JP3611776B2 - パルス信号発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルス信号発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動している物体の移動位置や移動速度に応じたパルス信号を得たり、種々な操作に応じたパルス信号を発生したりすることは、自動制御の分野や、電気および電子機器等の各種の分野において必要とされている。
【0003】
従来、この種のパルス信号を発生する手段としては、種々なものが開発され使用されてきているが、それらの代表的なものうちの一つとして、電磁/光ピックアップ、ホール/磁気抵抗素子による回転検出装置がある。しかし、電磁式では、停止から低速回転では出力が小さいという問題がある。光ピックアップ式では、広帯域直流増幅器が必要となり、また、防塵構造とする必要があった。また、ホール/磁気抵抗式では、複数の素子と増幅器が必要とされていた。さらにまた、光ピックアップ/ホール/磁気抵抗式は、素子が温度に敏感であり、温度変化の激しい環境で使用するには適していない。
【0004】
したがって、これらの従来の回転検出装置では、例えば、自動車の分野においてエンジンのクランクシャフト、カムシャフトの回転速度や位置を検出する目的で使用しようとする場合において、極低速から高速回転までに亘る検出ができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、極低速から高速回転までに亘る検出素子として適したものとして、例えば、特開2000−101401号公報に開示されているような大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子ワイヤを使用したパルス信号発生装置が開発され種々な分野における用途を見つけ出し始めている。この種のパルス信号発生装置は、前述したような従来技術の問題点を解消することのできるものではあるが、実用化においては、なおも種々の問題を解決するための工夫も必要である。
【0006】
例えば、特開2000−101401号公報に開示された技術では、より良い大バルクハウゼンジャンプを引き起こすに適切な磁界を容易に発生させるような工夫として、セット状態とリセット状態との間の磁性素子ワイヤに印加される磁界の変化幅をできるだけ大きくするという観点から、調整ヨークを磁石の後端面に付加したり、磁性素子ワイヤの長さを磁石+ヨークの長さの半分以下にするとか、1対の磁石の強さに強弱を付けるために磁石の強さや体積や形状等を異ならせるとか、1対の磁石に対する磁性素子ワイヤの相対的な位置関係を異ならせるとか、1対の磁石の一方の側縁から磁性素子ワイヤまでの距離と他方の側縁からの磁性素子ワイヤまでの距離とを異ならせるとか、1対の磁石の軸方向における相対的位置または磁軸の平行度を可変とするとか、1対の磁石に対する磁性素子ワイヤの置き方を変えるとか、等の種々な方法を提案している。
【0007】
ところが、この種のパルス信号発生装置の実用化においては、如何にすれば個品単価を極限まで安くできるか、如何にすれば装置サイズを極限まで小さくできるか、如何にすれば短時間で容易に組立て調整できるか、如何にすれば製品性能のバラツキを小さくできるか、如何にすれば製品歩留まりを良くすることができるか、等が問われるところである。しかし、特開2000−101401号公報に開示された技術は、それらの種々な手段を被検知物体の形状や、大きさ等に応じて適宜組み合わせることで所与の効果を達成することができるとするにとどまるもので、前述したような実用化に際して要求される課題に対する解決策を示すものではない。
【0008】
本発明の目的は、前述したような実用化に際して要求される課題に充分に応えうるようなパルス信号発生装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一つの観点によれば、パルス信号発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記1対の磁界発生手段のうちの一方の磁界発生手段には、前記磁軸方向において位置調整されうる調整ヨークが関連付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の別の観点によれば、パルス信号発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記磁性素子の配置位置は、該磁性素子から前記1対の磁界発生手段のうちの一方の磁界発生手段の前記磁石およびヨークまでの距離と、該磁性素子から他方の磁界発生手段の前記磁石およびヨークまでの距離とが異なるように可変とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、パルス信号発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記磁性素子の配置位置は、該磁性素子から前記1対の磁界発生手段の前記磁石およびヨークの一方の側縁までの距離と、該磁性素子から前記磁石およびヨークの他方の側縁までの距離とが異なるように可変とされていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態および実施例について、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子を使用したパルス信号発生装置の構成を概略的に示している。図1のパルス信号発生装置は、ワイヤ状素子である磁性素子1と、この複合磁性素子1の周りに巻回された検出コイル2と、磁性素子1を間に置き且つ磁極の向きが互いに反対となるようにして配置された1対の永久磁石3および4と、一方の永久磁石3の一方の磁極側、すなわち、S極側に接続された磁性体で形成されたヨーク6と、他方の永久磁石4の一方の磁極側、すなわち、N極側に接続された磁性体で形成されたヨーク7と、一方の永久磁石3とヨーク6とに対して位置調整しうるように配置された磁性体で形成された調整ヨーク8とを備えている。これら1対の磁石3および4の他方の側の磁極3Aおよび4Aは、例えば、歯車5の歯部5A、5B、……5Xである被検知物体の順次の接近に応答して、磁性素子1に印加される磁界を変化させて、磁性素子1に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、検出手段としての検出コイル2に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにする検出部を構成している。なお、ここで使用している磁性素子1の詳細構造および動作については、前述の特開2000−101401号公報等に開示されたように公知のことであるので、ここではこれ以上詳述しない。
【0014】
この実施例では、1対の永久磁石3および4並びにヨーク6および7は、磁性素子1の延在方向と一致した方向に磁軸を有しており、磁性素子1の長さL0は、(磁石+ヨーク)の長さL以下でL/2以上としている。調整ヨーク8は、長さLに比べて短い磁性体のブロック片にて形成されていて、後述するような磁性素子1に作用する磁界を調整するため、磁軸にそって位置調整されうるものとされている。この実施例では、調整ヨーク8は、磁性体ブロックとしたのであるが、永久磁石のブロック片でもよい。
【0015】
次に、図1および図2を特に参照して、このような構成を有するパルス信号発生装置の動作について説明する。先ず、動作原理を分かり易くするために、調整ヨーク8が設けられていない場合について説明しておく。図1の状態においては、歯車5の歯部5Aが一方の永久磁石3のN極3Aに丁度対面した位置にあり、先行する歯部5Xは、他方の永久磁石4のS極4Aとの対面位置から既に外れた位置にあり、この状態で、このパルス信号発生装置は、セット状態になっている。歯車5は、矢印方向に移動しているとし、図2は、歯車5が移動して、歯車5の歯部5Aが他方の永久磁石4のS極4Aと丁度対面する位置にきて、後続の歯部5Bが一方の永久磁石3のN極3Aに未だ対面した位置とはなっていない状態を示している。図2の状態で、このパルス信号発生装置は、リセット状態となり、磁性素子1に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、検出コイル2に1つのパルス信号を発生せしめる。以後、歯車5の歯部が1対の永久磁石3および4の同じ側の磁極3Aおよび4Aの近傍を通過する毎に、そのことを示すパルス信号が検出コイル2に発生されていく。
【0016】
このように、本発明によるパルス信号発生装置によれば、磁性素子1において発生する大バルクハウゼンジャンプによる磁化状態の変化を、検出コイル2にて電磁誘導作用によるパルス電圧として検出するものである。したがって、被検知物体である歯車5の歯部5A、5B等の速度に関係なく、その歯部の存在、不存在に応じて磁性素子1に大バルクハウゼンジャンプが確実に起こされ、それに応じて確実にパルス信号を発生させることができるのである。このように、本発明によれば、被検知物体の速度が極めて遅い場合でも、検出が可能である。パルス信号として発生されるパルス電圧は、常に、一定の電圧、位相関係を保つ。すなわち、本発明によって発生されるパルス電圧の振幅は、被検知物体の速度に関係なく、所定の一定レベルを保ち得るのである。
【0017】
図1および図2を参照して、調整ヨーク8がないとして本発明のパルス信号発生装置の動作について、概略的に前述したのであるが、次に、その動作原理について、より詳細に説明する。図3から図6は、このような動作原理を説明するための概略図であり、図3は、歯車の歯部のような被検知物体が無い時における、1対の永久磁石3および4並びにヨーク6および7の間に配置された磁性素子1に及ぼされる磁界を矢印を用いて示している。図3に示す状態において、上側の永久磁石3と下側の永久磁石4との間に挟まれた磁性素子1が2つの永久磁石の丁度中心に配置されていて、且つ上側と下側の永久磁石の大きさ、強さが同じである場合には、磁性素子1上の磁界は0(零)になる。何故ならば、図3に矢印で示す上側の永久磁石3によって磁性素子1に及ぼされる正方向磁界と、下側の永久磁石4によって磁性素子1に及ぼされる負方向磁界とは、大きさが同じであり、互いに相殺し合うからである。
【0018】
図4は、図1に対応するセット状態を示しており、被検知物体である歯車5の歯部5Aが上側の永久磁石3のN極3Aに丁度対面している時における、1対の永久磁石3および4並びにヨーク6および7の間に配置された磁性素子1に及ぼされる磁界を矢印を用いて示している。図4のセット状態においては、上側の永久磁石3によって磁性素子1に及ぼされる正方向磁界の大きさは、永久磁石3からの磁束の相当部分が磁性体である被検知物体である歯部5Aの方へと流れて分路されてしまうことにより、矢印で示すように小さくなる。一方、下側の永久磁石4のS極4Aには、被検知物体である歯部5Xは対面した状態となっていないので、永久磁石4によって磁性素子1に及ぼされる負方向磁界の大きさは、図3に示した状態と実質的に変わらない。したがって、図4に示すセット状態においては、磁性素子1には、全体として負方向磁界が印加されていることになる。この負方向磁界を、ここでは、第二磁界という。
【0019】
図5は、図2に対応するリセット状態を示しており、被検知物体である歯車5の歯部5Aが上側の永久磁石3のN極3Aとの対面状態から外れ、下側の永久磁石4のS極4Aに丁度対面するようになった時における、1対の永久磁石3および4並びにヨーク6および7の間に配置された磁性素子1に及ぼされる磁界を矢印を用いて示している。図5のリセット状態においては、下側の永久磁石4によって磁性素子1に及ぼされる負方向磁界の大きさは、永久磁石4からの磁束の相当部分が磁性体である被検知物体である歯部5Aの方へと流れて分路されてしまうことにより、矢印で示すように小さくなる。一方、上側の永久磁石3のN極3Aには、被検知物体である歯部5Bは対面した状態から外れているので、永久磁石3によって磁性素子1に及ぼされる正方向磁界の大きさは、図3に示した状態の場合と実質的に変わらない。したがって、図5に示すリセット状態においては、磁性素子1には、全体として正方向磁界が印加されることになる。この正方向磁界を、ここでは、第一磁界という。
【0020】
前述したような図3、図4および図5に示した状態において、磁性素子に印加される磁界をグラフで示すと、図6のようになる。このように第二磁界、第一磁界の順で磁性素子に磁界を与えることにより、磁性素子に大バルクハウゼンジャンプが起きて、パルス信号を発生させることができるのである。図6のように第一磁界、第二磁界を設定する(調整ヨーク8が無い場合)と、第一磁界:第二磁界=1:1であり、より良い大バルクハウゼンジャンプを起こすためには、この関係をN:1とすることが必要である(ここで、Nは1以外の数)。このような関係を作り出すために、本発明のこの実施例では、調整ヨーク8と磁性素子1の位置を限定し、また、調整ヨーク8の位置変更を行えるようにしている。この実施例の如く、調整ヨーク8を、永久磁石3とヨーク6との接続体の長手側面にそって位置変更できるようにしたことにより、磁性素子1に及ぼす磁界の変化を大きくすることができる(調整部材を磁石の後端に付けるより調整幅が広い)ので、調整時間を短縮でき、ひいては製作時間を短くでき、製品の歩留まりも向上させることができる。
【0021】
次に、磁性素子1の位置について説明するに、前述の特開2000−101401号公報に開示された技術においては、磁性素子1を永久磁石の前側(被検知物体側に偏らせて配置するのがより良い大バルクハウゼンジャンプを起こさせるために好ましいとしている。その理由付けについて、図7、図8および図9を参照して説明するに、先ず、この型のパルス信号発生装置においては、正負の交番磁界が必要である。図7および図8に略示するように、被検知物体が移動すると、磁石の中心に置かれた磁性素子上の磁界は、図9に示すように変化する。図7、図8の磁性素子の長さは異なっているが、図9の磁界分布は、図7のように置いた時のものである。また、図9において、0点の磁界幅がL点に比べて大きいのは、被検知物体に近いためである。磁性素子を図7のように置くと、0〜L/2までは、正負の交番磁界を使うことができるが、L/2〜Lの部分は、負正の交番磁界を使うことになり、磁性素子内で磁界がぶつかり合う状況となる。前方か後方のどちらか半分に磁性素子を図8のように置くと磁界がぶつかり合うということはなくなり、また、前方に置いた方が交番磁界の幅が大きくなるので、より良い大バルクハウゼンジャンプを得ることができる。これを数値で説明すると、前方の磁界の大きさ(絶対値)を5、後方の磁界の大きさ(絶対値)を2とすると、前方だけに磁性素子を置いた場合は±5の交番磁界、後方だけに磁性素子を置いた場合は±2の交番磁界、全体においた場合には、前方−後方で±3の交番磁界を受けることになる。したがって、磁性素子は、前方(被検知物体側)に偏らせる方が有利である。
【0022】
また、磁石の幅を広げると、磁石のパワーが上がることと、被検知物体に作用する部分が増えることになり、図10に矢印で示すように磁界の大きさ(絶対値)が大きくなる。すなわち、交番磁界の幅が広がるので、さらに良い大バルクハウゼンジャンプを得ることができるようになる。
【0023】
これと同様の理由により、本発明の如く磁性素子を(磁石+ヨーク)の長さ以下、該長さの半分以上に置くことにより、より良い大バルクハウゼンジャンプを起こしうるものとすることができ、そのため、製品の大きさを小さくでき、個品単価を下げることが可能となるのである。
【0024】
この点に関し、本発明における磁石+ヨークの構造について、図11を参照して詳述すると、図11の上側に示すように、磁石とヨークをつなぐと、ヨークの開放端に極が現われ、一本の磁石のようになる。したがって、磁石とヨークの接続体の側面にそって点線の矢印で示すような側面磁界が発生する。次に、図11の下側に示すように、短めの磁石とヨークをつなぐと、同じように側面の磁界が得られるが、極同志が接近しているため、実線の矢印で示すようにより強い磁界を得ることができる。ここで、磁性素子の体積は、そのままパワー源と考えてよく、またその最適値もある。換言すると、磁性素子の長さは一定ということになる。これらのことを図12を参照して説明する。図12において、点線で示す曲線は、長い磁石が作った交番磁界を示し、実線で示す曲線は、短い磁石が作った交番磁界を示している。図12のように配置された磁性素子は、点線で示す交番磁界についてはその磁界を有効に使っているということができ、実線で示す交番磁界についてはその強い磁界を使っているということができる。点線で示す交番磁界の絶対値を3と1と置き、実線で示す交番磁界の絶対値を5と2と置くと、磁性素子は、点線で示す交番磁界については3−0で3の交番磁界を利用し、実線で示す交番磁界については5−2で3の交番磁界を利用するということになり、どちらも変わらないことになる。
【0025】
なお、前述した実施例では、永久磁石3およびヨーク6と永久磁石4およびヨーク7との間の離間距離Dは、固定のものとして説明したが、この離間距離Dは、可変のものとしておくこともできる。離間距離Dを可変としておくことにより、例えば、歯車の歯部のピッチ等が異なる被検知物体にも容易に対応させて、それらに応じたパルス信号を正確に発生することができるように調整することができる。
【0026】
また、前述した実施例では、磁性素子1としてワイヤ状素子を使用したのであるが、本発明は、これに限らず、種々な形の磁性素子を使用することができ、例えば、薄膜状、厚膜状または板状の磁性素子を使用することもできる。このように、磁性素子として薄膜状、厚膜状または板状素子を使用した場合には、検出コイル2も平面コイルとすることも考えられる。さらにまた、前述したような磁性素子に代えて、単層の磁性素子を使用することもできる。
【0027】
さらにまた、前述した実施例では、検出手段は、コイルとしたのであるが、これは、ホール素子、MR素子、共振回路等、他の同様の手段に置き換えることができる。
【0028】
さらにまた、前述した実施例では、磁性素子に良好な大バルクハウゼンジャンプを引き起こせしめるに適切な磁界を作用させるために、調整ヨークを用いたのであるが、本発明は、これに限らず、次のような手段にて同様の効果を得ることができる。
【0029】
先ず、1対の磁石3およびヨーク6と磁石4およびヨーク7とに対する磁性素子1の相対的な位置関係を異ならせる。図13に示すように、磁石3から磁性素子1までの距離Aと磁石4から磁性素子1までの距離Bとを異ならせ、しかも、これらAおよびBを可変なものとできるようにしておく。
【0030】
次に、図14に示すように、磁石3およびヨーク6並びに磁石4およびヨーク7の一方の側縁から磁性素子1までの距離C、磁石3およびヨーク6並びに磁石4およびヨーク7の他方の側縁から磁性素子1までの距離D、磁性素子1の端部とヨーク6、7の端部との間の距離Eを可変とすることができるようにしておく。
【0031】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、パルス信号発生装置の個品単価を安くでき、装置サイズを小さくでき、短時間で容易に組立て調整でき、製品性能のバラツキを小さくでき、製品歩留まりを良くすることができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としてのパルス信号発生装置の構成を概略的に示し、セット状態にあるところを示す図である。
【図2】図1のパルス信号発生装置のリセット状態にあるところを示す図1と同様の概略図である。
【図3】図1のパルス信号発生装置の動作原理を調整ヨークがないものとして説明するための原理図である。
【図4】図1のパルス信号発生装置の動作原理を調整ヨークがないものとして説明するための図1に対応する原理図である。
【図5】図1のパルス信号発生装置の動作原理を調整ヨークがないものとして説明するための図2に対応する原理図である。
【図6】図3、図4および図5に示した状態において、磁性素子に印加される磁界を示す図である。
【図7】より良い大バルクハウゼンジャンプを起こさせるに好ましい磁性素子の配置位置について説明するための図である。
【図8】より良い大バルクハウゼンジャンプを起こさせるに好ましい磁性素子の配置位置について説明するための図である。
【図9】図7および図8の磁性素子上の磁界分布を示す図である。
【図10】磁石の幅を広げることにより磁界の大きさが大きくなることを説明するための図である。
【図11】磁石とヨークとの接続体によって発生される側面磁界の強さについて説明するための図である。
【図12】図11の磁石とヨークとの接続体によって生じる側面磁界を示す図である。
【図13】本発明のパルス信号発生装置における別の調整手段を説明するための図である。
【図14】本発明のパルス信号発生装置におけるさらに別の調整手段を説明するための図である。
【符号の説明】
1 磁性素子
2 検出コイル
3 永久磁石
3A N極
4 永久磁石
4A S極
5 歯車
5A 歯部
5B 歯部
5X 歯部
6 ヨーク
7 ヨーク
8 調整ヨーク
Claims (3)
- 大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記1対の磁界発生手段のうちの一方の磁界発生手段には、前記磁軸方向において位置調整されうる調整ヨークが関連付けられていることを特徴とするパルス信号発生装置。
- 大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記磁性素子の配置位置は、該磁性素子から前記1対の磁界発生手段のうちの一方の磁界発生手段の前記磁石およびヨークまでの距離と、該磁性素子から他方の磁界発生手段の前記磁石およびヨークまでの距離とが異なるように可変とされていることを特徴とするパルス信号発生装置。
- 大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子と、該磁性素子に生ずる大バルクハウゼンジャンプに応答しうる位置に配置され該磁性素子に生じた大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生する検出手段と、磁石および該磁石の磁軸方向における一端に接続され該磁軸方向に延びるヨークからなる磁界発生手段の1対とを備えており、該1対の磁界発生手段は、互いに反対の磁極が対向するようにして並置されており、前記磁性素子は、前記並置された1対の磁界発生手段の間において前記磁軸方向に延在するように置かれており、前記1対の磁界発生手段の同じ側の磁極は、磁性体である被検知物体を検出する検出部を構成しており、該検出部は、前記同じ側の磁極の一方ずつに順次に被検知物体が接近することに応答して、前記磁性素子に印加される磁界を変化させて、前記磁性素子に大バルクハウゼンジャンプを生ぜしめて、前記検出手段に該大バルクハウゼンジャンプに応じたパルス信号を発生せしめるようにし、前記磁性素子の前記延在する方向における長さは、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さ以下で且つ該長さの半分以上の長さであり、前記磁性素子の前記延在する方向における長さの中心点は、前記磁界発生手段の前記磁軸方向における長さの中心点に対して、前記検出部の側にずれており、前記磁性素子の配置位置は、該磁性素子から前記1対の磁界発生手段の前記磁石およびヨークの一方の側縁までの距離と、該磁性素子から前記磁石およびヨークの他方の側縁までの距離とが異なるように可変とされていることを特徴とするパルス信号発生装置。
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