JP3612736B2 - 車両騒音低減装置及び制御信号設定方法 - Google Patents

車両騒音低減装置及び制御信号設定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の走行に伴って発生するロードノイズ等の騒音を騒音低減音により低減する装置及び該騒音低減音を発生させるための制御信号を設定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の騒音低減装置では、例えば実開昭61−1739号公報で知られているように、騒音としてのエンジン騒音を低減する場合に、制御手段によりエンジン騒音に関する騒音源信号(リファレンス信号)に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を加振機に入力して該加振機によりエンジン騒音とは逆位相でかつ同振幅の反転音を発生させる一方、上記エンジン騒音を低減すべき箇所にエンジン騒音と加振機からの反転音との合成音を検出する加速度センサを設置し、この加速度センサの出力信号が小さくなるように上記制御手段において制御信号のゲイン調整及び位相調整を行うようにしたものがある。このものでは、上記加速度センサの出力信号が外乱に起因してゲインや位相が収束しなくなった場合に加振機に過大な加振力が生じて安全性が損なわれることを回避するために、上記出力信号の値が所定値以上になったときに制御信号のゲイン調整及び位相調整をやり直すようになされている。
【0003】
一方、本出願人が先に出願したもの(特開平5−232969号公報)では、例えばエンジン騒音を所定箇所において低減するために、該所定箇所でのエンジン騒音を低減させるアンチ騒音を発生するためのスピーカと、上記所定箇所での合成音を検出するマイクロフォンと、このマイクの出力信号をエンジン騒音の周期及びマイク/スピーカ間の音の伝達特性に基づいて補正する制御手段とを備え、この制御手段の制御信号によりスピーカでアンチ騒音を発生させるようにしている。このものでは、マイクの出力信号を利用することでエンジン騒音とのコヒーレンスが良好な制御信号を容易に得られることから、上記制御手段での演算量を従来のLMS(Least Mean Square Method〔=最小二乗法〕)アルゴリズムの数分の1以下に削減して演算時間の大幅な短縮化が図れるという利点がある。
【0004】
これらのものは、何れも騒音とのコヒーレンスが良好な騒音源信号を利用して騒音を低減する、いわゆるフィードフォワード制御による騒音低減装置であり、騒音検出手段の出力信号を効果的に小さくできるものとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両の走行に伴うロードノイズ等のように騒音源が特定できず、かつその騒音が不規則に変化するものである場合には、上記フィードフォワード制御による騒音低減装置では良好な騒音源信号を得ることが難しく、騒音の低減が困難である。
【0006】
したがって、上記のような騒音を低減するには、騒音検出手段の出力信号が小さくなるように制御信号をフィードバック制御するしかないのであるが、このようなフィードバック制御の場合には、音響特性が変化すると不安定になるという問題がある。
【0007】
しかも、車両の場合には、その運転状態が一定であっても、例えばトンネル内とそうでないときや走行路の状態等、外部の環境状態によって騒音自体の特性や車室内での音響特性が特に大きな変化を受けるため、上記従来の技術を基に騒音を効果的に低減するのは一層困難となる。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な騒音源信号を得ることが困難なロードノイズ等の騒音を、車両外部の環境状態が変化した場合でも効果的に低減できるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明では、車両外部の環境状態を検出する検出手段を設け、低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルHと、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいて予め定められたモデル化誤差値Wuと、騒音伝達特性Gと、該騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すために予め定められた騒音低減用しきい値bと、定数Kとが、騒音低減制御を安定させる条件式を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて制御信号を設定するようにし、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定めておいたものであり、上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択するようにすることで、車両外部の環境状態に応じて騒音低減制御の安定化を図りつつ効果的に騒音を低減できるようにした。
【0010】
具体的には、本発明では、車室内に設置されて該設置位置における騒音源からの騒音を検出する騒音検出手段と、この騒音検出手段の出力信号を受け、上記騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性を低下させて乗員に対する騒音を低減するための制御信号を設定する制御手段と、この制御手段からの制御信号を受けて騒音低減音を発生する低減音発生手段とを備えた車両騒音低減装置が前提である。
【0011】
そして、車両外部の環境状態を検出する検出手段を備えるようにする。また、制御手段は、上記低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルHと、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいて予め定められたモデル化誤差値Wuと、上記騒音伝達特性Gと、該騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すために予め定められた騒音低減用しきい値bと、定数Kとが、下記式(1)を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて上記制御信号を設定するように構成されており、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定められたものであり、更に上記制御手段は、上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択するように構成されているものとする。
【0012】
【数3】
Figure 0003612736
(式(1)中、Wp=1/b、‖Q‖ は、クローズドループにおける目標値から制御量までの伝達関数Qの最大のゲインであってsup W ‖Q(jw)‖により定義されるものであり、‖・‖は行列のノルムを表す。)
【0013】
請求項2の発明では、上記請求項1の発明において、検出手段は、車両がトンネル内に入ったことを検出するものとする。また、制御手段は、上記検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値を選択するように構成されているものとする。
【0014】
請求項3の発明では、上記請求項2の発明において、制御手段は、検出手段により車両のトンネル内に入ったことが検出されたときに、車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音が低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成とされているものとする。
【0015】
請求項4の発明では、上記請求項2の発明において、車両がトンネル内外にある状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設ける。そして、制御手段は、上記切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されているものとする。
【0016】
請求項5の発明では、上記請求項2の発明において、検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて車両がトンネル内に入ったことを検出するように構成されているものとする。
【0017】
請求項6の発明では、上記請求項1の発明において、検出手段は、車両の走行路の状態を検出するものとする。また、制御手段は、上記検出手段により検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されているものとする。
【0018】
請求項7の発明では、上記請求項6の発明において、制御手段は、検出手段により走行路悪路であることが検出されたときに、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成とされているものとする。
【0019】
請求項8の発明では、上記請求項6の発明において、走行路の状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設ける。そして、制御手段は、上記切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されているものとする。
【0020】
請求項9の発明では、上記請求項6の発明において、検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて走行路の状態を検出するように構成されているものとする。
【0021】
請求項10の発明では、車室内に設置されて該設置位置における騒音源からの騒音を検出する騒音検出手段を設け、この騒音検出手段の出力信号に基づき、上記騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性を低下させて乗員に対する騒音を低減するための制御信号を設定し、この制御信号を低減音発生手段に出力して騒音低減音を発生させるようにした車両騒音低減装置における上記制御信号の設定方法として、車両外部の環境状態を検出する検出手段を設け、上記低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルを定め、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいてモデル化誤差値を定め、上記騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すための騒音低減用しきい値を定めておき、上記制御音伝達特性モデルHと上記モデル化誤差値Wuと上記騒音伝達特性Gと上記騒音低減用しきい値bと定数Kとが、下記式(1)を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて上記制御信号を設定するようにし、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定めておいたものであり、上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択するようにする。
【0022】
【数4】
Figure 0003612736
(式(1)中、Wp=1/b、‖Q‖ は、クローズドループにおける目標値から制御量までの伝達関数Qの最大のゲインであってsup W ‖Q(jw)‖により定義されるものであり、‖・‖は行列のノルムを表す。)
【0023】
請求項11の発明では、上記請求項10の発明において、検出手段は、車両がトンネル内に入ったことを検出するものであり、上記検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値を選択する。
【0024】
請求項12の発明では、上記請求項11の発明において、検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときに車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音が低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する。
【0025】
請求項13の発明では、上記請求項11の発明において、検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて、車両がトンネル内に入ったことを検出するように構成されているものとする
【0026】
請求項14の発明では、上記請求項10の発明において、検出手段は、車両の走行路の状態を検出するものであり、上記検出手段により検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値を選択する。
【0027】
請求項15の発明では、上記請求項14の発明において、検出手段により走行路が悪路であることが検出されたときには、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する。
【0028】
請求項16の発明では、上記請求項14の発明において、検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて走行路の状態を検出するように構成されているものとする
【0029】
【作用】
請求項1又は10の発明では、車室内において、騒音検出手段により騒音源からの騒音が検出される。そして、上記騒音検出手段の出力信号を受けた制御手段により制御信号が設定され、該制御信号を受けた低減音発生手段により騒音低減音が発生される。この騒音低減音により、上記騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性が低下され、このことで、乗員への騒音が低減される。このとき、上記制御手段では、制御音伝達特性モデルHとモデル化誤差値Wuと騒音伝達特性Gと騒音低減用しきい値bと定数Kとが、式(1)を満たすように定数Kが求められ、この定数Kと騒音検出手段の出力信号とに基づいて制御信号が設定される。すなわち、上記制御音伝達特性モデルが用いられることにより、騒音検出手段の設置位置における騒音低減音の騒音に対する低減効果が高められる。また、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値が考慮されることにより、騒音発生手段の出力信号が小さくなるように制御信号をフィードバック制御する際の外乱に対する安定性が確保される。
【0030】
さらに、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、車両外部の環境状態を検出する検出手段により検出される該環境状態に対応して予め複数定めておいたものであり、制御手段では、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値が選択される。これにより、車両外部の環境状態の変化に応じて効果的に騒音を低減することができる。
【0031】
請求項2又は11の発明では、車両トンネル内に入ったことが上記検出手段により検出される。そして、制御手段において、車両がトンネル内に入ったことが検出されたときとそうでないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値が選択される。したがって、車両がトンネルに入ったときと、そうでないときとでの騒音伝達特性の変化が補償され、効果的に騒音が低減される。
【0032】
請求項3又は12の発明では、上記検出手段により車両トンネル内に入ったことが検出されたときに、車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値が選択される。よって、トンネル内に入ったときに生じる高い周波数帯域での騒音のピークが効果的に低減される。
【0033】
請求項4の発明では、上記車両のトンネル内外にある状態は、切換手段により切り換えて手動入力される。そして、この切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値が選択される。よって、トンネル内外に対応する騒音低減用しきい値は、乗員により任意に選択されることになる
【0034】
請求項5又は13の発明では、上記車両がトンネル内に入ったことは、騒音の周波数特性の変化に基づいて検出手段により検出される。したがって、車両がトンネルに入ったことを検出するための情報が容易に得られる。
【0035】
請求項6又は14の発明では、上記検出手段により、車両の走行路の状態が検出される。そして、検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値が選択される。これにより、車両の走行路に起因して騒音伝達特性が変化する際に、該騒音伝達特性の変化が補償されて騒音が効果的に低減される。
【0036】
請求項7又は15の発明では、上記検出手段により、走行路悪路であることが検出されたときに、選択される騒音低減用しきい値は、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められているので、走行路が悪路であるときに発生する騒音のピークが落とされ、効果的な騒音低減がなされる。
【0037】
請求項8の発明では、上記走行路の状態は、切換手段により手動入力可能に切り換えられる。そして、この切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値が選択される。よって、走行路に対応する騒音低減用しきい値は、乗員により任意に選択されることになる
【0038】
請求項9又は16の発明では、上記走行路の状態が騒音の周波数特性の変化に基づいて検出手段により検出される。したがって、走行路を検出するための情報が容易に得られる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0040】
(実施例1)
図2及び図3は、本発明の実施例1に係る騒音低減装置の全体構成を概略的に示し、この騒音低減装置は、自動車(車両)における各座席の乗員に対するロードノイズ等、数十〜数百Hzの騒音を騒音源信号(リファレンス信号)を用いずに低減するためのものである。
【0041】
同各図において、1は自動車の車体、2は車体1の前後中央部に位置する車室、3,4は車室2を開閉する前後のドアであって、上記車室2内には前後に座席5,6が設置され、前部座席5(図2及び図3のそれぞれ左側の座席)は右側の運転席5a及び左側の助手席5bで、また後部座席6(図2及び図3のそれぞれ右側の座席)は左右2つの後席6a,6aでそれぞれ構成されている。7は、運転席5aの前方位置に設置されたステアリングホイールである。また、9は、車体の左右両側の前後に配置された車輪のホイールである。
【0042】
そして、本実施例1では、運転席5a,助手席5b及び後席6aにおける各ヘッドレスト8の左右何れかの側(着座した乗員の左右何れかの耳に近い位置)がそれぞれ騒音低減箇所とされ、これらの箇所にそれぞれ騒音検出手段としてのマイクロフォン10が1個ずつ合計4個取り付けられ、これらのマイクロフォン10,10,…により車室2内の音を乗員の耳近くで検出するようにしている。一方、上記車体1左右の前側ドア3,3の車室2内側面、及び車室2後端のパッケージトレイ11の左右両側部にはそれぞれ車室2内に騒音低減音を発生させる低減音発生手段としてのスピーカ12,12,…が配置され、これら4個のスピーカ12,12,…はオーディオシステムと兼用されている。
【0043】
上記スピーカ12,12,…及びマイクロフォン10,10,…は、例えば助手席5b側のインストルメントパネル13内に配置したコントローラ14に接続されている。尚、図示はしないが、このコントローラ14による騒音制御システムとオーディオシステムとの作動を切り換えるための操作スイッチが例えば車室2内のルーフ部分に配置されている。そして、上記車室2内での騒音と各スピーカ12から発せられる騒音低減音との合成音を各マイクロフォン10で検出し、そのマイクロフォン10から出力されるマイク信号uをコントローラ14に入力するとともに、各スピーカ12にマイク信号uとは逆位相である制御信号としてのスピーカ信号yを出力することにより、各マイクロフォン10の設置位置で各スピーカ12からの騒音低減音を騒音と干渉させて、各マイクロフォン10により検出される音を低減するようにしている。さらに、上記コントローラ14には、インストルメントパネル13の左右中央に配置した切換手段としてのマニュアルスイッチ15や外界の光量を検出する光センサ24等、各種センサ及びスイッチ類が後述する環境状態検出部を介してそれぞれ接続されている。
【0044】
上記コントローラ14は、図4に詳しく示すように、デジタル信号処理によりマイク信号uを小さくするためのスピーカ信号yを出力する制御手段としてのCPU16(セントラル・プロセシング・ユニット)を有し、該CPU16の入力段には、各マイクロフォン10からのマイク信号uを増幅するマイクアンプ17と、増幅されたマイク信号uの低周波部分(例えば500〜1000Hz以下)を瀘波するローパスフィルタ18と、瀘波されたアナログのマイク信号uをデジタル信号に変換するA/D変換部19とがそれぞれマイクロフォン10,10,…の個数と同じ数だけ順に接続されている。一方、CPU16の出力段には、デジタルのスピーカ信号yをアナログ信号に変換するD/A変換部20と、アナログ信号に変換されたスピーカ信号yの低周波部分を瀘波するローパスフィルタ21と、瀘波されたスピーカ信号yを増幅するスピーカアンプ22とがそれぞれスピーカ12,12,…の個数と同じ数だけ順に接続されている。上記CPU16、A/D変換部19及びD/A変換部20の各作動は、図外のサンプリングクロック発生部で発生したサンプリング周期信号により互いに同期して行われる。
【0045】
上記マイク信号uは、図5に示すようにn個(ここではn=4)のマイク信号u1〜unからなる列ベクトルであり、これらマイク信号u1〜unに基づいて、CPU16に設けられた演算ブロック40の持つ定数Kによりm個(ここではm=4)のスピーカ信号y1〜ymからなる列ベクトルとしてのスピーカ信号yが演算される。上記定数Kは、図6に示すように、A〜Dの4つのマトリクス成分からなる行列であり、その演算処理は、図7に示すフローチャートのように行われる。すなわち、ステップSa1でマイク信号uを入力した後、ステップSa2では、前回のマイク信号xにC成分が乗算された値と、今回のマイク信号uにD成分が乗算された値とを加算して、スピーカ信号yを求める。そして、ステップSa3で上記スピーカ信号yをスピーカ12に出力し、次いでステップSa4に移る。このステップSa4では、前回のマイク信号xにA成分が乗算された値と、今回のマイク信号uにB成分が乗算された値とを加算して、上記ステップSa2で処理する際に前回のマイク信号xとなる値を求め、その後、上記ステップSa1に戻る。
【0046】
本発明の特徴として、上記CPU16は、図1(a)に示すように、スピーカ12からマイクロフォン10に達する騒音低減音の伝達特性をモデル化してなる制御音伝達特性モデルHについて定められたモデル化誤差値Wu(Uncertainty Weight)と、図1(b)に示すように、騒音源Sから上記マイクロフォン10に入ってくる騒音伝達特性Gの低減すべき騒音レベルを示すために定められた騒音低減用しきい値b(Performance Objective)とによりそれぞれ決定される定数Kに基づいてスピーカ信号yを設定するようになされている(尚、説明の簡単化のためにスピーカ12,12,…及びマイクロフォン10,10,…はそれぞれ1個としている)。さらに、図4に示すように、上記コントローラ14は、自動車外部の環境状態を検出する検出手段としての環境状態検出部23を備えていて、この検出部23には上記したような各種環境状態が入力される一方、該検出部23の出力が上記CPU16に入力されるようになっている。そして、上記CPU16では、検出部23により検出された環境状態に基づいて上記モデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bの少なくとも一方を変更し、このことで定数Kを変更して該変更された定数Kに基づきスピーカ信号yを設定するようになっている。
【0047】
具体的には、図8及び図9に示すように、上記制御音伝達特性モデルHは、CPU16からスピーカ信号yを出力した後に該スピーカ信号yによりスピーカ12,12,…がそれぞれ駆動制御されて車室2内の音に変化があり、この音の変化がマイクロフォン10により検出されてそのマイク信号uがCPU16に入力されるまでの音の伝達特性を実際の測定結果H′に基づいてモデル化したものである。そして、その際のモデル化誤差を考慮して、上記演算ブロック40の定数Kを決定する際に誤差量の絶対値|H−H′|に対するモデル化誤差値Wuを定めている。一方、上記騒音伝達特性Gに対し騒音低減用しきい値bを定めておいて、コントローラ14を含むクローズドループの伝達関数のピークを集中的にラインb以下に落とすようになされている。つまり、騒音低減用しきい値Wp(Performance Weight)を、Wp=1/bとすると、全ての周波数に対して、
【数5】
Figure 0003612736
つまり、
【数6】
Figure 0003612736
の関係式が成り立つようにする。そして、これらモデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bを定めることが、上記定数Kを決定してスピーカ信号yを設定することになる。
【0048】
このとき、上記モデル化誤差値Wuと騒音低減用しきい値bとは互いに独立には決められない。例えば、モデル化誤差値Wuを小さくして騒音低減効果を高めようとすると車室2内の音響特性の変化を受け易くなって騒音低減制御が不安定になることから、モデル化誤差値Wuを大きくすると、今度は、騒音低減用しきい値bを下げることができなくなる。そこで、ロバスト制御の1つであるH制御理論においてフィードバック特性の場合の混合感度問題として知られている次式(1)を満たすようなモデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bを選択して定数Kを決定していく。
【0049】
【数7】
Figure 0003612736
(式(1)中、Wp=1/b、‖Q‖ は、クローズドループにおける目標値から制御量までの伝達関数Qの最大のゲインであってsup W ‖Q(jw)‖により定義されるものであり、‖・‖は行列のノルムを表す。)
【0050】
一方、上記検出部23には、上記光センサ24及びマニュアルスイッチ15の他、例えば車載時計や自動車の走行路の状態を検出する図示しない路面センサ等からの各信号が入力されている。そして、この検出部23では、光センサ24及び車載時計からの信号により自動車がトンネル内外のどちらを走行中か、また路面センサからの信号により走行路の状態がそれぞれ検出される。このとき、上記マニュアルスイッチ15は、検出部23の検出結果を手動入力により切り換えることができるようになされている。そして、上記CPU16には、図5に示すように、各々、自動車外部の環境状態に応じたモデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bからなるl個の定数K1〜Klを格納するサブメモリ41が備えられていて、上記検出部23の検出結果に基づいて定数Kを変更するようになされている。
【0051】
ここで、上記定数Kの具体例について説明する。上記モデル化誤差値Wuは、図10に示すように、略同じ周波数特性を持つ2つが予め定められている。そして、上記検出部23による環境状態の検出結果に基づき、制御音伝達特性モデルHに対する誤差成分が増大するときには全体にゲインの大きい同図上側のモデル化誤差値Wuに、また誤差成分が減少するときには下側のモデル化誤差値Wuにそれぞれ変更されるような定数Kが選択される。一方、上記騒音低減用しきい値bは、図11に示すように、50〜200Hz及び150〜400Hzの2箇所にピークが見られる騒音伝達特性Gに対し、略同じ周波数特性を持つ2つが予め定められている。そして、車室2内の騒音レベルの変化に基づいて変更されるように定数Kが選択される。つまり、本実施例1の場合では、モデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bがそれぞれ2つずつ定められているので、サブメモリ41には4種類の定数Kが格納されていることになる。
【0052】
したがって、本実施例1によれば、車室2内の運転席5a、助手席5b及び後席6aにおいて、マイクロフォン10により騒音源Sからの騒音dが検出される。そして、マイク信号uを受けたCPU16によりスピーカ信号yが設定され、このスピーカ信号yを受けたスピーカ12により騒音低減音が発生される。この騒音低減音により、上記騒音源S及びマイクロフォン10間の騒音伝達特性Gが低下され、このことで、乗員への騒音dが低減される。このとき、上記CPU16において制御音伝達特性モデルHが用いられることにより、マイクロフォン10の設置位置での騒音dに対する騒音低減音の低減効果を高めることができる。さらに、上記制御音伝達特性モデルHのモデル化誤差値Wuと騒音伝達特性Gに対する騒音低減用しきい値bとが考慮されていることにより、外乱に対する騒音低減制御の安定性を確保することができる。
【0053】
また、環境状態検出部23により自動車外部の環境状態が検出され、その検出結果に基づいてCPU16によりモデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bの少なくとも一方が変更されるので、環境状態の変化に起因して上記騒音伝達特性Gが変化したり、上記制御音伝達特性モデルHに対する誤差成分が変化したとき等に、騒音低減制御の安定化を図りつつ効果的に騒音dを低減することができる。
【0054】
(実施例2)
図12及び図13は、本発明の実施例2に係る車両騒音低減装置において環境状態の変化に対応する騒音低減用しきい値bをそれぞれ示し、この車両騒音低減装置では、自動車がトンネルに入っているときと、そうでないときとで上記騒音低減用しきい値bが変更される。尚、本実施例2のその他の構成は上記実施例1と同じであるので、同じ部分には同じ符号を付して示し、その説明は省略する。
【0055】
すなわち、本発明の特徴として、検出部23は、自動車がトンネル内に入ったことを検出するようになされている。また、CPU16は、上記検出部23により自動車のトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで騒音低減用しきい値bを変更するように構成されている。これは、トンネル外であれば空気中に拡散し易いタイヤのパターンノイズ等の騒音が、トンネル内では該トンネルの壁面で反射して車室2側に強いレベルで帰って来るために騒音伝達特性Gが変化することへの対策である。さらに、上記検出部23によるトンネル内外についての検出結果は、マニュアルスイッチ15により手動入力可能に切り換えることができるようになされている。
【0056】
具体的には、トンネル外では図12に示す低減騒音レベルの低い騒音低減用しきい値bに変更される一方、トンネル内では図13に示す低減騒音レベルの高い騒音低減用しきい値bに変更される。
【0057】
次に、図14のフローチャートに基づいて、上記騒音低減用しきい値bを変更する処理、つまりCPU16の定数Kを変更する処理について説明する。先ず、ステップSb1で光センサ24及び車載時計からの各信号情報を検出部23に入力する。そして、ステップSb2では、自動車がトンネル外にあることを判定する。判定がYESのときにはステップSb3に移る一方、判定がNOのときにはステップSb4に移る。上記ステップSb3では、CPU16においてK〔トンネル外〕を選択する。これにより、騒音低減用しきい値bが図12のものに変更される。一方、上記ステップSb4ではK〔トンネル内〕を選択し、このことで、騒音低減用しきい値bが図13のものに変更される。尚、上記判定の際に車載時計の信号情報を考慮するのは、夜間に外界が暗い状態をトンネル内と取り違えるのを回避するためである。
【0058】
したがって、本実施例2によれば、検出部23により、自動車がトンネル内に入ったことが検出される。そして、自動車がトンネル内に入ったときとそうでないときとで、CPU16により騒音低減用しきい値bが変更されるので、トンネル内外での騒音伝達特性Gの変化を補償して効果的に騒音を低減することができる。
【0059】
また、上記検出部23による検出結果をマニュアルスイッチ15により切り換えることができるので、トンネル内外での騒音低減用しきい値bを乗員により任意に切り換えることもできる。
【0060】
尚、上記実施例1では、トンネル内に入ったことを車載時計及び光センサ24からの各信号に基づいて検出するようにしているが、マイクロフォン10により検出された騒音の周波数特性を分析し、該周波数特性の変化に基づいて検出するようにしてもよい。
【0061】
(実施例3)
図15及び図16は、実施例3の車両騒音低減装置においてトンネル内外で変更される騒音低減用しきい値bをそれぞれ示し、この車両騒音低減装置では、自動車がトンネルに入ったときに生じる騒音伝達特性Gの特徴的なピークを効果的に低減するようになっている。
【0062】
すなわち、本発明の特徴として、CPU16は、検出部23により自動車のトンネル内に入ったことが検出されたときに、自動車がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音を低減するように騒音低減用しきい値bを変更する構成となっている。
【0063】
具体的には、上記騒音伝達特性Gは一般に50〜200Hz及び150〜400Hzの2箇所にピークを持つが、トンネル外では、図15に示すように車体を振動として車室2内に伝わってくる低い周波数帯域のレベルが高い一方、そうでない高い周波数帯域の騒音は大気中に拡散して低いレベルを示す。したがって、このときには、全体に低くかつ高い帯域側のレベルが低い帯域側よりもさらに低い騒音低減用しきい値bに変更される。これに対し、トンネル内では、図16に示すように、高い周波数帯域での騒音レベルが顕著に高まるので、周波数の高い側のピークを集中的に落とすような騒音低減用しきい値bに変更される。
【0064】
したがって、本実施例3によれば、検出部23により自動車がトンネル内に入ったことを検出されたときに、高い周波数帯域の騒音を低減するようにCPU16により騒音低減用しきい値bが変更されるので、トンネル内に入ったときに生じる高い周波数帯域での騒音のピークを効果的に低減することができる。
【0065】
(実施例4)
図17及び図18は、本発明の実施例4に係る車両騒音低減装置において環境状態の変化に基づいて変更される騒音低減用しきい値bをそれぞれ示し、この車両騒音低減装置では、上記環境状態としての走行路の状態に基づいて騒音低減用しきい値bを変更するようになされている。
【0066】
すなわち、本発明の特徴として、検出部23は、自動車の走行路の状態を検出するようになされている。また、CPU16は、上記検出部23により検出された走行路の状態に基づいて騒音低減用しきい値bを変更するようになっている。これは、走行路が悪路のときでは、良路であるときに比べてロードノイズ等の騒音が強調されることで騒音伝達特性Gが変化することへの対応であって、良路では図17に示す騒音低減用しきい値bに変更される一方、悪路では図18に示す騒音低減用しきい値bに変更される。
【0067】
次に、図19に示すフローチャートに基づいて、騒音低減用しきい値bを変更するための定数Kの変更処理を説明する。先ず、ステップSc1で路面センサからの信号を検出部23に入力する。そして、ステップSc2では、自動車の走行路が良路であることを判定する。判定がYESのときにはステップSc3に移る。一方、判定がNOのときにはステップSc4に移る。上記ステップSc3では、コントローラ14においてK〔良路〕を選択する。これにより、騒音低減用しきい値bが図17のものに変更される。一方、上記ステップSc4ではK〔悪路〕を選択して、図18の騒音低減用しきい値bに変更される。
【0068】
したがって、本実施例4によれば、検出部23により、自動車の走行路の状態が検出される。そして、検出された走行路の状態に基づいて、CPU16により騒音低減用しきい値bが変更される。よって、走行路の状態に起因して騒音伝達特性Gが変化する際に、該騒音伝達特性Gの変化を補償して騒音を効果的に低減することができる。
【0069】
尚、上記実施例4では、路面センサの信号に基づいて走行路の状態を検出するようにしているが、実施例1と同様に騒音の周波数特性を分析するようにし、該周波数特性の変化に基づいて検出してもよい。
【0070】
また、上記実施例4においても、実施例1で述べたように、マニュアルスイッチで手動入力することにより走行路の状態についての検出結果を切り換えることができるようにしてもよい。
【0071】
(実施例5)
図19及び図20は、実施例5に係る車両騒音低減装置において自動車の走行路の状態に基づいて変更される騒音低減用しきい値bをそれぞれ示し、この車両騒音低減装置では、走行路が例えば比較的平坦でかつ大きな凹凸のない砂利道のような粗粒面である悪路のときには、アスファルト道路のような良路のときに比べてピーク付近の騒音がより低減できるようになされる。
【0072】
すなわち、本発明の特徴として、CPU16は、検出部23により走行路の悪路であることが検出されたときに、良路であるときと比べて騒音伝達特性Gにおけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように騒音低減用しきい値bを変更する構成とされている。これは、走行路が粗粒面のときには、低い周波数部分(例えば150Hz付近)のピークが顕著になることに対応するもので、良路のときには図20に示す騒音低減用しきい値bに変更される一方、悪路であるときには図21に示す騒音低減用しきい値bに変更される。
【0073】
したがって、本実施例5によれば、検出部23により、走行路が悪路であると検出されたときに、騒音低減用しきい値bは、良路であるときと比べて騒音伝達特性Gにおけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するようにCPU16により変更されるので、走行路が悪路であるときに発生する騒音のピークを集中的に落として効果的な騒音低減を行うことができる。
【0074】
尚、上記各実施例では、トンネル内外及び走行路の一方の環境状態要因に基づいてのみ騒音低減用しきい値bを変更するようにしているが、複数の環境状態要因に基づいて変更してもよい。
【0075】
また、上記各実施例では、環境状態として、トンネル内外及び走行路のみを例示しているが、騒音伝達特性Gや制御音伝達特性モデルHに対する誤差成分が変化するようなその他の環境状態に基づいて騒音低減用しきい値bを変更してもよい。
【0076】
さらに、上記実施例2〜実施例5では、騒音低減用しきい値bのみを変更するようにしているが、モデル化誤差値Wuのみ又はモデル化誤差値Wu及び騒音低減用しきい値bの両方を変更するようにしてもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は10の発明によれば、車室内に設置されて該設置位置における騒音源からの騒音を検出する騒音検出手段の出力信号に基づき、騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性を低下させて乗員に対する騒音を低減するための制御信号を設定し、この制御信号を低減音発生手段に出力して騒音低減音を発生させるようにした車両騒音低減装置において、車両外部の環境状態を検出する検出手段を設け、低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルHと、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいて予め定められたモデル化誤差値Wuと、騒音伝達特性Gと、該騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すために予め定められた騒音低減用しきい値bと、定数Kとが、騒音低減制御を安定させる条件式を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて制御信号を設定するようにし、上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定めておいたものであり、上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択するようにしたので、良好な騒音源信号を得ることが困難なロードノイズ等の騒音を、環境状態が変化した場合でも効果的に低減することができる。
【0078】
請求項2又は11の発明によれば、上記車両外部の環境状態として、車両がトンネル内に入ったことを検出するようにし、車両がトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値を選択するようにしたので、車両がトンネルに入ったときと、そうでないときとでの騒音伝達特性の変化を補償して効果的に騒音を低減することができる。
【0079】
請求項3又は12の発明によれば、上記車両トンネル内に入ったことが検出されたときに、車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音が低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成としたので、トンネル内に入ったときに生じる騒音の高い周波数帯域でのピークを効果的に低減することができる。
【0080】
請求項4の発明によれば、上記車両がトンネル内外にある状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設け、この切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するようにしたので、トンネル内外での騒音低減用しきい値を乗員により任意に変更することができる。
【0081】
請求項5又は13の発明によれば、上記車両がトンネル内に入ったことを騒音の周波数特性の変化に基づいて検出するようにしたので、車両がトンネルに入ったことの情報を容易に得ることができる。
【0082】
請求項6又は14の発明によれば、上記車両外部の環境状態として、車両の走行路の状態を検出するようにし、検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値を選択するようにしたので、車両の走行路に基づいて騒音伝達特性が変化する際に、該騒音伝達特性の変化を補償して騒音を効果的に低減することができる。
【0083】
請求項7又は15の発明によれば、上記走行路悪路であることが検出されたときに、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成としたので、走行路が悪路であるときに発生する騒音のピークを落として効果的な騒音低減を行うことができる。
【0084】
請求項8の発明によれば、上記走行路の状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設け、この切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するようにしたので、走行路に対応する騒音低減用しきい値を乗員により任意に選択することができる。
【0085】
請求項9又は16の発明によれば、上記走行路の状態を、騒音の周波数特性の変化に基づいて検出するようにしたので、上記走行路についての情報を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る車両騒音低減装置においてスピーカ信号を設定するために定められるモデル化誤差値及び騒音低減用しきい値をそれぞれ示す特性図である。
【図2】車両騒音低減装置の各機器の配置構成を概略的に示す平面図である。
【図3】マイクロフォン及びスピーカの設置位置を示す側面図である。
【図4】コントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】コントローラにおけるCPUの構成を示すブロック図である。
【図6】CPUにおける演算ブロックの構成を示す行列式の図である。
【図7】CPUにおけるスピーカ信号の設定処理動作を示すフローチャート図である。
【図8】車両騒音低減装置の基本構成を示す概略図である。
【図9】車両騒音低減装置の基本構成を示すブロック図である。
【図10】モデル化誤差値の変更状態を示す特性図である。
【図11】騒音低減用しきい値の変更状態を示す特性図である。
【図12】本発明の実施例2に係る車両騒音低減装置におけるトンネル外のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図13】トンネル内のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図14】トンネルの内外に基づく騒音低減用しきい値の変更処理を示すフローチャート図である。
【図15】本発明の実施例3に係る車両騒音低減装置におけるトンネル外のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図16】トンネル内のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図17】本発明の実施例4に係る車両騒音低減装置における良路のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図18】悪路のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図19】走行路に基づく騒音低減用しきい値の変更処理を示すフローチャート図である。
【図20】本発明の実施例5に係る車両騒音低減装置における良路のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【図21】悪路のときの騒音低減用しきい値を示す特性図である。
【符号の説明】
2 車室
10 マイクロフォン(騒音検出手段)
12 スピーカ(低減音発生手段)
15 マニュアルスイッチ(切換手段)
16 CPU(制御手段)
23 環境状態検出部(検出手段)
u マイク信号(出力信号)
y スピーカ信号(制御信号)
S 騒音源
d 騒音
H 制御音伝達特性モデル
Wu モデル化誤差値
G 騒音伝達特性
b 騒音低減用しきい値
定数

Claims (16)

  1. 車室内に設置されて該設置位置における騒音源からの騒音を検出する騒音検出手段と、
    上記騒音検出手段の出力信号を受け、上記騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性を低下させて乗員に対する騒音を低減するための制御信号を設定する制御手段と、
    上記制御手段からの制御信号を受けて騒音低減音を発生する低減音発生手段とを備えた車両騒音低減装置において、
    車両外部の環境状態を検出する検出手段を備え、
    上記制御手段は、上記低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルHと、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいて予め定められたモデル化誤差値Wuと、上記騒音伝達特性Gと、該騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すために予め定められた騒音低減用しきい値bと、定数Kとが、下記式(1)を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて上記制御信号を設定するように構成されており、
    上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定められたものであり、
    更に上記制御手段は、上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
    Figure 0003612736
    (式(1)中、Wp=1/b、‖Q‖ は、クローズドループにおける目標値から制御量までの伝達関数Qの最大のゲインであってsup W ‖Q(jw)‖により定義されるものであり、‖・‖は行列のノルムを表す。)
  2. 請求項1記載の車両騒音低減装置において、
    検出手段は、車両がトンネル内に入ったことを検出するものであり、
    制御手段は、上記検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値を選択するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  3. 請求項2記載の車両騒音低減装置において、
    制御手段は、検出手段により車両トンネル内に入ったことが検出されたときに、車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音が低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成とされている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  4. 請求項2記載の車両騒音低減装置において、
    車両がトンネル内外にある状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設け、
    制御手段は、上記切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  5. 請求項2記載の車両騒音低減装置において、
    検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて車両がトンネル内に入ったことを検出するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  6. 請求項1記載の車両騒音低減装置において、
    検出手段は、車両の走行路の状態を検出するものであり、
    制御手段は、上記検出手段により検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  7. 請求項6記載の車両騒音低減装置において、
    制御手段は、検出手段により走行路悪路であることが検出されたときに、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する構成とされている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  8. 請求項6記載の車両騒音低減装置において、
    走行路の状態を切り換えて手動入力可能な切換手段を設け、
    制御手段は、上記切換手段の出力信号に対応する騒音低減用しきい値を選択するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  9. 請求項6記載の車両騒音低減装置において、
    検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて走行路の状態を検出するように構成されている
    ことを特徴とする車両騒音低減装置。
  10. 車室内に設置されて該設置位置における騒音源からの騒音を検出する騒音検出手段を設け、
    上記騒音検出手段の出力信号に基づき、騒音源及び騒音検出手段間の騒音伝達特性を低下させて乗員に対する騒音を低減するための制御信号を設定し、
    上記制御信号を低減音発生手段に出力して騒音低減音を発生させるようにした車両騒音低減装置における上記制御信号の設定方法であって、
    車両外部の環境状態を検出する検出手段を設け、
    上記低減音発生手段及び騒音検出手段間の音の伝達特性に関して予め行われた測定結果に基づいてモデル化してなる制御音伝達特性モデルを定め、上記測定結果と上記制御音伝達特性モデルとの差の絶対値に基づいてモデル化誤差値を定め、上記騒音伝達特性の低減騒音レベルを示すための騒音低減用しきい値を定めておき、上記制御音伝達特性モデルHと上記モデル化誤差値Wuと上記騒音伝達特性Gと上記騒音低減用しきい値bと定数Kとが、下記式(1)を満たすように定数Kを求めて、該定数Kと上記騒音検出手段の出力信号とに基づいて上記制御信号を設定するようにし、
    上記モデル化誤差値及び騒音低減用しきい値の少なくとも一方は、上記検出手段により検出される環境状態に対応して予め複数定めておいたものであり、
    上記制御信号を設定する際に、上記検出手段により検出された環境状態に対応するモデル化誤差値又は騒音低減用しきい値を選択する
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
    Figure 0003612736
    (式(1)中、Wp=1/b、‖Q‖ は、クローズドループにおける目標値から制御量までの伝達関数Qの最大のゲインであってsup W ‖Q(jw)‖により定義されるものであり、‖・‖は行列のノルムを表す。)
  11. 請求項10記載の制御信号設定方法において、
    検出手段は、車両がトンネル内に入ったことを検出するものであり、
    上記検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときと、検出されないときとで、互いに異なる騒音低減用しきい値を選択する
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
  12. 請求項11記載の制御信号設定方法において、
    検出手段により車両がトンネル内に入ったことが検出されたときに車両がトンネル外にあるときの周波数帯域よりも高い周波数帯域の騒音が低減されるように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
  13. 請求項11記載の制御信号設定方法において、
    検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて車両がトンネル内に入ったことを検出するように構成されている
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
  14. 請求項10記載の制御信号設定方法において、
    検出手段は、車両の走行路の状態を検出するものであり、
    上記検出手段により検出された走行路の状態に対応する騒音低減用しきい値を選択する
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
  15. 請求項14記載の制御信号設定方法において、
    検出手段により走行路が悪路であることが検出されたときには、良路であるときと比べて騒音伝達特性におけるピーク付近の周波数帯域の騒音レベルが低下するように予め定められた騒音低減用しきい値を選択する
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
  16. 請求項14記載の制御信号設定方法において、
    検出手段は、騒音の周波数特性の変化に基づいて走行路の状態を検出するように構成されている
    ことを特徴とする制御信号設定方法。
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