JP3610422B2 - Fu40a物質、その製造方法及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は抗菌作用又は抗腫瘍作用を有し、医薬として有用な、新規なFU40A物質に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、微生物が、広範な化学構造上の特徴を有し、抗菌性、抗腫瘍性等の薬理活性を有する種々の物質を生産することが知られている。
【0003】
本発明は、微生物を用いて、更に優れた薬理活性を有する物質を得ることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
斯かる実情に鑑み、本発明者らは、天然土壌より多くの微生物を分離し、有用な薬理活性を有する物質の生産能について検索を行った結果、ノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属する微生物のノカルジオプシス エスピー.3338−A1(Nocardiopsis sp.3338−A1)株が優れた抗菌性、抗腫瘍性を示す新規物質FU40Aを生産することを見出し、その活性物質を単離し、その理化学的性状及び構造を確定することにより本発明を完成させた。本発明の化合物は抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤等の医薬として有用である。
【0005】
すなわち、本発明は次の式(1)で表されるFU40A物質に係わるものである。
【0006】
【化2】
【0007】
また、本発明はノカルジオプシス属に属し、上記FU40A物質を生産する能力を有する微生物を培養し、培養物中に該化合物を生成し、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするFU40A物質の製造法にも係るものである。
【0008】
また、本発明は該FU40A物質を有効成分とする医薬並びに抗腫瘍剤に係るものである。
【0009】
また、本発明は上記FU40A物質及び薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物に係るものである。
【0010】
更に、本発明は上記FU40A物質を産生する能力を有する菌に係るものである。
【0011】
本発明のFU40A物質は上記式(1)で表され、不斉炭素原子に基づく異性体が存在するが、本発明にはこれら各異性体及びその混合物のいずれもが含まれる。また、本発明物質は水和物の形態で存在してもよく、本発明には当該水和物も含まれる。
【0012】
FU40A物質の物理化学的性質を以下に示す。
【0013】
(1)形 状:無色の粉末
(2)実験式:C58H96O21(計算値 1151.6342)
(3)分子量:1151.6357(ファーストアトミックボンバードメントマススペクトロメトリー法による)
(4)比施光度:[α]D 21=−5.2°(C=1.0, メタノール中)
(5)紫外吸収スペクトル(図1):メタノール溶液中、λmax (nm) (ε):234 (28,300)、320(22,000)。
(6)赤外吸収スペクトル(図2):KBr錠剤法、νmax(cm−1)、3440,1665。
【0014】
(7)核磁気共鳴スペクトル:重メタノール溶液中で測定した400MHz 1H−NMRスペクトル(図3)及び100MHz 13C−NMRスペクトル(図4)の化学シフト値を表1〜表3に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
(8)溶解性:メタノール、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル及びクロロホルムに良く溶け、水に少し溶け、ヘキサンに難溶である。
【0019】
(9)融 点:128−130 ℃
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のFU40A物質は、例えば、本物質の生産能力を有する菌株(以下FU40A物質生産菌と称する場合がある。)を適当な条件下で培養することによって製造することができる。
【0021】
FU40A物質生産菌としては、ノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属する菌株が挙げられる。本発明はノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属する菌を培養し、培養物を回収することによって得ることができる上記FU40A物質も包含する。
【0022】
ノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属する菌株の一例としては、ノカルジオプシス エスピー.3338−A1(Nocardiopsissp.3338−A1)株が例示できる。この菌株は、本発明者らが群馬県草津の土壌から新たに分離したノカルジオプシス属に属する菌株であり、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、1997年3月13日に、微生物の表示(寄託者が付した識別のための表示)「Strain 3338−A1」、(受託番号)「FERM BP−5871」として寄託されている。
【0023】
本菌株ノカルジオプシス エスピー.3338−A1株について、「特許庁産業別審査基準」に記載の方法に準じて検討した菌学的性質は次の通りである。
【0024】
(a)形態:
本菌株をイースト・麦芽寒天培地、グリセリン・アスパラギン寒天培地又は無機塩・スターチ寒天培地中で、27℃、14日間培養し、観察した結果を以下に示す。
【0025】
胞子形成菌糸の分枝法;
形態性状:本菌株の基生菌糸は幅0.3〜0.8 μmで、分枝しながら長く伸張し、時には特徴的なジグザグ状を呈し、短い桿状に分断する。気菌糸は主軸を長く伸ばし、少ない分枝がレイス状に絡まり、全菌糸が分節・分断して胞子鎖を形成する。10〜50個またはそれ以上からなる曲状又はループ状の胞子鎖を形成し、成熟するとややジグザグ状を呈する。分節胞子は円筒形、幅0.3〜0.4 μm長さ1.5〜1.8 μmで、胞子表面は平滑、非運動性である。菌核、胞子のう、その他の特殊形態は観察されない。
【0026】
(b)各種培地における生育状態:
各種培地における生育状態を表4に示す。分類色名は財団法人日本色彩研究所監修「標準色彩図表A,1981年」で示した。なお、詳細な色はコンテイナー・コーポレーション・オブ・アメリカ(Container Corporation of America)の「ザ・カラー・ハーモニー・マニュアル(The Color Harmony Manual),第4版,1958年」の色コードで()内につけ加えた。
【0027】
【表4】
【0028】
(c)生理的性質:本菌株の生理的性状を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】
(d)化学分類学的性質:本菌株は全菌体アミノ酸としてメゾ・ジアミノピメリン酸、糖としてガラクトース、マンノース、グルコースを含み、細胞壁化学型はIIIC型である。主要メナキノンはMK−10(H4,H6)である。
【0031】
(e)本菌株の分類的位置:上述の諸性状を基に「バージェイ氏細菌系統分類学便覧4巻」、(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 4.)により本菌株の分類学的位置を検索した。本菌株の属レベルの特徴を要約すると、ノカルデイオフォームの形態を示し、細胞壁化学型はIIIC型であり、主要メナキノンは、 MK−10(H4,H6)型である。これらの特徴を持つ属はノカルジオプシス(Nocardiopsis)のみである。よって本菌株3338−A1はノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に位置される。最近、同属の種は多数報告され分類学的に議論されて整理されつつあるため、目下それらの種とも比較、同定を行っている。従って、同定が完了するまでの間、本菌株をノカルジオプシス エスピー.3338−A1(Nocardiopsis sp.3338−A1)株と呼称する。本菌株と近縁放線菌属との比較を表6に示す。
【0032】
【表6】
【0033】
本発明のFU40A物質は、例えば、ノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属し、FU40A物質を生産する能力を有する菌を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することにより、具体的には、上記3338−A1株又はその変異株等のノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属する各種のFU40A物質生産菌を適当な培地で培養し、次に培養物から本発明物質を含む粗抽出物を分離し、更に粗抽出物からFU40A物質を単離、精製することにより製造することができる。
【0034】
上記微生物の培養は原則的に一般微生物の培養に準じて行われるが、通常液体培養による振盪培養法、通気撹拌培養法等の好気的条件下で行うのが好ましい。
【0035】
培養に用いられる培地としては、 FU40A物質生産菌が利用できる栄養源を含有する培地であればよく、各種の合成培地、半合成培地、天然培地等をいずれも用いることができる。培地の炭素源としてはグルコース、シュークロース、フラクトース、グリセリン、デキストリン、澱粉、糖蜜、コーン・スティープ・リカー、有機酸等を単独又は2種以上組み合わせたものが;窒素源としてはファーマメディア、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、尿素等の有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を単独又は2種以上組み合わせたものが用いられる。また、培地にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、その他の重金属塩等が必要に応じて適宜添加される。
【0036】
なお、培養中発泡の著しい時は、例えば大豆油、亜麻仁油等の植物油、オクタデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール等の高級アルコール類、各種シリコン化合物等の消泡剤を適宜培地中に添加することもできる。
【0037】
培地のpHは中性付近とするのが好ましい。培養温度はFU40A物質生産菌が良好に生育する温度、通常20〜37 ℃、特に好ましくは25〜30 ℃付近に保つのがよい。培養時間は、液体振盪培養及び通気撹拌培養のいずれの場合も4〜7日間が好ましい。
【0038】
上述した各種の培養条件は使用微生物の種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、またそれぞれに応じて上記範囲から最適条件を選択、調節できる。
【0039】
培養液からのFU40A物質を含む粗抽出物の分離は、発酵生産物を採取する一般的な方法に準じて行うことができ、例えば溶媒抽出、分配及び吸着クロマトグラフィー、結晶化等の手段を単独で、又はこれらの手段の2種以上を任意の順序に組み合わせて用いることができる。より詳しくは、上記培養により生産されるFU40A物質は主として培養菌体中に存在するので、常法に従い、まず濾過、遠心分離等を行って、培養濾液と菌体固形分とを分離し、得られたFU40A物質を含む菌体固形分についてメタノール、アセトン等の溶媒を用いてFU40A物質の溶出を行い、次いで、減圧下に溶媒を留去すればFU40A物質を含む粗濃縮液を得ることができる。この粗濃縮液に酢酸エチル、クロロホルム、ブタノール等の水と混合しない有機溶媒を加えてFU40A物質を有機溶媒層に転溶させ、得られた溶媒層に芒硝を加えて脱水した後、溶媒を減圧下で留去すればFU40A物質を含む粗抽出物を得ることができる。必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸にてpHを調節したり、また工業用食塩を加えることにより、抽出効率を高くしたり、エマルジョン生成防止などの方法を講じることができる。
【0040】
更に、粗抽出物からFU40A物質を単離、精製するためには通常の脂溶性低分子物質の単離、精製手段、例えばシリカゲル、アルミナ、マクロポーラス非イオン系吸着樹脂等の吸着剤による種々の吸着クロマトグラフィー及びODS−結合型シリカゲル等を用いる逆相クロマトグラフィーが使用できる。これらのうち、溶出溶媒にクロロホルム、クロロホルム/メタノール、クロロホルム/メタノール/ベンゼン、トルエン/メタノール等の混合溶媒系を用いるシリカゲルクロマトグラフィー及びアセトニトリル/水、メタノール/水等の混合溶媒系を溶出に用いる逆相クロマトグラフィーが特に好ましい。また、更に精製を必要とする場合には上記クロマトグラフィーを繰り返し行うか又は溶出溶媒としてクロロホルム、メタノール等を用いたセファデックスLH−20(ファルマシア社製)によるゲル濾過クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて行うことにより、高純度のFU40A物質を得ることができる。
【0041】
なお、精製工程中のFU40A物質の確認は、本物質により増殖抑制作用の認められるアデノウイルス12型のE1A遺伝子を導入したラットグリア細胞に対する殺細胞効果を調べる方法及び高速液体クロマトグラフィーを用いて検出する方法とを併用して行うのがよい。殺細胞効果を調べる具体的方法は、試験例中に記載する。
【0042】
本発明のFU40A物質は形質転換細胞に対して優れた抗腫瘍活性を有するので、腫瘍治療剤としての有効性が確認された。
【0043】
以上のようにして精製したFU40A物質を医薬組成物として使用する際の薬学的投与形態としては、目的に応じて各種の薬学的投与形態を広く採用でき、該形態としては、具体的には、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;注射剤、坐剤、軟膏剤、硬膏剤、貼付剤、エアゾール剤、点眼剤等の非経口剤のいずれでもよく、これら投与形態は、それぞれ当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
【0044】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
【0045】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0046】
カプセル剤は常法に従い通常本発明の化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬化ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調整される。
【0047】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明の有効成分に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等の担体を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が使用でき、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が使用できる。
【0048】
注射剤として調整される場合、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、マクロゴールプロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。なお、この場合等張性の溶液を調整するに十分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により静脈内、筋肉内、皮下、皮内並びに腹腔内用注射剤を製造できる。pH調整剤及び緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸等が使用できる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が使用できる。
【0049】
坐剤を調整する場合には、本発明の有効成分に基剤、更に必要に応じて界面活性剤等を加えた後、常法により坐剤を製造することができる。基剤としては、例えばマクロゴール、ラノリン、カカオ油、脂肪酸トリグリセライド、ウィテップゾール(ダイナマイトノーベルズ社製)等の油性基剤を用いることができる。
【0050】
軟膏剤を調整する場合は、本発明化合物に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等の担体が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としてはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0051】
貼付剤を製造する場合には、通常の支持体に前記軟膏、ペースト、クリーム、ゲル等を常法により塗布すればよい。支持体としては綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルムあるいは発泡体シートが適当である。
【0052】
更に上記各製剤には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に含有せしめてもよい。
【0053】
本発明の医薬製剤中に含有されるべきFU40A物質の量としては、特に制限されず広範囲に適宜選択されるが、通常医薬製剤中1〜70重量%とするのがよい。
【0054】
上記医薬製剤の投与方法は特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度等に応じて適宜決定される。例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤は経口投与される。注射剤は単独であるいはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤は直腸内投与される。軟膏剤は皮膚、口腔内粘膜等に塗布される。
【0055】
上記の各投与単位形態中に配合されるべきFU40A物質の有効成分の量は、これを適用すべき患者の症状によりあるいはその剤型等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり経口剤では約0.01〜100mg、注射剤では約0.01〜50mg、坐剤では0.05〜100mgとするのが望ましい。
【0056】
また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別、その他の条件等に応じて適宜選択されるが、通常成人1日あたり約0.01〜100mg/kgとすれば良く、これを1日1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【0057】
FU40A物質を有効成分とする医薬を投与することによって治療できる悪性腫瘍としては、特に制限はなく、例えば、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、悪性リンパ種、白血病、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例及び試験例を挙げて更に具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0059】
実施例1 本発明FU40A物質の製造:
(a)培養工程
可溶性澱粉 1.0%、廃糖蜜 1.0%、ポリペプトン 1.0%、肉エキス1.0%よりなる培地(pH 7.2)15 mlを50 mlの大型試験管に分注し、滅菌後、本菌株を一白金耳量接種し、27℃にて2日間振盪培養した。次に、グリセロール 2.0%、廃糖蜜 1.0%、カゼイン 0.5%、ポリペプトン 1.0%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(pH 7.2)を100 mlずつ500 mlの三角フラスコに分注し、滅菌後、上記の種菌 2 mlを添加し、ロータリーシェーカーにて27 ℃、5日間回転培養した。
【0060】
(b)分離、単離、精製工程
上記工程で得られた培養液(2 L)を採取し、遠心分離、濾過後、培養菌体にアセトン(1 L)を加え抽出した。このアセトン抽出液を減圧濃縮し、培養上清と合わせ、酢酸エチル(2 L)で2回抽出した。得られた有機溶媒層を濃縮した後、この濃縮物をシリカゲルカラム(内径3 cm×20 cm)にかけ、クロロホルム/メタノール(v/v 10:1)にてクロマトグラフィーを行った。活性成分をさらにセファデックスLH−20(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(内径20 cm×50 cm, メタノール)にて精製した。更に、ワイエムシイ社製 YMC−Pack D−ODS−7カラムを用い、70%メタノールにて高速液体クロマトグラフィーを行い、活性画分を濃縮することによりFU40A物質の無色粉末218 mgを得た。
【0061】
得られたFU40A物質の物理化学的性質を以下に示す。
【0062】
(1)形 状:無色の粉末
(2)実験式:C58H96O21(計算値 1151.6342)
(3)分子量:1151.6357(ファーストアトミックボンバードメントマススペクトロメトリー法による)
(4)比施光度:[α]D 21=−5.2°(C=1.0, メタノール中)
(5)紫外吸収スペクトル(図1):メタノール溶液中、λmax (nm) (ε):234 (28,300)、320(22,000)。
(6)赤外吸収スペクトル(図2):KBr錠剤法、νmax(cm−1)、3440,1665。
【0063】
(7)核磁気共鳴スペクトル:重メタノール溶液中で測定した400MHz 1H−NMRスペクトル(図3)及び100MHz 13C−NMRスペクトル(図4)の化学シフト値を表7〜表9に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
(8)溶解性:メタノール、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル及びクロロホルムに良く溶け、水に少し溶け、ヘキサンに難溶である。
【0068】
(9)融 点:128−130 ℃
試験例1
Wistarラットの18日胚の脊髄より初代培養したラット正常グリア細胞にアデノウイルス12型のE1A癌遺伝子を導入した細胞、またはE1A, E1B癌遺伝子双方を導入した細胞(J. Antibiotics 49, 974−979, 1996)及び正常ラットグリア細胞に対するFU40A物質の細胞増殖阻害効果を比較した。
【0069】
これらの細胞の培養には、1%のグルコースと10%の牛胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地を用いた。50%飽和密度の各培養細胞を0.25%トリプシン/1mM EDTA液により分散し、遠心洗浄後、上記培地で1/10細胞密度に希釈して96ウエルマイクロプレート(GIBCO)にウエルあたり0.1 ml添加後、CO2インキュベーターで37℃で培養した。翌日上記培地にて各種濃度に調整したFU40A物質を含む液を0.1 ml添加し、更に3日間培養した。
【0070】
その後、終濃度0.5 mg/mlになるように3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムを添加し、4時間37℃で培養した後、形成されたファルマザンをジメチルスルホキシドで抽出し、マイクロプレートリーダーにて570 nmでの吸光度を測定した。薬剤未添加の細胞での吸光度を100%としてFU40A物質のIC50値(50%細胞増殖阻害濃度)を算出した。E1A癌遺伝子を導入したラットグリア細胞、またはE1A, E1B癌遺伝子双方を導入したラットグリア細胞でのIC50値は、それぞれ11 ng/ml及び10 ng/mlであった。一方、同条件で正常ラットグリア細胞を培養した時のIC50値は100 μg/ml以上であった。
【0071】
試験例2
種々のヒト臓器癌細胞および正常細胞に対するFU40A物質の細胞増殖阻害効果を市販の抗悪性腫瘍剤アドリアマイシン(協和発酵社製)と比較した。
【0072】
ヒト正常血管内皮細胞HUVECの培養には、5%の牛胎児血清を含むMCDB104培地(日水製薬)で、その他の癌細胞株は、10%の牛胎児血清を含むRPMI1640培地を用いた。
【0073】
各細胞を1万〜3万個/mlに調整した細胞浮遊液を調整し、96ウエルマイクロプレート(GIBCO)にウエルあたり0.1 ml添加後、CO2インキュベーターで37℃で培養した。翌日上記培地にて各種濃度に調整したFU40A物質を含む液又はアドリアマイシン液を0.1 ml添加し、更に3日間培養した。
【0074】
その後、0.02 mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加し、10分間細胞を固定し、水洗後、20%メタノールに溶解した0.05%クリスタルバイオレット染色液で15分間染色した。更に水洗後、細胞に結合した染色剤をエタノール/50 mM NaH2PO4の1:1混合液にて抽出し、マイクロプレートリーダーにて415 nmでの吸光度を測定した。薬剤未添加の細胞での吸光度を100%としてFU40A物質とアドリアマイシンのIC50値(50%細胞増殖阻害濃度)を算出した。
【0075】
結果を表10に示す。
【0076】
【表10】
【0077】
FU40A物質はアドリアマイシンと同様に広範な腫瘍株に細胞増殖阻害作用を示した。アドリアマイシンは正常血管内皮細胞に対しても同程度の細胞増殖阻害作用を示すのに対し、FU40Aの作用は極めて弱いものであった。
【0078】
試験例1及び2から明らかなように、本発明のFU40A物質は、悪性転換細胞に対し、強い殺細胞作用を示すが、正常細胞に対しては高濃度でも殺細胞作用を示さなかった。一方、アドリアマイシンは正常細胞にも同程度に殺細胞作用を示した。
【0079】
上記配合割合で、常法に従いカプセル剤を調整した。
【0080】
上記配合割合で、常法に従い注射剤を調整した。
【0081】
上記配合割合で、常法に従い坐剤を調整した。
【0082】
【発明の効果】
本発明のFU40A物質は、形質転換細胞に対し優れた抗腫瘍活性を有し、腫瘍の治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた本発明物質の紫外吸収スペクトル図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた本発明物質の赤外吸収スペクトル図である。
【図3】図3は、実施例1で得られた本発明物質の1H−NMRスペクトル図である。
【図4】図4は、実施例1で得られた本発明物質の13C−NMRスペクトル図である。
Claims (8)
- ノカルジオプシス(Nocardiopsis)属に属し、請求項1に記載のFU40A物質を生産する能力を有する菌を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1に記載のFU40A物質の製造法。
- 菌がノカルジオプシス エスピー.3338−A1(Nocardiopsis sp.3338−A1)株又はその変異株である請求項2に記載のFU40A物質の製造法。
- 請求項1に記載のFU40A物質を有効成分とする医薬。
- 抗腫瘍剤である請求項4に記載の医薬。
- 有効量の請求項1に記載のFU40A物質及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
- 腫瘍治療用である請求項6に記載の医薬組成物。
- FU40A物質を産生する能力を有する、ノカルジオプシス エスピー.3338−A1(Nocardiopsis sp.3338−A1)株又はその変異株。
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