Sm)Tlb ・・・(5.2)
同様に、第2のオイルポンプ40Rによる右ブレーキトルクTrbを加える(このときには、第1のオイルポンプ40Lによる左ブレーキトルクTlbは0とする)と、点R(右輪回転系RであるプラネタリキャリアC)回りの釣り合いから、上述と同様に、次式が成立する。
【0102】
Figure 0003612969
よって、左右輪の発生トルク差ΔTは、
ΔT=Tl−Tr=(1/Sm)Tlb ・・・(5.4)
ここで、最大速度比Smを、Sm=0.125=1/8と一般的な値に設定すると、式(5.2),(5.4)より、
ΔT=−8Tlb ・・・(5.5)
ΔT=8Trb ・・・(5.6)
となり、この場合には、ブレーキトルクTlb,Trbは、左右輪の発生トルク差ΔTの1/8でよいことになる。
【0103】
すなわち、本車両用駆動力調整装置では、小さなブレーキトルクで駆動力の配分調整を行なうことができる利点がある。
また、ブレーキトルクロスについて説明すると、第1のオイルポンプ40Lによる左ブレーキトルクTlbを加えた場合(左ブレーキ時)及び第2のオイルポンプ40Rによる右ブレーキトルクTrbを加えた場合(右ブレーキ時)のロストルクTuは、以下のようになる。
・左ブレーキ時
Tu=Ti−(Tr+Tl)=Tlb=−SmΔT ・・・(5.7)
・右ブレーキ時
Tu=Ti−(Tr+Tl)=Trb=SmΔT ・・・(5.8)
となり、第1従来技術のトルクロスと同レベルとなり、ブレーキ採用によるトルクロスの増大は特に発生しないことがわかる。
【0104】
また、ブレーキ40L,40Rとしてポンプを用いているため、ブレーキ力の付与を滑らかに行なえ、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、クラッチのように引きずりを考慮する必要がなく、制御応答を向上させることができる。さらに、ポンプ吐出圧を車両の油圧系に利用することもできる。
次に、図8,図9を参照して第2実施形態の車両用駆動力調整装置について説明する。
【0105】
図8に示すように、本車両用駆動力調整装置も、第1実施形態と同様に、デファレンシャル(差動機構)1と、2本の駆動軸(左輪側駆動軸,右輪側駆動軸)11,12と、これらの駆動軸11,12へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構21とから構成されている。
図8に示すように、デファレンシャル1は、第1実施形態と同様にベベルギヤ式になっており、デフケース2に枢着されたピニオン4,4と、これらのピニオン4,4に噛合するサイドギヤ5L,5Rとから構成され、サイドギヤ5Lは左輪側駆動軸11に固設され、サイドギヤ5Rは右輪側駆動軸12に固設されている。また、デファレンシャルケース(デフケース)2の外周に図示しないエンジンからの駆動力を入力されるリングギヤ3が固設されている。
【0106】
そして、デフケース2と右輪側駆動軸12と非回転部材であるケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)6との間に、左輪側駆動軸11及び右輪側駆動軸12への駆動力配分を調整しうる駆動力調整機構21が介装されている。
この駆動力調整機構21は、4要素2自由度型遊星歯車機構であるラビニオ式プラネタリギヤ機構30Bとこのプラネタリギヤ機構30Bを収容するケーシングとしてのデフキャリア6とをそなえると共に、第1実施形態と同様に、プラネタリギヤ機構30Bの第3の要素をケーシング6に固定しうる第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40L及びプラネタリギヤ機構30Bの第4の要素をケーシング6に固定しうる第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rをそなえている。
【0107】
本実施形態では、この駆動力調整機構21における、プラネタリギヤ機構30B自体や第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40R自体の構成は第1実施形態のものと同様になっているが、これらのプラネタリギヤ機構30B及び第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの配置関係が第1実施形態のものと異なっている。
【0108】
つまり、プラネタリギヤ機構30Bは、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備された第1サンギヤ41及び第2サンギヤ42と、第1サンギヤ41に噛合する複数の第1ピニオンギヤ43と、第2サンギヤ42及び第1ピニオンギヤ43に噛合する複数の第2ピニオンギヤ44と、第2ピニオンギヤ44に噛合するアニュラスギヤ45とをそなえている。
【0109】
そして、第1ピニオンギヤ43及び第2ピニオンギヤ44は、右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第1中空軸48Aを介してデフケース2に結合されたプラネタリキャリア48に回転自在に軸支されている。第1サンギヤ41は第1中空軸48Aの外周に更に回転自在に軸支された第2中空軸46に結合され、第2サンギヤ42は第2中空軸46の更に外周に回転自在に軸支された第3中空軸47に結合されている。また、アニュラスギヤ45は中間部材49を介して右輪側駆動軸12に結合されている。
【0110】
このようなプラネタリギヤ機構30Bは、4つの要素が駆動力調整機構21の他の要素と連携しうるように結合されている。
ここでは、アニュラスギヤ45が第1の要素であり、この第1の要素45は、第1連結手段としての中間部材49を介して両駆動軸のうちの一方である右輪側駆動軸12に連結されている。また、プラネタリキャリア48が第2の要素であり、この第2の要素48は、第2連結手段としての第1中空軸48Aを介してデフケース(差動機構)2に連結されている。
【0111】
また、第2サンギヤ42が第3の要素であり、第1サンギヤ41が第4の要素である。そして、第3の要素である第2サンギヤ42は、第3中空軸47を介して第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40Lに連結され、第4の要素である第1サンギヤ41は、第2中空軸46を介して第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rに連結されている。
【0112】
これらの第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rは、第1実施形態と同様に、例えばベーンポンプや、タービンポンプ,ボリュートポンプ等のうず巻きポンプや、内歯歯車ポンプ,トロコイドポンプ等の歯車ポンプを用いることができる。
いずれにしてもこれらの第1及び第2のオイルポンプ40L,40Rは、ポンプケーシング等の第1及び第2の固定部材40a,40b内に、ベーンや歯車等を装備した第1及び第2の回転部材40c,40dをそなえたものであり、図2に示すように、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整することにより、オイルポンプ40L,40Rで発生するブレーキトルクT(回転部材40c,40dの回転を抑制するためのブレーキ力)を調整しうるように構成されている。
【0113】
したがって、例えば第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクTを最小にすると、第3の要素である第2サンギヤ42はほとんど回転を拘束されなくなりほぼ自由に回転することができ、第2のオイルポンプ42によるブレーキトルクTを最小にすると、第4の要素である第1サンギヤ41はほとんど回転を拘束されるなくなりほぼ自由に回転することができる。
【0114】
このため、第1実施形態と同様に、両オイルポンプ40L,40RのブレーキトルクTをいずれも最小にしておけば、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれ、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方のブレーキトルクTを増大させていくと、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、これとともに左右輪間での駆動力配分状態が調整されるようになっている。
【0115】
例えば、アニュラスギヤ45,プラネタリキャリア48,第1サンギヤ41,第2サンギヤ42がいずれも等速で回転している状態から、第1オイルポンプ(第1固定手段)40Lを作動させ第2サンギヤ(第3の要素)42の回転を拘束して第2サンギヤ42の回転速度VS2を低下させると、アニュラスギヤ(第2の要素)45の回転速度Vは、第1プラネタリギヤ43及び第2プラネタリギヤ44の公転速度、即ち、入力側Iのプラネタリキャリア(第2の要素)48の回転速度Vよりも高速で(V>V)で回転するようになる。
【0116】
したがって、アニュラスギヤ45に連結された右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していくようになっている。
逆に、アニュラスギヤ45,プラネタリキャリア48,第1サンギヤ41,第2サンギヤ42がいずれも等速で回転している状態から、第2オイルポンプ(第2固定手段)40Rを作動させ第1サンギヤ(第4の要素)41の回転を拘束して第1サンギヤ41の回転速度VS1を低下させると、アニュラスギヤ(第2の要素)45の回転速度Vは、第1プラネタリギヤ43及び第2プラネタリギヤ44の公転速度、即ち、入力側Iのプラネタリキャリア(第2の要素)48の回転速度Vよりも低速で(V<V)で回転するようになる。
【0117】
したがって、アニュラスギヤ45に連結された右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していくようになっている。
また、プラネタリギヤ機構30Bにおける4要素を構成する各ギヤ、即ち、アニュラスギヤ45,第2サンギヤ42,第1サンギヤ41の歯数関係の設定については、図9(A),(B)に示すように、第1実施形態とほぼ同様に考えることができる。
【0118】
なお、図9(A),(B)において、Iは入力系即ちデフケース2系を、Rは右輪回転系即ち右輪回転軸12系を、Bは左輪側ブレーキ即ち第1オイルポンプ40Lを、Bは右輪側ブレーキ即ち第2オイルポンプ40Rを、Aはアニュラスギヤ45を、Cはプラネタリキャリア48を、S1は第1サンギヤ41を、S2は第2サンギヤ42を、それぞれ示している。
【0119】
図示するように、
1/Z:1/ZS1:1/ZS2=1:1/Sm:1/Sm・・・(6.1)
ただし、このような設定が困難な場合には、
1/Z:1/ZS1:1/ZS2=1:LS1:LS2 ・・・(6.2)
と設定し、LS1,LS2は、LS2<1/Smで且つ1/Smに可能なかぎり近い値とする。
【0120】
ここで、所望の最大速度比Smの具体値として、例えばSm=0.125=1/8と設定すると、
1/Z:1/ZS1:1/ZS2=1:8:8
となる。
したがって、これを満たすアニュラスギヤ45,第1サンギヤ41,第2サンギヤ42の各歯数の比Z:ZS1:ZS2は、次のようになる。
【0121】
:ZS1:ZS2=8:1:1
となる。
このような歯数比に設定することで、最大差動速度比Sm=0.125により、差動制限を通じての駆動力配分調整を行なうことができるのである。
本発明の第2実施形態としての車両用駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fを制御することにより、第1実施形態と同様に、左右輪間のトルク(駆動力)配分状態を自由に調整することができる。
【0122】
例えば第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第3の要素である第2サンギヤ42が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rのアニュラスギヤ(第1の要素)45はこれに応じて回転を促進され、右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも低速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していく。
【0123】
一方、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第4の要素である第1サンギヤ31が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rのアニュラスギヤ(第1の要素)45はこれに応じて回転を抑制され、右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも高速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していく。
【0124】
このような路面への伝達トルク(駆動力)の調整は、可変調圧バルブ40fの開度に応じて即ちブレーキトルクTの大きさに応じたレベルで行なうことができ、固定手段、即ち、ブレーキとして機能するオイルポンプ40L,40Rのブレーキ力を制御することで、左右輪への駆動力配分を自由に調整することかできる。したがって、例えば旋回時に、旋回外輪側への駆動力配分を増大させて旋回性能を向上させたり、これとは逆に、旋回収束時に、旋回内輪側への駆動力配分を増大させて旋回収束性能を向上させたりすることができるのである。
【0125】
また、本実施形態の車両用駆動力調整装置でも、第1実施形態の場合と同様に(図7参照)、小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができ、装置コストを低減しうる利点がある。
さらに、ブレーキトルクロスについても、第1実施形態と同様に、第1従来技術のトルクロスと同レベルとなり、ブレーキ採用によるトルクロスの増大は特に発生しない。
また、ブレーキ40L,40Rとしてポンプを用いているため、滑らかなブレーキ力付与により、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、制御応答を向上させることができ、ポンプの吐出圧も利用することができる。
【0126】
次に、図10〜図13を参照して第3実施形態の車両用駆動力調整装置について説明する。
図10に示すように、本車両用駆動力調整装置も、第1,2実施形態と同様に、デファレンシャル(差動機構)1と、2本の駆動軸(左輪側駆動軸,右輪側駆動軸)11,12と、これらの駆動軸11,12へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構22とから構成されている。
【0127】
図10に示すように、デファレンシャル1は、第1,2実施形態と同様にベベルギヤ式になっており、デフケース2に枢着されたピニオン4,4と、これらのピニオン4,4に噛合するサイドギヤ5L,5Rとから構成され、サイドギヤ5Lは左輪側駆動軸11に固設され、サイドギヤ5Rは右輪側駆動軸12に固設されている。また、デファレンシャルケース(デフケース)2の外周に図示しないエンジンからの駆動力を入力されるリングギヤ3が固設されている。
【0128】
そして、デフケース2と右輪側駆動軸12と非回転部材であるケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)6との間に、左輪側駆動軸11及び右輪側駆動軸12への駆動力配分を調整しうる駆動力調整機構22が介装されている。
この駆動力調整機構22は、4要素2自由度型遊星歯車機構である3連ギヤ式プラネタリギヤ機構30Cとこのプラネタリギヤ機構30Cを収容するケーシングとしてのデフキャリア6とをそなえると共に、第1,2実施形態と同様に、プラネタリギヤ機構30Cの第3の要素をケーシング6に固定しうる第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40L及びプラネタリギヤ機構30Cの第4の要素をケーシング6に固定しうる第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rをそなえている。
【0129】
本実施形態では、この駆動力調整機構22における、プラネタリギヤ機構30C自体が第1,2実施形態のものと異なっている。
つまり、プラネタリギヤ機構30Cは、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備された第1サンギヤ51,第2サンギヤ52及び第3サンギヤ52と、第1サンギヤ51に噛合する複数の第1ピニオンギヤ54と、第2サンギヤ52に噛合する複数の第2ピニオンギヤ55と、第3サンギヤ53に噛合する複数の第3ピニオンギヤ56とをそなえている。
【0130】
第1サンギヤ51は、右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第1中空軸57を介してデフケース2に結合され、第2サンギヤ52は、右輪側駆動軸12に結合され、第3サンギヤ53は、右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第2中空軸58に結合されている。また、第1ピニオンギヤ54,第2ピニオンギヤ55,第3ピニオンギヤ56は、いずれもプラネタリキャリア59に回転自在に枢支されいる。
【0131】
このようなプラネタリギヤ機構30Cは、4つの要素が駆動力調整機構22の他の要素と連携しうるように結合されている。
ここでは、第2サンギヤ52が第1の要素であり、この第1の要素52は、第1連結手段としての歯車本体52Aを介して両駆動軸のうちの一方である右輪側駆動軸12に連結されている。また、第1サンギヤ51が第2の要素であり、この第2の要素51は、第2連結手段としての第1中空軸57を介してデフケース(差動機構)2に連結されている。
【0132】
また、プラネタリキャリア59が第3の要素であり、第3サンギヤ53が第4の要素である。そして、第3の要素であるプラネタリキャリア59は、第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40Lに連結され、第4の要素である第3サンギヤ53は、第2中空軸58を介して第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rに連結されている。
【0133】
これらの第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rは、第1,2実施形態と同様に、例えばベーンポンプや、タービンポンプ,ボリュートポンプ等のうず巻きポンプや、内歯歯車ポンプ,トロコイドポンプ等の歯車ポンプを用いることができ、いずれにしてもこれらの第1及び第2のオイルポンプ40L,40Rは、ポンプケーシング等の第1及び第2の固定部材40a,40b内に、ベーンや歯車等を装備した第1及び第2の回転部材40c,40dをそなえて構成される。具体的には、図2に示すように、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整することにより、オイルポンプ40L,40Rで発生するブレーキトルクT(回転部材40c,40dの回転を抑制するためのブレーキ力)を調整しうるように構成されている。
【0134】
ところで、第1サンギヤ51,第2サンギヤ52及び第3サンギヤ53の各歯数Z1,Z2,Z3はZ1≧Z2≧Z3の関係に設定され、第1ピニオンギヤ54,第2ピニオンギヤ55,第3ピニオンギヤ56の各歯数Z4,Z5,Z6はZ4≦Z5≦Z6の関係に設定されている。ただし、Z1=Z2ならばZ4<Z5、Z2=Z3ならばZ5<Z6とする。
【0135】
したがって、例えば第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクTを最小にすると、第3の要素であるプラネタリキャリア59はほとんど回転を拘束されなくなりほぼ自由に回転することができ、第2のオイルポンプ42によるブレーキトルクTを最小にすると、第4の要素である第3サンギヤ53はほとんど回転を拘束されるなくなりほぼ自由に回転することができる。
【0136】
このため、両オイルポンプ40L,40RのブレーキトルクTをいずれも最小にしておけば、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれ、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方のブレーキトルクTを増大させていくと、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、これとともに左右輪間での駆動力配分状態が調整されるようになっている。
【0137】
そして、例えば図11に示すように、第1オイルポンプ(第1固定手段)40Lを作動させ第3の要素であるプラネタリキャリア59の回転を停止させると、右輪側回転軸12の回転速度Nrと左輪側回転軸11の回転速度Nlとの比の値Nr/Nlは、次のようになる。
Nr/Nl=(Z5/Z2)・(Z1/Z4) ・・・(7.1)
式(7.1)を変形すると、
Nr/Nl=(Z1・Z5)/(Z2・Z4) ・・・(7.1′)
ここで、前述のように、Z2≦Z1,Z4≦Z5、且つ、Z1=Z2ならばZ4<Z5と設定されているので、
Z2・Z4<Z1・Z5
∴Nr/Nl=(Z1・Z5)/(Z2・Z4)>1
したがって、第1オイルポンプ40Lを作動させてプラネタリキャリア59の回転を抑制していくと、右輪側駆動軸12の回転速度Nrは左輪側駆動軸11の回転速度Nlよりも高速回転する。つまり、右輪は左輪よりも高速回転することになり、右輪から路面に伝達される駆動力は、左輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0138】
また、図12に示すように、第2オイルポンプ(第2固定手段)40Rを作動させ第4の要素である第3サンギヤ53の回転を停止させると、左輪側回転軸11の回転速度Nlと右輪側回転軸12の回転速度Nrとの比の値Nl/Nrは、次のようになる。
Figure 0003612969
前述のように、Z3≦Z2≦Z1,Z4≦Z5≦Z6、且つ、Z1=Z2ならばZ4<Z5,Z2=Z3ならばZ5<Z6と設定されているので、
Z3・Z4<Z6・Z1
Z3・Z5<Z6・Z2
∴0<α<1,0<β<1
α−β=(Z3/Z6)・{(Z4/Z1)−(Z5/Z2)}
Z2・Z4<Z1・Z5より、
(Z4/Z1)−(Z5/Z2)<0
∴α<β
よって、
Nl/Nr>1
したがって、第2オイルポンプ40Rを作動させて第3サンギヤ53の回転を抑制していくと、左輪側駆動軸11の回転速度Nlは右輪側駆動軸12の回転速度Nrよりも高速回転するようになる。つまり、左輪は右輪よりも高速回転することになり、左輪から路面に伝達される駆動力は、右輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0139】
このように、第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの何れかにおいて、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整してポンプ負荷を増大させると、その負荷増大状態に応じて、左右輪間での駆動力配分が調整されるのである。
また、プラネタリギヤ機構30Cにおける4要素を構成する各ギヤ、即ち、第1サンギヤ51,第2サンギヤ52,第3サンギヤ53の歯数関係の設定については、図13(A),(B)に示すように、第1,2実施形態と同様に考えることができる。
【0140】
なお、図13(A),(B)において、Iは入力系即ちデフケース2系を、Rは右輪回転系即ち右輪回転軸12系を、Bは左輪側ブレーキ即ち第1オイルポンプ40Lを、Bは右輪側ブレーキ即ち第2オイルポンプ40Rを、Cはプラネタリキャリア59を、S1は第1サンギヤ51を、S2は第2サンギヤ52、S3は第3サンギヤ53を、P1は第1プラネタリギヤ54を、P2は第2プラネタリギヤ55を、P3は第3プラネタリギヤ56を、それぞれ示している。
【0141】
また、Z1,Z2,Z3,Z4,Z5,Z6は、それぞれ第1サンギヤ51,第2サンギヤ52,第3サンギヤ53,第1プラネタリギヤ54,第2プラネタリギヤ55,第3プラネタリギヤ56の各歯数を示している。
図示するように、
Figure 0003612969
ここで、所望の最大速度比Smの具体値として、例えばSm=0.125=1/8と設定すると、
Figure 0003612969
となる。
【0142】
このような歯数比に設定することで、最大差動速度比Sm=0.125により、差動制限を通じての駆動力配分調整を行なうことができるのである。
本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fを制御することにより、第1,2実施形態と同様に、左右輪間のトルク(駆動力)配分状態を自由に調整することができる。
【0143】
例えば第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第3の要素であるプラネタリキャリア59が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rの第2サンギヤ(第2の要素)52はこれに応じて回転を促進され、右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも低速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していく。
【0144】
一方、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、右輪回転系Rの第2サンギヤ(第2の要素)52はこれに応じて回転を抑制され、右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも高速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していく。
【0145】
このような路面への伝達トルク(駆動力)の調整は、可変調圧バルブ40fの開度に応じて即ちブレーキトルクTの大きさに応じたレベルで行なうことができ、固定手段、即ち、ブレーキとして機能するオイルポンプ40L,40Rのブレーキ力を制御することで、左右輪への駆動力配分を自由に調整することかできる。したがって、例えば旋回時に、旋回外輪側への駆動力配分を増大させて旋回性能を向上させたり、これとは逆に、旋回収束時に、旋回内輪側への駆動力配分を増大させて旋回収束性能を向上させたりすることができるのである。
【0146】
また、本実施形態の車両用駆動力調整装置でも、第1,2実施形態の場合と同様に、小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができ、装置コストを低減しうる利点がある。
さらに、ブレーキトルクロスについても、第1,2実施形態と同様に、第1従来技術のトルクロスと同レベルとなり、ブレーキ採用によるトルクロスの増大は特に発生しないことがわかる。
【0147】
また、ブレーキ40L,40Rとしてポンプを用いているため、滑らかなブレーキ力付与により、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、制御応答を向上させることができ、ポンプの吐出圧も利用することができる。
次に、図14,図15を参照して第4実施形態の車両用駆動力調整装置について説明する。
【0148】
図14に示すように、本車両用駆動力調整装置も、第1〜3実施形態と同様に、デファレンシャル(差動機構)1と、2本の駆動軸(左輪側駆動軸,右輪側駆動軸)11,12と、これらの駆動軸11,12へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構22とから構成されている。
図14に示すように、デファレンシャル1は、第1〜3実施形態と同様にベベルギヤ式になっており、デフケース2に枢着されたピニオン4,4と、これらのピニオン4,4に噛合するサイドギヤ5L,5Rとから構成され、サイドギヤ5Lは左輪側駆動軸11に固設され、サイドギヤ5Rは右輪側駆動軸12に固設されている。また、デファレンシャルケース(デフケース)2の外周に図示しないエンジンからの駆動力を入力されるリングギヤ3が固設されている。
【0149】
そして、デフケース2と右輪側駆動軸12と非回転部材であるケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)6との間に、左輪側駆動軸11及び右輪側駆動軸12への駆動力配分を調整しうる駆動力調整機構23が介装されている。
この駆動力調整機構23は、第3実施形態と同様の4要素2自由度型遊星歯車機構である3連ギヤ式プラネタリギヤ機構30Dと、このプラネタリギヤ機構30Dを収容するケーシングとしてのデフキャリア6とをそなえると共に、第1〜3実施形態と同様に、プラネタリギヤ機構30Dの第3の要素をケーシング6に固定しうる第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40L及びプラネタリギヤ機構30Dの第4の要素をケーシング6に固定しうる第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rをそなえている。
【0150】
本実施形態では、この駆動力調整機構23における、プラネタリギヤ機構30D自体は第3実施形態のプラネタリギヤ機構30Cと同様であるが、プラネタリギヤ機構30D及び第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの配置関係が第3実施形態のものとは異なっている。
つまり、プラネタリギヤ機構30Dは、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備された第1サンギヤ61,第2サンギヤ62及び第3サンギヤ63と、第1サンギヤ61に噛合する複数の第1ピニオンギヤ64と、第2サンギヤ62に噛合する複数の第2ピニオンギヤ65と、第3サンギヤ63に噛合する複数の第3ピニオンギヤ66とをそなえている。
【0151】
このプラネタリギヤ機構30Dでは、第1サンギヤ61は、右輪側駆動軸12に結合され、第2サンギヤ62は、右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第1中空軸67を介してデフケース2に結合され、第3サンギヤ63は、右輪側駆動軸12の外周に回転自在に軸支された第2中空軸68に結合されている。また、第1ピニオンギヤ64,第2ピニオンギヤ65,第3ピニオンギヤ66は、いずれもプラネタリキャリア69に回転自在に枢支されいる。
【0152】
このようなプラネタリギヤ機構30Dは、4つの要素が駆動力調整機構23の他の要素と連携しうるように結合されている。
ここでは、第1サンギヤ61が第1の要素であり、この第1の要素61は、第1連結手段としての歯車本体61Aを介して両駆動軸のうちの一方である右輪側駆動軸12に連結されている。また、第2サンギヤ62が第2の要素であり、この第2の要素62は、第2連結手段としての第1中空軸67を介してデフケース(差動機構)2に連結されている。
【0153】
また、第3サンギヤ63が第3の要素であり、プラネタリキャリア69が第4の要素である。そして、第3の要素である第3サンギヤ63は、第2中空軸68及びカウンタギヤ機構71を介して第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40Lに連結され、第4の要素であるプラネタリキャリア69は、カウンタギヤ機構72を介して第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rに連結されている。
【0154】
なお、カウンタギヤ機構71は、サンギヤ71Aとこのサンギヤ71Aに噛合する複数のプラネタリギヤ(カウンタギヤ)71Bとから構成され、カウンタギヤ機構72は、サンギヤ72Aとこのサンギヤ72Aに噛合する複数のプラネタリギヤ(カウンタギヤ)72Bとから構成されており、各プラネタリギヤ71B,72Bは、いずれも回転軸を固定され、サンギヤ71A,72Aの回りを自転のみしうるようになっている。
【0155】
そして、第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rは、第1〜3実施形態と同様に、例えばベーンポンプや、タービンポンプ,ボリュートポンプ等のうず巻きポンプや、内歯歯車ポンプ,トロコイドポンプ等の歯車ポンプを用いることができ、いずれにしてもこれらの第1及び第2のオイルポンプ40L,40Rは、ポンプケーシング等の第1及び第2の固定部材40a,40b内に、ベーンや歯車等を装備した第1及び第2の回転部材40c,40dをそなえて構成される。具体的には、図2に示すように、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整することにより、オイルポンプ40L,40Rで発生するブレーキトルクT(回転部材40c,40dの回転を抑制するためのブレーキ力)を調整しうるように構成されている。
【0156】
ところで、第1サンギヤ61,第2サンギヤ62及び第3サンギヤ63の各歯数Z1,Z2,Z3はZ1≧Z2≧Z3の関係に設定され、第1ピニオンギヤ64,第2ピニオンギヤ65,第3ピニオンギヤ66の各歯数Z4,Z5,Z6はZ4≦Z5≦Z6の関係に設定されている。ただし、Z1=Z2ならばZ4<Z5、Z2=Z3ならばZ5<Z6とする。
【0157】
したがって、例えば第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクTを最小にすると、第3の要素である第3サンギヤ63はほとんど回転を拘束されなくなりほぼ自由に回転することができ、第2のオイルポンプ42によるブレーキトルクTを最小にすると、第4の要素であるプラネタリキャリア69はほとんど回転を拘束されるなくなりほぼ自由に回転することができる。
【0158】
このため、両オイルポンプ40L,40RのブレーキトルクTをいずれも最小にしておけば、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれ、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方のブレーキトルクTを増大させていくと、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、これとともに左右輪間での駆動力配分状態が調整されるようになっている。
【0159】
例えば第1オイルポンプ(第1固定手段)40Lを作動させ第3の要素である第3サンギヤ63の回転を停止させると、右輪側回転軸12の回転速度Nrと左輪側回転軸11の回転速度Nlとの比の値Nr/Nlは、次のようになる。
Figure 0003612969
前述のように、Z3≦Z2≦Z1,Z4≦Z5≦Z6、且つ、Z1=Z2ならばZ4<Z5,Z2=Z3ならばZ5<Z6と設定されているので、
Z3・Z4<Z6・Z1
Z3・Z5<Z6・Z2
∴0<α<1,0<β<1
α−β=(Z3/Z6)・{(Z4/Z1)−(Z5/Z2)}
Z2・Z4<Z1・Z5より、
(Z4/Z1)−(Z5/Z2)<0
∴α<β
よって、
Nr/Nl>1
したがって、第1オイルポンプ40Lを作動させて第3サンギヤ63の回転を抑制していくと、右輪側駆動軸12の回転速度Nrは左輪側駆動軸11の回転速度Nlよりも高速回転する。つまり、右輪は左輪よりも高速回転することになり、右輪から路面に伝達される駆動力は、左輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0160】
また、第2オイルポンプ(第2固定手段)40Rを作動させ第4の要素であるプラネタリキャリア69の回転を停止させると、左輪側回転軸11の回転速度Nlと右輪側回転軸12の回転速度Nrとの比の値Nl/Nrは、次のようになる。
Nl/Nr=(Z5/Z2)・(Z1/Z4) ・・・(9.2)
式(7.1)を変形すると、
Nl/Nr=(Z1・Z5)/(Z2・Z4) ・・・(9.2′)
ここで、前述のように、Z2≦Z1,Z4≦Z5、且つ、Z1=Z2ならばZ4<Z5と設定されているので、
Z2・Z4<Z1・Z5
∴Nl/Nr=(Z1・Z5)/(Z2・Z4)>1
したがって、第2オイルポンプ40Rを作動させてプラネタリキャリア69の回転を抑制していくと、左輪側駆動軸11の回転速度Nlは右輪側駆動軸12の回転速度Nrよりも高速回転するようになる。つまり、左輪は右輪よりも高速回転することになり、左輪から路面に伝達される駆動力は、右輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
【0161】
このように、第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの何れかにおいて、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整してポンプ負荷を増大させると、その負荷増大状態に応じて、左右輪間での駆動力配分が調整されるのである。
また、プラネタリギヤ機構30Dにおける4要素を構成する各ギヤ、即ち、第1サンギヤ61,第2サンギヤ62,第3サンギヤ63の歯数関係の設定については、図15(A),(B)に示すように、第1〜3実施形態と同様に考えることができる。
【0162】
なお、図15(A),(B)において、Iは入力系即ちデフケース2系を、Rは右輪回転系即ち右輪回転軸12系を、Bは左輪側ブレーキ即ち第1オイルポンプ40Lを、Bは右輪側ブレーキ即ち第2オイルポンプ40Rを、Cはプラネタリキャリア69を、S1は第1サンギヤ61を、S2は第2サンギヤ62、S3は第3サンギヤ63を、P1は第1プラネタリギヤ64を、P2は第2プラネタリギヤ65を、P3は第3プラネタリギヤ66を、SS3はサンギヤ71Aを、Sはサンギヤ72Aを、D1はプラネタリギヤ71Bを、D2はプラネタリギヤ72Bを、それぞれ示している。
【0163】
また、Z1,Z2,Z3,Z4,Z5,Z6は、それぞれ第1サンギヤ61,第2サンギヤ62,第3サンギヤ63,第1プラネタリギヤ64,第2プラネタリギヤ65,第3プラネタリギヤ66の各歯数を示している。
図示するように、
Figure 0003612969
ここで、所望の最大速度比Smの具体値として、例えばSm=0.125=1/8と設定すると、
Figure 0003612969
となる。
【0164】
また、本実施形態の場合、ブレーキ40L,40Rは、カウンタギヤ機構71,72を介してプラネタリギヤ機構30Dと連結されているので、カウンタギヤ機構71,72におけるサンギヤ71A(SS3),72A(S)と、プラネタリギヤ71B(D1),72B(D2)とのギヤ比(m1:m2)の設定によって、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を増速することができる。
【0165】
例えば、
m1:m2=3:1
とすると、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を3倍に増速することができることになる。
本発明の第4実施形態としての車両用駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fを制御することにより、第1〜3実施形態と同様に、左右輪間のトルク(駆動力)配分状態を自由に調整することができる。
【0166】
例えば第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第3の要素である第3サンギヤ63が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rの第1サンギヤ(第1の要素)61はこれに応じて回転を促進され、右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも低速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していく。
【0167】
一方、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第4の要素であるプラネタリギヤ69が回転を拘束されるようになり、第1サンギヤ(第1の要素)61はこれに応じて回転を抑制され、右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも高速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していく。
【0168】
このような路面への伝達トルク(駆動力)の調整は、可変調圧バルブ40fの開度に応じて即ちブレーキトルクTの大きさに応じたレベルで行なうことができ、固定手段、即ち、ブレーキとして機能するオイルポンプ40L,40Rのブレーキ力を制御することで、左右輪への駆動力配分を自由に調整することかできる。したがって、例えば旋回時に、旋回外輪側への駆動力配分を増大させて旋回性能を向上させたり、これとは逆に、旋回収束時に、旋回内輪側への駆動力配分を増大させて旋回収束性能を向上させたりすることができるのである。
【0169】
また、本実施形態の車両用駆動力調整装置でも、第1〜3実施形態の場合と同様に、小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができ、装置コストを低減しうる利点がある。
特に、本実施形態の場合、ブレーキ40L,40Rがカウンタギヤ機構71,72を介してプラネタリギヤ機構30Dと連結されており、カウンタギヤ機構71,72のギヤ比(m1:m2)の設定によって、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を増速することができ、より小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができる利点がある。
【0170】
さらに、ブレーキトルクロスについても、第1〜3実施形態と同様に、第1従来技術のトルクロスと同レベルとなり、ブレーキ採用によるトルクロスの増大は特に発生しないことがわかる。
また、ブレーキ40L,40Rとしてポンプを用いているため、滑らかなブレーキ力付与により、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、制御応答を向上させることができ、ポンプの吐出圧も利用することができる。
【0171】
次に、図16,図17を参照して第5実施形態の車両用駆動力調整装置について説明する。
図16に示すように、本車両用駆動力調整装置も、第1〜4実施形態と同様に、デファレンシャル(差動機構)1と、2本の駆動軸(左輪側駆動軸,右輪側駆動軸)11,12と、これらの駆動軸11,12へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構22とから構成されている。
【0172】
図16に示すように、デファレンシャル1は、第1〜4実施形態と同様にベベルギヤ式になっており、デフケース2に枢着されたピニオン4,4と、これらのピニオン4,4に噛合するサイドギヤ5L,5Rとから構成され、サイドギヤ5Lは左輪側駆動軸11に固設され、サイドギヤ5Rは右輪側駆動軸12に固設されている。また、デファレンシャルケース(デフケース)2の外周に図示しないエンジンからの駆動力を入力されるリングギヤ3が固設されている。
【0173】
そして、デフケース2と右輪側駆動軸12と非回転部材であるケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)6との間に、左輪側駆動軸11及び右輪側駆動軸12への駆動力配分を調整しうる駆動力調整機構24が介装されている。
この駆動力調整機構24は、4要素2自由度型遊星歯車機構であるプラネタリギヤ機構30Eと、このプラネタリギヤ機構30Eを収容するケーシングとしてのデフキャリア6とをそなえると共に、第1〜4実施形態と同様に、プラネタリギヤ機構30Eの第3の要素をケーシング6に固定しうる第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40L及びプラネタリギヤ機構30Eの第4の要素をケーシング6に固定しうる第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rをそなえている。
【0174】
本実施形態では、駆動力調整機構24のプラネタリギヤ機構30Eの構成が他の実施形態と異なっており、プラネタリギヤ機構30E及び第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの配置関係は第4実施形態のものと同様に構成されている。
つまり、プラネタリギヤ機構30Eは、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備された第1サンギヤ81及び第2サンギヤ82と、第1サンギヤ81に噛合する複数の第1インナピニオンギヤ83と、第2サンギヤ82に噛合し第1インナピニオンギヤ83と一体回転する複数の第2インナピニオンギヤ84と、各第2インナピニオンギヤ84の外周に配置され第2インナピニオンギヤ84に噛合するアウタピニオンギヤ85と、これらの第1インナピニオンギヤ83,第2インナピニオンギヤ84,アウタピニオンギヤ85を回転自在に枢支するプラネタリキャリア88と、右輪側駆動軸12の外周に右輪側駆動軸12と同心上に装備されたこのアウタピニオンギヤ85と噛合するアニュラスギヤ86とをそなえている。
【0175】
そして、このプラネタリギヤ機構30Eでは、第1サンギヤ81は、第1中空軸81Aを介してデフケース2に結合され、アニュラスギヤ86は、中間部材89を介して右輪側駆動軸12に結合され、第2サンギヤ82は、第2中空軸82Aに連結され、プラネタリキャリア88は、第3中空軸88Aに連結されている。
【0176】
このようなプラネタリギヤ機構30Eは、4つの要素が駆動力調整機構24の他の要素と連携しうるように結合されている。
ここでは、アニュラスギヤ86が第1の要素であり、この第1の要素86は、第1連結手段としての中間部材89を介して両駆動軸のうちの一方である右輪側駆動軸12に連結されている。また、第1サンギヤ81が第2の要素であり、この第2の要素81は、第2連結手段としての第1中空軸81Aを介してデフケース(差動機構)2に連結されている。
【0177】
また、第2サンギヤ82が第3の要素であり、プラネタリキャリア88が第4の要素である。そして、第3の要素である第2サンギヤ82は、カウンタギヤ機構91を介して第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ40Lに連結され、第4の要素であるプラネタリキャリア88は、第2中空軸82A及びカウンタギヤ機構92を介して第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ40Rに連結されている。
【0178】
なお、カウンタギヤ機構91は、サンギヤ91Aとこのサンギヤ91Aに噛合する複数のプラネタリギヤ(カウンタギヤ)91Bとから構成され、カウンタギヤ機構92は、サンギヤ92Aとこのサンギヤ92Aに噛合する複数のプラネタリギヤ(カウンタギヤ)92Bとから構成されており、各プラネタリギヤ91B,92Bは、いずれも回転軸を固定され、サンギヤ91A,92Aの回りを自転のみしうるようになっている。
【0179】
そして、第1オイルポンプ40L及び第2オイルポンプ40Rは、第1〜4実施形態と同様に、例えばベーンポンプや、タービンポンプ,ボリュートポンプ等のうず巻きポンプや、内歯歯車ポンプ,トロコイドポンプ等の歯車ポンプを用いることができ、いずれにしてもこれらの第1及び第2のオイルポンプ40L,40Rは、ポンプケーシング等の第1及び第2の固定部材40a,40b内に、ベーンや歯車等を装備した第1及び第2の回転部材40c,40dをそなえて構成される。具体的には、図2に示すように、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整することにより、オイルポンプ40L,40Rで発生するブレーキトルクT(回転部材40c,40dの回転を抑制するためのブレーキ力)を調整しうるように構成されている。
【0180】
また、第1サンギヤ81,第2サンギヤ82の各歯数ZSR,ZSLはZSR>ZSLの関係に設定され、第1インナピニオンギヤ83,第2インナピニオンギヤ84の各歯数ZPR,ZPLはZPR<ZPLの関係に設定されている。
したがって、例えば第1のオイルポンプ40LによるブレーキトルクTを最小にすると、第4の要素であるプラネタリキャリア88はほとんど回転を拘束されなくなりほぼ自由に回転することができ、第2のオイルポンプ42によるブレーキトルクTを最小にすると、第3の要素である第2サンギヤ82はほとんど回転を拘束されるなくなりほぼ自由に回転することができる。
【0181】
このため、両オイルポンプ40L,40RのブレーキトルクTをいずれも最小にしておけば、デファレンシャル1において、左右輪間の差動は拘束されることなく自由に行なわれ、オイルポンプ40L,40Rのいずれか一方のブレーキトルクTを増大させていくと、そのブレーキトルクTに応じて、左右輪間の差動が拘束され、これとともに左右輪間での駆動力配分状態が調整されるようになっている。
【0182】
ここで、図17を参照して説明すると、図17は、第1サンギヤ81の回転速度S,第2サンギヤ82の回転速度S,アニュラスギヤ86の回転速度A,プラネタリキャリア88の回転速度Cの関係を示す速度線図である。
図17に示すように、例えば第1オイルポンプ(第1固定手段)40L(BL)を作動させ第3の要素である第2サンギヤ82の回転を停止させると、入力側の回転速度I(即ち、第1サンギヤ81の回転速度S)に対して右輪側回転軸12の回転速度Nr(即ち、アニュラスギヤ86の回転速度A)が相対的に高くなり、右輪側回転軸12の回転速度Nrの方がよりも左輪側回転軸11の回転速度Nl大きくなる。
【0183】
つまり、右輪は左輪よりも高速回転することになり、右輪から路面に伝達される駆動力は、左輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
逆に、第2オイルポンプ(第2固定手段)40R(BR)を作動させ第4の要素であるプラネタリキャリア88の回転を停止させると、右輪側回転軸12の回転速度Nr(即ち、アニュラスギヤ86の回転速度A)は入力側の回転速度I(即ち、第1サンギヤ81の回転速度S)よりも低くなり、左輪側回転軸11の回転速度Nlの方が右輪側回転軸12の回転速度Nrよりも大きくなる。
【0184】
つまり、左輪は右輪よりも高速回転することになり、左輪から路面に伝達される駆動力は、右輪から路面に伝達される駆動力よりも大きくなるのである。
このように、第1オイルポンプ40L,第2オイルポンプ40Rの何れかにおいて、可変調圧バルブ40fによりポンプの入出力間の圧力差Pを調整してポンプ負荷を増大させると、その負荷増大状態に応じて、左右輪間での駆動力配分が調整されるのである。
【0185】
また、プラネタリギヤ機構30Eにおける4要素を構成する各ギヤ、即ち、第1サンギヤ81,第2サンギヤ82,第1インナピニオンギヤ83,第2インナピニオンギヤ84,アニュラスギヤ86の各歯数ZSR,ZSL,ZPR,ZPL,Zの関係の設定については、図17に示すように第4実施形態と同様に考えることができる。
【0186】
つまり、各歯数ZSR,ZSL,ZPR,ZPL,Zの関係は、図17に示するように、
Figure 0003612969
ここで、所望の最大速度比Smの具体値として、例えばSm=0.125=1/8と設定すると、
Figure 0003612969
となる。
【0187】
また、本実施形態の場合、第4実施形態と同様にブレーキ40L,40Rは、カウンタギヤ機構91,92を介してプラネタリギヤ機構30Eと連結されているので、カウンタギヤ機構91,92におけるサンギヤ91A,92Aとプラネタリギヤ91B,92Bとのギヤ比(m1:m2)の設定によって、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を増速することができる。
【0188】
例えば、
m1:m2=3:1
とすると、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を3倍に増速することができることになる。
本発明の第5実施形態としての車両用駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、第1固定手段としての第1オイルポンプ40L及び第2固定手段としての第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fを制御することにより、第1〜4実施形態と同様に、左右輪間のトルク(駆動力)配分状態を自由に調整することができる。
【0189】
例えば第1オイルポンプ40Lの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第3の要素である第2サンギヤ82が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rのアニュラスギヤ(第1の要素)86はこれに応じて回転を促進され、右輪回転系Rは入力側Iよりも高速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも低速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが増加し、左輪回転系Lが減少していく。
【0190】
一方、第2オイルポンプ40Rの可変調圧バルブ40fの開度を縮小してブレーキトルクTを増大させていくと、第4の要素であるプラネタリキャリア88が回転を拘束されるようになり、右輪回転系Rのアニュラスギヤ(第1の要素)86はこれに応じて回転を抑制され、右輪回転系Rは入力側Iよりも低速回転するようになり、逆に左輪回転系Lは入力側Iよりも高速回転するようになって、路面への伝達トルクは、右輪回転系Rが減少し、左輪回転系Lが増加していく。
【0191】
このような路面への伝達トルク(駆動力)の調整は、可変調圧バルブ40fの開度に応じて即ちブレーキトルクTの大きさに応じたレベルで行なうことができ、固定手段、即ち、ブレーキとして機能するオイルポンプ40L,40Rのブレーキ力を制御することで、左右輪への駆動力配分を自由に調整することかできる。したがって、例えば旋回時に、旋回外輪側への駆動力配分を増大させて旋回性能を向上させたり、これとは逆に、旋回収束時に、旋回内輪側への駆動力配分を増大させて旋回収束性能を向上させたりすることができるのである。
【0192】
また、本実施形態の車両用駆動力調整装置でも、第1〜4実施形態の場合と同様に、小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができ、装置コストを低減しうる利点がある。
特に、本実施形態の場合、第4実施形態の場合と同様に、ブレーキ40L,40Rがカウンタギヤ機構91,92を介してプラネタリギヤ機構30Dと連結されており、カウンタギヤ機構91,92のギヤ比(m1:m2)の設定によって、ブレーキ40L,40Rにおける制動対象速度を増速することができ、より小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができる利点がある。
【0193】
さらに、ブレーキトルクロスについても、第1〜4実施形態と同様に、第1従来技術のトルクロスと同レベルとなり、ブレーキ採用によるトルクロスの増大は特に発生しないことがわかる。
また、ブレーキ40L,40Rとしてポンプを用いているため、滑らかなブレーキ力付与により、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、制御応答を向上させることができ、ポンプの吐出圧も利用することができる。
【0194】
なお、各実施形態では、第1固定手段40L及び第2固定手段40Rとしてオイルポンプを用いているが、これらの第1固定手段40L及び第2固定手段40Rとして、オイルポンプの代わりに電動モータを用いてもよい。この場合、電動モータで放電または充電される電流が、第3の要素又は第4の要素にブレーキ力を付与するブレーキ力付与手段として機能することになる。この場合にも、ブレーキ力の付与を滑らかに行なうことができ、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、さらには、充電電流を車両のバッテリに充電したり、放電電流を車両の電動系に利用することもできる。
【0195】
また、第1固定手段40L及び第2固定手段40Rのうち、一方にオイルポンプを用い他方に電動モータを用いるようにしてもよい。
なお、上述の各実施形態では、本車両用駆動力調整装置を前輪又は後輪の左右駆動輪間に配設しているが、本車両用駆動力調整装置は、前輪側駆動軸と後輪側駆動軸との間に装備してもよいのは勿論のことである。この場合、前後輪間の駆動力配分に関して、各実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0196】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば、駆動力調整機構の第1及び第2の固定手段を通じて、両駆動軸への駆動力の配分調整を自由に行なうことができるようになる。特に、ブレーキ力の付与により駆動力配分を制御するので、比較的小さなブレーキトルクにより比較的大きな駆動力の調整を行なえるようになる。したがって、比較的小容量の固定手段により所望の駆動力調整を行なうことができるようになり、装置の小型化や軽量化さらにはコスト低減を図ることができるようになる。
また、遊星歯車機構を、上記のごとく、第1サンギヤ,第2サンギヤ,第1ピニオンギヤ,第2ピニオンギヤ,キャリア,アニュラスギヤから構成しているので、歯車機構を軸方向に小型化することができ、装置の小型化や装置コストの低減に寄与しうる利点があり、また、クラッチのように引きずり防止を考慮する必要がなく、制御応答を向上させることができる利点もある。
【0197】
求項3記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば、請求項1の装置と同様に、駆動力調整機構の第1及び第2の固定手段を通じて、両駆動軸への駆動力の配分調整を自由に行なうことができるようになる。特に、ブレーキ力の付与により駆動力配分を制御するので、比較的小さなブレーキトルクにより比較的大きな駆動力の調整を行なえるようになる。したがって、比較的小容量の固定手段により所望の駆動力調整を行なうことができるようになり、装置の小型化や軽量化さらにはコスト低減を図ることができるようになる。
また、遊星歯車機構を、上記のごとく、第1サンギヤと、第2サンギヤと、第3サンギヤと、第1ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤと、第3ピニオンギヤと、第1,第2,第3ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、から構成し、第1ピニオンギヤと第2ピニオンギヤと第3ピニオンギヤとが互いに連結される構成にしているので、歯車機構を径方向に小型化することができ、装置の小型化や装置コストの低減に寄与しうる利点があり、また、クラッチのように引きずり防止を考慮する必要がなく、制御応答を向上させることができる利点もある。
請求項5記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば、請求項1の装置と同様に、駆動力調整機構の第1及び第2の固定手段を通じて、両駆動軸への駆動力の配分調整を自由に行なうことができるようになる。特に、ブレーキ力の付与により駆動力配分を制御するので、比較的小さなブレーキトルクにより比較的大きな駆動力の調整を行なえるようになる。したがって、比較的小容量の固定手段により所望の駆動力調整を行なうことができるようになり、装置の小型化や軽量化さらにはコスト低減を図ることができるようになる。
また、遊星歯車機構を、上記のごとく、第1サンギヤと、第2サンギヤと、第1ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤと、第1,第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、から構成しているので、歯車機構を径方向に小型化することができ、装置の小型化や装置コストの低減に寄与しうる利点があり、また、クラッチのように引きずり防止を考慮する必要がなく、制御応答を向上させることができる利点もある。
【0198】
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば、固定手段としてオイルポンプを用い、オイルポンプで駆動される作動油により第3の要素又は第4の要素にブレーキ力を付与しているので、ブレーキ力の付与を滑らかに行なうことができ、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、さらには、ポンプの吐出圧を車両の油圧系に利用することもできる。
【0199】
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば、固定手段として電動モータを用い、電動モータで放電または充電される電流により第3の要素又は第4の要素にブレーキ力を付与しているので、ブレーキ力の付与を滑らかに行なうことができ、駆動力の配分制御を円滑に行なうことができるようになり、さらには、充電電流を車両のバッテリに充電したり、放電電流を車両の電動系に利用することもできる。
【0200】
請求項記載の本発明の車両用駆動力調整装置によれば各回転部材の回転を増速させて、対応する固定部材との差回転を大きくすることができ、より小さなブレーキトルクで大きな駆動力の配分調整を行なうことができるため、固定手段を一層小容量にすることができるようになり、装置の小型化や軽量化さらにはコスト低減を一層促進することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の動力伝達手段を示す模式的な構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の固定手段の機能を説明するための遊星歯車機構の模式的構成図(正面図)であり、(A),(B)は各固定手段の作動時をそれぞれ示している。
【図4】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の伝達トルクを説明するための図であり、(A)はその速度線図、(B),(C)はその歯車機構のギヤ比を説明する図である。
【図5】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の動作を示す模式的な構成図である。
【図6】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の動作を示す模式的な構成図である。
【図7】本発明の第1実施形態としての車両用駆動力調整装置の伝達トルクを説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図9】(A),(B)はいずれも本発明の第2実施形態としての車両用駆動力調整装置の歯車機構のギヤ比を説明する図である。
【図10】本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図11】本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図12】本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図13】(A),(B)はいずれも本発明の第3実施形態としての車両用駆動力調整装置の歯車機構のギヤ比を説明する図である。
【図14】本発明の第4実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図15】(A),(B)はいずれも本発明の第4実施形態としての車両用駆動力調整装置の歯車機構のギヤ比を説明する図である。
【図16】本発明の第5実施形態としての車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図17】本発明の第5実施形態としての車両用駆動力調整装置の歯車機構のギヤ比を説明する図である。
【図18】第1従来技術の車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図19】第1従来技術の車両用駆動力調整装置の伝達トルクを説明するための速度線図である。
【図20】第1従来技術の車両用駆動力調整装置の伝達トルクを説明するための速度線図であり、(A)は差動機構におけるトルクの釣り合いを示し、(B)は3連ギヤ部分におけるトルクの釣り合いを示している。
【図21】第2従来技術の車両用駆動力調整装置を示す模式的な構成図である。
【図22】第2従来技術の車両用駆動力調整装置の伝達トルクを説明するための速度線図である。
【符号の説明】
1 デファレンシャル
6 ケーシングとしてのデファレンシャルキャリア(デフキャリア)
11 左輪側駆動軸
12 右輪側駆動軸
20,21,22,23,24 駆動力調整機構
30A,30B ラビニオ式プラネタリギヤ機構(4要素2自由度型遊星歯車機構)
30C,30D 3連ギヤ式プラネタリギヤ機構(4要素2自由度型遊星歯車機構)
30E プラネタリギヤ機構(4要素2自由度型遊星歯車機構)
31 第3の要素としての第1サンギヤ
32 第4の要素としての第2サンギヤ
33 第1ピニオンギヤ
34 第2ピニオンギヤ
35 第2の要素としてのアニュラスギヤ
38 第1の要素としてのプラネタリキャリア
38A 第1連結手段としての中間部材
39 第2連結手段としての中間部材
40L 第1固定手段(第1ブレーキ)としての第1オイルポンプ
40R 第2固定手段(第2ブレーキ)としての第2オイルポンプ
40a 第1の固定部材
40b 第2の固定部材
40c 第1の回転部材
40d 第2の回転部材
40f 可変調圧バルブ
41 第4の要素としての第1サンギヤ
42 第3の要素としての第2サンギヤ
43 第1ピニオンギヤ
44 第2ピニオンギヤ
45 第1の要素としてのアニュラスギヤ
48 第2の要素としてのプラネタリキャリア
48A 第2連結手段としての第1中空軸
49 第1連結手段としての中間部材
51 第2の要素としての第1サンギヤ
52 第1の要素としての第2サンギヤ
52A 第1連結手段としての歯車本体
53 第4の要素としての第3サンギヤ
54 第1ピニオンギヤ
55 第2ピニオンギヤ
56 第3ピニオンギヤ
57 第2連結手段としての第1中空軸
59 第3の要素としてのプラネタリキャリア
61 第1の要素としての第1サンギヤ
61A 第1連結手段としての歯車本体
62 第2の要素としての第2サンギヤ
63 第3の要素としての第3サンギヤ
64 第1ピニオンギヤ
65 第2ピニオンギヤ
66 第3ピニオンギヤ
67 第2連結手段としての第1中空軸
69 第4の要素としてのプラネタリキャリア
71,72 カウンタギヤ機構
71B,72B プラネタリギヤ(カウンタギヤ)
81 第2の要素としての第1サンギヤ
82 第3の要素としての第2サンギヤ
83 第1インナピニオンギヤ
84 第2インナピニオンギヤ
85 アウタピニオンギヤ
86 第1の要素としてのアニュラスギヤ
88 第4の要素としてのプラネタリキャリア
89 第1連結手段としての中間部材
81A 第2連結手段としての第1中空軸
91,92 カウンタギヤ機構
91B,92B プラネタリギヤ(カウンタギヤ)

Claims (8)

  1. エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、
    該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、
    該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、
    該駆動力調整機構は、
    4要素2自由度型遊星歯車機構と、
    該遊星歯車機構を収容するケーシングと、
    該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、
    該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、
    該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、
    該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、
    該第1固定手段は、
    該第3の要素に連結された第1回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第1固定部材と、
    該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成され、
    該第2固定手段は、
    該第4の要素に連結された第2回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第2固定部材と、
    該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成されるとともに、
    該遊星歯車機構は、
    互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤと、
    該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤと、
    該第2サンギヤ及び該第1ピニオンギヤに噛合する第2ピニオンギヤと、
    該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、
    該第2ピニオンギヤに噛合するアニュラスギヤとから構成されている
    ことを特徴とする、車両用駆動力調整装置。
  2. 該遊星歯車機構の該第1の要素が該キャリアと該アニュラスギヤとのいずれか一方であり、
    該遊星歯車機構の該第2の要素が該キャリアと該アニュラスギヤとのいずれか他方であり、
    該遊星歯車機構の該第3の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか一方であり、
    該遊星歯車機構の該第4の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか他方である
    ことを特徴とする、請求項1記載の車両用駆動力調整装置。
  3. エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、
    該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、
    該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、
    該駆動力調整機構は、
    4要素2自由度型遊星歯車機構と、
    該遊星歯車機構を収容するケーシングと、
    該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、
    該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、
    該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、
    該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、
    該第1固定手段は、
    該第3の要素に連結された第1回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第1固定部材と、
    該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成され、
    該第2固定手段は、
    該第4の要素に連結された第2回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第2固定部材と、
    該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段とから構成されるとともに、
    該遊星歯車機構は、
    互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤ及び第3サンギヤと、
    該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤ及び該第2サンギヤに噛合する第2ピニオンギヤ及び該第3サンギヤに噛合する第3ピニオンギヤと、
    該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤ及び該第3ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、から構成され、
    該第1ピニオンギヤと該第2ピニオンギヤと該第3ピニオンギヤとが互いに連結されている
    ことを特徴とする、車両用駆動力調整装置。
  4. 該遊星歯車機構の該第1の要素が該第1サンギヤであり、
    該遊星歯車機構の該第2の要素が該第2サンギヤであり、
    該遊星歯車機構の該第3の要素が該第3サンギヤであり、
    該遊星歯車機構の該第4の要素が該キャリアである
    ことを特徴とする、請求項3記載の車両用駆動力調整装置。
  5. エンジンからの駆動力が入力される差動機構と、
    該差動機構を介して該駆動力が入力される2本の駆動軸と、
    該両駆動軸へ駆動力を分配調整しうる駆動力調整機構とを有する車両用駆動力調整装置において、
    該駆動力調整機構は、
    4要素2自由度型遊星歯車機構と、
    該遊星歯車機構を収容するケーシングと、
    該遊星歯車機構の第1の要素を該両駆動軸のうちの一方に連結する第1連結手段と、
    該遊星歯車機構の第2の要素を該差動機構に連結する第2連結手段と、
    該遊星歯車機構の第3の要素を該ケーシングに固定しうる第1固定手段と、
    該遊星歯車機構の第4の要素を該ケーシングに固定しうる第2固定手段と、をそなえ、
    該第1固定手段は、
    該第3の要素に連結された第1回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第1固定部材と、
    該第1回転部材と該第1固定部材との間に介在して、該第1回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段と、から構成され、
    該第2固定手段は、
    該第4の要素に連結された第2回転部材と、
    該ケーシング側に固定された第2固定部材と、
    該第2回転部材と該第2固定部材との間に介在して、該第2回転部材に回転抑制のためのブレーキ力を与えるブレーキ力付与手段と、から構成され、
    該遊星歯車機構は、
    互いに同軸上に配置されてそれぞれ別個に回転しうる第1サンギヤ及び第2サンギヤと、
    該第1サンギヤに噛合する第1ピニオンギヤと、
    該第2サンギヤに噛合する第2ピニオンギヤと、
    該第1ピニオンギヤ及び該第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアと、を有して構成され、
    該遊星歯車機構の該第3の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか一方であり、該遊星歯車機構の該第4の要素が該第1サンギヤと該第2サンギヤとのいずれか他方である
    とを特徴とする、車両用駆動力調整装置。
  6. 該第1固定手段及び該第2固定手段のうちの少なくとも一方の固定手段はオイルポンプにより構成され、
    該オイルポンプで駆動される作動油が、該一方の固定手段を構成する該第1ブレーキ力付与手段又は該第2ブレーキ力付与手段として用いられ、
    該一方の固定手段は、さらに該オイルポンプからの吐出量を制御する吐出量制御手段を有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用駆動力調整装置。
  7. 該第1固定手段及び該第2固定手段のうちの少なくとも一方の固定手段は電動モータにより構成され、
    該電動モータで放電または充電される電流が、該一方の固定手段を構成する該第1ブレーキ力付与手段又は該第2ブレーキ力付与手段として用いられ、
    該一方の固定手段は、さらに該一方の固定手段にそなえられた該固定部材への通電量を制御する通電量制御手段を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用駆動力調整装置。
  8. 該第1回転部材は第1カウンタギヤを介して該第3の要素と連結され、該第2回転部材は第2カウンタギヤを介して該第4の要素と連結されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用駆動力調整装置。
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