JP3610884B2 - トランス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、通信機や各種電源に用いられるトランスに関し、特に、磁心の形状を工夫することによって小型化および薄型化を図ることのできるトランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8(A)、(B)は、実開平6−70223号公報や実開平6−55222号公報等に開示されている様な従来のトランスの正面断面図、平面断面図をそれぞれ示している。同図において、コイル3は、中足2の周囲に配置した円筒状の外足1の内側に収納されるようになっている。また、従来から、E型コア(磁心)とE型コアを組み合わせたり、E型コアとI型コアとを組み合わせて、その中足にコイルを巻くトランスも使用されている。このようなトランスの構成では、トランスの寸法がコイルの外形寸法にコアの外足の寸法を加えたものとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コイルの外形寸法にコア外足の寸法を加えた大きさとなる従来の構造では、トランス全体の投影面積が、コイルの投影面積よりもかなり大きくなり、そのためトランスの小型化および薄型化を十分に図ることができない不都合があった。
【0004】
この発明の目的は、磁心にコイルを実装する時のデッドスペースができるだけ小さくなるようにして、トランスの小型化および薄型化を図ることのできるトランスを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために次のように構成されている。
【0006】
(1)多角形平板上の中央部に中足を、複数の隅部に外足を立設し、
前記中足と前記外足に挟まれた部分を巻線を収納する巻わくとする第1の磁心と
該第1の磁心に重ねて一体化される第2の磁心を備え、
平面にスパイラル状に巻回した平面コイルを、
前記巻わく部に積み重ねて挿入してなるトランスにおいて、
前記中足の断面形状を円、楕円または長円とし、
前記中足の断面外周形状の曲線部分は前記巻わく外周形状の曲線部分の一部と同心円弧とし、
前記巻わく外周は磁心外形の各辺部分で最も接近あるいは接し、前記磁心外形の各辺における前記巻わく外周が最も接近あるいは接した部分に開口部を設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、第1の磁心と第2の磁心とを重ねてその間にコイルを収納することによってトランスを構成する。また、第1の磁心を、多角形平板上の中央部に中足を、複数の隅部に外足を立設し、前記中足と前記外足に挟まれた部分を巻線を収納する巻わくとする。このようにすると、コイルを平面状に巻いて巻わくに収納した場合、その隅の部分に外足が位置することになり、結果としてデッドスペースが小さくなりトランス全体の投影面積が小さくなる。
【0008】
また、中足を円、楕円、または長円形状にすることにより、コイルの中心部が隙間なく嵌入されるようになり、デッドスペースをさらに少なくできる。
【0009】
同様に、中足の断面外周形状の曲線部分は前記巻わく外周形状の曲線部分の一部と同心円弧とし、前記巻わく外周は磁心外形の各辺部分で最も接近あるいは接するように構成することで、トランスの投影面積を最小にできる。
【0010】
また、コイルの引き出し線を、上記巻わくの外周が第1の磁心の各辺と接する部分の開口部から引き出すことによって、引き出し線を通過させるための開口部を別途設ける必要がなくなる。
【0011】
さらに、平面コイルの複数の引き出し線を、前記第一の磁心の同一直線方向上にない異なる開口部より引き出すことにより、トランスの配置の自由度が高くなる。
【0012】
(2)前記第2の磁心の形状を平板形状とする。
【0013】
この発明では、平面状に巻いたコイルを第1の磁心の内部に形成される巻わくに収納するものであるが、第1の磁心内に巻わくの全体を構成することによって、第2の磁心を平板形状にすることができる。また、第1の磁心と第2の磁心を同一形状にして双方に巻わくの一部を構成することも可能である。このようにすると、部品の種類を1つ減らすことができる。
【0014】
また、巻わくの厚さよりも巻わくの巻幅を大きくしてトランス形状を平面状にすることによって、トランスの低背化に寄与することができる。
【0015】
(3)中足の断面の周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積を該中足断面の面積に対して略同一または大きくしたり、若しくは、外足断面の面積の総和が、前記中足の断面の面積に対して略同一または大きくなるようにしたり、または、外足の断面の周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積の内、内側に面している部分の面積の総和が、前記中足断面の面積に対して略同一または大きくする。
【0016】
このように構成することで、磁心の他の部分での磁束集中によるインダクタンスの低下を抑制することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の実施形態であるトランスの分解斜視図である。
【0018】
この実施形態のトランスは、第1の磁心10と、この上に重ねられて一体化される第2の磁心11と、第1の磁心10内に3層に積み重ねられて挿入されるコイル12とで構成される。
【0019】
第1の磁心10は、例えばフェライトからなり、矩形状の平板10aと、この平板10aの4隅に立設される外足10bと、中央部に立設される中足10cとで構成される。各外足10bは、平面断面が略L字状の形状を有し、その内側は円弧面10dとなっている。なお、この実施形態では、平板10aとして矩形形状のものを使用したが、平板10aとしては矩形ではなく、多角形であればよい。
【0020】
中足10cは、この例では平面断面形状が長円形状である。この形状は、後述のコイルの中心部に設けられる中心孔と略同一である。したがって、中足10cの断面形状が円形であれば、このコイルの中心孔は円形にされ、中足10cの断面形状が楕円であればこのコイルの中心孔も楕円形状にされる。また、磁心の巻わく外周形状の曲線部分の一部は前記中足10cの外周部の曲線部分と同心円弧となるように曲率が決められている。また外足10bの内側の面10dの形状はこの巻わく外周形状により決定される。
【0021】
第2の磁心11は、この実施形態では平板であって、第1の磁心10と同様のフェライトなどで形成される。
【0022】
以上の構成において、第1の磁心10には、各外足10bの内側の円弧面10dと、中足10cの外周とで形成される空間部に巻わく部10eが形成される。この巻わく部10eに、3段重ねのコイル12が積み重ねて挿入される。
【0023】
コイル12(12a、12b、12c)は、自己融着3層絶縁線を用い、これを同一平面状でスパイラル状に巻回したものであって、中心部には第1の磁心10の中足10cの形状に合っている長円形状の孔12d、12e、12fが形成されている。このコイルを3段重ねにして上記巻わく部10eに積み重ねて挿入し、一部を一次巻線、残りを二次巻線として使用する。3層絶縁線を用いているためトランスの一次、二次間の絶縁構造を容易に得ることができる。また、一次、二次の各巻線を交互に積み重ねることによって結合度を高くすることも容易である。なお、この実施形態ではコイル12は3段重ねであるが重ねるコイルの数は限定していない。
【0024】
また、図2(A)、(B)は、それぞれ、第1の磁心10の平面図、第1の磁心10上に第2の磁心11を重ねた状態での断面図を示しているが、同図に示すように、この実施形態では巻わく部10eの厚さBより、この巻わく部10eの巻幅Aの方が大きくなっている。これにより、トランス全体の低背化を実現できる。また、図2(A)に示すように、巻わく部10eの外形線10fが、第1の磁心10の各辺と接するように、該第1の磁心の形状が決められている。このようにすることで、デッドスペースを最小にすることができる。
【0025】
図3は、この発明の実施形態の上述のトランスと従来のトランスとを対比する図である。同図(A)は、この発明の実施形態のトランスの第1の磁心の平面図であり、同図(B)は従来のトランスの同様の部分を示している。同図(A)において、点線で示す領域は巻わく部10eの外形線10fであり、この巻わく部10eにコイル12が積み重ねて挿入される。一方、図3(B)に示す従来のトランスにも同じ形状のコイルが積み重ねて挿入されるものとすると、従来のトランスでは、その幅が、図面上その上下に配置される外足10b’の幅の分だけ、この発明の実施形態のトランスよりも長くなる(C’>C)。これにより、図3(A)に示すこの発明の実施形態のトランスでは、従来のトランスに対し、小型化および薄型化を図ることができる。
【0026】
さらに、図1に示す構造では、コイル12の配置構造および第1の磁心10の構造が対称であるために、磁心における磁束分布が均一となり、漏れ磁束が低減できて、EMIノイズを低減することができる。さらに、コイルと磁心が平面で接触あるいは接近して配置されるために、熱分布が平面に均一化され、トランス内のいかなる部分にもヒートスポットができにくいという利点がある。
【0027】
なお、上記に示すコイル12は、1本の自己融着3層絶縁層を巻回して構成されるが、図4に示すように、2本以上の線12g、12hを平行して平面状に巻回してもよい。また、図1に示す例では、第2の磁心11を平板としたが、図5に示すように、第1の磁心10と第2の磁心11を同じ構造体とすることもできる。すなわち、第2の磁心11にも、矩形平板11aの4隅に外足11bを立設し、中央部に中足11cを立設する。そして、第1の磁心10と第2の磁心11を突き合わせて、その内側に巻わく部を形成する。このようにすると、部品数を1つ減らせることができる。なお、トランス全体の低背化が損なわれないよう、第1の磁心10と第2の磁心11の厚さをそれぞれ低く設定することが必要である。
【0028】
図6(A)、(B)は、それぞれ、第1の磁心10の平面図と斜視図を示している。
【0029】
ここで、同図において、1つの外足10bの平面方向断面の面積をSa、同外足の断面周囲長さと、前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積の内側に面している部分の面積をSb、中足10cの平面方向断面の面積をSc、同中足10cの断面周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積をSdとすると、以下の(a)、(b)、(c)の条件を具備することで、中足10c以外の部分での磁束集中によるインダクタンスの低下を抑制することができる。
【0030】
(a) 中足10cの断面周囲長さと、前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積Sdが、中足10cの平面方向断面の面積Scに対し略同一または大きい(Sd≧Sc)。
【0031】
(b) 外足10bの平面方向断面の面積Saの総和が、中足10cの平面方向断面の面積Scに対し略同一または大きい(Sa×外足の数≧Sc)。
【0032】
(c) 外足10bの断面周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積内側に面している部分の面積Sbの総和が、中足10cの平面方向断面の面積Scに対し略同一または大きい(Sb×外足の数≧Sc)。
【0033】
図7は、この発明の他の実施形態のトランスを示している。
【0034】
図1に示すトランスでは、コイル12の引き出し線をすべて平行に取り出すようにしているが、図7に示す例では、各トランスの引き出し線を垂直に取り出すようにしている。前記巻わく外周と、多角形である磁心外形の近接、あるいは接する位置に設けた開口部のうち必要に応じた開口部から引き出すことでトランスの配置の自由度を大きくすることができる。
【0035】
【発明の効果】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0036】
(1) 第1の磁心の中足を円、楕円、または長円とし、巻わく外周をこれと同形状とし、巻わく外周と磁心外形の各辺が近接、あるいは接する様にすることにより、デッドスペースが小さくなりトランス全体の投影面積が小さくなる。このため、実装上のデッドスペースをほとんどなくすことができ、実装効率の向上と、小型化、薄型化を実現することができる。
【0037】
(2) 中足の平面方向断面の面積を全磁路のなかで最小とすることで、磁心の他の部分での磁束集中によるインダクタンスの低下を抑制することができる。
【0038】
(3) コイルの引き出し線を同一直線方向上にない開口部から引き出すことによって、トランス配置の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態であるトランスの分解斜視図
【図2】(A)、(B)は、それぞれ、第1の磁心の平面図と、第1および第2の磁心の断面図
【図3】(A)、(B)は、それぞれ、この発明の実施形態のトランスと従来のトランスとの対比図
【図4】コイルの他の例の平面図
【図5】この発明の他の実施形態のトランスの縦断面図
【図6】(A)、(B)は、それぞれ、第1の磁心の平面図と斜視図
【図7】この発明の他の実施形態のトランスの外観図
【図8】(A)、(B)は、従来のトランスの正面図、平面図
【符号の説明】
10−第1の磁心
10a−矩形状平板
10b−外足
10c−中足
10d−外足の円弧面
10e−巻わく部
11−第2の磁心
12−コイル
Claims (10)
- 多角形平板上の中央部に中足を、複数の隅部に外足を立設し、
前記中足と前記外足に挟まれた部分を巻線を収納する巻わくとする第1の磁心と
該第1の磁心に重ねて一体化される第2の磁心を備え、
平面にスパイラル状に巻回した平面コイルを、
前記巻わく部に積み重ねて挿入してなるトランスにおいて、
前記中足の断面形状を円、楕円または長円とし、
前記中足の断面外周形状の曲線部分は前記巻わく外周形状の曲線部分の一部と同心円弧とし、
前記巻わく外周は磁心外形の各辺部分で最も接近あるいは接し、前記磁心外形の各辺における前記巻わく外周が最も接近あるいは接した部分に開口部を設けたことを特徴とするトランス。 - 前記平面コイルの複数の引き出し線を、前記第1の磁心の同一直線方向上にない異なる開口部より引き出したことを特徴とする、請求項1に記載のトランス。
- 前記第2の磁心は平板形状である、請求項1または2に記載のトランス。
- 前記第2の磁心は、前記第1の磁心と同一形状である、請求項1または2に記載のトランス。
- 前記巻わく部の厚さより該巻わく部の巻幅が大きく、トランス形状を平面状とした、請求項1〜4のいずれかに記載のトランス。
- 前記中足の断面の周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積が該中足断面の面積に対して略同一または大きい、請求項1〜5のいずれかに記載のトランス。
- 前記外足断面の面積の総和が、前記中足の断面の面積に対して略同一または大きい、請求項1〜6のいずれかに記載のトランス。
- 前記外足の断面の周囲長さと前記多角形平板の厚みとの積で決まる面積の内、内側に面している部分の面積の総和が、前記中足断面の面積に対して略同一または大きい、請求項1〜7のいずれかに記載のトランス。
- 前記コイルは、自己融着三層絶縁線を巻いて構成される、請求項1〜8のいずれかに記載のトランス。
- 前記コイルは、2本以上の線を並行して平面状に巻いて構成される、請求項1〜9のいずれかに記載のトランス。
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