JP3610515B2 - 重合性スークロースエステル及びその製造方法 - Google Patents

重合性スークロースエステル及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスークロースにおいて、その2位、3’位の何れか1つの2級水酸基に重合性置換基を配した重合性スークロースエステル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
糖の分岐を有する高分子を合成するには、糖の特定の水酸基に対していかに選択的に重合性置換基を導入できるかが問題となる。スークロース含有ポリマーとしては酵素合成により得られたスークロースアクリレートモノマーを重合させることによりスークロースベースの高分子が得られることが報告されている[Macromolecules,vol.24,p3462−3463(1991)]。この場合、エステル化は1級水酸基に生じることが多く、糖に多数存在する2級水酸基の特定の位置をエステル化する報告は少ない[Journal ofthe American Chemical Society,vol.109,p3977−3981(1987)Journal of the American Chemical Society,vol.110,p584−589(1988)]。また、ガラクトースの2位の2級水酸基のみを酵素を利用して選択的にエステル化する方法が報告されているが[Biotechnology Letters,vol.21,p355−359(1999)]、スークロースの2位、3’位の二級水酸基の何れか一つに重合性置換基を配した糖エステルの報告はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スークロースに対して少なくとも3個の炭素鎖を介してビニル基が糖の位置選択的に2位、3’位の2級水酸基の何れか1つに結合した構造のスークロースエステルおよびその製造方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記一般式(1)で表される重合性スークロースエステルが提供される。
【化3】
Figure 0003610515
(前記式中、Xは炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
また、本発明によれば、下記一般式(2)で表される重合性スークロースエステルが提供される。
【化4】
Figure 0003610515
(前記式中、Xは炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
さらに、本発明によれば、スークロースと脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルとを酸触媒あるいは加水分解酵素の存在下で反応させることを特徴とする前記重合性糖エステル製造方法が提供される。
【0005】
【発明実施の形態】
本発明の重合性スークロースエステルは、酸触媒あるいは加水分解酵素触媒の存在下、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒中において、スークロースに下記一般式(3)の脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルを反応させることによって合成することができる。
CH=CHOOC−X−COOCH=CH (3)
前記式中、Xはアルキレン基を示し、その炭素数は1〜12、好ましくは2〜8である。前記脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルとしては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるものをあげることができる。
本発明で反応原料として用いるスクロースは、その2位及び3’位に遊離水酸基を有するものである。
【0006】
本発明で用いる酸触媒としては従来公知のもの、例えば、酢酸亜鉛、酢酸スズ、オクチルスズ等をあげることができる。本発明では特に、酢酸亜鉛を用いるのが好ましい。
【0007】
本発明で用いる加水分解触媒としては従来公知のもの、例えば、Pseudomonas cepacia由来のリパーゼやPseudomonas fluorecence由来のリパーゼ等のリパーゼの他、Bacillus licheniformis由来のプロテアーゼやStreptomyces griceus由来のプロテアーゼ等のプロテアーゼをあげることができる。本発明では特にPseudomonas cepacia由来のリパーゼやStreptomyces griceus由来のプロテアーゼを用いるのが好ましい。
【0008】
前記酸触媒を用いて重合性スークロースエステルを製造する場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは30〜50℃である。溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンあるいはそれらの混合溶媒等があげられる。反応溶媒中のスークロースの濃度は1〜40%(質量%)、好ましくは1〜10%である。また、酸触媒の使用割合は、溶媒に対して、0.1〜20%、好ましくは0.1〜1%である。スークロースに対し、脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルが反応するスークロースの水酸基の位置は2位である。
【0009】
前記酵素触媒を用いて重合性スークロースエステルを製造する場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは30〜50℃である。溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンあるいはそれらの混合溶媒等があげられる。反応溶媒中のスークロースの濃度は1〜40%、好ましくは1〜10%である。また、酵素触媒の使用割合は、溶媒に対して、0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%である。スークロースに対し、脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルが反応するスークロースの水酸基の位置は3’位である。
【0010】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
スークロース(一般式(1)において、その2位が遊離水酸基であるもの)4.2g及びアジピン酸ジビニル9.9gを含むジメチルホルムアミド90mlに酢酸亜鉛0.5gを加えて懸濁した。この反応液を30℃にて130rpmで3日間撹拌した。また、反応液のTLC分析から、生成物は一つであった。反応液を濾過し、触媒を取り除き、減圧下濃縮後シリカゲル(メルク製、Kieselgel−60)を充填したカラム(内径:5cm、長さ:50cm)に負荷し、クロロホルム:メタノール(8:1)の混合溶媒で溶出し生成物を分離した。反応液のHPLC分析(カラム:TOSOH Amide−80、溶媒:アセトニトリル:水=3:1、示差屈折計検出)より約99%のスークロースのエステルヘの変換を確認し、スークロース−3’−O−ビニルアジペートを白色結晶として5.2g得た。
IR(KBr):1725cm−1(C=O),1650cm−1(vinyl),13C−NMR(DO):26.16,26.49,35.90,36.15(−CH−),94.52(C−1),73.77(C−2),75.26(C−3),71.93(C−4),75.08(C−5),62.95(C−6),64.67(C−1’),106.04(C−2’),79.98(C−3’),75.74(C−4’),84.64(C−5’),65.59(C−6’),176.40,178.0(C=0),102.07,143.97(C=C)13C−NMR(DMSO):23.53,23.80,32.73,33.27(−CH−),91.47(C−1),71.45(C−2),73.05(C−3),69.6(C−4),73.05(C−5),60.52(C−6),61.64(C−1’),103.02(C−2’),77.70(C−3’),72.29(C−4’),83.04(C−5’),63.29(C−6’),170.37,171.77(C=0),98.1,141.28(C=C)。
【0011】
実施例2
スークロース(一般式(2)において、3’位が遊離水酸基であるもの)4.2gおよびアジピン酸ジビニル9.9gを含むジメチルホルムアミド90mlにシグマ社製Streptomyces griceus 1.0gを加えて懸濁した。この酵素反応液を30℃にて130rpmで7日問撹拌した。実施例1と同様の方法で生成物を生成し、また、反応液のTLC分析から、生成物は一つであった。反応液のHPLC分析より約42%のスークロースのエステルヘの変換を確認し、スークロース−2−O−ビニルアジペートを白色結晶として2.2g得た。
IR(KBr):1725cm−1(C=0),1650cm−1(vinyl),13C−NMR(DO):26.15,26.40,35.90,36.17(−CH−),92.47(C−1),75.42(C−2),73.17(C−3),72.07(C−4),75.18(C−5),62.93(C−6),63.84(C−1’),106.81(C−2’),78.40(C−3’),76.69(C−4’),84.31(C−5’),65.23(C−6’),176.44,178.25(C=0),102.10,143.97(C=C)13C−NMR(DMSO):23.49,23.49,32.76,33.18(−CH−),88.70(C−1),72.99(C−2),70.05(C−3),69.83(C−4),72.56(C−5),60.31(C−6),61.14(C−1’),104.28(C−2’),75.3(C−3’),73.75(C−4’),82.63(C−5’),62.32(C−6’),170.33,172.62(C=O),98.12,141.26(C=C),
【0012】
実施例3
スークロース4.2g及びアジピン酸ジビニル9.9gを含むジメチルホルムアミド90mlに天野社製Pseudomonas cepacia 10gを加えて懸濁した。この酵素反応液を30℃にて130rpmで7日間撹拌した。実施例1と同様の方法で生成物を生成し、また、反応液のTLC分析から、生成物は一つであった。反応液のHPLC分析より約27%のスークロースのエステルヘの変換を確認し、スークロース−2−O−ビニルアジペートを白色結晶として1.4g得た。
IR(KBr):1725cm−1(C=0),1650cm−1(vinyl),13C−NMR(DO):26.15,26.40,35.90,36.17(−CH−),92.47(C−1),75.42(C−2),73.17(C−3),72.07(C−4),75.18(C−5),62.93(C−6),63.84(C−1’),106.81(C−2’),78.40(C−3’),76.69(C−4’),84.31(C−5’),65.23(C−6’),176.44,178.25(C=0),102.10,143.97(C=C)13C−NMR(DMSO):23.49,23.49,32.76,33.18(−CH−),88.70(C−1),72.99(C−2),70.05(C−3),69.83(C−4),72.56(C−5),60.31(C−6),61.14(C−1’),104.28(C−2’),75.3(C−3’),73.75(C−4’),82.63(C−5’),62.32(C−6’),170.33,172.62(C=0),98.12,141.26(C=C)。
【0013】
【発明の効果】
本発明のスークロースエステルは、スークロースの2位、3’位のいずれかの二級水酸基に位置選択的に炭素鎖を介してビニル基を結合させた構造のもので、スークロースの機能を有するとともに、ビニル基による重合性を有するものである。本発明で得られたスークロースエステルはそのビニル基の重合性を利用して、その単独重合体、共重合体を得るための重合性モノマーとして利用することができる。また、スークロースエステルから得られる単独重合体や共重合体の主鎖は生分解性を有しているポリビニルアルコールであること、原料となるスークロースが非常に安価であることから、生分解性ポリマーとして汎用性のプラスチックからメディカル分野で用いられるような高機能性の材料まで幅広く適用される。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される重合性スークロースエステル。
    Figure 0003610515
    (前記式中、Xは炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
  2. 下記一般式(2)で表される重合性スークロースエステル。
    Figure 0003610515
    (前記式中、Xは炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
  3. 請求項1の重合性スークロースエステルを製造する方法において、スークロースと脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルとを酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする重合性スークロースエステルの製造方法。
  4. 請求項2の重合性スークロースエステルを製造する方法において、スークロースと脂肪族ジカルボン酸ジビニルエステルとを加水分解酵素触媒の存在下で反応させることを特徴とする重合性スークロースエステルの製造方法。
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